特許第5780966号(P5780966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5780966-膜ベース型圧縮空気呼吸システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780966
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】膜ベース型圧縮空気呼吸システム
(51)【国際特許分類】
   A62B 7/10 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   A62B7/10
【請求項の数】30
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-540767(P2011-540767)
(86)(22)【出願日】2009年11月23日
(65)【公表番号】特表2012-511398(P2012-511398A)
(43)【公表日】2012年5月24日
(86)【国際出願番号】US2009065517
(87)【国際公開番号】WO2010068402
(87)【国際公開日】20100617
【審査請求日】2012年10月2日
【審判番号】不服2014-13408(P2014-13408/J1)
【審判請求日】2014年7月10日
(31)【優先権主張番号】12/332,709
(32)【優先日】2008年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505407807
【氏名又は名称】エスピーエックス・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】フォックス ティモシー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ホナス マーク エフ
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 加藤 友也
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−65175(JP,A)
【文献】 特開2004−267310(JP,A)
【文献】 特開平6−134246(JP,A)
【文献】 特開2003−340229(JP,A)
【文献】 米国特許第4746338(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜分離コンポーネントを有し、該膜分離コンポーネントが、
透過性部分および非透過性部分を有する膜と、
該膜を収容する膜ハウジングと、
膜に連結された膜供給入口導管と、
膜の非透過性部分に流体的に連結された非透過性ガス出口導管とを備え、
触媒フィルタコンポーネントを有し、該触媒フィルタコンポーネントが、
触媒床を収容するカートリッジと、
該カートリッジを触媒床ハウジング内に維持しかつ出口孔を有する2つのエンドピースと、
触媒床に連結され、前記非透過性ガス出口導管に流体的に連結された触媒入口導管と、
前記出口孔に連結された生成ガス出口導管とを備え、
触媒フィルタコンポーネントから膜の透過性部分へのスイープガス流連結を行うスイープ入口手段と、膜の透過性部分の表面をスイープガス流によりスイープした後に生じたスイープ排出物を排出する手段と、を更に有することを特徴とする呼吸空気浄化装置。
【請求項2】
前記スイープ排出物を排出する手段は、膜の透過性部分の表面からスイープ排出物を排出させる孔と、該孔から出たスイープ排出物を周囲の環境内に放出するベントブリーザとを含むことを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項3】
前記膜の透過性部分に流入するスイープガスを定量するスイープオリフィスを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項4】
前記膜分離コンポーネントの上流側に配置された少なくとも1つの前置フィルタを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項5】
前記膜ハウジング内のスイープ入口導管を更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項6】
非透過性生成ガスの一部を膜の非透過性部分から非透過性ガス出口導管に搬送するための、膜の中心部内のトランスファチューブを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項7】
前記触媒フィルタの下流側に配置された活性炭フィルタを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項8】
前記活性炭フィルタの下流側に配置された粒状フィルタを更に有することを特徴とする請求項6記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項9】
前記触媒フィルタは水分インジケータ装置を有していることを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項10】
前記触媒フィルタは、一酸化炭素モニタリング装置用の栓付きポートを有していることを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項11】
前記膜分離コンポーネントに取付けられたフィルタ装着ブラケットを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項12】
前記触媒フィルタコンポーネントに取付けられたフィルタ装着ブラケットを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項13】
前記スイープ入口チューブに流体的に連結されたスイープフィルタを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項14】
前記スイープフィルタは焼結青銅フィルタであることを特徴とする請求項12記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項15】
前記膜ハウジングには「T型」フィルタハウジングが組込まれていることを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項16】
嵌合型シールを形成する触媒床ハウジングと組合わせられるパイプねじ付き触媒フィッティングを更に有することを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項17】
前記触媒フィッティングのパイプねじとスイープ入口チューブとの間の連結を維持するためのアダプタフィッティングを更に有することを特徴とする請求項15記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項18】
一酸化炭素を実質的に含んでいないスイープガス流が、触媒フィルタコンポーネントから膜分離コンポーネントへと流れることを特徴とする請求項1記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項19】
一酸化炭素を含まないスイープガス流を有する呼吸空気浄化装置において、
膜分離コンポーネントを有し、該膜分離コンポーネントが、
透過性部分および非透過性部分を有する膜と、
を収容する膜ハウジングと、
フィードガスを呼吸空気浄化装置内に搬送する膜供給入口導管と、
膜コンポーネントから非透過性生成ガスを搬送する非透過性生成ガス出口導管とを備え、
一酸化炭素を二酸化炭素に変換する触媒フィルタコンポーネントを有し、該触媒フィルタコンポーネントが、
触媒床を収容するカートリッジと、
カートリッジを触媒床ハウジング内に維持しかつ触媒フィルタから触媒処理された出口ガスを搬送する出口を備えたエンドピースと、
非透過性生成ガスを触媒床内に導入する触媒入口導管とを備え、
触媒フィルタコンポーネントと膜の透過性部分とのスイープガス流連結を行うスイープ入口手段と、の透過性部分の表面をスイープガス流によりスイープした後に生じたスイープ排出物を排出する手段と、を更に有することを特徴とする呼吸空気浄化装置。
【請求項20】
スイープ排出物を排出する手段は、膜の透過性部分の表面からスイープ排出物を排出させる孔と、該孔から出たスイープ排出物を周囲の環境内に放出するベントブリーザとを含むことを特徴とする請求項19記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項21】
前記透過性部分に流入するガスを定量するスイープオリフィスを更に有することを特徴とする請求項19記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項22】
前記スイープ入口手段に流入するガスから粒子を除去するスイープフィルタを更に有することを特徴とする請求項21記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項23】
前記分離手段を収容する収容手段には「T型」フィルタハウジングが組込まれていることを特徴とする請求項19記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項24】
嵌合型シールを形成する触媒床ハウジングと組み合わせるパイプねじ付き触媒フィッティングを更に有することを特徴とする請求項19記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項25】
前記パイプねじ付き触媒フィッティングとスイープ入口手段との連結を維持するアダプタフィッティングを更に有することを特徴とする請求項24記載の呼吸空気浄化装置。
【請求項26】
呼吸空気浄化装置を使用する方法において、
膜分離コンポーネントを用いて圧縮空気流から水蒸気を除去する段階を有し、該水蒸気除去段階は、
圧縮空気流を呼吸空気浄化装置に搬送すること、
透過性部分および非透過性部分を有する膜を含む膜分離コンポーネントによって圧縮空気流の非透過性部分から透過性部分を分離すること、および
膜分離コンポーネントから非透過性ガスを搬送することからなり、
触媒フィルタコンポーネントを用いて非透過性ガスから一酸化炭素を除去する段階を有し、該一酸化炭素除去段階は、
触媒フィルタコンポーネントから触媒処理されたガスを搬送する出口孔を有するエンドピースを用いて触媒床ハウジング内にカートリッジを維持すること、および
カートリッジ内に収容された触媒床内に非透過性ガスを導入することからなり、
触媒処理されたガスを使用したスイープガス流を、スイープ入口導管を介して触媒フィルタコンポーネントから膜の透過性部分に搬送する段階と、膜の透過性部分の表面をスイープガス流によりスイープした後に生じたスイープ排出物を排出する段階と、を更に有することからなることを特徴とする呼吸空気浄化装置の使用方法。
【請求項27】
スイープ排出物を排出する段階は、膜の透過性部分の表面からスイープ排出物を孔を通して排出させ、該孔から出たスイープ排出物をベントブリーザを通して周囲の環境内に放出することとを含むことを特徴とする請求項26記載の呼吸空気浄化装置の使用方法。
【請求項28】
前記スイープ入口導管に流入するガスを定量する段階を更に有することを特徴とする請求項26記載の呼吸空気浄化装置の使用方法。
【請求項29】
前記触媒処理されたガスは、実質的に一酸化炭素を含んでいないことを特徴とする請求項26記載の呼吸空気浄化装置の使用方法。
【請求項30】
前記呼吸空気浄化装置は、前記膜分離コンポーネントを収容する「T型」フィルタハウジングを含むことを特徴とする請求項26記載の呼吸空気浄化装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは膜ベース型圧縮空気呼吸システムおよび呼吸方法に関し、より詳しくは、例えば、浄化された外部スイープ流を用いた膜セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
当業界では、空気呼吸システム、食品パッケージング、製薬研究所および集積回路製造を含む幾つかの用途を有する圧縮空気が、汚染物質および水蒸気を除去すべく処理されることが知られている。圧縮呼吸空気(Compressed Breathing Air: CBA)は、呼吸空気浄化システム(breathing air purification system:BAPS)により製造される。BAPSは2つの主な機能すなわち、(i)未処理空気から過剰水分を除去する脱水、および(ii)未処理空気から固体粒子、オイルエアロゾルおよび炭化水素蒸気を除去する浄化を行うべく用いられる。BAPSの浄化機能はまた、一酸化炭素を二酸化炭素に変換するように構成することもできる。
【0003】
可搬性を有する静止型BAPSは、浄化されたCBAをマスク、ヘルメットおよびフードに供給するのに使用できる。CBAシステムは、消防、サンドブラスト、スプレー塗装、流出化学物質の洗浄、溶接、研摩、パイプおよびタンクの洗浄、および未処理空気への反復露出が健康上の脅威をもたらす虞のある同様な活動を含む仕事に従事する作業者に、呼吸品質の空気を供給するのに使用される。連邦政府の規則は、CBAが、未処理の空気が瞬時の身体的不快感、反復暴露後の慢性中毒または長期暴露後の有害な急性の身体的症状を引き起こす環境内で使用されることを命じている。
【0004】
慣用のBAPSは、圧縮空気を脱水するのに、一般に、乾燥剤または冷凍乾燥技術を用いている。これらの両技術は殆ど可搬性がなく、作動させるには電気制御装置または複雑で高価な空気圧制御装置を必要とする。高度の可搬性を有しかつ製造コストが低く、(圧縮空気以外の)外部装置を必要とせず、同時に、圧縮空気から水、液体オイル、液体汚染物質、オイル蒸気、一酸化炭素および検出可能な臭気を除去できるBAPSを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、例えば乾燥剤乾燥機を用いた慣用のBAPSは、充分な作動をさせるのにスイープ(パージ)空気を必要とする。このスイープ空気が、空気の浄化前にシステム内の一箇所から取り入れられる場合には、スイープ空気に一酸化炭素のような致死的汚染物質が含まれることがある。スイープ空気は、次に、システムから直接環境内に追い出され、周囲を汚染する虞がある。システムの設置領域またはシステムの直接環境を汚染することなく、職業安全衛生法(Occupational Safety and Health Act (OSHA)による品質グレードDの呼吸空気を製造するBAPSを提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記要望は、本発明により大きい程度まで満たされ、本発明の一実施形態では、呼吸空気浄化システムを使用して、BAPSの設置領域を汚染しない膜スイープ排出流を有するOSHAによる品質グレードDの呼吸空気を供給できる。この改善されたBAPSは、膜ドライヤに、浄化された外部スイープ流を用いることにより達成される。スイープ入口は、スイープ入口流から一酸化炭素(CO)を除去する触媒フィルタ内での処理後の膜ドライヤの下流側に設けられる。
【0007】
本発明の例示実施形態では、一酸化炭素を含まないスイープ流を有する呼吸空気浄化装置が使用される。水蒸気は、透過性部分および非透過性部分を備えた膜と、該膜を収容する膜ハウジングと、膜に連結された膜供給入口導管と、膜の非透過性部分に流体的に連結された非透過性ガス出口導管とを有する膜ドライヤを用いて圧縮空気流から除去される。非透過性の生成ガスの一部を、膜の非透過性部分から非透過性ガス出口導管に搬送するのに、膜の中央部にトランスファチューブが使用される。或る実施形態では、膜分離コンポーネントを取付けるのにフィルタ装着ブラケットが使用される。外部スイープ流を可能にするため、膜ハウジングに「T型」フィルタハウジングが組込まれる。
【0008】
膜ドライヤの外側透過性部分を洗浄するのに使用されるスイープ流は、触媒フィルタから取り入れられる。触媒フィルタは、触媒床を収容するカートリッジと、該カートリッジを触媒床ハウジング内に維持しかつ出口孔を備えた2つのエンドピースと、触媒床に連結された触媒入口導管と、前記出口孔に連結された生成ガス出口導管とを有している。或る実施形態では、触媒フィルタは、水分インジケータと、使用者が一酸化炭素モニタリング装置を任意に付加できるようにする栓付きポートとを有している。
【0009】
例示実施形態では、スイープ入口チューブすなわち導管は、触媒フィルタコンポーネントから膜の透過性部分へのガス連結を行う。したがって、一酸化炭素を実質的に含まないスイープガス流が、触媒フィルタコンポーネントから膜分離コンポーネントへと流れる。呼吸空気浄化装置には、膜ハウジング内にスイープ入口導管を設けることもできる。呼吸空気浄化装置は更に、膜の透過性部分に流入するガスの量を定量するスイープオリフィスを有している。或る実施形態では、触媒フィルタコンポーネントを取付けるのにフィルタ装着ブラケットを使用している。本発明の或る実施形態では、焼結青銅フィルタのようなスイープフィルタがスイープ入口チューブに流体的に連結されている。例示実施形態では、パイプねじ付き触媒フィッティングが、嵌合型シールを形成する触媒床ハウジングおよび触媒フィッティングのパイプねじとスイープ入口チューブとの間の連結を維持するアダプタフィッティングと組合わせられる。
【0010】
本発明の或る実施形態では、圧縮空気が膜ドライヤ内で処理される前に圧縮空気を処理するのに、前置フィルタが使用される。BAPSは、膜分離コンポーネントの上流側に配置された少なくとも1つの前置フィルタを有している。呼吸空気浄化装置は、触媒フィルタの下流側に配置された活性炭フィルタと、該活性炭フィルタの下流側に配置された粒状フィルタとを更に有している。
【0011】
本発明の例示実施形態では、一酸化炭素を含まないスイープ流を有する呼吸空気浄化装置が提供され、該呼吸空気浄化装置は膜分離手段を有し、該膜分離手段は、透過性部分と非透過性部分とを分離する分離手段と、該分離手段を収容する収容手段と、フィードガスを呼吸空気浄化装置内に搬送する供給入口手段と、膜分離手段から非透過性生成ガスを搬送する非透過性生成ガス出口手段とを備えている。呼吸空気浄化装置は更に触媒フィルタ手段を有し、該触媒フィルタ手段は、触媒床を収容するカートリッジ手段と、該カートリッジ手段を触媒床ハウジング内に維持しかつ触媒フィルタ手段から触媒処理された出口ガスを搬送する出口手段を備えたエンドピース手段と、非透過性生成ガスを触媒床内に導入する触媒入口手段とを備えている。呼吸空気浄化装置はまた、触媒フィルタコンポーネントと膜の透過性部分とのガス連結を行うスイープ入口手段を有している。
【0012】
本発明の一実施形態では、呼吸空気浄化装置を使用する方法が、膜分離コンポーネントを用いて圧縮空気流から水蒸気を除去する段階を有し、該水蒸気除去段階は、圧縮空気流を呼吸空気浄化装置に搬送すること、圧縮空気流の非透過性部分から透過性部分を分離すること、および膜分離コンポーネントから非透過性ガスを搬送することからなる。この方法はまた、触媒フィルタコンポーネントを用いて非透過性ガスから一酸化炭素を除去する段階を有し、該一酸化炭素除去段階は、触媒フィルタコンポーネントから触媒処理されたガスを搬送する出口孔を有するエンドピースを用いて触媒床ハウジング内にカートリッジを維持すること、カートリッジ内に収容された触媒床内に非透過性ガスを導入することからなる。最後にこの方法は、触媒処理されたガスを、スイープ入口導管を介して触媒フィルタコンポーネントから膜の透過性部分に搬送する段階を有している。
【0013】
以上、本発明の或る実施形態を概略的に説明したが、本発明の詳細な説明を当業者がより良く理解できるように、特許請求の範囲の主題を形成する本発明の付加的実施形態を以下に記載する。
【0014】
この点に関し、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載しまたは図示する構成の細部およびコンポーネンツの配置に限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は、ここに説明するもの以外の実施形態で実施できかつ種々の方法で実施できる。また、本明細書並びに要約で使用される語句および用語は説明のためのものであって、制限的なものではないことを理解すべきである。
【0015】
当業者ならば、本発明が基づいている概念は、本発明の幾つかの目的を実施する他の構造、方法およびシステムを設計するベースとして容易に利用できることを理解できるであろう。したがって、特許請求の範囲の記載は、このような均等構造が本発明の精神および範囲から逸脱しない限りこれらの均等構造を含むものと理解することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一例示実施形態による呼吸空気浄化システムを示す平面図である。
図2図1の呼吸空気浄化システムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の例示実施形態は、呼吸空気浄化システム(BAPS)の設置領域の汚染を防止するのに使用できる。本発明によるBAPSは、よりコンパクトでかつ節電できる脱水方法を考慮に入れた膜ベース型である。本発明の例示実施形態は、スイープ空気を必要とする乾燥剤または膜のいずれかを使用する。例えば、膜繊維から水蒸気を脱着(desorb)するため、膜ドライヤは、乾燥した圧縮空気の一部を使用して、中空繊維の外側の透過性面から水蒸気を洗い流し、これにより水蒸気の膜をスイープする。本発明の例示実施形態では、スイープ空気は、乾燥空気が、致死的な一酸化炭素(CO)を二酸化炭素に変換する触媒床内で処理された後に、システムの一箇所から取り入れられる。この本質的にCOを含まないスイープ空気は、次に、周囲を汚染することなく、システムから直接環境内に安全に追い出される。
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。図1は、本発明の一実施形態による呼吸空気浄化システム(BAPS)10を示す平面図である。図1に示すように、膜ベース型BAPSの例示実施形態は、(i)主として水およびオイルのバルク液体を除去するための2つの入口前置フィルタ12a、12bと、(ii)圧縮空気の相対湿度を低下させるための膜ドライヤ15のような膜分離コンポーネントと、(iii)存在する全ての一酸化炭素を二酸化炭素に変換する触媒フィルタ20と、(iv)オイル蒸気および検出可能な臭気を吸着するための活性炭フィルタ25と、(v)同伴された全ての微細触媒または微細カーボンを捕捉するための粒子フィルタ30と、(vi)任意のフィルタ装着ブラケット32とを有している。
【0019】
図2は、図1の膜ベース型BAPS10を示す断面図である。膜ドライヤ15を用いた浄化圧縮空気は、汚染物質および水蒸気を除去しかつその露点(水蒸気成分を水に凝縮させるべく、一定気圧で冷却しなくてはならない空気の温度)をも低下させる。膜ドライヤ15は、相対湿度を3%以下に低下させるのに使用される。圧縮空気は、水蒸気を除去すべく特別設計された中空繊維の束を含む膜37を通って移動される。かくして、圧縮空気が膜37を通過すると、水蒸気が繊維の内面上に吸収され、膜の外側層に迅速に通される。膜束37の中心フィッティング39は、膜束37をそのハウジング60内で心出しする機能を有している。
【0020】
本発明の例示実施形態では、水蒸気および他の不純物を含有する圧縮空気は、入口流Isを通ってBAPSに流入する。圧縮空気が膜ドライヤ15内で処理される前に、慣用の前置フィルタを用いて圧縮空気を処理する。第1前置フィルタ12aは、高い液体負荷に耐えるように設計された粗いフィルタエレメント47aを有している。液体は、フロートドレン49aを通って前置フィルタ12aから排出される。流れは、次に第2前置フィルタ12bに流入し、該前置フィルタ12bは、液体および粒子を高効率で除去する。第2前置フィルタ12bはより細かいフィルタエレメント47bを有し、エアロゾルを除去できる。前置フィルタ12bからは、他のフロートドレン49bを通ってより多量の液体が排出される。第1前置フィルタ12aと第2前置フィルタ12bとの間のように、BAPSの異なるコンポーネンツの間にシールを形成するのにモジュラ連結キット50を使用できる。また、各前置フィルタ12a、12bは、前置フィルタエレメント47a、47bの交換を必要とする時期を表示するための差圧計53を有している。
【0021】
第2前置フィルタ12bを出た流れは、次に膜ドライヤ15の膜ヘッド55に流入する。圧縮空気は、膜ドライヤのボウルまたはシェル60内方に収容された膜ドライヤ束37を通過する。ヘリカルに巻回できる膜ドライヤ束37は水蒸気を除去できるように特別設計されており、本発明の一実施形態では中空繊維の束で構成されている。
【0022】
膜ドライヤの中空繊維37の内部と外部との間には水蒸気の分圧差が存在し、このため水蒸気は中空繊維37の外部に移動する。したがって、圧縮空気が膜繊維の内部を通過するとき、水蒸気が繊維壁の内面上に吸収され、かつ膜繊維37の外部へと繊維の壁を迅速に通過する。ドライヤ15は、中空膜繊維の内部と外部との間の水蒸気の分圧差により駆動される。ガス流を連続的に乾燥させるため、膜繊維37外側層は、後述のように、スイープ流を用いて水蒸気をパージ(スイープ)しなければならない。
【0023】
乾燥空気の大部分がトランスファチューブ65を通って上昇し、膜ヘッド55を通ってドライヤ15を出る。次に、生成乾燥空気が触媒フィルタ20に流入する。触媒フィルタ20は、酸素(O2)の存在下で一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に変換する。この変換の化学反応は、2CO+O2→2CO2である。触媒入口流は、該入口流からCOを除去するため、触媒フィルタ20で乾燥されなくてはならない。入口をモニタリングするため、水分インジケータ70が、触媒フィルタハウジング74のヘッド73に配置されている。水分インジケータ70は、流れが乾燥しているときは緑色であるが、水分が存在すると黄色に変化するインジケータゲルを用いて、触媒フィルタ20の入口流を試験する。乾燥流は、COを除去する触媒床75内に流入を続ける。エンドピース77は、触媒床75を包囲するカートリッジをハウジング79内に保持する。浄化された空気流は、底のエンドピース77内の出口孔を通って触媒床75から出る。次に、浄化された空気の大部分が触媒フィルタ20のヘッド73から出る。本発明の或る実施形態では、慣用のCOモニタリング装置(図示せず)を任意に付加できるように、触媒フィルタ20のヘッド73内に栓付きポート93を設けることができる。
【0024】
空気流は触媒フィルタ20のヘッド73を出て、活性炭フィルタ25に流入する。活性炭フィルタ25は、粒状活性炭が充填されたフィルタエレメント85を有している。このフィルタ25は、空気流から、検出可能な臭気、オイル蒸気および他の有機蒸気を除去するように設計されている。最後に、流れは粒子フィルタ30内に流入する。粒子フィルタ30は、前述の2つの濾過段階で流れに混入することがある全ての触媒微粉またはカーボン微粉を捕捉するように設計されたフィルタエレメント90を有している。粒子フィルタ30は、フィルタエレメントの交換を要する時期を表示するための差圧計53を有している。生成空気流は、出口流Osを通ってBAPSを出る。
【0025】
膜ドライヤ15のような中空繊維膜ガス分離装置では、スイープガスは、システムを駆動する圧力差を増大させるのに使用され、生成空気の乾き度を向上させ、かつかつ膜ドライヤ15の生産性を高める。膜ドライヤ15の脱水性能を維持するのに必要なスイープ空気は、触媒フィルタ20のハウジングの底部から取り入れられる。生成乾燥空気の小部分は、膜ドライヤ15の着脱可能なハウジングの底部と触媒フィルタ20の底部とを連結するスイープ入口チューブ35を通して導かれる。
【0026】
本発明の例示実施形態では、スイープ制御オリフィス41は、適当量のスイープ空気を定量するのに使用される。焼結青銅フィルタ45のようなスイープフィルタがスイープ入口チューブ35の触媒フィルタ側端部に配置されており、スイープ空気制御オリフィス41を詰まらせる可能性がある個体粒子が該オリフィス41に入ることを防止する。スイープセンターフィッティング95が、底束キャップ97と整合するように設計されている。スイープ空気はフィッティング95を通って流れ、次に膜束繊維37の外面99に沿ってスイープされる。触媒フィッティング102が触媒フィルタ20のハウジング74と組み合わされ、嵌合型シール104を形成する。フィッティング102のパイプねじと、スイープ入口チューブ35との間の連結を維持するのにアダプタフィッティング105を使用できる。
【0027】
スイープ排出物は、孔100を通って束37を出てベントブリーザ107へと下向きに流れ、該ベントブリーザ107はスイープ排出物を周囲の環境内に放出する。本発明の例示実施形態では、膜ドライヤ15は「T型」フィルタハウジング内に収容されている。T型と命名した理由は、フィルタハウジングがそのヘッドに入口導管および出口導管を有しかつフィルタハウジングの底部に取付けられた外部供給源からのスイープ空気を使用できる構成による。スイープ入口流は膜ドライヤ15内に再び流入する前に浄化されるので、スイープ排出物は、周囲の環境に放出されるときに実質的にCOを含んでおらず、このため、浄化されたスイープ排出物が環境を汚染することはない。
【0028】
本発明の多くの特徴および長所は詳細な明細書から明白であり、したがって、特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内に含まれる本発明のこれらの全ての特徴および長所をカバーするものである。また、当業者には多くの修正および変更が容易に明らかであるので、本発明は、図示しかつ説明した正確な構造に限定されるものではなく、したがって全ての適当な修正および均等物は本発明の範囲内に包含されるものである。
【符号の説明】
【0029】
10 呼吸空気浄化システム(BAPS)
12a、12b 前置フィルタ
15 膜ドライヤ(膜分離コンポーネント)
20 触媒フィルタ
25 活性炭フィルタ
30 粒子フィルタ
37 膜束繊維
53 差圧計
CBA 圧縮呼吸空気
Is 入口流
Os 出口流
図1
図2