(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781572
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】パパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法
(51)【国際特許分類】
A24B 15/26 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
A24B15/26
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-169229(P2013-169229)
(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公開番号】特開2014-57573(P2014-57573A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2013年8月16日
(31)【優先権主張番号】201210344626.5
(32)【優先日】2012年9月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509294601
【氏名又は名称】福建中烟工業有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】林 凱
(72)【発明者】
【氏名】鹿 洪亮
(72)【発明者】
【氏名】馬 鵬飛
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−000100(JP,A)
【文献】
特表2008−505887(JP,A)
【文献】
特開2008−214299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24B 15/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水抽出或いは異なる濃度のアルコール抽出によってパパイヤ葉の抽出液を取得し、作製済みの刻みタバコ重量の0.02〜5%の比率に基づくパパイヤ葉抽出液を前記刻みタバコの上に均等にスプレーしてタバコを作り出すことを特徴とするパパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法。
【請求項2】
前記パパイヤ葉はパパイヤ葉の粉末或いは葉全体とすることを特徴とする請求項1に記載のパパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法。
【請求項3】
前記抽出液の取得には、水抽出或いは異なる濃度のアルコール抽出を採用し、抽出時のパパイヤ葉と抽出溶剤の重量比は1:5-25であることを特徴とする請求項1或いは2に記載のパパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法。
【請求項4】
前記異なる濃度のアルコールとはエタノールと水の重量比を1-90:99-10とすることを特徴とする請求項3に記載のパパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法。
【請求項5】
前記パパイヤ葉抽出液は直接使用するかペースト状に濃縮した後に使用することを特徴とする請求項1或いは2に記載のパパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法。
【請求項6】
前記抽出液を加える比率は刻みタバコ重量の0.02〜5%であることを特徴とする請求項1に記載のパパイヤ葉抽出液を用いた紙巻タバコの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパパイヤ葉抽出液の製造方法及び紙巻タバコへの応用に関する。
【背景技術】
【0002】
タバコと健康の問題が益々注目されるようになるに従い、紙巻タバコ喫煙の安全性、保健機能の向上、紙巻タバコの煙中の有害成分の低下が紙巻タバコの発展に必要な課題となった。よって、市場には朝鮮人参タバコやミントタバコ等が出現した。それは、刻みタバコの中に朝鮮人参やミント等の独特な保健効果を備えた質の高い物質を混入するものである。中国での研究の主なものは、パパイヤの化学成分の測定、医療方面に関するものであり、パパイヤをタバコに応用する報道はまだ見られない。
【0003】
パパイヤ(Carica papaya L)は華南及び台湾、福建と雲南の一部地区特有の熱帯、亜熱帯常緑果樹であり、その収穫量は多く、色が美しく美味で、しかも糖分とビタミンを豊富に含む。特に、パパウ(Papaw)は栄養価が非常に高い。また、パパイヤの葉は漢方材であり、強心作用、むくみを取り除く作用を備える。尚、パパイヤの葉の揮発油の化学成分及びタバコや紙巻タバコへの応用に関する報告はまだ見られない。
【0004】
GC×GC/TOF-MSによってパパイヤ葉揮発油の定性分析を行なったところ、相似度≧800の化学成分に、トータルイオンクロマトグラム、逆相似度、及び可能性データを結合し、整合度の高い化学成分383種を判定する(表1参照)。尚、アルコール37種、アルデヒド53種、酸21種、アルカン49種、アルケン20種、ケトン82種、エステル31種を含む。
【0005】
【表1】
【0006】
パパイヤ葉抽出物中の一部化学成分には特殊な香りを有する特徴と薬効がある。パパイヤ葉揮発油の中には多くの成分が含まれる(表2参照)。例えば、カリオフィレン、ジヒドロアクチニジオリド、リナロール、メントール、ゲラニルアセトン、イオノン、ダマセノン、ピラジン及びピロール類化合物等はいずれも重要な香り成分である。そのうち、ジヒドロアクチニジオリドは強烈で新鮮な葉、草の香りがあるため、高貴な清らかな香りを有する香料と言われる。カリオフィレンにはチョウジ油とテレビン油の中間のような香りを備え、チョウジ油に似た辛い香りや木の香りを有し、若干の苦味がある。メントールはミントの清涼感を備え、爽やかで、甘く、クールである。拡散力は強いが持続力は弱い特徴がある。それに対し、パパイヤ葉揮発油の主な解熱成分には、甘い香り、フルーティな香り、タバコの香りを含むという特徴があり、これらの成分には紙巻タバコの香りを調和し増加させる作用、刺激を緩和する性質、汚れた空気を覆い隠し、タバコの風味を高める作用があり、紙巻タバコの香り増加に応用できる。
【0007】
パパイヤ葉揮発油中の一部成分である、イオネン、リモネン、オシメン、カリオフィレン等は、消炎、咳止め、息切れを抑え、痰を取り除く作用があり、臨床上では気管支炎の治療に用いる。リモネンは、単環式モノテルペン化合物であり、無色の油状液体であり、柑橘系の香りをもつ。咳の抑制、痰の除去、静菌作用を備える。これらの化学成分にはタバコによる呼吸器系の疾病を緩和させたり咳を抑える作用があるため、タバコの添加剤としての使用が可能であり、紙巻タバコ独特の香りをもつ特徴や薬効によって、喫煙時の安全性を高めることができる。
【0008】
【表2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製造したタバコの香りは清々しくはっきりし、喫煙時の満足感と快適度を高め、煙の濃度及び勢いを適度にし、パパイヤ葉抽出液の製造方法及び紙巻タバコへの応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
パパイヤ葉抽出液の製造方法及び紙巻タバコへの応用は、水抽出或いは異なる濃度のアルコール抽出によってパパイヤ葉の抽出液を取得し、作製済みの刻みタバコ重量の0.02〜5%のパパイヤ葉抽出液を前記刻みタバコの上に均等にスプレーしてタバコを作り出す。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、紙巻タバコ中にパパイヤ葉抽出液を添加した試験の評価分析結果から理解される通り、パパイヤ葉抽出液はタバコの香りと調和し、香りの質を向上させ、香りが豊富で清々しくはっきりとし、柔らかくきめ細やかで、絶えることなく長く続く感じが良好であり、喫煙時の満足感を高め、刺激は明らかに減少し、喫煙の快適度を高め、煙の濃度及び勢いが適度である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、具体的な実施例を用いて本発明の詳細説明をする。尚、以下の実施例は、本発明を説明するために用いたものであり、本発明の実施範囲を制約するものではない。
【0013】
パパイヤ葉抽出液の製造方法及び紙巻タバコへの応用の具体的実施例は次のとおりである。
【実施例1】
【0014】
まず、パパイヤ葉を細かく砕き、細かく砕いたパパイヤ葉の粉末20gを500mlのフラスコに入れ、120g、50%のエタノールを加え、60℃の恒温で6時間超音波抽出を行なう。その後、抽出液を高速遠心機を用いて遠心分離した後、上澄み液を濃縮してペースト状にし、茶褐色のガラス瓶に移し変えて密封し予備とする。
製造したパパイヤ葉のペースト状濃縮液を70%のエタノールを用いて溶解、希釈するとパパイヤ葉抽出液の溶液となる。次に、刻みタバコ100gに対し0.02%のパパイヤ葉抽出液(0.02g)を取り出す。希釈液を刻みタバコ上に均等にスプレーした後、スプレーの済んだ刻みタバコを温度22℃±1℃、RH60%±2%の恒温恒湿の箱の中に48時間放置し平衡させると、タバコが完成する。
紙巻タバコ中にパパイヤ葉抽出液を添加する試験の評価分析結果は次のとおりである。パパイヤ葉抽出液はタバコの香りと調和し、香りの質を向上させ、タバコの香りが豊富で、香りは清々しくはっきりと鮮明であり、柔らかくきめ細やかで、絶えることなく長く続く感じが良好であり、喫煙時の満足感を高め、刺激は明らかに減少し、喫煙の快適度を高め、余韻を楽しませ、煙の濃度及び勢いが適度である。
【実施例2】
【0015】
まず、パパイヤ葉50g取り出し、2Lのフラスコに入れ、350g、65%のエタノールを加え、65℃の恒温水浴の中で8.5時間攪拌して抽出を行なう。抽出液を濾過して取得したパパイヤ葉抽出液を茶褐色のガラス瓶に移し変えて密封し予備とする。
まず、刻みタバコ100gを取り出した後、前記パパイヤ葉抽出液3.5gを取り出す。抽出液を取り出した刻みタバコ上に均等にスプレーした後、スプレーの済んだ刻みタバコを、温度22℃±1℃、RH60%±2%の恒温恒湿の箱内に48時間放置し平衡させると、タバコが完成する。
【実施例3】
【0016】
まず、パパイヤ葉100gを取り出し、該パパイヤ葉を2Lのフラスコに入れ、1000gの水を加え、80℃の恒温水浴の中で8時間攪拌して抽出を行なう。その後、抽出液を濾過した後に、茶褐色のガラス瓶に移し変えて密封し予備とする。
刻みタバコ100gを取り出し、前記茶褐色のガラス瓶内に保存したパパイヤ葉抽出液4.5gを取り出し、該抽出液を刻みタバコ上に均等にスプレーする。スプレーの済んだ刻みタバコを温度22℃±1℃、RH60%±2%の恒温恒湿の箱内に48時間放置し平衡させると、タバコが完成する。
【0017】
紙巻タバコ中にパパイヤ葉抽出液を添加する試験の評価分析結果は次のとおりである。即ち、パパイヤ葉抽出液はタバコの香りと調和し、香りの質を向上させ、タバコの香りが豊富で清々しくはっきりとし、柔らかくきめ細やかで、絶えることなく長く続く感じが良好であり、喫煙時の満足感を高め、刺激は明らかに減少し、喫煙の快適度を高め、煙の濃度及び勢いが適度である。
【0018】
本発明の実施例1、実施例2、実施例3の相違点は、パパイヤ葉の試験量、精錬方式、抽出時間が異なる点にある。しかし、試料はいずれもパパイヤ葉である。
【0019】
前述は本発明の三つの具体的な実施例である。しかし、本発明の設計構想はこれに制約されないものである。よって、この構想を用いて、本発明に対して行なう非実質的な変更は全て本発明の保護範囲の侵害行為とみなすことをここに明記する。