特許第5781025号(P5781025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781025
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】車両用ドアのラッチ解除装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/26 20140101AFI20150827BHJP
   E05B 81/14 20140101ALI20150827BHJP
   E05B 81/76 20140101ALI20150827BHJP
   E05B 81/90 20140101ALI20150827BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   E05B77/26
   E05B81/14
   E05B81/76
   E05B81/90
   B60J5/00 N
【請求項の数】1
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-153681(P2012-153681)
(22)【出願日】2012年7月9日
(65)【公開番号】特開2014-15765(P2014-15765A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】高妻 宏行
(72)【発明者】
【氏名】谷山 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 康平
【審査官】 西村 直史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−024450(JP,A)
【文献】 特開2009−281028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア(DB)のラッチ状態を解除するためのラッチ解除用動力を発揮し得る電気式アクチュエータ(24)と、
機械的なラッチ解除操作力の入力に応じて作動するラッチ解除用作動部材(97)を備えていて該ラッチ解除用作動部材(97)が所定量以上作動するのに応じてドア(DB)のラッチ状態を解除可能とするとともに前記電気式アクチュエータ(24)の作動によってもドア(DB)のラッチ状態を解除可能としたラッチ機構(22B)と、
前記電気式アクチュエータ(24)を作動させるための車両ユーザの通常操作ならびに前記ラッチ解除用作動部材(97)にその作動量が所定量以上となる機械的なラッチ解除操作力を入力するようにした車両ユーザの非常操作を可能としたラッチ解除用操作部材(29)と、
該ラッチ解除用操作部材(29)が通常操作されたことを検出して前記電気式アクチュエータ(24)を作動させるためのラッチ解除意志検出手段(120)と、
前記ラッチ解除用操作部材(29)の通常操作および非常操作によっても前記ラッチ機構(22B)のラッチ解除を不能として前記ラッチ機構(22B)に付設されるチャイルドロック機構(106)とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、
前記ラッチ機構(22B)が、前記ラッチ解除用操作部材(29)から機械的なラッチ解除操作力が伝達される機械的操作力入力部材(95)を備えていて、前記チャイルドロック機構(106)が、それの非作動状態では前記機械的操作力入力部材(95)のラッチ解除操作力を前記ラッチ解除用作動部材(97)に伝達するとともに、それの作動状態では前記ラッチ解除操作力の前記ラッチ解除用作動部材(97)への伝達を絶つように構成され、
前記ラッチ解除意志検出手段(120)が前記ラッチ解除用作動部材(97)の作動を検出するようにして前記ラッチ機構(22B)に配設されることを特徴とする車両用ドアのラッチ解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ユーザがラッチ解除用操作部材を通常操作したことをラッチ解除意志検出手段が検出するのに応じた電気式アクチュエータの作動によってラッチ機構のラッチ状態を解除するとともに、車両ユーザがラッチ解除用操作部材を非常操作したときにはラッチ解除用操作部材からの機械的なラッチ解除操作力をラッチ機構に作用させることで該ラッチ機構のラッチ状態を解除し、ラッチ解除用操作部材の通常操作および非常操作によってもラッチ機構のラッチ解除を不能とするためのチャイルドロック機構がラッチ機構に付設されるようにした車両用ドアのラッチ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアに設けられるオープンボタンを通常時は小ストローク分押すことで電気アクチュエータを作動させてドアのラッチ状態を解除し、バッテリ上がり等による作動不良に起因してドアのラッチ状態を電気的に解除できない場合には、前記オープンボタンを通常操作時よりも押し込むようにして非常操作を行い、オープンボタンに連結されるアームおよびケーブルを介してラッチ機構に機械的なラッチ解除操作力を入力することでドアのラッチ状態を解除し得るようにしたものが、特許文献1で知られている。
【0003】
また車両の走行中に車内にいる子供が誤ってドアを開放してしまうことを防止するために、ラッチ解除用操作部材の操作によるラッチ解除を禁止するチャイルドロック機構がラッチ機構に付設されるようにしたものが、特許文献2で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−35091号公報
【特許文献2】特開2001−271536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1で開示されるドアのラッチ解除装置に、特許文献2で開示されたチャイルドロック機構を適用した場合、チャイルドロック時には、オープンボタンの通常操作時および非常操作時のいずれでもラッチ解除作動を不能としなければならないが、特許文献1では、オープンボタンの通常操作を検出するスイッチがオープンボタンを直接検出する位置に配設されているので、そのスイッチによるオープンボタンの操作検出に応じて電気アクチュエータが作動してラッチ状態が解除されるのを回避するためには、チャイルドロック時にオープンボタンを押すことができないようにするための規制手段が必要となり、部品点数が増大し、オープンボタンが配設されるアームレスト等のケースの内部構造が複雑化するとともに大型化してしまう。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、部品点数を少なくした簡単な構造で、チャイルドロック時にラッチ解除操作部材の操作によるラッチ解除を不能とした車両用ドアのラッチ解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ドアのラッチ状態を解除するためのラッチ解除用動力を発揮し得る電気式アクチュエータと、機械的なラッチ解除操作力の入力に応じて作動するラッチ解除用作動部材を備えていて該ラッチ解除用作動部材が所定量以上作動するのに応じてドアのラッチ状態を解除可能とするとともに前記電気式アクチュエータの作動によってもドアのラッチ状態を解除可能としたラッチ機構と、前記電気式アクチュエータを作動させるための車両ユーザの通常操作ならびに前記ラッチ解除用作動部材にその作動量が所定量以上となる機械的なラッチ解除操作力を入力するようにした車両ユーザの非常操作を可能としたラッチ解除用操作部材と、該ラッチ解除用操作部材が通常操作されたことを検出して前記電気式アクチュエータを作動させるためのラッチ解除意志検出手段と、前記ラッチ解除用操作部材の通常操作および非常操作によっても前記ラッチ機構のラッチ解除を不能として前記ラッチ機構に付設されるチャイルドロック機構とを備える車両用ドアのラッチ解除装置において、前記ラッチ機構が、前記ラッチ解除用操作部材から機械的なラッチ解除操作力が伝達される機械的操作力入力部材を備えていて、前記チャイルドロック機構が、それの非作動状態では前記機械的操作力入力部材のラッチ解除操作力を前記ラッチ解除用作動部材に伝達するとともに、それの作動状態では前記ラッチ解除操作力の前記ラッチ解除用作動部材への伝達を絶つように構成され、前記ラッチ解除意志検出手段が前記ラッチ解除用作動部材の作動を検出するようにして前記ラッチ機構に配設されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記構成によれば、チャイルドロック機構が、それの非作動状態ではラッチ解除用操作部材から機械的操作力入力部材に伝達された機械的なラッチ解除操作力ラッチ解除用作動部材に伝達するとともに、それの作動状態では前記ラッチ解除操作力の前記ラッチ解除用作動部材への伝達を絶つように構成され、ラッチ解除意志検出手段ラッチ解除用作動部材の作動を検出するようにしたので、ラッチ解除用操作部材の操作を規制する構造が不要となり、ラッチ解除用操作部材が配設されるケースの内部構造の複雑化ならびに該ケースの大型化を回避しつつ、部品点数を少なくした簡単な構造で、チャイルドロック時にラッチ解除用操作部材の操作によるラッチ解除を不能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】乗用車両の側面図である。
図2】運転席側サイドドアのインサイドハンドルおよびラッチ機構を車室側から見た側面図である。
図3】インサイドハンドルの一部を切欠いて示す拡大側面図である。
図4】通常操作状態での図3に対応した図である。
図5】非常操作状態での図3に対応した図である。
図6】後部サイドドアのインサイドハンドルおよびラッチ機構を車室側から見た側面図である。
図7】ラッチ機構の拡大側面図である。
図8】アンロック状態にあるラッチ機構をケーシングからカバー部材および第2ケースを外した状態で示す要部側面図である。
図9】ラッチ解除用電動モータの作動によるラッチ解除状態での図8に対応した側面図である。
図10】ロック状態での図8に対応した側面図である。
図11図7の11−11線断面図である。
図12図11の12−12線断面図である。
図13図11の13−13線断面図である。
図14図11の14−14線断面図である。
図15】チャイルドロック機構を作動させた状態での図7に対応したラッチ機構の側面図である。
図16】チャイルドロック機構を作動させた状態での図13に対応した断面図である。
図17】チャイルドロック機構の非作動状態での通常操作時の図13に対応した断面図である。
図18】チャイルドロック機構の非作動状態での非常操作時の図13に対応した断面図である。
図19】チャイルドロック機構の非作動状態での非常操作時の図8に対応した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付の図1図19を参照しながら説明すると、先ず図1において、乗用車両の運転席側サイドドアDAには、運転席の車両ユーザが車室側で運転席側サイドドアDAの開閉操作を行うためのインサイドハンドル21Aが取付けられるとともに、運転席側サイドドアDAの閉じ状態を車体側に係合することで保持するラッチ状態ならびに運転席側サイドドアDAを開放操作することを可能としたアンラッチ状態を切り換え可能としたラッチ機構22Aが配設される。また乗用車両の後部サイドドアDBには、後部座席の車両ユーザが車室側で後部サイドドアDBの開閉操作を行うためのインサイドハンドル21Bが取付けられるとともに、後部サイドドアDBの閉じ状態を車体側に係合することで保持するラッチ状態ならびに後部サイドドアDBを開放操作することを可能としたアンラッチ状態を切り換え可能としたラッチ機構22Bが配設される。
【0011】
図2において、運転席側サイドドアDAの前記ラッチ機構22Aには、運転席側サイドドアDAのラッチ解除を可能とするアンロック状態ならびに運転席側サイドドアDAのラッチ解除を不能としたロック状態を切り換える動力を発揮する正逆回転自在のロック・アンロック切換用電動モータ23と、アンロック状態でラッチ状態を解除するための動力を発揮する電気式アクチュエータであるラッチ解除用電動モータ24とが内蔵される。また前記ラッチ機構22Aは、ロック状態およびアンロック状態のいずれでも車両ユーザによる車室内での操作によるラッチ解除操作力の機械的な入力に応じたラッチ解除が可能である。
【0012】
図3を併せて参照して、前記インサイドハンドル21Aは、その内部に中空部25を有するように構成されており、車両の前後方向に長く延びる把持部21aと、該把持部21aの前端に連設される円形の前部支持部21bと、前部支持部21bよりも大きな円形に形成されて前記把持部21aの後端に連設される後部支持部21cとから成り、前上がりに傾斜した前記インサイドハンドル21Aの前部支持部21bおよび後部支持部21cが前記運転席側サイドドアDAの内面側に固定される。
【0013】
前記インサイドハンドル21Aにおける前部支持部21bの車室内に臨む面には、乗用車両の前記運転席側サイドドアDAおよび前記後部サイドドアDBを含む全てのドアのラッチ機構22A,22B…のロック状態およびアンロック状態を切換えるためのロック・アンロック切換用スイッチ26が配設される。
【0014】
前記インサイドハンドル21Aにおける把持部21aの前部上側面には、下方に凹んだ凹部27が形成されるとともに、その凹部27の略中央部に開口するボタン挿入孔28が設けられ、このボタン挿入孔28には、ラッチ解除用操作部材であるプッシュボタン29が配置される。このプッシュボタン29は、上端部を前記凹部27に臨ませて前記ボタン挿入孔28に挿入されるものであり、その下部には半径方向外方に張り出す鍔部29aが一体に設けられ、該鍔部29aは前記ボタン挿入孔28の周縁部内面に下方から当接、係合可能である。
【0015】
前記プッシュボタン29の下端部には、車両の前後方向に延びて前記中空部25内に配置されるリンクレバー31の前端部がピン30を介して連結される。一方、前記インサイドハンドル21Aにおける前記把持部21aにおいて前記後部支持部21c寄りの一側下部には前記リンクレバー31の後端部が第1支軸32を介して回動可能に支持されており、前記プッシュボタン29の押し込み操作に応じて前記リンクレバー31は第1支軸32の軸線まわりに回動する。
【0016】
前記リンクレバー31の長手方向中間部に対応する部分で前記把持部21aの一側下部にはレバー33が第2支軸34を介して回動可能に支持される。このレバー33は、一端部が第2支軸34を介して前記把持部21aに支持される連結腕部33aと、該連結腕部33aの一端部に略直角に連設されて前記リンクレバー31の長手方向中間部下端に当接する当接腕部33bとを一体に有して略L字状に形成されるものであり、前記把持部21aおよび前記レバー33間にはねじりばね35が設けられ、前記レバー33は、前記ねじりばね35が発揮するばね力によって前記当接腕部33bを前記リンクレバー31に下方から当接させる側に回動付勢される。また前記連結腕部33aの他端部には、前記ラッチ機構22Aに機械的なラッチ解除操作力を伝達するためのケーブル36の一端部が連結される。
【0017】
ところで前記ねじりばね35のばね力は前記レバー33から前記リンクレバー31を介して前記プッシュボタン29に作用するものであり、プッシュボタン29は、その非操作状態では、図3の実線で示すように、前記鍔部29aを前記ボタン挿入孔28の周縁部内面に当接させた非操作位置に在る。
【0018】
車両ユーザは、前記ラッチ機構22Aの前記ラッチ解除用電動モータ24を作動させるようにして前記非操作位置から図4で示す通常操作位置までプッシュボタン29を小ストローク分だけ押し込む通常操作と、前記ラッチ機構22Aに機械的なラッチ解除操作力を入力するために前記非操作位置から図5で示す非常操作位置まで前記プッシュボタン29を大ストロークで押し込む非常操作とを行うことが可能であり、前記プッシュボタン29を通常操作したときには、前記リンクレバー31がわずかに回動することで前記レバー33がわずかに回動し、前記ケーブル36がわずかに牽引され、前記プッシュボタン29を非常操作したときには、前記リンクレバー31が大きく回動することで前記レバー33が大きく回動し、前記ケーブル36が大きく牽引されることになる。
【0019】
前記プッシュボタン29の非常操作は、規制解除用操作部材37の非操作状態では非常操作規制手段38によって規制されるものであり、非常操作規制手段38は規制解除用操作部材37を車両ユーザが操作するのに応じて前記プッシュボタン29の非常操作を許容する。
【0020】
前記規制解除用操作部材37は、車両の前後方向に長く延びるように形成されるものであり、その後部が第1支軸32よりも後方で前記インサイドハンドル21Aにおける前記把持部21aの下部に第3支軸39を介して回動可能に連結される。また前記把持部21aの下部には前後に長く形成される開口部40が設けられており、非操作状態での前記規制解除用操作部材37の前部の一部は、前記開口部40から前記把持部21aの下方に突出され、車両ユーザは、前記インサイドハンドル21Aの前記把持部21aを握った状態で前記規制解除用操作部材37の前部を上方に押し上げつつ前記プッシュボタン29を非常操作することが可能である。
【0021】
前記規制解除用操作部材37は、第3支軸39よりも後方に突出したばね受け部37aを後端部に一体に有しており、前記インサイドハンドル21Aの後部支持部21cに一体に設けられた円筒状のばね支持部41を巻回するねじりばね42が、前記後部支持部21cおよび前記ばね受け部37a間に設けられる。前記規制解除用操作部材37は、前記ねじりばね42が発揮するばね力によって、該規制解除用操作部材37の前部を前記開口部40から下方に突出させる側にばね付勢されるものであり、前記ねじりばね42による付勢方向への前記規制解除用操作部材37の回動端は、前記開口部40の周縁に前記規制解除用操作部材37が当接することによって規制される。
【0022】
前記非常操作規制手段38は、前記規制解除用操作部材37の後部に設けられた規制突部37bと、該規制突部37bに下方から当接することを可能として第1支軸32よりも後方で前記リンクレバー31の後端部に一体に突設される当接突部31aとで構成されるものであり、前記プッシュボタン29が非操作位置にあって前記規制解除用操作部材37の非操作状態では、前記当接突部31aは図3で示すように規制突部37bのわずかに下方位置にあり、この状態でプッシュボタン29を押すと、図4で示すように当接突部31aが規制突部37bに当接することでリンクレバー31の回動が規制され、プッシュボタン29の押し込み操作が小ストロークの通常操作に規制される。
【0023】
前記規制解除用操作部材37を押し込み操作すると、図3の鎖線で示すように前記規制突部37bが前記当接突部31aから離れる方向に前記規制解除用操作部材37が回動し、この状態では、前記当接突部31aが前記規制突部37bに当接するまでの前記リンクレバー31の回動量が大きくなり、図5で示すように前記プッシュボタン29を非常操作位置まで大きいストロークで非常操作することが可能となる。
【0024】
図6において、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bは、前記運転席側サイドドアDAの前記インサイドハンドル21Aに配設されているロック・アンロック切換用スイッチ26が配設されていないことを除けば、前記運転席側サイドドアDAの前記インサイドハンドル21Aと基本的に同様の構成を有しており、プッシュボタン29、リンクレバー31、レバー33、規制解除用操作部材37および非常操作規制手段38等が前記運転席側サイドドアDAの前記インサイドハンドル21Aと同様に配設される。而してラッチ機構22Bに機械的なラッチ解除操作力を伝達するためのケーブル36は、前記プッシュボタン29の押し込み操作が小ストロークの通常操作に規制されたときにはわずかに牽引され、規制解除用操作部材37を押し込みつつ前記プッシュボタン29を非常操作位置まで大きいストロークで非常操作すると前記ケーブル36が大きく牽引されることになる。
【0025】
後部サイドドアDBの前記ラッチ機構22Bには、後部サイドドアDBのラッチ解除を可能とするアンロック状態ならびに後部サイドドアDBのラッチ解除を不能としたロック状態を切り換える動力を発揮する正逆回転自在のロック・アンロック切換用電動モータ23と、アンロック状態でラッチ状態を解除するための動力を発揮する電気式アクチュエータであるラッチ解除用電動モータ24とが内蔵される。また前記ラッチ機構22Bは、ロック状態およびアンロック状態のいずれでも車両ユーザによる車室内での操作によるラッチ解除操作力の機械的な入力に応じたラッチ解除が可能である。
【0026】
図7において、前記ラッチ機構22Bのケーシング45は、前記ロック・アンロック切換用電動モータ23および前記ラッチ解除用電動モータ24を収容する第1ケース46と、車体側のストライカ(図示せず)を進入させ得る進入凹部50を有して第1ケース46に着脱可能に取付けられる第2ケース47とを有するものであり、第1ケース46は、車室側に向けて開放した函状のケース主体48と、そのケース主体48の開放端を閉じるようにしてケース主体48に着脱可能に取付けられるカバー部材49とから成る。
【0027】
第2ケース47には、後部サイドドアDBを閉じたときに前記進入凹部50に進入してきた前記ストライカに係合するラッチ51が回動可能に支承されており、このラッチ51の回動を阻止することによって後部サイドドアDBが閉じ状態で保持されたラッチ状態となり、前記ラッチ51の回動を許容することで前記後部サイドドアDBのラッチ状態が解除されることになる。
【0028】
図8において、第1ケース46におけるケース主体48内の第2ケース47寄りの部分には、前記カバー部材49とは反対側から順に、オープンリンク54、リリースリンク55および第1キャンセルレバー56が重なって配置されており、前記オープンリンク54もしくは前記リリースリンク55が上下に延びる姿勢のままで上方に移動してラチェットレバー58に下方から当接、係合することで該ラチェットレバー58が回動することによって、前記ラッチ51の回動が許容され、前記後部サイドドアDBのラッチ状態が解除されることになる。
【0029】
前記ケース主体48の第2ケース47側の下部には、後部サイドドアDBの外面側に配設されるアウトサイドハンドル(図示せず)の操作に応じて回動するオープンレバー59が回動可能に支承されており、前記オープンリンク54の下端部が、該オープンリンク54の回動を許容するようにして前記オープンレバー59に連結され、前記オープンレバー59の回動に応じて前記オープンリンク54は上下に作動する。しかもオープンリンク54には、該オープンリンク54が図8で示すように上下に延びる姿勢にあるときに前記ラチェットレバー58に下方から当接、係合可能な押圧部54aが設けられる。
【0030】
また前記リリースリンク55は、上下に作動することを可能として前記ケース主体48に支承されており、前記ケース主体48には、前記リリースリンク55の上下動を案内する案内壁60が前記リリースリンク55および第2ケース47間に配置されるようにして設けられ、前記ケース主体48および前記リリースリンク55間には、前記リリースリンク55を前記案内壁60に摺接させる側に付勢するねじりばね61が設けられる。また前記リリースリンク55の上部にはリンクピン62が植設され、前記ラチェットレバー58に下方から当接、係合可能な押圧部55aが前記リリースリンク55に設けられる。
【0031】
第1キャンセルレバー56の上端部には、前記案内壁60と反対側および下方から前記リンクピン62に当接可能な当接面63が形成されるとともに、前記リンクピン62に第2ケース47と反対側から対向する係止板部64が設けられる。
【0032】
第1キャンセルレバー56の下端部は、リリースレバー65の一端部に回動可能に連結され、該リリースレバー65の中間部は、第1キャンセルレバー56を上下に作動させるように回動することを可能として第4支軸66を介して前記ケース主体48に支持される。
【0033】
前記ケース主体48には、前記ラッチ解除用電動モータ24が固定的に配設されており、このラッチ解除用電動モータ24の出力軸67に設けられるウォームギヤ68に噛合するウォームホイル69が、第4支軸66と平行な軸線を有する第5支軸70を介して前記ケース主体48に回動自在に支承される。このウォームホイル69には、該ウォームホイル69とともに回動するカム71が設けられており、そのカム71に摺接するピン72が前記リリースレバー65の他端部に植設される。しかも前記ケース主体48および前記リリースレバー65間には、前記ピン72を前記カム71に摺接させる方向に前記リリースレバー65を回動付勢するねじりばね73が設けられる。
【0034】
而して前記ラッチ解除用電動モータ24が前記ウォームホイル69および前記カム71を図8の反時計方向に回動させるように作動すると、前記カム71に前記ピン72が摺接していることによって前記リリースレバー65が図8の反時計方向に回動し、第1キャンセルレバー56が上方に押し上げられることになる。
【0035】
前記ラッチ解除用電動モータ24の上方で前記ケース主体48の上部には前記ロック・アンロック切換用電動モータ23が固定的に配設されており、このロック・アンロック切換用電動モータ23の出力軸76に設けられるウォームギヤ77に噛合するウォームホイル78が第5支軸70と平行な第6支軸79を介して前記ケース主体48に回動自在に支承される。このウォームホイル78には、その中心軸線からオフセットして係合突起80が設けられており、該係合突起80を係合させ得る係止凹部82を外周に有する扇状の第1ロッキングレバー84が第6支軸79と平行な第7支軸85を介して前記ケース主体48に回動自在に支承され、第1ロッキングレバー84とともに回動する第2ロッキングレバー86も第7支軸85を介して前記ケース主体48に回動可能に支承される。
【0036】
第2ロッキングレバー86には、上下方向に延びて前記オープンリンク54に設けられる長孔89に挿通される第1ピン87と、第1キャンセルレバー56に設けられる矩形状の開口部90に挿通される第2ピン88とが設けられる。而してケース主体48および第1キャンセルレバー56間には、前記開口部90の第2ケース47とは反対側の側縁を第2ピン88に当接させる方向に第1キャンセルレバー56を付勢するねじりばね91が設けられる。
【0037】
後部サイドドアDBのラッチ解除を可能とするアンロック状態とするときに、前記ロック・アンロック切換用電動モータ23は、前記係合突起80を係止凹部82に係合させたウォームホイル78を図8で示す位置に回動させて停止しており、この状態で第2ロッキングレバー86は第7支軸85の軸線まわりに図8の反時計方向に最大限回動した状態にある。これにより前記オープンリンク54および第1キャンセルレバー56は図8で示すように上下方向に延びた姿勢となり、第1キャンセルレバー56の上端部の当接面63は前記リンクピン62に下方から当接して押し上げ可能となり、またオープンリンク54の押圧部54aもラチェットレバー58に下方から当接可能となる。
【0038】
このようなアンロック状態で前記ラッチ解除用電動モータ24の作動によって第1キャンセルレバー56を、図9で示すように上方に押し上げると、第1キャンセルレバー56の上端部の当接面63がリリースリンク55のリンクピン62に下方から当接し、第1キャンセルレバー56がさらに押し上げられるのに応じてリリースリンク55も上方に押し上げられ、リリースリンク55の押圧部55aがラチェットレバー58に下方から当接して該ラチェットレバー58が回動駆動されることになり、後部サイドドアDBのラッチ状態が解除される。またアンロック状態で、後部サイドドアDBの外面側に配設されるアウトサイドハンドルを操作して前記オープンレバー59を回動すると、前記オープンリンク54が上方に押し上げられ、このオープンリンク54の押圧部54aで前記ラチェットレバー58が回動駆動され、これによっても後部サイドドアDBのラッチ状態が解除される。
【0039】
前記ラッチ解除用電動モータ24の作動もしくは前記アウトサイドハンドルの操作によっても後部サイドドアDBのラッチ解除を不能とするロック状態とするときには、前記ロック・アンロック切換用電動モータ23は、図8の状態から反時計方向にウォームホイル78を回動させ、前記係合突起80を前記係止凹部82に係合させたウォームホイル78を図10で示す位置まで回動させて停止しており、この状態で第2ロッキングレバー86は第7支軸85の軸線まわりに図10の時計方向に最大限回動した状態にある。これにより前記オープンリンク54および第1キャンセルレバー56は、その上下方向に延びた姿勢から前記案内壁60から離れる方向に傾斜した姿勢となる。この状態で第1キャンセルレバー56の上端部の当接面63は、第1キャンセルレバー56が上方に移動しても前記リンクピン62に下方から当接することはなく、またオープンリンク54の押圧部54aもラチェットレバー58に下方から当接し得ない位置となる。したがって前記ラッチ解除用電動モータ24の作動によって第1キャンセルレバー56が上方に押し上げられてもリリースリンク55が上方に移動することはなく、また前記アウトサイドハンドルを操作してオープンリンク54を上方に移動させても押圧部54aがラチェットレバー58に下方から当接することはないので、後部サイドドアDBはラッチ状態のままとなる。
【0040】
図7において、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設された前記プッシュボタン29の操作に応じて機械的な力をラッチ機構22B側に伝達する前記ケーブル36は、アウターケーブル92内にインナーケーブル93が挿入されて成り、アウターケーブル92の前記ラッチ機構22B側の端部は第1ケース46のケース主体48に支持される。
【0041】
図11および図12を併せて参照して、第1ケース46におけるカバー部材49には、前記インサイドハンドル21Bの前記プッシュボタン29から機械的なラッチ解除操作力が伝達される機械的操作力入力レバー95が第8支軸96を介して回動可能に支承される。
【0042】
前記機械的操作力入力レバー95は、前記アウターケーブル92から突出したインナーケーブル93の端部が先端部に連結されるようにした連結腕部95aと、該連結腕部95aに直角に連設される押圧腕部95bとを一体に有しており、連結腕部95aの先端部を除く大部分を前記カバー部材49の内側に配置するようにして第8支軸96を介して前記カバー部材49に回動自在に支承される。
【0043】
前記連結腕部95aの先端部はカバー部材49から外方に突出され、この連結腕部95aの先端部に前記インナーケーブル93が連結される。これにより後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設された前記プッシュボタン29の操作に応じて前記ケーブル36が牽引されると、前記機械的操作力入力レバー95は第8支軸96の軸線まわりに図12の反時計方向に回動することになる。
【0044】
図13を併せて参照して、第1ケース46におけるケース主体48には、機械的なラッチ解除操作力の入力に応じて作動するとともにその作動量が所定量以上となるのに応じて後部サイドドアDBのラッチ状態を解除するようにしたラッチ解除用作動部材であるラッチ解除用作動レバー97が、第8支軸96と同軸の第9支軸98を介して回動自在に支承される。
【0045】
前記ラッチ解除用作動レバー97は、上下に延びる連動リンク101の下端部に連結ピン102を介して連結される連結腕部97aと、該連結腕部97aと略直交する方向に延びる受圧腕部97bと、前記連結腕部97aと反対方向に延びる被検出腕部97cとを一体に有するように形成される。
【0046】
前記連結腕部97aおよび前記連動リンク101の下端部間にはねじりばね103が設けられており、前記連動リンク101は、前記連結ピン102の軸線まわりに図8図10の反時計方向に回動付勢され、前記ねじりばね103による回動付勢方向での前記連動リンク101の回動端は第1ロッキングレバー84に当接することで規制される。また第1ロッキングレバー84は、前記連動リンク101が最下限位置から上方に所定ストロークだけ移動したときには該連動リンク101の中間部に連動、連結され、前記連動リンク101がさらに上方に移動したときに第1ロッキングレバー84および第2ロッキングレバー86は図8図10の反時計方向に回動駆動される。
【0047】
ところで、前記オープンリンク54、前記リリースリンク55および第1キャンセルレバー56の上方で前記ケース主体48には、第10支軸99を介して第2キャンセルレバー100が回動自在に支承される。この第2キャンセルレバー100は、第1キャンセルレバー56の係止板部64に前記案内壁60側から対向する押圧腕部100aと、前記連動リンク101の上方に位置する連結腕部100bとを一体に有しており、連結腕部100bの先端部および前記オープンリンク54の長手方向中間部間はキャンセルリンク104を介して連結される。而して前記連動リンク101が上方に押し上げられると、第2キャンセルレバー100の連結腕部100bの先端部に前記連動リンク101の上端が当接して該連結腕部100bを押し上げることになり、前記押圧腕部100aで前記係止板部64が押されることによって第1キャンセルレバー56が傾斜した姿勢となり、また前記オープンリンク54が上方に引き上げられることになる。
【0048】
また後部サイドドアDBの前記ラッチ機構22Bには、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設されるプッシュボタン29の通常操作および非常操作によっても前記ラッチ機構22Bのラッチ解除を不能とするためのチャイルドロック機構106が配設される。
【0049】
図7および図11に注目して、前記チャイルドロック機構106は、それの非作動状態では前記プッシュボタン29から前記機械的操作力入力レバー部材95に伝達された機械的なラッチ解除操作力前記ラッチ解除用作動レバー97に伝達するとともに、それの作動状態では前記ラッチ解除操作力の前記ラッチ解除用作動レバー97への伝達を絶つように構成されるものであり、操作部107aを一端部に有して第1ケース46におけるカバー部材49の外面側に配置される第1チャイルドレバー107と、第1チャイルドレバー107の他端部に一端部が連結されて前記カバー部材49の外面側に配置される第2チャイルドレバー108と、前記機械的操作力入力レバー95を前記カバー部材49との間に挟むようにして該機械的操作力入力レバー95とともに第8支軸96を介して前記ベース部材49に回動可能に支承される中継レバー109と、第8支軸96の半径方向に沿う移動を可能として前記中継レバー109に一端部が連結されるとともに他端部が前記カバー部材49を貫通して第2チャイルドレバー108の他端部に挿通されるピン110とを備える。
【0050】
直線状に延びる第1チャイルドレバー107の中間部は前記カバー部材49に第11支軸111を介して回動可能に支承されており、その一端部の前記操作部107aは、後部サイドドアDBを開放状態としないと操作し得ない位置に配置される。また略L字状に屈曲して形成される第2チャイルドレバー108の中間部は第12支軸112を介して前記カバー部材49に回動可能に支承されており、第2チャイルドレバー108の一端部は第1チャイルドレバー107の他端部に連結ピン113を介して連結される。
【0051】
図14に注目して、前記中継レバー109は、前記ラッチ解除用作動レバー97の非作動状態での前記受圧腕部97bに第8および第9支軸96,98の軸線方向で重なる位置に配置される押圧腕部109aと、第8支軸96の周方向で前記腕部109aから間隔をあけた位置で第8支軸96の半径方向外方に延びる腕部109bとを備え、押圧腕部109aには、非作動状態に在る前記ラッチ解除用作動レバー97の前記受圧腕部97bに、前記ケーブル36で牽引されることによる前記機械的操作入力レバー95の回動方向114に沿う後方から対向、当接する押圧板部109cが直角に連設される。したがって中継レバー109が図14の反時計方向に回動すると前記ラッチ解除用作動レバー97も反時計方向に回動することになる。
【0052】
前記腕部109bには、第8支軸96の半径方向に延びる第1長孔115が設けられており、前記ピン110の一端部外周に設けられる環状凹部116に第1長孔115の両側部が嵌合され、前記ピン110の一端部は第1長孔115に沿って移動することを可能として前記中継レバー109の前記腕部109bに連結される。しかも機械的操作力入力レバー95の押圧腕部95bは、第1長孔115の長手方向中間位置にある前記ピン110に前記回動方向114に沿う後方側から当接可能なものであり、第1長孔115の外端は第8支軸96の半径方向に沿って前記押圧腕部95bの外端よりも外方に位置するように設定される。
【0053】
第2チャイルドレバー108の他端部には、第2チャイルドレバー108の非作動状態において第8支軸96の軸線を中心とする円弧状に形成される第2長孔117が設けられており、前記ピン110の他端部は第2長孔117に挿通される。しかも第2チャイルドレバー108が非作動状態にあるときに前記ピン110は第1長孔115の長手方向中間位置に在り、前記ケーブル36が牽引されない状態で前記ピン110は第2長孔117の上端位置にある。
【0054】
また前記カバー部材49には、第2チャイルドレバー108が非作動状態にあるときの第1および第2長孔115,117を合わせた形状のガイド孔118が設けられており、前記ピン110はそのガイド孔118を貫通する。
【0055】
前記チャイルドロック機構106を作動させるときには、第1チャイルドレバー107の操作部107aを図15で示すように押し下げ、第1チャイルドレバー107を図15の時計方向に回動させる。そうすると第2チャイルドレバー108が図15の反時計方向に回動し、第2長孔117の上端部に一端部が挿通されている前記ピン110は、第2チャイルドレバー107の回動に応じて第1長孔115内を外方に移動し、機械的操作力入力レバー95の押圧腕部95bよりも外方に移動することになる。このためケーブル36の牽引によって機械的操作力入力レバー95が回動方向114に回動しても、機械的操作力入力レバー95の押圧腕部95bは、図16で示すように、前記ピン110に当接することなく空振りし、機械的操作力入力レバー95から前記ピン110を介して前記中継レバー109に回動力が伝達されることはない。このためラッチ解除用作動レバー97も回動せず、非作動状態のままである。
【0056】
このように、前記チャイルドロック機構106は、それの非作動状態では前記プッシュボタン29から前記機械的操作力入力レバー部材95に伝達された回動力を前記ピン110および前記中継レバー109を介して前記ラッチ解除用作動レバー97に伝達するが、それの作動状態では前記回動力の前記ラッチ解除用作動レバー97への伝達を絶つように構成される。
【0057】
ところで前記ラッチ機構22Bには、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設された前記プッシュボタン29が通常操作されたことを検出して前記ラッチ解除用電動モータ24を作動させるためのラッチ解除意志検出手段であるスイッチ120が配設されるものであり、このスイッチ120は、前記プッシュボタン29からの機械的なラッチ解除操作力が前記機械的操作力入力レバー95、前記ピン110および前記中継レバー109を介して伝達される前記ラッチ解除用作動レバー97の作動を検出するようにして、前記ラッチ機構22Bにおける第1ケース46のケース主体48に取付けられる。
【0058】
前記スイッチ120は、前記ケース主体48に締結されるスイッチケース121と、該スイッチケース121から突出する検出子122とを有し、検出子122は前記スイッチケース121から突出する方向に弾発付勢され、この検出子122が押し込まれることでスイッチング態様を変化させるように構成される。
【0059】
前記スイッチケース121は、前記機械的操作力入力レバー95から前記ピン110および前記中継レバー109を介して回動力が伝達されることによって前記ラッチ解除用作動レバー97が回動する際に、該ラッチ解除用作動レバー97の前記被検出腕部97cで前記検出子122が押し込まれる位置で前記ケース主体48に締結される。
【0060】
而して前記チャイルドロック機構106が非作動状態にあり、ピン110が第1長孔115の長手方向中間位置に在って前記機械的操作力入力レバー95から前記ラッチ解除用作動レバー97に回動力が伝達される状態で、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設された前記プッシュボタン29が通常操作されると、図17で示すように、ケーブル36がわずかに牽引されるのに応じて前記機械的操作力入力レバー95がわずかに回動し、それに応じて前記ラッチ解除用作動レバー97がわずかに回動して前記スイッチ120の検出子122が前記ラッチ解除用作動レバー97の前記被検出腕部97cで押し込まれ、それによってスイッチ120のスイッチング態様が変化することで前記ラッチ解除用電動モータ24がラッチ状態を解除する方向に作動することになる。
【0061】
さらに前記チャイルドロック機構106が非作動状態にあるときに、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設された前記プッシュボタン29が非常操作されると、図18で示すように、ケーブル36が大きく牽引されるのに応じて前記機械的操作力入力レバー95が大きく回動し、それに応じて前記ラッチ解除用作動レバー97が大きく回動することになり、前記スイッチ120の検出子122は前記ラッチ解除用作動レバー97の前記被検出腕部97cで押し込まれたままとなる。
【0062】
このように前記ラッチ解除用作動レバー97が大きく回動すると、図19で示すように、前記連動リンク101は上方に大きく押し上げられ、第2キャンセルレバー100が図19の時計方向に回動して第1キャンセルレバー56がその当接面63をリンクピン62の下方から側方に変位させるように傾斜した姿勢となり、オープンリンク54が上方に引き下げられる。このとき第2ロッキングレバー86は図19の反時計方向に回動駆動され、前記オープンリンク54の長孔89に第2ロッキングレバー86の第1ピン87が挿通されているので、第2ロッキングレバー86の回動によって前記オープンリンク54は上下に延びた姿勢となり、このオープンリンク54の押圧部54aが前記ラチェットレバー58に下方から当接、係合して該ラチェットレバー58が回動され、それによって後部サイドドアDBのラッチ状態が解除される。
【0063】
図2に注目して、運転席側サイドドアDAの前記ラッチ機構22Aは、前記チャイルドロック機構106が設けられていない点と、運転席側サイドドアDAに設けられるシリンダ錠125(図1参照)からのラッチ解除操作力の入力に応じてラッチ状態を解除する機構が設けられる点とを除いて、後部サイドドアDBの前記ラッチ機構22Bと同様に構成されており、詳細な説明は省略する。
【0064】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、運転席側サイドドアDAおよび後部サイドドアDBを含む全てのドアには、ラッチ解除用動力を発揮し得るラッチ解除用電動モータ24…を内蔵するラッチ機構22A,22B…が、前記ラッチ解除用電動モータ24…の作動ならびに機械的なラッチ解除操作力の入力に応じてラッチ状態を解除するようにして設けられており、前記ラッチ解除用電動モータ24…を作動させるようにした車両ユーザの通常操作ならびに前記ラッチ機構22A,22B…に機械的なラッチ解除操作力を入力するようにした車両ユーザの非常操作を可能としたプッシュボタン29…が、運転席側サイドドアDAおよび後部サイドドアDBを含む全てのドアのインサイドハンドル21A,21B…に配設されており、各インサイドハンドル21A,21B…には、車両ユーザが操作することを可能とした規制解除用操作部材37と、該規制解除用操作部材37の非操作状態では前記プッシュボタン29…の非常操作を規制するものの前記規制解除用操作部材37の操作に応じて前記プッシュボタン29…の非常操作を許容するようにした非常操作規制手段38がそれぞれ配設されるので、不必要にプッシュボタン29…の非常操作を行うことを回避することができる。
【0065】
また後部サイドドアDBに設けられるラッチ機構22Bは、機械的なラッチ解除操作力の入力に応じて作動するラッチ解除用作動レバー97を備えるとともに、該ラッチ解除用作動レバー97が所定量以上作動するのに応じてラッチ状態を解除可能とするとともに前記ラッチ解除用電動モータ24の作動によってもラッチ状態を解除可能であり、後部サイドドアDBのインサイドハンドル21Bに配設されるプッシュボタン29を車両ユーザが通常操作したことを検出して前記ラッチ解除用電動モータ24を作動させるためのスイッチ120と、前記プッシュボタン29の通常操作および非常操作によってもラッチ解除を不能としたチャイルドロック機構106とがラッチ機構22Bに配設されており、そのチャイルドロック機構106が、それの非作動状態では前記プッシュボタン29から前記機械的操作力入力レバー部材95に伝達された機械的なラッチ解除操作力前記ラッチ解除用作動レバー97に伝達するとともに、それの作動状態では前記ラッチ解除操作力の前記ラッチ解除用作動レバー97への伝達を絶つように構成され、前記スイッチ120が前記ラッチ解除用作動レバー97の作動を検出するものであるので、チャイルドロック時にプッシュボタン29の操作を規制する構造が不要となり、プッシュボタン29が配設されるインサイドハンドル21Bの内部構造の複雑化ならびに該インサイドハンドル21Bの大型化を回避しつつ、部品点数を少なくした簡単な構造で、チャイルドロック時にプッシュボタン29の操作によるラッチ解除を不能とすることができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0067】
22B・・・ラッチ機構
24・・・電気式アクチュエータであるラッチ解除用電動モータ
29・・・ラッチ解除用操作部材であるプッシュボタン
95・・・機械的操作力入力部材である機械的操作力入力レバー
97・・・ラッチ解除用作動部材であるラッチ解除用作動レバー
106・・・チャイルドロック機構
120・・・ラッチ解除意志検出手段であるスイッチ
DB・・・ドアである後部サイドドア
図1
図2
図3
図4
図5
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