特許第5780952号(P5780952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780952
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】光ファイバプリフォームを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/014 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   C03B37/014 Z
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-507442(P2011-507442)
(86)(22)【出願日】2009年4月30日
(65)【公表番号】特表2011-519336(P2011-519336A)
(43)【公表日】2011年7月7日
(86)【国際出願番号】US2009002630
(87)【国際公開番号】WO2009134385
(87)【国際公開日】20091105
【審査請求日】2012年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/125,984
(32)【優先日】2008年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ シー
(72)【発明者】
【氏名】リブロンド,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ジュディス イー
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/101456(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/052173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
C03B 8/00−8/04
C03B 19/12−20/00
C03B 37/00−37/16
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバプリフォームを調製する方法であって、
a)Geを含有する光ファイバプリフォームの内側部分をエッチングして、該プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程であって、前記光ファイバのエッチングされた部分上の残りの酸化物材料中に再堆積したGe含有化合物の汚染物を形成する1300℃から1700℃の間の温度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによるものである工程、および
b)残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、再堆積した前記Ge含有化合物の汚染物を除去する800℃から1600℃の間の温度の、少なくとも1種類のハロゲンガスと少なくとも1種類の酸素スキャベンジャーガスを含有する洗浄ガスを、前記プリフォームのエッチングされた部分に提供して、エッチングされた前記プリフォームを洗浄する工程であって、前記ハロゲンが塩素または臭素のいずれかであり、フッ素を含有しない工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記エッチングガスが、CF4、SF6、NF3、C26、C48、CHF3およびこれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記洗浄ガスが、Br2、Cl2、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、COCl2、および/または飽和、不飽和、環状または芳香族ハロ炭化水素、CxHyハロゲンz(ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、z>1)からなる群より選択される少なくとも1種類のガスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
(i)前記エッチングガスがSF6を含み、前記洗浄ガスがCOおよびCl2の内の少なくとも一方を含むか、または(ii)前記エッチングガスがSF6を含み、前記洗浄ガスがハロゲンガスを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記再堆積したGe含有化合物の汚染物がGeOxFyまたはGeOx(ここで、0≦x≦2、0≦y≦4、および0≦(2x+y)≦4)の層であり、前記洗浄ガスが酸素スキャベンジャーガスのCOを含み、前記ハロゲンガスがCl2であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記光ファイバプリフォームがエッチング工程前にある程度潰され、該プリフォームが内面と外面を有し、前記再堆積したGe含有化合物の汚染物が前記内面上にあることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項7】
前記プリフォームがエッチング工程前にある程度潰され、前記内面が10mm未満の内径を有することを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項8】
前記洗浄工程が1分間から120分間の長さであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
光ファイバプリフォームを調製する方法であって、
a)光ファイバプリフォームの内面をエッチングして、該プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程であって、残りの酸化物材料中にゲルマニウム含有化合物の汚染物層を形成する1300℃から1700℃の間の温度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによるものである工程、および
b)残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、少なくとも1種類の酸素スキャベンジャーガスおよび少なくとも1種類のハロゲンガスを含有する洗浄ガスを、前記プリフォームのエッチングされた内面に提供して、前記プリフォームのエッチングされた内面を洗浄する工程であって、前記ハロゲンがフッ素を含有しない工程、
を有してなる方法。
【請求項10】
(i)前記エッチングガスが標準状態で65立方センチメートル毎分(sccm)より大きい流量を有し、前記洗浄ガスが少なくとも25sccmの流量を有する、および/または(ii)前記洗浄工程の温度が800℃と1600℃の間にあることを特徴とする請求項記載の方法。
【請求項11】
前記エッチングガスが、CF4、SF6、NF3、C26、C48、CHF3およびこれらの組合せからなる群より選択され;前記洗浄ガスが、CO、CCl4、CH4、C26、プロパン、アセチレン、エチレン、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、COCl2、CxHyハロゲンz(ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、y+z=2x+2)、Br2、Cl2、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記エッチングガスが、CF4、SF6、NF3、C26、C48、CHF3およびこれらの組合せからなる群より選択され;前記洗浄ガスが、CO、CCl4、CH4、C26、プロパン、アセチレン、エチレン、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、COCl2、CxHyハロゲンz(ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、z>1)、Br2、Cl2、およびそれらの組合せからなる群より選択されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
光ファイバプリフォームを調製する方法であって、
残りの酸化物材料中にGeOx汚染物層を形成する1300℃から1700℃の間の温度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによって、Geを含有する光ファイバプリフォームをエッチングして、該プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程、および
残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、再堆積した前記GeOx汚染物層を除去する800℃から1600℃の間の温度で、洗浄ガスを用いて、前記プリフォームのエッチングされた部分を洗浄する工程であって、前記洗浄ガスが、CO、CCl4、CH4、C26、プロパン、アセチレン、エチレン、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、COCl2、CxHyハロゲンz(ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、y+z=2x+2)、Br2、およびCl2からなる群より、酸素スキャベンジャーおよびハロゲンが含まれるように1種類または2種類以上を組み合わせて選択されるガスを含む工程、
を有してなる方法。
【請求項14】
光ファイバプリフォームを調製する方法であって、
残りの酸化物材料中にGeOx汚染物層を形成する1300℃から1700℃の間の温度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによって、Geを含有する光ファイバプリフォームをエッチングして、該プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程、および
残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、再堆積した前記GeOx汚染物層を除去する800℃から1600℃の間の温度で、洗浄ガスを用いて、前記プリフォームのエッチングされた部分を洗浄する工程であって、前記洗浄ガスが、CO、CCl4、CH4、C26、プロパン、アセチレン、エチレン、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、COCl2、CxHyハロゲンz(ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、z>1)、Br2、およびCl2からなる群より、酸素スキャベンジャーおよびハロゲンが含まれるように1種類または2種類以上を組み合わせて選択されるガスを含む工程、
を有してなる方法。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、米国法典第35編第119条(e)の下で、2008年4月30日に出願された米国仮特許出願第61/125984号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、光ファイバプリフォームを調製する方法に関する。より詳しくは、本発明は、プリフォームの加工処理中にまたは特定の環境条件への曝露によって生成される望ましくないゲルマニウム含有化合物を除去または減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバは、通信分野において益々重要な役割を得ており、度々既存の銅線に取って代わっている。この通信の形態は、光ビームを光ファイバに通して送信することによって行われる。光ファイバの使用を成功した通信技術とするために、光ビームの干渉または通信中のその部分損失は最小でなければならない。通信に使用される光ファイバの製造は、多くの工程を含む、複雑かつ時間のかかるプロセスである。各工程は製造プロセスの別の地点で行われ、そこで、欠陥が製品に導入され得る。典型的に、光ファイバはコアとクラッドを備えている。コアは光を伝搬させるために用いられ、クラッドはコア内に光を収める(反射により)ために用いられる。コア内の欠陥(およびコアを形成するために使用される材料)は重要である。何故ならば、これらの欠陥は、光の伝搬を妨げて、ファイバを通る光の損失または減衰を生じさせ、したがって、増幅せずに光を伝搬させられる距離を減少させてしまうからである。
【0004】
光ファイバは、固結されたプリフォームからファイバを線引きすることによって、プリフォームから形成することができる。プリフォームは、多孔質または緻密なシリカ系材料がガラス管または棒材の内面および/または外面に堆積する;または多孔質シリカ系材料が、取外しできるセラミック棒材または管(すなわち、基体の棒材または管)の外面に堆積するプロセスにより製造できる。(多孔質ガラスプリフォームはここで、スートプリフォームと称される。)堆積したスート材料の層の数、堆積したスート材料の組成、およびスート材料が堆積する取外しできるセラミック棒材または管の表面は、製造すべきファイバのタイプに基づいて決定される。ファイバは、以下に限られないが、ステップ型マルチモード、クレーデッド型マルチモード、ステップ型シングルモード、分散シフト型シングルモード、または分散フラット型シングルモードファイバであってよい。プリフォームを形成するのに適したプロセスの例としては、外付け法(OVD)、気相軸付け法(VAD)、および内付け化学的気相成長法(MCVD)やプラズマ支援化学的気相成長法(PCVD)などの内付け気相成長法が挙げられる。次いで、OVD法により製造されたものなどの多孔質プリフォームは、炉内で緻密なガラスプリフォームに固結される。セラミック基体棒材が使用される場合、この棒材は、多孔質プリフォームが中心孔の開いた緻密なガラスプリフォームに固結される前に取り外される。緻密なプリフォームを、光ファイバに直接線引きしても、または最初に、プリフォームを光ファイバに線引きする前に、前線引き(redraw)炉内でさらに処理して開いた中心孔を潰しても差し支えない。潰されたプリフォーム、すなわち、中心孔が開いていないプリフォームは、プリフォームケインと称される。ある場合には、これらのケインは、コアプリフォームから始まるコアケインと称され;これらの場合において、コアケインは、典型的に、シリカ系材料(オーバークラッドと呼ばれる)が追加に堆積され、その後、シリカ系材料が多孔質形態にあるケイン上に堆積された場合には、固結工程が行われる。固結されたプリフォームの中心孔を潰す工程には利点がある。何故ならば、緻密なガラス棒材は、光ファイバの光伝搬コアとなる内層(すなわち、中心線)を汚染せずにより容易に貯蔵できるからである。ある場合には、プリフォームの開いた中心孔をエッチングして、ガラスまたはスートプリフォームの製造から生じるまたは固結中に生じる、プリフォームの欠陥を除去する。これらの欠陥は、そのようなプリフォームから線引きされる光ファイバのコアの中心での屈折率の偏りの原因となる。屈折率の偏りは、スパイク(spikes)またはディップ(dips)の形態を取り、ファイバの光学的性能を低下させ得る。
【0005】
光ファイバ製造における工程の内の1つは、プリフォームの内面(中心孔)をエッチングすることによって、堆積した材料の表面から不純物などの欠陥を除去することである。このエッチングは、潰されていないプリフォームに行っても、またはある程度潰されたプリフォームに行っても差し支えない。エッチング工程中、フッ素を含有するエッチングガスが中心孔に流されて、プリフォームの内面から、堆積した材料を除去する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光ファイバプリフォームを調製する方法であって、
a)残りの酸化物材料中に再堆積したGe含有化合物の汚染物を形成するのに十分な温度とガス濃度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによって、Geを含有する光ファイバプリフォームをエッチングして、プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程、および
b)残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、再堆積したGe含有化合物の汚染物を除去するのに十分な温度とガス濃度で、少なくとも1種類のハロゲンガスを含有する洗浄ガスを用いて、エッチングされたプリフォームを洗浄する工程を有してなる方法に関する。ハロゲンが塩素または臭素のいずれかであることが好ましい。ハロゲンガスがフッ素を含まないことが好ましい。
【0007】
ある例示の実施の形態において、洗浄ガスはさらに少なくとも1種類の酸素スキャベンジャーガスを含有する。
【0008】
ある実施の形態において、光ファイバプリフォームを調製する方法は、
a)残りの酸化物材料中にゲルマニウム含有(例えば、GeOx(0≦x≦2))汚染物層を形成するのに十分な温度とガス濃度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによって、光ファイバプリフォームをエッチングして、プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程、および
b)残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、少なくとも1種類の酸素スキャベンジャーガスおよび少なくとも1種類のハロゲンガスを含有する洗浄ガスを用いて、エッチングされたプリフォームを洗浄する工程、
を有してなる。ハロゲンガスがフッ素を含まないことが好ましい。
【0009】
ある実施の形態において、(i)エッチングガスは、CF4、SF6、NF3、C26、C48、CHF3およびこれらの組合せからなる群より選択され、(ii)洗浄ガスは、Br2、Cl2、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、COCl2、CO、CH4、C26、プロパン、アセチレン、エチレン、および/または飽和、不飽和、環状または芳香族ハロ炭化水素、CxHyハロゲンz(ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、z>1、あるいは、x≧1、y≧0、y+z=2x+2)からなる群より選択される。いくつかの例示の実施の形態によれば、不飽和または芳香族ハロ炭化水素または塩化物は、それぞれ、C4Cl8、C2Cl4、およびC6Cl6、並びにHも含有する化合物、例えば、C65Cl、およびそれらの組合せである。これらの実施の形態において、洗浄ガスはフッ素化合物を含有しない。
【0010】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかであるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含む、ここに記載された本発明を実施することによって、認識されるであろう。
【0011】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本発明の単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することが意図されていることが理解されよう。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれており、本明細書に包含され、その一部を構成する。これらの図面は、本発明をよりよく例示するのに役立ち、説明と共に、本発明の原理および動作を説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】開いた中心孔の固結/エッチング後であるが、洗浄または潰しの前の、コアプリフォームの中心部分の走査型電子顕微鏡(SEM)画像。この写真は、エッチング工程中に再堆積した、堆積材料(望ましくないGeOx層)を示している。
図1B図1Aのコアプリフォームの再堆積した材料の画像のエネルギー分散性x線(EDX)スペクトルを示すチャート。
図1C】中心孔が潰されていることを除いて、図1Aに示されたプリフォームと類似のプロセスにより製造された、潰されたコアプリフォームの一部分の中心部分の電子顕微鏡画像。この図は、中心線近くの再堆積したGeOx、および高濃度のGeおよび/またはCeO2により取り囲まれた、O2種へのGeOx分解により生じたクレータ(crater)(空所/種)を示している。
図2A】基体棒材の周りにシリカ系スートが堆積した、OVD法により製造されたガラスプリフォームの断面図
図2B】基体棒材が取り外された後の図2Aのガラスプリフォームの断面図
図2C】MCVD法により製造されたガラス管プリフォームの断面図
図3】MCVD法により製造された、ある程度潰された、エッチングされていないプリフォームの断面図
図4】洗浄前後のガラス管プリフォームの写真
図5】18質量%のGeO2を含有するシリカスートプリフォームの排ガス組成を示すグラフ(フーリエ変換赤外分光法、FTIRによる)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、例えば、ゲルマニウム(Ge)ドープトシングルモードまたはマルチモード光ファイバを製造するのに適した、完全に潰された光ファイバプリフォームを調製する方法に関する。
【0014】
OVD法により製造されたマルチモードファイバプリフォームは、所望のコアプロファイルを形成するためにセラミック基体棒材上へのスート堆積により製造される。スート堆積プロセスの一部として、スートの最初の数回の堆積(100μmから500μmのスート堆積物)は、比較的少量のゲルマニア(例えば、10〜18質量%のGeO2)を含むSiO2であり、その後、中心線近くに所望のGeO2−SiO2コアプロファイルを完成するために、多量(約2倍)のGeO2を含むSiO2スート堆積が行われる。次いで、基体棒材を取り外し、スートプリフォームを、ヘリウム雰囲気を含む固結炉内に配置し、乾燥させ、次いで、炉内で固結して、緻密なガラスコアプリフォームを形成する。次いで、プリフォームの中心線を、フッ素系化合物で気相エッチングして、最初の数回の堆積物を除去し、例えば、放物線プロファイルのGeO2−SiO2コアを有するプリフォームを生成する。(エッチング工程によりガラスを除去し、したがって、プリフォームの厚さが減少することに留意されたい。)しかしながら、SF6などのフッ素化合物でのエッチングによって元の欠陥が除去される場合でさえも、フッ素汚染によるさらに別の欠陥が、堆積した材料の表面に含まれる可能性がある。これにより、ファイバのコアの屈折率が減少するであろうが、その欠陥がなくなることは確実にない。
【0015】
中心線のエッチングプロセス後のある比較例において(洗浄工程が行われてない)、次いで、中心線を真空下で閉じ、コアケインを前線引き炉内で線引きした。エッチングプロセスは、シリカ−ゲルマニアガラスをエッチングにより除去することによって、中心線の開口を増加させることに留意されたい。コアケインを、追加のシリカスートクラッドでオーバークラッドし、炉内に配置し、乾燥させ、次いで、緻密なガラスの光ファイバプリフォームを形成するために、ヘリウムを含む雰囲気内で固結した。このプリフォームを線引き炉内に配置し、次いで、マルチモード光ファイバに線引きした。各固結工程後、プリフォームからヘリウムを除去するために、プリフォームを約12時間に亘り1000℃に保持した、アルゴンでパージした炉内に配置した。このプロセスには、以下の記載するような問題があることを発見した:
1. 中心線のエッチング(すなわち、ガラスプリフォーム管の内壁上のシリカ−ゲルマニアガラスをエッチングにより除去する工程)では、SF6およびO2を含有するガスを使用し、このエッチングプロセスで少量のシリカ−ゲルマニアガラス(最初の100μmから500μmのスート層に対応する)が除去され、以下の式1:
【化1】
【0016】
に示されるように、SiF4(気体)、SO2(気体)およびGeF4/GeOF2が形成される。
【0017】
2. ゲルマニウム含有化合物(例えば、GeF4/GeOF2)に加え酸素および/または熱が、還元されたGeOxFy(固体、0≦x≦2、0≦y≦4、および0≦(2x+y)≦4)に分解され、式2:
【化2】
【0018】
に示されるように、プリフォームの中心線上に堆積物(茶色/黄色/白色)が形成され得ることを発見した。それゆえ、再堆積したゲルマニウム化合物は、0≦x≦2であるGeOxFyまたはGeOxであろう。また、この再堆積したゲルマニウム含有材料のある程度が、微細粉末として現れ、中心線を布で擦ることによって、拭き去ることができることも分かった。再堆積したゲルマニウム化合物(GeOx堆積物などの)の供給源が、フッ素エッチングプロセス自体から生じるものと判定した。これらの堆積物がプリフォームとプリフォームの中心線表面の低温部分の近くに生じることも分かった。すなわち、フッ素系のエッチングガスは、ガラスプリフォームの中心線からSiO2とGeO2の両方をエッチングできるのに対し、フッ素のエッチング蒸気流からのゲルマニウム化合物の少なくともある程度は、プリフォーム表面上に固体物質として再堆積した。一旦、フッ素系のエッチングガスがプリフォーム中のGeO2と反応して、ガス(例えば、GeF4/GeOF2)になると、これらのゲルマニウム含有ガスは、気相中に残り、プリフォームの中心線から洗い流されて、炉から出ていくと予測されたので、これらの再堆積の問題は、予測されなかった。
【0019】
3. 中心線近くに形成されたゲルマニウム含有化合物の堆積物もいくつか問題を生じることも発見した:1)中心線上の屈折率の局部変化(実質的な屈折率変動は、プリフォームケインの屈折率プロファイルにおけるスパイク、ディップおよび/または水平域を含む)、特に、高屈折率スパイクにより、光ファイバの帯域幅が減少し得る;2)その後の前線引き工程中にx≧0であるときにプリフォームの中心線上のGeOxまたはFeOxFyが分解して(式3に示されるように)、プリフォームの中心線に捕捉されるある程度のO2種を形成し、転じて、これにより、そのプリフォームから線引きされたファイバの中心線に開いた空気線が形成された。さらに、プリフォームの開いた中心線上に再堆積したゲルマニウム化合物のある程度が気化し、再度、真空前線引きプロセス中の中心線を潰す最中にプリフォームの別の部分に再堆積したことが観察された(すなわち、この材料のある程度が、潰れるのが中心線の第1の部分であるので、プリフォームの底部から気化し、開いた中心線の上部の中心線の壁(内壁)に再堆積した)。それゆえ、再堆積したGe含有汚染物は、潰されたプリフォームとケインの様々な部分に沿って見つかった。その上、中心線上のこのGeOxまたはFeOxFyのある程度は、潰されたプリフォームおよびケイン自体には種を形成しないが、再堆積した中心線のGeOxが、中心線の酸素含有空気線を形成するファイバ線引きプロセス中に分解し、それゆえ、良好な品質の光ファイバの収率が低下してしまうことが分かった、
【化3】
【0020】
3)固結/エッチング炉の内壁並びにプリフォームの外側に、ファイバの破損を増加させ、信頼性を低下させるかもしれない、GeOxまたはGeOxFy粒子および堆積物が見つかった。
【0021】
図1A,1Bおよび1Cは、上述した問題のいくつかを示している。比較例において先に記載したように製造した、放物線プロファイルを有するマルチモードのシリカ系コアプリフォーム(36質量%のGeO2ドーパントのために、SiO2に対して+2%のデルタ屈折率)を分析した。その結果が図1A,1Bおよび1Cに示されている。より詳しくは、図1Aは、固結/エッチング後であり、エッチング工程後に洗浄工程も潰し工程も使用しなかった、このコアプリフォームの走査型電子顕微鏡すなわちSEM(ニューヨーク州、ソーンウッド所在のカール・ツァイス・SMT社(Carl Zeiss SMT, Inc.)からのZeiss1500シリーズの走査型電子顕微鏡)画像である(比較例1を参照)。図1Aは、コアプリフォームの断面のSEM写真であり、エッチング中に再堆積により生じたGeOx層(区域901(上面)および902(GeOx層の断面区域))を示している。この層は、少なくともいくつかの位置で、約20μm厚であった(図1Aの区域902)。プリフォームのエッチングされた部分の中心線のガラス質部分は、図1Aにおいて区域903により特定される。
【0022】
図1Bは、図1Aのコアプリフォームからの再堆積した材料のエネルギー分散性x線EDX分析を示しており、この層がGe含有化合物であることを示している(GeOx層、ここで、0≦x≦2)。
【0023】
図1Cは、中心線が潰されたことを除いて、図1Aに示されたものと同様のプロセスによって製造された、潰されたコアプリフォーム(シリカに対して+2%のデルタ屈折率、36質量%のGeO2)の中心部分の特徴付けられた電子線マイクロプローブ(マサチューセッツ州、ピーボディー所在のジェオルUSA社(JEOL USA Corp.)のJEOL8200 SuperProbe)画像である。これらの結果は、エッチングプロセスからの中心線上に再堆積したGeOx材料、およびGeOxのO2種への分解によって生じたクレータ(空所/種)を示している。これらの種におけるガス組成物は、単一の四極子形分圧真空計、モデルGIA522ガスアナライザ(gas inclusion analyzer)(独国、ブレーメン所在のインプロセス・インストルメンツ社(InProcesss Instruments))により別々に分析した;この種ガス組成物は、ほとんど純粋なO2であることが分かった。このガラス領域においてガラス形成プロセス中に均一な36質量%のGeO2が堆積して(中心線から少し離れた図1Cの区域904に見つかり)2%の屈折率デルタ(シリカに対して)を生じたが、意外なことに、ずっと高濃度のGeO2(例えば、図1Cにおいて、区域905,906,907,908において、それぞれ、62%,74%,81%および65%)がO2種(区域909の内側は、酸素種により生じたクレータである)の周りに存在し、それゆえ、この問題(高ゲルマニアおよび酸素種)の機構がエッチングプロセス自体から生じたことを示している。
【0024】
本発明の実施の形態によれば、これらのドーパントの変動により生じる屈折率変動を除去するための光ファイバプリフォームを調製する方法は、エッチング工程と洗浄工程の2工程を含む。
【0025】
例えば、光ファイバプリフォームを調製する方法は、
a)残りの酸化物材料中に再堆積したGe含有化合物の汚染物を形成するのに十分な温度とガス濃度でフッ素を含有するエッチングガスを含むガスを使用することによって、Geを含有する光ファイバプリフォームをエッチングして、プリフォーム上に堆積した酸化物材料の一部分を除去する工程、および
b)残りの堆積した酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに、再堆積したGe化合物汚染物(例えば、GeOxFy)を除去するのに十分な温度とガス濃度で、少なくとも1種類のハロゲンガスを含有する洗浄ガスを用いて、エッチングされたプリフォームを洗浄する工程を有してなり、フッ素の強力なエッチング特性のために、ハロゲンガスがフッ素を含有しない方法に関する。ハロゲンが塩素または臭素のいずれか、もしくはそれらの組合せであることが好ましい。
【0026】
洗浄工程の後に、中心孔をなくすために、必要に応じて、中心線に真空に引きながら(例えば、約1700℃から2200℃で)、潰す工程を行ってよい。
【0027】
例えば、いくつかの実施の形態によりGeドープトファイバプリフォームを製造する方法は、1)基体棒材上にGeO2−SiO2スートを堆積させ;2)基体棒材を取り外して中心孔14を形成し;3)スートプリフォームを固結炉内に配置し、このプリフォームを、Cl2を含む雰囲気内で乾燥させて、水分(すなわち、OH)を除去し;4)乾燥されたスートプリフォームを、開いた中心孔を有する緻密なガラスプリフォームに固結し;5)固結したプリフォームの中心孔の壁をエッチングガス(例えば、SF6/O2)でエッチングし;6)エッチングされたプリフォームの中心孔をハロゲン含有ガスで洗浄して、再堆積したGeOxを除去する(例えば、Cl2+Heにより)各工程を含み、この洗浄工程には、フッ素含有エッチングガスは使用されない。これらの工程後に、(i)中心孔を潰すための前線引き、(ii)シリカ系スートによりオーバークラッド形成、(iii)オーバークラッドの固結、および(iv)ファイバ線引きを行ってよい。
【0028】
さらに具体的に言うと、この方法は、(i)光ファイバプリフォームの開いた中心孔を潰してなくし、それゆえ潰されたプリフォームを形成し;(ii)潰されたプリフォームをガラスロッドに前線引きし;(iii)ガラスロッドにシリカ系スートでオーバークラッド形成して、オーバークラッド・プリフォームを形成し;次いで、オーバークラッドプリフォームを乾燥させ、次いで、乾燥したオーバークラッドプリフォームを固結し;(iv)オーバークラッドプリフォームから光ファイバを線引きする各工程を含んでよい。あるいは、光ファイバは、潰されたプリフォームから線引きされてもよい。
【0029】
好都合に、本発明を用いて、光ファイバのシングルモードとマルチモード両方のプリフォームを加工処理するのを補助することができ、ここで、ファイバは、少なくとも1種類のガラス質、結晶質または半結晶質の酸化物材料が従来の堆積プロセスを用いてプリフォーム上に堆積されるプロセスによって製造される。例えば、図2Aおよび2Bに示されるように、OVD法により製造されるマルチモードファイバプリフォームは、コアプロファイルを形成するために基体棒材15上の酸化物材料12(例えば、SiO2およびGeO2)のスート堆積により製造される。スート堆積プロセスの一部として、低レベルのゲルマニア(例えば、10から20質量パーセントのGeO2)を含むスートの最初の数回の堆積11(約100から500マイクロメートル)の後に、中心線の近くに所望のGeO2−SiO2コアプロファイルを提供するために、より多くの酸化物材料(例えば、より多くのゲルマニア、例えば、18から36質量パーセントのGeO2を含むSiO2)のスート堆積12が行われる。次いで、基体棒材5が取り外されて、プリフォームに孔または開口14(ここでは、中心孔とも称される)が形成され、スートプリフォームが炉内で、中心孔の開いた緻密なガラスプリフォームに固結される。例示のプリフォームは約20から約200mmの外径を有することが好ましい。開口14の直径が20mm未満、例えば、3mmから10mm、または4mmから5mmであることが好ましい。緻密なプリフォーム20は、光ファイバに直接線引きしても、またはプリフォームを光ファイバに線引きする前に前線引き炉内で開いた中心孔を潰すために、最初にさらに加工処理しても差し支えない。プリフォームまたは管20の中心線は、ファイバに線引きされる前に少なくともある程度潰されることが好ましい。潰されたプリフォームは、プリフォームケインと称される。ある場合には、これらのケインは、コアプリフォームから始まるコアケインと称され、これらの場合、コアケインは、典型的に、追加のシリカ系材料の堆積(オーバークラッドと称される)が行われ、その後、シリカ系材料が多孔質形態でケイン上に堆積されている場合には、固結工程が行われる。オーバークラッドプリフォーム20を光ファイバに線引きすることができる。
【0030】
あるいは、図2Cにより表されるように、本発明の別の実施の形態を用いて、ガラスまたは石英プリフォーム管10の内側に施された(例えば、内付け化学的気相成長法(MCVD)やプラズマ支援化学的気相成長法(PCVD)を用いて)堆積された酸化物材料12(例えば、SiO2およびGeO2)を調製して、プリフォームに孔または開口14が得られる。ここに記載された方法を用いて、様々なファイバ用途のために異なるコア材料をエッチングし、洗浄できることが考えられる。酸化物材料の潰しと堆積の前の例示のプリフォームは、約10mmから約60mmの内径、約12mmから約70mmの外径、および約1mmから約10mmの壁厚を有することが好ましい。
【0031】
堆積された材料12は、少なくとも一層の酸化物材料を含むが、例えば、数百層までの酸化物材料を含んでも差し支えない(例えば、グレーデッド型マルチモードファイバのためのプリフォームは、滑らかな放物曲線に近くするために、数百層までのガラス質酸化物を堆積させることによって製造される)。堆積された材料の厚さおよび堆積された材料の層の数(およびそれらの厚さと組成)は、以下に限られないが、例えば、ステップ型マルチモード、グレーデッド型マルチモード、ステップ型シングルモード、分散シフト型シングルモード、または分散フラット型シングルモードファイバを含む、プリフォームが使用されている光ファイバのタイプに依存する。しかしながら、堆積された酸化物材料の層の厚さは、一般に、約10μmから約10000μmである。
【0032】
上述したように、固結されたプリフォームまたはガラス管20を用いて、光ファイバを線引きしても差し支えない。管20が、ファイバに線引きされる前に、潰されることが好ましい。管20は、ガラスおよび堆積された材料の軟化点以上の温度で潰されることが好ましい。潰された管は、ここでは、コアケインとも称される。コアケインは、一般に、シリカ系材料の追加の堆積(オーバークラッドと呼ばれる)が行われ、その後、シリカ系材料が多孔質形態でケイン上に堆積された場合には、固結工程が行われる。オーバークラッドプリフォーム120を光ファイバに線引きしても差し支えない。
【0033】
図3に示されるような、管20(ガラス管)を潰す工程中に、製造工程と加工処理工程からの表面近くの堆積した材料中に存在するかもしれない表面欠陥に加え、堆積した材料の高揮発性成分(またはドーパント)は、蒸発するか、または使用した堆積材料12から移行するかもしれない。次いで、これらの揮発種は、潰し温度が高いために、堆積された材料のどこかに再堆積し、それによって、堆積された材料の表面に不均一な量のドーパントの領域16が形成されてしまうかもしれない。それらの中に二酸化ゲルマニウム(GeO2)がある。ドーパントの枯渇の正確な深さは、プリフォームを潰すまたはある程度潰すのに必要な加工処理条件による。
【0034】
プリフォームを完全に潰す前に、酸化物材料から表面のまたは表面近くの望ましくない堆積物または欠陥を除去するために、堆積された酸化物材料の表面がエッチングされるのは、プリフォームを潰すプロセス中、またはプリフォームをある程度潰した後であることが好ましい。プリフォームを潰すプロセス中またはある程度潰した後に(プリフォームを完全に潰した後ではなく)プリフォームをエッチングすることによって、堆積された材料にさらに欠陥が含まれる虞が低下する。プリフォームが、エッチングプロセスを始める前に、ある程度潰されていることがより好ましい。しかしながら、我々が発見したように、エッチングプロセスが、望ましくない種(例えば、GeOxFy、またはGeO2などのGeOx)の再堆積をもたらし、これが、中心線の屈折率のスパイク並びにプリフォーム中の中心線の種を生じさせ、そのプリフォームから線引きされたファイバの中心線に空気線が生じるかもしれない。これらのタイプの欠陥を有する光ファイバは、製造収率を相当低下させ得る。プリフォームが、エッチングプロセスを開始する前にある程度潰される場合、ある程度潰されたプリフォームの内径が約10mm未満であることが好ましく、約5mm以下がより好ましく、約3mm未満がさらに好ましく、約0.5mmから約2mmが最も好ましい。また、プリフォームの軸の全長に沿った内径(図示せず)が、プリフォームに渡り均一なエッチングを維持するのに役立つように、実質的に均一であることが好ましい。実質的に均一とは、プリフォームの内径が、プリフォームの軸の全長に沿って5%以下しか変動しないことを意味する。
【0035】
本発明の方法は、残りの酸化物材料中の汚染物層を形成するのに十分な温度とガス濃度でフッ素を含有するエッチングガスを使用することによって、最初に、堆積した酸化物材料を有するプリフォームをエッチングして、(i)プリフォームから酸化物材料のある程度および基体棒材上に元々堆積したシリカ系材料(プリフォームを製造するためにOVD法が使用された場合には)、または(ii)プリフォームから酸化物材料(プリフォーム20を製造するためにMCVD法またはプラズマ支援化学的気相成長法(PCVD)が用いられた場合)の一部分を除去する工程を含むことが好ましい。このエッチング工程は、シリカおよび/または堆積した酸化物材料の表面に渡りガスを流動させて、その材料の一部分を除去する工程を含む。エッチングガスは、適切な条件(例えば、温度および濃度)下で、化学作用により結晶質またはガラス質の酸化物材料を除去できるガスである。好ましいエッチングガスの例としては、以下に限られないが、CF4、SF6、NF3、C26、C48、CHF3、CClF3、CCl22、CCl3F、SiF4およびそれらの組合せが挙げられる。特に好ましい群のエッチングガスは、フッ素系ガス化合物である。エッチングガスが、CF4、SF6、NF3、C26、C48、CHF3、SiF4およびそれらの組合せからなる群より選択されることがより好ましい。このガスは、エッチングガスと共に使用できる、追加の非フッ素系ガスをさらに含んでも差し支えない。そのような好ましい追加のガスの1つは酸素である。エッチングガスの濃度およびガスが酸化物材料の表面に渡り流動する温度は、エッチングガスによる堆積された酸化物材料および/または汚染領域の除去速度に影響を与える。その温度とエッチングガスの濃度の組合せは、堆積された酸化物材料の急激なエッチング速度(除去速度)を可能にするのに十分であり、これは最適には、プリフォームの加工処理時間を減少させる。最初のエッチング工程に使用されるエッチングガスが、堆積された酸化物材料の表面に渡り標準条件下での少なくとも約25立方センチメートル毎分(「sccm」)の、ある実施の形態においては、少なくとも約50sccmの、他のある実施の形態においては、少なくとも約90sccmの流量を有することが好ましい。ガスが、酸素などの、エッチングガス流に加えられる追加のガスを含む場合、追加のガスの流量は、約60から約300sccm、ある実施の形態においては、約150から約250sccm、他のある実施の形態においては、約190から約210sccmであることが好ましい。ある実施の形態において、ヘリウム、窒素またはアルゴンなどの希釈搬送ガスがエッチングガス流に加えられ、これらの場合には、その流量は約200から約3000sccmであることが好ましい。エッチング工程中にプリフォームに接触するガスの温度は、約1700℃未満であり1300℃より高いことが好ましく、約1600℃未満(例えば、1350℃〜1575℃)がより好ましく、約1550℃以下(例えば、1350℃、1400℃、1475℃、1525℃)が最も好ましい。上述したように、エッチングガスではフッ素含有ガス(例えば、SF6とO2の組合せ)を使用し、エッチングプロセスで、例えば、式1に示されるように、SiF4(気体)、SO2(気体)、GeF4(気体)およびGeOF2(気体)を生成し、GeF4(気体)およびGeOF2(気体)などの、GeとFを含有する化合物を生成する。次いで、これらのガス(GeF4およびGeOF2)が、GeOxFyなどの還元されたFe含有化合物分解し、固結されたプリフォーム20の内壁にまたはそれに隣接して(すなわち、開口14に隣接して)堆積物(式2)を形成する。
【0036】
上述したように、これにより、プリフォーム20の中心線の近くに0≦x≦2であるGeOxの汚染物層が形成され、これは転じて、得られたプリフォームの、また最終的なこの材料から線引きされた光ファイバの屈折率プロファイル、および帯域幅などの対応する光学的性能を変化させる。また、中心線近くに形成されたGeOx堆積物は、前線引きとファイバ線引きにおけるGeOxの分解を生じさせて、プリフォームの中心線に捕捉されるOx種(高濃度のGeOx(例えば、60質量%〜90質量%のGeO2)により取り囲まれた)を形成し、これは転じて、そのプリフォームから線引きされたファイバの中心線に開いた空気線を形成し、それゆえ、良好な品質の光ファイバの収率を低下させ、固結/エッチング炉の内壁並びにプリフォームの外側にGeOx粒子および堆積物が見つかり、これはファイバの破損を増加させ、信頼性を低下させるかもしれないことも発見した。
【0037】
汚染層は、エッチングガスにより生じた、酸化物材料における任意の実質的に汚染の深さである。実質的な汚染は、本出願において、酸化物材料中のエッチングガスにより生じた汚染の結果として、屈折率または化学組成の変化が目立つ酸化物材料の区域として定義される。この汚染層は、酸化物材料の屈折率または厚さの変化を測定することによって、見つけてもよい。例えば、光ファイバプリフォーム20における汚染層の厚さは、0.1マイクロメートルより大きくて差し支えない(すなわち、0.2μm、1μm、5μm、20μm、または少なくとも100μm)。
【0038】
光ファイバプリフォームを調製する方法は、さらに、プリフォームから汚染層(例えば、再堆積したGeOx材料)を除去するのに十分な温度と洗浄ガス濃度で、ハロゲンおよび必要に応じての酸素スキャベンジャー(酸素スキャベンジャーは、酸素原子を含む種と反応して、その種から酸素原子を除去する材料である)を含有する洗浄ガスを用いて、プリフォーム20を洗浄する工程を含む。この洗浄工程は、これらの洗浄ガスを、堆積した酸化物材料の表面に渡り(開口14に通して)流動させる工程を含む。洗浄工程は、好ましくは1分間から約2時間に亘り、より好ましくは1時間以下に亘り、典型的には5から60分間に亘り(例えば、5分間、10分間、15分間、または30分間)、800℃≦T≦1600℃の温度(Tは、プリフォームと接触する洗浄ガスの温度である)で行われることが好ましい。
【0039】
中心線のエッチング後であって、前線引き前に、気相洗浄プロセスを使用することによって、この洗浄工程を用いて、固結されたプリフォーム20の中心線(および炉)から汚染層(例えば、再堆積したGeOx材料)の少なくとも一部分を、好ましくは全てを除去する。気相洗浄ガスは、ハロゲンおよび必要に応じての酸素スキャベンジャーを含む。以下に示された例示の実施の形態において、一酸化炭素が酸素スキャベンジャーとして使用され、塩素Cl2がハロゲンとして使用される。より詳しくは、COなどの酸素スキャベンジャーは酸素を除去するのに対し、ハロゲン(例えば、塩素Cl2などの)は、Ge含有種を気体に転化させ、次いで、CO2とGeCl4は、例えば、以下の式4に示されるように、炉から掃去される。
【化4】
【0040】
ある実施の形態において、ハロゲン含有ガス(例えば、Cl2またはBr2)は、ゲルマニウム含有材料(例えば、GeOxなどの)を気体に転化させ、その結果生成されたO2とGeCl4の気体が、例えば、以下の式5に示されるように、炉から掃去される。
【化5】
【0041】
他の酸素スキャベンジャーガスを使用してもよく(例えば、CH4、C26、プロパン、アセチレン、エチレンなど)、あるガスは、同じ分子内に酸素スキャベンジャーおよびハロゲンの両方を含有してもよい(例えば、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、COCl2、および/または飽和ハロ炭化水素および/または環状、不飽和または芳香族塩化物または臭化物、CxHyハロゲンz、ここで、ハロゲンはClまたはBrであり、x≧1、y≧0、z≧1;その例としては、C4Cl8、C2Cl4、およびC6Cl6、並びにHも含有する化合物、すなわち、C65Cl)。Cl2以外のハロゲンを使用してもよい。例えば、臭素Br2をCl2の代わりに使用してもよい。これらの実施の形態において、エッチングガスはフッ素化合物を含有しない。
【0042】
洗浄工程では、プリフォーム20をさらに汚染せずに材料が除去されるような速度で汚染材料(例えば、望ましくない、再堆積したGeOx)がそれによって除去される、ハロゲンガスと酸素スキャベンジャーガスの濃度および温度を使用する。したがって、洗浄ガスは、残りの酸化物材料を実質的にさらに汚染せずに汚染層/材料を除去するのに十分な温度とガス濃度でプリフォーム表面に施される。
【0043】
洗浄工程に使用される洗浄ガスは、各ガスについて、堆積した酸化物材料の表面に渡り標準条件下での少なくとも約25立方センチメートル毎分(「sccm」)の、ある実施の形態においては少なくとも約50sccmの、他のある実施の形態においては少なくとも約90sccmの流量を有することが好ましい。ある実施の形態において、エッチングガス流に、ヘリウム、窒素またはアルゴンなどの希釈搬送ガスが加えられる。これらの場合において、流量は約200から約3000sccmであることが好ましい。洗浄工程の温度は、800℃から1600℃の間にあることが好ましく、約1000℃から約1500℃の間(例えば、1000℃、1200℃、1400℃)がより好ましい。洗浄プロセスでは、固結/エッチング炉の内壁並びにプリフォームの外側に見つかる、ファイバの破損を増加させ、信頼性を低下させるであろうGeOxおよび他の堆積物も除去される。
【0044】
最後に、プリフォーム20がエッチングプロセス中に潰されている場合、このプロセスは、プリフォームを、次いで光ファイバに線引きできるガラスロッドに完全に潰す前に、そのようなプリフォームから生成される光ファイバの光透過率に影響を与えるであろうどのような欠陥もプリフォームの表面から完全に除去できるような様式で計画されることが好ましい。プリフォームがある程度潰される場合、次いで、この方法はさらに、プリフォームをガラスロッドに完全に潰す工程をさらに含み、このガラスロッドは、次いで光ファイバに線引きしても、またはさらに追加のシリカ系材料でオーバークラッドを形成し、次いで、光ファイバに線引きしても差し支えない。
【実施例】
【0045】
本発明を、本発明の具体例であることが意図されている以下の実施例によりさらに明白にする。
【0046】
実施例1−洗浄工程
管の内部にゲルマニウムおよび酸化ゲルマニウム(すなわち、GeOx)化合物が多量に再堆積したシリカ系のシリカプリフォーム管(図4、左側を参照)を、気相洗浄プロセスを使用することよって洗浄した。気相洗浄ガスは、ヘリウムの搬送ガスと共に、一酸化炭素COおよび塩素Cl2を含んだ。石英ライナを有する炉内にプリフォームを1時間に亘り1125℃の温度で吊り下げることによって、洗浄ガスを中心線の開口14並びにプリフォーム管の外側の周りに流した。SLPM(標準状態でのリットル毎分)で表された炉内への洗浄ガスの流量は以下のとおりであった:それぞれ、5.0/0.50/5.0SLPMのHe/Cl2/(10体積%のCOを含有するHe)、すなわち、ヘリウム中に4.8%のCOおよび4.8%のCl2。プリフォーム(すなわち、プリフォーム管)を室温まで冷まし、調査した。このプリフォームには、洗浄後に残留する再堆積したGeOxの証拠はなく、清浄な中心孔を示した(図4、右側)。洗浄温度を上昇させて、より少ないCOおよびCl2を使用することも可能である。
【0047】
実施例2−洗浄工程
管の内部にゲルマニウムおよび酸化ゲルマニウム(すなわち、GeOx)化合物が多量に再堆積した第2のシリカ系のシリカプリフォーム管を、気相洗浄プロセスを使用することよって洗浄した。気相洗浄ガスは、ヘリウムの搬送ガスと共に、一酸化炭素COおよび塩素Cl2を含んだ。直径が6インチ(約15cm)の、石英ライナを有する炉内に管を1時間に亘り1000℃の温度で吊り下げることによって、洗浄ガスを中心線の開口14並びに管の外側の周りに流した。SLPM(標準状態でのリットル毎分)で表された炉内への洗浄ガスの流量は以下のとおりであった:それぞれ、5.0/0.50/5.0SLPMのHe/Cl2/(10体積%のCOを含有するHe)、すなわち、ヘリウム中に4.8%のCOおよび4.8%のCl2。プリフォーム(すなわち、プリフォーム管)を室温まで冷まし、調査した。このプリフォームには、洗浄後に残留する再堆積したGeOxの証拠はなく、清浄な中心孔を示した。
【0048】
実施例3−エッチングおよび洗浄工程
同様の一連の実験を、以下のように、2%デルタ(シリカに対して)、36質量%のGeO2および放物線形状のプロファイルを有するコアプリフォームに行った。約0.5グラム/ccの密度を有するGeO2・SiO2スート、約7500グラムを、1メートル長の約12mmの直径を有する取り外しできるセラミック棒材(基体棒材)上にOVD法で堆積させて、コアスートプリフォームを製造した。次いで、基体棒材を取り外し、スートプリフォームを、1000℃に設定された石英ライナを有する炉内に配置し、次いで、ヘリウムおよび各々約1体積%の塩素ガスと酸素ガスを含む雰囲気中で乾燥させた。次いで、このスートプリフォームを、約1400℃〜1450℃に設定された高温区域を降下させることによって、ヘリウムを含む雰囲気中で緻密なガラスプリフォーム(中心孔を有する)に焼結した。次いで、プリフォームを高温区域に通して移動させながら、プリフォームの中心孔に約60分間に亘り、SF6+O2+He(それぞれ、約90、100、500sccm)を流動させることによって、このプリフォームの中心孔をこの温度で気相エッチングした。次いで、このプリフォームを、炉の上部に上昇させることによって、1000℃まで冷却した。次いで、約60分間に亘りプリフォームの中心孔にCl2+CO+He(それぞれ、約100、100、1900sccm)を流動させることによって、中心孔を洗浄した。この中心孔は開いたままである。プリフォームを室温まで冷まし、調査した。このプリフォームには、再堆積したGeOxの証拠はなく、清浄な中心孔を示した。
【0049】
実施例4−エッチングおよび洗浄工程
洗浄工程後に、中心孔を閉じてなくすために、プリフォームを、中心孔を真空に引きながら前線引き炉内で直径約25mmのケインに前線引きしたことを除いて、実施例3に記載されたものと同様のプロセスによって(すなわち、エッチング工程の後に洗浄工程を行った)、実施例3において製造したものと同様にコアプリフォームを製造した。緻密なガラスケインを屈折率について、顕微鏡により検査し、中心線に再堆積したゲルマニウム化合物も種もないことが分かった。
【0050】
実施例5−エッチングおよび洗浄工程
洗浄工程後に、中心孔を閉じてなくすために、プリフォームを、中心孔を真空に引きながら前線引き炉内で直径約25mmのケインに前線引きしたことを除いて、実施例3に記載されたものと同様のプロセスによって(すなわち、製造プロセスで、エッチング工程の後に洗浄工程を行った)、実施例3において製造したものと同様にコアプリフォームを製造した。緻密なガラスケインを屈折率について、顕微鏡により検査し、中心線に再堆積したゲルマニウム化合物も種もないことが分かった。次いで、1メートルのケインの内の1つをOVD旋盤に戻し、オーバークラッド付きスートプリフォームを製造するために、約0.5グラム/ccの密度を有するシリカスート、約3200グラムを堆積させた。次いで、このプリフォームを、石英ライナを有する固結炉に入れ、ヘリウムと約3体積%の塩素を含む雰囲気内において約1100℃で乾燥させ、次いで、これを約1450〜1500℃に設定された高温区域に通して降下させることによって、完全に緻密なプリフォームに焼結した。次いで、プリフォームを約1000℃に保持された、アルゴンでパージされた保持オーブン内に一晩配置して、溶解したヘリウムをガス抜きし、次いで、プリフォーム全体を、光検出器を備えた光ファイバ線引き装置で直径125マイクロメートルの光ファイバ(100kmより長い)に線引きして、ファイバ中の空気線の孔を判定した。このプリフォームから線引きされたファイバには空気線の孔はないことが分かり、したがって、洗浄工程で、光ファイバプリフォームから汚染物を除去することによって、酸素種およびそれに対応する空気線の孔の問題がなくなったことを示している。
【0051】
実施例6−エッチングおよび洗浄工程
洗浄工程後に、中心孔を閉じてなくすために、プリフォームを、中心孔を真空に引きながら前線引き炉内で直径約25mmのケインに前線引きしたことを除いて、実施例3において製造したものと同様のコアプリフォーム(しかしながら、1%のデルタ(シリカに対して)、約18質量%のGeO2および放物線形状のプロファイルを有する)を製造した(すなわち、製造プロセスで、エッチング工程の後に洗浄工程を行った)。緻密なガラスケインを屈折率について、顕微鏡により検査し、中心線に再堆積したゲルマニウム化合物も種もないことが分かった。次いで、1メートルのケインの内の1つをOVD旋盤に戻し、オーバークラッド付きスートプリフォームを製造するために、約0.5グラム/ccの密度を有するシリカスート、約5700グラムを堆積させた。次いで、このプリフォームを、石英ライナを有する固結炉に入れ、ヘリウムと約3体積%の塩素を含む雰囲気内において約1100℃で乾燥させ、次いで、これを約1450〜1500℃に設定された高温区域に通して降下させることによって、完全に緻密なプリフォームに焼結した。次いで、プリフォームを約1000℃に保持された、アルゴンでパージされた保持オーブン内に一晩配置して、溶解したヘリウムをガス抜きし、次いで、プリフォーム全体を、光検出器を備えた光ファイバ線引き装置で直径125マイクロメートルの光ファイバ(100kmより長い)に線引きして、ファイバ中の空気線の孔を判定した。このプリフォームから線引きされたファイバは、1000kmの光ファイバ当たり約7から8個の空気線の孔に相当する非常にわずかしか空気線の孔を有さないことが分かり、したがって、洗浄工程で、光ファイバプリフォームから汚染物を除去することによって、酸素種およびそれに対応する空気線の孔の問題が著しく低下したことを示している。
【0052】
実施例7−洗浄工程
図5は、18質量%のGeO2を含有し、約0.5グラム/ccの密度を有し、ヘリウム中に5%のCO+5%のCl2(両方とも体積の)を含む雰囲気内において1000℃で溶融石英管のライナを有する管型炉内で加熱された、シリカスートプリフォームの約5グラムの部分のFTIR(フーリエ変換赤外分光法)によって、排ガス組成が時間の関数としてモニタされた実験を示している。図5において、記号法は以下のとおりである:区域A1は、サンプルが25℃である間にヘリウムのみをプリフォームサンプルに通したとき;区域A2は、サンプルが25℃である間に5%のCO+5%のCl2を含むヘリウムをプリフォームサンプルに通したとき;区域A3は、サンプルが1000℃である間に5%のCO+5%のCl2を含むヘリウムをプリフォームサンプルに通したとき;区域A4は、サンプルを約5分間で25℃まで冷却した間に5%のCO+5%のCl2を含むヘリウムをプリフォームサンプルに通したとき;区域A5は、サンプルが25℃である間にヘリウムのみをプリフォームサンプルに通したときの実験の終わり。この実験において、排ガス流中には、SiCl4は検出されず、よって、スートプリフォームのSiO2部分はエッチングされなかったことを示している。この実験において示されたデータは、我々の反応の仮定を支持した:GeO2+CO+Cl2→GeCl4+CO2により、スートプリフォームからGeO2が選択的に除去された。
【0053】
比較例1−エッチング工程のみ
中心線のエッチング工程後に洗浄工程を行わなかったことを除いて、実施例3において製造したものと同様の、2%のデルタ(シリカに対して)、36質量%のGeO2および放物線形状のプロファイルを有するコアプリフォームを製造した。より詳しくは、約0.5グラム/ccの密度を有するGeO2・SiO2スート(2%のデルタ(シリカに対して)、36質量%のGeO2および放物線形状のプロファイルを有する)、約7500グラムを、1メートル長の約12mmの直径を有するセラミック基体棒材上にOVD法で堆積させて、コアスートプリフォームを製造した。次いで、基体棒材を取り外し、スートプリフォームを、1000℃に設定された石英ライナを有する炉内に配置し、次いで、ヘリウムおよび各々約1体積%の塩素ガスと酸素ガスを含む雰囲気中で乾燥させた。次いで、このスートプリフォームを、約1400℃〜1450℃に設定された高温区域を降下させることによって、ヘリウムを含む雰囲気中で緻密なガラスプリフォーム(中心孔を有する)に焼結した。次いで、プリフォームを高温区域に通して移動させながら、プリフォームの中心孔に約60分間に亘り、SF6+O2+He(それぞれ、約90、100、500sccm)を流動させることによって、このプリフォームの中心孔をこの温度で気相エッチングした。上述したように、この比較例においては、エッチング工程後に洗浄工程は使用しなかった。次いで、プリフォームを、炉の上部まで上昇させることによって、1000℃まで冷却した。中心孔は開いたままであった。このプリフォームを室温まで冷まさせ、検査した。このプリフォームは、図1Aおよび1Bに先に示されたように、汚染された中心孔および多量の再堆積したGeOxを示した。また、この再堆積した材料のある程度は、中心孔を布で擦ることによって拭き取れることも分かった。それゆえ、この比較例により、エッチング工程により、プリフォームおよびプリフォームの中心孔の表面上にゲルマニウム含有化合物が再堆積し、洗浄工程がなければ、これらのゲルマニウム含有化合物がこれらの表面上に残ったことが示された。この再堆積の結果、光ファイバプリフォームが汚染され、製造収率が低下する。それゆえ、この比較例は、低い製造収率の機構を判定するのに役だった。
【0054】
比較例2−エッチング工程のみ
中心線のエッチング工程後に洗浄工程を行わなかったことを除いて、実施例3において製造したものと同様のコアプリフォームを製造した。中心孔を閉じてなくすために、プリフォームを、中心孔を真空に引きながら前線引き炉内で直径約25mmのケインに前線引きした。緻密なガラスケインを顕微鏡により、屈折率について、検査し、中心線にいくつかの中心線種およびいくつかの再堆積したゲルマニウム化合物を有することが分かった。重ねて、エッチング工程後に洗浄工程は使用しなかった。次いで、1メートルのケインの内の1つをOVD旋盤に戻し、オーバークラッド付きスートプリフォームを製造するために、約0.5グラム/ccの密度を有するシリカスート、約3200グラムを堆積させた。次いで、このプリフォームを、石英ライナを有する固結炉に入れ、ヘリウムと約3体積%の塩素を含む雰囲気内において約1100℃で乾燥させ、次いで、これを約1450〜1500℃に設定された高温区域に通して降下させることによって、完全に緻密なプリフォームに焼結した。次いで、プリフォームを、アルゴンでパージされた保持オーブン内に配置し、約1000℃に一晩保持して、溶解したヘリウムをガス抜きした。次いで、プリフォーム全体を、光検出器を備えた光ファイバ線引き装置で直径125マイクロメートルの光ファイバ(100kmより長い)に線引きして、ファイバ中の空気線の孔の存在を判定した。このプリフォームから線引きされたファイバは、多くの長い空気線の孔を有し、その結果、このプリフォームから製造されたファイバの長さの約15%が中心線にある空気線の孔を含むことが分かり、それゆえ、洗浄工程を行わないと、酸素種およびそれに対応する空気線の孔の問題が、光ファイバプリフォームにおける中心線の汚染から生じ、製造収率が低下することを示している。
【0055】
比較例3−エッチング工程のみ
中心線のエッチング工程後に洗浄工程を行わなかったことを除いて、実施例6において製造したものと同様の、1%のデルタ(シリカに対して)、約18質量%のGeO2および放物線形状のプロファイルを有するコアプリフォームを製造した。中心孔を閉じてなくすために、プリフォームを、中心孔を真空に引きながら標準的な前線引き炉内で直径約25mmのケインに前線引きした。緻密なガラスケインを顕微鏡により、屈折率について、検査し、中心線にいくつかの中心線種およびいくつかの再堆積したゲルマニウム化合物を有することが分かった。次いで、1メートルのケインの内の1つをOVD旋盤に戻し、オーバークラッド付きスートプリフォームを製造するために、約0.5グラム/ccの密度を有するシリカスート、約5700グラムを堆積させた。次いで、このプリフォームを、石英ライナを有する固結炉に入れ、ヘリウムと約3体積%の塩素を含む雰囲気内において約1100℃で乾燥させ、次いで、これを約1450〜1500℃に設定された高温区域に通して降下させることによって、完全に緻密なプリフォームに焼結した。次いで、プリフォームを、アルゴンでパージされた保持オーブン内に一晩配置して、溶解したヘリウムをガス抜きし、次いで、プリフォーム全体を、光検出器を備えた光ファイバ線引き装置で直径125マイクロメートルの光ファイバ(100kmより長い)に線引きして、ファイバ中の空気線の孔を判定した。このプリフォームから線引きされたファイバは、多くの長い空気線の孔を有し、その結果、このプリフォームから製造されたファイバの長さの約10%が中心線にある空気線の孔を含むことが分かり、それゆえ、洗浄工程を行わないと、酸素種およびそれに対応する空気線の孔の問題が、光ファイバプリフォームにおける中心線の汚染から生じ、製造収率が低下することを示している。
【0056】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明に様々な改変および変更を行えることが当業者には明白であろう。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に含まれるという条件で、包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0057】
10 ガラス管
12 酸化物材料
14 孔または開口
15 基体心棒
20 プリフォーム
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5