(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2制御部は、前記砂層部の温度が前記第2目標温度から前記第1目標温度より低く前記第2目標温度より高い第3目標温度までの範囲に維持されるように、燃料供給量F2を制御する請求項1記載の流動床焼却炉。
前記第2制御部は、前記砂層部の温度が前記第2目標温度より低下すると、前記拘束条件に制限されることなく、前記第2目標温度より高い温度に上昇するように燃料供給量F2を制御する請求項1または2記載の流動床焼却炉。
前記第1燃料供給部は前記砂層部が静止状態のときの上面から砂層高さ1/2の範囲に配置され、前記第2燃料供給部は砂層高さ1/2より低い範囲に配置されている請求項1から3の何れかに記載の流動床焼却炉。
砂層部の上層に配置された第1燃料供給部と、前記砂層部の下層に配置された第2燃料供給部と、前記砂層部の底部に配置された空気供給部と、砂層上部から有機性汚泥を投入する汚泥投入部とを備え、炉内に形成される砂層部及びフリーボード部で有機性汚泥を焼却する流動床焼却炉の燃焼制御装置であって、
前記フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように前記第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御する第1制御部と、
前記砂層部の温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように前記第2燃料供給部への燃料供給量F2を制御する第2制御部と、を含み、
前記第2制御部は、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2を制御する燃焼制御装置。
砂層部の上層に配置された第1燃料供給部と、前記砂層部の下層に配置された第2燃料供給部と、前記砂層部の底部に配置された空気供給部と、砂層上部から有機性汚泥を投入する汚泥投入部とを備え、前記第1燃料供給部及び第2燃料供給部への燃料供給量を制御することにより、炉内に形成される砂層部及びフリーボード部で有機性汚泥を焼却する流動床焼却炉の運転方法であって、
前記フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように前記第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御する第1制御ステップと、
前記砂層部の温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように前記第2燃料供給部への燃料供給量F2を制御する第2制御ステップと、を含み、
前記第2制御ステップでは、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2が制御される流動床焼却炉の運転方法。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥を焼却するために流動床焼却炉が好適に用いられている。特許文献1には、砂層上部バーナと砂層下部バーナでなる上下2段のバーナを砂層部に設けるとともに、砂層部とフリーボード部のそれぞれに砂層温度センサおよびフリーボード温度センサを設けて、各温度センサの出力を指標として砂層下部バーナ及び砂層上部バーナを各々独立して制御する流動床焼却炉の炉内温度制御装置が提案されている。
【0003】
当該炉内温度制御装置によれば、砂層上部バーナへの燃料供給量を制御してフリーボードの温度を約850℃程度の高温に維持することで、ダイオキシン等の有害物質の発生を抑制するとともに、上記制御とは独立に砂層下部バーナへの燃料供給量を制御して汚泥の含水率等の性状変動による砂層温度の変化を抑制して安定的に汚泥を熱分解して燃焼させることができる。
【0004】
ところで、下水汚泥等の有機性汚泥には多量の窒素成分が含まれているため、有機性汚泥を焼却処理すると種々の窒素酸化物が生成されて大気中に放出されるようになる。これらの窒素酸化物のうち亜酸化窒素(N
2O)は、地球温暖化ガスとして知られている二酸化炭素(CO
2)の約310倍の温暖化効果をもたらすことが知られており、その削減が大きな課題となっている。
【0005】
そして、
図5に示すように、フリーボード部の温度を850℃から900℃まで高めると、汚泥中窒素(N)分の亜酸化窒素(N
2O)への転換率が5%にまで減少することが非特許文献1に開示されている。
【0006】
そこで、特許文献2には、砂層部に供給される空気量を低減して亜酸化窒素(N
2O)の発生量を減らし、フリーボード空間下部に供給される二次空気により高温燃焼させて亜酸化窒素(N
2O)の分解を促進し、フリーボード空間上部に供給される空気で完全燃焼を達成する多層燃焼流動床焼却炉が提案されている。
【0007】
しかし、特許文献2に記載された流動床焼却炉は、数百度の高温に余熱された空気を砂層部、フリーボード空間下部、フリーボード空間上部のそれぞれに供給するために長い距離の空気供給ダクトを多段に引き回して配置する必要があり設備コストが嵩むという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
設備コストを低減するという観点で、特許文献1に記載されたような流動床焼却炉を用いて、砂層上部バーナを制御することによりフリーボード部の温度を850℃から900℃に高めれば、亜酸化窒素(N
2O)の発生量を低減させることができるようになる。
【0011】
しかし、そのために化石燃料である補助燃料の使用量が増大し、それに伴い二酸化炭素(CO
2)の発生量も増大するという問題が発生する。尚、汚泥自体はバイオマスであり、その燃焼により発生する二酸化炭素(CO
2)は、温暖化ガスの規制対象ではない。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の発生量を抑制しながらも、設備コストの上昇を招くことなく、亜酸化窒素の発生量を効果的に低減することができる流動床焼却炉、燃焼制御装置、及び流動床焼却炉の運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による流動床焼却炉の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、炉内に形成される砂層部及びフリーボード部で有機性汚泥を焼却する流動床焼却炉であって、前記砂層部の上層に配置された第1燃料供給部と、前記砂層部の下層に配置された第2燃料供給部と、前記砂層部の底部に配置された空気供給部と、砂層上部から有機性汚泥を投入する汚泥投入部と、前記第1燃料供給部及び第2燃料供給部への燃料供給量を制御する燃焼制御装置とを備え、前記燃焼制御装置は、前記フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように前記第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御する第1制御部と、前記砂層部の温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように前記第2燃料供給部への燃料供給量F2を制御する第2制御部とを含み、前記第2制御部は、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2を制御する点にある。
【0014】
本発明者らは、鋭意試験研究を行なったところ、第1制御部によってフリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御するとともに、第2制御部によって砂層部の温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように第2燃料供給部への燃料供給量F2を制御し、さらに、第2制御部が拘束条件F2≦0.5F1を満たすように燃料供給量F2を制御することにより、亜酸化窒素(N
2O)の発生量を効果的に低減しながらも、全燃料供給量F1+F2を抑制できるバランスの取れた温度制御条件を見出すことができたのである。それによって化石燃料により生じる二酸化炭素(CO
2)発生量も抑制できるようになった。
【0015】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記第2制御部は、前記砂層部の温度が前記第2目標温度から前記第1目標温度より低く前記第2目標温度より高い第3目標温度までの範囲に維持されるように、燃料供給量F2を制御する点にある。
【0016】
第2制御部によって砂層部の温度が第2目標温度から第3目標温度の範囲に入るように制御すれば、安定的に拘束条件F2≦0.5F1を満たしながらも、投入される汚泥の含水率等の性状に変化に対応して、有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上に砂層温度を維持するための制御幅が確保できるようになる。
【0017】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記第2制御部は、前記砂層部の温度が前記第2目標温度より低下すると、前記拘束条件に制限されることなく、前記第2目標温度より高い温度に上昇するように燃料供給量F2を制御する点にある。
【0018】
砂層部の温度が第2目標温度より低下すると有機性汚泥の熱分解が進まず、燃焼不良を来たす虞がある。そのような場合には、拘束条件に制限されることなく燃料供給量F2を制御することによって、砂層温度を適正な温度に速やかに回復させることができる。
【0019】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記第1燃料供給部は前記砂層部が静止状態のときの上面から砂層高さ1/2の範囲に配置され、前記第2燃料供給部は砂層高さ1/2より低い範囲に配置されている点にある。
【0020】
フリーボード部の下部燃焼温度が第1目標温度以上に安定的に制御され、拘束条件F2≦0.5F1を満たしながら砂層温度が第2目標温度以上に安定的に制御されるために、静止状態の砂層部の上面から砂層高さ1/2の範囲に第1燃料供給部が配置され、砂層高さ1/2より低い範囲に第2燃料供給部が配置されることが好ましい。
【0021】
本発明による燃焼制御装置の第一の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、砂層部の上層に配置された第1燃料供給部と、前記砂層部の下層に配置された第2燃料供給部と、前記砂層部の底部に配置された空気供給部と、砂層上部から有機性汚泥を投入する汚泥投入部とを備え、炉内に形成される砂層部及びフリーボード部で有機性汚泥を焼却する流動床焼却炉の燃焼制御装置であって、前記フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように前記第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御する第1制御部と、前記砂層部の温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように前記第2燃料供給部への燃料供給量F2を制御する第2制御部と、を含み、前記第2制御部は、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2を制御する点にある。
【0022】
同第二の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、少なくとも前記第2制御部で実行される制御がファジー制御である点にある。
【0023】
砂層温度を制御する場合、汎用的なPID制御等の線形制御を用いると、有機性汚泥の性状変動等に起因して収束性が悪く安定的な制御が困難になるが、対象事象の特性を加味したファジー推論を用いるファジー制御を用いることにより、砂層部の温度を第2目標温度以上に安定的に制御できるようになる。特に、砂層部の温度を第2目標温度と第3目標温度の間に維持する場合に好適になる。
【0024】
本発明による流動床焼却炉の運転方法の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、砂層部の上層に配置された第1燃料供給部と、前記砂層部の下層に配置された第2燃料供給部と、前記砂層部の底部に配置された空気供給部と、砂層上部から有機性汚泥を投入する汚泥投入部とを備え、前記第1燃料供給部及び第2燃料供給部への燃料供給量を制御することにより、炉内に形成される砂層部及びフリーボード部で有機性汚泥を焼却する流動床焼却炉の運転方法であって、前記フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように前記第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御する第1制御ステップと、前記砂層部の温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように前記第2燃料供給部への燃料供給量F2を制御する第2制御ステップと、を含み、前記第2制御ステップでは、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2が制御される点にある。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の発生量を抑制しながらも、設備コストの上昇を招くことなく、亜酸化窒素の発生量を効果的に低減することができる流動床焼却炉、燃焼制御装置、及び流動床焼却炉の運転方法を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、有機性汚泥(以下、単に「汚泥」と記す。)の焼却設備Aが示されている。汚水処理設備で発生した汚泥は、スクリュープレス方式等の脱水機で脱水処理され、脱水ケーキ貯留サイロSに貯留された後、流動床焼却炉1に投入されて焼却される。当該流動床焼却炉1には、汚泥の投入量、流動用空気供給量、補助燃料供給量等を制御するための複数の制御部を備えた燃焼制御装置20が設けられている。
【0028】
流動床焼却炉1で生じた排ガスから廃熱を有効利用するために、流動床焼却炉1の煙道に沿って燃焼用空気予熱器3、白煙防止用空気予熱器4が配設され、これらによって燃焼排ガスの保有熱が回収される。
【0029】
さらに、下流側にガス冷却塔5、集塵機6が配置され、集塵機6で除塵された排ガスが、排煙処理塔7でアルカリ処理されてSOxやHClが除去され、白煙防止用の空気で加熱された後に煙突8から排気される。
【0030】
当該汚泥焼却設備Aは、例えば下水汚泥を生物処理する活性汚泥法や、生物処理して膜ろ過する膜分離活性汚泥法等の方式を採用した汚水処理設備に併設される。尚、本発明による汚泥焼却設備Aは、下水汚泥の焼却に限るものではなく、食品工場等で発生した汚水を浄化処理して発生した汚泥等の高含水率の有機性汚泥の焼却にも用いることが可能である。
【0031】
図2には、流動床焼却炉1の構成が示されている。流動床焼却炉1は、耐熱耐摩耗性特殊レンガやキャスタを内張りし、その外側に断熱材を配置した炉体を備えている。炉体の内部空間には、汚泥の燃焼領域となる砂層部1Aとフリーボード部1Bが構成されている。
【0032】
砂層部1Aの底部に流動用の空気供給部14となる複数の分散パイプが配置され、炉体の下部領域に滞留する砂が、ヘッダー管14Hを介して供給される流動用空気によって浮遊して流動床が形成される。流動ブロワBから供給される空気は燃焼用空気予熱器3で約550〜650℃に予熱された後にヘッダー管14Hに供給される。尚、通常は二次燃焼用空気供給部17を備えていないが、砂層部1A上部に二次燃焼用空気供給部17を備えている場合には、予熱空気の一部を二次燃焼用空気供給部17からフリーボード部1Bに供給してもよい。
【0033】
砂層部1Aの上層周囲に複数本の第1燃料供給部15となる砂中ガンが円周上に配置され、砂層部1Aの下層周囲に複数本の第2燃料供給部16となる砂中ガンが円周上に配置されている。それら砂中ガン15,16に供給される燃料供給量は電磁式のバルブV1,V2によって調整される。また、砂層部1Aに流動床の温度を検知する温度センサS2が設置され、フリーボード部1Bの下部にも温度センサS1が設置されている。さらに砂層部1Aの上部には汚泥投入部10が設けられている。
【0034】
第1燃料供給部15は、分散パイプ14の設置高さを基準に、砂層部1Aが静止状態のときの上面から砂層高さLの1/2の範囲L1に配置され、第2燃料供給部16は砂層高さLの1/2より低い範囲L2に配置されている。尚、流動状態に移行した砂層部1Aの高さは、静止状態の高さの約1.2〜1.5倍となる。
図2のハッチングされた領域が流動床を表している。
【0035】
炉体の下端にはテーパ状の排砂部11が設けられ、排砂部11の下方に設けられた砂コンベア18により搬出された流動砂は、選別機構19により異物が除去された後に砂投入部12から再投入される。
【0036】
炉の立上げ時に砂層部1Aの上部に設けた始動バーナ13が点火されるとともに、流動用の空気が供給され、さらに第1燃料供給部16及び第2燃料供給部15に補助燃料が供給される。第2燃料供給部15に供給される補助燃料により流動床の温度が700〜800℃に調整され、第1燃料供給部16に供給される補助燃料によりフリーボード部1Bの下部温度が850℃以上に調整される。補助燃料として重油が用いられるが、その他の化石燃料や消化ガスを用いることも可能である。
【0037】
炉が立ち上ると、汚泥投入部10から含水率80%前後の汚泥が投入される。投入された汚泥は流動床で有機性ガスに熱分解され、フリーボード部1Bで約850℃以上、具体的には850〜900℃の高温で有機性ガスが燃焼される。
【0038】
図5に示すように、フリーボード部1Bの温度が約850℃以上になると、汚泥に含まれる窒素由来の亜酸化窒素(N
2O)の発生量が極めて低い状態になる。
【0039】
燃焼制御装置20は、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の発生量を抑制しながら、汚泥に含まれる窒素由来の亜酸化窒素(N
2O)の発生量を低減するために、流動床焼却炉1を制御する。
【0040】
以下、燃焼制御装置20について詳述する。燃焼制御装置20は、CPUとCPUの動作プログラムが格納されたメモリ等を備えて構成されている。具体的な構成態様は特に限定されるものではなく、汎用のパーソナルコンピュータに燃焼制御用のアプリケーションプログラムをインストールされた態様であってもよいし、専用の制御用CPUに制御プログラムが組み込まれた態様であってもよい。
【0041】
図3に示すように、燃焼制御装置20は、フリーボード部1Bの下部に設置された温度センサS1の値が入力され、第1燃料供給部15の電磁バルブV1を駆動する駆動部を備えた第1制御部21と、砂層部1Aに設置された温度センサS2の値が入力され、第2燃料供給部16の電磁バルブV2を駆動する駆動部を備えた第2制御部22を備えている。
【0042】
さらに、図には示していないが、燃焼制御装置20は、温度センサS1,S2等の値に基づいて汚泥投入部10から炉内に投入される汚泥の量を制御する汚泥投入制御部等を備えている。二次燃焼用空気供給部17を備えている場合には、煙道に配置したNO
X濃度センサの値等に基づいて、二次燃焼用空気供給部17から供給される二次燃焼用空気量を制御する二次燃焼用空気供給制御部を備える場合もある。
【0043】
第1制御部21は、フリーボード部1Bの下部の温度目標値、ここでは850℃の値が記憶された制御温度記憶部(この値は入力部を介してオペレータが適宜変更設定可能である)と、PID演算部と、制御目標値記憶部を備えている。
【0044】
PID演算部は、所定周期で入力された温度センサS1の値と目標値850℃との差分値、微分値、積分値に基づいてPID演算を行ない、その結果得られた燃料供給制御量に対応する電磁バルブV1の目標開度を制御目標値記憶部に記憶する。駆動部は、制御目標値記憶部に記憶された目標開度に基づいて第1燃料供給部15の電磁バルブV1を駆動する。このような制御によって第1燃料供給部15から供給される燃料流量F1の値が決定される。
【0045】
第2制御部22は、砂層部1Aの温度に対する制御テーブルデータが記憶された制御テーブル記憶部と、ステップ制御演算部と、制御目標値記憶部を備えて構成され、砂層部の温度を700〜800℃の範囲に入るように制御する。
【0046】
ステップ制御演算部は、所定周期で入力された温度センサS2の値と制御テーブル記憶部に記憶された制御テーブルデータに基づいて、燃料供給制御量に対応する電磁バルブV2の目標開度を算出し、その値を制御目標値記憶部に記憶する。
【0047】
図4には、制御テーブルデータの一例が示されている。第2燃料供給部16に供給される現在の燃料流量F2が、拘束条件F2≦0.5F1を満たしている場合、温度センサS2から入力された砂層温度が730〜780℃の範囲であれば現状を維持し、780〜800℃の範囲であればステップ的に燃料流量F2を減らすように電磁バルブV2の目標開度を算出する。また、砂層温度が700〜730℃の範囲であればステップ的に燃料流量F2を増やすように電磁バルブV2の目標開度を算出する。
【0048】
制御テーブルデータに示された上下の矢印は、一本の場合に1ステップ(予め設定された燃料流量を示す)、二本の場合に2ステップ、三本の場合に3ステップ燃料流量F2を変化させること、上矢印は増加させ、下矢印は減少させること、また矢印の本数が多いほどその量が多いことを意味する。1ステップに対応する燃料流量F2の増加または減少量は、入力部を介してオペレータが適宜変更設定可能である。
【0049】
第2燃料供給部16に供給される現在の燃料流量F2が、拘束条件F2≦0.5F1を満たしていない場合、温度センサS2から入力された砂層温度が720〜730℃であれば現状を維持し、730〜800℃の範囲であればステップ的に燃料流量F2を減らすように電磁バルブV2の目標開度を算出する。また、砂層温度が700〜720℃の範囲であればステップ的に燃料流量F2を増やすように電磁バルブV2の目標開度を算出する。
【0050】
駆動部は、制御目標値記憶部に記憶された目標開度に基づいて第2燃料供給部16の電磁バルブV2を駆動する。このような制御によって第2燃料供給部16から供給される燃料流量F2の値が決定される。
【0051】
即ち、燃焼制御装置20は、フリーボード部1Bの下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度(850℃)以上になるように第1燃料供給部15への燃料供給量F1を制御する第1制御部21と、砂層部1Aの温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度(700℃)以上になるように第2燃料供給部16への燃料供給量F2を制御する第2制御部22とを含み、第2制御部22は、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2を制御するように構成されている。
【0052】
また、第2制御部22は、砂層部1Aの温度が第2目標温度(700℃)から第1目標温度(850℃)より低く第2目標温度より高い第3目標温度(800℃)までの範囲に維持されるように、燃料供給量F2を制御するように構成されている。
【0053】
さらに、第2制御部22は、砂層部1Bの温度が第2目標温度(700℃)から低下すると、拘束条件に制限されることなく、第2目標温度より高い温度に上昇するように燃料供給量F2を制御するように構成されている。
【0054】
拘束条件とは、第2燃料供給部16に供給される燃料流量F2が、第1燃料供給部15に供給される燃料流量F1の1/2以下に制限するという条件で、この条件を満たしながら上述の目標温度に維持されるように補助燃料が供給されると、亜酸化窒素(N
2O)の発生量を効果的に低減しながらも、全燃料供給量F1+F2を抑制できるようになるのである。
【0055】
そして、このような制御を効果有らしめるためには、第1燃料供給部15が、分散パイプの設置高さを基準に、砂層部1Aが静止状態のときの上面から砂層高さLの1/2の範囲L1に配置され、第2燃料供給部16は砂層高さLの1/2より低い範囲L2に配置されていることが好ましい。
【0056】
本発明による流動床焼却炉の運転方法は、フリーボード部1Bの下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように第1燃料供給部15への燃料供給量F1を制御する第1制御ステップと、砂層部1Aの温度が有機性汚泥を熱分解可能な第2目標温度以上になるように第2燃料供給部16への燃料供給量F2を制御する第2制御ステップとを含み、第2制御ステップでは、拘束条件F2≦0.5F1を満たすように、燃料供給量F2が制御される。
【0057】
図6(a)には、本発明による運転方法(拘束条件を満足)と、上述した拘束条件無しに第1制御部と第2制御部がそれぞれ独立して砂層部温度及びフリーボード部下部温度をPID制御する方法で、フリーボード部下部温度と炉出口温度の関係及び亜酸化窒素の排出量を対比した特性図が示されている。ともに、砂層部温度の目標を約750℃、フリーボード部下部温度の目標を約850℃に設定している。
【0058】
右端のグレースケールは亜酸化窒素の排出量(kg-N
2O/t)を示し、矢印は環境省の850℃における基準値(0.645kg-N
2O/t)を示す。左のグラフで実線の円で囲まれた領域が基準値を満たす下限領域で、それより炉出口温度が低下し、或いはフリーボード下部温度が低下する領域では、基準値以上の亜酸化窒素が排出されることが示されている。
【0059】
そして、左のグラフで破線の長円で囲まれた領域が本発明による燃焼制御の特性、二点鎖線の長円で囲まれた領域が拘束条件無しに第1制御部と第2制御部がそれぞれ独立して砂層部温度及びフリーボード部下部温度を制御した場合の特性である。
【0060】
同じ炉出口温度に対するフリーボード部の下部温度の特性を比較すると、本発明による燃焼制御の方が高い温度が得られていることが判る。また、同じフリーボード部の下部温度に対する炉出口温度の特性を比較すると、拘束条件無しに第1制御部と第2制御部がそれぞれ独立して砂層部温度及びフリーボード部下部温度を制御した場合の方が、炉出口温度が高いことが判る。拘束条件を課していない場合には入熱量が多くなり、補助燃料の使用量が多くなっていることが判る。
【0061】
このことから、本発明による燃焼制御の方が、補助燃料の使用量を低減しながら亜酸化窒素の発生量を低減できることが判るのである。
【0062】
図6(b)には、本発明による運転方法(拘束条件を満足)と、上述した拘束条件無しに第1制御部と第2制御部がそれぞれ独立して砂層部温度及びフリーボード部下部温度をPID制御する方法で、炉出口温度と亜酸化窒素の排出量を対比した特性図が示されている。
【0063】
同じ炉出口温度であっても、本発明による運転方法によれば、より効果的に亜酸化窒素の排出量が低減されていることが判る。
【0064】
以下、別実施形態を説明する。先の実施形態では、第1制御部21が、フリーボード部の下部に配置した温度センサS1をモニタして、フリーボード部1Bの下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度(850℃)以上になるように制御する構成を説明したが、第1制御部21が、炉出口に配置した温度センサをモニタして、フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように制御するように構成してもよい。
図6(a),(b)に示したように、本発明による場合には、フリーボード部の下部燃焼温度と炉出口温度に一定の相関があるためである。
【0065】
上述した実施形態では、第1目標温度が850℃、第2目標温度が700℃、第3目標温度が800℃の例を説明したが、各目標温度の具体的数値はこれらの値に限るものではなく、第1目標温度は亜酸化窒素の排出量を基準値よりも抑制することが可能な温度であればよく、第二目標温度は砂層部で汚泥が熱分解可能な温度であれば700℃以上でもよく、第三目標温度は第1目標温度より低い温度であればよく、それぞれ適宜設定することができる。
【0066】
第1制御部が、フリーボード部の下部燃焼温度が亜酸化窒素の排出を抑制する第1目標温度以上になるように、第1燃料供給部への燃料供給量F1を制御するとともに、補助的に二次燃焼空気量を吹込み増減制御するように構成してもよい。
【0067】
第1及び第2制御部のうち、少なくとも第2制御部をファジー制御部で構成することが好ましい。第1制御部はフリーボード部の下部温度を少なくとも850℃以上に制御する必要があり、PID制御を用いたフィードバック制御で十分に目的を達成できるが、第2制御部は拘束条件を満たしながら砂層部温度を制御するために制御温度範囲に幅を持たせる必要がある。そのような制御では、PID制御で制御目標値を頻繁に変更するよりも、上述したステップ制御で大まかに制御するか、ファジー制御で曖昧度を加味して制御した方が、制御特性が良くなる。
【0068】
前件部及び後件部に対応するメンバシップ関数及びファジールールを記憶したファジールール記憶部と、Min−Max重心法を採用したファジー推論部と、ファジー推論の結果得られた制御値を記憶する制御値記憶部を備え、上述した駆動部が制御値記憶部に記憶された制御値に基づいて電磁バルブを駆動するように構成すればよい。
【0069】
図7には、拘束条件を満たす場合と、満たさない場合の前件部のメンバシップ関数、及び後件部のメンバシップ関数の一例が示されている。
【0070】
ファジー推論ルールを以下に例示する。1.砂層部温度が「低すぎる」と、補助燃料を「大きく増加」する。2.砂層部温度が「低い」と、補助燃料を「増加」する。3.砂層部温度が「やや低い」であると、補助燃料を「やや増加」する。4.砂層部温度が「適正」であると、補助燃料を「維持」する。5.砂層部温度が「やや高い」と、補助燃料を「やや減少」する。6.砂層部温度が「高い」であると、補助燃料を「減少」する。7.砂層部温度が「高すぎる」と、補助燃料を「大きく減少」する。の7ルールである。
【0071】
上述したメンバシップ関数及びファジー推論ルールは例示であり、これに限定されるものではなく、適宜設定可能である。この場合、拘束条件具備の場合の前件部のメンバシップ関数は、フリーボード部の下部温度を重視し、制御範囲の700℃から800度のうちの中央値から前後に比較的広い範囲で適正領域を構築するように構成されている。また、拘束条件不備の場合の前件部のメンバシップ関数は、できるだけ速やかに拘束条件を満たすように、制御範囲の700℃から800度のうち730℃よりも高い温度域では補助燃料供給量を減らすように設定されている。
【0072】
尚、第1制御部をファジー制御部で制御することも可能であることはいうまでもない。
【0073】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、当該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。