(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781444
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】高性能繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/76 20060101AFI20150907BHJP
D02J 1/22 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
D01F6/76 Z
D02J1/22 L
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-548382(P2011-548382)
(86)(22)【出願日】2010年2月2日
(65)【公表番号】特表2012-516948(P2012-516948A)
(43)【公表日】2012年7月26日
(86)【国際出願番号】US2010022796
(87)【国際公開番号】WO2010088638
(87)【国際公開日】20100805
【審査請求日】2013年1月25日
(31)【優先権主張番号】61/149,118
(32)【優先日】2009年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エイ・バーテロ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・デカーマイン
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/072975(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0139065(US,A1)
【文献】
特表平05−506058(JP,A)
【文献】
米国特許第06132872(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0009903(US,A1)
【文献】
特開2004−141441(JP,A)
【文献】
米国特許第05300122(US,A)
【文献】
特公昭47−031440(JP,B1)
【文献】
特開平06−073684(JP,A)
【文献】
特開平01−250409(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/142663(WO,A1)
【文献】
特表2002−544356(JP,A)
【文献】
特開2005−161599(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/100573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/76
D02J 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)〜(c)からなる繊維:
(a)ポリエーテルケトンケトン
ここで、該ポリエーテルケトンケトンは、次式I及び式IIで表される繰り返し単位から構成される;
−A−C(=O)−B−C(=O)− I
−A−C(=O)−D−C(=O)− II
[式中、Aはp,p’−Ph−O−Ph−基であり、Phはフェニレン基であり、Bはp−フェニレンであり、そして、Dはm−フェニレンである。]
(b)二硫化タングステン、酸化バナジウム、酸化マンガン、銅、ビスマス、アルミニウムシリケート、イモゴライト、円柱スズ鉱、ハロイサイト、ブーランジェ鉱及びアルミノシリケートよりなる群から選択される1種以上の無機ナノチューブである鉱物質ナノチューブ、及び
(c)任意に、安定剤及び加工助剤よりなる群から選択される1種以上の添加剤。
【請求項2】
前記繊維がモノフィラメントである、請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
前記繊維がマルチフィラメントである、請求項1に記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維が、50ミクロン〜2mmの直径を有する、請求項1〜3いずれか1項に記載の繊維。
【請求項5】
前記繊維が、0.01〜30重量パーセントの鉱物質ナノチューブを含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の繊維。
【請求項6】
前記ポリエーテルケトンケトン又はポリエーテルケトンケトン混合物が、DSCで測定して、10〜40%の結晶化度を有する、請求項1〜5いずれか1項に記載の繊維。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の複数の繊維を含む、織布。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか1項に記載の複数の繊維を含む、不織布。
【請求項9】
請求項1〜6いずれか1項に記載の複数の繊維を含む、糸。
【請求項10】
請求項1〜6いずれか1項に記載の複数の繊維を含む、ブレイド。
【請求項11】
請求項1〜6いずれか1項に記載の複数の繊維からなる、移植可能なブレイデッドデバイス。
【請求項12】
前記ポリエーテルケトンケトンと前記鉱物質ナノチューブとからなる請求項1に記載の繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く各種の末端用途において有用な、改良された耐熱性、高強度繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリールエーテルケトンをベースとする繊維は当業者には公知であり、以下の特許にも明示されている:米国特許第4,747,988号明細書;米国特許第5,130,408号明細書;米国特許第4,954,605号明細書;米国特許第5,290,906号明細書;及び米国特許第6,132,872号明細書。それら繊維を、各種の末端用途、特に、その繊維又はそれら繊維から二次加工された物品を、長期間にわたって高温に暴露されると予想される用途において使用することが提案されてきた。例えば、米国特許第4,359,501号明細書及び米国特許第4,820,571号明細書には、各種の工業プロセスにおいて高温・高速運搬用途に好適な溶融押出し加工が可能なポリアリールエーテルケトンからなる工業用布が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,747,988号明細書
【特許文献2】米国特許第5,130,408号明細書
【特許文献3】米国特許第4,954,605号明細書
【特許文献4】米国特許第5,290,906号明細書
【特許文献5】米国特許第6,132,872号明細書
【特許文献6】米国特許第4,359,501号明細書
【特許文献7】米国特許第4,820,571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、そのような繊維の性質に更なる改良が加わることは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの態様においては、ポリエーテルケトンケトン及び鉱物質ナノチューブを含む繊維が提供される。また別な態様においては、そのような繊維を製造する方法が提供されるが、前記方法には、前記ポリマー組成物に流動性を与えるのに有効な温度に前記ポリマー組成物を加熱する工程、及びオリフィスを通過させて前記加熱されたポリマー組成物を押出加工して、前記繊維を形成させる工程が含まれる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の繊維は、優れた熱的性能、化学薬品及び溶媒抵抗性(加水分解抵抗性を含む)、耐摩擦性、延性、強度、難燃性ならびに耐屈曲性及び耐摩耗性を有しており、そのために、繊維又は、そのような繊維を含む布、糸、マットもしくはその他の製品が、高温での寸法安定性を保持しながらも、摩耗及び化学薬品の攻撃に対する抵抗性を必要とされるような、各種の用途、装置又はプロセスにおいて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明:
本発明による繊維は、有利には、ポリエーテルケトンケトン及び鉱物質ナノチューブからなるポリマー組成物を使用して製造される。鉱物質ナノチューブを組み入れることによって、引張強度及び弾性率によって測定した繊維の強度、更には(繊維を高温に暴露させたときの)繊維の寸法安定性が向上することが見出された。更に、鉱物質ナノチューブを存在させることによって、核形成効果が生じ、ポリエーテルケトンケトンの結晶構造の変態がもたらされて、それが繊維を配向させるのに役立つと考えられる。ポリエーテルケトンケトンは、他のエンジニアリングサーモプラスチックよりも、鉱物質ナノチューブの表面をよりよく濡らす性質を示し、その結果、ポリマーマトリックスと鉱物質ナノチューブとの間で高い接着性が得られる(それによって、鉱物質ナノチューブの担持量を更に増やすことが可能となって、繊維の強度が更に改良される)。更に、ポリエーテルケトンケトンを使用することによって、特定の用途のために、結晶化度、従って融点(Tm)を最適化することが可能となるが、これは、ポリエーテルエーテルケトンでは不可能なことである。
【0008】
本発明において使用するのに好適なポリエーテルケトンケトンには、次の式I及びIIによって表される繰り返し単位を含んでいて(又は、それらから実質的になるか、又はそれらからなっていて)よい:
−A−C(=O)−B−C(=O)− (I)
−A−C(=O)−D−C(=O)− (II)
ここで、Aはp,p’−Ph−O−Ph−基であり、Phはフェニレン基であり、Bはp−フェニレンであり、そして、Dはm−フェニレンである。そのポリエーテルケトンケトンの中の式I:式II(T:I)の異性体比は、(100:0)〜(0:100)の範囲とすることが可能であり、また、ある種の繊維の性質の組合せを達成したいと望む場合には、容易に変化させることも可能である。例えば、T:Iの比率を調節して、非晶質(非結晶質)ポリエーテルケトンケトンが得られるようにしてもよい。結晶化度が低いか又は結晶化度がゼロのポリエーテルケトンケトンから作成した繊維は、一般的には、より結晶質なポリエーテルケトンケトンから作成した繊維よりも、硬さと脆さが低くなる。一方、ポリエーテルケトンケトンの結晶化度が高くなるにつれて、その繊維の強度もまた通常は高くなる。特に、部分的に結晶質なポリエーテルケトンケトンを含む繊維は、繊維の後押出加工の延伸の際に配向させて、その繊維を更に強化させることも可能である。示差走査熱量測定(DSC)によって測定し、100%結晶質のポリエーテルケトンケトンの理論エンタルピーが130J/gであると仮定すると、一つの実施態様においては、ポリエーテルケトンケトン又は複数のポリエーテルケトンケトンの混合物の結晶化度は、0〜約50%である。また別な実施態様においては、そのポリエーテルケトンケトンの結晶化度が約10〜約40%である。
【0009】
ポリエーテルケトンケトンは当業者には周知であり、以下の特許に記載された方法を含め、各種適切な重合法を使用して調製することができる:米国特許第3,065,205号明細書;米国特許第3,441,538号明細書;米国特許第3,442,857号明細書;米国特許第3,516,966号明細書;米国特許第4,704,448号明細書;米国特許第4,816,556号明細書;及び米国特許第6,177,518号明細書(すべての目的において、これら特許のそれぞれのすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れるものとする)。ポリエーテルケトンケトンの混合物を採用してもよい。
【0010】
具体的には、式I:式IIの比率(当業者によってT/I比と呼ばれることもある)は、そのポリエーテルケトンケトンを調製するために使用する各種のモノマーの相対量を変化させることによって、望むように調節することができる。例えば、ポリエーテルケトンケトンは、塩化テレフタロイルと塩化イソフタロイルとの混合物をジフェニルエーテルと反応させることによって合成すればよい。塩化イソフタロイルの量に対して塩化テレフタロイルの量を増やすと、式I:式II(T/I)の比率が高くなるであろう。
【0011】
本発明のまた別な実施態様においては、式I対式IIの比率が異なる複数のポリエーテルケトンケトンを含む、ポリエーテルケトンケトンの混合物を採用する。例えば、T/I比が80:20のポリエーテルケトンケトンを、T/I比が60:40のポリエーテルケトンケトンとブレンドしてもよく、その相対的な比率を選択して、鉱物質ナノチューブと共にコンパウンディングしたときに、その繊維に望まれるバランスのとれた性質を有するポリエーテルケトンケトン混合物が得られるようにする。
【0012】
一般的に言って、式I:式IIの比率が相対的に高いポリエーテルケトンケトンは、式I:式IIの比率が低いポリエーテルケトンケトンよりも、結晶性が高くなるであろう。本発明の繊維の強度、剛性/可撓性、ならびにその他の機械的、熱的、熱機械的及びその他の性質は、ポリエーテルケトンケトン又はポリエーテルケトンケトン混合物の結晶化度を調節することによって、望むように変化させることが可能であって、それにより、他のポリマー又は可塑剤(これらは、相分離の問題を起こす可能性がある)をブレンドする必要がなくなる。
【0013】
適切なポリエーテルケトンケトンは市場の供給源から入手可能であって、例えば、Oxford Performance Materials(Enfield,Connecticut)から商品名OXPEKKとして販売されているポリエーテルケトンケトン、例えばOXPEKK−C(結晶質)及びOXPEKK−SP(ほぼ非晶質)ポリエーテルケトンケトンが挙げられる。
【0014】
先にも述べたように、鉱物質ナノチューブは、本発明の繊維の中に使用されるポリマー組成物における極めて重要な構成要素である。本明細書で使用するとき、鉱物質ナノチューブには無機材料及びカーボンナノチューブが含まれ、それらは、形状が円筒状であって(すなわち、中空の筒状構造を有している)、その内径は典型的には約10〜約300nmであり、長さは典型的には、ナノチューブの直径の10〜10,000倍(例えば、500nm〜1.2ミクロン)である。一般的には、ナノチューブのアスペクト比(長さ対直径)は、比較的大きく、例えば約(10:1)〜約(200:1)となるであろう。それらのチューブは、完全に閉じている必要はなく、例えば、多層の壁を有する緊密に織り上げた巻物の形状をとっていてもよい。
【0015】
ナノチューブは、公知の無機元素、更には炭素からなっていてよいが、そのようなものとしては、二硫化タングステン、酸化バナジウム、酸化マンガン、銅、ビスマス、及びアルミニウムシリケートが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。一つの実施態様においては、そのナノチューブが、周期律表の第IIIa族、第IVa族及び第Va族の元素から選択された少なくとも1種の化学元素から形成されたものであり、例えば炭素、ホウ素、リン及び/又は窒素から作成されたもの、例えば、窒化炭素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、リン化ホウ素、窒化リン、ホウ化窒化炭素からのものである。2種以上の異なったナノチューブのブレンド物を使用してもよい。
【0016】
有用なアルミニウムシリケートとしては、イモゴライト、円柱スズ鉱、ハロイサイト、及びブーランジェ鉱ナノチューブ、更には合成的に調製されたアルミノシリケートナノチューブが挙げられる。それらの性質を変化させたいのであれば、それらのナノチューブの表面を処理したり、変性させたりしてもよい。ポリエーテルケトンケトンと組み合わせる前に、ナノチューブを製錬したり、精製したり、その他の処理を施す(例えば、表面処理、及び/又は他の物質を組み合わせて、その他の物質がナノチューブの内部に保持されるようにする)ことをしてもよい。
【0017】
ポリエーテルケトンケトンと組み合わせる鉱物質ナノチューブの量は、所望により変化させることができるが、一般的には、ポリマー組成物が、少なくとも0.01重量パーセントではあるが30重量パーセントは超えない量の鉱物質ナノチューブを含むようにするであろう。例えば、ポリマー組成物が、約5〜約20重量パーセントの鉱物質ナノチューブを含むようにするのが好適である。そのポリマー組成物には更に、ポリエーテルケトンケトン及び鉱物質ナノチューブ以外の構成要素、例えば安定剤、顔料、加工助剤、更なる充填剤などを含んでいてもよい。本発明のある種の実施態様においては、そのポリマー組成物が、ポリエーテルケトンケトン及び鉱物質ナノチューブから実質的になるか、又はそれらからなっている。例えば、そのポリマー組成物が、ポリエーテルケトンケトン以外のタイプのポリマーを含まないか又は実質的に含まない、及び/又は鉱物質ナノチューブ以外のタイプの充填剤を含まないか又は実質的に含まなくてもよい。
【0018】
ポリマー組成物は、各種適切な方法を使用して、例えば、ポリエーテルケトンケトンと鉱物質ナノチューブとを、それらの構成要素を密に混合するのに効果的な条件下で溶融コンパウンディングすることによって調製してもよい。
【0019】
本発明による繊維は、熱可塑性ポリマーから繊維を製造するための当業者公知の各種の方法を採用して調製すればよいが、溶融紡糸法が特に好適である。例えば、ポリマー組成物(最初はペレット、ビーズ、粉末などの形態にあってよい)を、その組成物を軟化させ、(加圧下に)適切な形状及びサイズの一つ又は複数のオリフィスを有するダイを通過させて、押出加工することを十分に可能とする温度に加熱すればよい。典型的には、そのポリエーテルケトンケトンのTm(溶融温度)よりもほぼ20〜50℃高い温度が適しているであろう。(例えば、10〜100個の孔を含む)紡糸口金を使用して、最初のモノフィラメントを製造すればよいが、その繊維径は、スクリュー、ポンプ、及びポンプ回転速度を調節することによって変化させ、次いでそのフィラメントを延伸操作にかけて、所望の最終的な繊維サイズとする。所望により、紡糸口金のすぐ下に、紡糸した繊維を徐々に冷却するための加熱シリンダーを搭載してもよい。溶融紡糸によって得られた未延伸の繊維を、次いで、加熱媒体の中か又は加熱媒体との接触下で、加熱延伸させてもよい。延伸は、多段で実施することもできる。例えば、押出ダイを使用した溶融紡糸プロセスを実施し、それに続けて、急冷、加熱ロール上での繊維延伸、そして加熱プレート緩和をしてから、繊維をスプールの上に巻き取る。各種のファクターがある内でも特にポリエーテルケトンケトンに基づいて紡糸温度を選択して、溶融粘度が、高い紡糸圧力、紡糸口金の孔の閉塞、及びポリマー組成物の不均質なコアギュレーションを回避するに十分なほどに低いが、ただし、紡糸口金が出てくる押出加工した繊維の流れが切断されるのを回避するに十分なほどに高くなるようにするべきである。ポリマー組成物の分解を抑制するために、過度に高い温度も避けるべきである。
【0020】
繊維の断面形状は所望に応じて変化させてよく、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、星形、三裂形、三角形、その他各種の形状であってよい。繊維は、中実であっても、中空であってもよい。繊維は、モノフィラメントのような連続フィラメントの形状であってもよいし、あるいは分離した長い断片であってもよく、また、2本以上の繊維を紡糸した、例えば糸、紐又はロープのようなマルチフィラメントであってもよい。本発明による繊維は、撚りをかけたり、織ったり、編んだり、接着したり、紡糸したり、あるいは縫ったりして、各種従来から公知のタイプの織物構造、非限定的に挙げれば、例えば織布及び不織布とすることができる。そのような構造には、本発明の繊維に加えて、他の繊維又は材料が含まれていてもよい。例えば、ポリエーテルケトンケトン及び鉱物質ナノチューブからなる繊維を、以下のものと織り交ぜてもよい:炭素繊維、金属ワイヤー、ポリテトラフルオロエチレン繊維、及び/又はその他の熱可塑性プラスチックの繊維(特に、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、芳香族ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルホン、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)などのエンジニアリングサーモプラスチックの繊維)。更に、2種以上の別々なポリマー組成物を含む、本発明による共押出し繊維を調製してもよいが、それらのポリマー組成物の内の少なくとも一つは、ポリエーテルケトンケトン及び鉱物質ナノチューブからなっている。それら別々のポリマー組成物を、例えばコア・シース構造又はサイド・バイ・サイド構造の形態で配してもよい。本発明による繊維を捲縮させて、織布、不織布又は編物構造のバルクを提供してもよい。繊維の直径には限度はないが、特定の末端用途に適合するよう、必要に応じて調節又は変化させてもよい。例えば、その繊維が約50ミクロン〜約2mmの直径を有していてもよい。ミクロ繊維(すなわち、サブデニールの太さを有する繊維)もまた、本発明に従って二次加工することができる。
【0021】
本発明の繊維は、広く各種の末端用途において使用するために、容易に適合させられる。例えば、本発明によるモノフィラメントを、紙の乾燥、織物の染色、布のヒートセット、不織布の接着、及び食品加工のためのオープンメッシュコンベヤ系又はコンベヤ織布(woven conveyor fabrics)に使用してもよい。本発明の繊維からの織布が有利に採用される例を、具体的かつ非限定的に挙げれば、乾燥オーブンのためのベルト、製紙機械ドライヤセクション覆い(paper machine dryer section clothing)、(高圧スチーム噴射に対する暴露も含めて)高温高湿条件下で運転される製紙布(paper forming fabrics)、濾布(劣悪で過酷な条件で使用されるフィルターバッグ、又は高温ガス濾布)、ならびにプレス乾燥紙(press−drying paper)のための布(高温プレスフェルト)などがある。本発明の繊維からなるマルチフィラメント又はモノフィラメントを、宇宙空間用部品、断熱製品、熱可塑性及び熱硬化性複合材料、及びナローウィービング(narrow weaving)に採用してもよい。高い難燃性及び低い発煙性及び/又は、高温及び/又は水、化学薬品及び溶媒のような材料に対する抵抗性を必要とされる各種の織物製品、例えば、特殊な(保護)衣服、遮蔽衣(shielding)、地盤用シート(geotextiles)、農業用シート(agrotextiles)、ドレープ用生地(draperies)、椅子張り地などを、本発明の繊維を使用して製造してもよい。本発明による繊維を含むモノフィラメント、マルチフィラメント、及びステープルファイバーを組み合わせたものを、濾過及び化学的分離プロセスにおいて使用したり、更には各種のタイプの紐、ブレイド(braid)、ブラシ及びコードを製造するのに使用したりすることができる。本発明によって提供される繊維は、多くの医療用途、特に、そのような繊維から二次加工されるか又はそれらを含む物品が、人体の中に移植されたり、そうでなければ人体と接触状態にあったりするような場合において使用することもまた可能である。例えば、それらの繊維を、骨移植などのための複合材料、更には補強パッチ及び縫合及び靱帯のためのブレイドに使用してもよい。更に別な用途においては、本発明の繊維を、伸縮性で可撓性のブレイデッドスリーブ(braided sleeve)又はオーバーブレイド(over−braid)を作成するために使用できる。織ったブレイディング(braiding)を、ワイヤー、ケーブル、パイプ、チューブなどを被覆するように配置し、摩擦及び摩耗から保護することもできる。更に、本発明の繊維を使用して、血管ステント又はパッチのような移植可能なブレイデッドデバイスを製造してもよい。更には、従来からの繊維加工方法を採用するか、修正して、本発明による繊維を二次加工して、他の繊維製品例えば、トウ、ステープルファイバー、スフ糸などにしてもよい。
【実施例】
【0022】
実施例1:ハロイサイト充填PEKKのコンパウンディング
強制空気循環炉中120〜130℃で一夜かけて乾燥させてから、高いイソフタレート比(T/I=60/40)を有するポリエーテルケトンケトン、例えば商品名OXPEKK SP(Oxford Performance Materials製)を、ハロイサイトナノチューブと各種の比率でコンパウンディングして、1、3、5及び10%ナノチューブの混合物を製造するが、これは速度20〜60RPM、温度が315℃(フィードセクション)〜330℃(ダイ)で運転される製品名Killion、27mm、異方向回転2軸スクリュー押出機中でブレンドすることによって実施する。そのユニットには、ストランドダイが備えられていて、1/8”フィラメントを製造し、それを水浴中で冷却してから切断して、1/8”×1/4”のペレットとする。
【0023】
実施例2:繊維の押出加工
実施例1で製造したペレットを、モノフィラメント繊維ダイ及び繊維引取り装置を備えた、製品名DSM Xploreマイクロコンパウンダー、モデル2005にフィードする。そのコンパウンダーを加熱して320℃とし、ペレットを押出機にフィードする。速度及びトルク性能を調節した繊維装置によって、モノフィラメントを引き取る。150〜250℃、好ましくは約200℃の加熱空気を使用して、そのフィラメントを徐々に冷却する。その空気温度を調節して、適切な溶融強度を維持しながら、フィラメントを押出加工し、それを引取ロールに巻取るようにする。60/40のT/I比のPEKKを使用することによって、結晶化度がほとんど無いか、又はまったく無い繊維をまず製造することが可能となるが、その理由は、このグレードのPEKKの結晶化速度が極端に遅いからである。更に、その繊維を後アニリーング及び延伸させることによって、そのフィラメントの性能を用途のために最適化させることができる。