【実施例1】
【0026】
本実施例では、トナー付着量センサのシャッター機構に取り付けた受光部校正用基準部材からの反射光量と像担持体の表面からの反射光量を比較することで、センサ検出面および像担持体表面の汚染、傷の状態を診断する方法について説明する。
【0027】
従来よりトナー付着量センサの検出面に対向するようにシャッター機構を設け、トナー付着量センサの検出面を汚れのない状態に保つため、トナー付着量検出時以外は該センサをシャッター等で覆うことや、更には、シャッターにブレードやブラシ等のクリーニング部材を取り付け、シャッターの開閉動作に連動して該センサの検出面の清掃が行われている。
【0028】
図1は、
シャッター機構の一例と本発明に係る該シャッター機構に設けられた受光部校正用反射基準部材とトナー付着量センサの配置関係を模式的に表したものである。
【0029】
トナー付着量センサ1は、像担持体2の表面(非検出面)に光を照射するLEDなどの投光手段8と、非検出面からの反射光を検出する二つのフォトダイオードなどの受光手段9、10を有し、それぞれホルダー12の内部に筒状の素子設置孔g8、g9、g10の軸心線に光軸を合わせて設置されている。
図1はトナー付着量センサとして2PD方式を例として図示したもので、非検出面で反射された光のうち拡散反射方向の光の一部を受光手段9のフォトダイードで、鏡面反射方向の光の一部を受光手段10のフォトダイードにて検出させている。またセンサの検出面は各素子窓を覆う様に防塵用の透明カバー11が配設されている。
【0030】
シャッター機構3はトナー付着量センサ1の検出面を遮蔽するシャッター部材4とシャッター部材4に開閉動作に連動して移動する開口部5とシャッター部材4によるセンサ遮蔽時に該センサの検出面に正対する位置に移動するように受光部校正用反射基準部材6が配設されている。
また、さらにシャッター部材4に開閉動作に連動して該センサの検出面である透明カバー11を清掃するクリーナー部材7が設けられている場合もある。
受光部校正用反射基準部材6は表面が安定したマット面であることが望ましく、例えば、東レ株式会社のルミラーやコダック株式会社のグレーカードなどを用いる。
【0031】
開閉動作は
図1の例の場合、引張型ソレノイド13を励磁することでプランジャー14が稼動し、アーム15で連結されたシャッター部材4が
図1の矢印方向へ移動し、センサ検出面は遮蔽(以降はシャッター閉状態と称する)され、ソレノイド13を非励磁とすることでコイルばね16により開口部は該センサの検出面に対向する位置に戻される(以降はシャッター開状態と称する)。
このときクリーナー部材7が配されたものは、ソレノイド13の励磁/非励磁によるシャッター部材4の揺動に伴い、クリーナー7が検出面11の面上を摺動し、トナー付着による汚れの拭き取り操作を担うようにしている。
【0032】
尚、トナー付着量センサ1の検出方式は2PD方式および偏光分離方式のいずれでも対応可能である。
偏光分離式の場合は、
図2aに示すように投光手段8bから偏光素子PBS1を通して入射面に平行な振動方向を持つ光が照射され、受光手段10bで検出するのは偏光素子PBS2を通して反射光のうちのp偏光成分であり、受光手段9bで検出するのはp偏光成分に垂直なs偏光成分となる。偏光素子はキューブ型プリズム(
図2aのPBS1,PBS2)を使用したもののほかプレート型の偏光プリズム(図示せず)を使用したものや、
図2bのように投光手段8bと二つの受光手段9b,10b個々に分割された偏光フィルタPF1〜PF3を各素子窓に装着してセンサ検出面とし、
図1の透明カバー11と同様に防塵機能を兼ねているものがある。
以降はトナー付着量センサ1として、2PD方式のトナー付着量センサを用いたものとして説明していくが、偏光分離式のトナー付着量センサを用いた場合も、鏡面反射光をp偏光成分反射光、拡散反射光をs偏光成分反射光、鏡面反射光の受光手段10をp偏光の受光手段10b、拡散反射の受光手段9をs偏光の受光手段9b、鏡面反射受光量をp偏光受光量、拡散反射受光量をs偏光受光量、と読み換えることで同様の説明ができる。
【0033】
ここで本発明は、受光部校正用反射基準部材6をシャッター部材4に配置し、シャッター閉状態において、受光部校正用反射基準部材6がトナー付着量センサ1の検出面に正対する位置になるようにし、シャッター開状態で被検出面からの鏡面反射光の一部を受光手段10で計測し、シャッター閉状態で受光部校正用反射基準部材6による拡散反射光の一部を受光手段9で計測し、各々の初期値からの変動比を演算処理、評価することでトナー付着量センサの検出面の汚染状態や像担持体表面の汚染状態を判定することを特徴とする。
【0034】
尚、トナー付着量検出時の被検出面に対する検出距離に比較して、シャッター閉状態では受光部校正用反射基準部材6と拡散反射成光の一部を計測する受光手段9の距離が極端に近づくため、投光手段8からの素子孔g8を通る照射光による拡散反射光が受光手段9に素子孔g9を通し十分採取されるように光線経路を確保する必要がある。そのためには、該センサのホルダー12内の投光及び受光手段の各々の配置は
図1に示すように投光手段からの出射窓と拡散反射光の受光手段9への入射窓が近接配置されていることが望ましい。
更に、後述するように、本発明ではトナー付着量センサの検出面を一括りとして汚染状態の判定を行なうため、二つの受光手段の光入射窓も近接配置されていることが望ましい。
【0035】
図3を用いて、本発明によるトナー付着量センサの検出面の汚染状態や像担持体表面の汚染状態を診断する仕組みについて更に詳しく説明する。
【0036】
図3(a)はシャッター開状態での像担持体による鏡面反射光の受光量
による受光手段の
光電流初期値と診断時の変化の様子および診断時の受光量
による受光手段の
光電流低下の要因となる各部位の汚染状態を模式的に描いたものである。診断時の像担持体による鏡面反射光は、トナー付着量センサの検出面の汚染の程度に応じた受光量の低下分とともに像担持体表面の汚染の程度に応じた受光量の低下分が初期値から減算されることになる。
ここで、像担持体表面の汚染による鏡面反射受光量の低下による受光手段の光電流低下を−Icsm、検出面の汚染による鏡面反射受光量の低下による受光手段の光電流低下を−I ciop(s)、とすると汚染状態を診断した時の初期状態からの鏡面反射受光量の低下による受光手段の光電流低下分ΔIsrは数式1である。
【0037】
【数1】
【0038】
図3(b)はシャッター閉状態での受光部校正用反射基準手部材による拡散反射受光の初期値と診断時の変化の様子および診断時の受光量低下の要因となる各部位の汚染状態を描いたものである。診断時の受光部校正用反射基準手部材による拡散反射光はトナー付着量センサの検出面の汚染の程度に応じた受光量の低下分が初期値から減算されることになる。
ここで、検出面の汚染による拡散反射受光量の低下による受光手段の光電流低下を−Iciop(d)、とすると汚染状態を診断した時の初期状態からの拡散反射受光量の低下による受光手段の光電流低下分ΔIdrは数式2である。
【0039】
【数2】
【0040】
更に、シャッター開状態での像担持体による鏡面反射受光量初期値
による受光手段の光電流をIsr、シャッター閉状態での受光部校正用反射基準手部材による拡散反射受光量
による受光手段の光電流をIdrとし、トナー付着量センサの鏡面反射用受光手段と拡散反射受光手段は一つのハウジングでパッケージされており、二つの受光手段の光入射窓が近接配置されており、二つの光入射窓を覆うカバー面の汚染度が同程度とみなせば、シャッター開状態での検出面の汚染による鏡面反射受光量
による受光手段の光電流低下分I ciop(s)の鏡面反射受光量初期値
による受光手段の光電流Isrに対する割合は、シャッター閉状態での検出面の汚染による拡散反射受光量
による受光手段の光電流低下分I ciop(d)の拡散反射受光量初期値
による受光手段の光電流Idrに対する割合とほぼ等しく、数式3となる。
【0041】
【数3】
【0042】
式3より、シャッター開状態での像担持体表面の汚染による鏡面反射受光量
による受光手段の光電流低下分Icsmの鏡面反射受光量初期値
による受光手段の光電流Isrに対する割合は数式4となる。
【0043】
【数4】
【0044】
よって、シャッター閉状態における拡散反射受光量の初期値に対する変化分や、シャッター開状態における鏡面反射受光量の初期値に対する変化分を検出することにより、トナー付着量センサの検出面の汚染状態や、像担持体表面の汚染状態を診断することが可能となる。
【0045】
ここで、トナー付着量センサを用いてシャッター開状態、およびシャッター閉状態に前述の鏡面反射受光量の初期値に対する変化分と拡散反射受光量の初期値に対する変化分を検出する方法について説明する。
【0046】
図4はトナー付着量センサを含めた前述の各受光量の初期値に対する変化分を検出するための構成を示す図である。
この構成では、トナー付着量センサ301は像担持体2表面を照射する投光手段としてLED308と反射光を検出する二つの受光手段としてSiフォトダイオード309および310の他、LED308の光量に対するモニタ手段としてSiフォトダイオード311を有しており、LED308の光量の一部を所定比率で取り込むように配置されている。そしてSiフォトダイオード311からの出力が一定となるように光量制御部330によりLED308の駆動条件が制御される。
【0047】
光量制御部330は画像形成装置システムのCPUからの光量制御信号をD/A変換器を経由して光量基準電圧Vref(IFc)として受け取る。光量制御部330の制御器331は、誤差増幅器と定電流型の発光素子駆動器から成り、LED308の駆動電流をフィードバック制御する。即ち前記誤差増幅器はSiフォトダイオード311からのモニタ出力を光量基準電圧Vref(IFc)と比較し、もしもSiフォトダイオード311からのモニタ出力が光量基準電圧Vref(IFc)よりも大きい場合には、Siフォトダイオード311からのモニタ出力が光量基準電圧Vref(IFc)と等しくなるまで発光素子駆動器からの出力を減じてLED308からの光量を低下させ、反対にSiフォトダイオード311からのモニタ出力が光量基準電圧Vref(IFc)よりも小さい場合にはSiフォトダイオード311からのモニタ出力が光量基準電圧Vref(IFc)と等しくなるまで発光素子駆動器からの出力を増してLED308からの光量を増加させる。
【0048】
増幅部320は、Siフォトダイオード309および310による検出出力信号の増幅を行う。通常増幅器321および322は、前置増幅器として出力特性のリニアリティ確保の観点からオペアンプを用いたトランスインピーダンス方式のI−V変換器が用いられる。
ここで、トナー付着量センサ301の検出方式が2PD方式の場合、増幅器321の出力はカラートナー濃度検出に、増幅器322の出力は黒トナー濃度検出のためにA/D変換器を通して画像形成装置システムのCPUに送られ判定処理される。
また、トナー付着量センサ1の検出方式が偏光分離方式の場合、増幅器321と増幅器322の出力は差動増幅器に送られ、トナー付着量情報としてA/D変換器を通して画像形成装置システムのCPUに送られ判定処理される。
増幅部320は診断実施時に、シャッター4が開状態での反射光をSiフォトダイオード310で検出した値として電圧Vsを増幅器322から出力し、シャッター4が閉状態での反射光をSiフォトダイオード309で検出した値として電圧Vdを増幅器
321から出力する。
【0049】
340は光量補正電圧発生部であり、誤差増幅器341と342、および三つのアナログSW343、344、345により構成される。これを付設したことが本実施例の第1の特徴である。
診断実施時にはSW345が閉じて、光量制御部330の電圧加算器322に光量補正電圧発生部330の出力電圧が重畳されるようになる。
SW344はシャッター閉の動作に同期して閉じられ、シャッター閉状態の診断を行う。このとき誤差増幅器342はシステムのROMに格納されていたVd初期値(新品状態)と増幅器321の検出電圧Vdを比較する。トナー付着量センサ1の検出面が汚染された場合、増幅器321の検出電圧VdはVd初期値よりも小さくなるので、誤差増幅器342出力がSW344およびSW345を通して光量制御部330の電圧加算器322に増幅器321の検出電圧VdがVd初期値と等しくなる光量補正電圧ΔVc(Vd)を重畳させる。
SW
343はシャッター開の動作に同期して閉じられ、シャッター開状態の診断を行う。このとき誤差増幅器341は診断実施時には画像形成装置システムのROMに格納されていたVs初期値(新品状態)と増幅器322の検出電圧Vsを比較する。トナー付着量センサ301の検出面および像担持体表面が汚染された場合、増幅器322の検出電圧VsはVs初期値よりも小さくなるので、誤差増幅器341出力がSW343およびSW345を通して光量制御部330の電圧加算器322に増幅器322の検出電圧VsがVs初期値と等しくなる光量補正電圧ΔVc(Vs)を重畳させる。
シャッター開閉による診断のシーケンスに従い光量補正電圧ΔVc(Vd)およびΔVc(Vs)はCPUに取り込まれ、予め画像形成装置システムで個別に設定されている光量基準電圧Vref(IFc)に対するシャッター開閉時の変化率Rc(d),Rc(s)が計算され、トナー付着量センサの検出面の汚染状態や、像担持体表面の汚染状態が診断される。
【0050】
本実施例では、前述の汚染状態を判定する仕組みの説明のようにトナー付着量センサの検出面の汚染状態や、像担持体表面の汚染状態の診断を、直接、シャッター閉状態における拡散反射受光量の初期値に対する変化分や、シャッター開状態における鏡面反射受光量の初期値に対する変化分を検出して行うのではなく、シャッター閉状態における拡散反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための投光手段側の光量補正電圧ΔVc(Vd)とシャッター開状態における鏡面反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための投光手段側の光量補正電圧ΔVc(Vs)を計測することで診断を実施しており、これが本実施例の第2の特徴である。このようにした理由は以下の通りである。
【0051】
図3に示すように、トナー付着量センサとシャッター開閉時の被反射面である像担持体表面までの検出距離と受光部校正用反射基準部材までの検出距離が大きな差があり、特に診断時に拡散反射受光量を検出するSiフォトダイオード309に必要とされるダイナミックレンジは非常に大きくなってしまう。
前置増幅器としてトランスインピーダンス方式のI−V変換器を用いて受光手段がSiフォトダイオードの短絡モード動作であっても、Siフォトダイオードの内部等価直列抵抗によりリニアリティに歪みを生ずる。特にトナー付着量センサに用いるような小型サイズにSiフォトダイオードには注意が必要である。(
図5参照)
更に、診断時に拡散反射受光量を検出するSiフォトダイオード309に流れる光電流が大きくなりすぎた場合、通常のトナー付着量検出時における前記I−V変換器の変換率設定では、電源電圧によって定まる前記I−V変換器の出力電圧の飽和値を超えてしまうという恐れもある。
このような場合、受光量の初期値に対する変化分の計測では汚染状態を正等に評価していない懸念がある。
よって、受光量を初期値に対して大きく変化させない方法、即ち汚染状態を投光手段の光出力の増加量で評価することとしたのである。
【0052】
すなわち、LED308が通常のトナー付着量検出時における駆動電流付近でリニアリティが十分確保されているとすれば、診断実施時のシャッター開状態での像担持体および検出面の汚染による鏡面反射受光量低下分の鏡面反射受光量初期値に対する割合は、トナー付着量検出時初期のLED308の駆動電流設定値(初期値)Ifisに対する診断実施時の鏡面反射受光量低下分を補正するための補正電流ΔIf(Vs)の割合は等しいと考えられる。
同様に、診断実施時のシャッター閉状態での検出面の汚染による拡散反射受光量低下分の拡散反射受光量初期値に対する割合は、トナー付着量検出時初期のLED308の駆動電流設定値(初期値)Ifisに対する診断実施時の拡散反射受光量低下分を補正するための補正電流ΔIf(Vd)の割合は等しいと考えられる。
また、
図4における光量制御部330の発光素子駆動器331は
図6に示すような定電流型なので、誤差増幅器からの入力電圧Vinに対してLEDの駆動電流のリニアティは確保されていると考えられる。尚、
図6は発光素子駆動器331の一例を示すもので、エミッタ抵抗Reの電圧降下を帰還信号として利用することで、ReとLEDに流れる電流を制御する仕組みになっている。
【0053】
この場合、式3によるシャッター開状態での検出面の汚染による鏡面反射受光量
による受光手段の光電流低下分Iciop(s)の鏡面反射受光量初期値
による受光手段の光電流Isrに対する割合は数式3−2となる。
【0054】
【数3-2】
【0055】
また数式4によるシャッター開状態での像担持体表面の汚染による鏡面反射受光量
による受光手段の光電流低下分Icsmの鏡面反射受光量初期値
による受光手段の光電流Isrに対する割合は数式4−2となる。
【0056】
【数4-2】
【0057】
よって、シャッター開状態での像担持体および検出面の汚染による鏡面反射受光量低下分の鏡面反射受光量初期値に対する割合、およびシャッター閉状態での検出面の汚染による拡散反射受光量低下分の拡散反射受光量初期値に対する割合を評価することによる汚染状態の診断は、光量基準電圧Vref(IFc)に対する、シャッター閉状態における拡散反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための投光手段側の光量補正電圧ΔVc(Vd)の割合と、シャッター開状態における鏡面反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための投光手段側の光量補正電圧ΔVc(Vs)の割合とを求めることで同等の診断が可能である。
【0058】
図7は本実施例のおける診断実施時のシーケンスの一例を示すフローチャートである。本診断の初期段階では、まず残留トナーの影響を排除するため像担持体の徐電やクリーニング工程を施すとともに、トナー付着量センサの検出面の清掃機構を有する画像形成装置の場合は検出面のクリーニングを実施する。また
図4においてSW345を導通状態とし、光量制御部330の電圧加算器
332に光量補正電圧発生部330からの出力電圧が重畳されるようになる(STEP101)。
【0059】
次にシャッター閉状態での測定を行なう。まずシャッターを閉じることにより、センサと像担持体との光路を遮蔽し、受光部校正用反射基準部材がトナー付着量センサの検出面に正対するように配置される。また
図4におけるSW344を同時に導通状態とし(SW343は不通状態)、光量補正電圧発生部330内の誤差増幅器
342により拡散反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための光量補正電圧ΔVc(Vd)が出力されるようになる(STEP102)。
シャッターを閉じる動作後、システムが安定するために適宜設定された余裕時間を経過した後に光量補正電圧ΔVc(Vd)を画像形成装置システムCPUにA−D変換器を通して取り込まれる(STEP103)。
【0060】
次にシャッター開状態での測定を行なう。シャッターを開くことにより、センサと像担持体との光路が再開され、通常のトナー付着量検出時の配置となる。また同時に
図3におけるSW344が不通状態に、SW343が導通状態にされ、光量補正電圧発生部330内の誤差増幅器
341により鏡面反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための光量補正電圧ΔVc(Vs)が出力されるようになる(STEP104)。
シャッターを開く動作後、システムが安定するために適宜設定された余裕時間を経過した後に光量補正電圧ΔVc(Vs)を画像形成装置システムCPUにA−D変換器を通して取り込まれる(STEP105)。
【0061】
次にSTEP106でCPUの論理演算装置によって光量基準電圧Vref(IFc)に対する光量補正電圧ΔVc(Vd)の割合をシャッター閉状態での変化率Rc(d)として、
Rc(d)= ΔVc(Vd)/Vref(IFc) により求められる。
同様に次のSTEP107で、光量基準電圧Vref(IFc)に対する光量補正電圧ΔVc(Vs)の割合をシャッター開状態での変化率Rc(s)として、
Rc(s)= ΔVc(Vs)/Vref(IFc) により求められる。
さらにSTEP108で、減算処理にて前述の変化率Rc(s)とRc(d)の変化率差RMが、
RM= Rc(s)−Rc(d) により求められる。
【0062】
STEP109以降では求められた変化率Rc(d)と変化率差RMを各々に対応する閾値TVdおよび閾値TVsを比較してセンサ及び像担持体の汚染状態の判定を行なう。
尚、閾値TVdはシャッター閉状態での変化率Rc(d)の最大許容値で、例えば予めセンサの検出面の汚染、傷の状態における限度サンプルを作成し、
図4に示す構成に組み付けて求められた変化率Rc(d)を閾値TVdとして設定されるものである。
また、閾値TVsはシャッター開状態での変化率Rc(s)の最大許容値で、例えば予め像担持体表面の汚染、傷の状態における限度サンプルを作成し、変化率Rc(d)による影響を回避するため未使用の状態(新品状態)のトナー付着量センサとともに、
図4に示す構成に組み付けて求められた該変化率Rc(s)を閾値TVsとして設定されるものである。
STEP109での判定は変化率Rc(d)と変化率差RMの二つの非評価値と閾値TVdおよび閾値TVsによる次の四通りの関係条件式により多方向分岐の動作が実行される。
【0063】
(1)STEP109での結果がRc(d)<TVd,RM<TVsとなる場合
各機能は正常であると判定され、STEP110に移動し、
図3におけるSW343〜SW345が初期状態にリセット(全て非導通)され、以降の画像形成動作を再開させて汚染状態の診断を終了する。
【0064】
(2)STEP109での結果がRc(d)≧TVd,RM<TVsとなる場合
検出面の汚染や傷によりトナー付着量センサに不具合が生じているという判定になり、STEP111に移動して画像形成装置の表示部で「センサ故障」を表示し、さらにSTEP114で「サービスコール」のメーセージも表示し、ユーザに対してサービスセンターに調査を依頼するよう促し診断を終了する。
尚、画像品質が劣っても印刷を継続したいというニーズも想定される場合、手動でSTEP110へ移動し画像形成動作再開の動作をさせるようにしても良い。
【0065】
(3)STEP109での結果がRc(d)<TVd,RM≧TVsとなる場合
像担持体が表面の汚染や傷により交換時期である判定になり、STEP112に移動し、「感光ドラム交換」やあるいは中間転写ベルト交換」を表示し、さらにSTEP114に移動し事例(2)と同様の動作後に診断を終了する。
【0066】
(4)STEP109での結果がRc(d)≧TVd,RM≧TVsとなる場合
トナー付着量センサに不具合が生じ、像担持体も交換時期である判定になり、STEP113に移動し、「センサ故障」の表示と、「感光ドラム交換」やあるいは「中間転写ベルト交換」を表示し、さらにSTEP114に移動し事例(2)と同様の動作後に診断を終了する。
【0067】
尚、前述の事例(2)あるいは事例(4)におけるトナー付着量センサの不具合にはセンサの検出面に対する清掃機構にトラブルが生じている場合も含まれることに留意すべきである。すなわち、何らかのトラブルによりクリーニング処理がなされない場合、あるいはクリーナー部材に異物が混入しセンサの検出面に深刻な損傷を与えた場合、双方ともに前述の事例(2)あるいは事例(4)の判定結果となり得る。
従って、修理担当者は「センサ故障」表示での異常原因を特定し、必要な措置をとるためには、まず清掃機構に異常がないかを確認すべきである。必要に応じて、清掃機構を補修した後に再度STEP101からの診断を実行させ、センサの異常有無の確認を実施することになる。
【0068】
また、画像形成装置にトナー付着量センサの検出面を清掃する機能のない防塵目的のみのシャッター機構を具備する場合は、STEP101において該検出面はクリーニング処理がなされないので、前述の事例(2)あるいは事例(4)におけるトナー付着量センサの不具合の状況は検出面の清掃不足の場合もあり得る。この場合、STEP113における「センサ故障」の表示は「センサ清掃要求」という表示とすべきであろう。
この場合、「センサ清掃要求」の表示に従ってユーザあるいは修理担当者がトナー付着量センサの検出面をクリーニングし、再度STEP101からの診断を実行させ、前述の事例(2)あるいは事例(4)の結果となれば、トナー付着量センサの検出面の汚染、傷は清掃で回復できない重度な状態にあると判定できる。
【0069】
更に、前述の事例(3)あるいは事例(4)において、像担持体が交換時期にあるという判定は、閾値TVsを低くして、像担持体が交換時期に対するマージンを稼ぎ、ユーザに像担持体が交換までに画像品質を確保しながら残された許容印刷枚数の目安を表示するという設定も可能である。
【0070】
このように、本実施例ではシャッター閉状態における受光部校正用基準手段からの拡散反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための投光手段側の光量補正電圧ΔVc(Vd)とシャッター開状態における像担持体からの鏡面反射受光量の初期値に対する低下分を補正するための投光手段側の光量補正電圧ΔVc(Vs)を計測することで診断を実施しており、像担持体表面状態とトナー付着量センサの検出面の状態を双方同時に精度良く診断ができ、その結果に応じて必要な措置を速やかに取ることが可能となる。
【実施例2】
【0071】
次に、本発明にかかるトナー付着量センサの検出面および像担持体表面の汚染、傷の状態を診断する方法の第2実施形態について説明する。この実施形態に用いる画像形成装置のシャッター及び清掃の機構と該センサの設置環境については、前述した第1実施例の画像形成装置と同一であるので説明を省略する。
本実施例では、第1実施形態の
図4における光量補正電圧発生部340によるフィードバックループを省略し、
図3を用いた汚染状態を診断する仕組みの説明のとおり式3及び式4に従い、トナー付着量センサの検出面や像担持体表面の汚染状態の診断をシャッター閉状態における拡散反射受光量の初期値に対する変動比や、シャッター開状態における鏡面反射受光量の初期値に対する変動比を検出することにより行なう。これが本実施例の第1の特徴である。
【0072】
図8は本実施例によるトナー付着量センサを含めた前述の各受光量の初期値に対する変化分を検出するための構成を示す図である。診断実施時に増幅器721の出力はシャッター閉状態の出力として、増幅器722の出力はシャッター開状態の出力として扱われる。トナー付着量センサ701、光量制御部730、増幅部720の基本的な機能については
図4の内容と同等であるので説明を省略するが、
図4の構成に比較して光量補正電圧発生部340が削除されている。
トナー付着量センサ701は、第1の実施例と同様に2PD方式および偏光分離方式のいずれでも対応可能であるが、トナー付着量検出時に、2PD方式の場合、Siフォトダイオード709にて検出し増幅器721で増幅された出力はカラートナー濃度検出信号に、Siフォトダイオード710にて検出し増幅器722で増幅された出力は黒トナー濃度検出信号として処理され、偏光分離方式の場合、増幅器721と増幅器722の出力は差動増幅器(図示せず)に送られ、トナー付着量検出信号として処理される。
【0073】
第1の実施例で説明したとおり、受光量の初期値に対する変動比を検出して診断を実施するためには、受光手段のリニアリティと前置増幅器の出力電圧範囲の制限により検出信号が飽和させないように、シャッター閉状態においてSiフィトダイオード709で検出される受光部校正用反射基準部材からの反射光量を量的に抑える必要がある。このため第1の実施例に比較して
図8の各構成要素には幾つかの制約が生ずる。
【0074】
まず、トナー付着量センサ701は、第1の実施例と同様に2PD方式および偏光分離方式のいずれでも対応可能であるが、偏光分離方式でも
図2aに代表されるように一つの入射窓からp偏光成分とs偏光成分の反射光を同時に受けて、偏光素子としてキューブ型あるいはプレート型のプリズムによりホルダー内部でp偏光成分とs偏光成分を分離するものは、入射窓の光軸の向きを操作してシャッター閉状態でのs偏光成分の受光量を単独で軽減させることができないため本実施形態の使用には適さない 。
偏光分離方式を用いる場合、
図2bに示すような偏光フィルタを用い、p偏光用とs偏光用に二つの入射窓を有するタイプが良い。このタイプではs偏光用の入射窓及び素子孔の光軸を独立して調整することが可能で、シャッター閉状態でのs偏光の検出光量を低く抑え, 通常のトナー付着量検出時に対してダイナミックレンジの肥大化を抑えることができる。
【0075】
具体的には
図9に示すように、Siフィトダイオード709の素子孔及び入射窓の光軸を検出面の垂線に対してLED708方向に傾斜させる用にして調整して、シャッター閉状態でSiフィトダイオード709に取り込まれる受光部構成用基準手段からの反射光量を制限する方法が良い。
尚、上記構造はトナー付着量センサ701が2PD方式の場合にはトナー付着量検出時の鏡面反射光の入射を防ぎ、拡散反射光の検出能を向上させるために一般的に実施されているものである。
【0076】
次にSiフィトダイオード709については、シャッター閉状態での反射光を検出するために、通常のトナー付着量検出時に比較して光量の急騰に追従できるようなリニアリティが担保されているか確認しておく必要がある。
また増幅部320のリニアリティも特に重要であるため、前置増幅器721、722はトランスインピーダンス方式のI−V変換器であることが必須で、抵抗式のI−V変換回路等の使用は避けるべきである。
【0077】
さらに、シャーター機構4に付設される受光部校正用反射基準部材は表面が安定したマット面であることの他、シャッター閉状態でのSiフィトダイオード709の検出光量を適正値とするために光学濃度を選択する必要がある。
【0078】
あわせて、増幅部320の出力を受けるA−D変換器の量子化誤差を軽減するために、上述した各構成要素の調整を画像形成層によるトナー付着量センサ設置環境で実施し、トナー付着量検出時と診断実施時のシャッター閉時状態におけるSiフィトダイオード709の受光出力比を3倍程度、好ましくは2倍程度に収まるように調整することが望ましい。
【0079】
図11は本実施形態のおける診断実施時のシーケンスの一例を示すフローチャートであるが第1の実施形態の場合(
図7)とほぼ同様である。初期段階では、まず残留トナーの影響を排除するため像担持体の徐電やクリーニング工程を施すとともに、センサ検出面の清掃機構を有する画像形成装置の場合は検出面のクリーニングを実施する。(STEP201)。
【0080】
次にシャッター閉状態での測定を行なう。まずシャッターを閉じることにより、センサと像担持体との光路を遮蔽し、受光部校正用反射基準部材がセンサの検出面に正対するように配置され(STEP202)、受光部校正用反射基準部材からの反射を受光するSiフィトダイオード709の増幅器721による増幅出力Vdが画像形成装置システムCPUにA−D変換器を通して取り込まれる。(STEP203)
【0081】
次にシャッター開状態での測定を行なう。シャッターを開くことにより、センサと像担持体との光路が再開され、通常のトナー付着量検出時の配置となり(STEP204)、像担持体表面からの反射光を受けたSiフィトダイオード710の増幅器722による増幅出力Vsが画像形成装置システムのCPUにA−D変換器を通して取り込まれる。(STEP205)
【0082】
次にSTEP206でCPUの論理演算装置によってシャッター閉状態での増幅器721による増幅出力初期値Vdinに対する診断時の増幅出力Vdの変化利Rv(d)を
Rv(d)= (Vdin―Vd)/Vdin により求められる。
同等に次のSTEP207で、シャッター開状態での増幅器722による増幅出力初期値Vsinに対する診断時の増幅出力Vsの変化利Rv(s)を
Rv(s)= (Vsin―Vs)/Vsin により求められる。
さらにSTEP208で、減算処理にて前述の変化率Rv(d)とRv(s)間の変化率差RM’を
RM’= Rv(s)−Rv(d) により求められる。
【0083】
STEP209以降では求められた変化率Rv(d)と変化率差RM’を各々に対応する閾値TVd’および閾値TVs’を比較してセンサ及び像担持体の汚染状態の判定を行なう。
尚、閾値TVd’はシャッター閉状態での変化率Rv(d)の最大許容値で、例えば予めセンサの検出面の汚染、傷の状態における限度サンプルを作成し、
図8に示す構成に組み付けて求められた変化率Rv(d)を閾値TVd’として設定されるものである。
また、閾値TVs’はシャッター開状態での変化率Rv(s)の最大許容値で、例えば予め像担持体表面の汚染、傷の状態における限度サンプルを作成し、変化率Rv(d)による影響を回避するため未使用の状態(新品状態)のトナー付着量センサとともに、
図8に示す構成に組み付けて求められた該変化率Rv(s)を閾値TVs’として設定されるものである。
【0084】
STEP209での判定は変化率Rv(d)と変化率差RM’の二つの非評価値と閾値TVd’および閾値TVs’による次の四通りの関係条件式により多方向分岐の動作が実行される。
(1)STEP209での結果がRv(d)<TVd’,RM’<TVs’となる場合
STEP210へ移動し画像形成動作再開する。
(2)STEP209での結果がRv(d)≧TVd’,RM’<TVs’となる場合
STEP211へ移動し「センサ故障」表示後、STEP214で「サービスコール」を表示する。
(3)STEP209での結果がRc(d)<TVd,RM≧TVsとなる場合
STEP212へ移動し「感光ドラム交換」あるいは「中間転写ベルト交換」を表示後、STEP214で「サービスコール」を表示する。
(4)STEP209での結果がRc(d)≧TVd,RM≧TVsとなる場合
STEP213へ移動し「センサ故障」と「感光ドラム交換」あるいは「中間転写ベルト交換」を同時に表示後、STEP214で「サービスコール」を表示する。
尚、各分岐移動後の診断終了までの処置は
図7のフローにおける処置と全く同様なので、個々の詳細な説明は省略する。
【0085】
このようにすれば本実施形態の
図8に示す構成により、受光出力の変化によって汚染状態の診断が実施でき、
図4の示した光量補正電圧発生部340が削除でき第1実施例よりコストダウンが可能となる。
【0086】
尚、第2実施例では、第1実施例と同様に、トナー付着量センサの投光手段に発光量フィードバック制御回路を設けているが、診断時に発光量フィードバック制御回路が診断処理動作に合わせて特別な機能を担うわけではなく、投光手段の光出力の温度依存性の変化および経時変化が十分に無視できる程度に小さい場合には、発光量フィードバック制御回路を設けずとも第2実施例と同様に診断が可能である。
また、投光手段の光出力の変動による誤差を許容できるのであれば、第2実施例の診断方法において発光量フィードバック制御回路を設ける必要はない。
本発明をもとに、上記のような処置は当業者であれば容易に可能な変更であろう。