特許第5780974号(P5780974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5780974-車両用スペアタイヤのハンガー構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780974
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】車両用スペアタイヤのハンガー構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 43/04 20060101AFI20150827BHJP
   B60R 25/34 20130101ALI20150827BHJP
【FI】
   B62D43/04 G
   B62D43/04 Z
   B60R25/34
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-18553(P2012-18553)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154831(P2013-154831A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2015年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】松下 和彦
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−90893(JP,U)
【文献】 実開昭51−65459(JP,U)
【文献】 実開昭58−164979(JP,U)
【文献】 実開平1−161886(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 43/04
B60R 25/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下面外部に格納される車両用スペアタイヤのハンガー構造であって、
前記スペアタイヤを下方から支持し、その一端部が前記車体に回動可能に軸支されたハンガー本体と、
該ハンガー本体の他端部に設けられた係合部と、
前記車体に支持され、前記係合部に係脱可能のボルト部材と、
該ボルト部材に螺着することにより前記ハンガー本体を介して前記スペアタイヤを格納時位置に固定するナット部材とを備え、
前記スペアタイヤが格納時位置にある状態で前記ボルト部材,ナット部材及び前記係合部の外周部を覆うカバー部材を前記ボルト部材に設け、
前記スペアタイヤが格納時位置にあるとき前記カバー部材の下縁は前記ナット部材の下端面より下方に位置している
ことを特徴とする車両用スペアタイヤのハンガー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の下面外部に露出させた状態で格納される車両用スペアタイヤのハンガー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の商用車においては、荷台のスペースを確保するために、スペアタイヤを車体の下面に外方に露出させた状態で格納する場合がある。例えば、特許文献1では、スペアタイヤを下方から支持するハンガー本体の一端部を車体床裏に回動可能に支持するとともに、該ハンガー本体の他端部に固定部を形成し、車体床裏に取り付けられたボルト部材を固定部に係合させ、該ボルト部材にナット部材をねじ込むことでスペアタイヤを固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−90893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のハンガー構造では、ボルト部材とナット部材との締結部分が車外に露出することから、雨水や泥の付着等によって錆が発生してナット部材が固着し易く、場合によってはスペアタイヤを取り出すことができなくなるおそれがある。この場合、ナット部材を無理に回すとボルト部材の車体取り付け部等が破損して脱落するという懸念もある。
【0005】
またボルト部材には防錆塗膜が施されているものの、ナット部材の着脱頻度によっては防錆塗膜が剥がれ易く、この点からも錆が発生し易い。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、雨水や泥の付着等の錆びによってナット部材が固着するのを防止でき、ひいてはスペアタイヤを確実に取り出すことができる車両用スペアタイヤのハンガー構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体の下面外部に格納される車両用スペアタイヤのハンガー構造であって、前記スペアタイヤを下方から支持し、その一端部が前記車体に回動可能に軸支されたハンガー本体と、該ハンガー本体の他端部に設けられた係合部と、前記車体に支持され、前記係合部に係脱可能のボルト部材と、該ボルト部材に螺着することにより前記ハンガー本体を介して前記スペアタイヤを格納時位置に固定するナット部材とを備え、前記スペアタイヤが格納時位置にある状態で前記ボルト部材,ナット部材及び前記係合部の外周部を覆うカバー部材を前記ボルト部材に設け、前記スペアタイヤが格納時位置にあるとき前記カバー部材の下縁は前記ナット部材の下端面より下方に位置していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るハンガー構造によれば、格納時位置にあるボルト部材,ナット部材及び係合部の外周部をカバー部材により覆ったので、締結部分に雨水が掛かったり、泥が付着したりするのを抑制でき、錆の発生によるナット部材の固着を防止できる。これによりパンク時等におけるスペアタイヤの取り出し作業を容易に行うことができる。
【0009】
また、格納時位置におけるカバー部材の下縁をナット部材の下端面より下方に位置させたので、ナット部材はカバー部材内に隠れて外部から見えることはなく、悪戯や盗難を防止できる。
【0010】
また前記カバー部材の下縁を、例えばナット部材を締め付ける治具の締結トルク規制位置に設定した場合には、治具がカバー部材の下縁に当接した時点で規定トルクとなることから、過度な締め付けを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1による車両用スペアタイヤのハンガー装置の側面図である。
図2】前記ハンガー装置の平面図である。
図3】前記ハンガー装置に配設されたカバー部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図3は、本発明の実施例1による車両用スペアタイヤのハンガー構造を説明するための図である。
【0014】
図において、1はスペアタイヤ2が格納された自動車の後部車体を示している。この後部車体1は、車両前後方向に延びる左,右のリヤサイドメンバ3,3の上面に車室又は荷室を形成するフロア部材(不図示)を配設した概略構造を有する。
【0015】
前記左,右のリヤサイドメンバ3間のフロア部材の下方には、エンジン動力を左,右の後輪4,4に伝達するアクスルハウジング5が配設され、該アクスルハウジング5の後側のフロア部材の下方には、燃料タンク6が配設されている。
【0016】
前記スペアタイヤ2は、前記後部車体1の燃料タンク6の底壁6aの下面に、外方に露出させた状態で格納されており、ハンガー装置10により着脱可能に支持されている。
【0017】
このハンガー装置10は、前記スペアタイヤ2を下方から支持するハンガー本体11と、該ハンガー本体11に設けられた係合部材12と、前記後部車体1に懸吊支持され、前記係合部材12に係脱可能のボルト部材13と、該ボルト部材13に着脱可能に螺着されたナット部材14とを備えている。
【0018】
また前記ハンガー装置10は、前記左のリヤクロスメンバ3の下面にブラケット17によりボルト締め固定され、該クロスメンバ3から下方に延びる棒状の支持部材18と、前記左,右のサイドメンバ3の後端部間に配設されたクロスメンバ19の車幅方向中央部に溶接固定され、該クロス部材19から下方に延びるフック部材20とを備えている。
【0019】
前記ハンガー本体11は、鋼管製の第1クロスハンガー11aと、該第1クロスハンガー11aに略直交するよう溶接等により固定された鋼管製の第2クロスハンガー11bとを有する。
【0020】
前記第1クロスハンガー11aは、前記スペアタイヤ2を囲む大略コ字形状をなしており、前記第2クロスハンガー11bは、スペアタイヤ2のホイール2aの開口部に大略沿う形状をなしている。
【0021】
前記第1クロスハンガー11aの長手方向外端部(一端部)11cは、前記支持部材18の下端部に回動ピン22を介して軸支されている。これによりハンガー本体11は、回動ピン22を中心にスペアタイヤ2を燃料タンク6の底壁6aに固定する格納時位置Aと、スペアタイヤ2を取り出す取出し時位置Bとの間で回動可能となっている。
【0022】
前記第1クロスハンガー11aの内端部(他端部)11dは、略直角をなすよう折り曲げ形成されており、該折り曲げ形成された内端部11dの下面に前記係合部材12が配置されている。
【0023】
この係合部材12は、前記ボルト部材13が係脱可能に係合する切欠き部12aを有する板金製のもので、前記内端部11dに溶接により固定されている。
【0024】
前記ボルト部材13は、係止孔13aが形成された懸吊部13bと、雄ねじが形成されたねじ部13cと、両者13b,13cの境界部に形成された大径状の鍔部13dとを有する。
【0025】
前記ボルト部材13は、前記係止孔13aを前記フック部材20に係止させることにより、該フック部材20に係脱可能にかつ揺動可能に懸吊支持されている。
【0026】
前記ナット部材14は、前記ボルト部材13のねじ部13cに下方から螺着されるねじ部14bと、このねじ部14bに一体形成された六角形の頭部14aとを有する。このナット部材14を下方から頭部14aに装着された締結工具24で締め付けることにより、ハンガー本体11と燃料タンク6の底壁6aとでスペアタイヤ2を格納時位置Aに挟持固定する。なお、前記ねじ部13cの長さは、前記固定状態で前記鍔部13dと係合部材12との間に少し隙間ができるように設定されている。
【0027】
また前記ナット部材14を少し弛めて係合部材12の切欠き部12aからボルト部材13を横方向に外し、ハンガー本体11を取出し時位置Bに回動させることによりスペアタイヤ2を取り出す。なお、前記ナット部材14を緩めてボルト部材13から取り外し、ハンガー本体11を下方に回動させても良い。
【0028】
前記ボルト部材13には、格納時位置Aにおけるボルト部材13のねじ部13c,ナット部材14及び係合部材12の外周部を覆うカバー部材25が配設されている。
【0029】
このカバー部材25は、大略釣り鐘形状をなす板金製のもので、前記ねじ部13c部分を上方から覆う傘部25aと、外周部を覆う筒状の側壁部25bとを有する。
【0030】
前記傘部25aには、前記懸吊部13bが挿通可能な挿通孔25cが形成されている。該挿通孔25cの周縁部は、前記鍔部13dに溶接によりに固定されており、この溶接によりカバー部材25とボルト部材13との間は水密にシールされている。
【0031】
前記側壁部25bには、前記第1クロスハンガー11aの内端部11dの上下方向回動を許容するスリット25dが切り欠いて形成されている。
【0032】
前記カバー部材25の側壁部25bの下縁25eは前記格納時位置Aにおける前記ナット部材14の下端面14a′より少し下方に位置するよう形成されている。
【0033】
また前記カバー部材25の下縁25eは、前記締結工具24の締結トルク規制位置に設定されている。これによりナット部材14を格納時位置Aまで締め付けると、前記下縁25eが締結治具24に当接することとなる。
【0034】
本実施例によれば、格納時位置Aにおけるボルト部材13のねじ部13c,ナット部材14及び係合部材12をカバー部材25により覆ったので、ねじ部13cとナット部材14との締結部分に水が掛かったり、泥が付着したりするのを抑制でき、錆の発生によるナット部材14の固着を防止できる。これによりパンク時等におけるスペアタイヤ2の取り出し作業を容易に行うことができる。
【0035】
本実施例では、格納時位置Aにおけるカバー部材25の下縁25eがナット部材14の下端面14a′より下方に位置するよう形成したので、ナット部材14はカバー部材25により隠れて外部から見えることはなく、悪戯や盗難を防止できる。
【0036】
本実施例では、前記カバー部材25の下縁25eを、ナット部材14を締め付ける締結工具24の締結トルク規制位置に設定したので、締結工具24がカバー部材25の下縁25eに当接した時点で規定トルクとなり、過度な締め付けを防止できる。
【0037】
なお、前記実施例では、ナット部材14を緩め、ボルト部材13からハンガー本体11を外して下方に回動させることによりスペアタイヤ2を取り外すようにしたが、ボルト部材13を車体に固定されたフック部材20から取り外し可能に構成し、該ボルト部材13と共にハンガー本体11を下方に回動させるようにしてもよく、このようにした場合はカバー部材25のスリット25dを不要に、又は小さくすることが可能であり、雨水や泥等の付着をより確実に防止できる。
【0038】
また、スペアタイヤ2を燃料タンク6の底壁6aに格納した場合を説明したが、本発明は、荷台の下面あるいはフロア部の下面に格納する場合にも勿論適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 後部車体
2 スペアタイヤ
10 ハンガー装置
11 ハンガー本体
11c 外端部(一端部)
11d 内端部(他端部)
12 係合部材(係合部)
13 ボルト部材
14 ナット部材
14a′ 下端面
25 カバー部材
25e 下縁
A 格納時位置
図1
図2
図3