(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾斜面部は、前記傾斜面として、傾斜方向が前記直交方向に向かう第一面と、傾斜方向が前記走行方向に向かう第二面とを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の絶縁セクション。
前記傾斜面部は、前記傾斜面として、傾斜方向が前記直交方向から前記走行方向へと滑らかに変化する曲面を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の絶縁セクション。
前記第一の部分に設けられ、弾性変形することで該第一の部分を前記車両から離間する方向に相対移動させる第二弾性部材をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の絶縁セクション。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された絶縁セクションにおいては、アプローチ板への集電子(パンタグラフ)の接触摺動面が電車線の接触摺動面に比べて半分以下の幅寸法に設定されている。このため集電子がアプローチ板に接触摺動する際の接触面圧が高くなり、パンタグラフの摩耗が増大してしまうおそれがあった。
【0009】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、確実に絶縁を行ないながら集電子の摩耗を抑制可能な絶縁セクション、給電レール、及び軌道系交通システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る絶縁セクションは、車両の走行方向に沿って延設されていて、前記車両と対向する接触面で、前記車両の集電子と接触する電車線同士を接続する絶縁セクションであって、前記電車線における前記集電子と接触する通電面に沿う面に形成され、前記走行方向と直交する直交方向の幅が前記集電子の幅よりも大きい部分を有する主面部と、前記主面部の少なくとも前記走行方向の手前側で、前記直交方向の両側に設けられ、前記走行方向の手前側から奥側に向かうにしたがって次第に、前記車両に近接するように傾斜して、主面部に接続する傾斜面部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このような絶縁セクションによると、主面部が集電子の幅よりも大きくなっているため、集電子が接触する面の面積を大きくできる。従って、接触面圧の低減が可能となる。また集電子は通電面との接触によって摩耗し、通電面との接触部分のみが車両に近接する方向に徐々に凹んでいく。ここで主面部は集電子よりも幅が大きいため、接触部分が凹状となった集電子が通電面から主面部に進行する際には、主面部の直交方向の端部で集電子が主面部に引っ掛かるおそれがある。この点、傾斜面部によってこのように凹状となった集電子の引っかかりを防止でき、主面部へと集電子を案内することができる。
【0012】
また、前記主面部は、弾性材で形成されていてもよい。
【0013】
このように主面部が弾性材よりなることで、集電子が接触した際に主面部が弾性変形して集電子との接触面圧をさらに低減することができる。
【0014】
さらに、前記主面部には該主面部から凹む溝が形成されていてもよい。
【0015】
このような溝によって、主面部へ付着した集電子のカーボンが、車両の走行にともなって、溝を介して主面部の外部に排出することができるため、このように主面部に付着したカーボンによって絶縁機能が損なわれることを防止でき、絶縁効果の向上が可能となる。
【0016】
また、前記溝は、前記走行方向に対して前記直交方向に傾斜していてもよい。
【0017】
このように溝を形成することで、より確実に主面部に付着したカーボンを主面部の外部に排出することができ、さらなる絶縁効果の向上が可能となる。
【0018】
さらに、前記溝は、格子状に形成されていてもよい。
【0019】
このように溝を形成することで、接触する集電子の進行方向が逆転したとしても、確実に主面部に付着したカーボンを主面部の外部に排出して、絶縁効果を得ることができる。
【0020】
また、前記傾斜面部は、前記傾斜面として、傾斜方向が前記直交方向に向かう第一面と、傾斜方向が前記走行方向に向かう第二面とを有していてもよい。
【0021】
このように傾斜面部が構成されていることによって、集電子の直交方向への揺動する場合、摩耗して接触部分が凹状となった集電子が主面部に引っ掛かるおそれがあるが、第一面によってこの引っ掛かりを防止できる。また接触部分が凹状となった集電子が通電面から主面部に進行する際に、主面部の直交方向の端部で集電子が主面部に引っ掛かるおそれがあるが、第二面によってこの引っ掛かりを防止できる。このようにして主面部へと集電子を案内することができ、集電子の損傷防止が可能となる。
【0022】
さらに、前記傾斜面部は、前記傾斜面として、前記第一面と前記第二面とを接続するように傾斜する第三面をさらに有していてもよい。
【0023】
このような第三面によって、摩耗して接触面が凹状となった集電子が、直交方向及び走行方向だけでなく、直交方向から走行方向に傾いた斜め方向に揺動した場合であっても、主面部の直交方向の端部への集電子の引っ掛かりを防止でき、集電子を確実に案内して集電子の損傷を防止することができる。
【0024】
また、前記傾斜面部は、前記傾斜面として、傾斜方向が前記直交方向から前記走行方向へと滑らかに変化する曲面を有していてもよい。
【0025】
このような曲面によって、摩耗して接触面が凹状となった集電子が直交方向及び走行方向だけでなく、直交方向から走行方向に傾いたあらゆる斜め方向への集電子の揺動に対して、集電子の主面部への引っ掛かりを防止でき、主面部へ集電子を確実に案内して集電子の損傷を防止することができる。
【0026】
さらに、本発明に係る絶縁セクションでは、前記電車線に接続される第一の部分と、前記第一の部分から前記電車線よりも前記直交方向に張り出す第二の部分と、前記第一の部分と前記第二の部分との間に設けられ、弾性変形することで前記第二の部分を前記車両から離間する方向に相対移動させる第一弾性部材を備えていてもよい。
【0027】
このような第一弾性部材によって、摩耗して接触面が凹状となった集電子の直交方向の端部が第二の部分を車両から離間する方向に押圧した際に、この部分が車両から離間するように相対移動する。このため集電子への衝撃を緩和でき、集電子の損傷の抑制が可能となる。
【0028】
また、本発明に係る絶縁セクションでは、前記第一の部分に設けられ、弾性変形することで該第一の部分を前記車両から離間する方向に相対移動させる第二弾性部材をさらに備えていてもよい。
【0029】
このような第二弾性部材によって、車両に近接する方向に集電子に作用する第一の部分からの反力による衝撃を緩和でき、集電子の損傷の抑制が可能となる。
【0030】
また、本発明に係る給電レールは、車両の集電子と接触する複数の電車線と、前記電車線同士を接続する上記の絶縁セクションとを備えることを特徴とする。
【0031】
このような給電レールによると、絶縁セクションが主面部を備えることで、接触面圧の低減が可能となる。また絶縁セクションが傾斜面を備えることで、通電部との間における摩耗で接触部分が凹状となった集電子が主面部の直交方向の端部で主面部に引っかかることを防止して、主面部へ集電子を確実に案内する。従って、絶縁効果を得ることができるとともに集電子の摩耗、損傷を抑制可能である。
【0032】
さらに、本発明に係る軌道系交通システムは、上記の給電レールと、前記給電レールから受電して走行する車両とを備えることを特徴とする。
【0033】
このような軌道系交通システムによると、絶縁セクションが主面部を備えることで、接触面圧の低減が可能となる。また絶縁セクションが傾斜面を備えることで、集電子の主面部への引っかかりを防止して、主面部へ集電子を確実に案内する。従って、絶縁効果を得ることができるとともに集電子の摩耗、損傷を抑制可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の絶縁セクション、給電レール、及び軌道系交通システムによると、主面部及び傾斜面部によって、確実に絶縁を行ないながら集電子の摩耗、損傷を抑制可能である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態に係る軌道系交通システム1について説明する。
図1に示すように、軌道系交通システム1は、車両2が側方で案内されながら、軌道3上を走行するサイドガイド方式の新交通システムである。
【0037】
車両2は、軌道3上を転動可能に設けられる走行輪10と、走行輪10よりも走行方向D1に直交する幅方向D2の外側に配置されて、走行方向D1及び幅方向D2に直交する上下方向(直交方向)D3を軸として回転可能とされた案内輪11と、案内輪11の上方で上下方向D3に間隔をあけて設けられた二つのパンタグラフ(集電子)12とを備えている。
【0038】
軌道3は、案内輪11に対向して車両2を走行方向D1に沿って案内するガイドレール13と、ガイドレール13の上方で走行方向D1に沿って二つが上下方向D3に間隔をあけて、二つのパンタグラフ12それぞれに対して接触摺動可能に設けられた二つの給電レール14とを備えている。
【0039】
次に、給電レール14について説明する。
給電レール14は、走行方向D1に沿って軌道3の側部で走行方向D1に沿って互いに上下方向D3に間隔をあけて設けられている。
また、
図2に示すように、それぞれの給電レール14は、き電線(不図示)に導通して走行方向D1に間隔をあけて配置される電車線20と、これら電車線20同士の間に配置されて、接続板21によって電車線20に接続された絶縁セクション22とを有している。
【0040】
電車線20は、走行方向D1に沿って配置され、き電区間(不図示)からき電線を通じて電力が供給されるものであり、パンタグラフ12と接触摺動可能な通電面20aを有して設けられ、この通電面20aを介して車両2に電力供給を行う。
【0041】
絶縁セクション22は、例えば強化木、FRP等の非導電性の材料よりなり、走行方向D1に沿って、走行方向D1に隣接する電車線20同士の間に配置されるものである。さらにこの絶縁セクション22は、パンタグラフ12と接触摺動する主面部25と、主面部25から走行方向D1の両側に突出して電車線20に接続された接続部24と、主面部25の走行方向D1及び上下方向D3の端部12aに設けられた傾斜面部26とを備えている。
【0042】
接続部24は、外形が電車線20と同一に形成されて、電車線20の通電面20aに沿うように幅方向D2を向く表面24aが通電面20aと面一となっている。またこの接続部24と電車線20とが走行方向D1につき合わされた状態で、接続板21によって上下方向D3の両側から挟み込まれてボルト21a及びナット21bによって締結されることで、絶縁セクション22と電車線20とが接続されている。
【0043】
主面部25は、
図2(b)に示すように、電車線20の通電面20a及び接続部24の表面24aに沿うように、幅方向D2を向く表面25aがこれら通電面20a及び表面24aと面一に形成されており、表面24aとの接続部分から走行方向D1に向かうに従って上下方向D3の両側に拡がっている。即ち、本実施形態では主面部25の縁部25aが、二つの電車線20における通電面20aから接続部24を介して上下方向D3の両側に拡がることで、主面部25は幅方向D2から見て略菱形状をなしている。
【0044】
また、この主面部25は上下方向D3の幅が最も大きくなっている部分で、パンタグラフ12の上下方向D3の幅よりも大きくなるように形成されている。
【0045】
またこの主面部25には、表面25aから幅方向D2に凹む溝30が形成されている。また溝30は、走行方向D1に対して上下方向D3に傾斜しているとともに、主面部25の縁部25b同士をつないで格子状に形成されており、即ち、主面部25の表面25aを格子状に分断している。
【0046】
傾斜面部26は、主面部25における走行方向D1及び上下方向D3の全ての端部12a(4箇所)で、上下方向D3の両側に向かって突出するように設けられており、これによって、主面部25及び傾斜面部26の全体を幅方向D2から見た場合、全体として四角形状をなしている。
【0047】
また各々の傾斜面部26の幅方向D2を向く表面である傾斜面26aは、走行方向D1の手前側から奥側に向かって、即ち、通電面20aから主面部25に向かって、幅方向D2の内側(車両2に近接する方向)に漸次傾斜している。より詳細には本実施形態では、走行方向D1方向の縁部26b1及び上下方向D3の縁部26b2から幅方向D2の内側に漸次傾斜して、主面部25の縁部25bに接続されている。
【0048】
このような軌道系交通システム1においては、主面部25の上下方向D3の幅がパンタグラフ12の上下方向D3の幅よりも大きくなっているため、即ちパンタグラフ12が接触する表面積を大きくできる。従って、パンタグラフ12に作用する接触面圧の低減が可能となる。
【0049】
さらに、
図3(a)に示すように、パンタグラフ12が摩耗していない状態でパンタグラフ12が主面部25の表面25aに位置した際、主面部25の表面25aとの間でパンタグラフ12が確実に接触摺動しながら走行方向D1に向かって進行することとなる。
【0050】
一方で、
図3(b)に示すように、ある程度の期間使用されたパンタグラフ12は電車線20の通電面20aとの間で摺動によって摩耗が進行した状態となっている。このような状態では、表面12bが上下方向D3の中央部(通電面20aとの接触摺動部分)でパンタグラフ12が幅方向D2に凹むことで、表面12bが凹曲面状となる。
【0051】
ここで、仮に傾斜面部26が設けられず、例えば絶縁セクション22が電車線20から単純に上下方向D3に突出するような直方体ブロック形状に形成されている場合等には、
図4に示すようにパンタグラフ12が通電面20aから絶縁セクション22へ進行する際に、パンタグラフ12の上下方向D3の端部12aが絶縁セクション22に引っ掛かるおそれがある。
【0052】
この点、本実施形態では傾斜面部26が設けられていることで、パンタグラフ12が進行するに従って、パンタグラフ12の端部12aが
図3(b)に示すように傾斜面部26の傾斜面26aに沿って徐々に幅方向D2の内側に持ち上げられて主面部25の表面25aに到達することとなる。即ち、
図4に示したようなパンタグラフ12の引っ掛かりがなくなる。
【0053】
また、傾斜面部26は、主面部25における端部12a全てに設けられて、通電面20aから主面部25に向かって幅方向D2の内側に立ち上がっているため、パンタグラフ12が通電面20aから坂を上るように主面部25の表面25aに円滑に進行し、その後、主面部25の表面25aから坂を下るように通電面20aに円滑に進行できる。
【0054】
さらに、主面部25に形成された溝30が形成されており、パンタグラフ12が摺動することでパンタグラフ12のカーボンが主面部25の表面25aに付着して、電車線20同士を導通してしまうおそれがあるが、
図2(a)の矢印Yのように、このカーボンを溝30を介して主面部25の外部へ排出することが可能となる。
【0055】
なお、走行方向D1の一方向(
図2(a)の紙面は左から右)へ車両2が走行する場合には実線に示す矢印Yのように、走行方向D1の手前側から奥側に向かってカーボンが排出される。また、走行方向D1の他方向(
図2(a)の紙面は右から左)へ車両2が走行する場合には点線に示す矢印Yのように、走行方向D1の手前側から奥側に向かってカーボンが排出される。
【0056】
さらに、溝30は格子状に形成されているため、車両2の走行方向D1がどちらの方向(
図1(a)の紙面左右のどちらか)であっても、確実に主面部25の表面25aに付着したカーボンを排出することができる。
【0057】
以上、本実施形態の軌道系交通システム1によると、主面部25による面圧低減、及び傾斜面部26によるパンタグラフ12の引っ掛かり防止が可能となり、さらに溝30によって、確実に絶縁状態を維持できる。従って、絶縁効果を得ることができるとともに集電子の摩耗を抑制可能である。
【0058】
なお、本実施形態では、溝30は格子状に形成されているが、これに限らず、例えば走行方向D1に平行に形成されていてもよく、少なくとも主面部25の外部へカーボンを排出可能となるように、溝30が主面部25の縁部同士をつなぐように形成されていればよい。
【0059】
さらに、主面部25の表面25a自体を非導電性ゴムや、ウレタンなどの弾性材料を用いてもよく、この場合、パンタグラフ12が主面部25の表面25aに接触した際のパンタグラフ12への面圧をさらに低減可能となる。
【0060】
また、主面部25の上下方向D3の幅は、少なくとも一部でパンタグラフ12の上下方向D3の幅よりも大きくなっていればよく、例えば主面部25を幅方向D2から見た際に、この主面部25が完全な菱形状となっていてもよい。
【0061】
次に、本実施形態の絶縁セクション22の変形例について説明する。各々の変形例では傾斜面部の傾斜角度及び傾斜方向が上述した傾斜面部26と異なっている。なお、これら変形例では上述した溝は図示を省略しているが、上述したものと同様に溝30を形成してもよい。
【0062】
(第一変形例)
図5に示すように、第一変形例に係る絶縁セクション51では、傾斜面部56における傾斜面56aが、走行方向D1に向かって幅方向D2の内側に向かって漸次傾斜しており、より詳細には走行方向D1の縁部56bから走行方向D1に向かうに従って幅方向D2の内側に漸次傾斜して、主面部55の縁部55bに接続されている。
【0063】
これにより、主面部55は、矩形状をなして上下方向D3に延在する第一主面部55Aと、矩形状をなして走行方向D1に延在する第二主面部55Bとを有して、これら第一主面部55Aと第二主面部55Bとが各々の中央位置で交差することで幅方向D2から見て十字状をなしている。
【0064】
このような傾斜面部56によって、摩耗して表面12bが凹曲面状となったパンタグラフ12の端部12aが、通電面20aから坂を上るように主面部55の表面55aに円滑に進行し、その後、主面部55の表面55aから坂を下るように通電面20aに円滑に進行できる。
【0065】
(第二変形例)
次に、
図6に示すように、第二変形例に係る絶縁セクション61では、傾斜面部66の傾斜面66aが第一面67aと第二面68aとの二つの面を有している。
【0066】
第一面67aは、傾斜面部66の走行方向D1側の縁部66b1に接続されて上下方向D3に向かうに従って幅方向D2の内側に漸次傾斜して、主面部65の縁部65bに接続されている。
また、第二面68aは、傾斜面部66の上下方向D3側の縁部66b2から走行方向D1に向かうに従って幅方向D2の内側に漸次傾斜して、第一面67aに接続されるとともに主面部65の縁部65bに接続されている。
【0067】
そして、
図6の中で、
図6(a)に示す第一面67aは、走行方向D1の寸法が最も大きくなっている。また、
図6(b)に示す第一面67aは、
図6(a)のものよりも走行方向D1の寸法が小さくなっており、
図6(c)に示す第一面67aは、
図6(b)に示す第一面67aと走行方向D1の寸法が同一である一方で、上下方向D3の寸法は小さくなっている。
【0068】
このような傾斜面部66によって、摩耗したパンタグラフ12が上下方向D3に揺動しながら走行方向D1に進行する際に、第一面67aによって、摩耗したパンタグラフ12の端部12aの主面部65への引っ掛かりによる衝撃を防止でき、パンタグラフ12を主面部65へ案内し、パンタグラフ12の損傷を防止できる。
【0069】
また、上下方向D3へのパンタグラフ12の摩耗度合いを考慮して、上述のように第一面67aの寸法を適宜変更することで、上下方向D3への揺動時のパンタグラフ12の損傷を確実に防止できる。
【0070】
また第二面68aによっては、摩耗して表面12bが凹曲面状となったパンタグラフ12の端部12aが、通電面20aから坂を上るように主面部65の表面65aに円滑に進行し、その後、主面部65の表面65aから坂を下るように通電面20aに円滑に進行できる。
【0071】
なお、第一面67aの形状に応じて第二面68aの形状も異なり、これによって主面部65の表面65aの面積も変化するため、パンタグラフ12に作用する面圧も変化する。
【0072】
(第三変形例)
図7に示すように、第三変形例に係る絶縁セクション71では、傾斜面部76の傾斜面76aが第一面77a、第二面78a、第三面79aの三つの面を有している。
【0073】
第一面77aは、傾斜面部76の走行方向D1側の縁部76b1に接続されて上下方向D3に向かうに従って幅方向D2の内側に漸次傾斜して、主面部75の縁部75bに接続されている。
また、第二面78aは、傾斜面部76の上下方向D3側の縁部76b2から走行方向D1に向かうに従って幅方向D2の内側に漸次傾斜して、主面部75の縁部75bに接続されている。
さらに、第三面79aは、第一面77aと第二面78aとの間に設けられて、第一面77aと第二面78aとを接続するとともに、走行方向D1に向かうに従って幅方向D2に漸次傾斜して、主面部75の縁部75bに接続されている。
【0074】
そして、
図7の中では、
図7(b)に示す第一面77aは、
図7(a)のものよりも上下方向D1の寸法が小さくなっている。また、
図7(b)に示す第三面79aは、
図7(a)に示すものよりも上下方向D3の主面部75寄りの位置に形成されている。
【0075】
このような傾斜面部76によって、摩耗したパンタグラフ12が上下方向D3に揺動しながら走行方向D1に進行する際に、第一面77aによって、摩耗したパンタグラフ12の端部12aが主面部75へ引っ掛かってしまうことを防止できる。さらに、第三面79aによって、上下方向D3から走行方向D1に傾く斜めの方向へのパンタグラフ12の揺動に対しても主面部75への引っ掛かりを防止でき、パンタグラフ12を主面部75へ案内して、パンタグラフ12の損傷をより確実に防止できる。即ち、パンタグラフ12の揺動に対してより柔軟に対応できることとなる。
【0076】
また、上下方向D3へのパンタグラフ12の摩耗度合いを考慮して、上述のように第一面77a及び第三面79aの寸法を適宜変更することで、上下方向D3及び、上下方向D3と走行方向D1との間の斜め方向へのパンタグラフ12の揺動時の損傷を確実に防止できる。
【0077】
なお、第一面77a及び第三面79aの形状に応じて第二面78aの形状も異なり、これによって主面部75の表面75aの面積も変化するため、パンタグラフ12に作用する面圧も変化する。
【0078】
(第四変形例)
さらに、
図8に示すように、第四変形例に係る絶縁セクション81では、傾斜面部86の傾斜面86aは曲面を有している。即ち、傾斜面86aは、傾斜面部86の走行方向D1側の縁部86b1及び上下方向D3側の縁部86b2に接続されて、その傾斜方向が上下方向D3から走行方向D1に滑らかに変化しながら、幅方向D2の内側に滑らかに漸次傾斜して、主面部85の縁部85bに接続された曲面となっている。
【0079】
そして、
図8(a)に示す傾斜面86aは、完全な曲面形状となっており、
図8(b)に示すものは、縁部86b1、86b2から走行方向D1及び上下方向D3に向かう中途位置まで幅方向D2に傾斜せず、主面部85の表面85aに平行な面上に形成され、その後、走行方向D1及び上下方向D3に向かうに従って幅方向D2の内側に滑らかに漸次傾斜する曲面となるように形成されている。
【0080】
このような傾斜面部86によって、摩耗したパンタグラフ12が上下方向D3に揺動しながら走行方向D1に進行する際に、摩耗したパンタグラフ12の端部12aの主面部25へ引っ掛かってしまうことを防止でき、パンタグラフ12を主面部85へ案内できる。さらに、傾斜面部86の傾斜面86aが曲面となっていることで、上下方向D3と走行方向D1との間のあらゆる斜め方向へのパンタグラフ12の揺動に対してさらに柔軟に対応できることとなる。
【0081】
次に、本発明の第二実施形態に係る軌道系交通システム101について説明する。
なお、第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、絶縁セクション102が複数に分割されて、分割部分及び内部に弾性部をさらに備えている点で、第一実施形態とは異なっている。
【0082】
図9に示すように、絶縁セクション102は、第一実施形態の絶縁セクション22と略同一の外形をなしている。また、この絶縁セクション102は、上下方向D3位置が電車線20に位置に一致して、即ち走行方向D1に電車線20の延長線上に接続された本体部(第一の部分)110と、この本体部110から上下方向D3の両側に突出する張り出し部(第二の部分)111とから構成されている。
【0083】
ここで傾斜面部26は張り出し部111に位置し、また主面部25は本体部110と張り出し部111とに分割されている。
【0084】
図9及び
図10に示すように、弾性部115は、例えばゴムの加硫接着等によって形成され、本体部110と張り出し部111との間に走行方向D1及び幅方向D2の全域にわたって設けられて、これら本体部110と張り出し部111とを結合している第一弾性部材116と、本体部110の幅方向D2の中途位置で本体部110の内部に挟み込まれた第二弾性部材117とを有している。
【0085】
第一弾性部材116は、幅方向D2の内側から外側に向かうに従って、漸次上下方向D3に拡がるように、走行方向D1からみた断面形状が略三角形状となっている。
【0086】
第二弾性部材117は、本体部110の内部で、走行方向D1及び上下方向D3の全域にわたって設けられて、走行方向D1からみた断面形状が四角形状となっている。
【0087】
また本実施形態では、本体部110に対して上下方向D3の両側に設けられた二つの第一弾性部材116が第二弾性部材117に結合されており、第一弾性部材116と第二弾性部材117とが一体となっている。
【0088】
このような軌道系交通システム101においては、
図10(a)に示すように、パンタグラフ12の摩耗度合いが特に大きくなり、凹曲面の曲率が大きくなっている場合等において、パンタグラフ12の端部12aが張り出し部111を幅方向D2の外側(矢印Y1の方向)に押し出す。この際、本体部110と張り出し部111との間に第一弾性部材116が設けられていることで、張り出し部111が、車両2から幅方向D2に離間するように、幅方向D2の外側に折れ曲がり、パンタグラフ12の接触時の衝撃を緩和することができる。
【0089】
また、
図10(b)に示すように、例えば、パンタグラフ12が摩耗していない場合に、パンタグラフ12が本体部110を幅方向D2の外側(矢印Y2の方向)に押し出す。この際、本体部110の内部に第二弾性部材117が設けられていることによって、パンタグラフ12の中央位置で、パンタグラフ12の接触時の衝撃を緩和することができる。
【0090】
また、上下方向D3の両側の第一弾性部材116は、第二弾性部材117によって結合されているため、第一弾性部材116の脱落を防止可能であり、耐久性及び信頼性の向上につながる。
【0091】
本実施形態の軌道系交通システム101によると、絶縁セクション102を分割構造として、弾性部115を用いたことで、確実に絶縁を行いながらパンタグラフ12の損傷の抑制が可能である。
【0092】
なお、弾性部115に関し、第一弾性部材116と第二弾性部材117とは、必ずしも二つも受けられる必要はなく、いずれか一方のみでもよい。
【0093】
また、第一弾性部材116と第二弾性部材117とは結合されていなくともよい。
【0094】
さらに第一弾性部材116及び第二弾性部材117は、断面形状は上述した形状に限定されず、例えば第一弾性部材116の走行方向D1から見た断面形状は、四角形状であってもよい。
【0095】
また弾性部115はゴムである場合に限定されず、例えばコイルバネや板バネによって構成してもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、本発明で、傾斜面部26(56、66、76、86)は主面部25(55、65、75、85)の走行方向D1及び上下方向D3の全ての端部に設けられているが、仮に車両2の走行方向D1が一方(
図2の紙面左右のいずれか一方)のみである場合、傾斜面部26(56、66、76、86)は車両2の走行する手前側のみに設けられていてもよい。これにより、少なくとも走行方向D1の手前側で衝撃を緩和することができる。
【0097】
また、上述の各実施形態では、サイドガイド方式の新交通システムを例に説明したが、センターガイド方式や、ガイドの無い自動操舵方式であってもよい。さらに、車両2の上方にパンタグラフが設けられた鉄道車両についても絶縁セクションを適用可能である。
【0098】
さらに、第一実施形態の変形例の絶縁セクション51、61、71、81に第二実施形態の弾性部115を適用してもよい。