特許第5781574号(P5781574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781574
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】オープンシールド機の発進反力装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   E21D9/06 331
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-181843(P2013-181843)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-48659(P2015-48659A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】竹川 廣明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元晶
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−076190(JP,A)
【文献】 特開2006−016960(JP,A)
【文献】 特開2002−188392(JP,A)
【文献】 特開2004−176432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00− 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁板にシールドジャッキを後方に向けて設けたオープンシールド機の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土して設置したコンクリート函体に反力を取ってシールドジャッキを伸長してオープンシールド機を掘進させ、
前記コンクリート函体の前に次のコンクリート函体を吊り下し、同様の掘進及びコンクリート函体のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体を縦列に地中に埋設するオープンシールド工法に使用するオープンシールド機の発進反力装置であり、コンクリート函体の反力受け装置として支圧鋼材を反力受けとし、受台コンクリート上に横向きに支圧架台鋼材を設置し、支圧架台鋼材と支圧鋼材の下部をヒンジ構造にて結合し、支圧鋼材の上部と支圧架台鋼材の後方に築造したジャッキ反力架台を油圧ジャッキを介し、ヒンジ構造にて結合したことを特徴とするオープンシールド機の発進反力装置。
【請求項2】
支圧架台鋼材は受台コンクリートに埋め込まれた受台鋼材溶接またはボルト止めする請求項1記載のオープンシールド機の発進反力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市街地に上下水道、地下道等の地下構造物を施工するオープンシールド工法に使用するオープンシールド機の発進反力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のごとくオープンシールド工法は、開削工法(オープン工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法である。
【0003】
このオープンシールド工法では、シールド機を前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能としてカーブ施工を可能としたり、方向修正を行えるようにしたものがある。
【0004】
その一例を下記特許文献について説明すると、オープンシールド機1は、図に示すように基本的には左右の側壁板1a,1bとこれら側壁板1a,1bと同程度の長さでその間を連結する底板1cとからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【特許文献1】特開平10−96234号公報
【0005】
該オープンシールド機1は図に示すように機体を前後方向で複数に分割し、フロント機2としての前方の機体の後端にテール機3としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。
【0006】
フロント機2は主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設している。これに対してテール機3はコンクリート函体8の設置を行うもので、機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設している。図中6はフロント機2の前端に設けた刃口で、この例ではスライドジャッキ6aによる可動分割刃口としており、7はテール機3の後端に設けた土留板、9はストラット、10はプレスバー(押角)である。
【0007】
このようなオープンシールド機1を使用するオープンシールド工法は、図6図9に示すように、発進坑と到達坑との間で施工される。発進坑11内で前記オープンシールド機を組立て、発進坑11の前の地盤を地上に設置したシャベル系の掘削機12で掘削し、該オープンシールド機1のシールドジャッキ5を伸長して発進坑11内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体8を上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール機3内で縮めたシールドジャッキ5の後方にストラット9およびプレスバー10とともにセットする。また、発進坑11はシートパイル等の土留鋼矢板で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進坑11の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0008】
次いで、同様に掘削機12でフロント機2の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土してオープンシールド機1を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体8の前に第2番目のコンクリート函体8をテール機3内に吊り降す。以下、同様の掘進及びコンクリート函体8のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体8を縦列に地中に埋設し、後方のコンクリート函体8上にダンプ14で埋戻しを施し、オープンシールド機1が到達坑13まで達したならばこれを分解・撤去して工事を完了する。
【0009】
図中15は裏込注入材を注入するグラウト機で、1次グラウトはテール機3内に吊り降したコンクリート函体8の周囲に行い、2次グラウトはオープンシールド機1を推進させたあと、地中に残したコンクリート函体8の周囲に行う。
【0010】
ところで、オープンシールド機1の掘進はシールドジャッキ5を伸長だけでなく、このシールドジャッキ5を固定して中折ジャッキ4の伸長でテール機3に対してフロント機2を進めることでも行なわれ、シールドジャッキ5と中折ジャッキ4との2段階で押し進める。
【0011】
その際、中折ジャッキ4のうち、左右いずれかを多く伸長させればフロント機2はその反対側に向きを変え、その方向に曲がる。また、上下いずれかを多く伸長させればフロント機2はその反対側に向きを変え、上向きまたは下向きに曲がる。このようにしたカーブ施工または方向修正が可能である。
【0012】
前記プレスバー(押角)10はシールドジャッキ5の推進力を分散させ、コンクリート函体8に伝達させるためのもので、H形鋼などの鋼材が使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記従来技術では、発進坑からオープンシールド機1を前進させる発進反力は発進坑11内の反力壁から取ることになっているが、これは反力壁を支える地山が存在することが必要であり、支圧部に既設水路が存在する等の理由により、支圧背面の地山にシールド機掘進初期の推進反力を期待することができない場合があり、その場合は、オープンシールド工法による施工が不可能となるおそれがある。または、立坑位置を変更する等の不経済となる事象が発生してしまう。
【0014】
また、支圧背面が強固でない場合、オープンシールド機の推進による支圧鋼材の変位により、掘進初期敷設函体の施工精度が低下するという事象が起きる。
【0015】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、立坑背面に地山等の反力体がない箇所においても推進初期反力を確保でき、オープンシールド工法による施工が不可能となるおそれや立坑位置を変更する等の不経済となる事象が発生してしまうことがなく、経済的に施工が可能であり、地山の反力体と比較して推力による支圧部の変位が少ない為、掘進初期の敷設函体の施工精度が向上し、推進による支圧鋼材の変位を調整できるため、掘進初期の敷設函体の施工精度が向上するオープンシールド機の発進反力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の本発明は前記目的を達成するため、側壁板にシールドジャッキを後方に向けて設けたオープンシールド機の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土して設置したコンクリート函体に反力を取ってシールドジャッキを伸長してオープンシールド機を掘進させ、前記コンクリート函体の前に次のコンクリート函体を吊り下し、同様の掘進及びコンクリート函体のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体を縦列に地中に埋設するオープンシールド工法に使用するオープンシールド機の発進反力装置であり、コンクリート函体の反力受け装置として支圧鋼材を反力受けとし、受台コンクリート上に横向きに支圧架台鋼材を設置し、支圧架台鋼材と支圧鋼材の下部をヒンジ構造にて結合し、支圧鋼材の上部と支圧架台鋼材の後方に築造したジャッキ反力架台を油圧ジャッキを介し、ヒンジ構造にて結合したことを要旨とするものである。
【0017】
請求項1記載の本発明によれば、支圧鋼材に作用する推進力は油圧ジャッキ、支圧架台鋼材を介し、受台コンクリートと底盤地山、発進坑を形成する土留鋼矢板と側部地山、底盤地山の反力に反力を期待することができ、推力による支圧部の変位を少ないものとすることができる。
【0018】
また、シールド機の推進によって支圧鋼材に変位(傾き)が生じた場合には、支圧鋼材に固定した油圧ジャッキの伸縮により、支圧鋼材を正規の位置に動かして調整することができる。
【0019】
請求項2記載の本発明は、支圧架台鋼材は受台コンクリートに埋め込まれた受台鋼材溶接またはボルト止めすることを要旨とするものである。
【0020】
請求項2記載の本発明によれば、受台コンクリートに対する支圧架台鋼材の固定は、受台コンクリートに受台鋼材を埋め込み、この受台鋼材に溶接またはボルト止めすることで、強力な推力に耐えうる堅牢な固定ができる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように本発明のオープンシールド機の発進反力装置は、立坑背面に地山等の反力体がない箇所においても推進初期反力を確保できるもので、地山等の反力体がないためオープンシールド工法による施工が不可能となるおそれや立坑位置を変更する等の不経済となる事象が発生してしまうことがなく、経済的な施工が可能であり、また、地山の反力体と比較して推力による支圧部の変位が少ない為、掘進初期の敷設函体の施工精度が向上し、推進による支圧鋼材の変位を調整できるため、掘進初期の敷設函体の施工精度が向上するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のオープンシールド機の発進反力装置を使用したオープンシールド工法の概要を示す縦断側面図、図2は同上一部切欠いた平面図、図3図2のC−C線矢視図で一部切欠いたもので、オープンシールド機全体としては前記従来例として説明したのと同様で、同一構成要素には同一参照符号を付してある。
【0023】
該オープンシールド機1は機体を、フロント機2としての前方の機体の後端にテール機3としての後方の機体の前端が嵌入して、機体を前後方向で複数に分割して相互の嵌合部で屈曲可能とした。
【0024】
フロント機2は主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設している。図中6はフロント機2の前端に設けた刃口である。
【0025】
本実施形態ではこの中折ジャッキ4はフロント機2に固定され、そのロッド端はテール機3に軸着される。軸着構造は、該ロッド端を球体軸16とし、これをテール機3の球体軸受け17に嵌合させてなる。
【0026】
また、テール機3の先端でフロント機2後端に入り込む部分の側方には、円弧状接合側壁面18を形成した。
【0027】
テール機3はコンクリート函体8の設置を行うもので、機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0028】
シールドジャッキ5の後端に、H形鋼もしくはボックス形鋼による縦角材によるプレスバー10を上下のシールドジャッキ5に架け渡すように、各シールドジャッキ5とピン結合で取り付けた。このピン結合(軸着構造)も球体軸16と球体軸受け17との嵌合によるもので、シールドジャッキ5のロッド端を球体軸16とし、これをプレスバー10に設けた球体軸受け17に嵌合させてなる。
【0029】
発進坑11はシートパイル等の土留鋼矢板19で構成され、その底盤を構成する受台コンクリート20にはH形鋼などの鋼材による受台鋼材21をそのフランジ面が露出するようにして長さ方向に向けて埋め込んだ。
【0030】
この受台鋼材21に支圧架台鋼材22を溶接またはボルト止めして、支圧架台鋼材22を受台コンクリート20上に横向きに設置した。
【0031】
図中23は、オープンシールド機1に設置するコンクリート函体8の反力受け装置としての支圧鋼材であり、立設した状態で、前記支圧架台鋼材22とその下部をヒンジ構造24にて結合する。この支圧鋼材23はH形鋼などの鋼材であり、図示は省略するがコの字形に枠組んでもよい。
【0032】
また、支圧架台鋼材22の後方に台形台状のジャッキ反力架台25を斜めに向けて築造し、前記支圧鋼材23の上部とジャッキ反力架台25とを油圧ジャッキ27を介し、ヒンジ構造24にて結合した。ジャッキ反力架台25はコンクリートまたは鋼材などによる。26は反力架台基礎コンクリートである。
【0033】
なお、図2図3では省略したが、支圧架台鋼材22、ジャッキ反力架台25、油圧ジャッキ27は左右に並べて一対、2個を設けるものである。
【0034】
次に使用法を説明する。オープンシールド機1を使用するオープンシールド工法は、掘削機でフロント機2の前面又は上面から土砂を掘削しかつ排土してオープンシールド機1を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体8の前に第2番目のコンクリート函体8をテール機3内に吊り降す。以下、同様の掘進及びコンクリート函体8のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体8を縦列に地中に埋設し、後方のコンクリート函体8上に埋戻しを施し、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを分解・撤去して工事を完了する。
【0035】
この施工は発進坑と到達坑との間で施工され、発進坑11内で前記オープンシールド機を組立て、発進坑11の前の地盤を地上に設置したシャベル系の掘削機12で掘削し、該オープンシールド機1のシールドジャッキ5を伸長して本発明の発進坑11内の発進反力装置である支圧鋼材23に反力をとってオープンシールド機1を前進させる。
【0036】
支圧鋼材23に作用する推進力は油圧ジャッキ27、支圧架台鋼材22を介し、受台コンクリート20と底盤地山、発進坑11を形成する土留鋼矢板19と側部地山、底盤地山の反力に反力を期待することができる。
【0037】
また、オープンシールド機1の推進によって支圧鋼材23に変位(傾き)が生じた場合には、支圧鋼材23に固定した油圧ジャッキ27の伸縮により、支圧鋼材23を正規の位置に動かして調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明のオープンシールド機の発進反力装置を使用したオープンシールド工法の概要を示す縦断側面図である。
図2】本発明のオープンシールド機の発進反力装置を使用したオープンシールド工法の概要を示す一部切欠いた平面図である。
図3図2の一部切欠いたC−C線矢視図である。
図4】オープンシールド機の概要を示す縦断正面図である。
図5】オープンシールド機の概要を示す縦断側面図である。
図6】オープンシールド工法の第1工程を示す側面図である。
図7】オープンシールド工法の第2工程を示す側面図である。
図8】オープンシールド工法の第3工程を示す側面図である。
図9】オープンシールド工法の第4工程を示す側面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…オープンシールド機
1a,1b…側壁板 1c…底板
2…フロント機 3…テール機
4…中折ジャッキ 5…シールドジャッキ
6…刃口 6a…スライドジャッキ
7…土留板
8…コンクリート函体 9…ストラット
10…プレスバー 11…発進坑
12…掘削機 13…到達坑
14…ダンプ 15…グラウト機
16…球体軸 17…球体軸受け
18…円弧状接合側壁面 19…土留鋼矢板
20…受台コンクリート
21…受台鋼材
22…支圧架台鋼材 23…支圧鋼材
24…ヒンジ構造 25…ジャッキ反力架台
26…反力架台基礎コンクリート
27…油圧ジャッキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9