特許第5781907号(P5781907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781907
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】分割コアの巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   H02K15/095
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-265084(P2011-265084)
(22)【出願日】2011年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-118767(P2013-118767A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】日特エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 功治
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−125143(JP,A)
【文献】 特開2002−034212(JP,A)
【文献】 特開2010−246354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻終わり用線材収納溝(12e)を有する一方の分割コア(11)と巻初め用線材収納溝(12d)を有する他方の分割コア(11)から成り組み立てられた状態で隣接する一対の分割コアを準備する準備工程と、
前記一対の分割コアの巻線が成される箇所より前記巻終わり用線材収納溝(12e)及び前記巻初め用線材収納溝(12d)を内側にして放射状をなすように前記一対の分割コアをコアホルダ(21)に配設する配設工程と、
前記一方の分割コア(11)の軸線に一致又は平行にさせたスピンドル軸(29)を前記コアホルダ(21)とともに回転させてノズル(41)から供給される線材(17)を前記一方の分割コア(11)に巻線する第一コイル形成工程と、
前記スピンドル軸(29)に直交するインデックス軸(C)を中心に前記コアホルダ(21)を回転させて他方の分割コア(11)の軸線を前記スピンドル軸(29)に一致又は平行にさせるインデックス工程と、
前記スピンドル軸(29)を前記コアホルダ(21)とともに回転させてノズル(41)から供給される線材(17)を前記他方の分割コア(11)に巻線する第二コイル形成工程と、を含む分割コアの巻線方法であって、
配設工程において、前記一方の分割コア(11)の巻終わり用線材収納溝(12e)と前記他方の分割コア(11)の巻初め用線材収納溝(12d)が前記インデックス軸(C)方向に延びかつ前記巻終わり用線材収納溝(12e)と前記巻初め用線材収納溝(12d)との距離が組み立てられた状態で前記一対の分割コア(11)間における渡り線(16a)の長さになるように前記一対の分割コア(11,11)を前記コアホルダ(21)に配設し、
第一コイル形成工程の終了時において、前記インデックス軸(C)に前記ノズル(41)が平行な状態で前記スピンドル軸(29)の回転を停止し、
インデックス工程と次の第二コイル形成工程の間に、前記一方の分割コア(11)に対して前記ノズル(41)を移動させて前記ノズル(41)から繰出される前記線材(17)を前記一方の分割コア(11)の前記巻終わり用線材収納溝(12e)に収容させる線材引出し動作と、
前記他方の分割コア(11)に対して前記ノズル(41)を移動させて前記ノズル(41)から繰出される前記線材(17)を前記他方の分割コア(11)の前記巻初め用線材収納溝(12d)に収容させる線材収容動作の双方を行い、
その後、前記スピンドル軸(29)を再び回転させるとともに前記他方の分割コア(11)の巻初め用線材収納溝(12d)に収容させた前記線材(17)を引出して次の第二コイル形成工程に備える
ことを特徴とする分割コアの巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータコアを構成して互いに隣接する一対の分割コアに、線材を連続して巻き付ける分割コアの巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のステータは、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアを備える。そして、各ティースには線材を巻回する巻線が行われ、その巻回された線材からなるステータコイルが各スロットに納められる。このようなステータの製造方法として、ステータコアをティース毎に円周方向に分割して複数の分割コアとし、その複数の分割コアに巻線をそれぞれ行う方法が知られている。この方法では、あらかじめ一体に形成されたステータコアの内周側に突出した、ティースに巻線する場合に比べ、巻線が容易で、ティースに巻回する巻数も増加させることができるとしている。そして、この方法では、その巻線が成された分割コアをその後に環状に配置することによりステータを得るとしている。
【0003】
そして、このような分割コアへの巻線方法として、図15及び図16に示すように、スピンドル軸2の軸方向に少なくとも一方が移動可能に一対の分割コア3,4を設け、図15に示すように、その一方の分割コア3を他方の分割コア4よりスピンドル軸2から離れて位置させ、そのスピンドル軸2を回転させてその一方の分割コア3に線材5を巻回し、その一方の分割コア3への巻線終了後に、図16に示すように、他方の分割コア4を一方の分割コア3よりスピンドル軸2から離れて位置するように移動させ、その後スピンドル軸2を回転させてその他方の分割コア4に線材5を巻回する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この巻線方法にあっては、隣接する一対の分割コア3,4の距離を狭くして装置の小型化を計るとともに、回転速度を上げて、巻線時間を短くできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−94593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の巻線方法にあっては、その一方又は他方の分割コア3,4をその他方又は一方の分割コア4,3よりスピンドル軸2から離れて位置させ、その離れた側の分割コア3,4に対して巻線をするので、その一方及び他方の分割コア3,4の双方に巻線が完了した図16に示す場合において、両分割コア3,4の間に掛け渡される渡り線6は、少なくともいずれか一方がスピンドル軸2から離れた状態の両者3,4の間に掛け渡されたものとなる。このため、その一対の分割コア間3,4に掛け渡される渡り線6の長さを、そのいずれか一方の分割コア3がスピンドル軸2から離れた状態の両者の間に掛け渡された長さよりも短くできずに、その渡り線6が比較的長くなってしまうという、未だ解決すべき課題が残存していた。この渡り線6が必要以上に長く成った場合には、図17に示すように、その後その一対の分割コア3,4を環状に配置した場合に弛みを生じさせ、得られたステータの外形を大型化させる問題を生じさせる。
【0006】
また、このような分割コア3,4にあっては、図15及び図16に示すように、それらのティースに巻回される線材5をそのティースに案内する巻初め用線材収納溝4aと、そのティースに巻回された線材5をそのティースから外部に引き出すための巻終わり用線材収納溝3aが形成される。そして、このような線材収納溝3a,4aに線材5を収容させることを、作業員の手を借りずに行うことができれば便利である。
【0007】
本発明の目的は、作業員の手を借りずに一対の分割コアに線材を巻回して、両者の間に形成される渡り線を所望の長さにし得る分割コアの巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の分割コアの巻線方法は、巻終わり用線材収納溝を有する一方の分割コアと巻初め用線材収納溝を有する他方の分割コアから成り組み立てられた状態で隣接する一対の分割コアを準備する準備工程と、一対の分割コアの巻線が成される箇所より巻終わり用線材収納溝及び巻初め用線材収納溝を内側にして放射状をなすように一対の分割コアをコアホルダに配設する配設工程と、インデックス軸に直交するスピンドル軸に一方の分割コアの軸線を一致又は平行にさせた後スピンドル軸をコアホルダと共に回転させてノズルから供給される線材を一方の分割コアに巻線する第一コイル形成工程と、インデックス軸を中心にコアホルダを回転させて他方の分割コアの軸線をスピンドル軸に一致又は平行にさせるインデックス工程と、スピンドル軸をコアホルダと共に回転させてノズルから供給される線材を他方の分割コアに巻線する第二コイル形成工程と、を含む分割コアの巻線方法である。
【0009】
その特徴ある点は、配設工程において、一方の分割コアの巻終わり用線材収納溝と他方の分割コアの巻初め用線材収納溝がインデックス軸方向に延びかつ巻終わり用線材収納溝と巻初め用線材収納溝との距離が組み立てられた状態で一対の分割コア間における渡り線の長さになるように一対の分割コアをコアホルダに配設するところにある。
【0010】
この分割コアの巻線方法では、第一コイル形成工程の終了時において、インデックス軸にノズルが平行な状態でスピンドル軸の回転を停止し、インデックス工程と次の第二コイル形成工程の間に、一方の分割コアに対してノズルを移動させてノズルから繰出される線材を一方の分割コアの巻終わり用線材収納溝に収容させる線材引出し動作と、他方の分割コアに対してノズルを移動させてノズルから繰出される線材を他方の分割コアの巻初め用線材収納溝に収容させる線材収容動作の双方を行い、その後、スピンドル軸を再び回転させるとともに他方の分割コアの巻初め用線材収納溝に収容させた線材を引出して次の第二コイル形成工程に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の分割コアの巻線方法及びその巻線装置では、一方の分割コアの巻終わり用線材収納溝と他方の分割コアの巻初め用線材収納溝との距離が組み立てられた状態で隣接する分割コア間における渡り線の長さになるようにコアホルダに配設するので、その一方及び他方の分割コアの双方に巻線が完了した状態で、両分割コアの間に掛け渡される渡り線は、組み立てられた状態で隣接する分割コア間における渡り線の長さとなる。このため、この渡り線が必要以上に長く成るようなことは回避され、その後その一対の分割コアを環状に配置して得られたステータの外形が大型化するようなことはない。
【0014】
また、ノズルをコアホルダに対して3次元方向に移動可能に構成されたノズル移動機構を備えるので、第一コイル形成工程と次の第二コイル形成工程の間に、一方の分割コアに対してノズルを移動させてノズルから繰出される線材を一方の分割コアの巻終わり用線材収納溝に収容させる線材引出し動作と、他方の分割コアに対してノズルを移動させてノズルから繰出される線材を他方の分割コアの巻初め用線材収納溝に収容させる線材収容動作の双方を行うことにより、一対の分割コアの巻線作業を作業員の手を借りずに一貫して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明実施形態の一方の分割コアへの巻線を開始する状態を示す斜視図である。
図2】その一方の分割コアへの巻線が完了した状態を示すコアホルダの斜視図である。
図3】そのコアホルダを回転させた状態を示す図2に対応する斜視図である。
図4】そのノズルを移動させて線材引出し動作と線材収容動作が行われた状態を示すノズル側からみた斜視図である。
図5】その他方の分割コアへの巻線を開始する状態を示す図2に対応する斜視図である。
図6】その他方の分割コアへの巻線が完了して線材を切断する状態を示す図4に対応する斜視図である。
図7】そのコアホルダを回転させる直前の状態を示す図2のA−A線断面図である。
図8】そのコアホルダを回転させた後の状態を示す図3のB−B線断面図である。
図9】その線材の端部を保持させる状態を示す正面図である。
図10】その一方の分割コアへの巻線が完了してコアホルダを回転させた後の状態を示す図9に対応する正面図である。
図11】その一対の分割コアに巻線が完了した状態を示す図1に対応する斜視図である。
図12】そのステータの分割コアを示す斜視図である。
図13】そのステータの中心軸に直交する平面における断面図である。
図14】そのステータにおける渡り線の状態を示す図である。
図15】従来の方法により一方の分割コアに巻線が成された状態を示す斜視図である。
図16】その従来の方法により他方の分割コアに更に巻線が成された状態を示す図15に対応する斜視図である。
図17】従来の方法により得られたステータにおける渡り線の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図13に、本発明により得られる分割コア式ステータ10の断面を示す。このステータ10は、ティース11a毎に円周方向に分割された複数の分割コア11から成るステータコアと、その分割コア11に巻線が成されたコイル16とを備える。具体的に、この分割コア11は、鉄心部11bと巻線部であるティース部11a及びこれらと一体の絶縁体であるインシュレータ12からなる。この実施の形態における鉄心部11bとティース部11aは、磁性鋼板をプレス抜きすることにより得られた一定厚さの金属板を、所定の厚さとなるように積層することにより構成された積層型のものを示す。
【0018】
図12に示すように、このインシュレータ12は絶縁性樹脂からなり、このインシュレータ12は、ティース11aが挿入される筒状胴部12aと、この筒状胴部12aにおける鉄心部11b側の端部に一体形成された外周側フランジ12bと、筒状胴部12aにおけるステータ10内周側の端部に一体形成された内周側フランジ12cとを備える。外周側及び内周側フランジ12b,12cは、筒状胴部12aの中心軸線に対して直交する方向に沿って外側に延びた矩形枠であり、外周側フランジ12bが内周側フランジ12cに比べて広幅とされる。そして、外周側フランジ12bには、コイル16(図13)の巻初め及び巻終わりの線材17(図11)を収納する収納溝12d及び12eがステータ10の軸線に平行に形成される。
【0019】
また、インシュレータ12の外周側フランジ12bには、分割コア11の鉄心部11bにおけるステータ10の中心軸線方向の両側の端面を覆う一対の円弧状板部材14,14が一体的に形成される。円弧状板部材14,14における分割コア11の連結方向(ステータ10の円周方向)の両端面は分割コア11における鉄心部11bの両端面と面一とされ、分割コア11を円環状に連結した図13に示す状態において、隣接する分割コア11の端面にそれぞれ接合する接合面になるように構成される。
【0020】
この一対の円弧状板部材14,14を有するこの実施の形態におけるインシュレータ12は、分割コア11における鉄心部11bと巻線部であるティース部11aを樹脂成形型に入れて絶縁性樹脂を注入するアウトサート成形により形成されたものであり、このインシュレータ12における筒状胴部12aに線材17(図11)が巻回されてコイル16(図13)が形成される。そして、本発明の巻線方法及びその巻線装置は、このような分割コア11に巻線するのに適したものであり、この実施の形態における線材17は、表面に絶縁皮膜が形成された断面円形の丸線である場合を示す。
【0021】
図10及び図11に示すように、本発明の分割コアの巻線装置20は線材収納溝12d及び12eがそれぞれ形成された一対の分割コア11,11をインデックス軸Cを中心として放射状に所定角度間隔に配設可能なコアホルダ21を備える。図7及び図8に示すように、このコアホルダ21は、中間部材22とその両側に設けられた方形板材23,24とを備え、それぞれの方形板材23,24の中心を貫いてインデックス軸Cが形成される。このコアホルダ21は、一対の分割コア11,11のそれぞれのティース11aを外側にし、鉄心部11bの積層方向をインデックス軸Cと平行にし、かつティース11aの軸心がインデックス軸Cで直交する状態で配設可能に構成される。そして、中間部材22には、そのような一対の分割コア11,11の鉄心部11bが着座するコア保持部22a,22bが形成される。
【0022】
コア保持部22a,22bに着座する一対の分割コア11,11は、それぞれティース11aを外側にして、その巻線が成される箇所より巻終わり用線材収納溝12e及び巻初め用線材収納溝12dを内側にして放射状をなすように配設されるので、その配設位置によって、一方の分割コア11における巻終わり用線材収納溝12eと他方の分割コア11における巻初め用線材収納溝12dの距離を調整することが可能になる。このため、そのコア保持部22a,22bは、そこに着座する一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eと他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dとの距離が組み立てられた状態で隣接する分割コア11間における渡り線16a(図14)の長さになるように形成される。そして、隣接する一対のコア保持部22a,22bの間の中間部材22には、一対の分割コア11,11の鉄心部11bの連結方向(ステータ10の円周方向)における一方の端面を覆う止め具25が小ネジ25aで取付けられる。
【0023】
一方、一対の分割コア11,11の鉄心部11bにおける他方の端面側に位置する一対の方形板材23,24の角部23c,23dには、その角部23c,23dを中心として鉄心保持レバー26,27がそれぞれ回転可能に支持される。その保持レバー26,27には、回転中心23c,23dを挟んで、覆い部26a,27aと操作部26b,27bが形成される。保持レバー26,27の一端に形成された覆い部26a,27aは、鉄心部11bの他方の端面に対向するように形成される。また、その保持レバー26,27の他端に形成された操作部26b,27bの間にはそれらの間の間隔を拡大させるように付勢するコイルスプリング28が介装される。
【0024】
一対の保持レバー26,27における操作部26b,27bの間の間隔を拡大させようとするスプリング28の付勢力により、一対の保持レバー26,27の覆い部26a,27aの間の間隔は狭められる方向に付勢される。この覆い部26a,27aに加わる付勢力により、鉄心部11bをコア保持部22a,22bに嵌合させた一対の分割コア11,11は、その鉄心部11bが止め具25と覆い部26a,27aにより挟んだ状態で支持されることになる。これにより一対の分割コア11,11は、一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eと他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dがインデックス軸C方向に延び、かつ巻終わり用線材収納溝12eと巻初め用線材収納溝12dとの距離が組み立てられた状態で隣接する分割コア11間における渡り線16aの長さになるように、コアホルダ21に着脱可能に固定される。
【0025】
図11に示すように、巻線装置20は、コアホルダ21のインデックス軸Cに直交する中心軸Tを中心に回転可能に設けられたスピンドル軸29を備える。スピンドル軸29は基台20aに立設されたスピンドル支持台30に水平方向に延びて設けられ、そのスピンドル軸29の先端にコアホルダ21が連結部材31を介して回転可能に支持される。この連結部材31は、スピンドル軸29の先端に直交して設けられた直交部31aと、その直交部31aの両側にスピンドル軸29に平行に設けられた平行部31b,31cを備える。コアホルダ21は、インデックス軸Cを直交部31aと平行にし、かつそのインデックス軸Cがスピンドル軸29に直交するようにその一対の平行部31b,31cの間に挿入され、そのインデックス軸Cを中心にそのコアホルダ21が回転可能にその一対の平行部31b,31cに支持される。
【0026】
図7及び図8に示すように、巻線装置20には、一対の分割コア11,11の内の一方又は他方の分割コア11の軸芯をスピンドル軸29の中心軸Tに一致させた状態でコアホルダ21をスピンドル軸29に固定可能なホルダ固定機構35を備える。この実施の形態におけるホルダ固定機構35は、連結部材31における一方の平行部31bに設けられたスライド部材36と、そのスライド部材36をコアホルダ21の方形板材23に向かって移動するように付勢するコイルスプリング37と、方形板材23に形成された凹溝23aとを備える。スライド部材36はスピンドル軸29の中心軸Tに平行に移動可能に一方の平行部31bに設けられ、凹溝23aは、分割コア11の軸芯をスピンドル軸29の中心軸Tに一致させた状態でスライド部材36に対向するように形成される。そして、図8に示すように、その凹溝23aにスライド部材36がスプリング37の付勢力により進入すると、平行部31b,31cに対するコアホルダ21の回転を禁止し、図7に示すように、スプリング37の付勢力に抗して逆方向にスライド部材36が移動して、凹溝23aからそのスライド部材36が離脱すると、連結部材31である平行部31b,31cに対するコアホルダ21の自由な回転が許容されるように構成される。ここで、図7及び図8における符号36aは、スライド部材36を移動操作するための操作ピン36aを示す。
【0027】
図10及び図11に示すように、他方の平行部31cには、線材17の先端を保持する線材保持治具(保持手段)38が設けられる。図11に示すように、この線材保持治具38は、棒状で、その端面に線材17が挿入される孔38aが軸方向に形成されるとともに、その孔38aから線材17が引出される切り欠き38bが形成される。従って、線材17の先端は、図9に示すように孔38aに挿入された後に、図1に示すように折曲げられてその切り欠き38bに挿入され、これによりその後の連結部材31の回転動作によっても外れないように構成される。
【0028】
図1及び図11に示すように、巻線装置20は、そのスピンドル軸29を回転させて、そのスピンドル軸29に軸心が一致する一方の又は他方の分割コア11の軸線回りにコアホルダ21を回転させるスピンドル回転手段39を備える。図におけるスピンドル回転手段39は、スピンドル支持台30に設けられたスピンドルモータ39であって、このスピンドル軸29はこのスピンドルモータ39の回転軸に直接連結されて回転制御される。そして、この巻線装置20は、コアホルダ21とともに回転する一方又は他方の分割コア11に巻線される線材17を繰出すノズル41と、そのノズル41をコアホルダ21に対して3次元方向に移動可能に構成されたノズル移動機構42とを備える。
【0029】
この実施の形態におけるノズル41はスピンドル軸29に直交して水平方向に真っ直ぐに延びて移動台43に設けられる。図10に示すように、移動台43は、ノズル移動機構42の一部を構成して、スピンドル軸29に対して3軸方向に移動するものである。ここで、互いに直交するX,Y,Zの3軸を設定し、スピンドル軸29方向をY軸とし、それに直交するノズル41方向をX軸とし、鉛直方向をZ軸としてノズル移動機構42について説明する。すると、ノズル移動機構42は、この移動台43と、この移動台43を3軸方向に移動させるためのX軸、Y軸、及びZ軸方向伸縮アクチュエータ44〜46の組み合わせにより構成される。これらの伸縮アクチュエータ44〜46は、サーボモータ44a〜46aによって回動駆動されるボールネジ44b〜46bと、このボールネジ44b〜46bに螺合して平行移動する従動子44c〜46c等によって構成される。
【0030】
この実施の形態では、移動台43をX軸方向に移動可能にX軸方向伸縮アクチュエータ44の従動子44cに取付け、そのX軸方向伸縮アクチュエータ44をZ軸方向に移動可能にZ方向伸縮アクチュエータ46の従動子46cに取付け、そのZ軸方向伸縮アクチュエータ46をY軸方向に移動可能にY軸方向伸縮アクチュエータ45の従動子45cに取付け、そのY軸方向伸縮アクチュエータ45が基台20aに取付けられる。それらの各伸縮アクチュエータ44〜46におけるサーボモータ44a〜46aは、スピンドル軸29の回転を制御する図示しないコントローラの制御出力に接続される。そして、このノズル移動機構42は、図示しないコントローラからの指令に基づいて移動台43に設けられたノズル41を、その移動台43と共にスピンドル軸29に対して3軸方向に任意に移動可能に構成される。
【0031】
線材17はリール18に巻回され、このリール18が線材17の供給源となる。このリール18はスピンドル支持台30から離れた別な場所の例えば基台20aの上等に置かれ、その基台20aには、供給源であるリール18から繰出された線材17を真直ぐに伸ばす癖取り装置51が設けられる。この癖取り装置51はリール18から繰出された線材17を八の字状に繰り回す一対の繰り回しプーリ52,53と、その一対の繰り回しプーリ52,53を通過した線材17をS字状に旋回させる固定プーリ54と可動プーリ56とを備える。固定プーリ54と可動プーリ56を旋回した線材17が移動台43方向に向かうように構成され、可動プーリ56はコイルスプリング57により移動台43より遠ざかる方向に付勢される。コイルスプリング57は、その可動プーリ56を付勢することにより移動台43が移動する際に線材17が弛むようなことを防止するものである。
【0032】
図10及び図11に示すように、移動台43には通過板61が設けられ、通過板61には癖取り装置51を介してリール18から供給された線材17が通過する孔が形成さる。この図示しない孔を介して通過板61を通過した線材17がその移動台43に設けられたノズル41に挿通される。また、この通過板61を通過した線材17を把持可能なチャック装置62がその通過板61に設けられる。
【0033】
また、基台20aには、ノズル41から繰出された線材17を切断可能に構成された切断装置63が設けられる。この切断装置63は、可動板64aをZ軸方向に往復移動させるスライド型エアシリンダ64と、その可動板64aにニッパ歯66aを上方に向けて設けられ、エア圧により線材17をそのニッパ歯66aにより挟んで切断可能なエアカッタ装置66とを有する。
【0034】
また、基台20aには、ホルダ固定機構35(図7及び図8)によるコアホルダ21のスピンドル軸29への固定を解除する固定機構操作装置71が設けられる。固定機構操作装置71は、出没軸72aをZ軸方向に出没させるエアシリンダ72と、その出没軸72aに設けられた操作板73とを有し、エアシリンダ72はインデックス軸CをX軸方向に向けた状態で、スライド部材36(図7及び図8)の操作ピン36a下方の基台20aに設けられる。図1図3に示すように、操作板73は中心軸Tに平行に設けられ、その上縁はスピンドル支持台30に向かって基台20aに近づくように傾斜して形成される。図10に示すように、このエアシリンダ72は、その出没軸72aが突出した状態で操作板73の上縁が操作ピン36aに接触可能に構成される。そして、図3に示すように、操作ピン36aに上縁が接触した操作板73を更に上昇させると、上縁の傾斜によりコイルスプリング37の付勢力に抗してスライド部材36がスピンドル支持台30方向に向かって移動し、図7に示すように、凹溝23aからそのスライド部材36を離脱させるように構成される。
【0035】
図7及び図8に示すように、更に基台20aには、コアホルダ21のスピンドル軸29への固定が解除された状態でインデックス軸Cを中心にそのコアホルダ21を回転させるホルダ回転装置76が設けられる。ホルダ回転装置76は、サーボモータ77bの回転量に応じて出没軸77aをZ軸方向に出没させるZ軸方向出没アクチュエータ77と、その出没アクチュエータ77をY軸方向に移動させるY軸方向移動アクチュエータ78とを有する。Y軸方向移動アクチュエータ78は、サーボモータ78aによって回動駆動されるボールネジ78bと、このボールネジ78bに螺合して平行移動する従動子78cを有し、この従動子78cにZ軸方向出没アクチュエータ77が取付けられる。Z軸方向出没アクチュエータ77の出没軸77aには、コアホルダ21における保持レバー27の操作部27bに接触し又は引っ掛けられるフック部材79が設けられる。そして、このホルダ回転装置76は、Z軸方向出没アクチュエータ77が出没軸77aを出没させる際に、Y軸方向移動アクチュエータ78がその出没アクチュエータ77をY軸方向に移動させ、これにより、インデックス軸Cを中心としてそのフック部材79を、図8の実線矢印又は図7の一点鎖線矢印で示すように、円弧状に移動させるように構成される。
【0036】
次に、このような巻線装置を用いた本発明における分割コアの巻線方法について説明する。
【0037】
この巻線方法は、一対の分割コアを準備する準備工程と、その一対の分割コアの巻線が成される箇所より巻終わり用線材収納溝12e及び巻初め用線材収納溝12dを内側にして放射状をなすようにコアホルダ21に配設する配設工程と、そのインデックス軸Cに直交するスピンドル軸29に一方の分割コア11の軸線を一致させた後にスピンドル軸29をコアホルダ21とともに回転させてノズル41から供給される線材17をその一方の分割コア11に巻線する第一コイル形成工程と、そのインデックス軸Cを中心にコアホルダ21を回転させて他方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に一致させるインデックス工程と、スピンドル軸29をコアホルダ21とともに回転させてノズル41から供給される線材17を他方の分割コア11に巻線する第二コイル形成工程とを含む方法である。以下に各工程を詳説するけれども、以下に示す説明では、インデックス工程と次の第二コイル形成工程の間に、線材17を一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eに収容させる線材引出し動作と、その線材17を他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dに収容させる線材収容動作の双方が行われる場合を示す。
【0038】
<準備工程>
この準備工程では、先ず、巻終わり用線材収納溝12eを有する一方の分割コア11と巻初め用線材収納溝12dを有する他方の分割コア11から成り組み立てられた状態で隣接する一対の分割コアを準備する。組み立てられた状態で隣接する一対の分割コアに限定するのは、組み立てられた状態でそのように隣接する一対の分割コア間に存在することになる渡り線16aを所望の長さにするためである。
【0039】
<配設工程>
次の配設工程では、巻初め及び巻終わり用線材収納溝12d,12eがそれぞれ形成された一対の分割コア11を、巻線が成される箇所、即ちティース11aより巻終わり用線材収納溝12e及び巻初め用線材収納溝12dを内側にして、それらの軸芯がコアホルダ21のインデックス軸Cを中心として放射状になるように所定角度間隔にコアホルダ21に配設する。この実施の形態では、この一対の分割コア11,11の互いの軸心を直交させた状態でコアホルダ21に配設する場合を示す。
【0040】
一対の分割コア11,11の配設は、図7に示すコアホルダ21における保持レバー26,27の操作部26b,27bを挟むようにして、スプリング28の付勢力に抗してそれら操作部26b,27dの間隔を狭め、これにより、一対の保持レバー26,27の覆い部26a,27aの間の間隔を押し広げる。この状態で、一対の分割コア11,11の鉄心部11bをコア保持部22a,22bに嵌合させ、その後、スプリング28の付勢力により、一対の保持レバー26,27の覆い部26a,27aの間の間隔を狭め、この覆い部26a,27aと止め具25により各分割コア11の鉄心部11bを両側から挟む。これにより、一対の分割コア11をコアホルダ21に固定する。このとき、図1に示すように、一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eと他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dがインデックス軸C方向に延び、かつその巻終わり用線材収納溝12eと巻初め用線材収納溝12dとの距離が組み立てられた状態で隣接する分割コア11間における渡り線16a(図11)の長さになるように、一対の分割コア11を隣接させた状態でコアホルダ21に取付ける。
【0041】
次に、インデックス軸Cに直交するスピンドル軸29に一対の分割コア11の内の巻線しようとする一方の分割コア11の軸線を一致させる。これはホルダ固定機構35により行われる。具体的には、図7に示すように、スプリング37の付勢力に抗して逆方向にスライド部材36を移動させて、方形板材23に形成された凹溝23aからそのスライド部材36を離脱させた状態でコアホルダ21を回転させ、一対の分割コア11の内の巻線しようとする一方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に一致させる。そして、その後、方形板材23に形成された凹溝23aにスライド部材36をスプリング37の付勢力により進入させることにより、コアホルダ21の回転を禁止する。このようにして、巻線しようとする一方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に一致させて固定する。
【0042】
その後、線材17の端部を線材保持治具38に引っ掛けて、巻線の準備を完了させる。具体的には、図9に示すように、スピンドル軸29を回転させてコアホルダ21のインデックス軸Cを水平にし、線材保持治具38をノズル41に対向させる。そして、ノズル移動機構42によりノズル42を移動させて、そのノズル41から繰出される線材17の端部を線材保持治具38の孔38aに挿入させる。このとき、チャック装置62により線材17を把持して、線材17がノズル41から繰出され又は抜け出されることを防止しておく。その後、スピンドル軸29を再び回転させて、図1に示すように線材17の先端が孔38aに挿入された線材保持治具38を起立させ、その線材17の先端を折曲げて切り欠き38bに挿入し、これによりその後の連結部材31の回転動作によっても線材17が線材保持治具38から外れないようにする。
【0043】
その後、チャック装置62(図11)による線材17の把持を解除して、線材17のノズル41からの繰出しを可能にする。そして、図1に示すように、ノズル移動機構42により、その一方の分割コア11に対してノズル41を移動させて、そのノズル41から繰出される線材17をその一方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dに収容させる。これにより巻線の準備を完了させる。
【0044】
<第1コイル形成工程>
この工程では、スピンドル軸29を回転させてノズル41から供給される線材17を一方の分割コア11に巻線してコイル16を形成する。このスピンドル軸29の回転は、スピンドル回転手段であるスピンドルモータ39により行われ、このスピンドル軸29の回転により連結部材31を介して連結されたコアホルダ21が、スピンドル軸29の中心軸Tに中心軸が一致する一方の分割コア11とともに回転して、ノズル41から供給される線材17はその一方の分割コア11に巻線される。この巻線の際にノズル移動機構42により、その一方の分割コア11に対してノズル41をY軸方向に往復移動させて、図2に示すように、リール18から癖取り装置51を介してノズル41から連続的に繰出される線材17をその一方の分割コア11に整列巻きしてコイル16を形成する。そして、このコイル形成工程の終了時において、インデックス軸Cにノズル41が平行な状態でスピンドル軸29の回転を停止する。
【0045】
<インデックス工程>
次に、この工程では、スピンドル軸29の回転が停止した状態で、インデックス軸Cを中心にコアホルダ21を所定角度回転させて他方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に一致させる。この回転はホルダ回転装置76により行われ、その回転に際して、予め固定機構操作装置71におけるエアシリンダ72によりその出没軸72aをZ軸方向に突出させて、操作板73を操作ピン36aに接触させ、図3に示すように、操作板73の上縁における傾斜によりその操作ピン36aを移動させ、図7に示すようにスライド部材36をコイルスプリング37の付勢力に抗して移動させ、凹溝23aからそのスライド部材36を離脱させる。
【0046】
この状態でホルダ回転装置76におけるZ軸方向出没アクチュエータ77の出没軸77aを突出させ、図7に示すように、そのフック部材79を保持レバー27の操作部27bに接触させる。その後、図8の実線矢印で示すように、ホルダ回転装置76は、そのフック部材79をインデックス軸Cを中心として円弧状に移動させる。具体的には、Z軸方向出没アクチュエータ77の出没軸77aを突出させるとともに、Y軸方向移動アクチュエータ78によりその出没アクチュエータ77をY軸方向に移動させ、これによりフック部材79を円弧状に移動させる。すると、この円弧状に移動するフック部材79により、そのフック部材79が操作部27bに接触するコアホルダ21は回転する。そして、一方の分割コア11の軸線がスピンドル軸29に一致する図7の状態から、図8の実線矢印で示すように回転するコアホルダ21により、図8に示すように、他方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に一致させる。
【0047】
その後、エアシリンダ72によりその出没軸72aを没入させて操作板73を下降させ、方形板材23に形成された凹溝23aにスライド部材36をスプリング37の付勢力により進入させる。これにより、コアホルダ21の回転を再び禁止する。このようにして、巻線しようとする他方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に一致させて固定する。そして、コアホルダ21を回転させたホルダ回転装置76におけるZ軸方向出没アクチュエータ77の出没軸77aは再び没入させ、その後のコアホルダ21の回転に支障を生じさせないようにフック部材79を下降させておく。
【0048】
以上がインデックス工程であるけれども、この実施の形態では、このインデックス工程と次のコイル形成工程の間に、図4に示すように、一方の分割コア11に対してノズル41を移動させてノズル41から繰出される線材17を一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eに収容させる線材引出し動作と、他方の分割コア11に対してノズル41を移動させてノズル41から繰出される線材17を他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12eに収容させる線材収容動作の双方を行う。ノズル41の移動はノズル移動機構42により行われ、ノズル41を図4の実線矢印で示すように移動させることにより、線材引出し動作と線材収容動作の双方を行う。これにより、一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eと他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dとの間の線材17により渡り線16aを形成する。その後、スピンドル軸29を再び回転させて、図5に示すように他の分割コア11を起立させ、その他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dに収容させた線材17を引出して次の第2コイル形成工程に備える。
【0049】
<第2コイル形成工程>
この工程では、スピンドル軸29を回転させてノズル41から供給される線材17を他方の分割コア11に巻線してコイル16を形成する。このスピンドル軸29の回転は、スピンドル回転手段であるスピンドルモータ39により行われ、このスピンドル軸29の回転により連結部材31を介して連結されたコアホルダ21が、スピンドル軸29の中心軸Tに中心軸が一致する他方の分割コア11とともに回転して、ノズル41から供給される線材17はその他方の分割コア11に巻線される。この巻線の際にノズル移動機構42により、その他方の分割コア11に対してノズル41をY軸方向に往復移動させて、図6に示すように、ノズル41から連続的に繰出される線材17をその他方の分割コア11に整列巻きしてコイル16を形成する。そして、このコイル形成工程の終了時において、インデックス軸Cにノズル41が平行な状態でスピンドル軸29の回転を停止する。
【0050】
このように、一対の分割コア11,11双方の巻線を完了させることにより、一対の分割コア11に渡り線16aを介して連結するコイル16を得る。この巻線の完了後には、他方の分割コア11に形成されたコイル16から引出された線材17を切断装置63により所定の長さに切断する。具体的には、スライド型エアシリンダ64の可動板64a(図10)を上昇させ、エアカッタ装置66のニッパ歯66aによりコイル16から引出された線材17を挟んで切断する。
【0051】
その後、固定機構操作装置71により、ホルダ固定機構35(図7及び図8)によるコアホルダ21のスピンドル軸29への固定を再び解除し、この状態でホルダ回転装置76により、図8の一点鎖線矢印に示すように、フック部材79を保持レバー27の操作部27bに引っ掛け、図7の一点鎖線矢印で示すようにインデックス軸Cを中心として円弧状に移動させ、そのフック部材79が引っ掛けられたコアホルダ21を逆方向に回転させて、一方の分割コア11の軸線をスピンドル軸29に再び一致させる。
【0052】
その後、ホルダ固定機構35(図7及び図8)によりコアホルダ21をスピンドル軸29に固定し、コアホルダ21の回転を再び禁止する。そして、スピンドル軸29を再び回転させて、図11に示すようにコイル16がそれぞれ形成された一対の分割コア11,11を起立させ、その一対の分割コアの取り出しを行うと共に、新たに巻線を施す新たな一対の分割コア11,11をそのコアホルダ21に新たに配設する。
【0053】
このように、巻終わり用線材収納溝12eと巻初め用線材収納溝12dとの距離が組み立てられた状態で一対の分割コア11,11間における渡り線16aの長さになるようにその一対の分割コア11,11をコアホルダ21に配設する本発明の方法により、所望の長さの渡り線16aを介して連なる連続コイル16を得ることができる。この連続するコイル16を有する分割コア11は、図14に示すように、後に、渡り線16aで連結された状態で円環状に並べられ、それらを相互に連結固定されることになる。このとき、コイル16における巻初め及び巻終わりの線材17は、予め巻初め及び巻終わり用線材収納溝12d,12eに収納されているので、一対の分割コアを円環状に並べる際にそれらの線材17を、改めて線材収納溝12d,12eに収納させるような作業も省くことができる。
【0054】
そして、一対の分割コア11,11に巻回された各コイル16間は所望の長さの渡り線16aにより連結されているので、それらのコイル16を新たに連結する作業が不要になると共に、このような所望の長さの渡り線16aを得ることにより、一対の分割コアを円環状に並べた後における渡り線16aの配設も容易にすることができる。よって、その渡り線16aが必要以上に長く成るようなことは回避され、得られたステータの外形が大型化するようなことを防止して、比較的安価なステータ10を得ることができる。
【0055】
また、本発明の分割コアの巻線装置20では、ノズル41をコアホルダ21に対して3次元方向に移動可能に構成されたノズル移動機構42を備えるので、その巻線方法において、インデックス工程と次の第二コイル形成工程の間に、一方の分割コア11に対してノズル41を移動させて、そのノズル41から繰出される線材17を一方の分割コア11の巻終わり用線材収納溝12eに収容させる線材引出し動作と、他方の分割コア11に対してノズル41を移動させてそのノズル41から繰出される線材17を他方の分割コア11の巻初め用線材収納溝12dに収容させる線材収容動作の双方を行うことにより、そのコイル形成工程とコイル形成工程の間に作業員が線材17を引き回すようなことはない。このため、本発明では、一対の分割コア11の巻線作業を作業員の手を借りずに一貫して行うことができ、この巻線作業を完全に自動化させることが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施の形態では、分割コア11を樹脂成形型に入れて絶縁性樹脂を注入するアウトサート成形により形成されたインシュレータ12を説明したが、このインシュレータは、アウトサート成形により形成されたものに限られない。例えば、分割コア11と別に樹脂成型品からなる分割形のインシュレータを準備し、分割コア11のティース11aをステータ10の中心軸T線方向の両側からその分割形のインシュレータにより覆うようなものであっても良い。
【0057】
また、上述した実施の形態では、一対の分割コア11,11をインデックス軸Cを中心として放射状に所定角度間隔に配設可能なコアホルダ21とし、そのスピンドル軸29の中心軸Tに分割コア11の軸線が一致した状態でコアホルダ21をスピンドル軸29に固定可能なホルダ固定機構35を説明したが、一対の分割コア11,11を放射状にして所定角度間隔に配設可能である限り、一対の分割コア11,11はインデックス軸Cを中心として放射状になる必要はなく、ホルダ固定機構35は、スピンドル軸29の中心軸Tに分割コア11の軸線が平行になった状態でコアホルダ21をスピンドル軸29に固定可能に構成されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0058】
11 分割コア
12d 巻初め用線材収納溝
12e 巻終わり用線材収納溝
16 コイル
17 線材
20 巻線装置
21 コアホルダ
29 スピンドル軸
35 ホルダ固定機構
39 スピンドル回転手段
41 ノズル
42 ノズル移動機構
C インデックス軸
T 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17