特許第5781625号(P5781625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5781625-ポリカーボネートを生産する方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781625
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ポリカーボネートを生産する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/30 20060101AFI20150907BHJP
   C08G 64/40 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   C08G64/30
   C08G64/40
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-543961(P2013-543961)
(86)(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公表番号】特表2013-545865(P2013-545865A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】IB2011055799
(87)【国際公開番号】WO2012085831
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年6月17日
(31)【優先権主張番号】12/974,197
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アルフレド・ロペス・カレテロ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・ドミンゴ・フステル
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルド・イダルゴ・リナス
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ・ヴィック・フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル・アンヘル・サロモン・チェリス
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−012792(JP,A)
【文献】 米国特許第05576414(US,A)
【文献】 特開2000−128975(JP,A)
【文献】 特開平06−065367(JP,A)
【文献】 国際公開第02/008312(WO,A1)
【文献】 特表2006−511666(JP,A)
【文献】 特表平11−507985(JP,A)
【文献】 特開平09−012843(JP,A)
【文献】 特開2003−147186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 − 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融重合反応において、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で重合させ、芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート及びジアリールカーボネート副生成物を含む副生成物蒸気流を生成する工程、分離装置の稼働条件でジアリールカーボネート副生成物の蒸気圧未満の蒸気圧を有する低蒸気圧化合物を副生成物蒸気流に加えて、変性副生成物蒸気流を生成する工程、変性副生成物蒸気流を分離装置に導入する工程、並びに分離装置において変性副生成物蒸気流から揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去して、処理済副生成物流を形成し、処理済副生成物流を溶融重合反応に戻す工程を含む、ポリカーボネートを生産する方法。
【請求項2】
溶融重合反応において、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で重合させ、芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート及びジアリールカーボネート副生成物を含む副生成物蒸気流を生成する工程、分離装置の稼働条件でジアリールカーボネート副生成物の蒸気圧未満の蒸気圧を有する低蒸気圧化合物を分離装置に加える工程、副生成物蒸気流を分離装置に導入する工程、並びに分離装置において副生成物蒸気流から揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去して、処理済副生成物流を形成し、処理済副生成物流を溶融重合反応に戻す工程を含む、ポリカーボネートを生産する方法。
【請求項3】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物が、ヒドロキノン及びビスフェノールAを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジアリールカーボネートが、ジフェニルカーボネートである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記副生成物蒸気流が、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ジフェニルカーボネート、及びフェノールを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記副生成物流が、オリゴマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記低蒸気圧化合物が、ビスフェノールA、ジアリールカーボネート、酸性化合物、NH4H2PO4、又は前述の1種又は複数の組合せを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記低蒸気圧化合物が、分離装置の稼動条件下で揮発性ジアリールカーボネート副生成物の沸点よりも少なくとも10度高い沸点を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記低蒸気圧化合物がジヒドロキシ化合物を含み、前記低蒸気圧化合物の量が重合反応に加えられるジヒドロキシ化合物の全量の0.5質量パーセント以上である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記低蒸気圧化合物がジアリールカーボネートを含み、前記低蒸気圧化合物の量が重合反応に加えられるジアリールカーボネートの全量の0.5質量パーセント以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低蒸気圧化合物が、ビスフェノールA、ジアリールカーボネート、酸性化合物又は前述の2種以上の組合せを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低蒸気圧化合物が酸性化合物であり、前酸性化合物の量が、前記副生成物蒸気流中に存在するジヒドロキシ化合物のモル数に基づいて、10から300マイクロ当量である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記分離装置が、スクラバー型である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
連続的である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリカーボネートを製造する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、高い耐衝撃性、耐熱性、透明性などのそれらの優れた機械的特性のために、多くの分野でエンジニアリングプラスチックとして使用するために広範に採用されてきた。
【0003】
ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物をジアリールカーボネートと、重合触媒の存在下で反応させることによって製造することができる。例えば、芳香族ポリカーボネートを生産する方法は、一般に芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの間のエステル交換反応(溶融重合法)を含む。芳香族ポリカーボネートを製造するこの方法は、それが安価であり、かつホスゲン及び塩化メチレンを用いないので、最近注目を集めていることに留意されたい。したがって、この方法は、例えば、ホスゲン及び塩化メチレンを用いる他の方法と比べて、環境的観点からより有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリカーボネートを調製する方法が経済的に実行可能でありかつ環境的に安全である場合、重合反応からの揮発性副生成物及びモノマーの分離及び再利用は、重要である。特に、反応が副生成物としてフェノールを生成する場合、フェノール及び揮発性モノマーの連続的回収並びに重合における回収モノマーの組込みは、重合方法の長期間の安定稼動に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリカーボネートを生産する方法が、本明細書で開示される。
【0006】
ポリカーボネートを生産する方法は、溶融重合反応において、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で重合させ、芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート及びジアリールカーボネート副生成物を含む副生成物蒸気流を生成する工程、低蒸気圧化合物を副生成物蒸気流に加えて、変性副生成物蒸気流を生成する工程、並びに分離装置において変性副生成物蒸気流から揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去して、溶融重合反応に戻される処理済副生成物流を形成する工程を含む。
【0007】
ポリカーボネートを生産する方法は、溶融重合反応において、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で重合させ、芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート及びジアリールカーボネート副生成物を含む副生成物蒸気流を生成する工程、低蒸気圧化合物を分離装置に加える工程、並びに分離装置において副生成物蒸気流から揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去して、溶融重合反応に戻される処理済副生成物流を形成する工程を含む。
【0008】
上記及び他の特徴は、以下の詳細な説明、図面及び添付の特許請求の範囲から当業者に認められかつ理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ポリカーボネートの生産に適したシステムの例示的な実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリカーボネートを生成するための芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの反応は、揮発性ジアリールカーボネート副生成物として揮発性芳香族ヒドロキシル化合物も生成する。例えば、ジフェニルカーボネートがジアリールカーボネートである場合、フェノールが揮発性ジアリールカーボネート副生成物である。溶融重合の間の揮発性ジアリールカーボネート副生成物の除去は、重合が進行するのに役立つ。揮発性ジアリールカーボネート副生成物は、副生成物蒸気流の一部として重合反応から除去され得る。副生成物蒸気流は、重合反応で用いられる1種又は複数のモノマーも含み得る。副生成物蒸気流中のモノマーと揮発性ジアリールカーボネート副生成物とは分離され、回収されたモノマーは重合反応に戻すことができる。溶融重合へのモノマーの一部又は全体を戻すことは、重合反応における必要な化学量論を維持するのに役立ち得る。化学量論は、重合反応を所望の分子量に進行させるための重要な変数であり得る。
【0011】
分離装置は、副生成物蒸気流から連続的にモノマーを回収するために用いられる。分離装置は、液体/蒸気分離装置、蒸気/蒸気分離装置又は液体/液体分離装置であり得る。揮発性ジアリールカーボネート副生成物は、副生成物蒸気流から除去されて、処理済副生成物流を形成し、処理済副生成物流は、重合反応に戻される。揮発性ジアリールカーボネート副生成物の除去及び処理済副生成物流を戻すことは、揮発性ジアリールカーボネート副生成物がモノマーより揮発性である場合、比較的簡単である。例えば、フェノール(ジフェニルカーボネートの副生成物)は、ビスフェノールA又はジフェニルカーボネートよりも揮発性である。しかし、重合反応に用いられるモノマーの1種が、分離装置の条件で揮発性ジアリールカーボネート副生成物と揮発性において同様である場合、分離装置におけるこのジアリールカーボネート副生成物の除去は困難である。分離装置における分離はまた、スクラバー装置におけるポリカーボネートオリゴマーの存在又は形成によっても妨げられ得る。
【0012】
ポリカーボネートオリゴマーは、いくつかの要因によって分離装置に存在し得る。低分子量オリゴマーは、副生成物蒸気流中に同伴され得る。また、重縮合反応に用いられるモノマーの1種が、揮発性ジアリールカーボネート副生成物と揮発性において同様である場合、副生成物蒸気流中により高濃度のモノマーが存在し、温度及び圧力条件がオリゴマー化に適する場合、オリゴマー化が分離装置において進行するために十分な量を与える。オリゴマー化は、触媒の存在下又は非存在下で起こり得る。重合触媒は、副生成物蒸気流中に同伴され、蒸気流ライン、分離装置、又は両方においてオリゴマー化を促進させ得る。一部の場合には、重合触媒分解生成物が、揮発性であり、オリゴマー化反応を促進するために十分な活性を有し得る。最後に、微量の塩基性不純物の存在が、オリゴマー化を促進し得る。
【0013】
分離装置における条件及び/又はモノマーの性質に依存して、分離装置において同伴及び形成されるオリゴマーは、固化及び/又は結晶化し、分離装置に関連した1つ又は複数のプロセスライン、分離装置自体、又は分離装置に関連した他の装置で閉塞を生じさせ得る。
【0014】
副生成物流への低蒸気圧化合物の添加は、変性副生成物流をもたらす。副生成物蒸気流への低蒸気圧化合物の添加は、分離装置への導入前又は分離装置への導入と同時に行われ得る。変性副生成物流中の低蒸気圧化合物の存在は、オリゴマー化を減少又は防止させ、したがって、オリゴマー固化及び/又は結晶化による干渉を減少させる又はなくすことによって、揮発性ジアリールカーボネート副生成物の除去及び重合反応へモノマーを戻すことを促進し得る。低蒸気圧化合物を、分離装置に加えることもまた可能である。
【0015】
低蒸気圧化合物は、分離装置の稼動条件で揮発性ジアリールカーボネート副生成物の蒸気圧未満の蒸気圧を有する化合物と定義される。低蒸気圧化合物は、分離装置稼動条件で揮発性ジアリールカーボネート副生成物の沸点よりも少なくとも10度高い沸点を有する。分離装置稼動条件は、分離装置が稼動する温度及び圧力、すなわち、分離装置内の温度及び圧力である。分離装置稼動条件は、分離装置システム条件とも記載され得る。低蒸気圧化合物は、重合反応で用いられるモノマーの1種であるように選択され得る。理論に拘束されるものではないが、低蒸気圧化合物がモノマーである一部の場合、過剰のモノマーの導入は、オリゴマーを末端封止し、オリゴマーの分子量の増加を防止するように機能し、したがってオリゴマーの固化を防止する。代替として、ポリカーボネートがコポリマーである場合、過剰な1種のモノマーの存在は、コポリマーの組成を変更し、固化、結晶化又は両方を防止するように機能し得る。理論に拘束されるものではないが、2種以上のジヒドロキシ化合物が重合に用いられる場合、低蒸気圧化合物用のモノマーは、オリゴマー中での結晶化度を避けるように選択されるべきである。例えば、ビスフェノールAは、ビスフェノールAモノマーの使用が、オリゴマーにおける結晶化度をもたらす可能性が低いので、ヒドロキノン又は4,4'-ビフェノールよりも有効な低蒸気圧化合物である。
【0016】
低蒸気圧化合物がモノマーを含む場合、副生成物流に加えられるモノマーの量は、重合反応に加えられる同じモノマーの合計量の0.2から5.0質量パーセントであり得る。この範囲内で、低蒸気圧化合物の量は、重合反応に加えられる同じモノマーの合計量の0.5質量パーセント以上であり得る。
【0017】
代替として、低蒸気圧化合物は、分離装置又は副生成物蒸気流中でいずれの触媒活性もクエンチする酸性化合物であり得る。酸性化合物は、酸又は酸性塩であり得る。酸性化合物の例には、亜リン酸、リン酸、硫酸、及び金属「オキソ酸」、例えば、ゲルマニウム、アンチモン、ニオブなどのオキソ酸が含まれる。酸性塩の例には、リン酸の一置換アンモニウム塩((NH4)H2PO4)が含まれる。酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、それらが、重合触媒として作用し得るので用いられるべきでない。好ましくは、酸性化合物は、酸性化合物を含有するモノマー混合物が重合反応に戻される場合、酸性化合物が、重合反応において触媒を失活させないように選択され、そのような量で用いられる。例示的な量は、副生成物蒸気流中に存在するジヒドロキシ化合物のモル数に基づいて、酸性化合物の300マイクロ当量以下、より具体的には100マイクロ当量以下である。酸性化合物は、副生成物蒸気流中に存在するジヒドロキシ化合物のモル数に基づいて、10マイクロ当量以上の量で用いられ得る。
【0018】
芳香族ポリカーボネートは、式(I):
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、Aは、ポリマー反応に用いられるジヒドロキシ化合物の二価の芳香族基である)
の繰り返し構造単位を有する。
【0021】
芳香族カーボネートポリマーを形成するために用いられ得る芳香族ジヒドロキシ化合物は、それらのそれぞれが芳香族核の炭素原子に直接結合し得る2個のヒドロキシ基を官能基として含有する、単核又は多核の芳香族化合物である。ジヒドロキシ芳香族化合物には、レゾルシノール、4-ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」、別名BPA)、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、及び1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンチン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、2,7-ジヒドロキシカルバゾールなど、並びに前述のジヒドロキシ化合物の少なくとも1種を含む組合せ及び反応生成物が含まれる。
【0022】
様々な実施形態において、芳香族ポリカーボネート混合物の調製に用いられるのがホモポリマーではなくカーボネートコポリマー又はインターポリマーの場合、2種以上の異なる芳香族ジヒドロキシ化合物、或いは芳香族ジヒドロキシ化合物とグリコールとの、ヒドロキシ-若しくは酸末端ポリエステルとの、又は二塩基性酸若しくはヒドロキシ酸とのコポリマーが、ポリカーボネートの生産に用いられ得る。
【0023】
使用に適したジアリールカーボネートの例には、限定されるものではないが、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、及びジシクロヘキシルカーボネート、ビスメチルサリチルカーボネート(BMSC)など、並びに前述のジアリールカーボネートの少なくとも1種を含む組合せ及び反応生成物が含まれる。より詳細には、ジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネート(DPC)であり得る。
【0024】
芳香族ポリカーボネートの調製の際に、芳香族ジヒドロキシ化合物1モル当たり、約1.0モルから約1.30モルのジアリールカーボネートを用いることができる。より詳細には、約1.01モルから約1.15モルのジアリールカーボネートを用いることができる。
【0025】
重合触媒は、塩基であり、アルカリ土類金属イオン若しくはアルカリ金属イオンの少なくとも1つの供給源、及び/又は少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、或いはそれらの混合物を含む。アルカリ土類金属イオン又はアルカリ金属イオンの供給源は、溶融反応混合物中に存在するアルカリ土類金属イオン又はアルカリ金属イオンの量が、反応混合物中に存在するジアリールカーボネート1モル当たり、アルカリ土類金属イオン又はアルカリ金属イオン約10-5モルと約10-8モルの間の範囲であるような量で用いられる。
【0026】
第四級アンモニウム化合物は、構造:
【0027】
【化2】
【0028】
(ここで、R20〜R23は、独立して、C1〜C20アルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、又はC4〜C20アリール基であり; X-は、有機又は無機アニオンである)を有する有機アンモニウム化合物の群から選択される。本発明の一実施形態において、アニオンX-は、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオン、フェノキシドアニオン及び炭酸水素イオンからなる群から選択される。例示的なカルボン酸イオンは、酢酸イオンである。
【0029】
適切な有機アンモニウム化合物の非限定的な例は、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、ギ酸テトラメチルアンモニウム及び酢酸テトラブチルアンモニウムである。水酸化テトラメチルアンモニウムが、しばしば好ましい。結晶性ポリカーボネート形成性モノマー、例えば、ヒドロキノン又は4,4'-ビフェノールを含む重合反応において、水酸化テトラメチルアンモニウム以外の重合触媒を用いることが有利であり得ることが予想される。
【0030】
第四級ホスホニウム化合物は、構造:
【0031】
【化3】
【0032】
(ここで、R24〜R27は、独立して、C1〜C20アルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、又はC4〜C20アリール基であり; X-は、有機又は無機アニオンである)を有する有機ホスホニウム化合物の群から選択される。本発明の一実施形態において、アニオンX-は、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、ギ酸イオン、炭酸イオン、フェノキシドアニオン及び炭酸水素イオンからなる群から選択されるアニオンである。例示的なカルボン酸イオンは、酢酸イオンである。
【0033】
適切な有機ホスホニウム化合物は、水酸化テトラメチルホスホニウム、酢酸テトラメチルホスホニウム、ギ酸テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、及び酢酸テトラブチルホスホニウム(TBPA)である。TBPAが、しばしば好ましい。
【0034】
X-が、炭酸イオン又は硫酸イオンなどの多価アニオンである場合、上記構造中の正及び負の電荷は、適切に均衡されることが理解される。例えば、R20〜R23が、それぞれメチル基であり、X-が、炭酸イオンである場合、X-は、1/2(CO32-)を表すことが理解される。
【0035】
アルカリ土類金属イオンの適切な供給源には、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が含まれる。アルカリ金属イオンの適切な供給源には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム及び水酸化カリウムで例示されるアルカリ金属水酸化物が含まれる。アルカリ土類金属イオン及びアルカリ金属イオンの他の供給源には、カルボン酸の塩(酢酸ナトリウムなど)及び炭酸の塩(炭酸セシウムなど)、並びにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の誘導体(EDTA四ナトリウム塩、及びEDTAマグネシウム二ナトリウム塩など)が含まれる。アルカリ土類金属イオン及びアルカリ金属イオンの他の供給源には、アルカリ金属亜リン酸塩、アルカリ土類金属亜リン酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アルカリ金属硫酸塩、アルカリ土類金属硫酸塩、金属オキソ酸のアルカリ金属塩、及び金属オキソ酸のアルカリ土類金属塩が含まれる。塩の特定の例には、NaH2PO3、NaH2PO4、Na2HPO4、KH2PO4、CsH2PO4、Cs2HPO4、NaKHPO4、NaCsHPO4、KCsHPO4、Na2SO4、NaHSO4、NaSbO3、LiSbO3、KSbO3、Mg(SbO3)2、Na2GeO3、K2GeO3、Li2GeO3、MgGeO3、Mg2GeO4、及び前述の塩の1種又は複数を含む組合せが含まれる。水酸化ナトリウムは、比較的安価でありかつ下流プロセスで用いられるので、しばしば好ましい。
【0036】
様々な実施形態において、用いられる第四級ホスホニウム又は第四級アンモニウム化合物の量は、ジヒドロキシ化合物の量に基づいて、約1マイクロ当量から約1000マイクロ当量であり得る。特に、約10マイクロ当量から約500マイクロ当量を用いることができる。より詳細には、約50マイクロ当量から約150マイクロ当量を用いることができる。
【0037】
用いられるアルカリ元素化合物、アルカリ土類金属化合物、又は前述の触媒の1種又は複数を含む組合せの量は、ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの組合せ1モル当たり、約1×10-7モルから約2×10-3モル、具体的には約1×10-6から約4×10-4モルであり得る。
【0038】
第四級ホスホニウム化合物が重合触媒の1つとして用いられる場合、それは、約180℃以上の温度で分解し、第四級ホスフィンオキシド及びリン酸エステルなどの非イオン性化合物を生成する。例えば、酢酸テトラブチルホスホニウムが第四級ホスホニウム化合物として用いられる場合、トリブチルホスフィンオキシド(TBPO)及びリン酸エステルが生成される。しかし、TBPOは、揮発性であり、重合反応の条件下で蒸発し得る。処理の間に、TBPOは、ジフェニルカーボネートとして比較的高い蒸気圧を有するので、例えば、かなりの量のTBPOをジフェニルカーボネートとともに蒸留し得る。したがって、生成したTBPOの留分は、回収されたジフェニルカーボネートとともに再循環され得る。
【0039】
ポリカーボネートを製造する実施形態において、芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとは、第一段反応の間に大気圧で、約80℃から約250℃の温度で、特には約100℃から約230℃の温度で、より詳細には約120℃から約190℃の温度で、一般に0.5から約10時間、特には0.5から約6時間、さらにより詳細には0.5から約5時間反応させ得る。次いで、反応温度を上昇させる一方、反応システムを減圧し、このようにして芳香族ジヒドロキシ化合物とジアリールカーボネートとの間の反応を引き起こさせ、最終的に芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート、及びそれらのオリゴマーは、水銀約5ミリメートル(mmHg)以下の減圧下で約240℃から約320℃の温度で重合反応に供される。
【0040】
反応が減圧下に置かれる場合、副生成物蒸気流が生成され、分離装置に送られる。分離装置は、スクラバー型とすることができ、これは、重合反応器と本質的に同じ真空及び前記スクラバーからの底部生成物の組成により決定される温度で稼動することによって、流れ中に存在するモノマーから揮発性ジアリールカーボネート副生成物を分離する。別の言い方をすれば、温度は、重合反応で用いられるモノマーに基づいて決定される。分離装置はまた、重合反応器とは異なる圧力条件で稼動する蒸留塔であることもできる。低蒸気圧化合物が、副生成物蒸気流、分離装置、又は副生成物蒸気流と分離装置の両方に導入されて、分離装置及び関連出口ラインにおける固化オリゴマーの形成を防止又は減少させる。
【0041】
生産方法は、連続法又は回分法のいずれかであり得る。この反応を行う際に用いられる反応装置は、撹拌とともに又はそれなしで、垂直型、水平型、管型、流下膜式蒸発器型、又は塔型であり得る。ある実施形態において、少なくとも2つの重合段階があり得るが、段階の数に特定の制限はない。
【0042】
例示的な実施形態において、反応が行われる装置は、槽、管、及び/又は塔の任意の適当な型を含む多段反応器であり得る。このような反応器は、垂直撹拌槽型重合反応器、薄膜蒸発式重合反応器、水平撹拌型反応器、ベント式二軸押出機、反応型蒸留塔など、並びに前述の反応器の少なくとも1種を含む組合せであり得る。
【0043】
次に図1を参照すると、全体的に100と指定された、本方法の実施に適したプロセスフローの例示的な実施形態の概略図が示される。ジアリールカーボネート及び芳香族ジヒドロキシ化合物は重合触媒と一緒に、モノマー混合ドラム14で混合される。ポリカーボネートを生産するための重合反応は、直列に接続され、約150℃から約400℃、特には約250℃から約350℃の漸増温度(すなわち、下流の反応器は、上流の反応器よりも高温で稼動される); 及び約500Torrから約0.01Torrの漸減圧力(すなわち、下流の反応器は、上流の反応器よりも低圧で稼動される)で稼動される、第1反応器16、第2反応器18、第3反応器20、及び第4反応器22を備える多段反応器システムで行うことができる。例えば、第1反応器16は、約200℃以上の温度に維持され、第4反応器22は、約350℃以下の温度に維持される。さらに、第1反応器16は、約500Torr以下の圧力に維持され、第4反応器22は、約0.01Torr以上の圧力に維持される。この方法によって、例えば、約7,000原子質量単位(amu)以上の数平均分子量を有する高分子量ポリカーボネートをつくりながら、揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去することができる。
【0044】
反応器16、18、20、及び22は、それぞれの反応器についてそれぞれオーバーヘッド副生成物蒸気流24、26、28、及び30の一部として揮発性ジアリールカーボネート副生成物(例えば、フェノール)の除去を可能にするように構成される。副生成物蒸気流は、分離装置に供給される。例えば、オーバーヘッド流24は、第1反応器16と流体連絡した分離装置(44)に供給される。入口流52は、溶融した低蒸気圧化合物を副生成物蒸気流24に供給する。示されていない代替の実施形態において、入口流52は、分離装置44に直接送り込まれる。分離装置44は、底部流46及び頂部流48を含む。底部流46は、反応器16にフィードバックされ得るモノマーを含む戻り流である。頂部流48は、揮発性ジアリールカーボネート副生成物を含む。
【0045】
オーバーヘッド流26、28、及び30は、同じ分離装置44に、又は異なる分離装置に供給され得る。オーバーヘッド流26、28、及び30は、例えば、第1精製塔32及び第2精製塔34を備える回収システム(例えば、精製システム)に集合的に供給され得る。流れ36及び/又は38は、流れ48と一緒にされ得るか、又は独立して処理され得る。
【0046】
本方法は、以下の非限定的実施例によってさらに例示される。
【0047】
(実施例)
オリゴマーの質量パーセンテージは、フラスコ中に所望の試料5グラムを秤量し、それを50ミリリットル(ml)のメタノール中に激しい撹拌下で1時間溶解し、ろ紙を通して不溶性生成物をろ過し、ろ紙に保持された固体を別の50mlのメタノールで洗浄し、不溶性生成物をオーブン中100℃未満の温度で15分間乾燥させ、最後に収集した乾燥固体を秤量することによって測定した。
【0048】
(比較例1及び実施例1a〜c)
試料は、市販のポリカーボネート反応器システムでスクラバーの底部から得て、試料の全質量に基づいて21質量パーセントの初期のオリゴマー含有量を有した。この試料を他になにも加えることなく、溶融反応器中に導入した。この試料を、稼動の期間中に市販のシステムから得たが、ここで、スクラバーの底部で結晶性オリゴマーの形成があり、分離システムの稼動は、維持できなかった。ジフェニルカーボネート(DPC)、ヒドロキノン(HQ)及びビスフェノールA(BPA)が、重合触媒としての水酸化テトラメチルアンモニウム及びNaOHとともに出発材料として市販のポリカーボネート反応器中で用いたモノマーであった。
【0049】
実験室規模の溶融反応器を、酸洗浄、すすぎ洗い及び窒素ガスによる乾燥によって不動態化した。市販の反応器からの試料を、他になにも加えることなく、実験室溶融反応器に導入し、165ミリバール(mbar)真空下180℃に1時間加熱した(市販のプラントのスクラバーで見られるもの同様の条件)。試料のオリゴマー含有量は、21%から28%に増加した。
【0050】
所与の量の低蒸気圧化合物(リン酸アンモニウム(NH4H2PO4))を、実験室溶融反応器中へのその導入前に、試料に加えた以外は、比較例1におけるものと同じ反応を行った。異なるレベルのNH4H2PO4を試験し、反応後のオリゴマー含有量を測定した。以下に示すNH4H2PO4の量は、全試料の100万質量部当たりの質量部である。
【0051】
【表1】
【0052】
結果は、酸性化合物などの低蒸気圧化合物の少量の導入が、スクラバーに存在する条件下で形成する固化オリゴマーの量を減少させ得ることを示す。低蒸気圧化合物の量が増加するにつれて、オリゴマーの生成は減少する。
【0053】
(比較例2並びに実施例2a及び2b)
実験室溶融反応器を、酸洗浄、すすぎ洗い及び窒素ガスによる乾燥によって不動態化し、それに、ヒドロキノン(HQ)、ビスフェノールA(BPA)、及びジフェニルカーボネート(DPC)のモノマーの混合物を投入した。ジヒドロキシ化合物のモル比は、HQ/BPA 80/20であった。ジアリールカーボネート対ジヒドロキシ化合物(DPC/(HQ+BPA))のモル比は、2であった(この試料中にオリゴマーは、初期にまったく存在しなかった)。この混合物にある量の触媒(10ppm酢酸テトラブチルホスホニウム(TBPA))を加え、次いで、この混合物を165mbar真空下180℃に1時間加熱した。試料のオリゴマー含有量は12%に増加した。
【0054】
10ppmのTBPAに加えて、所与の量のNH4H2PO4も、溶融反応器へのその導入前に、試料に加えた以外は、比較例2におけるものと同じ反応を行った。混合物に加えたモル比NH4H2PO4/TBPAは、実施例2a及び実施例2bについて、それぞれ0.5及び1.0であり、反応後のオリゴマー含有量は、それぞれ15.8%及び3.9%であった。
【0055】
【表2】
【0056】
データからわかるとおり、スクラバーに加えた酸性化合物の量は、触媒活性を低下させるのに十分でなければならない。
【0057】
(実施例3及び4並びに比較例3)
第1重合反応器を出て、分離装置に送られるオーバーヘッドの量を、重合プロセスに影響を与えることなく、低下させるために、連続溶融重合システムにおける第1重合反応器の条件を選択し(200℃及び330mbar)、以下の重合反応器において同じ分子量を形成した。同時に、固定量の成分ジフェニルカーボネート(重合プロセスに加えた全ジフェニルカーボネートの3.6%)を、第1重合反応器から分離装置への蒸気副生成物流に連続的に加えた。それに加えて、NH4H2PO4水溶液の連続流を分離装置の中間部に加えた(第1重合反応器に返送される分離装置の底部の流れに基づいて1.5ppmのNH4H2PO4をもたらした)。定常状態のときに、試料を分離装置の底部から採取し、オリゴマー含有量の質量パーセントを測定し、分離装置に関してなんらの稼動上の問題もなく12日間連続的に実行した(実施例3)。
【0058】
実施例4において、第1重合反応器に対してより厳しいプロセス条件を選択し(225℃及び165mbar)、これらの条件をなんらの稼動上の問題もなく1日間実行した以外は、連続システムを同様に実行した。
【0059】
比較例3において、第1重合反応器の条件は、実施例4におけるものと同じであった。それに加えて、ジフェニルカーボネート流を、第1重合反応器からスクラバーへの副生成物蒸気流に加えることに代えて、第1重合反応器自体に直接加えた。さらに、分離装置の中間部へのNH4H2PO4流を取り除いた。その後のこのラインの閉塞による分離装置底部におけるオリゴマー堆積のために、第1重合反応器における真空が失われたので、稼動は、2日を超えて維持できなかった。
【0060】
【表3】
【0061】
上述の実施例からわかるとおり、低蒸気圧モノマー又は酸性化合物などの低蒸気圧化合物の添加は、オリゴマー形成の量を低下させ、重合システムの安定した稼動を促進することができる。一実施形態において、本発明者らは、溶融重合反応において、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で重合させ、芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート及びジアリールカーボネート副生成物を含む副生成物蒸気流を生成する工程、低蒸気圧化合物を副生成物蒸気流に加えて、変性副生成物蒸気流を生成する工程、変性副生成物蒸気流を分離装置に導入する工程、並びに分離装置において変性副生成物蒸気流から揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去して、処理済副生成物流を形成し、処理済副生成物流を溶融重合反応に戻す工程を含む、ポリカーボネートを生産する方法を主張する。
【0062】
別の実施形態において、本発明者らは、溶融重合反応において、芳香族ジヒドロキシ化合物及びジアリールカーボネートを重合触媒の存在下で重合させ、芳香族ジヒドロキシ化合物、ジアリールカーボネート及びジアリールカーボネート副生成物を含む副生成物蒸気流を生成する工程、低蒸気圧化合物を分離装置に加える工程、副生成物蒸気流を分離装置に導入する工程、並びに分離装置において副生成物蒸気流から揮発性ジアリールカーボネート副生成物を除去して、処理済副生成物流を形成し、処理済副生成物流を溶融重合反応に戻す工程を含む、ポリカーボネートを生産する方法を主張する。
【0063】
上記実施形態のいずれにおいても、(i) 芳香族ジヒドロキシ化合物は、ヒドロキノン及びビスフェノールAを含み; 並びに/或いは(ii) ジアリールカーボネートは、ジフェニルカーボネートであり; 並びに/或いは(iii) 副生成物蒸気流は、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ジフェニルカーボネート、及びフェノールを含み; 並びに/或いは(iv) 低蒸気圧化合物は、ビスフェノールA、ジアリールカーボネート、酸性化合物、NH4H2PO4、又は前述の1種若しくは複数の組合せを含み; 並びに/或いは(v) 副生成物流は、オリゴマーを含み; 並びに/或いは(vi) 低蒸気圧化合物は、分離装置稼動条件下で揮発性ジアリールカーボネート副生成物の沸点よりも少なくとも10度高い沸点を有し; 並びに/或いは(vii) 低蒸気圧化合物は、ジヒドロキシ化合物を含み、低蒸気圧化合物の量は、重合反応に加えられるジヒドロキシ化合物の全量の0.5質量パーセント以上であり; 並びに/或いは(viii) 低蒸気圧化合物は、ジアリールカーボネートを含み、低蒸気圧化合物の量は、重合反応に加えられるジアリールカーボネートの全量の0.5質量パーセント以上であり; 並びに/或いは(ix) 低蒸気圧化合物は、ビスフェノールA、ジアリールカーボネート、酸性化合物又は前述の2種以上の組合せを含み; 並びに/或いは(x) 低蒸気圧化合物は、酸性化合物であり、酸性化合物の量は、副生成物蒸気流中に存在するジヒドロキシ化合物のモル数に基づいて、10から300マイクロ当量であり; 並びに/或いは(xi) 分離装置はスクラバー型であり; 並びに/或いは(xii) 方法は連続的である。本明細書で「第1の」、「第2の」などの用語は、量、順序、又は重要性を意味するのではなく、1つの要素を別の要素から区別するために使用され、本明細書で「1つの(a)」及び「1つの(an)」という用語は、量の限定を意味するのではなく、言及された品目の少なくとも1つの存在を意味することをまず留意されたい。さらに、本明細書で開示される範囲のすべては、包含的でかつ組合せ可能である(例えば、「最大25質量%まで、5質量%から20質量%が望ましい」の範囲は、端点及び「5質量%から25質量%」の範囲の中間値などすべてを含めている)。特に別段の規定がない限り、本明細書で使用される技術及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。量に関連して使用される「約」という修飾語句は、記載の値を含むものであり、文脈によって示された意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の度合を含む)。
【0064】
システム内の装置(例えば、反応器、精製装置など)の配置の記載において、「上流」及び「下流」という用語が使用される。これらの用語は、それらの通常の意味を有する。しかし、装置は、ある種の構成、例えば、再循環ループを含むシステムにおいて同じ装置の「上流」及び「下流」の両方であってもよいことが想定される。
【0065】
本発明は、例示的な実施形態を参照して記載されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよく、均等物がその要素の代わりに置き換えられてもよいことは当業者なら理解されよう。さらに、その発明範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正がなされ得る。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図されたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されないこと、しかし、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入る実施形態のすべてを包含することが意図される。
図1