特許第5781817号(P5781817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781817
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ドーザ装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/815 20060101AFI20150907BHJP
   E02F 3/76 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   E02F3/815 F
   E02F3/76 C
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-87750(P2011-87750)
(22)【出願日】2011年4月11日
(65)【公開番号】特開2012-219544(P2012-219544A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 惠一
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−150602(JP,U)
【文献】 実開昭60−178062(JP,U)
【文献】 実開昭55−059761(JP,U)
【文献】 実開昭48−027602(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/76,3/815
E01H 5/04−5/06
A01B 35/04,63/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの前部に取り付けられ、排土作業を行うドーザ装置であって、
前記ドーザ装置は、フロントヒッチと、回動軸と、アームと、ブレードと、補助アームと、シリンダブラケットと、昇降シリンダ及び昇降アームにより構成し、
前記フロントヒッチは、左右方向に向けて配置して後面をトラクタを構成するフロントアクスルブラケットの前面に着脱可能とし、
前記フロントヒッチの下部には、前記回動軸を枢支する回動軸ブラケットを突設し、該回動軸にはアームと昇降アームの後端を固設し、
前記フロントヒッチの前部には、前記補助アームの後端を枢支する補助アームブラケットを突設し、
前記アームと補助アームの前端は、ブレードに枢支し、該アームと補助アームとブレードとフロントヒッチにより平行リンク機構を構成し、
前記フロントヒッチの上方へ、上端に前記昇降シリンダの上端を枢支するシリンダブラケットを突設し、
前記昇降シリンダの下端は、前記昇降アームの前端に枢支し
前記回動軸は、高さ方向において前記フロントアクスルブラケットと、トラクタ前輪の車軸との間の位置に配置した
ことを特徴とするドーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの前部に取り付けられて、排土作業を行うドーザ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの前部に取り付けられて排土作業を行うドーザ装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のドーザ装置は、トラクタの前部ヒッチ(フロントヒッチ)に取り付けられる油圧タンクと、当該油圧タンクに平行リンクを介して昇降可能に取り付けられる整地板と、一端をアームを介して油圧タンクに連結され、他端を整地板に連結される油圧シリンダと、を具備するものである。
【0004】
このようなドーザ装置において、油圧シリンダを伸縮させることで、油圧タンクに対して整地板を昇降させることができる。整地板を所望の高さに調節し、当該整地板を圃場に接触させた状態でトラクタを前進させることにより、当該圃場を平らに整地することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭48−27602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のドーザ装置においては、整地板には圃場の土により大きな負荷が加わるにもかかわらず、当該整地板は作動油を貯溜する箱状の油圧タンクに支持されている。このため、油圧タンクの強度不足により、作業中に整地板に大きな負荷が加わった際にドーザ装置(油圧タンク等)が損傷するおそれがある点で不利であった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、強度の向上を図ることができるドーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
請求項1においては、トラクタの前部に取り付けられ、排土作業を行うドーザ装置であって、前記ドーザ装置は、フロントヒッチと、回動軸と、アームと、ブレードと、補助アームと、シリンダブラケットと、昇降シリンダ及び昇降アームにより構成し、前記フロントヒッチは、左右方向に向けて配置して後面をトラクタを構成するフロントアクスルブラケットの前面に着脱可能とし、前記フロントヒッチの下部には、前記回動軸を枢支する回動軸ブラケットを突設し、該回動軸にはアームと昇降アームの後端を固設し、前記フロントヒッチの前部には、前記補助アームの後端を枢支する補助アームブラケットを突設し、前記アームと補助アームの前端は、ブレードに枢支し、該アームと補助アームとブレードとフロントヒッチにより平行リンク機構を構成し、前記フロントヒッチの上方へ、上端に前記昇降シリンダの上端を枢支するシリンダブラケットを突設し、前記昇降シリンダの下端は、前記昇降アームの前端に枢支し、前記回動軸は、高さ方向において前記フロントアクスルブラケットと、トラクタ前輪の車軸との間の位置に配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、アームを枠状に形成された強固なフロントヒッチに支持させているため、ドーザ装置全体の強度の向上を図ることができる。
【0012】
また、ドーザ装置を簡易に構成し、部品点数の削減及びドーザ装置のコンパクト化を図ることができる。
【0013】
また、フロントヒッチに各部品を集約して取り付けているため、当該フロントヒッチをフロントアクスルブラケットから着脱することで、ドーザ装置を容易に着脱することができる。
【0014】
また、前記回動軸は、高さ方向において前記フロントアクスルブラケットと、トラクタ前輪の車軸との間の位置に配置し、回動軸の高さをトラクタの重心高さと略一致させることで、ブレードに負荷が加わった際のトラクタ前部(前輪)の浮き上がりを抑制することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係るドーザ装置を具備するトラクタの全体側面図。
図2】第一実施形態に係るドーザ装置を示す前方斜視図。
図3】同じく左側面図。
図4】同じく平面図。
図5】同じく正面図。
図6】第一実施形態に係るドーザ装置の動作態様を示す左側面図。
図7】第二実施形態に係るドーザ装置を示す前方斜視図。
図8】同じく平面図。
図9】他の構成形態に係るドーザ装置を示す前方斜視図。
図10】同じく左側面図。
図11】同じく平面図。
図12】他の構成形態に係るドーザ装置の動作態様を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図中の矢印Fの方向を前方向、矢印Lの方向を左方向と定義して説明を行う。
【0017】
まず、図1を用いて、本発明の実施の一形態に係るドーザ装置12を具備するトラクタ1について説明する。
【0018】
トラクタ1は、エンジン2、フロントアクスルブラケット3、フロントアクスルケース4、フロントアクスル5・5、前輪6・6、ミッションケース7b、リアアクスル8・8、後輪9・9、ボンネット10、運転操作部11及びドーザ装置12等を具備する。
【0019】
トラクタ1の前部にはエンジン2が配置され、当該エンジン2の下部にはフロントアクスルブラケット3が固定される。機体フレームとしてのフロントアクスルブラケット3は、複数の板材を組み合わせて、後方が開放された平面視U字状に形成される。エンジン2は、フロントアクスルブラケット3の対向する左右一対の板材に挟まれた状態で、当該フロントアクスルブラケット3にボルト等により固定される。
【0020】
フロントアクスルブラケット3の前後略中央下部には、フロントアクスルケース4が長手方向を左右方向に向けた状態で固定される。フロントアクスルケース4の左右両端からは左右方向に車軸としてのフロントアクスル5・5がそれぞれ突設され、当該フロントアクスル5・5には前輪6・6がそれぞれ固定される。
【0021】
エンジン2の後端には、長手方向を前後方向に向けたクラッチハウジング7aの前端が固定され、その内部に動力の伝達を断接するためのクラッチが収納される。クラッチハウジング7aの後部にミッションケース7bが固定され、その内部に動力を変速させるためのトランスミッション等が配置される。ミッションケースの後端部近傍からは左右方向にリアアクスル8・8がそれぞれ突設され、当該リアアクスル8・8には後輪9・9がそれぞれ固定される。
【0022】
エンジン2はボンネット10により覆われる。ボンネット10の後方には、トラクタ1を運転するためのハンドル、操作レバー、操作ペダル等が配置される運転操作部11が配置される。
【0023】
トラクタ1(フロントアクスルブラケット3)の前端には、圃場の土を押し出す等の排土作業を行うためのドーザ装置12が設けられる。
【0024】
以下では、図2から図5までを用いて、本発明の第一実施形態に係るドーザ装置12の構成について説明する。
【0025】
ドーザ装置12は、フロントヒッチ20、回動軸30、アーム40・40、ブレード50、補助アーム60・60、シリンダブラケット70・70、昇降シリンダ80及び昇降アーム90等を具備する。
【0026】
フロントヒッチ20は、複数の板材を組み合わせて、上下方向が開放された平面視長方形の枠状に形成される。フロントヒッチ20を構成する板材としては、ドーザ装置12を支持する所定の強度を確保するために、所定の厚み以上の板材が用いられる。フロントヒッチ20は、その長手方向を左右方向に向けて配置される。フロントヒッチ20の後側面の左右中央部分は、フロントアクスルブラケット3の前側面に対して、ボルト等によって着脱可能に固定される。
【0027】
フロントヒッチ20の左右両端下部には、回動軸ブラケット21・21がそれぞれ設けられる。回動軸ブラケット21・21は板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態でフロントヒッチ20の左右側面下部に下方に突出するようにそれぞれ固定される。
【0028】
フロントヒッチ20の前側面には、補助アームブラケット22・22・・・が設けられる。補助アームブラケット22・22・・・は板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。補助アームブラケット22・22・・・は2つで一対になるように配置され、一対の補助アームブラケット22・22はフロントヒッチ20の前側面の左端部近傍に、もう一対の補助アームブラケット22・22はフロントヒッチ20の前側面の右端部近傍に、それぞれ前方に突出するように固定される。
【0029】
フロントヒッチ20の前側面には、切欠部23が形成される。切欠部23は、フロントヒッチ20の前側面の左右中央部分において、当該前側面の下部を所定幅だけ切り欠いて形成される。
【0030】
回動軸30は、その長手方向を左右方向に向けて、回動軸ブラケット21・21間にわたるように配置される。回動軸30の左右両端は、回動軸ブラケット21・21にそれぞれ回動可能に支持される。
【0031】
この際、回動軸30は、その軸線(左側面視(図3)における中心)の上下方向(高さ方向)位置が、フロントアクスルブラケット3の下端とフロントアクスル5の軸線(左側面視における中心)との間(図3における上下幅W内)となるように配置される。
【0032】
アーム40・40は、板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。アーム40・40は、側面視における長手方向(略前後方向)中途部において、下方に向けて突出するように屈曲した形状に形成される。アーム40・40の一端(後端)は、回動軸30の左右両端部近傍にそれぞれ相対回転不能かつ左右に摺動不能となるように固定される。この際、左側に配置されたアーム40の左右方向位置は、左側に配置された一対の補助アームブラケット22・22と、右側に配置されたアーム40の左右方向位置は、右側に配置された一対の補助アームブラケット22・22と、それぞれ同一位置となる。アーム40・40の他端(前端)は、前方に向かって延出される。
【0033】
ブレード50は、排土作業を行うためにその前側面(圃場の土を押す部分)を曲面状に形成される。
【0034】
ブレード50の後側面には、連結部51・51・・・が設けられる。連結部51・51・・・は板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。連結部51・51・・・は2つで一対になるように配置され、一対の連結部51・51はブレード50の後側面の左端部近傍に、もう一対の連結部51・51はブレード50の後側面の右端部近傍に、それぞれ後方に突出するように固定される。この際、左側に配置された一対の連結部51・51の左右方向位置は、左側に配置された一対の補助アームブラケット22・22と、右側に配置された一対の連結部51・51の左右方向位置は、右側に配置された一対の補助アームブラケット22・22と、それぞれ同一位置となる。左右に配置された一対の連結部51・51間には、それぞれアーム40・40の他端(前端)が挿通され、当該アーム40・40は左右方向にわたるピンを介して当該連結部51・51に回動可能に連結される。
【0035】
補助アーム60・60は、略矩形状の板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。補助アーム60・60の一端(後端)は、それぞれ一対の補助アームブラケット22・22間に挿通され、左右方向にわたるピンを介して当該一対の補助アームブラケット22・22に回動可能に支持される。補助アーム60・60の他端(前端)は、それぞれ一対の連結部51・51間に挿通され、左右方向にわたるピンを介して当該一対の連結部51・51に回動可能に連結される。
【0036】
シリンダブラケット70・70は、板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。シリンダブラケット70・70は、側面視における長手方向(略上下方向)中途部において、後方に向けて突出するように屈曲した形状に形成される。シリンダブラケット70・70は、互いに左右方向に所定間隔をおいて並べて配置される。シリンダブラケット70の一端(下端)は、フロントヒッチ20の上部の左右中央近傍に固定される。シリンダブラケット70・70の他端(上端)は、略上方に向かって延出される。
【0037】
シリンダブラケット70・70の上端部には、シリンダ支軸71が設けられる。シリンダ支軸71は、その長手方向を左右方向に向けて、シリンダブラケット70・70間にわたるように配置される。
【0038】
昇降アクチュエータとしての昇降シリンダ80は、ブレード50を昇降させるためのものである。昇降シリンダ80の上端部(シリンダ本体81側の端部)は、シリンダ支軸71に前後回動可能に支持される。このように、昇降シリンダ80は、シリンダ支軸71及びシリンダブラケット70・70を介してフロントヒッチ20に支持される。昇降シリンダ80の下端部(ピストンロッド82側の端部)は、下方に向かって延出される。
【0039】
クランクアームとしての昇降アーム90は、板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。昇降アーム90・90は、互いに左右方向に所定間隔をおいて並べて配置される。昇降アーム90・90の一端(後端)は、回動軸30の左右中央部近傍にそれぞれ相対回転不能かつ左右に摺動不能となるように固定される。この際、昇降アーム90・90の左右方向位置は、フロントヒッチ20に形成された切欠部23と同一位置となる。昇降アーム90・90の他端(前端)は、前方に向かって延出される。昇降アーム90・90の他端(前端)の間には、昇降シリンダ80(ピストンロッド82)の下端部が挿通され、当該ピストンロッド82は左右方向にわたる連結軸91を介して当該昇降アーム90・90に回動可能に連結される。
【0040】
上述の如く、本実施形態においては、ドーザ装置12を簡易に構成し、部品点数の削減及びドーザ装置12のコンパクト化を図ることができる。また、フロントヒッチ20に各部品を集約して取り付けているため、当該フロントヒッチ20をフロントアクスルブラケット3から着脱することで、ドーザ装置12を容易に着脱することができる。また、アーム40・40を枠状に形成された強固なフロントヒッチ20に支持させているため、ドーザ装置12全体の強度の向上を図ることができる。
【0041】
以下では、図2図3及び図6を用いて、ドーザ装置12の動作態様について説明する。
【0042】
ドーザ装置12においては、昇降シリンダ80を任意に伸縮させることにより、ブレード50を昇降させることができる(図6参照)。以下、詳細に説明する。
【0043】
昇降シリンダ80を図3に示す状態から図6に示す状態まで縮めると、昇降アーム90・90が回動軸30を中心として左側面視(図6)時計回りに回動する。昇降アーム90・90、回動軸30及びアーム40・40はそれぞれ相対回転不能であるため、昇降アーム90・90と共に回動軸30及びアーム40・40も左側面視時計回りに回動する。これによって、アーム40・40の前端に連結されたブレード50が上昇する。
【0044】
この際、アーム40、ブレード50(連結部51)、補助アーム60及びフロントヒッチ20(回動軸ブラケット21及び補助アームブラケット22)によって四節リンク機構が構成されているため、ブレード50は所定の姿勢を保ちながら上昇することができる。
【0045】
また、フロントヒッチ20の前側面には切欠部23(図2参照)が形成されているため、昇降アーム90・90が回動軸30を中心として回動しても、当該昇降アーム90・90とフロントヒッチ20とが干渉することはない。
【0046】
また、昇降シリンダ80を図6に示す状態から図3に示す状態まで伸ばすと、昇降アーム90・90が回動軸30を中心として左側面視反時計回りに回動し、当該昇降アーム90・90と共に回動軸30及びアーム40・40も左側面視反時計回りに回動する。これによって、アーム40・40の前端に連結されたブレード50が下降する。
【0047】
以上の如く、本実施形態に係るドーザ装置12は、トラクタ1の前部に取り付けられて排土作業を行うドーザ装置12であって、トラクタ1のフロントアクスルブラケット3(機体フレーム)の前端部に着脱可能に固定されるフロントヒッチ20と、軸線方向をトラクタ1の機体左右方向に向けてフロントヒッチ20に支持される回動軸30と、一端を回動軸30に相対回転不能となるように固定され、他端を排土用のブレード50に連結されるアーム40・40と、を具備するものである。このように、強固なフロントヒッチ20にアーム40・40を支持させることで、ドーザ装置12全体の強度の向上を図ることができる。また、フロントヒッチ20に各部品を集約することで、ドーザ装置12の着脱を容易に行うことができる。
【0048】
また、本実施形態に係るドーザ装置12は、回動軸30に相対回転不能となるように固定され、昇降シリンダ80(昇降アクチュエータ)により回動軸30周りに回動される昇降アーム90・90(クランクアーム)をさらに具備するものである。このように構成することにより、フロントヒッチ20に各部品を集約することで、ドーザ装置12の着脱を容易に行うことができる。
【0049】
また、回動軸30は、高さ方向においてフロントアクスルブラケット3と前輪6・6のフロントアクスル5・5(車軸)との間に配置されるものである。このように構成することにより、回動軸30の高さをトラクタ1の重心の高さと略一致させることができる。これによって、回動軸30がブレード50及びアーム40・40を介して圃場の土等により前方からの負荷を受けた場合、当該負荷をトラクタ1の重心と略同一の高さで受けることになるため、当該負荷がトラクタ1を重心回りに回転させる方向に作用するのを防止することができ、トラクタ1の前部(前輪)の浮き上がりを抑制することができる。
【0050】
なお、回動軸30は上下幅W内に配置するものとしたが、さらにトラクタ1の重心高さと同一の高さとなるように配置することにより、よりトラクタ1の前部(前輪)の浮き上がりを抑制することができる。但し、回動軸30はフロントアクスル5よりも下方に配置する構成とすることも可能であるが、ブレード50上昇時の最低地上高が低くなるため、フロントアクスル5よりも高い位置に配置することが望ましい。また、アーム40、ブレード50(連結部51)、補助アーム60及びフロントヒッチ20(回動軸ブラケット21及び補助アームブラケット22)によって四節リンク機構を構成するものとしたが、これを平行リンク機構になるように構成し、ブレード50が常に一定の姿勢で昇降するように構成することも可能である。
【0051】
以下では、図7及び図8を用いて、本発明の第二実施形態に係るドーザ装置212の構成について説明する。
【0052】
なお、第二実施形態に係るドーザ装置212が第一実施形態に係るドーザ装置12と異なる点は、アーム40・40及びブレード50に代えて、アーム240・240・・・及びブレード250を具備する点である。よって以下では、当該異なる点について説明し、第一実施形態に係るドーザ装置12と同じ構成の部材には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0053】
本実施形態に係るアーム240・240・・・は、第一実施形態に係るアーム40・40と同一形状であるが、回動軸30の左右両端部近傍にそれぞれ2つずつ、合計4つのアーム240・240・・・が設けられる。
【0054】
また、ブレード250の後側面には、アーム240・240・・・と連結するためのアーム連結部251・251・・・及び補助アーム60・60と連結するための補助アーム連結部252・252・・・がそれぞれ設けられる。
【0055】
このように、アーム240・240・・・の個数(4つ)を、第一実施形態(2つ)よりも増やすことにより、よりドーザ装置212の強度の向上を図ることができる。
【0056】
なお、アーム240・240・・・の個数は2つ又は4つに限るものではない。
【0057】
以下では、図9から図11までを用いて、本発明の他の構成形態に係るドーザ装置312の構成について説明する。
【0058】
なお、他の構成形態に係るドーザ装置312が第一実施形態に係るドーザ装置12と異なる点は、フロントヒッチ20、シリンダブラケット70・70、昇降シリンダ80及び昇降アーム90・90に代えて、フロントヒッチ320、左シリンダブラケット370L、右シリンダブラケット370R、左昇降シリンダ380L、右昇降シリンダ380R、左昇降アーム390L・390L及び右昇降アーム390R・390Rを具備する点である。よって以下では、当該異なる点について説明し、第一実施形態に係るドーザ装置12と同じ構成の部材には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0059】
本実施形態に係るフロントヒッチ320には、第一実施形態に係るフロントヒッチ20に形成されたような切欠部23は形成されない。
【0060】
左シリンダブラケット370Lは、後述する左昇降シリンダ380Lを支持するものである。左シリンダブラケット370Lは、固定部371L、延出部372L及び支持部373Lを具備する。
【0061】
固定部371Lは、長方形状の板材である。固定部371Lは、フロンントアクスルブラケット3の左側面の後端部近傍にボルト等により固定される。延出部372Lは、略直方体状の部材である。延出部372Lの一端は、固定部371Lの左側面に溶接等により固定される。延出部372Lの他端は、左方に向かって延出される。支持部373Lは、長方形状の板材である。支持部373Lは、その板面を左右方向に向けて配置される。支持部373Lの下端部は、延出部372Lの他端に溶接等により固定される。支持部373Lの上端は、上方に向かって延出される。
【0062】
右シリンダブラケット370Rは、後述する右昇降シリンダ380Rを支持するものである。右シリンダブラケット370Rは、固定部371R、延出部372R及び支持部373Rを具備する。
【0063】
なお、右シリンダブラケット370Rの構成は、左シリンダブラケット370Lの構成と左右対称であるため、説明を省略する。
【0064】
昇降アクチュエータとしての左昇降シリンダ380Lは、ブレード50を昇降させるためのものである。左昇降シリンダ380Lの後端部(シリンダ本体381L側の端部)は、左シリンダブラケット370L(支持部373L)の上端部にシリンダ支軸374Lを介して上下回動可能に支持される。左昇降シリンダ380Lの前端部(ピストンロッド382L側の端部)は、前方に向かって延出される。
【0065】
昇降アクチュエータとしての右昇降シリンダ380Rは、ブレード50を昇降させるためのものである。右昇降シリンダ380Rの後端部(シリンダ本体381R側の端部)は、右シリンダブラケット370R(支持部373R)の上端部にシリンダ支軸374Rを介して上下回動可能に支持される。右昇降シリンダ380Rの前端部(ピストンロッド382R側の端部)は、前方に向かって延出される。
【0066】
クランクアームとしての左昇降アーム390Lは、板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。左昇降アーム390L・390Lは、互いに左右方向に所定間隔をおいて並べて配置される。左昇降アーム390L・390Lの一端(下端)は、回動軸30の左端部近傍にそれぞれ相対回転不能かつ左右に摺動不能となるように固定される。左昇降アーム390L・390Lの他端(上端)は、上方に向かって延出される。左昇降アーム390L・390Lの他端(上端)の間には、左昇降シリンダ380L(ピストンロッド382L)の前端部が挿通され、当該ピストンロッド382Lは左右方向にわたる連結軸391Lを介して当該左昇降アーム390L・390Lに回動可能に連結される。こうして、左昇降シリンダ380Lは前後方向に略水平に配設される。
【0067】
クランクアームとしての右昇降アーム390Rは、板材により形成され、その板面を左右方向に向けた状態で配置される。右昇降アーム390R・390Rは、互いに左右方向に所定間隔をおいて並べて配置される。右昇降アーム390R・390Rの一端(下端)は、回動軸30の右端部近傍にそれぞれ相対回転不能かつ左右に摺動不能となるように固定される。右昇降アーム390R・390Rの他端(上端)は、上方に向かって延出される。右昇降アーム390R・390Rの他端(上端)の間には、右昇降シリンダ380R(ピストンロッド382R)の前端部が挿通され、当該ピストンロッド382Rは左右方向にわたる連結軸391Rを介して当該右昇降アーム390R・390Rに回動可能に連結される。こうして、右昇降シリンダ380Rは前後方向に略水平に配設される。
【0068】
以下では、図10及び図12を用いて、ドーザ装置312の動作態様について説明する。
【0069】
ドーザ装置312においては、左昇降シリンダ380L及び右昇降シリンダ380Rを任意に伸縮させることにより、ブレード50を昇降させることができる(図12参照)。以下、詳細に説明する。
【0070】
左昇降シリンダ380L及び右昇降シリンダ380Rを図10に示す状態から図12に示す状態まで縮めると、左昇降アーム390L及び右昇降アーム390Rが回動軸30を中心として左側面視(図12)時計回りに回動する。左昇降アーム390L及び右昇降アーム390R、回動軸30並びにアーム40・40はそれぞれ相対回転不能であるため、左昇降アーム390L及び右昇降アーム390Rと共に回動軸30並びにアーム40・40も左側面視時計回りに回動する。これによって、アーム40・40の前端に連結されたブレード50が上昇する。
【0071】
また、左昇降シリンダ380L及び右昇降シリンダ380Rを図12に示す状態から図10に示す状態まで伸ばすと、左昇降アーム390L及び右昇降アーム390Rが回動軸30を中心として左側面視反時計回りに回動し、当該左昇降アーム390L及び右昇降アーム390Rと共に回動軸30及びアーム40・40も左側面視反時計回りに回動する。これによって、アーム40・40の前端に連結されたブレード50が下降する。そして、排土作業の時に、ブレード50に、圃場の土等から当該ブレード50を上昇方向に回動させる力が加わった場合、左右の昇降アーム390L・390Rが後方へ回動しようとし、その力は左右の昇降シリンダ380L・380Rを介して左右のシリンダブラケット370L・370Rで受けることになるため、第一・二実施形態よりもドーザ装置312の強度を向上させることができる。
【0072】
なお、上述の左シリンダブラケット370L及び右シリンダブラケット370Rとしては、フロントローダをトラクタ1に取り付けるためのブラケット等を兼用することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 トラクタ
3 フロントアクスルブラケット(機体フレーム)
5 フロントアクスル(車軸)
6 前輪
12 ドーザ装置
20 フロントヒッチ
30 回動軸
40 アーム
50 ブレード
60 補助アーム
70 シリンダブラケット
80 昇降シリンダ
90 昇降アーム(クランクアーム)
図1
図2
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図10
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図12