(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分極は、第1の棒状電極と第2の棒状電極とを互いに略平行に配置し、前記第1の棒状電極上に前記分極用電極を設けた前記一方端近傍部位を載置し、前記第2の棒状電極上に前記基準電極が延出された前記外周面の前記他方端近傍部位を載置し、前記第1の棒状電極と前記第2の棒状電極との間に所定の電圧を印加することで行う
ことを特徴とする請求項2に記載の円筒型圧電素子の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“成型・焼成ステップ”を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“外部電極形成ステップ”を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“分極ステップ”を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“切断・研磨除去ステップ”を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法により製造された円筒型圧電素子の斜視図を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子を、細径SPMプローブに適用した一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子を微小ステージに適用した一例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子を、細径SPMプローブに適用した一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子を微小ステージに適用した一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第2実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“成型・焼成ステップ”を示す図である。
【
図11】
図11は、同製造方法における“外部電極形成ステップ”を示す図である。
【
図12】
図12は、同製造方法における“分極ステップ”を示す図である。
【
図13】
図13は、同製造方法における“切断・研磨除去ステップ”を示す図である。
【
図14】
図14は、同製造方法により製造された円筒型圧電素子の斜視図を示す図である。
【
図15】
図15は、複数本の円筒型圧電材料を同時に分極処理する為の装置構成を示す図である。
【
図16】
図16は、円筒型圧電素子を端面側から観た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“成型・焼成ステップ”を示す図である。
図2は、同製造方法における“外部電極形成ステップ”を示す図である。
図3は、同製造方法における“分極ステップ”を示す図である。
図4は、同製造方法における“切断・研磨除去ステップ”を示す図である。
図5は、同製造方法により製造された円筒型圧電素子の斜視図を示す図である。
【0013】
まず、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)等に代表される圧電材料を、成型や切削等の方法によって円筒形状に成型して焼成し(成型・焼成ステップ)、中空部位(貫通孔)3Hを備える円筒型圧電材料3を作成する。
続いて、円筒型圧電材料3の外周面及び内周面に、次のように電極を形成する(外部電極形成ステップ)。すなわち、円筒型圧電材料3の外周面には、周方向に所定の幅を持ち且つ軸方向(円筒型圧電材料3の長さ方向)には一方端から他方端へ亘って、複数の駆動用電極5−1,5−2(
図2では不可視の部位のものを含めて、周方向に等間隔に計4個の駆動用電極)を形成する。
【0014】
さらに、これら4個の駆動用電極全てと導通し且つ当該円筒型圧電材料3の軸方向における一方端近傍に位置するように(前記軸方向について前記複数の駆動用電極に対して直列に)分極用電極5−11を形成する。
他方、円筒型圧電材料3の内周面には、その略全面に基準電極5−21を形成する。
ここで、
図2に示す例では、2つの駆動用電極5−1,5−2のみしか図示されていないが、実際には当該図面の視点では不可視の部位に更に2つの駆動用電極が設けられている。詳細には、当該円筒型圧電材料3を周方向に4等分する位置に一つずつ計4個の駆動用電極が設けられている。
【0015】
なお、円筒型圧電素子の軸方向と直交する4方向に駆動する円筒型圧電素子を製造する場合には、上述の態様で4つの駆動用電極を設ける方法が一般的ではある。しかしながら、少なくとも2つ以上の駆動用電極を設けた態様の円筒型圧電素子を製造するのであれば、本第1実施形態を適用することによる格別な効果(後述)を得ることができる。
上述した円筒型圧電材料3の内周面及び外周面に形成する各電極の材料としては、銀、銀パラジウム、金、またはニッケル等、任意の導電性材料を挙げることができる。また、各電極を形成する方法は任意であり、例えばスクリーン印刷、スパッタ、またはメッキ等を挙げることができる。
【0016】
なお、上述の外部電極形成ステップにおいて各外部電極を形成する順序は任意である。
上述の外部電極形成ステップを完了した後、分極用電極5−11と、基準電極5−21との間に所定の電圧Vを印加し、当該円筒型圧電材料3に分極処理を施す(分極ステップ)。具体的には、例えば基準電極5−21にマイナスの電位を与え、且つ、分極用電極5−11にプラスの電位を与えることで、分極用電極5−11と基準電極5−21との間に所定の電圧を印加して当該円筒型圧電材料3を分極させればよい。
【0017】
この分極ステップにより、円筒型圧電材料3のうち各駆動用電極より内径側の圧電材料(各駆動用電極の配設部位に対応する部位の圧電材料)が圧電活性領域となる。これは、分極用電極5−11が全ての駆動用電極と導通しているからであり、それぞれの駆動用電極を用いて複数回の分極処理を行う必要がない。つまり、分極用電極5−11と基準電極5−21との間で分極処理を一回施すだけで、全ての駆動用電極に対応する部位についての分極処理が完了する。
【0018】
上述の分極ステップを完了した後、円筒型圧電材料3のうち分極用電極5−11が形成されている部位を例えばダイシングやレーザ加工等によって切断し、或いは、分極用電極5−11を研磨によって除去する(切断・研磨除去ステップ)。この切断・研磨除去ステップにより、全ての駆動用電極間が非導通となり、互いに独立した複数の圧電活性領域及び駆動用電極が形成され、
図5に示す円筒型圧電素子10が完成する。
【0019】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、加工難易度を上げずに小型化を実現した円筒型圧電素子の製造方法及び円筒型圧電素子を提供することができる。すなわち、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法によれば、複数の圧電活性領域を有する円筒型圧電素子の製造において、複雑な形状の円筒型圧電素子の焼成や精密な後加工等が必要なく、さらに複数の微細な電極への導通確保も必要ない。従って、簡略な製造工程且つ高い信頼性で、小型の円筒型圧電素子を製造することができる。
【0020】
以下、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子を適用した微小駆動機構について説明する。
図6は、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子を、細径SPM(Scanning Probe Microscope)プローブに適用した一例を示す斜視図である。
図7は、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子を微小ステージに適用した一例を示す斜視図である。
すなわち、
図6に示す例では、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子10の一方端側の中空部位(開口部位)に探針部材1001を配設し、且つ、他方端を支持部1000に対して固定している。このように構成することで、探針部材1001を被駆動体とする微小駆動機構(細径SPM(Scanning Probe Microscope)プローブ)が実現する。
【0021】
また、
図7に示す例では、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子10の一方端面に平板1003を設け、且つ、他方端を支持部1000に対して固定している。このように構成することで微小ステージが実現し、例えばスキャナミラー等に用いることができる。
【0022】
以下、
図8及び
図9を参照して、共振現象を利用した駆動を行う場合の適用例を説明する。
図8に示す例では、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子10の一方端側の中空部位(開口部位)に探針部材1001を配設し、且つ、他方端側の所定位置を支持部1000に対して固定している。このように構成することで、探針部材1001を被駆動体とする微小駆動機構(細径SPM(Scanning Probe Microscope)プローブ)が実現する。
【0023】
また、
図9に示す例では、本第1実施形態に係る円筒型圧電素子10の一方端面に平板1003を設け、且つ、他方端側の所定位置を支持部1000に対して固定している。このように構成することで微小ステージが実現し、例えばスキャナミラー等に用いることができる。
【0024】
ここで、
図8及び
図9に示す例において、支持部1000で固定している位置は、円筒型圧電素子10と被駆動体(探針部材1001或いは平板1003)とから成る系の共振モードにおける節位置である。このように構成し、円筒型圧電素子10と被駆動体(探針部材1001或いは平板1003)とから成る系の共振周波数の駆動信号を各圧電活性化領域に印加することで、共振現象を利用してより大きな振幅を得ることができる。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法について説明する。なお、説明の重複を避ける為、第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法との相違点を説明する。この相違点の一つは、外部電極形成ステップ及び分極ステップにおける処理である。
【0025】
図10は、本発明の第2実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法における“成型・焼成ステップ”を示す図である。
図11は、同製造方法における“外部電極形成ステップ”を示す図である。
図12は、同製造方法における“分極ステップ”を示す図である。
図13は、同製造方法における“切断・研磨除去ステップ”を示す図である。
図14は、同製造方法により製造された円筒型圧電素子の斜視図を示す図である。
【0026】
まず、第1実施形態と同様、“成型・焼成ステップ”において中空部位(貫通孔)3Hを備える円筒型圧電材料3を作成し(
図10参照)、続いて“外部電極形成ステップ”において当該円筒型圧電材料3の外周面及び内周面に外部電極を設ける(
図11参照)。この“外部電極形成ステップ”においては、円筒型圧電材料3の内周面に基準電極5−21を形成し、且つ、外周面に複数の駆動用電極と、分極用電極5−11と、本第2実施形態に特有の“折り返し電極5−31”と、を設ける。
【0027】
前記折り返し電極5−31は、当該円筒型圧電材料3のうち分極用電極5−11が設けられた側の端部とは逆側の端部において、当該円筒型圧電材料3の内周面の基準電極5−21と一体的に(電気的に導通して)形成されている。換言すれば、円筒型圧電材料3の内周面の基準電極5−21を外周面に導出して形成した電極が、折り返し電極5−31である。
【0028】
そして、分極ステップにおいては、折り返し電極5−31と分極用電極5−11との間に所定の電圧Vを印加する(
図12参照)。従って、本第2実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法によれば、分極処理を、円筒型圧電材料3の外周面の外部電極のみを利用して行うことができる。つまり、分極処理のための電気的接続が容易となる(電気的接続構成が簡略となる)。
【0029】
上述の分極ステップを完了した後は、第1実施形態と同様に“切断・研磨除去ステップ”によって、円筒型圧電材料3のうち分極用電極5−11が形成されている部位を例えばダイシングやレーザ加工等によって切断し、或いは、分極用電極5−11を研磨によって除去する。これにより、
図14に示す円筒型圧電素子10が完成する。
【0030】
ところで、
図15に示すように、折り返し電極5−31を利用することで、複数本の円筒型圧電材料3を同時に分極処理することができる。
図15は、複数本の円筒型圧電材料3を同時に分極処理する為の装置構成を示す図である。同図に示すように、互いに平行に2本の棒状電極110,120を配設し、それら棒状電極110,120間を橋渡しするように、棒状電極110,120上に複数本の円筒型圧電材料3を載置する。
【0031】
さらに、例えば絶縁性の弾性部材100等の押し付け部材によって、複数本の円筒型圧電材料3を上方から押さえる。なお、この押し付け部材による円筒型圧電材料3の押さえ付けは、単に位置固定の為であり、必ずしも必要ではない。
そして、棒状電極110と棒状電極120との間に所定の電圧Vを印加することで、全ての円筒型圧電材料3を一括して分極処理することができる。
図15に示す態様で分極処理することで、円筒型圧電材料3の内周面の基準電極に電圧を印加する為の治具が不要になり、更に位置決めも容易になる。
【0032】
ところで、
図16は、円筒型圧電素子10を端面側から観た図である。
図17及び
図18は、
図16に示すA−A´線における円筒型圧電素子10の断面矢視図である。
図17に示す例では、円筒型圧電材料3の端面に特に何ら加工を施さない状態で、基準電極5−21と折り返し電極5−31とを設けている。
図18に示す例では、円筒型圧電材料3の端面を面取り加工して面取り部3tを形成した後に、基準電極5−21と折り返し電極5−31とを設けている。
【0033】
図18に示すように構成することで、円筒型圧電素子10の端面の縁部位が例えば磨耗等によって削り取られてしまう等によって、基準電極5−21と折り返し電極5−31との電気的導通が無くなってしまうことを未然に防ぐことができる。
以上説明したように、本第2実施形態によれば、第1実施形態に係る円筒型圧電素子の製造方法及び円筒型圧電素子と同様の効果を奏する上に、分極処理の為の電気的接続を円筒型圧電材料の外周面のみで行うことができる為、“分極ステップ”を更に簡略化することができる。
【0034】
なお、
図14に示すように完成後の円筒型圧電素子10は折り返し電極5−31を備えているが、折り返し電極5−31を切断してしまっても勿論よい。しかしながら、折り返し電極5−31を残存させることで、当該円筒型圧電素子10の駆動時に内周面の基準電極5−21にプローブを接触させる必要がない。つまり、折り返し電極5−31を利用することで、円筒型圧電素子10の内周面の外部電極(基準電極5−21)を用いずに当該円筒型圧電素子10を駆動することが可能となる。
【0035】
以上、第1実施形態及び第2実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、例えば次のような変形及び応用が可能なことは勿論である。
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。