(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781503
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】無針注射器用の注射液を保存するために適するシリンダー−ピストンユニット及び無気泡の自動又は手動での、また大気圧下でのシリンダー−ピストンユニットの充填方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/307 20060101AFI20150907BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
A61M5/307
A61M5/31
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-512232(P2012-512232)
(86)(22)【出願日】2010年5月14日
(65)【公表番号】特表2012-527914(P2012-527914A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2010002975
(87)【国際公開番号】WO2010136133
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年4月22日
(31)【優先権主張番号】102009023334.2
(32)【優先日】2009年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・マトゥシュ
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−500933(JP,A)
【文献】
特開平10−234820(JP,A)
【文献】
特表2007−527251(JP,A)
【文献】
特開平07−185001(JP,A)
【文献】
特開平04−044771(JP,A)
【文献】
米国特許第02567673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/30− 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気及び酸素を阻止し、そして無針注射器用に形成される圧力が安定なシリンダー−ピストンユニット(1)であって:
シリンダー(2)中に配置されたチャンバー(3)であって、注射溶液(4)の長期間のそして滅菌状態での貯蔵のためのチャンバー(3);
ジャケット面(11)を有する圧力が安定な外部シリンダー(13)であって、貫通した少なくとも一つのノズル孔又は一つの出口エレメント(6)を有する端部壁(5)を含む圧力が安定な外部シリンダー(13);
チャンバー(3)中を動き得るように配置された、そして水蒸気及び酸素を阻止する、圧力が安定なピストン(7);
チャンバー(3)が第一のチャンバー(8)及び第二の同軸チャンバー(9)で形成され、ここで第一のチャンバー(8)の断面積が第二のチャンバー(9)の断面積より大きく、圧力が安定な外部シリンダー(13)は第二のチャンバー(9)に隣接するシリンダー(2)に接触した状態でシリンダー(2)を実質的に囲んでおり、第一のチャンバー(8)と第二のチャンバー(9)の間に、シリンダー(2)の内側環状面(16)として移行領域が形成され、
そして各ノズル孔又は各出口エレメント(6)が、水蒸気及び酸素を阻止するための膜(26、27)によって滅菌方式で密閉され、膜(26、27)は過圧力で開口する、
及び、ピストン(7)は、内部ピストン本体(18)とフランジ(22)を含み、そして圧縮性の外部ピストンリング(17)はフランジ(22)と内部ピストン本体(18)と第二の同軸チャンバー(9)の外径に近似する内部貫通孔を有し、そして内部ピストン本体(18)とフランジ(22)は圧縮性の外部ピストンリング(17)を摺動可能に通過する関係にあり、内部ピストン本体(18)とフランジ(22)は第一のチャンバー(8)に位置するときは気体密封の状態で水蒸気及び酸素を阻止するための圧縮性の外部ピストンリング(17)によって軸方向に囲まれて、第二の同軸チャンバー(9)内の注射液(4)を長期間貯蔵する間は圧力安定であり滅菌密閉方式であり、注射の準備や注射する間は内部ピストン本体(18)とフランジ(22)は第二の同軸チャンバー(9)に隣接したシリンダー(2)と接触して摺動可能であり、圧縮性の外部ピストンリング(17)は内部ピストン本体(18)とフランジ(22)と一緒になって注射液(4)を長期間貯蔵する間は第一のチャンバー(8)全体を気体密封の状態で実質的に占めており、注射
液(4)を長期間貯蔵する間は圧縮性の外部ピストンリング(17)はその遠位端でシリンダー(2)の内側環状面(16)と直接接触して気体密封状態にあることを特徴とする、シリンダー−ピストンユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンダー−ピストンユニットであって、膜(26)がクロージャー片(10)に連結されるか、又は膜(27)が別々に取り外し可能に形成されそして滅菌クロージャー片と過圧力バルブを形成することを特徴とする、上記シリンダー−ピストンユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のシリンダー−ピストンユニットであって、クロージャー片(10)が、ジャケット表面(11)に、又はシリンダー(13)の端部壁(5)の外側(10)に、又はトリガーチューブ(25)に解除自在に直接的に又は間接的に連結されるように形成されることを特徴とする、上記シリンダー−ピストンユニット。
【請求項4】
外部ピストンリング(17)が横方向に変形しうることを特徴とする、請求項1に記載のシリンダー−ピストンユニット。
【請求項5】
外部ピストンリング(17)がU−プロファイルであることを特徴とする、請求項4に記載のシリンダー−ピストンユニット。
【請求項6】
請求項1に記載のシリンダー−ピストンユニットであって、内部ピストン本体(18)及びピストンロッド(21)のフランジ(22)は、滅菌シールを備え付け、水蒸気及び酸素を遮断するように、外側ピストンリング(17)と共に、そして後者がシリンダー(2)と共に形成されることを特徴とする、上記シリンダー−ピストンユニット。
【請求項7】
請求項1に記載のシリンダー−ピストンユニットであって、内部ピストン本体(18)は、第二のチャンバー(9)に向けられた端部で、圧力が増すにつれてよりきつく密封する、少なくとも一つのシールリップ(31)を備えることを特徴とする、上記シリンダー−ピストンユニット。
【請求項8】
無針注射器用のシリンダー−ピストンユニット(1)を充填する方法であって、少なくとも以下:
−第二のチャンバー(9)を注射液(4)で充填する工程であって、ここで注射液(4)の容積が第二のチャンバー(9)の容積より小さい、該工程;
−第二のチャンバー(9)を密閉するために、第一のチャンバー(8)が環状面(16)を圧迫するまで、第一のチャンバー(8)内に、空気が流れるようにスクィーズした外側ピストンリング(17)と共にピストン(7)を挿入する工程であって、ここで気体クッションが第二のチャンバー(9)中に留まる、該工程;
−シリンダー−ピストンユニットを水平軸の周りに約180度通して回転させ、第二のチャンバー(9)中の気体クッションが少なくとも一つのノズル孔又は出口エレメント(6)まで上方に完全に上昇するまで待つ工程;
−外側ピストンリング(17)から第二のチャンバー(9)内に、フランジ(22)を備えた内部ピストン本体(18)を、ピストン棒(21)を用いて動かす工程であって、ここで気体クッションが第二のチャンバー(9)から1つの又は複数のノズル孔又は1つの又は複数の出口エレメント(6)を通して強制的に送られ、気体クッションが現れるにつれて、クロージャーキャップ(10)の膜(26)又は別個の膜(27)が、1つの又は複数のノズル孔又は1つの又は複数の出口エレメント(6)、及び環状圧力輪郭A、B及びCから持ち上がって離れ、気体クッションの出現した後、再び環状圧力輪郭A、B及びC上の1つの又は複数のノズル孔又は1つの又は複数の出口エレメント(6)を滅菌方式で密閉する、該工程;
を含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、気体クッションの完全な出現が、注射溶液の出現に対する光バリアーによって監視される1つ又は複数のノズル孔又は1つ又は複数の出口エレメントによって検出することを特徴とする、上記方法。
【請求項10】
環状表面(16)の前方の2〜3ミリメーターに位置付けられているピストン(7)を用いて;
ノズル(6)が上方を向いている状態で、外側ピストンリング(17)を通してチャンバー(3)内に注射液(4)が注入され;そして
ピストン(7)を環状面(16)の所まで前進させ、そして更に内部ピストン本体(18)を前進させることによって、膜(26)又は膜(27)によって形成された過圧力バルブを通して空気が強制的に送られる;
請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリンダー/ピストンユニットの手動充填。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気及び酸素を遮断し、そして無針注射器用に設計される、圧力安定シリンダー/ピストンユニットに関し、それはシリンダー中に配置された、そして注射液の長期間のそして滅菌での保存用に設計されたチャンバー;少なくとも一つのノズル孔又は一つの出口エレメントを備えた端部壁;圧力安定外シリンダー;及びチャンバー内に可動に配置された、そして水蒸気及び酸素を遮断する、圧力安定ピストン;を含む。
【0002】
本発明は更に、無気泡の自動又は手動での、また大気圧下でのシリンダー−ピストンユニットの充填方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シリンダー−ピストンユニットは、例えば、特許文献1、特許文献2又は特許文献3から知られる注射器及び使い捨て注射器において使用される。これらのシリンダー−ピストンユニットのどれも、それらが水蒸気及び酸素を遮断できない故に、注射液の(例えば、1年を超える)長期間の貯蔵に適していない。
【0004】
注射液は液体薬剤として理解される。使用される専門用語をここで詳細に説明する。用語「薬剤」は当業者に知られている。これは、ヒト又は動物の薬剤用の物質又は物質の混合物として理解される。それらは薬学的に有効な物質及びこの活性物質を薬学的に使用可能にする更なる標準成分、特に水、から成る。
【0005】
特許文献4は、シリンダー及びその中に誘導されるピストンを有するシリンダー−ピストンユニットを開示しており、ここでシリンダー及びピストンは、少なくとも一時期、活性物質で充填することができるチャンバーを囲み、そしてシリンダーはその前方端で少なくとも一つの出口エレメントを有する。チャンバーの断面又はシリンダー内壁の断面は少なくとも前方から後方への領域において増加する。出口エレメントに向かう方向の少なくとも前方領域で、ピストンは前方弾性スカートを有し、その前方外部端は、ピストンが装填されていないとき、輪郭線によって画成され、そしてスカートから、スカートを保持しているピストンのセクションへの移行領域中に横たわる表面よりも大きな断面表面を画成する。
【0006】
特許文献5は、液体、ペースト又は粉体の形態の物質の貯蔵し又は投与するために使用される容器用のクロージャーシステムを開示しており、ここで該システムは貫通孔が供されたキャップ、及びクロージャーエレメントから成る。キャップは閉じられるべき開口部の領域中において容器上に存在する捕捉エレメントを用いて容器上で圧力ばめ及び/又はフォームフィット(form fit)を用いてクロージャーエレメントを保持する。容器の開口部を取り囲み、そしてそれをクロージャーエレメントが圧迫する端面は窪みを有する。本クロージャーエレメントは端面上に、そして少なくとも幾らかの領域で窪みに亘って横たわる、耐ウイルス性、耐バクテリア性そして耐胞子(spore)性のフィルムである。キャップが定位置にはめ込まれるとき、弾性リング又は接着リングはクロージャーエレメントと窪地の間に配置され、そして窪みを満たす。
【0007】
特許文献6はシリンダー、及びシリンダー中を誘導され、そしてゴムシールによって滅菌状態で密封されたピストンを含むシリンダー−ピストンユニットを開示しており、ここでシリンダー及びピストンは、少なくとも一時期、活性物質で充填され得るチャンバーを囲み、そしてシリンダーはその前方端で少なくとも一つの出口エレメントを有する。後方位置中に置かれているピストンは静的後方シールエレメントによって滅菌状態でシリンダーに対して密封され、ここで両方のシールエレメントは各々シリンダーの壁及びピストンの壁をシール位置において圧迫する。各静的シールエレメントの背後に間をあけて配置されて、各シールエレメントを受け取るための駐留(parking)領域がある。ピストンが作動されるとき、個々の静的シールエレメントは、各々のシール位置から駐留領域中に置かれる駐留位置へと移動され、ここで駐留された位置における各シールエレメントはシリンダー壁のみか又はピストン壁のみのどちらかに触れる。二つの静的シールエレメントの間に配置されて、少なくとも一つの動的シールエレメントがピストン側上にあり、この動的シールエレメントは、少なくともピストンが作動されるとき、シリンダーの内壁を圧迫する。
【0008】
前述のシリンダー−ピストンユニットにおいて、クロージャーエレメントは、真空応用プロセスにおいて事前に充填されたチャンバー内にピストンとして挿入される。真空下で本クロージャーエレメントはチャンバー内に導入された薬剤の液レベル上に置かれる。そのために要求されるこの方法及びデバイスは高価でありそして複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開2008/0146997A1公報
【特許文献2】DE10,2007,004,211A1公報
【特許文献3】DE10,2007,008,369A1公報
【特許文献4】DE10,2005,054,600A1公報
【特許文献5】DE10,2006,040,888B3公報
【特許文献6】DE10,2006,045,959B3公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この先行技術から進み、本発明の目的は、
−水蒸気及び酸素を遮断し、そして注射液の長期間の滅菌での保存用に設計された圧力安定シリンダー/ピストンユニット、並びにデバイス及び方法に対するコストを削減するために、ピストンがより容易にそして大気圧下でシリンダー内に導入され得るトレイにおいても、無気泡のシリンダー−ピストンユニットの充填方法を供することである。しかしながら同時に、以下のために、例えば、臨床試料用の充填機械を全く必要としないような、例えば、小さなバッチ数の手動充填を可能にすることも意図される:
−過少用量(部分的投与)又は無用量(注射流の逆流)(ウエットショット(wet-shot)がない)を安全に避けること;
−注射チャンネルからの注射液の逆流を避けること;
−150マイクロリッターより多い投与容積から始まる可能性がある気泡形成を避けること;
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、第一の場合において請求項1のデバイスによって達成される。従って、水蒸気及び酸素を遮断する圧力安定シリンダー−ピストンユニットは、チャンバーが第一のチャンバー及び第二の同心チャンバーを備えるように設計され、ここで第一のチャンバーの横断面が第二のチャンバーの横断面より大きく、そして各ノズル孔又は各出口エレメントが、水蒸気及び酸素を遮断する、そして過圧力で開口する膜によって滅菌方式で密閉することを特徴とする。そのような構成を使用することによって、その上にピストンが、例えば、第一のチャンバー内に挿入される際に絞られ、そして空気が逃げることを可能にするU−プロファイルのシールを用いて、ピストンが圧迫するようになる接触表面又は環状面が創出される。
【0012】
目的2はノズル出口の設計によって達成される。
ノズル出口は、注射中に皮膚が押しつけられるように、そして注射液が比較的に低い圧力で皮膚に浸入するように、隆起した(突き出た)切頭円錐中で終る。これは、真皮に比べてよりゆるい組織を構成するその下に横たわる皮下脂肪組織によって助けられる。注射液の流れは自由流れにおいて皮膚に衝撃を与えない故に、それは部分的にも完全にも表面から離れて逆流できない。それは定量的に投与されそしてウエットショットが避けられる。
【0013】
目的3は皮膚のプラグ状のクロージャーによって達成される。
ノズル出口がピストン、特に、内部ピストン本体によって閉じられる故に、隆起した切頭円錐は注射部位でプラグを形成する。もし、注射液の分布の結果、皮膚中の圧力が落ちるまで、それが皮膚上のその場に2、3秒間、残されるならば、逆流は全く起こり得ない。
【0014】
目的4は、0.6ミリリッターまでが気泡無で投与することができるような複数ノズルモデル、例えば、4−ノズルモデルによって達成される。経験から、150マイクロリッターより多い容積を有する無針皮下注射が皮下気泡を引き起こすことが示される。例として、本明細書に提示された形態は4つの出口エレメントを有するため0.6ミリリッターまでの注射容積を投与することができる。
【0015】
フランジ並びに水蒸気及び酸素を遮断し、そして例えば、U−プロファイルの形態の滅菌シール、又は水蒸気及び酸素を遮断するフランジと重なる別の形を有する滅菌シールを供する外部ピストンリングを有する内部ピストン本体中のピストンの好ましい実施態様により、ピストンに対して異なる材料が考えられ得る。チャンバー、つまり注射液で充填された第二のチャンバーを閉じるために、そして引き続く1年間までもの可能な貯蔵のために、外部ピストンリングは、薬剤用に認められた、例えば、West 4590のようなゴムで作られる。第一のチャンバー内に挿入されるや否や、外部ピストンリングは、それを通して移動された空気が無圧下でチャンバーから逃げることができる、チャンネル又は流端が上がるように押される。第二のチャンバー中に全部が置かれた気体クッションはピストンと注射液の間に留まる。更なる工程において、この気体クッションは、反転された(ノズルに対する空気)チャンバー及び第二のチャンバー内に押されているピストンの内部ピストン本体を用いて第二のチャンバーから除去される。内部ピストン本体のフランジ及び外径は、第二のチャンバーの内径に適合される。空気が完全に第二のチャンバーから除かれるとき、内部ピストン本体は第二のチャンバー内に全部が置かれる。内部ピストン本体の誘導は常にこの種の構成によって確保される。
【0016】
駆動ユニットを用いた注射液の引き続く注射中に、シリンダー−ピストンユニットは、例えば、駆動ユニットのバネフックによって受け取られる。代替実施態様は、シリンダー−ピストンユニットを駆動ユニット内にねじ込み、それにフランジ又はバイオネットクロージャーを供することを含む。
【0017】
注射のために、それに亘ってはめ込まれた膜と係合されたクロージャーキャップが取り外され、そして駆動ユニット(例えば、事前に張力をかけられたばね)によって作動されたピストンロッドの助けを借りて、フランジを有する内部ピストン本体は第二のチャンバーの端部まで、そしてノズル空出てくる液体の流速が皮膚を浸透するのに十分である程に迅速に押し込まれる。
【0018】
好ましい実施態様において、内部ピストン本体は少なくとも一つのシールリップを備えるように設計され、ここで圧力が上がるので内部ピストン本体と第二のチャンバーの壁の間の漏れ気密性が増大する。
【0019】
上述の目的は、無針注射器用のシリンダー−ピストンユニットを充填する、少なくとも以下の工程を含む方法によっても達成される:
−第二のチャンバーを注射液で充填すること、ここで注射液の容積が第二のチャンバーの容積より小さい;
−第二のチャンバーを閉じるために、それが環状面を圧迫するまで、第一のチャンバー内を空気が通過して流れるようにスクィーズした外側ピストンリングを用いてピストンを挿入すること、ここで気体クッションが第二のチャンバー中に留まる;
−シリンダー−ピストンユニットを水平軸の周りに約180度だけ回転させること、第二のチャンバー中の気体クッションが少なくとも一つのノズル孔又は出口エレメントまで上方に完全に上昇するまで待つこと;
−外側ピストンリングから第二のチャンバー内に、フランジを備えた内部ピストン本体を、ピストンロッドを用いて動かすこと、ここで気体クッションが第二のチャンバーからノズル孔又は出口エレメントを通して強制的に送られ、気体クッションが現れるとき、クロージャーキャップの膜又は別個の膜がノズル孔又は出口エレメント及び環状圧力輪郭A、B及びCから持ち上がって離れ、気体クッションの出現した後、再び、環状圧力輪郭A、B及びC上のノズル孔又は出口エレメントを滅菌方式で密閉する(過圧力バルブ機能)。
【0020】
本方法により、シリンダー−ピストンユニットが完全に充填され、そして更なる手段を用いないで、それが別々に貯蔵され得るか、又は駆動ユニットにおいて使用することができることが確保される。膜を有するクロージャーキャップを供することによって、全ての時間で、環状圧力輪郭A、B及びC上の三つの場所で注射液が滅菌状態で密閉されて保持されることが確保される。
【0021】
手動充填に対して、例えば、臨床試験に対して、ピストンは環状面の前方の2〜3ミリメーターに位置付けられる。上方を向いているノズルを用いて、外側ピストンリングを通してチャンバー内に注射液が注入される。ピストンを環状面まで前進させ、そして更に内部ピストン本体を前進させることによって、膜又は膜によって形成された過圧力バルブを通して空気が強制的に送られる。
【0022】
本方法の開発において、気体クッションの完全な出現が検出されることが提案される。この目的のために、例えば、ノズル孔又は出口エレメントが、注射液の出現に対する光バリアーによって監視される。変化が検出されるや否や、内部ピストン本体の挿入が直接的に停止される。
【0023】
空気は、注射液が要求するものよりもかなり低いピストンの前進力しか要求しない故に、ピストン前進のスイッチを切ることもそれによって制御され得る。
【0024】
今日における液体秤量の正確さ及び射出成形されたチャンバーの精度を用いれば、ピストンロッドの前進運動を計算することも可能である。小さなバッチ数の場合、気泡の動きは目で見て監視される。
【0025】
本発明の更なる特長及び詳細は、請求項から及び模式的図面に置いて描かれた例示的実施態様の以下の記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】膜と係合するクロージャーキャップを有するシリンダー/ピストンユニットのシリンダーの側部断面図を示す。
【
図2】注射液を第二チャンバー内にのみ滅菌充填した後、例えば、充填機械のトレイ中に座する
図1からのシリンダーを示す。
【
図3】フランジを有する内部ピストン本体及び外部ピストンリングから成るピストンが、第一のチャンバー内に無圧、滅菌状態で、注射液で濡れていないそしてエアーポケットが残っている環状面上に同一平面で挿入された後の、
図2からのシリンダーを示す。
【
図4】エアーポケットが出口ノズルに移行するように、水平軸の周りで約180度だけ回転されたシリンダー/ピストンユニットの側部断面図を示す。
【
図5】注射液が第二のチャンバーを完全に充填する
図4に従うシリンダー/ピストンユニット、加えて代替の膜はめ込み、バネフック及びトリガーの側部断面図を示す。
【
図6】膜を有するクロージャーキャップを除去した後のシリンダー/ピストンユニット、そして作動された注射及びトリガー経路を示す。
【
図7】シリンジを使用した、単一ノズルのシリンダー/ピストンユニットの手動充填を示す。
【
図8】シリンジを使用した、複数ノズルのシリンダー/ピストンユニットの手動充填を示す。
【
図9】一つのノズルを有するシリンダーの端部壁の底面図を示す。
【
図10】4つのノズルを有するシリンダーの端部壁の底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
これらの図の全てにおいて、同じ技術的エレメントは同じ参照符号によって表示されている。
【0028】
図1はシリンダー/ピストンユニット1の側部断面図を示す。水蒸気及び酸素を遮断するシリンダー2のチャンバー3は第一のチャンバー8によって、及び第二の同中心のチャンバー9によって形成され、ここで第一のチャンバー8の横断面は第二のチャンバー9の横断面より大きい。第一のチャンバー8から離れて向かう側上に、端部壁5を有して第二のチャンバー9が設計され、それは少なくとも一つのノズル孔又は少なくとも一つの出口エレメント6を有する。各ノズル孔又は各出口エレメント6は、隆起した切頭円錐29において、第二のチャンバー9を囲んでいる外シリンダー13の外側12上で終わり、そして端部壁5の内側14上で流出ロート15を有する。圧力安定外シリンダー13の外側12上に、例えば、ゴム又は透明シリコーンでできた、水蒸気及び酸素を遮断する膜26が出口エレメント6に亘って延ばされ、そして好ましくは、クロージャーキャップ10によって支持される。代替法として、膜27は、滅菌クロージャー及び過圧力バルブとして外シリンダー13上に固定され得る。
【0029】
第一のチャンバー8と第二のチャンバー9の間に、好ましくは、環状面16として移行領域が形成される。移行領域の第一の実施態様によって、第一のチャンバー8の円筒状壁から環状面16への、そして環状面16から第二のチャンバー9の円筒状壁への移行部で(示されていない)半径が供される。この領域の第二の実施態様によって、(示されていない)斜面が供される。例えば、半径及び斜面、負又は正のキャンバー(negative or positive camber)及び凹又は凸の組合せを含む他の実施態様が考えることができる。一方、注射液4を充填するとき(
図2参照)、そして一方、例えば、射出成形技術によって又はガラスから製造されるシリンダー2を製造するとき、本実施態様が役立つ。上述の実施態様のおかげで、垂直性、同中心性、肉厚などのような所定の性質を有するシリンダー2を達成するために、水蒸気及び酸素を遮断する特別な材料の流れ挙動が支持される。
【0030】
公知のデバイスを用いて、注射液4は、第二のチャンバー9が完全には充填されないように、第二のチャンバー9内に導入される。充填は大気圧下で実行される。各シリンダー2の充填は別々に又はグループで実行され、ここで、例えば、トレイ中の4×5のマトリックスにおける20個のシリンダーが同時に充填される。
【0031】
次いで、複数部品のクロージャーエレメントとしてのピストン7は、
図3において示される通り、大気圧下で第一のチャンバー8内に押し込まれる。外部ピストンリング17並びに水蒸気及び酸素を遮断するフランジ22を有する内部ピストン本体18で構成されるクロージャーエレメントは、環状面16と接触されるまで第一のチャンバー8内に押し込まれる。外部ピストンリング17は、それが第一のチャンバー8内に挿入されるとき、それが第二のチャンバー9中に置かれた注射液4に如何なる圧力もかけないように、充填機械の設定頭部によって横方向に圧搾される。ストッパー又はクロージャー片の無圧挿入ための方法及びデバイスは知られている。例えば、外部ピストンリング17は、クロージャーエレメントと注射液4の間に置かれた気体、本件の場合は空気、が圧搾されず、代わりに逃げられるように変形される。設定頭部の除去の後、U―プロファイルのシールリングは滅菌状態で閉じ、水蒸気及び酸素を遮断する。
【0032】
外部ピストンリング17、及びフランジ22を有する内部ピストン本体18で構成され、またピストンロッド21とは別々に設計することができるピストン7を置いた後、気泡/空気ポケット19及び注射液4は第二のチャンバー9中に置かれる。気泡/空気ポケット19を取り外すために、シリンダー−ピストンユニット1は水平軸の周りに約180度だけ回転される。取り付けられたクロージャーキャップ10及び膜26を有する端部壁5はここで
図4において示される通り、上方を向く。第二のチャンバー9中に置かれた気泡/空気ポケット19は頂部へと上がり、そして注射液4の上方端20と1つ又は複数のノズル孔又は1つ又は複数の出口開口部6の間に置かれる。気泡/空気ポケット19が注射液4の上方端20に亘って全部が置かれるとき(これに要する時間は、なかでも注射液4の粘度、周囲温度などに依存し、そして引き続く方法工程において考慮される)、クロージャーエレメントの内部ピストン本体18はピストンロッド21及びフランジ22を用いて上方に動かされる。外部ピストンリング17は定位置に固定されたまま留まり、環状面16を圧迫する。フランジ22を有する内部ピストン本体18は、
図5において示される通り、気泡/空気ポケット19が1つ又は複数のノズル孔又は1つ又は複数の出口開口部6を通して第二のチャンバー9から完全に逃げるまで、第二のチャンバー9内に押される。この目的のために、第二のチャンバー9中に過圧力があるとき、クロージャーキャップ10の膜26は環状圧力輪郭A、B及びCから離れて持ち上がる。滅菌空気はこのように滅菌膜26を通過しそしてシリンダーと透明なクロージャーキャップ10の間の隙間を通して逃げる。第二のチャンバー9からの気泡/空気ポケット19の完全な排除は、ノズル孔又は出口開口部6において検知される注射液4を用いたそれ自身公知の(光バリアー)測定方法及び測定デバイスによって検知される。別の変形例は、所定の位置まで遠く第二のチャンバー9内に押されている内部ピストン本体18を含む。更なる変形例において、空気が逃げた後、ピストンの前進力が突然増すとき、電子制御下で前進運動がスイッチオフされる。
【0033】
図5において示される通り、フランジ22はピストンロッド21とは別に設計することができるものの、ピストンロッド21はフランジ22を備えるように設計される。完全に充填されたチャンバー9の場合、外部ピストンリング17の端部はピストンロッド21のフランジ22と同一面にある。内部ピストン本体18の事前に張力をかけられたシールリップの直径は、圧力上昇と共に、注射液4が該第二のチャンバー9から排出される際に、それが第二のチャンバー9中にシール状態で係合できるように選択される。圧力安定外シリンダー13は、スリット、ねじ、フランジ又はバイオネットのような保持体エレメント23を有してジャケット面11上に設計される。使い捨て注射器の駆動ユニットは保持体エレメント23の形を補足するために設計される。注射液を排出するために、フランジ22を有する内部ピストン本体18はピストンロッド21によって端部壁5の方向に動かされる。これは、例えば、使い捨て注射器に関する前述の引例においてより詳細に述べられた通り、事前に張力をかけられたばねによってなされる。シリンダー2及びフランジ22は、注射液4で充填されたシリンダー−ピストンユニットの12か月間の貯蔵中、水蒸気及び酸素を遮断しなければならない。
【0034】
ガラスと並んで、シリンダー2及びフランジ22に対する適する材料は、例えば、シクロオレフィン類とエチレン又はα−オレフィン類(COC又はCOP)に基づく共重合体のような、透明で非晶性の熱可塑性プラスチックでもある。
【0035】
外シリンダー13は、350バールまでの圧力に短時間(2、3ミリ秒)耐えることができなければならないので、圧力の安定な材料、例えば、ポリカーボナート(PC)又はポリウレタン(PU)で作られなければならない。
【0036】
内部ピストン本体18用に使用される材料はテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン(FEP)である。これはシリンダー2又は内部部分の前述の材料と関連して自己潤滑性を有するため、内部ピストン本体18とシリンダー2の間に別の潤滑剤は全く不要である。選択され得る代替材料としては、パーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン(ETFE)又はポリビニリデンフルオライド(PVDF)が挙げられる。
【0037】
外部ピストンリング17用に使用される材料は、Helveot FM 257、Helveot FM 460、Stelmi 6422、Stelmi 6720、又はWest 4590のようなゴムである。膜26は滅菌状態で閉じる、そして水蒸気及び酸素を遮断するものと同じ材料で作られ得る。
【0038】
図6は、膜26を有するクロージャーキャップを除去した後のシリンダー/ピストンユニット1、そして作動された注射を示す。端部壁12の外側の代替構成は左手側上に示される。ノズル6を囲んでいる切頭円錐29の隆起した構成のせいで、皮膚は押しつけられ、そのため注射流によってより容易に通過される。次いで注射液4は、真皮と比べてよりゆるい皮下脂肪組織中に広がる。定量投与はこのようにして確保される。ノズル6が底に横たわる内部ピストン本体18によって閉じられる故に、切頭円錐29は、注射液の逆流が避けかれるよう、皮膚チャンネル上の蓋として作用する。2、3秒後、加圧された注射液はよりゆるい皮下脂肪組織中に分布されるようになり、そして皮膚中の注射チャンネルが収縮してくる。次いで、注射器は注射部位から取り外される。
【0039】
図7は、例えば、臨床試験のための複雑な充填機械を使用しない、手による滅菌充填を示す。この目的のために、製造時点で、フランジ22を有する内部ピストン本体18、及びプロファイルリング30によって閉じられた外部U−プロファイルピストンリング17から成るピストンユニット7は、環状面16の前方わずか2〜3ミリメーターの第一のチャンバー8内に置かれる。次いで、このシリンダー−ピストンユニット1はガンマ線滅菌される。次いで、滅菌状態のプロファイルリング30は病院において取り外すことができる。次いで、注射液で充填されたシリンジの針は、U−プロファイル17の中空スペース内に挿入することができ、U−プロファイルゴム17は突き刺され、そして上方の位置にあるノズル6を用いて第一のチャンバー8の残り及び第二のチャンバー9の部分が充填される。注射針が取り外された後、フランジ22を有する内部ピストン本体18及び外部U−プロファイルピストンリング17から成るピストンユニット7は、次いでノズル6の前方に残っている空気19が
図5における通り、移動されるように、環状面16まで前進させられる。それが駆動ユニットに連結された後、システムは次いで貯蔵又は投与の準備がなされる。
【0040】
図7において示されるものと同じように、複数ノズルシリンダー−ピストンユニットは、
図8において示される通り、手で充填することができる。機械的充填は、単一ノズルタイプと同様になされる。
【0041】
図9は、端部壁5及び一つのノズル6を有するシリンダー3の形態の底面図を示す。
【0042】
図10は、端部壁5及び4つのノズル6を有するシリンダー3の形態の底面図を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 シリンダー/ピストンユニット
2 シリンダー;水蒸気及び酸素を遮断する
3 チャンバー
4 注射液
5 端部壁
6 ノズル孔又は出口エレメント
7 ピストン;外側ピストンリング17、内部ピストン本体18及びフランジ22から成る、
8 第一のチャンバー
9 第二のチャンバー
10 クロージャー片
11 ジャケット面
12 外側端部壁
13 外シリンダー、圧力安定
14 チャンバー又は流出ロートの内側
15 流出ロート
16 環状面
17 外側ピストンリング;U−プロファイルのリング
18 内部ピストン本体
19 気泡/空気ポケット
20 上方端
21 ピストンロッド
22 ピストンロッドのフランジ;分離した設計でもある
23 保持体エレメント
24 ばねフック
25 トリガー、トリガーチューブ
26 クロージャー片10上の膜
27 シリンダー上の膜;代替法として
28 トリガー経路
29 円錐;切頭した
30 プロファイルリング
A、B、C 環状圧力輪郭