【文献】
西田 信一郎,デブリ除去技術へのアプローチ,計測と制御,公益社団法人 計測自動制御学会,2009年11月26日,第41巻, 第8号,p. 575-580,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/41/8/41_8_575/_article/-char/ja/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記銛は、前記ストッパ部の前面に前記尖端部を覆うように配置された弾性体を有し、前記尖端部が前記ターゲットデブリに係止したときに、前記ターゲットデブリ表面と前記ストッパ部との間で前記弾性体を圧縮させることにより、前記銛の貫通時に生じる破片の飛散を抑制するようにした、ことを特徴とする請求項1に記載のスペースデブリ除去装置。
前記尖端部は、前記ストッパ部の表面に複数配置されており、各前記尖端部は、前記ターゲットデブリの表面を貫通不可能な場所に当接したときに引き込み可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスペースデブリ除去装置。
前記ワイヤを巻き取り可能なワイヤ巻取装置を有し、前記尖端部を前記ターゲットデブリに係止させた後、前記ワイヤを巻き取ることにより前記本体部を前記ターゲットデブリに密着させる、ことを特徴とする請求項1に記載のスペースデブリ除去装置。
前記本体部に回動可能に配置された複数の拘束脚を有し、前記本体部を前記ターゲットデブリに密着させた後、前記拘束脚を展開して前記ターゲットデブリに前記本体部を固定し、前記推進装置を用いて前記ターゲットデブリの運動を抑制する、ことを特徴とする請求項5に記載のスペースデブリ除去装置。
前記減速装置は、宇宙空間に放出される導電性テザーと、該導電性テザーの先端に配置されるとともに推力を発生させる推力発生手段を有する先端部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のスペースデブリ除去装置。
前記減速装置は、宇宙空間に放出される導電性テザーと、該導電性テザーの先端に配置されるとともに推力を発生させる推力発生手段を有する先端部と、前記導電性テザーの後端を前記ワイヤに連結するコネクタと、を有し、前記ワイヤは前記導電性テザー及び前記先端部を介して前記本体部に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスペースデブリ除去装置。
前記捕獲工程は、前記ターゲットデブリに銛を打ち込んだ後、前記銛に接続されたワイヤを巻き取って前記スペースデブリ除去装置を前記ターゲットデブリに密着させる密着工程を含む、ことを特徴とする請求項13に記載のスペースデブリ除去方法。
前記捕獲工程は、前記スペースデブリ除去装置を前記ターゲットデブリに密着させた後、前記スペースデブリ除去装置に配置された拘束脚を展開して前記ターゲットデブリを拘束する拘束工程と、前記スペースデブリ除去装置に配置された推進装置により前記ターゲットデブリの運動を抑制する運動抑制工程と、を含む、ことを特徴とする請求項14に記載のスペースデブリ除去方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したスペースデブリは、一般に、不規則な回転運動(タンブリング運動)をしながら周回している。したがって、このようなタンブリング運動をしているスペースデブリに対して、どのように受圧装置やテザー装置等の減速装置を取り付けるかが問題となる。特に、ロボットアームを使用する場合には、ロボットアームがスペースデブリと衝突しないようにする必要があり、制御が複雑になってしまう。しかしながら、この点について、特許文献1や特許文献2に記載されたスペースデブリ除去方法では、十分な検討がなされていない。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、タンブリング運動しているスペースデブリに対して減速装置を容易に取り付けることができる、スペースデブリ除去装置及びスペースデブリ除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、不規則なタンブリング運動をしているスペースデブリを捕獲して減速させることによって軌道上から除去するスペースデブリ除去装置において、除去対象のスペースデブリであるターゲットデブリへの接近及び姿勢制御を行う推進装置と、前記ターゲットデブリに向かって射出可能な銛を備えた捕獲装置と、前記ターゲットデブリの運動を観測して前記ターゲットデブリの空洞部に向かって前記銛を打ち込み可能な捕獲位置及び捕獲姿勢を計算する観測装置と、前記銛に直接的又は間接的に接続されるとともに前記ターゲットデブリを減速させる減速装置と、前記推進装置、前記捕獲装置、前記観測装置及び前記減速装置を搭載した本体部と、
を備え、前記銛は、前記ターゲットデブリに係止可能な返し部を有する尖端部と、前記ターゲットデブリの表面に接触するストッパ部と、前記銛を射出させる推力発生部と、前記銛を前記本体部に接続するためのワイヤと、を有する、ことを特徴とするスペースデブリ除去装置が提供される。
【0009】
前記銛は、前記ターゲットデブリに係止可能な返し部を有する尖端部と、前記ターゲットデブリの表面に接触するストッパ部と、前記銛を射出させる推力発生部と、前記銛を前記本体部に接続するためのワイヤと、を有していてもよい。
【0010】
前記返し部は、前記ターゲットデブリの貫通時に閉じて貫通後に開くように構成されていてもよい。
【0011】
前記銛は、前記ストッパ部の前面に前記尖端部を覆うように配置された弾性体を有し、前記尖端部が前記ターゲットデブリに係止したときに、前記ターゲットデブリ表面と前記ストッパ部との間で前記弾性体を圧縮させることにより、前記銛の貫通時に生じる破片の飛散を抑制するように構成されていてもよい。
【0012】
前記尖端部は、前記ストッパ部の表面に複数配置されており、各前記尖端部は、前記ターゲットデブリの表面を貫通不可能な場所に当接したときに引き込み可能に構成されていてもよい。
【0013】
前記ワイヤを巻き取り可能なワイヤ巻取装置を有し、前記尖端部を前記ターゲットデブリに係止させた後、前記ワイヤを巻き取ることにより前記本体部を前記ターゲットデブリに密着させるようにしてもよい。
【0014】
前記本体部を前記ターゲットデブリに密着させる際の衝撃を緩和する緩衝材を前記本体部に配置するようにしてもよい。
【0015】
前記本体部に回動可能に配置された複数の拘束脚を有し、前記本体部を前記ターゲットデブリに密着させた後、前記拘束脚を展開して前記ターゲットデブリに前記本体部を固定し、前記推進装置を用いて前記ターゲットデブリの運動を抑制するようにしてもよい。
【0016】
前記捕獲装置は、前記本体部に複数配置されていてもよい。
【0017】
前記減速装置は、宇宙空間に放出される導電性テザーと、該導電性テザーの先端に配置されるとともに推力を発生させる推力発生手段を有する先端部と、を有していてもよい。
【0018】
前記減速装置は、宇宙空間に放出される導電性テザーと、該導電性テザーの先端に配置されるとともに推力を発生させる推力発生手段を有する先端部と、前記導電性テザーの後端を前記ワイヤに連結するコネクタと、を有し、前記ワイヤは前記導電性テザー及び前記先端部を介して前記本体部に接続されていてもよい。
【0019】
前記導電性テザーは、前記本体部から分離可能に接続されていてもよい。また、前記先端部は、前記本体部により構成されていてもよい。
【0020】
また、本発明によれば、不規則なタンブリング運動をしているスペースデブリを捕獲して減速させることによって軌道上から除去するスペースデブリ除去方法において、除去対象のスペースデブリであるターゲットデブリの周回軌道周辺にスペースデブリ除去装置を投入する軌道投入工程と、前記スペースデブリ除去装置を前記ターゲットデブリに接近させる接近工程と、前記スペースデブリ除去装置が観測位置に到達した後、前記ターゲットデブリの運動を観測して前記ターゲットデブリに向かって銛を打ち込み可能な捕獲位置及び捕獲姿勢を計算し、前記スペースデブリ除去装置を前記捕獲位置及び前記捕獲姿勢まで移動させる観測移動工程と、前記ターゲットデブリに前記銛を打ち込んで
、前記銛の尖端部を前記ターゲットデブリの表面に貫通させるとともに前記銛のストッパ部を前記ターゲットデブリの表面に接触させ、前記尖端部に形成された返し部を前記ターゲットデブリに係止させることにより、前記スペースデブリ除去装置と前記ターゲットデブリとを
前記銛に繋がれたワイヤによって接続する捕獲工程と、前記スペースデブリ除去装置により前記ターゲットデブリを減速させる減速工程と、を有することを特徴とするスペースデブリ除去方法が提供される。
【0021】
前記捕獲工程は、前記ターゲットデブリに銛を打ち込んだ後、前記銛に接続されたワイヤを巻き取って前記スペースデブリ除去装置を前記ターゲットデブリに密着させる密着工程を含んでいてもよい。
【0022】
前記捕獲工程は、前記スペースデブリ除去装置を前記ターゲットデブリに密着させた後、前記スペースデブリ除去装置に配置された拘束脚を展開して前記ターゲットデブリを拘束する拘束工程と、前記スペースデブリ除去装置に配置された推進装置により前記ターゲットデブリの運動を抑制する運動抑制工程と、を含んでいてもよい。
【0023】
前記観測移動工程は、前記ターゲットデブリの空洞部に前記銛を打ち込むように前記捕獲位置及び前記捕獲姿勢を計算するようにしてもよい。
【0024】
前記減速工程は、前記スペースデブリ除去装置から導電性テザーを宇宙空間に放出して前記ターゲットデブリを減速させる工程であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
上述した本発明のスペースデブリ除去装置及びスペースデブリ除去方法によれば、スペースデブリ除去装置をターゲットデブリに接近させて、ターゲットデブリに銛を打ち込み可能な捕獲位置及び捕獲姿勢を計算し、銛を打ち込んだ後、ターゲットデブリを減速させることによって、ターゲットデブリの軌道を変化させて地球に落下消滅させることができる。また、ターゲットデブリから離隔した位置から銛を打ち込むことができ、ターゲットデブリがタンブリング運動している場合であっても、スペースデブリ除去装置とターゲットデブリとが衝突しない状態で、ターゲットデブリを捕獲することができ、減速装置を容易に取り付けることができる。
【0026】
また、スペースデブリ除去装置を捕獲したターゲットデブリに密着させることにより、銛に接続されたワイヤがタンブリング運動しているターゲットデブリに巻き付き難くすることができ、減速装置の作動状態を安定させることができる。さらに、拘束脚によりスペースデブリ除去装置をターゲットデブリに固定することにより、推進装置を用いてターゲットデブリのタンブリング運動を抑制することができ、減速装置の作動状態をより安定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図16を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去方法の軌道投入工程〜捕獲工程までを示す全体概念図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去方法の減速工程を示す全体概念図である。
図3は、本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去方法を示すフローチャートである。
図4は、本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去方法の変形例を示すフローチャートである。
【0029】
本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去方法は、
図1〜
図3に示したように、不規則なタンブリング運動をしているスペースデブリを捕獲して減速させることによって軌道上から除去するスペースデブリ除去方法であって、除去対象のスペースデブリであるターゲットデブリ1の周回軌道L周辺にスペースデブリ除去装置2を投入する軌道投入工程(Step1)と、スペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1に接近させる接近工程(Step2,3)と、スペースデブリ除去装置2が観測位置Tに到達した後、ターゲットデブリ1の運動を観測してターゲットデブリ1に向かって銛41を打ち込み可能な捕獲位置E及び捕獲姿勢を計算し、スペースデブリ除去装置2を捕獲位置E及び捕獲姿勢まで移動させる観測移動工程(Step4〜7)と、ターゲットデブリ1に銛41を打ち込んでスペースデブリ除去装置2とターゲットデブリ1とを接続する捕獲工程(Step8)と、スペースデブリ除去装置2によりターゲットデブリ1を減速させる減速工程(Step9)と、を有している。
【0030】
ターゲットデブリ1は、
図1に示したように、周回軌道L上を周回しながら、不規則に自転している。すなわち、ターゲットデブリ1は、不規則なタンブリング運動をしながら周回軌道L上を周回している。したがって、ロボットアームにより減速装置を取り付ける場合には、ロボットアームがターゲットデブリ1と衝突しないように、ロボットアームの駆動タイミングや駆動方向を制御しなければならず、計算や制御が複雑になってしまう。一方、本発明は、ターゲットデブリ1と衝突しない捕獲位置Eから銛41を打ち込むことによってターゲットデブリ1を捕獲していることから、ターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2との衝突を抑制することができる。
【0031】
前記軌道投入工程(Step1)は、打ち上げられたスペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1の周回軌道L周辺に配置する工程である。具体的には、スペースデブリ除去装置2は、自力で周回軌道L上に到達できる範囲に投入される。例えば、スペースデブリ除去装置2は、周回軌道Lよりも低い位置に投入され、推進装置を使用してターゲットデブリ1に接近しつつ遠心力により徐々に周回軌道L上に接近する。
【0032】
スペースデブリ除去装置2は、例えば、数十cm〜数m程度の大きさを有する小型人工衛星の形状をなしており、地球上から単体で打ち上げるようにしてもよいし、ピギーバッグ衛星として主衛星に相乗りする形式で打ち上げるようにしてもよい。除去対象であるターゲットデブリ1は、基本的に予め設定されており、その周回軌道Lを地球上から計測し、周回軌道L周辺にスペースデブリ除去装置2を投入できるように打ち上げられる。軌道投入における調整は、GPS(グローバルポジショニングシステム:Global Positioning System)の情報に基づいて、スペースデブリ除去装置2に搭載された推進装置により処理される。
【0033】
前記接近工程(Step2,3)は、スペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1の観測位置Tまで接近させる工程である。観測位置Tは、例えば、周回軌道L上のターゲットデブリ1から30〜500m程度離れた位置に設定される。スペースデブリ除去装置2は、投入位置Sから観測位置TまでGPS等を使用して、自己の位置とターゲットデブリ1の位置を把握しながら移動する。このとき、スペースデブリ除去装置2は、観測位置Tに到達したか否かを確認し(Step2)、観測位置Tに到達していない場合(N)にはターゲットデブリ1に接近し(Step3)、観測位置Tに到達した場合(Y)には次工程に進む。
【0034】
前記観測移動工程(Step4〜7)は、スペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1の捕獲位置Eまで接近させる工程である。観測位置Tに到達したスペースデブリ除去装置2は、CCDカメラやレーザレーダ等の観測器によりターゲットデブリ1を観測し(Step4)、ターゲットデブリ1の運動モデルを推定する。この推定結果により、ターゲットデブリ1に銛41を打ち込む捕獲位置E及び捕獲姿勢を計算する(Step5)。捕獲位置Eは、例えば、タンブリング運動をしているターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2とが衝突しない位置であって、ターゲットデブリ1から数m〜数十m程度離れた位置に設定される。捕獲位置Eは、ターゲットデブリ1の周回軌道Lから外れた位置であってもよい。捕獲姿勢は、捕獲位置Eにおいて、ターゲットデブリ1に銛41を打ち込みたい箇所に銛41を打ち込むことができる方向にセットされた状態を意味する。
【0035】
また、スペースデブリ除去装置2は、ターゲットデブリ1のタンク11等の空洞部に銛41を打ち込むように捕獲位置E及び捕獲姿勢を計算するようにしてもよい。タンク11等の空洞部に銛41を打ち込むことにより、銛41をターゲットデブリ1に容易に係止させることができる。また、捕獲位置E及び捕獲姿勢は、ターゲットデブリ1の表面に対して略垂直に銛41を打ち込み可能な位置及び姿勢であってもよいし、ターゲットデブリ1の推定運動モデルにおいて不動点等の変動が少ない点に銛41を打ち込み可能な位置及び姿勢であってもよい。
【0036】
捕獲位置E及び捕獲姿勢が算出された後、スペースデブリ除去装置2は推進装置を使用して自律的に捕獲位置E及び捕獲姿勢に移動する。このとき、スペースデブリ除去装置2は、捕獲位置・姿勢に到達したか否かを確認し(Step6)、捕獲位置E及び捕獲姿勢に到達していない場合(N)には捕獲位置E及び捕獲姿勢に向かって移動し(Step7)、捕獲位置E及び捕獲姿勢に到達した場合(Y)には次工程に進む。
【0037】
前記捕獲工程(Step8)は、ターゲットデブリ1に銛41を打ち込んで捕獲する工程である。銛41はワイヤ46によってスペースデブリ除去装置2と接続されており、銛41がターゲットデブリ1に係止すると、ターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2とがワイヤ46により繋がれた状態になる。このように銛41を打ち込んでターゲットデブリ1を捕獲する方式を採用したことにより、スペースデブリ除去装置2をタンブリング運動しているターゲットデブリ1と衝突しない位置及び姿勢(捕獲位置E及び捕獲姿勢)に配置した状態で、ターゲットデブリ1と衝突しないように銛41を打ち込むことができる。したがって、他の方式(例えば、ロボットアームにより把持する方式)と比較して、捕獲位置E及び捕獲姿勢を決定するための機構及び計算を簡略化又は省力化することができ、スペースデブリ除去装置2の観測・捕獲機構の要求性能緩和や制御装置の処理負担を軽減することができ、容易にターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2とを接続することができる。
【0038】
前記減速工程(Step9)は、スペースデブリ除去装置2によりターゲットデブリ1を減速させて地球への落下を促進又は制御する工程である。かかる減速工程は、例えば、スペースデブリ除去装置2から導電性テザー61を宇宙空間に放出してターゲットデブリ1を減速させる工程である。ターゲットデブリ1を減速させる手段は、太陽風や太陽光の輻射圧等を受ける受圧手段であってもよい。
【0039】
図2に示したように、導電性テザー61は、先端に配置されるとともに推力を発生させる推力発生手段を有する先端部62を有していてもよい。先端部62が、推力発生手段を有することにより、導電性テザー61を展開したい方向に向かって案内することができ、導電性テザー61の展開を安定させることができる。この推力発生手段には、小型ロケットモータ、窒素や液化代替フロン等を使用したコールドガスジェット、一液スラスタ、パルスドプラズマスラスタ等の電気推進、樟脳等の昇華物質を利用した推進装置等を使用することができる。
【0040】
かかる導電性テザー61をスペースデブリ除去装置2から放出することによって、導電性テザー61に流れる電流と導電性テザー61が展開される磁場との関係から導電性テザー61にローレンツ力が作用し、導電性テザー61はターゲットデブリ1の進行方向と反対方向に引っ張られることとなり、ターゲットデブリ1を減速させる。したがって、導電性テザー61の長さや電流の大きさを制御することにより、ターゲットデブリ1の落下を促進したり制御したりすることができる。
【0041】
図4に示したフローチャートは、軌道投入(Step1)から観測位置Tへの到達(Step2)までのフローを段階的に行うようにしたものである。ターゲットデブリ1の運動を観測して運動モデルを推定するには、ターゲットデブリ1の運動を正確に把握することができる観測器(例えば、CCDカメラやレーザレーダ等)が必要である。かかる観測器によりターゲットデブリ1を観測するには、例えば、数十m程度の位置まで接近することが好ましい。また、スペースデブリ除去装置2が軌道投入される投入位置Sは、ターゲットデブリ1から数百m〜数千m以上離れた位置であることが多く、観測位置Tまでの移動距離が長い。スペースデブリ除去装置2を軌道投入した当初は自己の位置を把握するために、GPSを使用することが好ましい。しかし、通常の地上からの観測データに基づいてターゲットデブリ1の位置を正確に予測することは困難であり、スペースデブリ除去装置2を観測位置Tまで正確に誘導することは困難な場合がある。そこで、スペースデブリ除去装置2がターゲットデブリ1に接近した場合には、自力でターゲットデブリ1の位置を監視しながら観測位置Tに到達できるようにしてもよい。
【0042】
具体的には、スペースデブリ除去装置2はレーザレーダ等の監視装置を搭載しており、スペースデブリ除去装置2は、GPSから監視装置に切り替える監視位置に到達したか否かを確認し(Step21)、監視位置に到達していない場合(N)にはGPSを使用してターゲットデブリ1に接近し(Step22)、監視位置に到達した場合(Y)にはGPSから監視装置によるターゲットデブリ1の監視(Step23)に切り替える。その後、スペースデブリ除去装置2は、監視装置によりターゲットデブリ1の方角及び距離を計測しながら接近し、次工程(Step2)に進む。なお、Step2以降の工程は、
図3に示したフローチャートと同じである。
【0043】
次に、本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去装置について説明する。ここで、
図5は、本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去装置を示す概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は
図5(a)におけるB−B断面図、を示している。
図6は、捕獲装置を示す図であり、(a)は全体構成図、(b)は銛の斜視図、(c)は銛の第一変形例、(d)は銛の第二変形例、(e)は銛の第三変形例、を示している。
図7は、銛の変形例を示す図であり、(a)は第四変形例、(b)は第五変形例、(c)は第六変形例、(d)は第七変形例、を示している。
図8は、銛の収納状態を示す図であり、(a)はワイヤ巻取装置を有する場合の概略構成図、(b)はワイヤ巻取装置を有しない場合の概略構成図、を示している。
【0044】
本発明の第一実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、
図5に示したように、不規則なタンブリング運動をしているスペースデブリを捕獲して減速させることによって軌道上から除去するスペースデブリ除去装置であって、除去対象のスペースデブリであるターゲットデブリ1(
図1参照)に接近及び姿勢制御を行う推進装置3と、ターゲットデブリ1に向かって射出可能な銛41を備えた捕獲装置4と、ターゲットデブリ1の運動を観測してターゲットデブリ1のタンク11等の空洞部に向かって銛41を打ち込み可能な捕獲位置E及び捕獲姿勢を計算する観測装置5と、銛41に直接的又は間接的に接続されるとともにターゲットデブリ1を減速させる減速装置6と、推進装置3、捕獲装置4、観測装置5及び減速装置6を搭載した本体部21と、本体部21の外面に配置された太陽電池パネル71により充電されるとともに本体部21に搭載された機器に電力を供給する電力供給装置7と、を有する。
【0045】
前記推進装置3は、スペースデブリ除去装置2(本体部21)のターゲットデブリ1への接近、捕獲位置E及び捕獲姿勢への移動、本体部21の姿勢制御等に使用する装置である。具体的には、推進装置3は、例えば、
図5(b)に記載された主方向スラスタ31、
図5(a)に記載されたサイドスラスタ32、姿勢制御用スラスタ33、これらのスラスタから噴出されるガスを生成する推薬タンク34等により構成される。かかる推進装置3の構成は単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0046】
前記捕獲装置4は、本体部21に形成又は設置された発射筒42から射出可能な銛41を有し、ターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2(本体部21)とを接続する装置である。銛41は、
図5(b)、
図6(a)及び(b)に記載されたように、ターゲットデブリ1に係止可能な返し部43aを有する尖端部43と、ターゲットデブリ1の表面に接触するストッパ部44と、銛41を射出させる推力発生部45と、銛41を本体部21に接続するためのワイヤ46と、を有する。また、捕獲装置4は、銛41の射出方向を調整又は微調整するための射出方向調整機構(例えば、ジンバル機構等)を有していてもよい。
【0047】
尖端部43は、ターゲットデブリ1の表面を貫通可能な強度を有する金属により構成されており、尖った先端を有している。返し部43aは、尖端部43の側面に形成された複数の三角形状の翼部材の背面により構成されてもよいし、円錐形状の底面部により構成されてもよい。
【0048】
ストッパ部44は、銛41がターゲットデブリ1を貫通しないように規制するものである。銛41が、ターゲットデブリ1の表裏を貫通した場合には、銛41が外部に抜ける際に余分な破片(デブリ)が発生する可能性がある。また、銛41がターゲットデブリ1内の酸化剤タンクに到達したときに酸化剤が残留していた場合には爆発を生じる可能性がある。そこで、銛41がターゲットデブリ1の表面に係止するように、例えば、燃料タンクや空の酸化剤タンク等のタンク11(空洞部)に向かって銛41を打ち込むとともに、銛41にストッパ部44を形成している。
【0049】
推力発生部45は、銛41に推力を付加するものである。推力発生部45は、例えば、固体推薬を内蔵したロケットモータ等により構成される。また、発射筒42は、本体部21を貫通する空洞を有し、推力発生部45を作動させた場合に、その反力が本体部21に付加され難いように構成されている。なお、発射筒42は、必ずしも本体部21に内蔵されている必要はなく、本体部21の表面に外付け可能に構成されていてもよい。
【0050】
ワイヤ46は、銛41と本体部21とを繋ぐ部材であり、銛41がターゲットデブリ1に係止することによって、ターゲットデブリ1と本体部21(スペースデブリ除去装置2)とを繋ぐ部材である。ワイヤ46は、例えば、数m〜数十mの長さを有し、銛41の収納時はワイヤドラム46aに巻き取られた状態になっており、銛41の落下を抑制している。銛41の射出時には、ワイヤ46は、銛41の進行に伴ってワイヤドラム46aから繰り出されることとなる。なお、銛41をシェアピンや出没可能なストッパにより発射筒42に係止させて、位置決め又は落下抑制するようにしてもよい。
【0051】
ここで、銛41の変形例について説明する。
図6(c)に示した銛41の第一変形例は、ストッパ部44の前面に尖端部43の外周を覆うように配置された筒体47(弾性体)を有し、尖端部43がターゲットデブリ1に係止したときに、ターゲットデブリ1の表面とストッパ部44との間で圧縮させることにより、閉鎖空間を形成するように構成したものである。筒体47は、例えば、蛇腹構造を有している。かかる筒体47を配置することにより、銛41の貫通時に生じる断熱材等の破片の飛散を抑制することができる。筒体47は、例えば、略円筒形状に構成されるが、先端側を拡径した円錐台筒形状に構成するようにしてもよい。
【0052】
図6(d)に示した銛41の第二変形例は、ストッパ部44の前面に尖端部43を覆うように配置された繊維体47′(弾性体)を有し、尖端部43がターゲットデブリ1に係止したときに、ターゲットデブリ1の表面とストッパ部44との間で繊維体47′(弾性体)を圧縮させることにより、銛41の貫通時に生じる破片の飛散を抑制するように構成したものである。繊維体47′として、目の粗いものを使用した場合には、飛散しようとする破片を繊維体47′で絡め取ることができ、目の細かいものを使用した場合には、飛散しようとする破片を繊維体47′とターゲットデブリ1の表面との間に押し留めることができる。なお、繊維体47′は、例えば、軽くて丈夫なアラミド繊維等をスポンジ状に形成したものであり、弾性体は、繊維体47′に替えて、スポンジのような樹脂材やスチールウールのような金属材であってもよい。
【0053】
図6(e)に示した銛41の第三変形例は、尖端部43の返し部43aが、ターゲットデブリ1の貫通時に閉じて貫通後に開くように構成されているものである。かかる第三変形例では、返し部43aは、例えば、板バネ部材により構成されており、銛41の径方向に伸縮可能に構成されている。返し部43aの復元力を強化するために、ゴムやコイルバネ等の弾性体を配置するようにしてもよい。なお、かかる返し部43aの開閉機構は、単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0054】
図7(a)に示した銛41の第四変形例は、尖端部43をストッパ部44の表面に複数配置したものである。
図6(b)に示した銛41では、一つの尖端部43を配置しているが、
図7(a)に示した銛41では、三つの尖端部43を配置している。また、尖端部43の外周には、図示したように、筒体47を配置するようにしてもよい。
【0055】
図7(b)〜(d)に示した銛41の第五〜第七変形例は、複数の尖端部43を有する銛41において、ターゲットデブリ1の硬い部分(例えば、ターゲットデブリ1の補強部を構成するリブ12が形成された部分)に銛41の一部が打ち込まれた場合を想定したものである。具体的には、第五〜第七変形例における各尖端部43は、ターゲットデブリ1の表面を貫通不可能な場合に引き込み可能に構成される。かかる方式を採用することにより、タンブリング運動しているターゲットデブリ1の銛打込位置をトラス構造の梁等の硬い部分を避けて狙う必要がなくなるため、捕獲位置E及び捕獲姿勢を決定するための機構及び計算を簡略化又は省力化することができ、スペースデブリ除去装置2の観測・捕獲機構の要求性能の緩和や制御装置の処理負担を軽減することができ、容易にターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2とを接続することができる。
【0056】
図7(b)に示した銛41の第五変形例は、一定の圧力が負荷された場合に破断するシェアピン43bにより尖端部43をストッパ部44に固定したものである。ストッパ部44には、返し部43aを含む尖端部43を収納可能な空間(収納部44a)が形成されている。シェアピン43bの剪断力は、尖端部43がターゲットデブリ1の平板部に衝突した際には破断せず、尖端部43がターゲットデブリ1の硬い部分に衝突した際には破断するように調整される。
【0057】
図7(c)に示した銛41の第六変形例は、各尖端部43をガスシリンダ44bにより引き込み可能に構成したものである。各尖端部43は、ガスシリンダ44b内に挿通されたピストン43cを介して支持されている。かかる構成によれば、ガスの圧縮性を利用して尖端部43を引き込むことができる。図示したように、各尖端部43に対応したシリンダ部を連通するようにガスシリンダ44bを構成することにより、ある尖端部43により圧縮されたガスによって他の尖端部43を前方に向かって付勢することができる。なお、ガスシリンダ44bは、各尖端部43に対して個別に配置するようにしてもよい。
【0058】
図7(d)に示した銛41の第七変形例は、各尖端部43をコイルバネ43dにより引き込み可能に構成したものである。コイルバネ43dの弾性力は、尖端部43がターゲットデブリ1の平板部に衝突した際には圧縮されず、尖端部43がターゲットデブリ1の硬い部分に衝突した際には圧縮されるように調整される。なお、コイルバネ43dに替えて、ゴム等の弾性体を使用するようにしてもよい。
【0059】
前記観測装置5は、例えば、本体部21の正面部に配置された観測器51と、観測器51により得られた映像や画像等からターゲットデブリ1と本体部21との相対的な位置や姿勢を検出し、かかる位置や姿勢の時系列情報からターゲットデブリ1の運動モデルを推定し捕獲位置E及び捕獲姿勢を計算する演算部52と、を有する。観測器51は、ターゲットデブリ1のタンブリング運動を映像や画像等として取得可能なCCDカメラやレーザレーダ等により構成される。演算部52は、CPU等の演算処理装置により構成されており、観測器51の映像や画像等を記録する記憶装置を備えていてもよい。演算部52は、スペースデブリ除去装置2の制御装置(図示せず)の一部により構成されていてもよい。制御装置は、観測装置5の演算結果に基づいて推進装置3を作動させ、本体部21を捕獲位置Eに移動させるととともに、銛41の射出方向(捕獲姿勢)を調整する。また、捕獲装置4が射出方向調整機構を有している場合には、推進装置3で大体の位置決め及び姿勢決めを行い、射出方向調整機構で銛41の射出方向を微調整するようにしてもよい。
【0060】
前記減速装置6は、例えば、宇宙空間に放出される導電性テザー61と、導電性テザー61の先端に配置されるとともに推力を発生させる推力発生手段を有する先端部62と、を有する。上述したように、推力発生手段には、小型ロケットモータ、コールドガスジェット、一液スラスタ、電気推進、昇華物質等を利用することができる。導電性テザー61は、図示したように、コイル状にケース内に収納されており、先端部62を放出することにより、直線状に解けるように構成されている。減速装置6は、本体部21内に収納してもよいし、本体部21の表面に外付けするようにしてもよい。
【0061】
前記電力供給装置7は、例えば、本体部21の外面に配置された太陽電池パネル71と、太陽電池パネル71により生成した電気を蓄積するバッテリ72と、を有する。バッテリ72に充電された電気は、制御装置を介して、推進装置3、捕獲装置4、観測装置5、減速装置6等の電力を必要とする機器に必要に応じて電力を供給する。
【0062】
前記本体部21は、いわゆる小型人工衛星と同様の筐体により構成される。本体部21には、上述した推進装置3、捕獲装置4、観測装置5、減速装置6及び電力供給装置7の他に、レーザレーダ等の監視装置22、GPSセンサ、ジャイロ、加速度センサ等が搭載されていてもよい。なお、図示しないが、本体部21の外周は断熱材により被覆されている。
【0063】
ところで、捕獲装置4は、
図8(a)に示したように、ワイヤ46を巻き取り可能なワイヤ巻取装置48を有していてもよい。ワイヤ巻取装置48は、例えば、動力を発生する電動モータ48aと、電動モータ48aの動力をワイヤドラム46aに伝達するベルト駆動機構(タイミングベルト48b及びプーリ48c)と、電動モータ48aの動力を制御する制御部48dと、ワイヤ46を均一に巻き取るためのレベルワインド機構48eと、を有する。銛41の射出時には、電動モータ48aへの電力の供給を遮断し、駆動軸が自由に回転できる状態にしておくことが好ましい。なお、動力伝達機構はベルト駆動機構に限定されるものではなく、歯車列により構成するようにしてもよい。
【0064】
かかるワイヤ巻取装置48を配置することにより、尖端部43をターゲットデブリ1に係止させた後、ワイヤ46を巻き取ることにより本体部21をターゲットデブリ1に密着させることができる。また、ターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2との間でワイヤ46が弛んでいると、ワイヤ46がターゲットデブリ1に絡まってしまう可能性があるため、ワイヤ46に一定の張力を負荷して直線状に張った状態を維持するように、ワイヤ巻取装置48を作動させるようにしてもよい。
【0065】
また、ワイヤ46の巻き取りが不要な場合には、
図8(b)に示したように、ワイヤ巻取装置48を省略するようにしてもよい。ワイヤドラム46aからのワイヤ46の巻き戻しを安定させるために、レベルワインド機構48eを配置するようにしてもよい。また、ワイヤ46は、ワイヤドラム46aに巻き付けておくだけでなく、銛41の後端部に巻き付けておくようにしてもよい。さらに、ワイヤ46の長さが短い場合には、ワイヤドラム46aを省略するようにしてもよい。銛41の後端部にワイヤ46を巻き付ける場合には、銛41の射出時にワイヤ46が円滑に解けるように、例えば、前方から後方に向かってワイヤ46を巻き付けるようにすることが好ましい。
【0066】
続いて、本発明の他の実施形態に係るスペースデブリ除去装置2について、
図9〜
図11を参照しつつ説明する。ここで、
図9は、本発明の第二実施形態に係るスペースデブリ除去装置を示す概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は
図9(a)におけるB−B断面図、(c)は使用状態を示す概念図、を示している。
図10は、本発明の第三実施形態に係るスペースデブリ除去装置を示す概略構成図であり、(a)は断面図、(b)は正面図、を示している。
図11は、拘束脚を示す概略構成図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、(c)は第三例、を示している。なお、上述した第一実施形態に係るスペースデブリ除去装置2と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0067】
図9(a)及び(b)に示した第二実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、本体部21の正面部に環状の緩衝材23を配置したものである。緩衝材23は、例えば、アルミハニカム等の金属材やウレタンゴム等の樹脂材により形成される。かかる構成によれば、
図9(c)に示したように、銛41をターゲットデブリ1に係止させた後、ワイヤ46を巻き取ることにより本体部21をターゲットデブリ1に密着させる場合に、本体部21がターゲットデブリ1に衝突する際の衝撃を緩和することができ、ターゲットデブリ1の破損やスペースデブリ除去装置2の故障を抑制することができる。
【0068】
また、かかる構成により、ターゲットデブリ1の表面形状が複雑な形状であってもスペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1に密着させることができ、スペースデブリ除去装置2をタンブリング運動しているターゲットデブリ1に密着させる際に厳密な位置・速度制御を必要とせず、密着させる際の位置・速度制御負荷を緩和することができ、密着させるための位置・姿勢・速度を決定するための機構及び計算を簡略化又は省力化することができ、スペースデブリ除去装置2の観測・捕獲機構の要求性能の緩和や制御装置の処理負担を軽減することができ、容易にターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2とを接続することができる。なお、緩衝材23の構成は、図示したものに限定されず、矩形環状であってもよいし、本体部21の正面部に分散して配置された構成であってもよい。
【0069】
図10(a)及び(b)に示した第三実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、本体部21に回動可能に配置された複数の拘束脚24を有し、本体部21をターゲットデブリ1に密着させた後、拘束脚24を展開してターゲットデブリ1に本体部21を固定し、推進装置3を用いてターゲットデブリ1の運動を抑制するようにしたものである。なお、
図10(a)では拘束脚24を閉じた状態を図示し、
図10(b)では拘束脚24を開いた状態を図示している。かかる構成によれば、拘束脚24及び推進装置3によりターゲットデブリ1の不規則なタンブリング運動を抑制することができ、減速装置6を安定した状態で使用することができる。特に、減速装置6として導電性テザー61を使用した場合に、導電性テザー61が暴れたり、絡まったりしないようにすることができる。
【0070】
また、かかる構成により、ターゲットデブリ1の表面形状が複雑な形状であってもスペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1に拘束させることができ、タンブリング運動しているターゲットデブリ1に接続する位置(すなわち、銛打込位置)の自由度が増すため、捕獲位置E及び捕獲姿勢を決定するための機構及び計算を簡略化又は省力化することができ、スペースデブリ除去装置2の観測・捕獲機構の要求性能の緩和や制御装置の処理負担を軽減することができ、容易にターゲットデブリ1とスペースデブリ除去装置2とを接続することができる。なお、
図10(b)において、説明の便宜上、サイドスラスタ32及び姿勢制御用スラスタ33の図を省略してある。
【0071】
拘束脚24は、例えば、
図11(a)〜(c)に示したような構成を有する。なお、各図において、緩衝材23の図は省略してある。また、拘束脚24の第一例〜第三例の構成は、単なる一例であり、これらの構成に限定されるものではない、
【0072】
図11(a)に示した第一例は、拘束脚24を電動モータ24aにより回動させるようにしたものである。電動モータ24aはブレーキ機能を有しており、拘束脚24を収納した状態及び展開した状態に保持できるように構成されている。また、本体部21及び拘束脚24の先端部にセンサ24bを配置して、本体部21とターゲットデブリ1との接触を感知して、電動モータ24aを作動させて拘束脚24を展開し、拘束脚24とターゲットデブリ1との接触を感知して、電動モータ24aを停止させて拘束脚24をロックするようにしてもよい。また、電動モータ24aにより拘束脚24に力を与え続けて、ターゲットデブリ1に本体部21を固定するようにしてもよい。
【0073】
図11(b)に示した第二例は、拘束脚24をシリンダ24cにより回動させるようにしたものである。シリンダ24cは、先端が拘束脚24にピン結合され、後端が本体部21にピン結合されている。シリンダ24cは、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ、電動シリンダ等であり、伸縮可能に構成されている。また、本体部21及び拘束脚24の先端部にセンサ24bを配置して、本体部21とターゲットデブリ1との接触を感知して、シリンダ24cを伸長させて拘束脚24を展開し、拘束脚24とターゲットデブリ1との接触を感知して、シリンダ24cの伸長を停止させて拘束脚24をロックするようにしてもよい。また、シリンダ24cにより拘束脚24に力を与え続けて、ターゲットデブリ1に本体部21を固定するようにしてもよい。
【0074】
図11(c)に示した第三例は、拘束脚24をコイルバネ24dにより回動させるようにしたものである。コイルバネ24dは、先端が拘束脚24にピン結合された駆動軸24eを付勢するように圧縮された状態で容器内に収納されており、本体部21にラッチ機構を介して接続されたストッパ24fにより閉じた状態が保持されている。センサ24bが本体部21とターゲットデブリ1との接触を感知すると、ストッパ24fを上方に回動させて、拘束脚24を展開させる。かかる第三例では、拘束脚24がターゲットデブリ1に接触した場合であっても、コイルバネ24dにより拘束脚24に力が与え続けられることとなる。
【0075】
なお、上述した第一例〜第三例において、拘束脚24に力を与え続けることにより、ターゲットデブリ1に本体部21を固定するようにしているが、拘束脚24の先端に本体部21の表面に突き刺さって係止する係止部(例えば、銛形状)を形成してもよいし、拘束脚24の先端に粘着剤を塗布又は放出可能にすることにより本体部21の表面に接着又は固着する接着部を形成するようにしてもよい。また、拘束脚24は、回動式の構成に限定されるものではなく、本体部21からターゲットデブリ1に向かって接触可能に形成された固定式の構成であってもよく、その先端に係止部や接着部を形成するようにしてもよいし、回動式と固定式を併用するようにしてもよい。
【0076】
上述した第三実施形態に係るスペースデブリ除去装置2を使用したスペースデブリ除去方法について説明する。ここで、
図12は、本発明の第三実施形態に係るスペースデブリ除去方法の一部を示すフローチャートである。
図13は、本発明の第三実施形態に係るスペースデブリ除去方法の減速工程を示す全体概念図である。
【0077】
図12に示したフローチャートは、捕獲工程(Step8)を詳細に図示したものである。スペースデブリ除去装置2が捕獲位置E及び捕獲姿勢に到達(Step81)した後、スペースデブリ除去装置2は銛41をターゲットデブリ1に向かって発射する(Step82)。スペースデブリ除去装置2は、銛41がターゲットデブリ1に刺さったか否かを確認する(Step83)。銛41が刺さったか否かは、観測装置5の観測器51により視覚的に確認するようにしてもよいし、ワイヤ46の張力により確認するようにしてもよい。
【0078】
銛41が刺さっていない場合(N)には、銛41の予備があるか否かを確認する(Step84)。銛41の予備がない場合(N)には、捕獲失敗により処理を終了する。銛41の予備がある場合(Y)には、再度、銛41を発射する(Step82)。
【0079】
銛41が刺さっている場合(Y)には、ワイヤ46をワイヤ巻取装置48により巻き取り(Step85)、スペースデブリ除去装置2(本体部21)をターゲットデブリ1に密着させる(Step86)。その後、スペースデブリ除去装置2は、拘束脚24を展開し(Step87)、ターゲットデブリ1を拘束する。そして、推進装置3の主方向スラスタ31、サイドスラスタ32及び姿勢制御用スラスタ33を適宜噴射することにより、ターゲットデブリ1の運動を抑制する(Step88)。ターゲットデブリ1のタンブリング運動が沈静化した後、減速工程(Step9)に移行する。
【0080】
上述した捕獲工程(Step81〜88)において、例えば、第二実施形態のように、スペースデブリ除去装置2が拘束脚24を有していない場合には、ターゲットデブリ1に銛41を打ち込んだ後、銛41に接続されたワイヤ46を巻き取ってスペースデブリ除去装置2をターゲットデブリ1に密着させる密着工程(Step86)で留めるようにしてもよい。なお、ターゲットデブリ1に銛41が刺さったことを確認(Step83〜84)した後、それ以下の工程(Step85〜88)を省略して、減速工程(Step9)に移行するようにしてもよい。かかる工程(Step85〜88)を省略することにより、スペースデブリ除去装置2をタンブリング運動しているターゲットデブリ1に密着させる工程が不要となるため、密着させる際の位置・速度制御を省略することができ、スペースデブリ除去装置2の位置・姿勢・速度を決定するための機構及び計算を簡略化又は省力化することができ、スペースデブリ除去装置2の観測・捕獲機構の要求性能の緩和や制御装置の処理負担を軽減することができる。
【0081】
図13は、上述した捕獲工程(Step81〜88)によりターゲットデブリ1の運動を抑制した後、減速工程(Step9)において、導電性テザー61を放出した状態を図示している。このように、拘束脚24及び推進装置3により、ターゲットデブリ1の運動を抑制することによって、宇宙空間に放出された導電性テザー61が暴れたり、絡まったりしないようにすることができ、減速効果を安定的に作用させることができる。
【0082】
続いて、本発明のさらに他の実施形態に係るスペースデブリ除去装置2について、
図14〜
図16を参照しつつ説明する。ここで、
図14は、本発明の第四実施形態に係るスペースデブリ除去装置を示す概略構成図であり、(a)は背面図、(b)は
図14(a)におけるB−B断面図、(c)は使用状態を示す概念図、を示している。
図15は、本発明の第五実施形態に係るスペースデブリ除去装置を示す概略構成図であり、(a)は背面図、(b)は
図15(a)におけるB−B断面図、(c)は使用状態を示す概念図、を示している。
図16は、本発明の第六実施形態に係るスペースデブリ除去装置を示す概略構成図であり、(a)は背面図、(b)は
図16(a)におけるB−B断面図、(c)は使用状態を示す概念図、を示している。なお、上述した第一〜第三実施形態に係るスペースデブリ除去装置2と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0083】
図14(a)及び(b)に示した第四実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、減速装置6を本体部21の表面(背面部)に外付けしたものである。減速装置6を本体部21の外部に配置することにより、本体部21内に空きスペースを確保することができ、その空きスペースを利用して、複数の銛41を搭載させるようにすることができる。すなわち、捕獲装置4は、本体部21に複数配置されるようにしてもよい。例えば、捕獲装置4は、
図14(a)に示したように、対角線上の四箇所に配置するようにすることもできるし、一方の対角線上の二箇所に配置したり、三角形の頂点を構成する三箇所に配置したり、並列の二箇所に配置したりすることもできる。このように捕獲装置4(銛41)を冗長化することにより、最初の銛41がターゲットデブリ1に刺さらなかった場合であっても、再度、銛41を射出してターゲットデブリ1を捕獲することができ、捕獲機能の冗長性を向上させることができる。
【0084】
上述した第四実施形態に係るスペースデブリ除去装置2では、
図14(c)に示したように、銛41をターゲットデブリ1に係止させた後、推進装置3(主方向スラスタ31、サイドスラスタ32、姿勢制御用スラスタ33)を使用して本体部21の方向転換を行い、減速装置6を本体部21から放出し、導電性テザー61を宇宙空間に展開する。本実施形態において、減速装置6は、導電性テザー61の収納部であるとともに推進力を有する先端部62を構成している。かかる構成により、減速装置6に複雑な姿勢制御機構を配置する必要がなく、本体部21により導電性テザー61を放出する方角を設定し、減速装置6を本体部21から切り離して推力を発生させることにより、導電性テザー61を所望の状態に展開することができる。
【0085】
図15(a)及び(b)に示した第五実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、減速装置6を本体部21の表面に外付けするとともに、本体部21を減速装置6の先端部62として利用したものである。具体的には、捕獲装置4のワイヤ46は、コネクタ63を介して導電性テザー61の後端と接続されており、導電性テザー61及びコネクタ63は、本体部21の背面部に固定された減速装置6内に収容されていてもよい。すなわち、本実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、導電性テザー61とワイヤ46とを連結するコネクタ63を有し、先端部62は本体部21により構成されていることとなる。また、銛41の収納状態において、ワイヤ46は、本体部21の外縁部に沿って背面部の減速装置6まで延伸されていてもよい。コネクタ63は、銛41とターゲットデブリ1との接触によって生じる静電気等が導電性テザー61に伝達されないように、電気絶縁体により構成される。なお、捕獲装置4は、第四実施形態と同様に、本体部21に複数配置されていてもよい。
【0086】
上述した第五実施形態に係るスペースデブリ除去装置2では、
図15(c)に示したように、銛41をターゲットデブリ1に係止させた後、推進装置3(主方向スラスタ31、サイドスラスタ32、姿勢制御用スラスタ33)を使用して、本体部21の方向転換を行い、減速装置6又は本体部21からコネクタ63及び導電性テザー61を放出しながら、必要に応じて、導電性テザー61を展開したい方向(例えば、地球に向かう方向)に本体部21を移動させ、減速装置6を本体部21から分離して切り離す。導電性テザー61は、減速装置6に配置された推力発生手段により、伸展が促進され、所望の状態(例えば、地球に向かう方向に延伸した状態)に展開される。なお、減速装置6に姿勢制御可能な推力発生手段を搭載して、本体部21から減速装置6を分離した後、自力で方向転換等を行うようにしてもよい。
【0087】
なお、減速装置6が推力発生手段を有していない場合には、減速装置6又は本体部21からコネクタ63及び導電性テザー61を放出しながら、導電性テザー61を展開したい方向(例えば、地球に向かう方向)に本体部21を移動させ、導電性テザー61を所望の状態に展開するようにしてもよい。かかる構成によれば、本体部21を減速装置6の先端部62として使用することができ、減速装置6の構成を簡略化することができる。
【0088】
図16(a)及び(b)に示した第六実施形態に係るスペースデブリ除去装置2は、減速装置6を本体部21の表面に外付けするとともに、本体部21を減速装置6の先端部62として利用し、本体部21から減速装置6の一部を分離可能に構成したものである。具体的には、第五実施形態に示した減速装置6を、第一減速装置6a、第二減速装置6b、第三減速装置6c及び第四減速装置6dに複数に分割し、第一減速装置6a〜第四減速装置6dを個別に本体部21から分離(切り離し)可能に構成したものである。減速装置6の分割数は、捕獲装置4(銛41)と一対一に対応させるようにすることが好ましい。
【0089】
かかる第六実施形態に係るスペースデブリ除去装置2では、
図16(c)に示したように、銛41をターゲットデブリ1に係止させた後、推進装置3(主方向スラスタ31、サイドスラスタ32、姿勢制御用スラスタ33)を使用して、本体部21の方向転換を行い、減速装置6(例えば、第一減速装置6a)からコネクタ63及び導電性テザー61を放出しながら、必要に応じて、導電性テザー61を展開したい方向(例えば、地球に向かう方向)に本体部21を移動させ、第一減速装置6aを本体部21から分離して切り離す。導電性テザー61は、第一減速装置6aに配置された推力発生手段により、伸展が促進され、所望の状態(例えば、地球に向かう方向に延伸した状態)に展開される。なお、第一減速装置6aに姿勢制御可能な推力発生手段を搭載して、本体部21から第一減速装置6aを分離した後、自力で方向転換等を行うようにしてもよい。
【0090】
一方、スペースデブリ除去装置2は、推進装置3を使用して、次のターゲットデブリ1に向かって移動する。かかる構成によれば、一つのスペースデブリ除去装置2で複数のターゲットデブリ1を除去することができ、作業効率を向上させることができる。なお、第一減速装置6aが推力発生手段を有していない場合には、スペースデブリ除去装置2により導電性テザー61を展開した後、第一減速装置6aを本体部21から分離して切り離し、スペースデブリ除去装置2を次のターゲットデブリ1に向かって移動させるようにしてもよい。
【0091】
なお、上述した
図14〜
図16に図示したスペースデブリ除去装置2において、観測装置5及び電力供給装置7等の詳細については、図を省略しているが、第一実施形態と同様に、適宜、本体部21内に収納できるように構成されることは勿論である。
【0092】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。