(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電子部品と該電子部品上に配置された第1の半導体チップとを有し、かつ該第1の半導体チップの上面に設けられた電気接続端子から配線が引き出されている積層構造体上に、前記配線の少なくとも一部の領域を接着剤層に埋め込むように積層される接着剤層付き半導体チップであって、
第2の半導体チップと、
前記第2の半導体チップの片面に積層された第1の接着剤層と、
前記第1の接着剤層の前記第2の半導体チップ側とは反対の表面に積層された第2の接着剤層とを備え、
前記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が、前記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で高く、
前記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が5000Pa・s以上、30000Pa・s以下であり、前記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である、接着剤層付き半導体チップ。
前記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が、前記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で3000Pa・s以上高い、請求項1に記載の接着剤層付き半導体チップ。
電子部品と該電子部品上に配置された第1の半導体チップとを有し、かつ該第1の半導体チップの上面に設けられた電気接続端子から配線が引き出されている積層構造体と、
第2の半導体チップと、該第2の半導体チップの片面に積層された第1の接着剤層と、該第1の接着剤層の前記第2の半導体チップ側とは反対の表面に積層された第2の接着剤層とを備える接着剤層付き半導体チップとを用意し、
前記積層構造体上に、前記接着剤層付き半導体チップを加熱して前記第2の接着剤層側から、該第2の接着剤層に前記配線の少なくとも一部の領域を埋め込むように積層する積層工程と、
前記第1,第2の接着剤層を硬化させて、該第2の接着剤層の硬化物層により、前記配線の少なくとも一部の領域を封止する封止工程とを備え、
前記積層工程において、前記配線の少なくとも一部の領域を埋め込む際の前記第1の接着剤層の粘度を、前記第2の接着剤層の粘度よりも高くし、
前記接着剤層付き半導体チップとして、前記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が5000Pa・s以上、30000Pa・s以下であり、前記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である接着剤層付き半導体チップを用いる、半導体装置の製造方法。
前記接着剤層付き半導体チップとして、前記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が、前記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で3000Pa・s以上高い接着剤層付き半導体チップを用いる、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
前記積層工程において、前記積層構造体上に、前記接着剤層付き半導体チップを加熱して前記第2の接着剤層側から、該第2の接着剤層に前記第1の半導体チップと前記配線の少なくとも一部の領域とを埋め込むようにかつ前記第1の半導体チップの上面と側面とに接着剤層が接するように積層し、
前記封止工程において、前記第1,第2の接着剤層を硬化させて、該第2の接着剤層の硬化物層により、前記第1の半導体チップと前記配線の少なくとも一部の領域とを封止する、請求項4〜6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ボンディングワイヤーの一部の領域が埋め込まれる際の温度における接着剤層の溶融粘度が、1〜100kPa・s程度であることが記載されている。
【0006】
しかしながら、接着剤層の上記溶融粘度が上記範囲内であっても、接着剤層にボンディングワイヤーを効率的に埋め込むことができなかったり、第1,第2の半導体チップの間に所定の厚みの接着剤層を形成することができなかったりすることがある。さらに、得られた半導体装置において、埋め込まれたボンディングワイヤーが上層の第2の半導体チップの下面に接触することがある。この結果、第2の半導体チップ又はボンディングワイヤーが損傷したり、上層の第2の半導体チップが傾いたりすることがある。さらに、電極間の接続不良が生じたり、半導体装置においてボンディングワイヤーの周囲にボイドが生じたりすることがある。
【0007】
本発明の目的は、電子部品と該電子部品上に配置された第1の半導体チップとを有し、かつ該第1の半導体チップの上面に設けられた電気接続端子から配線が引き出されている積層構造体上に、配線の少なくとも一部の領域を接着剤層に埋め込むように積層される接着剤層付き半導体チップであって、積層構造体上に接着剤層付き半導体チップを積層した後に、配線が上層の半導体チップに接触し難い接着剤層付き半導体チップを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上記積層構造体上に、配線の少なくとも一部の領域を接着剤層に埋め込むように接着剤層付き半導体チップを積層したときに、配線が上層の半導体チップに接触し難い半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、電子部品と該電子部品上に配置された第1の半導体チップとを有し、かつ該第1の半導体チップの上面に設けられた電気接続端子から配線が引き出されている積層構造体上に、上記配線の少なくとも一部の領域を接着剤層に埋め込むように積層される接着剤層付き半導体チップであって、第2の半導体チップと、該第2の半導体チップの片面に積層された第1の接着剤層と、該第1の接着剤層の上記第2の半導体チップ側とは反対の表面に積層された第2の接着剤層とを備え、上記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が、上記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で高い、接着剤層付き半導体チップが提供される。
【0010】
本発明に係る接着剤層付き半導体チップのある特定の局面では、上記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度は、上記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で3000Pa・s以上高い。
【0011】
本発明に係る接着剤層付き半導体チップの他の特定の局面では、上記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が5000Pa・s以上、30000Pa・s以下であり、上記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である。
【0012】
本発明に係る接着剤層付き半導体チップは、上記積層構造体上に、上記第1の半導体チップと上記配線の少なくとも一部の領域とを接着剤層に埋め込むように積層される接着剤層付き半導体チップであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の広い局面によれば、電子部品と該電子部品上に配置された第1の半導体チップとを有し、かつ該第1の半導体チップの上面に設けられた電気接続端子から配線が引き出されている積層構造体と、第2の半導体チップと、該第2の半導体チップの片面に積層された第1の接着剤層と、該第1の接着剤層の上記第2の半導体チップ側とは反対の表面に積層された第2の接着剤層とを備える接着剤層付き半導体チップとを用意し、上記積層構造体上に、上記接着剤層付き半導体チップを加熱して上記第2の接着剤層側から、該第2の接着剤層に上記配線の少なくとも一部の領域を埋め込むように積層する積層工程と、上記第1,第2の接着剤層を硬化させて、該第2の接着剤層の硬化物層により、上記配線の少なくとも一部の領域を封止する封止工程とを備え、上記積層工程において、上記配線の少なくとも一部の領域を埋め込む際の上記第1の接着剤層の粘度を、上記第2の接着剤層の粘度よりも高くする、半導体装置の製造方法が提供される。
【0014】
本発明に係る半導体装置の製造方法のある特定の局面では、上記接着剤層付き半導体チップとして、上記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が、上記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で3000Pa・s以上高い接着剤層付き半導体チップが用いられる。
【0015】
本発明に係る半導体装置の製造方法の他の特定の局面では、上記接着剤層付き半導体チップとして、上記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が5000Pa・s以上、30000Pa・s以下であり、上記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が100Pa・s以上、5000Pa・s以下である接着剤層付き半導体チップが用いられる。
【0016】
本発明に係る半導体装置の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記積層工程において、上記第1の接着剤層に上記配線を埋め込まない。
【0017】
本発明に係る半導体装置の製造方法の別の特定の局面では、上記積層工程において、上記積層構造体上に、上記接着剤層付き半導体チップを加熱して上記第2の接着剤層側から、該第2の接着剤層に上記第1の半導体チップと上記配線の少なくとも一部の領域とを埋め込むように積層し、上記封止工程において、上記第1,第2の接着剤層を硬化させて、該第2の接着剤層の硬化物層により、上記第1の半導体チップと上記配線の少なくとも一部の領域とを封止する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る接着剤層付き半導体チップは、第2の半導体チップと第1の接着剤層と第2の接着剤層とを備えており、上記第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度が、上記第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で高いので、積層構造体上に接着剤層付き半導体チップを第2の接着剤層側から、第2の接着剤層に配線の少なくとも一部の領域を埋め込むように積層したときに、埋め込まれた配線を上層の第2の半導体チップに接触し難くすることができる。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、積層構造体上に、第2の半導体チップと第1の接着剤層と第2の接着剤層とを備える接着剤層付き半導体チップを第2の接着剤層側から、第2の接着剤層に配線の少なくとも一部の領域を埋め込むように積層するので、埋め込まれた配線を上層の第2の半導体チップに接触し難くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0022】
図1に、本発明の一実施形態に係る接着剤層付き半導体チップを正面断面図で示す。
【0023】
図1に示す接着剤層付き半導体チップ1は、第2の半導体チップ2と、第1の接着剤層3と、第2の接着剤層4とを有する。
【0024】
第2の半導体チップ2の片面である下面2aに、第1の接着剤層3が積層されている。第1の接着剤層3の第2の半導体チップ2側の第1の表面3aとは反対の第2の表面3bに、第2の接着剤層4が積層されている。第2の接着剤層4の第1の表面4aに、第1の接着剤層3が積層されている。第2の接着剤層4の第1の接着剤層3側とは反対の第2の表面4bは、後述の積層構造体に接着される表面である。
【0025】
従って、接着剤層付き半導体チップ1は、第2の半導体チップ2と第1の接着剤層3と第2の接着剤層4とがこの順で積層された積層構造を有する。すなわち、第2の半導体チップ2の下面2aに、接着剤層として、2層構造の第1,第2の接着剤層3,4が積層されている。
【0026】
第1の接着剤層3の厚みは、5μm以上、30μm以下であることが好ましい。第1の接着剤層3の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、配線が上層の第2の半導体チップの下面に接触するのをより一層効果的に抑制することができ、かつ硬化した第1の接着剤層の厚みが薄くなるのを抑制することができる。
【0027】
第2の接着剤層4の厚みは、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。第2の接着剤層4の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、配線が上層の第2の半導体チップの下面に接触するのをより一層抑制することができ、かつ配線をより一層効率的に埋め込ませることができる。
【0028】
硬化前の第1,第2の接着層3,4はそれぞれ、粘着性を有していてもよい。硬化前の第1,第2の接着層3,4は、第1,第2の粘接着層であってもよい。
【0029】
図2に、
図1に示す接着剤層付き半導体チップ1を用いた半導体装置を正面断面図で示す。
【0030】
図2に示す半導体装置11は、積層構造体12を備える。積層構造体12は、電子部品13と、電子部品13の上面13aに、接着剤層14を介して積層された第1の半導体チップ15とを有する。電子部品13の上面13aに、第1の半導体チップ15が配置されている。電子部品13の上面13aに、第1の半導体チップ15は間接に積層されている。平面視において、電子部品13は、第1の半導体チップ15よりも大きい。電子部品13は、第1の半導体チップ15よりも側方に張り出している領域を有する。
【0031】
接着剤層14は、例えば、接着シートを硬化させることにより形成されている。硬化前の接着シートは、粘着性を有していてもよい。硬化前の接着シートは、粘接着シートであってもよい。
【0032】
電子部品13の上面13aには、第1の電気接続端子13bが設けられている。第1の半導体チップ15の上面15aには、電気接続端子15bが設けられている。電気接続端子15bから配線16が引き出されている。配線16の一端は、第1の半導体チップ15の上面15aに設けられた電気接続端子15bに接続されている。配線16の他端は、電子部品13の上面13aに設けられた第1の電気接続端子13bに接続されている。配線16により、電気接続端子15bと第1の電気接続端子13bとが電気的に接続されている。配線16の他端は、第1の電気接続端子13b以外の他の電気接続端子に接続されていてもよい。配線16は、ボンディングワイヤーであることが好ましい。
【0033】
電子部品13の上面13aには、第2の電気接続端子13cが設けられている。第2の半導体チップ2の上面2bには、電気接続端子2cが設けられている。電気接続端子2cから配線17が引き出されている。配線17の一端は、第2の半導体チップ2の上面2bに設けられた電気接続端子2cに接続されている。配線17の他端は、電子部品13の上面13aに設けられた第2の電気接続端子13cに接続されている。配線17により、電気接続端子2cと第2の電気接続端子13cとが電気的に接続されている。配線17の他端は、第1の電気接続端子13c以外の他の電気接続端子に接続されていてもよい。配線17は、ボンディングワイヤーであることが好ましい。
【0034】
電子部品13としては、基板及び半導体チップ等が挙げられる。電子部品13は、基板又は半導体チップであることが好ましい。該基板としてはガラスエポキシ基板等が挙げられる。
【0035】
積層構造体12の上面12aに、接着剤層付き半導体チップ1Aが積層されている。接着剤層付き半導体チップ1Aは、積層構造体12の上面12aに、接着剤層付き半導体チップ1を積層した後、第1,第2の接着剤層3,4を硬化させることにより形成されている。第1の接着剤層3が硬化されて、硬化した第1の接着剤層3Aが形成されている。第2の接着剤層4が硬化されて、硬化した第2の接着剤層4Aが形成されている。
【0036】
半導体装置11では、配線16の全領域が、硬化した第2の接着剤層4Aに埋め込まれている。
【0037】
半導体装置11は、以下のようにして得ることができる。なお、
図3に示すように、半導体装置11を得るために、半導体チップ2の上面2bに電気接続端子2cが予め設けられている粘接着剤層付き半導体チップ1が用いられている。
【0038】
図3に示すように、積層構造体12の上面12aに、接着剤層付き半導体チップ1を加熱して第2の接着剤層4側から、第2の接着剤層4に第1の半導体チップ15と配線16を埋め込むように積層する(積層工程)。この積層工程において、配線16の全領域を埋め込む際の第1の接着剤層3の粘度を、第2の接着剤層4の粘度よりも高くする。ここでは、積層構造体12における電子部品13の上面13aに積層された第1の半導体チップ15部分と該第1の半導体チップ15よりも側方に張り出している電子部品13部分とに、接着剤層付き半導体チップ1を積層している。
【0039】
本実施形態では、配線16の全領域を第2の接着剤層4に埋め込んでいる。これにより、後の封止工程後に、配線16の全領域が第2の接着剤層4Aに埋め込まれた半導体装置11を得ることができる。配線の少なくとも一部の領域を第2の接着剤層に埋め込んでもよく、配線の全領域を第2の接着剤層に埋め込んでもよい。特に、配線の全領域を第2の接着剤層に埋め込む場合に、特定の第1,第2の接着剤層3,4の使用が特に有利に作用する。
【0040】
また、本実施形態では、第2の接着剤層4に、配線16だけでなく、第1の半導体チップ15も埋め込んでいる。第1の半導体チップを第2の接着剤層に埋め込むことが好ましい。特に、第1の半導体チップを第2の接着剤層に埋め込む場合に、特定の第1,第2の接着剤層3,4の使用が特に有利に作用する。
【0041】
上記積層工程の後、積層構造体12の上面12aに積層された第1,第2の接着剤層3,4を硬化させる。これによって、硬化した第1,第2の接着剤層3A,4Aを形成する。また、硬化した第2の接着剤層4Aにより、第1の半導体チップ15と配線16とを封止する(封止工程)。本実施形態では、硬化した第2の接着剤層4Aにより第1の半導体チップ15と配線16の全領域とを封止している。半導体装置11において硬化した第2の接着剤層4Aにより第1の半導体チップ15が封止されていることが好ましく、配線16の全領域が封止されていることが好ましい。
【0042】
封止工程の後に、配線17により電気接続端子2cと第2の電気接続端子13cとを電気的に接続することにより、
図2に示す半導体装置11を得ることができる。なお、配線17による電気的な接続は、封止工程の前に行われてもよい。
【0043】
得られた半導体装置11には、第2の半導体チップ2及び配線17を封止するように樹脂モールド層を設けてもよい。
【0044】
本実施形態の特徴は、上記積層工程において、配線16の少なくとも一部の領域を埋め込む際の第1の接着剤層3の粘度を、第2の接着剤層4の粘度よりも高くすることである。すなわち、第1の接着剤層3の積層時のダイボンディング温度における粘度を、第2の接着剤層4の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも高くする。これにより、配線16を第2の接着剤層4に効率的に埋め込ませることができる。さらに、配線16は第1の接着剤層3には埋め込まれ難く、配線16の上端が上層の第2の半導体チップ2の下面2aに、接触するのを効果的に防ぐことができる。さらに、埋め込み時の第1の粘着剤層3の粘度が比較的高いので、硬化した第1,第2の接着剤層3A,4Aの合計の厚みが薄くなりすぎるのを抑制することもできる。このため、第1の半導体チップ15と第2の半導体チップ2との間に、硬化した第1,第2の接着層3A,4Aを十分に配置させることができ、接着信頼性を高めることができる。さらに、埋め込み時の第2の粘着剤層4の粘度が比較的低いので、配線16が効率的に埋め込まれ、更に埋め込まれた配線16の周囲にボイドが生じるのを抑制することもできる。このため、半導体装置11の信頼性を高めることができる。
【0045】
上記積層工程において、配線の一部を埋め込む積層時のダイボンディング温度は、80〜120℃であることが好ましい。
【0046】
配線が上層の第2の半導体チップ2の下面に接触するのをより一層効果的に抑制する観点からは、接着剤層付き半導体チップ1において、第1の接着剤層3の80〜120℃における粘度は、第2の接着剤層4の80〜120℃における粘度よりも同じ温度で高いことが好ましい。
【0047】
配線が上層の第2の半導体チップ2の下面に接触するのをさらに一層効果的に抑制する観点からは、接着剤層付き半導体チップ1において、第1の接着剤層3の積層時のダイボンディング温度における粘度は、第2の接着剤層4の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも同じ温度で3000Pa・s以上高いことがより好ましい。
【0048】
配線が上層の第2の半導体チップ2の下面に接触するのをより一層効果的に抑制し、かつ硬化した第1の接着剤層の厚みが薄くなるのを抑制する観点からは、第1の接着剤層3の積層時のダイボンディング温度における粘度は、5000Pa・s以上、30000Pa・s以下であることが好ましい。第1の接着剤層3の積層時のダイボンディング温度における粘度は、より好ましくは10000Pa・s以上、より好ましくは20000Pa・s以下である。第1の接着剤層3の積層時のダイボンディング温度(好ましくは80〜120℃)における粘度の最低値は好ましくは5000Pa・s以上、より好ましくは10000Pa・s以上であり、第1の接着剤層3の積層時のダイボンディング温度(好ましくは80〜120℃)における粘度の最高値は好ましくは30000Pa・s以下、より好ましくは20000Pa・s以下である。
【0049】
配線が上層の第2の半導体チップ2の下面に接触するのをより一層抑制し、かつ配線をより一層効率的に埋め込ませ、ボイドを生じ難くする観点からは、第2の接着剤層4の積層時のダイボンディング温度における粘度は、100Pa・s以上、5000Pa・s以下であることが好ましい。第2の接着剤層4の積層時のダイボンディング温度における粘度は、より好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s未満、更に好ましくは4000Pa・s以下である。第2の接着剤層4の積層時のダイボンディング温度(好ましくは80〜120℃)における粘度の最低値は好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは1000Pa・s以上であり、第2の接着剤層4の積層時のダイボンディング温度(好ましくは80〜120℃)における粘度の最高値は好ましくは5000Pa・s以下、より好ましくは5000Pa・s未満、更に好ましくは4000Pa・s以下である。
【0050】
第1,第2の粘着剤層の粘度は、レオメーターを用いて、第1,第2の接着剤層を40℃から200℃まで昇温速度5℃/分で加熱する条件で測定される。上記レオメーターとしては、レオロジカ インスツルメント AB社製「VAR」等が挙げられる。
【0051】
図4に、
図1に示す接着剤層付き半導体チップ1を用いた半導体装置の変形例を正面断面図で示す。
【0052】
図4に示す半導体装置21は、積層構造体22を備える。積層構造体22は、電子部品23と、電子部品23の上面23aに、接着剤層24を介して積層された第1の半導体チップ25とを有する。電子部品23の上面23aに、第1の半導体チップ25は間接に積層されている。接着剤層24は、例えば、接着シートを硬化させることにより形成されている。
【0053】
電子部品23の上面23aには、第1,第2の電気接続端子23b,23cが設けられている。第1の半導体チップ25の上面25aには、電気接続端子25bが設けられている。電気接続端子25bから配線26が引き出されている。配線26の一端は、電気接続端子25bに接続されている。配線26の他端は、第1の電気接続端子23bに接続されている、配線26により、電気接続端子25bと第1の電気接続端子23bとが電気的に接続されている。また、半導体装置21では、配線27により、電気接続端子2cと第2の電気接続端子23cとが電気的に接続されている。配線26,27は、ボンディングワイヤーであることが好ましい。
【0054】
本実施形態では、積層構造体22の上面22aに、接着剤層付き半導体チップ1Bが積層されている。接着剤層付き半導体チップ1Bは、積層構造体22の上面22aに、接着剤層付き半導体チップ1を積層した後、第1,第2の接着剤層3,4を硬化させることにより形成されている。第1の接着剤層3が硬化されて、硬化した第1の接着剤層3Bが形成されている。第2の接着剤層4が硬化されて、硬化した第2の接着剤層4Bが形成されている。
【0055】
配線26の一部の領域は、硬化した第2の接着剤層4Bに埋め込まれている。すなわち、配線26は、第2の接着剤層4Bに埋め込まれた部分26aと、第2の接着剤層4Bに埋め込まれていない部分26bとを有する。
【0056】
半導体装置21を得る際には、積層構造体22における第1の半導体チップ1上に、接着剤層付き半導体チップ1を加熱して第2の接着剤層4側から、第2の接着剤層4に配線26の一部を埋め込むように積層する(積層工程)。この積層工程において、配線26の一部の領域を埋め込む際の第1の接着剤層3の粘度を、第2の接着剤層4の粘度よりも高くする。上記積層工程の後、積層構造体22の上面22aに積層された第1,第2の接着剤層3,4を硬化させる。これによって、硬化した第1,第2の接着剤層3B,4Bを形成する。また、硬化した第2の接着剤層4Bにより、配線26を封止する(封止工程)。
【0057】
半導体装置21でも、半導体装置11と同様に、接着剤層付き半導体チップ1が用いられているので、配線26に上層の第2の半導体チップ2が接触し難い。さらに、第1,第2の半導体チップ25,2間において、第1,第2の接着剤層3B,4Bの合計の厚みが厚くなりすぎるのを抑制することができる。さらに、配線26の周囲にボイドが生じるのを抑制することもできる。
【0058】
なお、得られた半導体装置21には、第1,第2の半導体チップ25,2及び配線26,27を封止するように樹脂モールド層を設けてもよい。
【0059】
次に、第1,第2の接着剤層3,4を得るための硬化性組成物、及び該硬化性組成物に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0060】
(硬化性組成物)
第1,第2の接着剤層3,4は、例えば、熱硬化性樹脂と熱硬化剤とを含む硬化性組成物により形成することができる。熱硬化性樹脂と熱硬化剤とは、第1,第2の接着剤層の粘度(溶融粘度)が適切な値を示すように適宜選択して用いられる。
【0061】
粘度を比較的高くするために、第1の接着剤層は、重量平均分子量が1万以上であるエポキシ基含有アクリル樹脂を含むことが好ましい。第1の接着剤層は、熱硬化性樹脂と、重量平均分子量が1万以上であるエポキシ基含有アクリル樹脂と、熱硬化剤とを含むことが好ましい。第1の接着剤層は、熱硬化性樹脂100重量部に対して上記エポキシ基含有アクリル樹脂を40重量部以上含むことが好ましい。
【0062】
第2の接着剤層は、熱硬化性樹脂と、熱硬化剤とを含むことが好ましい。第2の接着剤層は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、重量平均分子量が1万以上であるエポキシ基含有アクリル樹脂を40重量部未満含むことが好ましい。すなわち、第2の接着剤層におけるエポキシ基含有アクリル樹脂の含有量は、第1の接着剤層におけるエポキシ基含有アクリル樹脂の含有量よりも少ないことが好ましい。第2の接着剤層が、重量平均分子量が1万以上であるエポキシ基含有アクリル樹脂を含む場合には、熱硬化性樹脂100重量部に対して、重量平均分子量が1万以上であるエポキシ基含有アクリル樹脂の含有量は、40重量部未満であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。
【0063】
〔熱硬化性樹脂〕
上記熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂及びポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂が好ましい。上記熱硬化性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記エポキシ樹脂は、極性基を有することが好ましい。上記エポキシ樹脂は、環状炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂であることが好ましい。環状炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の使用により、硬化性組成物の硬化後の硬化物が剛直になり、硬化物中で分子の運動が阻害される。従って、ガラス転移温度が高く、かつ高温での弾性率が高い硬化物を得ることができる。さらに、硬化物では、優れた機械的強度及び耐熱性を発現し、かつ吸水性も低くなるために優れた耐湿性も発現する。
【0065】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、及び3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。上記エポキシ樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエンジオキシド及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。上記ナフタレン型エポキシ樹脂としては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0067】
上記エポキシ樹脂は、極性基を有し、かつ環状の炭化水素骨格を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0068】
上記極性基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、アミド基、ニトリル基、カルボキシル基及びカルボニル基等が挙げられる。接着剤層の接着力をより一層高める観点からは、上記極性基は、ヒドロキシ基、イミノ基又はニトリル基であることが好ましい。ヒドロキシ基、イミノ基又はニトリル基を有するエポキシ樹脂の使用により、接着剤層の使用前の保管時に、硬化反応性が低くなり、保管後に極性基が維持されやすい。
【0069】
上記エポキシ樹脂は、フリーな極性基を有することが好ましい。上記「フリー」とは、極性基が、主鎖中の結合骨格の一部として存在するのではなく、側鎖又は末端に存在することを意味する。
【0070】
〔エポキシ基含有アクリル樹脂〕
第1の接着剤層の粘度を比較的高くするために、第1の接着剤層を構成する硬化性組成物は、重量平均分子量が1万以上であるエポキシ基含有アクリル樹脂を含むことが好ましい。上記エポキシ基含有アクリル樹脂の使用により硬化物の機械的強度、耐熱性及び可撓性が高くなる。
【0071】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂は、エポキシ基を末端に有していてもよく、側鎖(ペンダント位)に有していてもよい。上記エポキシ基含有アクリル樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂は、例えば、エポキシ基を有するアクリルモノマーと、エポキシ基を有さないアクリル化合物との共重合により得られる。
【0073】
上記エポキシ基を有するアクリルモノマーとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0074】
上記エポキシ基を有さないアクリル化合物としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、ヒドロキエチルアクリレート及びイソボロニルアクリレート等が挙げられる。
【0075】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、1万以上、40万以下であることが好ましい。エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が1万未満であると、第1の接着剤層の粘度が低くなる。上記エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量が40万以下であると、第1の接着剤層の粘度が高くなりすぎるのを抑制でき、硬化物にクラックを生じ難くすることができる。上記エポキシ基含有アクリル樹脂の重量平均分子量は、より好ましくは10万以上、より好ましくは30万以下である。
【0076】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましい。上記エポキシ基含有アクリル樹脂のガラス転移温度が60℃以上であると、第1の接着剤層の引張伸び特性がより一層良好になる。具体的には、破断応力が高くなりすぎず、破断伸度が高くなりすぎない。上記エポキシ基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は、より好ましくは70℃以上である。一方で、上記エポキシ基含有アクリル樹脂のガラス転移温度は100℃以下であることが好ましい。
【0077】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量は、200以上、1000以下であることが好ましい。上記エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量が200を超えると、硬化物の可撓性が高くなる。上記エポキシ基含有アクリル樹脂のエポキシ当量が1000以下であると、硬化物の耐熱性及び弾性率がより一層高くなる。
【0078】
第1の接着剤層において、上記熱硬化性樹脂100重量部に対して、上記エポキシ基含有アクリル樹脂の含有量は好ましくは40重量部以上、より好ましくは50重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下である。上記エポキシ基含有アクリル樹脂の含有量が上記下限以上及び上限以下であると、第1の接着剤層の粘度が適正化され、また接着性をより一層高くすることができる。
【0079】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤としては、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤及びジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、並びにカチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記常温で液状の加熱硬化型酸無水物系硬化剤の具体例としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤が挙げられる。なかでも、疎水化されているので、メチルナジック酸無水物及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好適に用いられる。
【0081】
硬化速度又は硬化物の物性等を調整するために、上記熱硬化剤と硬化促進剤とを併用してもよい。
【0082】
上記硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤及び3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール系硬化促進剤が好適に用いられる。イミダゾール系硬化促進剤を用いた場合には、硬化速度及び硬化物の物性等を容易に調整できる。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されない。上記イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、及びイソシアヌル酸で塩基性を保護した商品名「2MAOK−PW」(四国化成工業社製)等が挙げられる。上記イミダゾール系硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0084】
上記熱硬化剤は、エポキシ樹脂及び熱硬化剤の種類、及びエポキシ当量等に応じて適宜の含有量で用いられる。熱硬化剤の添加量は、また酸無水物系硬化剤と例えばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とを併用する場合の酸無水物系硬化剤の添加量は、好ましくはエポキシ基に対して理論的に必要な当量の60〜100%、さらに好ましくは70〜90%である。酸無水物系硬化剤の添加量が必要以上に過剰であると、硬化物から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。上記熱硬化剤の含有量を適切な範囲にすることにより、硬化性組成物を効率的に硬化させることができ、かつ硬化物に硬化剤に由来する残渣を生じ難くすることができる。
【0085】
上記熱硬化剤100重量部に対して、硬化促進剤の含有量は0.5〜20重量部であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、硬化性組成物を効率的に硬化させることができる。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化促進剤が残存し難くなり、硬化物の接合信頼性を高めることができる。
【0086】
〔他の成分〕
上記硬化性組成物は、必要に応じて、ゴム粒子、熱可塑性樹脂、密着性向上剤、pH調整剤、イオン捕捉剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、脱水剤、難燃剤、帯電防止剤、防黴剤、防腐剤及び溶剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0087】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0088】
(実施例1)
(1)第1の接着剤層を形成するための第1の硬化性組成物の調製
フェノキシ系エポキシ樹脂(三菱化学社製「1004F」)15重量部と、ジシクロペンタジエン系固形エポキシ樹脂(DIC社製「HP−7200HH」)20重量部と、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−850CRP」)30重量部と、酸無水物系硬化剤(三菱化学社製「YH−309」)35重量部と、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製「2MAOK−PW」)3重量部と、エポキシ基含有アクリル樹脂であるマープルーフG−2050M(日油社製、重量平均分子量Mw20万)35重量部と、アミノシランカップリング剤(チッソ社製「S320」)1重量部と、表面疎水化ヒュームドシリカ(トクヤマ社製「MT−10」)5重量部とを配合し、配合物を得た。得られた配合物をメチルエチルケトン(MEK)に固形分50重量%となるように添加し、攪拌し、第1の接着剤層を形成するための第1の硬化性組成物を得た。
【0089】
(2)第2の接着剤層を形成するための第2の硬化性組成物の調製
EXA−7200HH(DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)70重量部と、HP−4032D(DIC社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)15重量部と、エポキシ基含有アクリル樹脂であるマープルーフG−2050M(日油社製、重量平均分子量Mw20万)15重量部と、YH−309(三菱化学社製、酸無水物系硬化剤)38重量部と、2MAOK−PW(四国化成社製、イミダゾール)8重量部と、S320(チッソ社製、アミノシラン)2重量部と、MT−10(トクヤマ社製、表面疎水化ヒュームドシリカ)4重量部とを配合し、配合物を得た。得られた配合物をメチルエチルケトン(MEK)に固形分60重量%となるように添加し、攪拌し、第2の接着剤層を形成するための第2の硬化性組成物を得た。
【0090】
(3)接着剤層付き半導体チップの作製
離型処理された50μmPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、第1の硬化性組成物を塗工し、100℃のオーブン内で3分間乾燥して、厚み10μmの第1の接着剤層(第1の粘接着剤層)を形成した。同様にして離型処理された50μmPETフィルム上に、第2の硬化性組成物を塗工し、100℃のオーブン内で5分間乾燥して、厚み120μmの第2の接着剤層(第2の粘接着剤層)を形成した。次に、第1の接着剤層と第2の接着剤層とをラミネートして、一体シートを作製した。その後、得られた一体シートを第2の半導体チップ(厚み70μm、10mm×10mm)の下面に第1の接着剤層側が接するように60℃でラミネートして貼り付け、接着剤層付き半導体チップを作製した。
【0091】
(4)半導体装置の作製
図2に示す半導体装置を作製するために、
図2に示す積層構造体(接着剤層付き半導体チップの積層前)を用意した。この積層構造体では、厚み20μmの接着剤層で接着固定された第1の半導体チップ(40μm厚み、2mm×2mm)の上面から配線が立ち上がっており、該配線(Auボンディングワイヤー)の半導体チップの上面からの高さは50μm、基板の上面からの高さは110μmであった。この積層構造体上に、接着剤層付き半導体チップを100℃に加熱して第2の接着剤層側から、該第2の接着剤層に第1の半導体チップと配線の全領域とを埋め込むように、5Nの圧力で積層した。次に、100℃で1時間、更に150℃で1時間加熱して第1,第2の接着剤層を硬化させて、第2の接着剤層の硬化物層により、第1の半導体チップと配線の全領域とを封止して、半導体装置を得た。この半導体装置を20個作製した。
【0092】
(比較例1)
離型処理された50μmPETフィルム上に、実施例1で得られた第1の硬化性組成物を塗工し、100℃のオーブン内で5分間乾燥して、厚み130μmの単層の接着剤層を形成した。次に、得られた単層の接着剤層を第2の半導体チップの下面に60℃でラミネートして貼り付け、接着剤層付き半導体チップを作製した。
【0093】
実施例1で用いた積層構造体上に、接着剤層付き半導体チップを100℃に加熱して接着剤層側から、該接着剤層に第1の半導体チップと配線の全領域とを埋め込むように、5Nの圧力で積層した。次に、100℃で1時間、更に150℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させて、接着剤層の硬化物層により、配線を封止して、半導体装置を得た。この半導体装置を20個作製した。
【0094】
(比較例2)
離型処理された50μmPETフィルム上に、実施例1で得られた第2の硬化性組成物を塗工し、100℃のオーブン内で5分間乾燥して、厚み130μmの単層の接着剤層を形成した。次に、得られた単層の接着剤層を第2の半導体チップの下面に60℃でラミネートして貼り付け、接着剤層付き半導体チップを作製した。
【0095】
実施例1で用いた積層構造体上に、接着剤層付き半導体チップを100℃に加熱して接着剤層側から、該接着剤層に第1の半導体チップと配線の全領域とを埋め込むように、5Nの圧力で積層した。次に、100℃で1時間、更に150℃で1時間加熱して接着剤層を硬化させて、接着剤層の硬化物層により、配線を封止して、半導体装置を得た。この半導体装置を20個作製した。
【0096】
(実施例2)
実施例1で得られた接着剤層付き半導体チップを用意した。
【0097】
また、
図4に示す半導体装置を作製するために、
図4に示す積層構造体(接着剤層付き半導体チップの積層前)を用意した。この積層構造体では、厚み20μmの接着剤層で接着固定された第1の半導体チップ(40μm厚み、10mm×10mm)の上面から配線が立ち上がっており、該配線(ボンディングワイヤー)の半導体チップの上面からの高さは50μm、基板の上面からの高さは110μmであった。この積層構造体における第1の半導体チップ上に、接着剤層付き半導体チップを100℃に加熱して第2の接着剤層側から、該第2の接着剤層に配線の一部の領域を埋め込むように、5Nの圧力で積層した。次に、100℃で1時間、更に150℃で1時間加熱して第1,第2の接着剤層を硬化させて、第2の接着剤層の硬化物層により、配線の一部の領域を封止し、半導体装置を得た。この半導体装置を20個作製した。
【0098】
(評価)
(1)粘度の評価
レオメーター(レオロジカ インスツルメント AB社製「VAR」)を用いて、直径20mmパラレルプレート、周波数1Hz、歪み0.1%、40℃〜200℃及び昇温速度5℃/分の条件で、第1,第2の接着剤層(第1,第2の硬化性組成物)の粘度を測定した。下記の表1に、80〜120℃における粘度の最低値及び最高値と、実施例1,2の積層工程での積層時のダイボンディング温度である100℃における粘度とを示した。
【0099】
(2)配線の接触の有無
得られた20個の半導体装置において、配線に上層の第2の半導体チップが接触しているか否かを評価した。配線の接触の有無を下記の判定基準で判定した。
【0100】
[配線の接触の有無の判定基準]
○:20個の半導体装置の全てで、配線の接触がない
△:20個の半導体装置中、1個の半導体装置において、配線の接触がある
×:20個の半導体装置中、2個以上の半導体装置において、配線の接触がある
【0101】
(3)第1の接着剤層中への配線の埋め込み
実施例で得られた20個の半導体装置において、第1の接着剤層に配線が埋め込まれているか否かを、断面研磨を行った後に光学顕微鏡にて観察した。第1の接着剤層に配線が埋め込まれていない場合を「○」、第1の接着剤層に配線が埋め込まれている場合を「×」と判定した。
【0102】
(4)第1,第2の半導体チップの間隔
第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に存在している硬化した第1,第2の接着剤層の合計の厚み、すなわち第1,第2の半導体チップの間隔を、(3)の断面研磨サンプルを用いて計測し、下記の判定基準で判定した。
【0103】
[第1,第2の半導体チップの間隔の判定基準]
○:間隔が60μm以上
△:間隔が50μm超えて60μm未満
×:間隔が50μm以下
【0104】
(5)ボイドの有無
得られた20個の半導体装置において、接着剤層に埋め込まれた配線の周囲にボイドがあるか否かを、超音波探傷装置(SAT)によりボイド観察した。ボイドの有無を下記の判定基準で判定した。
【0105】
[ボイドの有無の判定基準]
○:20個の半導体装置の全てで、ボイドがない(ボイド面積10%未満)
△:20個の半導体装置中、1個の半導体装置においてボイドがある
×:20個の半導体装置中、2個以上の半導体装置において、ボイドがある
【0106】
結果を下記の表1に示す。なお、下記の表1において「−」は評価していないことを示す。
【0108】
なお、実施例1で得られた第1の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度は、実施例1で得られた第2の接着剤層の積層時のダイボンディング温度における粘度よりも、80〜120℃の全温度領域で同じ温度で3000Pa・s以上高かった。