(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積される溶融炉にて、炉底耐火物の浸食量を測定する溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、
予めスラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係と、温度をパラメータとした炉底耐火物の浸食速度式を求めておき、
前記溶融炉の運転中に、前記スラグ層のスラグ温度を計測し、該計測されたスラグ温度から前記スラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係に基づいて炉底耐火物温度を推定し、該推定した炉底耐火物温度から前記浸食速度式を用いて炉底耐火物の浸食量を算出することを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法。
炉蓋から垂下する主電極と、前記主電極に対向して炉底から挿設されている炉底電極とを備え、これらの電極間に直流電流を通流して炉内にプラズマアークを発生させて炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉において、
前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、
前記溶融炉の運転前に、前記基準位置から炉底電極面までの初期距離h0を測定しておき、
前記溶融炉の運転中に、請求項1に記載の方法によりリアルタイムで前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を修正し、
前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、前記基準位置からメタル面までの距離h1を測定すると共に、運転停止時のメタル厚さhを非破壊で計測することにより算出されるh1+hの合計値の、予め求めておいた前記初期距離h0からの増加分を浸食量として算出することにより請求項1に記載の方法により算出された前記浸食量よりも詳細な前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を新規に立案若しくは請求項1に記載の方法により算出した浸食量に基づいて立てた運転計画に対して修正するようにしたことを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記溶融炉の運転停止前に該溶融炉を傾動し、前記スラグ層と、前記メタル層のうちFeを多く含有する上層の少なくとも一部とを排出した後、該溶融炉を元の水平状態に戻して急冷した後に前記メタル厚さhを非破壊で計測することを特徴とする請求項2記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記溶融炉を支持するフレームに歪ゲージを設置し、該歪ゲージにて検出された時系列的な重量変化を示す連続データに基づいて、請求項1に記載の方法により算出された前記浸食量の妥当性を判断することを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記メタル面に2k〜0.7MHzの範囲の低周波超音波を発振探触子から発振し、該発振した低周波超音波を前記メタル層底面側の耐火物境界面から反射させて得た反射波を受振センサで受振して得たメタル層の往復時間と、予め得たメタル層中の音速とに基づいて前記メタル厚さhを求めることを特徴とする請求項2記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去して前記メタル面を露出させ、前記弾性波を受振する受振センサを一定間隔で直線上に複数配置し、該複数の受振センサにより検出した複数の波形データに基づいて表面探査計測法を用いて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項7記載の炉底耐火物浸食監視方法。
前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、該メタル面から中性子を照射し、前記メタル層を透過して該中性子照射側に戻ってきた熱中性子量若しくは前記メタル層を透過して前記中性子照射側とは反対の側に到達した熱中性子量を計測し、予め求めておいたメタル厚さと熱中性子量の相関関係から前記メタル厚さhを求めることを特徴とする請求項2記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
炉蓋から垂下する主電極と、前記主電極に対向して炉底から挿設されている炉底電極とを備え、これらの電極間に直流電流を通流して炉内にプラズマアークを発生させて炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉において、
前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、前記溶融炉の運転前に該基準位置からメタル層と炉底耐火物の境界面までの初期距離h0を計測しておき、
前記溶融炉の運転中に、請求項1に記載の方法によりリアルタイムで前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を修正し、
前記溶融炉の運転休止前に前記溶融炉の炉頂部から垂下される主電極を炉底耐火物近傍まで降下させ、
運転を休止しスラグ層及びメタル層が固化した後、前記基準位置からスラグ層表面までの距離h3を測定するとともに、前記主電極のスラグ層及びメタル層埋設部位の少なくとも一部を高さ方向に削孔して炉底耐火物境界面まで連通する測定孔を形成し、該測定孔によりスラグ層及びメタル層の積層厚さh4を測定し、前記距離h3と前記積層厚さh4の計と、前記初期距離h0とを比較することにより炉底耐火物の浸食量を求め、
請求項1に記載の方法により測定された前記浸食量よりも詳細な前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を新規に立案若しくは請求項1の方法によりリアルタイムで測定した浸食量に基づいて立てた運転計画に対して修正するようにしたことを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記メタル厚さhを求める前段で、該メタル層の水平方向を伝播する低周波超音波の速度から前記メタル層固有の低周波超音波の速度を計測し、該低周波超音波の速度を用いて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記メタル厚さhを求める前段で、該メタル層の水平方向を伝播する弾性波の速度から前記メタル層固有の弾性波の速度を計測し、該弾性波の速度を用いてメタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項7又は請求項8記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記低周波超音波の反射位置が同一となるように複数の発振装置とこれに対応した受振センサとを距離を異ならせて設置するとともに、前記反射位置の直上に発振部と受振部を備えた発振装置を設置し、前記受振センサにて得られた複数の波形データと、前記受振部にて得られた反射波到達時間とに基づいて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項5又は請求項6記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記弾性波の反射位置が同一となるように複数の発振装置とこれに対応した受振センサとを距離を異ならせて設置するとともに、前記反射位置の直上に発振部と受振部を備えた発振装置を設置し、前記受振センサにて得られた複数の波形データと、前記受振部にて得られた反射波到達時間とに基づいて前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項12記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
前記波形データから速度波形を取得し、該速度波形から直接波を抽出するとともに、前記反射波到達時間に基づいて反射波を抽出し、前記反射波の平均速度及び深さをパラメータとして回帰計算によるフィッティング処理することにより前記メタル厚さhを求めるようにしたことを特徴とする請求項13又は請求項14記載の溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、運転中の炉底耐火物の浸食状況を正確に把握できないという問題が残る。また、運転停止時に炉底メタルの下の耐火物厚さを計測しようとしても、従来のようにランスを使ってメタルを溶断する場合、上記したような問題がある。
【0008】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、メタル層を除去することなく、簡単に且つ正確に炉底耐火物の浸食量を測定することができ、適性な運転計画を立てることができる溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法とその装置、前記検知方法を用いた炉底耐火物浸食監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法は、炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積され
る溶融炉にて、炉底耐火物の浸食量を測定する溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、予めスラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係と、温度をパラメータとした炉底耐火物の浸食速度式を求めておき、前記溶融炉の運転中に、前記スラグ層のスラグ温度を計測し、該計測されたスラグ温度から前記スラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係に基づいて炉底耐火物温度を推定し、該推定した炉底耐火物温度から前記浸食速度式を用いて炉底耐火物の浸食量を算出することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、スラグ温度のみから炉底耐火物の
浸食量を求めることができるため、簡単で且つ高い精度が得られる。また、溶融炉を停止せずに
浸食量を求めることが可能である。従って、休炉することなくリアルタイムで
浸食量を計測することができるため、その後の運転期間を見直すことができ、
浸食量が少なければ運転期間を延長することもできる。
【0011】
また、本発明は、炉蓋から垂下する主電極と、前記主電極に対向して炉底から挿設されている炉底電極とを備え、これらの電極間に直流電流を通流して炉内にプラズマアークを発生させて炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉において、前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、前記溶融炉の運転前に、前記基準位置から炉底電極面までの初期距離h0を測定しておき、前記溶融炉の運転中に、請求項1に記載の方法によりリアルタイムで前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を修正し、前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、前記基準位置からメタル面までの距離h1を測定
すると共に、運転停止時のメタル厚さhを
非破壊で計測することにより算出されるh1+hの合計値
の、予め求めておいた前記初期距離h0からの増加分を浸食量として算出することにより請求項1に記載の方法により算出された前記浸食量よりも詳細な前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を新規に立案若しくは請求項1に記載の方法により算出した浸食量に基づいて
立てた運転計画に対して修正するようにしたことを特徴とする溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法を提供する。
【0012】
上記構成によれば、溶融炉の運転中にリアルタイムで耐火物
浸食量を求めるとともに、休炉中に詳細に耐火物
浸食量を求めることにより、最適な運転計画を立てることが可能となり、安全で円滑な運転が可能となる。
【0013】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、前記溶融炉の運転停止前に該溶融炉を傾動し,前記スラグ層と,前記メタル層のうちFeを多く含有する上層の少なくとも一部とを排出した後,該溶融炉を元の水平状態に戻して急冷した後に
前記メタル厚さhを非破壊で計測することが好ましい。
【0014】
前記溶融炉の運転中には、メタル層は、Cuを多く含有し比重の大きいCuリッチ層(比重7.6)と、Feを多く含有し比重の小さいFeリッチ層(比重7.0)に分かれて存在している。前記溶融炉をそのまま停止すると、まずメタル層上層部で融点の高いFeリッチ層が凝固しその後に融点の低い下層部のCuリッチ層が凝固するため、Cuリッチ層が凝固する際の収縮によってせんだん応力が発生してFeリッチ層とCuリッチ層の境界で分離し、空間が発生する場合がある。これを防止するためには、前記溶融炉を休炉する直前に傾動して上部スラグ層を排出すると共に、Feリッチ層も出来る限り排出し、傾動後はすぐに元の水平に戻すことで残ったFeリッチ層とCuリッチ層を混合し、急冷することが有効であり、急冷することでFeリッチ層とCuリッチ層が再分離することを防止することが出来る。
【0015】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、前記溶融炉を支持するフレームに歪ゲージを設置し、該歪ゲージにて検出された時系列的な重量変化を示す連続データに基づいて、
上記方法により算出された前記浸食量の妥当性を判断することが好ましい。
このように、上記した炉底監視方法に加えて本発明を行い、浸食予測結果の妥当性を判断することにより、より精度の高い炉底監視が可能となる。
【0016】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、前記メタル面に2k〜0.7MHzの範囲の低周波超音波を発振探触子から発振し,該発振した超音波を前記メタル層底面側の耐火物境界面から反射させて得た反射波を受振センサで受振して得たメタル層の往復時間と,予め得たメタル層中の音速とに基づいて
前記メタル厚さ
hを求めてもよい。
【0017】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、前記超音波は、横波超音波であることが好ましい。
【0018】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、
前記メタル厚さhの測定が弾性波により行われるものであってよい。
【0019】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去して前記メタル面を露出させ、前記弾性波を受振する受振センサを一定間隔で直線上に複数配置し,該複数の受振センサにより検出した複数の波形データに基づいて表面探査計測法を用いて前記メタル厚さ
hを求めるようにしてもよい。
【0020】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、該メタル面から中性子を照射し、前記メタル層を透過して該中性子照射側に戻ってきた熱中性子量若しくは前記メタル層を透過して前記中性子照射側とは反対の側に到達した熱中性子量を計測し、予め求めておい
たメタル厚
さと熱中性子量の相関関係か
ら前記メタル厚さ
hを求めてもよい。
【0021】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、
炉蓋から垂下する主電極と、前記主電極に対向して炉底から挿設されている炉底電極とを備え、これらの電極間に直流電流を通流して炉内にプラズマアークを発生させて炉内に投入された被処理物を溶融処理することにより、炉底にスラグ層と、その下方にメタル層とが堆積された溶融炉において、前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置に設定し、前記溶融炉の運転前に該基準位置からメタル層と炉底耐火物の境界面までの初期距離h0を計測しておき、
前記溶融炉の運転中に、上記方法によりリアルタイムで前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を修正し、前記溶融炉の運転休止前に前記溶融炉の炉頂部から垂下される主電極を炉底耐火物近傍まで降下させ、運転を休止しスラグ層及びメタル層が固化した後、前記基準位置からスラグ層表面までの距離h3を測定するとともに、前記主電極のスラグ層及びメタル層埋設部位の少なくとも一部を高さ方向に削孔して炉底耐火物境界面まで連通する測定孔を形成し、該測定孔によりスラグ層及びメタル層の積層厚さh4を測定し、前記距離h3と前記積層厚さh4の計と、前記初期距離h0とを比較することにより炉底耐火物の浸食量を求め
、上記方法により測定された前記浸食量よりも詳細な前記炉底耐火物の浸食量を測定し、該測定した浸食量に基づいて前記溶融炉の運転計画を新規に立案若しくはリアルタイムで測定した浸食量に基づいて立てた運転計画に対して修正するようにしてよい。
【0022】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、前記メタル厚さ
hを求める前段で、該メタル層の水平方向を伝播する低周波超音波の速度から前記メタル層固有の低周波超音波の速度を計測し、該低周波超音波の速度を用いてメタル厚さ
hを求めてもよい。
【0023】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、前記メタル厚さ
hを求める前段で、該メタル層の水平方向を伝播する弾性波の速度から前記メタル層固有の弾性波の速度を計測し、該弾性波の速度を用いてメタル厚さ
hを求めてもよい。
上記構成によれば、厚さ測定の前段で、メタル層固有の横波低周波等の音波速度を求めておくことで、被処理物の成分、投入量に関わらず精度の高い測定を行うことが可能となる。
【0024】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、前記超音波の反射位置が同一となるように複数の発振装置とこれに対応した受振センサとを距離を異ならせて設置するとともに、前記反射位置の直上に発振部と受振部を備えた発振装置を設置し、前記受振センサにて得られた複数の波形データと、前記受振部にて得られた反射波到達時間とに基づいて前記メタル厚さ
hを求めてもよい。
【0025】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、前記弾性波の反射位置が同一となるように複数の発振装置とこれに対応した受振センサとを距離を異ならせて設置するとともに、前記反射位置の直上に発振部と受振部を備えた発振装置を設置し、前記受振センサにて得られた複数の波形データと、前記受振部にて得られた反射波到達時間とに基づいて前記メタル厚さ
hを求めてもよい。
【0026】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食検知方法において、前記波形データから速度波形を取得し、該速度波形から直接波を抽出するとともに、前記反射波到達時間に基づいて反射波を抽出し、前記反射波の平均速度及び深さをパラメータとして回帰計算によるフィッティング処理することにより前記メタル厚さ
hを求めてもよい。
【0027】
上記溶融炉の炉底耐火物浸食監視方法において、前記溶融炉の運転前に前記炉底電極の
初期長さheを測定し、前記溶融炉の運転停止時に、前記スラグ層を除去してメタル面を露出させ、前記基準位置からメタル面までの距離h1と前記炉底電極
の長さhe‘を測定して、
前記初期距離h0と前記初期長さheとの和から、前記距離h1と前記炉底電極の長さhe‘との和を減じることによって得たメタル厚さhと、発振探触子から発振した低周波超音波又は横波超音波又は弾性波を、炉底電極表面から反射させて得た反射波を受振センサで受振して得たメタル層の往復時間と、によりメタル層中の音速を求めてもよい。
【発明の効果】
【0028】
以上記載のごとく本発明によれば、スラグ温度のみから炉底耐火物の
浸食量を求めることができるため、簡単で且つ高い精度が得られる。また、溶融炉を停止せずに
浸食量を求めることが可能である。従って、休炉することなくリアルタイムで
浸食量を計測することができるため、その後の運転期間を見直すことができ、
浸食量が少なければ運転期間を延長することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1及び
図2は本発明の実施例1に係る図、
図3は本発明の実施例2の基本構成を示す図、
図4及び
図5は実施例2−1に係る図、
図6〜
図14は実施例2−2に係る図、
図15〜
図19は実施例2−3に係る図、
図20〜
図22は本発明の実施例3に係る図、
図23は本発明の参考例1に係る図、
図24及び
図25は本発明の実施例4に係る図、
図26は本発明の実施例5に係る図、
図27及び
図28は本発明の実施例6に係る図、
図29は本発明の実施例7に係る図である。
図32乃至
図36は本発明の実施例8に係る図である。
【0031】
本実施例及び参考例は、炉底耐火物の浸食状態を監視することにより炉の安定運転を行なうものであり、これには炉底耐火物の浸食量を直接的に測定する構成、或いは
メタル層の厚さであるメタル厚さを測定することにより間接的に炉底監視を行なう構成などがあり、以下の実施例1乃至実施例6、実施例8、及び参考例1にて具体的に説明する。実施例7は、実施例1乃至実施例6、実施例8及び参考例1で求められた炉底耐火物浸食量或いはメタル厚さに基づいて適正な炉の運転計画を立案、修正する方法である。
尚、本実施例及び参考例では、焼却残渣、都市ごみ、或いは産業廃棄物を溶融処理する溶融炉を対象とし、特に廃棄物を焼却処理後の灰を処理する灰溶融炉に適している。尚、以下の実施例及び参考例ではプラズマ式溶融炉を例に挙げて説明しているが、限定的な記載がない限り、プラズマ式溶融炉の他にも電気抵抗式溶融炉、バーナ式溶融炉、旋回式溶融炉、反射式溶融炉等の溶融炉全般に適用可能である。
【実施例1】
【0032】
まず、
図1を参照して、本実施例に係る炉底監視装置が設置されるプラズマ式溶融炉10につき説明する。
プラズマ式溶融炉10は、炉本体14の炉蓋から主電極11が垂下され、これに対向して炉底から炉底電極12が挿設されている。主電極11は不図示の可動装置により昇降可能で、炉底電極12は炉本体14に固定される。プラズマ式溶融炉10では、これらの電極間に直流電源により直流電流を通流して炉内にプラズマアーク24を発生させる。投入ホッパ21より投入された被処理物は、炉壁に設けられた被処理物投入口20より炉内に投下され、プラズマアーク熱及び前記電極間を流れる電流のジュール熱により溶融処理されて炉底に溜まる。溶融処理された被処理物は、溶融スラグ22と、溶融スラグ22の下部に比重差により形成されている溶融メタル23からなる。溶融後は、適宜出滓口25より排出される。
炉本体14の側壁及び蓋部の内側は不定形耐火材15で形成され、炉底17には、浸食に強いアーチ状の耐火レンガ18が内側に配設され、その下に耐火レンガ19が配設される。これらの耐火物の外表面は鋼板製のケーシング16で被覆されている。尚、夫々の耐火物の構造は特に上記に限定されない。
【0033】
本実施例では、スラグ温度を計測するための温度計測手段を一または複数備えている。温度計測手段の種類は限定されないが、放射温度計28に代表される非接触型温度計や熱電対に代表される接触型温度計などの温度計を用いて直接スラグ温度を計測する手段、被処理物の投入量からスラグ温度を推定する手段、耐火物を冷却する冷却水の放熱量からスラグ温度を推定する手段、電極への供給電圧からスラグ温度を推定する手段、或いは炉本体の側壁放熱量からスラグ温度を推定する手段などの周知の方法が挙げられる。熱バランスから算出する場合は、以下の式(1)を用いる。
Q
p=(C
pT
s+H
f)×M+Q
r ・・・(1)
ここで、Q
p:入熱(電力)、C
p:被処理物の比熱、H
f:被処理物の潜熱、M:処理量、Q
r:炉体放熱量である。
【0034】
また、本実施例では、温度計側手段により取得したスラグ温度から耐火物浸食量を算出する浸食量算出装置30を備える。
この浸食量算出装置30は、予め求めておいたスラグ温度と炉底耐火物温度の相関関係と、予め求めておいた炉底耐火物の浸食速度式とが蓄積された記憶部31と、各種演算を行う演算部32と、温度計側手段により取得したスラグ温度を入力するスラグ温度入力部33と、出力部34と、を備える。
【0035】
図2に示すフローを用いて、具体的な炉底耐火物浸食量の算出方法を説明する。
まず、予めスラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係を求めておき、記憶部31に格納しておく(S1)。また、予め炉底耐火物の浸食速度式を取得し、記憶部31に格納しておく(S2)。この浸食速度式は、熱伝導解析により求める方法、実測値から求める方法などがある。浸食速度式の一例を以下の式(2)に示す。
dx/dt=exp{−A/(T
b+273)+B} ・・・(2)
ここで、dx/dt:耐火物浸食速度、T
b:炉底耐火物表面温度、T
s:スラグ温度、A,B:浸食速度式の定数、a,b:炉底温度推定式の定数である。
【0036】
溶融炉10の運転中に、温度計側手段によりスラグ温度を計測する(S3)。スラグ温度はスラグ温度入力部33より耐火物厚さ算出装置30に入力され、記憶部31に格納されたスラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係に基づき、演算部32にて該スラグ温度から炉底耐火物温度を推定する(S4)。スラグ温度−炉底耐火物温度の相関関係は、例えば以下の式(3)により表される。この式(3)を用いて、前記計測されたスラグ温度から炉底耐火物温度を推定する。
T
b=a×T
s+b ・・・(3)
ここで、T
b:炉底耐火物表面温度、T
s:スラグ温度、a,b:炉底温度推定式の定数である。
そして、得られた炉底耐火物温度を用いて、記憶部31に格納された浸食速度式(2)に基づき、一定時間内での浸食速度を算出する(S5)。
算出した浸食量を積算することにより、現時点における浸食量の総計が求められる(S6)。これを一定時間毎に繰り返し行うことにより、炉底耐火物の浸食量をリアルタイムで求めることが可能となる。
【0037】
本実施例によれば、スラグ温度のみから炉底耐火物の浸食量を求めることができるため、簡単で且つ高い精度が得られる。また、溶融炉を停止せずに浸食量を求めることが可能である。従って、休炉することなくリアルタイムで浸食量を計測することができるため、その後の運転期間を見直すことができ、浸食量が少なければ運転期間を延長することもできる。
尚、本実施例において、炉底耐火物の温度推定にスラグ温度に加えてメタル厚さを考慮すると精度が向上する。オーバーフロー面は一定なので、スラグ深さを主電極挿入法により計測すると、メタル厚さを算出することができる。
【実施例2】
【0038】
次に、
図3乃至
図19を参照して、本実施例2に係る装置につき説明する。本実施例2において、
図3は実施例2の基本構成を示す装置の側断面図、
図4及び
図5は実施例2−1に係る図、
図6〜
図14は実施例2−2に係る図、
図15〜
図19は実施例2−3に係る図である。本実施例2は弾性波を用いて炉底監視を行なう方法を示しており、実施例2−1ではメタル厚さを測定し、該測定したメタル厚さを用いて炉底耐火物の浸食量を求めている。また、実施例2−2及び実施例2−3は、実施例2−1の変形例である。
尚、以下の実施例2乃至8において、上記した実施例1と同様の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0039】
(実施例2−1)
図3に、本発明の実施例2に係る装置の全体構成を示す。これは後述する実施例2−1乃至2−3に共通する構成である。本実施例2は、運転停止時に適用され、固化したスラグ層22を除去して露出させたメタル面を打診して弾性波を発振する打診装置35と、メタル面で反射した弾性波が入射され、波形を取得する波形計測装置36とを備える。尚、ここで弾性波とは、打診装置35により媒質(メタル層)を打撃したときに発生する周波数の低い波をいう。
また、炉本体14のスラグ面より上方で、耐火物の浸食の影響を受けない位置を基準位置Aとして設定しておく。この基準位置Aは、例えば主電極11の挿入孔、補助電極39の挿入孔38などが適している。
【0040】
本実施例2−1における炉底耐火物浸食検知方法は、まず溶融炉10の運転停止時に、炉内のスラグ層22の少なくとも一部を除去してメタル面を露出させる。メタル面の凹凸が大きければグラインダーなどで削り、平滑面を作っておく。尚、本実施例では、メタル面を露出させる他の方法として、休炉前に溶融炉10を傾動し、スラグ層とメタル層上層の少なくとも一部を排出した後、該溶融炉10を元の水平状態に戻して急冷するようにしてもよい。
ここでメタル層23固有の弾性波速度や減衰特性等の物性を求めておく。弾性波速度を求める場合、
図4(a)に示されるように、まずメタル面に所定距離だけ離間させて受振センサ37a、37bを設置する。受振センサ37a側にこれと離間させて打診装置35を設置して、メタル面を打診する。メタル層23表面を横方向に伝播した弾性波は、受振センサ37aと受振センサ37bにて時間差を持って受振される。この時間差に基づいて、メタル層23の固有の弾性波速度が求められる。
【0041】
メタル層23は、灰の成分や投入量によってその物性が変化するため、上記したように予めメタル層23の固有の特性を取得しておくことで、正確な耐火物厚さ測定が可能となる。
また、厚さ計測で一般的に用いられている超音波は、数MHzと高周波であるため、比較的薄いものは計測できるが、メタル層23のように500mmを超えると減衰して計測できない。弾性波は数kHzで減衰が少ないため、弾性波を用いることでメタル層23の厚さを計測することが可能となる。ただし、溶融炉10内のメタル層23は不純物や空隙があるので、これに応じて好適な周波数を設定する。打診装置35に鉄球を用いた場合、鉄球の大きさによって周波数を変更することができる。
【0042】
次に、
図4(b)に示すように打診装置35にてメタル面を打診して、メタル層23内に弾性波を発生させ、深さ方向に進行する弾性波が耐火物表面にて反射した波形を受振センサ37によって受振し、波形計測装置36に入力する。打診装置35の打撃により発生した弾性波は、打診装置35を中心とする半球上に拡がり、メタル面と対向する炉底耐火物表面で反射して受振センサ37に達する。さらに、この弾性波は受振面で反射して底面に向かう。このようにメタル面と炉底耐火物表面の間で多重反射を繰り返し、弾性波がメタル層を往復する時間を周期とする振動が測定される。弾性波の波形は、初期は打診の周期が観測されるが、次第に特定の周期をもつ振動が卓越するようになる。この周期をフーリエ変換により周波数分析し、メタル厚さ
hを推定する。このとき、FFT分析(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)を用いることが好適である。
即ち、受振センサ37により
図5(a)のような振幅と時間の波形が得られ、これをフーリエ変換により周波数分析することにより(b)のような振幅と周波数の波形が得られる。これを周波数分析し、以下の式(4)を用いることによりメタル厚さ
hが算出できる。
d=v/2f ・・・(4)
ここで、d:メタル厚さ、v:メタル層の弾性波速度、f:固有周波数である。
【0043】
一方、炉本体上方に設定された基準位置Aからメタル層上面(メタル層とスラグ層の境界面)までの距離
h1を求めておく。この基準位置Aからメタル層上面までの距離
h1と、メタル厚さ
hとを合計した値
h1+hと、予め求めておいた基準位置Aから炉底耐火物表面までの初期距離
h0とを比較することにより、炉底耐火物の浸食量を算出することができる。即ち、距離
h1と、メタル厚さ
hとを合計した値
h1+hが、初期距離よりも増加した分だけ、炉底耐火物が浸食したものと推定できる。
尚、初期距離Hは、溶融炉の設計図から取得してもよいし、溶融炉施工後に実測して取得してもよい。
【0044】
また、このような溶融炉10では出滓口側の浸食が激しいので、少なくとも出滓口側の炉底耐火物の浸食量監視を行うようにするとよい。
さらに、灰投入側は浸食が少ないので、出滓口側と灰投入側の少なくとも2点の浸食量を測定し、これらを比較することで出滓口側の炉底耐火物の浸食量を把握するようにしてもよい。
上記したように、運転停止時に炉底耐火物浸食量を把握し、プラズマ時間(灰投入時間、灰投入量)から浸食速度を計算し、次の運転期間を決定することが好ましい。
【0045】
本実施例によれば、休炉中にメタル層23を除去することなく炉底耐火物の浸食量を把握することが可能となる。また、不純物や空隙の影響を受けにくい弾性波を用いることで、正確に炉底耐火物の厚さ測定を行うことが可能となる。さらに、厚さ測定の前段で、メタル層固有の弾性波速度を求めておくことで、被処理物の成分、投入量に関わらず精度の高い測定を行うことが可能となる。
【0046】
また本実施例において、溶融炉10の休炉前に該溶融炉10を傾動し、スラグ層22とメタル層23のうちFeを多く含有するメタル上層とを排出した後、該溶融炉を元の水平状態に戻して急冷することが好ましい。
溶融炉10の運転中には、メタル層23は、Cuを多く含有し比重の大きいメタル下層のCuリッチ層(比重7.6)と、Feを多く含有し比重の小さいメタル上層のFeリッチ層(比重7.0)に分かれて存在している。溶融炉10をそのまま停止すると、まずメタル層上層部で融点の高いFeリッチ層が凝固しその後に融点の低い下層部のCuリッチ層が凝固するため、Cuリッチ層が凝固する際の収縮によってせんだん応力が発生してFeリッチ層とCuリッチ層の境界で分離し、空間が発生する場合がある。これを防止するためには、溶融炉10を休炉する直前に傾動して上部スラグ層を排出すると共に、Feリッチ層も出来る限り排出し、傾動後はすぐに元の水平に戻すことで残ったFeリッチ層とCuリッチ層を混合し、急冷することが有効であり、急冷することでFeリッチ層とCuリッチ層が再分離することを防止することが可能となる。
【0047】
(実施例2−2)
次に、上記した実施例2−1を応用した実施例2−2につき説明する。
図6を参照して、実施例2−2は、実施例2−1と同様に固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面を打診して弾性波を発振する打診装置35と、メタル面で反射した弾性波を受振する受振センサ37と、該受振センサ37に接続され、受振した波形を取得する波形計測装置36(
図1参照)とを備える。
【0048】
本実施例2−2では、弾性波の反射位置が同一となる打診位置と受振位置の組み合わせが複数設定される。従って、前記打診装置35と前記受振センサ37は、夫々複数設置されていてもよいし、一組の打診装置35と受振センサ37を用いて、これを反射位置が同一となるように位置をずらして複数点の計測を行なうようにしてもよい。
図6には複数の打診装置35と受振センサ37を設置した構成を示しており、打診装置(1)35で発生させた弾性波は受振センサ(1’)37で受振し、打診装置(2)35で発生させた弾性波は受振センサ(2’)で受振する。打診装置(2)−受振センサ(2’)の距離L2は、打診装置(1)−受振センサ(1’)の距離L1より長くとっているが、このように装置間の距離Lを異ならせた複数点において測定を行なう。また、受振センサ部と打診部とを備えた打診装置35’を備えており、該打診装置35’は前記反射位置の直上に配置される。
【0049】
上記した装置により受振センサ37で得られた複数の波形データは、波形計測装置36に入力され、該波形データを基にして解析装置(図示略)により解析処理を行い、弾性波の平均速度(平均音速)を求める。
本実施例2−2で求めた平均音速を前記実施例2−1に適用することにより、より正確に
メタル厚さを求めることができ、さらには炉底耐火物の浸食量を精度良く求めることを可能とする。
【0050】
一般に音速は深さ方向に分布があり、メタル層23を媒質とすると例えば上部2000m/sに対して下部4000m/sの差がある。従って音速分布が大きい媒質の場合、実施例2−1をそのまま適用して
メタル厚さ或いは炉底耐火物浸食量を算出すると誤差が大きくなってしまうことがある。また、実施例2−1に示したように表面波の速度を用いることは容易な方法で効果的であるが、実際には表面波ではなく深さ方向の速度を用いる必要がある。
そこで実施例2−2では、基準位置から等距離にある場所を起振点−受振点とし、反射波の到達時間を計測することによって深さ及び平均音速を求めることができるため、
メタル厚さ或いは炉底耐火物浸食量を高精度で推定することができる。
【0051】
ここで、上記した装置により得られた波形データから平均音速を算出する方法につき説明する。
本実施例では、前記受振センサ37を介して波形計測装置36に入力される波形は加速度波形とする。
図9に、該加速度波形の一例を示す。同図に示されるように、打診−受振点間距離Lが異なる波形が複数得られる。
次いで、多重反射の往復時間を求める。これは、
図6に示した基準位置の打診装置35’を用い、該打診装置35’の打診時間から反射波を受振するまでの時間から得られる。
図7は、直接波、表面波、反射波、屈折波の夫々の波における距離(打点−受振点間距離)と時間の関係を示しており、図中Eが基準位置におけるデータで、この時の時間が多重反射の往復時間となる。
【0052】
一方、
図9に示した加速度波形は、一度積分して速度波形に変換する処理を行う。これは、
図8に示される加速度波形は比較的複雑な形状であるため、これを視覚的に明瞭化するために一度積分して速度波形に変換する処理を行うようにしたものである。この変換処理により得られる速度波形は、
図10のようになる。
【0053】
そして、前記得られた速度波形から、テンプレート波形を用いて相関係数を算出し、反射波の到着時間を求める。
前記テンプレート波形とは、
図10に示される複数の速度波形のうち、明瞭に直接波が判別できる波形を抽出し、これをテンプレート波形としたものである。同図では、サイン波状の波形形状がクリアに判別できるch12の直接波をテンプレート波形とした。他の波形は反射波等が重なっており明瞭でなく、テンプレート波形としては不適である。
【0054】
該テンプレート波形を用いてテンプレートマッチングにより相関係数を算出する。該相関係数は形状の類似度を表す周知の評価尺度であり、
図10から抽出された速度波形の一部分が、前記テンプレート波形に対して類似度が高ければ1に近づき、類似度が低ければ−1に近づく。これを全ての波形に対して行なうことで、
図12に示されるグラフが得られる。
図12は、相関係数で表される波形を、基準位置からの距離が短い順に上から並べたものである。同図からわかるように、何れのグラフにおいても直接波は相関係数1の付近を通っており、その次に現れるのが表面波である。しかしながら、反射波は、複数の他の波形が重ね合っているため同図からは明瞭に判別できない。そこで、
図11に示した、基準位置の打診装置35’で得られた波形データのFFT解析結果を示すグラフを用いて、反射波の見当をつける。
図11にて反射波を表すパワースペクトルが3.78kHzのところに存在するため、ここから265μsecに反射波が現れることが予想できる。従って、
図12において、最も基準位置に近い(a)のグラフでの相関係数−1を示す位置が反射波と推定できる。
【0055】
前記相関係数のグラフから、
図13に示す各波の距離と時間の関係が得られる。反射波は距離0mmにて265μsecを通り、フィッティング処理により実線で表される反射波が得られた。一方、直接波及び表面波は距離0mmにて0μsecを通る直線で表され、同図から、進行速度が速い表面波は進行速度が遅い直接波よりも傾きが大きくなっていることがわかる。ここで反射波のフィッティング処理には、
図14に示されるように反射波の速度Vp2と厚さdを2つのパラメータとして用い、最小二乗法等の周知の方法によりフィッティング処理を行った。これにより、
メタル厚さdは289mmと求められた。尚、このときメタル厚さdの実測値は300mmであったため、厚さ誤差は5%未満に押えられ、本実施例が精度の高い結果が得られることがわかった。
【0056】
このように本実施例2−2によれば、基準位置から等距離にある場所を起振点−受振点とし、反射波の到達時間を計測することによって深さ及び平均音速を求めることができるため、
メタル厚さ或いは炉底耐火物浸食量をより高精度で求めることができ、さらには炉底耐火物の浸食量を精度良く求めることが可能となる。
【0057】
(実施例2−3)
次に、上記した実施例2−1を応用した実施例2−3につき説明する。
図15を参照して、実施例2−3は、実施例2−1と同様に固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面を打診して弾性波を発振する打診点(打診装置)35と、メタル面で反射した弾性波を受振する受振センサ37と、該受振センサ37に接続され、受振した波形を取得する波形計測装置36とを備える。
【0058】
本実施例2−3では、受振センサ37が打診点35に対して異なる距離になるように複数設置される。同図では一例として、受振センサ(1)〜(31)まで31個のセンサが、一定間隔Dmmで略一直線上に設置されている。
最初に、これらの受振センサ37のうち、受振センサ(1)から受振センサ(16)までを波形計測装置36に接続する。そして、打診点35にてメタル層23表面を打撃して弾性波を発生させ、これを波形計測装置36に接続された16個の受振センサ37にて受振する。これにより波形計測装置36には、16個の波形データが入力される。
次いで、打診点35を受振センサ37側に移動させるとともに、受振センサ(2)から受振センサ(17)までを波形計測装置36に接続し、上記と同様にして波形データを取得する。同様にして、波形を受振させる受振センサ37を1個ずつずらし、これに合わせて打診点35を移動させ、測定を繰り返し行なう。
【0059】
このようにして実施例2−3では、上記した測定操作により得られた波形データを解析して、表面波探査計測法によりメタル層中の音速、及び
メタル厚さを求めるようにしている。
この表面波探査計測法は周知の方法であり、レイリー波の位相速度の分散特性からS波速度及び深さ分布を求めるものである。この分散特性を
図16に示す。
図16(a)は異なる媒質におけるS波速度と周波数との関係を示すグラフで、(b)はその概念図である。これらの図に示されるように、媒質が薄いとS波速度が遅く、厚いとS波速度が速くなる。また、軟らかい媒質だとS波速度が遅く、硬い媒質だとS波速度が速くなる。従って、S波速度は媒質であるメタル層の状態、性質に影響を及ぼされることとなる。
【0060】
即ち、
図15に示した装置により波形データを取得すると、
図17に示されるような複数の波形を有するグラフが得られる。ここから位相速度を求める。位相速度の求め方は周知であるが、(1)フーリエ級数展開など、(2)クロスコリレーション(相互相関)、(3)CMP(Common Mid Point:反射点を等しくする)、(4)インバージョン(逆解析)、等の周知の演算を用いることにより
メタル厚さ及びメタル層中の音速を求める。
この過程で
図18に示される分散曲線が算出され、これを上記手法にて解析することにより
図19のような速度を示す分布図が得られる。ここからメタル層23と炉底耐火物の境界面が明瞭に判別できる。同図では、約10cmの所に境界面が認められ、これは実測値の10cmと同一となるため誤差はほぼ0となる。
【0061】
本実施例2−3によれば、一定間隔で略直線上に設置した複数の受振センサにより得られた波形データに基づいて、表面探査計測法を用いてメタル層中の音速、及び
メタル厚さを求めることにより、精度の高い測定が可能となる。また、この方法によれば
図19に示したように炉底状態が容易に把握できるため、炉底監視に非常に適した方法といえる。
【実施例3】
【0062】
図20乃至
図22を参照して、本実施例3につき説明する。
図20は本発明の実施例3に係る装置の全体構成を示す側面図、
図21は
図20のB拡大図で、主電極に穿孔された測定孔を示す図、
図22は実施例3における耐火物浸食量算出のフローである。
図22のフローを参照しながら、本実施例につき説明する。
まず、炉本体上方に設定された基準位置Aから炉底耐火物表面までの初期距離
h0を求めておく(S11)。尚、初期距離
h0は、溶融炉の設計図から取得してもよいし、溶融炉施工後に実測して取得してもよい。
【0063】
そして、
図20に示すように、溶融炉10の立ち下げ前に主電極11(若しくは補助電極39)を炉底耐火物分近まで挿入しておく(S12)。このとき、主電極11が炉底耐火物に突き当たったら数mm引き上げておくことが好ましい。これは、主電極11の先端と炉底電極12との間にメタル層23を設けることで、主電極11から炉底電極12にドリルで貫通することを防止するためである。
【0064】
そして、溶融炉10を休止してスラグ層22、メタル層23が固化した後、主電極11にドリルで測定孔40を穿孔する(S13)。
図21(a)、(b)に示すように、測定孔40は主電極11の長手方向に形成され、炉底耐火物の表面近傍まで連通する孔とする。尚、主電極11断面の中心に存在する孔は、窒素流路11aである。ドリルがメタル層23に当たると音が変わるなどの変化があるため、これを判断基準とするとよい。
基準位置Aからスラグ層表面までの距離
h3を求める(S14)。
また、測定孔40を用いて、スラグ表面から炉底耐火物表面までの距離
h4を求める(S15)。この距離
h3+距離
h4と、予め求めておいた基準位置Aから炉底耐火物表面までの初期距離
h0とを比較することにより、炉底耐火物の浸食量を求めることができる(S16)。
【0065】
本実施例では、炉底耐火物表面まで降下させた電極を用い、該電極に穿孔した測定孔により
メタル厚さを測定し、これを用いて炉底耐火物の浸食量を求めるようにしている。電極は主としてカーボンで形成されるため、低硬度で切削性が良好であり、これにより簡単に測定孔を形成することが可能である。
(参考例1)
【0066】
図23を参照して、本参考例1につき説明する。
図23は本発明の参考例1に係る装置の全体構成を示す側面図である。本実施例3は、プラズマ式溶融炉やアーク式溶融炉などのうち、炉底電極を有する電気式溶融炉のみに適用可能である。
参考例1は、炉底電極12の長さを超音波若しくは弾性波により厚さ計測するものである。基準位置Aを炉底電極12の端部に設定し、溶融炉10の運転前に、予め基準位置Aから炉底電極12の炉内側端部までの初期
長さheを計測しておく。
そして、一定時間運転後に、超音波若しくは弾性波の発振装置45と、受振センサ(不図示)を炉底電極12の炉外側端部に設置し、該受振センサにより受振した波形に基づいて波形計測装置46により炉底電極長さ
he‘を算出する。炉底電極12は、炉底耐火物とともに浸食するため、算出した炉底電極長さ
he‘と、予め求めた初期
長さheとを比較することにより炉底耐火物の浸食量が求められる。
参考例1によれば、炉内に作業員が侵入することなく炉底耐火物厚さを測定することが可能である。また、溶融炉10の運転中、休炉中の何れにも適用可能である。
【実施例4】
【0067】
図24及び
図25を参照して、本実施例4につき説明する。
図24は実施例4に係る装置の全体構成を示している。溶融炉10はフレーム51により支持されている。該溶融炉10は、運転中メタルを排出する傾動時に、炉本体14の出滓口25側下方に設けられた傾動軸52を支点として、油圧駆動されるリフター(図示略)により図中矢印方向に傾動されて出滓口25より溶融メタルを排出するように構成されている。
歪ゲージ53は応力によって抵抗値が変化することにより圧力等を検出する周知のセンサである。該歪ゲージ53は応力がかかる位置、即ち溶融炉10を支持するフレーム51に取り付けられる。
【0068】
本実施例4では、前記歪ゲージ53により、溶融炉10の運転中に連続的にデータを検出する。該検出されたデータは、
図25のように重量の時系列データとして得られる。運転に伴いスラグが出滓されてメタル層の比率が大きくなるため、運転時間が経過すると重量が増加する。そして、傾動して溶融メタルを排出することにより急激に重量が減少する。これにより、図に示されるように鋸波状のデータが得られることとなる。
炉底耐火物浸食前は、傾動の周期ごとに同じような波形を得ることができる。しかしながら、炉底耐火物が浸食すると重量が増大する曲線と傾動の周期の和の波形となる。従って、初期レベル(炉底耐火物浸食前)との差によって現状の浸食状況を把握することが可能となる。
【0069】
前記歪ゲージ53は複数設置することが好ましく、これにより精度が向上する。また、該歪ゲージ53の設置場所は、熱の影響が少ない炉から離れた場所が好適である。
本実施例4に係る炉底耐火物の監視方法は、運転中に実施することが可能であるため、上記した実施例1若しくは参考例1の炉底監視方法の確認として用いられることが好ましい。即ち、運転中に歪ゲージ53により連側データを測定し、実施例1若しくは参考例1における浸食予測結果と照らし合わせて妥当性を判断する。
尚、上記実施例4では、歪ゲージ53により重量を測定したが、傾動時の油圧の圧力で検知する構成としてもよい。この場合も
図25と同様の波形データが得られる。
このように、実施例1若しくは参考例1の炉底監視方法に加えて、本実施例4を実施して浸食予測結果の妥当性を判断することにより、より精度の高い炉底監視が可能となる。
【実施例5】
【0070】
図26を参照して、本実施例5につき説明する。
本実施例5は、中性子を用いてメタルを透過した中性子量からメタル層23の厚さを求める構成となっている。中性子の場合、原子量が小さい物質の方が透過しづらい性質がある。従って、原子量の大きいメタル層23は透過できるため、
メタル厚さの計測に適している。
同図に示されるように、本実施例の装置構成は、固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面に、SUS等の材料で形成した板状体65を配置し、該板状体65上に放射線源66を設ける。そして該放射線源66を設置した空間を鉄製筐体62により遮蔽し、さらに該鉄製筐体62を防爆容器61で囲繞する。前記鉄製筐体62の内部には、前記放射線源66から放射される中性子量を検出するセンサ(計数管)63が設置される。
【0071】
上記した構成により、中性子量を検出し、照射中性子の量と、メタル層23を透過して炉底耐火物18、19で反射して帰ってきた熱中性子の量を計測し、これらに基づき
メタル厚さを推定する。
即ち、メタル層23の厚さが増すと熱中性子が増加するので、
メタル厚さxと熱中性子の量Iの相関が得られる。尚、使用上の問題として、中性子は常に放射線を発しており放射能I
0が減衰するため、計測頻度が少ない場合には
メタル厚さと熱中性子線との相関のキャリブレーションをその都度行なうようにする。(αの校正)
そして、照射中性子の量I
0と帰ってきた熱中性子の量Iを計測して、以下の式(5)により
メタル厚さxを推定する。
I=I
0exp(−α・x) ・・・(5)
【0072】
尚、上記した構成では、メタル層23に対して同じ側に設置したセンサ63により、帰ってきた熱中性子の量を計測したが、別の構成としてメタル層23を挟んで対向面(即ち裏面)にセンサ67を設置し、中性子の量を計測しても同様に
メタル厚さを計測可能である。この場合、式(5)とは係数が異なる値となる。
I=I
0exp(−β・x) ・・・(6)
【0073】
このように本実施例5によれば、中性子は原子量の小さい物質の方が透過しづらく、且つ原子量の大きいメタルは透過できる厚さが増すと熱中性子が増加する性質を利用して、メタル厚さと熱中性子の相関関係から
メタル厚さを求めることにより、正確に
メタル厚さを求めることが可能となり、さらには炉底の浸食状況を精度よく把握することが可能となる。
【実施例6】
【0074】
図27及び
図28を参照して、本実施例6につき説明する。本実施例6は、低周波で且つ広帯域の超音波を用いて
メタル厚さを測定する方法である。尚、ここで超音波とは、発信器により発生される振動波をいう。
図27に実施例6に係る装置の構成を示す。本実施例の装置構成は、固化したスラグ層を除去して露出させたメタル層23の上面に、超音波を発生させる発信器(探触子)71と、該超音波を受振するセンサ(探触子)72を設置する。前記発信器71と前記センサ72は夫々計測器73に接続される。また、各探触子とメタル面には水溶性のグリスを塗り、密着させる。本実施例では、2探触子法が好適に用いられるため、発信器71とセンサ72は異なる位置に設置される。
【0075】
そして、前記発信器71から低周波で且つ広帯域の超音波をメタル層内部に発信する。超音波はメタル層下面の炉底耐火物との境界面で跳ね返り、上面に設置したセンサ72に到達する。この超音波はセンサ72を介して計測器73に取り込まれ、該計測器73にて計算、解析を行い、
メタル厚さを算出する。
【0076】
本実施例の方法を用いて試験を行なった結果を
図28に示す。試験1から試験8では、厚さに相当する場所にピークが現れず、厚さを測定することができなかった。試験9では、波形が安定しないが確認できる場合があり、厚さの測定がかろうじて可能であった。試験10及び試験11では、ピークが比較的明瞭に現れ、厚さを測定可能であった。これらの結果から、1探触子法では厚さ測定が困難で、2探触子法が厚さ測定に適していることがわかる。また、超音波の周波数は、2kHz〜0.7MHzが好適であることがわかる。従って、2探触子法により低周波で且つ広帯域の超音波を用いて測定を行なうことにより、精度良く
メタル厚さを測定可能であることが明らかとなった。
【実施例7】
【0077】
上記した実施例1乃至実施例6及び参考例1を用いて炉底監視を行うようにした実施例7につき説明する。
図29に示すように本実施例7では、溶融炉10の運転を開始したら(S21)、運転中に実施例1若しくは参考例1を用いて炉耐火物の浸食量をリアルタイムで測定し(S22)、測定した浸食量に基づいて溶融炉の運転計画を修正し(S23)、運転を続行する。メンテナンス等により溶融炉10を立ち下げたら(S24)、休炉中に実施例2乃至3及び参考例1の何れかを用いて炉底耐火物の浸食量を詳細に測定する。測定した浸食量に基づいて、新たな溶融炉の運転計画立案若しくは運転計画の大幅修正を行う(S25)。
尚、運転中の測定方法と休炉中の測定方法は、上記した実施例及び参考例から適宜選択することができる。ここでは、一例として実施例1と実施例2を用いて炉底耐火物監視を行う方法につき説明する。
このように、溶融炉10の運転中にリアルタイムで耐火物浸食量を求めるとともに、休炉中に詳細に耐火物浸食量を求めることにより、最適な運転計画を立てることが可能となり、安全で円滑な運転が可能となる。
【実施例8】
【0078】
次に、実施例8を
図32〜
図36に基づいて説明する。
さて、前記したように本発明に適用されるプラズマ溶融炉のメタル層23は、Cuを多く含有し比重の大きいメタル下層のCuリッチ層(比重7.6)と、Feを多く含有し比重の小さいメタル上層のFeリッチ層(比重7.0)に分かれて存在し、そして実施例6の試験10及び試験11に示す超音波検査では主に縦波型探触子が用いられ、その周波数は広帯域の超音波(2KHz〜0.7MHz)を用いているが、
図32に示すように超音波波形が、波の進行方向に対して平行である縦波(P波)の超音波を使用した場合は、計測対象物に不純物や気泡、隙間等が多い場合横波などにモード変換してしまい、縦波が弱くなるために、Cuリッチ層とFeリッチ層が明りょうに分かれている場合は計測精度が低下する。(
図32(a)、(b)、(c)参照)
一方、超音波波形が、波の進行方向に対して垂直であるものを横波(S波)とすると、前記した欠点が解消されると共に、特に溶融炉10のメタル層23は、メタル上層のFeリッチ層とCuリッチ層に分かれて存在している場合は、前記層境界で分離し、前記メタル上層のFeリッチ層が溶融炉10のメタル層23であると測定してしまう恐れがあるが、このような場合でも横波超音波を用いた場合は、前記した欠点が解消されることが知見できた。
【0079】
また、
図33(a)に示すように、縦波型探触子は、メタル層の表面押圧方向に波形を生成する必要があるために、その探触子はその探触子面全体(直径70mm分)がメタル層表面に接する必要があり、その面積全体をグラインダなどで平面に仕上げる必要がある。又超音波をメタル層に効率よく入力するために、グリス状のカップリング剤が必要とされる。又縦波型探触子を用いた計装システムは探触子、本体、表示パソコンで構成されるために、大きくて重く取り扱いが悪いのみならず、計測値を読み取る場合その読み取る点を人の判断で波形の位置に合わせるために、人による誤差が生じやすい。
一方、横波形低周波を利用した探触子は
図33(b)に示すように針状であるために、140mm×105mm領域で5mm以上の大きな凹凸のみを除去することで計測可能となり、又複数の探触子から発信、受信が行われるために、伝搬波の指向性がよく、例えば炉底電極の表面中央部に指向することも容易である。(
図33(b)参照)
又構成はコンパクトな装置本体と探触子のみのシンプルなもので溶融炉内にも持ち込み可能であり、扱いやすい。
更に
図33の(d)で示すように計測値の読みとりはある程度の読みとり範囲を指定すれば計測値のポイントは計測器が自動判定してくれるために、人による誤差がなくなる。
【0080】
かかる知見に基づき、低周波横波超音波を用いて実施例9を検討した。
先ず本実施例に用いる探触子本体の構造を、
図34を用いて説明する。
探触子本体50は、複数の発振探触子50Aと受振探触子50Bを左右に振り分けてそれぞれ複数個で構成されている(本実施例の場合は発振探触子50Aと受振探触子50Bの数は同数で12個ずつ)。
発振探触子50Aと受振探触子50Bの単体53はそれぞれが独立で上下動作し、スプリング55で押さえつけられる構造で、メタル層表面の凹凸面に対しそれぞれが接触する仕組みとなっている。発振探触子50Aはコネクタ57から発振回路58に電気信号が送られ、その信号により発振するための電力がケーブル56を介して振動子51に送られ、該振動子51が振動し、メタル層に横波を発生させる構造となっている。受振探触子50Bは逆に振動子51がセンサとなり、受けた振動を電気信号として受振回路59が受取り、コネクタ57に送る。発振探触子50Aと受振探触子50Bの夫々の探触子単体53は、中芯側の振動子51が発振回路58からの電気信号により振動するが、その外側が円筒ガイド54に接触しながら上下動作するため、円筒ガイド54には振動が伝わらないように振動子51の外側を防振ゴムで覆っている。
【0081】
次に、
図1に示されるプラズマ式溶融炉を用いて
図34に示す低周波超音波探傷器のメタル厚さ計測器精度確認を行った。
確認手順は、
図35に示すとおりである。
即ち、前記プラズマ式溶融炉の炉本体と炉蓋の間にあるスリーブ(前記溶融炉上方で耐火物の浸食の影響を受けない位置)を基準位置として設定し、該溶融炉新設時にスリーブから炉底電極面までの高さh
0を測定する。(ステップ1)
次に炉底電極長さheを測定し、後記する低周波横波超音波計測装置を用いて炉底電極の往復時間tより炉底電極中の音速を求める。(ステップ2)
その後メタル層の厚みが700mmとなる程度に所定時間運転してスラグ層とメタル層を堆積させた後、炉を傾動させてすぐに炉停止(停止後残存スラグ厚さ:70〜80mm)させて炉内部冷却を行う。
スラグ層の中央部位をはつり、スリーブからメタル層表面までの高さh1と炉底電極長さhe‘を測定する。(ステップ3)
これにより「h
0+he」は一定であるから
「h
0+he」=「h
1+he‘」+h(
メタル厚さ)となり、
前記式よりh(
メタル厚さ)が求まる(ステップ4)。
次に、低周波横波超音波計測装置で炉中心のメタル厚さを計測し、それと上記メタル厚さ実測値から炉中心でのメタル層中の音速を得る。(低周波超音波による音速2539m/s)
この音速を使って各点((2)−1及び(2)−3)のメタル厚さを求めた(ステップ5)ところ、その精度は±0〜−2.1%以内と極めて精度のよいことが確認された。(
図36参照)
尚、
図35(b)に示すように、溶融炉10のメタル層23は、メタル上層のFeリッチ層とCuリッチ層に分かれて存在しているために前記層境界でも反射波があり、2つの値(
図36内参照)が得られた。
尚、比較例として弾性波レーダシステムを用いてインパクタによる弾性波(縦波)を発生させて音速の確認と(直接波による音速は出滓口付近が最も大きく約2840m/sであり、これを採用した。)各点((2)−1及び(2)−3)のメタル厚さを求めたところ弾性波レーダシステムはメタル上層200mm付近の層の影響によりメタル層底面のレンガ境界からの信号を確認することができなかった。
尚、使用計測器は下記の通りである。
(1)低周波横波超音波計測装置:低周波横波超音波(周波数:55KHz)
・送受信デバイス:12個のスプリング付インパクト針(アンテナアレイ)寸法:〔本体〕245×120×40mm、〔アンテナアレイ〕145×90×75mm
(2)弾性波レーダシステム(アプライド・リサーチ社、iTECS−5)
・弾性波による速度・厚さ測定
・送受信デバイス:〔送信〕インパクタによる弾性波発生〔受信〕加速度センサ・寸法:〔本体〕290mm×200mm×70mm
【0082】
以上記載の如くメタル厚さ計測は、2k〜0.7MHzの範囲の低周波横波超音波(好ましくは周波数50〜60Hz)では底面からの反射波を明確に捉えることができ、直接の実測値との精度のバラツキが少ないことから、十分に本発明の効果が得られた。又弾性波レーダシステムは今回の実験では、メタル上層200mm付近の層の影響によりレンガ境界からの信号を確認することができなかったが、Feリッチ層とCuリッチ層を混合し、急冷することにより精度よい結果が得られたことは前記したとおりであり、メタル層が疑似単一層のものには有効である。