【文献】
西澤かな枝,各論-3.被曝管理(QA/QCのための線量測定-CT Dose Index(CTDI)とDose Length Product(DLP)),胸部CT検診,2003年,10巻 1号,11-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ファントムに対するスキャンを行ったときに前記ファントムの表面付近の測定位置において測定された放射線線量を、前記ファントムに対して該スキャンと同じ放射線ビーム幅で放射線照射を行ったときに該測定位置において測定された放射線ビーム幅方向の線量プロファイルをそのピーク線量値で正規化した正規化済み線量プロファイルのプロファイル面積で除して成る第1の放射線線量に基づいて、撮影対象の表面付近に対応する被曝線量を計算する計算手段と、
前記計算手段により計算された被曝線量を表示するよう表示手段を制御する表示制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置。
前記線量プロファイルは、放射線源を互いに異なる複数のビュー角度に配置して放射線照射を行ったときに測定された複数の線量プロファイルを平均化したプロファイルである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線断層撮影装置。
前記計算手段は、前記撮影対象のスキャン条件として放射線を360度未満分照射するパーシャルスキャンが設定されている場合に、前記パーシャルスキャンが行われるビュー角度範囲に基づいて、前記被曝線量を計算する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線断層撮影装置。
前記計算手段は、前記撮影対象のスキャン条件として放射線を360度未満分照射するパーシャルスキャンが設定されている場合に、前記ファントムに対するスキャンとして前記パーシャルスキャンを行ったときに得られる前記第1の放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線断層撮影装置。
前記計算手段は、前記撮影対象のスキャン条件として放射線を360度未満分照射するパーシャルスキャンが設定されている場合に、前記ファントムに対するスキャンとして互いに異なる複数のビュー角度範囲におけるパーシャルスキャンを行ったときに得られる複数の前記第1の放射線線量を平均化した放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線断層撮影装置。
ファントムに対するスキャンを行ったときの前記ファントムの表面付近の測定位置における放射線線量と、前記ファントムに対して該スキャンと同じ放射線ビーム幅で放射線照射を行ったときの該測定位置における放射線ビーム幅方向の線量プロファイルをそのピーク線量値で正規化した正規化済み線量プロファイルのプロファイル面積とを測定しておき、前記放射線線量を前記プロファイル面積で除して成る第1の放射線線量に基づいて撮影対象の表面付近に対応する被曝線量を計算する被曝線量計算方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際のところ、被曝線量の分布は均一ではなく、撮影部位の表面で最大となり、中心部に近づくほど小さくなる。また、放射線感受性の高い部位は、被検体の体表面近くに存在している。
【0005】
そのため、現行のような単位スライス厚当たりの被曝線量を表すCTDI値や、1回の検査全体の被曝線量を表すDLP値だけでは、撮影対象の被曝評価を正確に行うことができない。
【0006】
このような事情により、撮影対象のより正確な被曝評価を可能にする情報を提供する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点の発明は、撮影対象の表面付近に対応する被曝線量を表示する放射線断層撮影装置を提供する。
【0008】
第2の観点の発明は、
ファントム(phantom)に対する放射線照射を行ったときに前記ファントムの表面付近測定位置のみにおいて測定された放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する計算手段を備えた上記第1の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0009】
第3の観点の発明は、
前記計算手段が、ファントムに対する放射線照射を行ったときに、前記ファントムの表面付近の測定位置であって放射線線量が実質的に最大となる位置において測定された放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第2の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0010】
第4の観点の発明は、
前記ファントムが、撮影テーブル(table)の天板上に載置されており、
前記放射線が実施的に最大となる位置が、放射線源が最も近づく位置である上記第3の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0011】
第5の観点の発明は、
前記計算手段が、前記ファントムに対するスキャン(scan)を行ったときに前記表面付近の測定位置において測定された第1の放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第2の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0012】
第6の観点の発明は、
前記計算手段が、前記ファントムに対するスキャンを行ったときに前記表面付近の測定位置において測定された放射線線量を、前記ファントムに対して該スキャンと同じ放射線ビーム(beam)幅で放射線照射を行ったときに該測定位置において測定された放射線ビーム幅方向の線量プロファイル(profile)をそのピーク(peak)線量値で正規化したときのプロファイル面積で除して成る第1の放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第2の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0013】
第7の観点の発明は、
前記線量プロファイルが、前記放射線源を互いに異なる複数のビュー(view)角度に配置して放射線照射を行ったときに測定された複数の線量プロファイルを平均化したプロファイルである上記第6の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0014】
第8の観点の発明は、
前記計算手段が、所望のスキャン条件としてヘリカルスキャン(helical scan)が設定されている場合に、前記第1の放射線線量をヘリカルピッチ(helical
pitch)で除して成る放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第5の観点から第7の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0015】
第9の観点の発明は、
前記計算手段が、所望のスキャン条件として可変ピッチヘリカルスキャンが設定されている場合に、前記第1の放射線線量を時間加重平均によるヘリカルピッチ換算値で除して成る放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第5の観点から第7の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0016】
第10の観点の発明は、
前記計算手段が、所望のスキャン条件として、放射線を360度未満分照射するパーシャルスキャン(partial scan)が設定されている場合に、前記パーシャルスキャンが行われるビュー角度範囲に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第5の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0017】
第の11の観点の発明は、
前記計算手段が、所望のスキャン条件として、放射線を360度未満分照射するパーシャルスキャンが設定されている場合に、前記ファントムに対するスキャンとして、前記パーシャルスキャンを行ったときに得られる前記第1の放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第5の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0018】
第12の観点の発明は、
前記計算手段が、所望のスキャン条件として、放射線を360度未満分照射するパーシャルスキャンが設定されている場合に、前記ファントムに対するスキャンとして、互いに異なる複数のビュー角度範囲においてパーシャルスキャンを行ったときに得られる複数の前記第1の放射線線量を平均化した放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第5の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0019】
第13の観点の発明は、
前記ファントムに対するスキャンが、放射線を360度分照射するフルスキャンである上記第5の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0020】
第14の観点の発明は、
前記ファントムが、アクリル製であり、直径16cmまたは32cmの円柱形状を有しており、
前記表面付近の測定位置が、前記表面から0.5cm以上、2cm以下の深さの位置である上記第2の観点から第13の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0021】
第15の観点の発明は、
ファントムに対する放射線照射を行ったときに前記ファントムの表面付近の測定位置のみにおいて測定された放射線線量に基づいて、放射線断層撮影装置により撮影される撮影対象の被曝線量を計算する被曝線量計算方法を提供する。
【0022】
第16の観点の発明は、
前記ファントムに対するスキャンを行ったときの前記表面付近の測定位置における第1の放射線線量を測定しておき、該第1の放射線線量に基づいて前記被曝線量を計算する上記第15の観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0023】
第17の観点の発明は、
前記ファントムに対するスキャンを行ったときの前記表面付近の測定位置における放射線線量と、前記ファントムに対して該スキャンと同じ放射線ビーム幅で放射線照射を行ったときの該測定位置における放射線ビーム幅方向の線量プロファイルをそのピーク線量値で正規化したときのプロファイル面積とを測定しておき、前記表面付近の測定位置における放射線線量を前記プロファイル面積で除して成る第1の放射線線量に基づいて前記被曝線量を計算する上記第15の観点の被曝線量計算方法を提供する。
【0024】
第18の観点の発明は、
コンピュータを、
ファントムに対する放射線照射を行ったときに前記ファントムの表面付近の測定位置のみにおいて測定された放射線線量に基づいて、放射線断層撮影装置により撮影される撮影対象の被曝線量を計算する計算手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【0025】
第19の観点の発明は、
前記計算手段が、前記ファントムに対するスキャンを行ったときに前記表面付近の測定位置において測定された第1の放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第18の観点のプログラムに提供する。
【0026】
第20の観点の発明は、
前記計算手段が、前記ファントムに対するスキャンを行ったときに前記表面付近の測定位置において測定された放射線線量を、前記ファントムに対して該スキャンと同じ放射線ビーム幅で放射線照射を行ったときに該測定位置において測定された放射線ビーム幅方向の線量プロファイルをそのピーク線量値で正規化したときのプロファイル面積で除して成る第1の放射線線量に基づいて、前記被曝線量を計算する上記第18の観点のプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0027】
上記観点の発明によれば、被曝線量が実質的に最大となる、撮影対象の表面付近に対応する被曝線量を算出することができ、撮影対象のより正確な被曝評価を可能にする情報を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態によるX線CT装置の構成を概略的に示す図である。X線CT装置100は、操作コンソール(console)1、撮影テーブル(table)10、および走査ガントリ(gantry)20を備えている。
【0031】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、撮影対象である被検体の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0032】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部に搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0033】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有する。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線ビーム(beam)81をコリメート(collimate)するコリメータ(collimator)23と、被検体40を透過したX線ビーム81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力を投影データに変換して収集するデータ収集装置(DAS;Data Acquisition System)25と、X線コントローラ22,コリメータ23,DAS25の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。本体部20aは、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0034】
図2は、本実施形態によるX線CT装置における被曝線量計算処理に係る部分の機能ブロック図である。
【0035】
本実施形態によるX線CT装置は、
図2に示すように、スキャン条件設定部101、被曝線量計算部102、および画像表示制御部103を備えている。
【0036】
スキャン条件設定部101は、操作者の操作に応じて、本スキャンに用いる所望のスキャン条件を設定する。スキャン条件としては、撮影部位、スキャン範囲、X線管の管電圧、管電流、ガントリ1回転時間、スキャンモード(scan mode)などが挙げられる。スキャンモードがヘリカルモードの場合にはヘリカルピッチ、自動露出機構を用いる場合には画像ノイズ(noise)の指標値などもこのスキャン条件に含まれる。なお、これらのスキャン条件から、撮影対象に対して本スキャンを行う際の、設定管電圧set_KVと、管電流とX線照射時間との積である設定線量set_mAsが定まる。撮影部位は、例えば、「頭部/小児」、「体部」などから選択するものとする。
【0037】
被曝線量計算部102は、設定された所望のスキャン条件に基づいて、撮影対象の被曝線量を計算する。本例では、従来CTDI値conv_CTDI、従来DLP値conv_DLP、体表面CTDI相当値skin_CTDI、および体表面DLP相当値skin_DLPである計4種類の被曝線量を計算する。
【0038】
以下、被曝線量計算部102による計算処理について詳しく説明する。
【0039】
被曝線量計算部102は、従来CTDI値conv_CTDIの計算に用いる従来基準被曝線量conv_ref_Doseに係る第1のテーブルT1と、体表面CTDI相当値skin_CTDIの計算に用いる体表面基準被曝線量skin_ref_Doseに係る第2のテーブルT2とを記憶している。
【0040】
図3に、第1および第2のテーブルの一例を示す。
【0041】
第1のテーブルT1が表す従来基準被曝線量conv_ref_Doseは、線量(mAs)が所定の基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で、標準ファントムに対してX線管1回転分のスキャンを行ったときに得られたCTDIw値である。
【0042】
図4に、標準ファントムおよびX線センサの一例を示す。
図4(a)は標準ファントムを軸方向に見た図、
図4(b)は斜視図である。標準ファントム50は、例えばアクリル(acrylic)製であり、
図4に示すように、円柱形状を有している。また、標準ファントム50には、その中心部Aと、その表面付近にある深部B,C,D,Eとに円柱軸方向に沿った測定用の穴が設けられている。CTDIw値を求めるためのX線線量の測定は、通常、これら中心部Aや深部B,C,D,Eの穴に、長さ100mmの電離箱である棒状のX線センサ51を差し込んで、標準ファントム50におけるスキャン位置Zsをスキャンすることにより行われる。
【0043】
標準ファントム50には、主に、直径16cmの頭部ファントムと、直径32cmの体部ファントムの2種類がある。標準ファントム50の深部の位置としては、その表面から0.5cm以上、2cm以下の所定の深さの位置を考えることができるが、最も一般的なのは、表面から1cmの深さの位置である。
【0044】
従来基準被曝線量conv_ref_Dose、すなわちCTDIw値は、標準ファントム50の中心と表面の近傍位置とにおいて測定されたX線線量を基に求めることができ、次式のように定義される。
(数1)
従来基準被曝線量conv_ref_Dose
=CTDIw=1/3CTDI
100,center+2/3CTDI
100,edge,ave (1)
【0045】
ここで、CTDI
100,centerは、標準ファントム50の中心部Aに棒状のX線センサ51を挿入して測定された単位スライス厚当たりのX線線量である。また、CTDI
100,edge,aveは、標準ファントム50の表面付近の測定位置である深部B,C,D,Eに棒状のX線センサ51を挿入して測定された単位スライス厚当たりのX線線量の平均値である。
【0046】
第1のテーブルT1は、
図3に示すように、標準ファントムの種類すなわちサイズ(size)と、この標準ファントム50をスキャンするときの管電圧との組合せによる条件と、その条件下で求められた従来基準被曝線量conv_ref_Doseとを、その条件ごとに対応付けて表したものである。
【0047】
一方、体表面基準被曝線量skin_ref_Doseは、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で、標準ファントム50に対してX線管1回転分のスキャンを行ったときに得られた、標準ファントム50の表面付近に対応するCTDI相当値である。
【0048】
この体表面基準被曝線量skin_ref_Doseを求めるためのX線線量の測定は、標準ファントム50の表面付近の測定位置である深部の穴に棒状のX線センサ51を差し込んで、標準ファントムをスキャンすることにより行われる。
【0049】
第2のテーブルT2が表す体表面基準被曝線量skin_ref_Doseは、標準ファントム50の表面付近の測定位置“のみ”において測定されたX線線量を基に求められるもので、本例では、次式のように定義する。
(数2)
体表面基準被曝線量skin_ref_Dose=CTDI
100,edge (2)
【0050】
ここで、CTDI
100,edgeは、標準ファントム50の表面付近の測定位置である深部において、長さ100mmの電離箱による棒状のX線センサ51を用いて測定されたX線線量である。ただし、ここでのCTDI
100,edgeには、標準ファントム50の表面付近の測定位置であって、測定されるX線線量が実質的に最大となる位置において測定されたものを用いることが望ましい。
【0051】
例えば、
図5に示すように、標準ファントム50をクレードル12上に載置してスキャンを行う場合には、X線81はクレードル12を通るときに強度が減弱するので、X線管21が最も近づく位置、すなわち標準ファントム50の最上の測定位置にある深部BにX線センサ51を挿入して測定されたものを用いるようにする。これにより、体表面CTDI相当値skin_CTDIとして、標準ファントム50の表面付近に対応する被曝線量のうち最大の被曝線量を求めることができ、撮影対象に対する被曝の過小評価を防ぐことができる。
【0052】
第2のテーブルT2は、
図3に示すように、標準ファントム50の種類(サイズ)と、この標準ファントム50をスキャンするときの管電圧との組合せによる条件と、その条件で求められた体表面基準被曝線量skin_ref_DOSEとを、その条件ごとに対応付けて表したものである。
【0053】
このように、被曝線量計算部102は、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で標準ファントム50をスキャンして求められた基準被曝線量を、そのときの管電圧、標準ファントムの種類、および、X線線量測定場所(中心&表面/表面のみ)ごとに記憶している。
【0054】
被曝線量計算部102は、まず、第1および第2のテーブルT1,T2に登録されている条件の中から、設定管電圧set_KVと同じか最も近い管電圧と、設定撮影部位set_objと大きさが近い方の標準ファントムの種類(サイズ)との組合せによる条件を特定する。次に、第1のテーブルT1を参照して、その特定された条件に対応する従来基準被曝線量conv_ref_Doseを読み出す。そして、この読み出された従来基準被曝線量conv_ref_Doseに、(設定線量set_mAs/基準線量ref_mAs)で表されるファクタ(factor)を乗じることにより、従来CTDI値conv_CTDIを算出する。
(数3)
従来CTDI値conv_CTDI=conv_ref_Dose・(set_mAs/ref_mAs) (3)
【0055】
また、被曝線量計算部102は、第2のテーブルT2を参照して、上記の特定された条件に対応する体表面基準被曝線量skin_ref_Doseを読み出す。そして、この読み出された従来基準被曝線量skin_ref_Doseに、(設定線量set_mAs/基準線量ref_mAs)で表されるファクタを乗じることにより、体表面CTDI相当値skin_CTDIを算出する。
(数4)
体表面CTDI相当値skin_CTDI=skin_ref_Dose・(set_mAs/ref_mAs) (4)
【0056】
なお、スキャンモードとしてヘリカルモードが設定されている場合には、数式(3),(4)で算出された値を、さらにヘリカルピッチhpで除することにより、従来CTDI値conv_CTDI、体表面CTDI相当値skin_CTDIをそれぞれ求める。ヘリカルピッチhpは、X線管1回転当たりにおける、被検体のX線管21に対する相対移動距離とX線ビーム幅との比である。また、スキャンモードとして可変ピッチヘリカルモードが設定されている場合には、数式(3),(4)で算出された値を、さらに時間加重加算によるヘリカルピッチ換算値hp′で除することにより、従来CTDI値conv_CTDI、体表面CTDI相当値skin_CTDIをそれぞれ求める。
【0057】
また、被曝線量計算部102は、算出された従来CTDI値conv_CTDIおよび体表面CTDI相当値skin_CTDIに、設定されたスキャン範囲の幅Lを乗じることにより、従来DLP値conv_DLPおよび体表面DLP相当値skin_DLPをそれぞれ求める。
【0058】
画像表示制御部103は、必要に応じて種々の画像や情報を画面に表示するよう、モニタ6を制御する。本例では、画像表示制御部103は、被曝線量計算部102により計算された被曝線量を、モニタ6の画面に表示させる。
【0059】
これより、本実施形態によるX線CT装置における動作について説明する。
【0060】
図6は、本実施形態によるX線CT装置における被曝線量計算処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
ステップ(step)S1では、操作者が、予め取得された被検体のスカウト(scout)像を参照しながらスキャン条件を入力する。スキャン条件設定部101は、入力されたスキャン条件を、本スキャンのスキャン条件として設定する。設定されるスキャン条件には、撮影部位、スキャン範囲、X線管の管電圧、管電流、スキャンモードなどが含まれる。これにより、設定管電圧set_KVや設定線量set_mAsなどが定まる。
【0062】
ステップS2では、被曝線量計算部102が、設定管電圧set_KVと同じか最も近い管電圧と、設定撮影部位set_objと大きさが近い方の標準ファントムの種類(サイズ)との組合せによる条件を特定する。
【0063】
ステップS3では、被曝線量計算部102が、第1のテーブルT1を参照して、その特定された条件に対応する従来基準被曝線量conv_ref_Doseを読み出す。
【0064】
ステップS4では、被曝線量計算部102が、この読み出された従来基準被曝線量conv_ref_Doseに、(設定線量set_mAs/基準線量ref_mAs)で表されるファクタを乗じることにより、従来CTDI値conv_CTDIを算出する。スキャンモードがヘリカルモードや可変ピッチヘリカルモードである場合には、ヘリカルピッチhpやヘリカルピッチ換算値hp′を考慮して算出する。
【0065】
ステップS5では、被曝線量計算部102が、第2のテーブルT2を参照して、その特定された条件に対応する体表面基準被曝線量skin_ref_Doseを読み出す。
【0066】
ステップS6では、被曝線量計算部102が、この読み出された体表面基準被曝線量skin_ref_Doseに、(設定線量set_mAs/基準線量ref_mAs)で表されるファクタを乗じるこ
とにより、体表面CTDI相当値skin_CTDIを算出する。スキャンモードがヘリカルモードや可変ピッチヘリカルモードである場合には、ヘリカルピッチhpやヘリカルピッチ換算値hp′を考慮して算出する。
【0067】
ステップS7では、被曝線量計算部102が、算出された従来CTDI値conv_CTDIおよび体表面CTDI相当値skin_CTDIに、設定されたスキャン範囲の幅Lを乗じることにより、従来DLP値conv_DLPおよび体表面DLP相当値skin_DLPをそれぞれ求める。
【0068】
ステップS8では、画像表示制御部103が、被曝線量計算部102により計算された被曝線量を、モニタ6の画面に表示させる。
【0069】
図7に、算出された被曝線量の表示例を示す。
【0070】
このような第1の実施形態によれば、被曝線量が実質的に最大となる、撮影対象の表面またはその近傍に対応する被曝線量を算出することができ、撮影対象のより正確な被曝評価を可能にする情報を提供することができる。
【0071】
なお、被曝線量の現行の提供方法は、国際電気標準会議(IEC: International Electro technical Commission)60601により定められているが、このような、撮影対象の表面に対応する被曝線量の情報を提供するという内容は規定されていない。
【0072】
しかしながら、撮影対象の表面に対応する被曝線量は、撮影対象における実施的な最大被曝線量を表し、かつ、放射線感受性の高い部位が存在する位置に対応する被曝線量を表すものである。そのため、本実施形態により提供される被曝線量の情報は、撮影対象の被曝評価を行う上で非常に価値が高い。
【0073】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、体表面CTDI相当値skin_CTDIを計算する際に、長さ100mmの電離箱による棒状のX線センサを用いて測定されたX線線量を用いている。この場合、計算された被曝線量は、z方向に平均化されており、被曝線量のz方向の分布は考慮されていない。
【0074】
本例では、被曝線量のz方向の分布も考慮し、体表面CTDI相当値として、標準ファントム50の表面付近に対応する被曝線量のうち最大の被曝線量を、より精度よく計算できるようにする。
【0075】
一般的に、長さ100mmの電離箱による棒状のX線センサ(例えば、RadCal社製放射線モニタRadcal9015)は、その出力から得られる線量値の精度は高いが、線量のz方向の分布までは測定が難しいという性質がある。一方、半導体による小型のX線センサ(例えば、RTI社製X線アナライザBarracuda)は、その出力から得られる線量値の精度は落ちるが、線量に対する線形性がよいという性質があり、線量のz方向の分布の測定には適している。
【0076】
そこで、本例では、これらのX線センサのそれぞれの利点を活かし、体表面基準被曝線量skin_ref_Doseを、以下のように定める。
【0077】
まず、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で、標準ファントム50に対してX線管1回転分のスキャンを行い、標準ファントム50の表面付近の測定位置におけるX線線量Vを測定する。X線線量Vの測定は、標準ファントム50の最上の測定位置である深部Bに、長さ100mmの電離箱による棒状のX線センサ51を挿入して行う。
【0078】
また、被曝線量のz方向での最大値を求めるため、同じ標準ファントムに対して当該スキャンと同じX線ビーム幅でX線照射を行い、当該表面付近の測定位置と同じ位置におけるz方向の線量プロファイルPFを測定する。
【0079】
例えば、標準ファントム50の表面付近の測定位置の深部Bに、線量を検出する小型の半導体センサを挿入し、クレードル12に載置する。X線管21は、ビュー角度0度つまり最上に配置する。そして、クレードル12を少しずつz方向に移動させながら、X線管21からその標準ファントム50に対するX線ビーム照射を繰り返し行い、半導体センサの出力をサンプリング(sampling)する。サンプリングした値は、横軸をz方向の座標とするグラフにプロットする。これにより、
図8に示すような線量プロファイルPFが求められる。
【0080】
なお、線量プロファイルPFを精度よく求めるには、サンプリングするz方向の間隔を、十分小さくする必要があり、例えば、0.5mm以内である。また、線量プロファイルPFは、例えば、X線ビームの中心からz方向に±5cm分で、計10cm分を測定する。
【0081】
また、線量プロファイルPFは、X線管21を、互いに異なる複数のビュー角度に変えて、その都度、上記の方法で測定された線量プロファイルを平均化したものとしてもよい。
【0082】
線量プロファイルPFが測定できたら、
図9に示すように、これをそのピーク線量値が1になるように正規化して、正規化済み線量プロファイルPFnormを生成し、この正規化済み線量プロファイルPFnormのプロファイル面積Snormを求める。
【0083】
(数5)
Snorm=Σw・D(Z) (5)
【0084】
ここで、wは、z方向のサンプリング間隔(単位はcm)、D(Z)は、正規化済み線量プロファイルPFnormにおける座標ZでのX線線量(相対値)である。
【0085】
ところで、先に測定したX線線量Vは、z方向に分布したX線線量を積分した値であるから、
図10に示すように、X線線量Vは、線量プロファイルPFの面積と一致する。したがって、面積標準ファントム50の表面に対応する被曝線量のうちz方向においても最大となる被曝線量(以下、z方向最大表面被曝線量という)をZPSDとすると、次の関係が成り立つ。
【0086】
(数6)
ZPSD:V=1:Snorm (6)
そこで、X線線量Vをプロファイル面積Snormで除して、z方向最大表面被曝線量ZPSDを求める。
【0087】
(数7)
z方向最大表面被曝線量ZPSD=V/Snorm (7)
【0088】
本例では、このz方向表面最大被曝線量ZPSDを、体表面基準被曝線量skin_ref_Doseとする。
(数8)
体表面基準被曝線量skin_ref_Dose=z方向表面最大被曝線量ZPSD (8)
【0089】
このような第2の実施形態によれば、体表面基準被曝線量を求める際に、標準ファントム50の表面付近に対応する被曝線量のz方向の分布も考慮して求めているので、体表面に対応する被曝線量のうち実質的に最大となる被曝線量としての体表面CTDI相当値を、より精度よく求めることができる。
【0090】
(第3の実施形態)
撮影対象は、通常、撮影テーブル10のクレードル12上に載置される。そして、X線は、クレードル12を通過する際に強度が減弱する。つまり、撮影対象の表面のうち、X線がクレードル12を通過しないで直接照射される上側の表面は、被曝線量が最も高くなる。
【0091】
スキャンタイプが、
図5に示すように、X線81を360度分照射するスキャン、すなわちフルスキャンである場合には、X線81は撮影対象(標準ファントム50や被検体40)の上側の表面に必ず照射される。そのため、この場合には、撮影対象の表面付近に対応する被曝線量のうち最大となる被曝線量は、上側の表面付近に対応する被曝線量となり、スキャンを開始するビュー角度によらない。
【0092】
しかしながら、スキャンタイプが、
図11に示すように、X線を360度未満分照射するパーシャルスキャン、例えば、ハーフスキャン(half scan)やセグメントスキャン(segment scan)などである場合には、スキャンを行うビュー角度範囲によっては、X線81は撮影対象(標準ファントム50や被検体40)の上側の表面付近に照射されるとは限らない。そのため、この場合には、撮影対象の表面付近に対応する被曝線量のうち最大となる被曝線量は、スキャンを行うビュー角度範囲に依存する。
【0093】
そこで、本例では、スキャンタイプがX線81を360度未満分照射するスキャンである場合には、スキャンを行うビュー角度範囲を考慮して、被曝線量を求めるようにする。
【0094】
例えば、第1の実施形態をベース(base)に考えてみる。スキャンタイプとして、フルスキャンとハーフスキャンのいずれかを設定するものとする。また、フルスキャン用の体表面基準被曝線量と、ハーフスキャン用の体表面基準被曝線量とを用意する。
【0095】
フルスキャン用の体表面基準被曝線量は、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で、標準ファントム50に対してフルスキャンを行ったときに、標準ファントム50の最上の測定位置において測定されたX線線量である。
【0096】
一方、ハーフスキャン用の体表面基準被曝線量は、線量(mAs)が基準線量ref_mAsであるスキャン条件下で、標準ファントム50に対して、所定のビュー角度から開始するハーフスキャンを行ったときに、標準ファントム50の表面付近の測定位置であって被曝線量が最大となる位置において測定されたX線線量である。この被曝線量が最大となる位置は、理論的に求めてもよいし、実際に複数の位置で測定を行って求めてもよい。なお、このハーフスキャン用の体表面基準被曝線量は、ハーフスキャンを開始するビュー角度ごとに複数求める。
【0097】
そして、このようなフルスキャン用の体表面基準被曝線量と、ハーフスキャンを開始するビュー角度ごとに求められた複数のハーフスキャン用の体表面基準被曝線量とを、標準ファントムの種類(サイズ)、管電圧ごとに求めて用意しておく。
【0098】
あとは、スキャン条件として設定されたスキャンタイプ、管電圧、撮影部位と、スキャンの開始が予定されるビュー角度とによる条件に対応する体表面基準被曝線量を読み出し、これに設定線量(mAs)に応じたファクタを乗じて、体表面被曝線量を算出する。
【0099】
なお、上記のハーフスキャン用の体表面基準被曝線量として、ハーフスキャンを開始するビュー角度を変えて測定された複数のX線線量を平均化したものを用いてもよい。この方法は、スキャンの開始が予定されるビュー角度が不明の場合、あるいは、考慮しない場合に有効である。
【0100】
このような第3の実施形態によれば、スキャンタイプがX線を360度未満分照射するパーシャルスキャンである場合にも、適正な体表面被曝線量を求めることができる。
【0101】
なお、発明の実施形態は、上記の各実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0102】
例えば、基準被曝線量を求める際に用いるファントムは、現在の主流であるアクリル製の円柱状標準ファントムに限定されず、これ以外の材質、形状のファントムであってもよい。また、ファントムの種類も、直径16cm、直径32cmの2種類に限定されず、他のサイズ、3種類以上であってもよい。
【0103】
また例えば、ファントムの表面付近に対応するX線線量を測定する方法は、X線センサをファントムの表面付近の測定位置である深部に配置する方法に限定されず、X線センサをファントムの表面に接するように配置する方法を用いてもよい。
【0104】
また例えば、上記の実施形態では、被曝線量として、単位スライス幅当たりの被曝線量を表すCTDI値あるいはCTDI相当値や、1検査全体の被曝線量を表すDLP値あるいはDLP相当値を算出・表示することを想定しているが、他の規定による値で算出・表示するようにしてもよい。
【0105】
また、発明の実施形態は、X線CT装置に代表される放射線撮影装置に限定されず、放射線撮影装置を構成するコンピュータを、上記の被曝線量計算部102として機能させるプログラムやこれを記憶する記憶媒体もまた実施形態の一例である。