【文献】
ワークショップマニュアル クボタ乗用田植機SPA4・5・6,1994年 5月20日,初版,AS−48〜49頁、AS−53頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、伝動ケースによる播種装置への動力の伝達を良好に行うためには、伝動ケースを所定の位置に正確に固定する必要がある。ここで、伝動ケースとフレームとをボルト等の固定具で連結する場合の位置決め方法として、例えば、伝動ケースを固定するボルトを仮締めすることにより位置決めする方法が考えられる。これによると、ボルトを本締めせずに仮締めだけにとどめることにより、伝動ケース又はフレームを容易に位置決めすることができる。
【0005】
しかしながら、この方法の場合、ボルトを仮締め後に本締めする必要があるが、外観上は、ボルトが仮締めされているだけなのか、あるいは本締めされているのかが分り難い。このため、ボルトを仮締めしただけで本締めすることを忘れることがあるので、伝動ケース又はフレームを確実に固定する点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、伝動ケース又はフレームを容易に位置決めして確実に固定することができる水田作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴は、田面に農用資材を供給する供給装置をフレームに支持している水田作業車であって、
走行機体に備えられたエンジンからの動力を前記供給装置に伝達する動力伝達機構を内装する
ものでベース部材及び蓋部材を備えた伝動ケースを備え、
前記フレームにブラケットが固定具で固定され、
前記ブラケット
と前記フレームとの間に、前記固定具とは別の位置決め機構が構成されて
おり、
前記伝動ケースと前記ブラケットとが、前記ベース部材及び蓋部材の両方に貫通するボルト、並びに、前記ベース部材に貫通するボルトにより連結されている、ことにある。
【0008】
本発明の第1特徴によると、位置決めを固定具による仮固定によらないで、固定具とは別の位置決め機構によって位置決めしてから、最初から固定具によって本固定することができるた
め、フレームを容易に位置決めして確実に固定することができる。つま
り、ブラケットとフレームと
を、容易に位置決めして確実に固定することができる。
【0009】
本発明の第2特徴は、
前記位置決め機構
は、
前記フレーム又は前記ブラケットのいずれか一方に形成され
たピン孔と、
前記フレーム又は前記ブラケットのいずれか他方に設けられて、前
記ピン孔に差し込まれ
るピンと、を備えている、ことにある。
【0010】
本発明の第2特徴によると、
ピン孔にピンを差し込むだけ
で、フレームをさらに容易に位置決めすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
先ず、水田作業車の全体構成について、
図1から
図7により説明する。
【0014】
図1から
図7に示すように、水田作業車は、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを有する走行機体3を備えている。走行機体3の前部には、エンジン15及びミッションケース16が備えられている。走行機体3の後部には、作業部Aがリンク機構5を介して昇降自在に連結されている。走行機体3の中央には、運転座席4が備えられている。運転座席4の近傍には、左右一対の前車輪1を操向操作するステアリングハンドル6、走行用変速レバー7、作業部Aの昇降操作等を行う操作レバー8等が備えられている。また、水田作業車には、エンジン15の動力をミッションケース16を介して左右一対の前車輪1に伝達すると共に、後輪駆動ケース17を介して左右一対の後車輪2に伝達する走行伝達系と、ミッションケース16からの動力を外部出力軸18を介してフィードケース19に伝達する作業伝達系と、が備えられている。
【0015】
作業部Aは、圃場面に対して四条の表面播種を行う「供給装置」としての播種装置9と、圃場面に対して粉粒状の肥料の施肥を行う施肥装置10と、圃場面に対して除草剤等の散布を行う薬剤散布装置11と、作業対象となる圃場面の整地を行う整地フロート12と、作業走行中に隣接する次回の走行行程に対する走行指標を圃場面に描くマーカー13と、圃場に排水用の溝を形成するための溝切り器14と、を備えている。作業部Aは、施肥装置10が最も機体前部側に位置し、施肥装置10の機体後方側に播種装置9が位置し、さらに、播種装置9の機体後方側に薬剤散布装置11が位置するように、それらを前後方向に並べる状態で備えて構成されている。
【0016】
リンク機構5は、走行機体3の後部に対して、その前端部が揺動自在に支持される上部リンク5a及び左右の下部リンク5bと、これらの後端部に連結される縦リンク5cと、を備えている。リンク機構5は、その後端部が油圧シリンダ20の作動により昇降作動するように構成されている。縦リンク5cの下端部には、作業部Aがフィードケース19を介して前後向き姿勢のローリング軸心Xを中心として揺動自在に支持されている。
【0017】
フィードケース19の左右両側には、横伝動ケース24が夫々連結されている。横伝動ケース24には、伝動軸23が内装されている。横伝動ケース24におけるフィードケース19とは反対側の端部には、「伝動ケース」としての縦伝動ケース26が連結されている。縦伝動ケース26には、「動力伝達機構」としての伝動チェーン25が内装されている。
【0018】
播種装置9は、播種される種子として鉄コーティング処理が行われた種籾を用い、整地フロート12で整地された圃場面に対して四条分の播種を行うように構成されている。具体的には、播種装置9は、複数の種子を一株分として前後方向に間隔をあけて播種するいわゆる点播を行うように構成されている。播種装置9は、二条分の種籾を貯留する二個の種子ホッパー27と、夫々の種子ホッパー27から種子を繰り出すように夫々二個ずつ合計四個の種子繰出部28と、夫々の種子繰出部28から繰り出された種子を風の影響を抑制した状態で直下方に案内する四個の案内筒29と、が備えられている。
【0019】
種子繰出部28は、種子を受け入れるための図示しない複数の凹部が外周に形成された種子繰出ロール30と、種子繰出ロール30を内装する種子繰出ケース48と、を備えている。種子繰出ケース48は、左右方向に延びる角筒状の「フレーム」としての播種フレーム47に固定されている。種子繰出ロール30は、エンジン15からの動力が縦伝動ケース26に内装された伝動チェーン25(
図8参照)によって伝達されて駆動するように構成されている。
【0020】
具体的には、エンジン15からの動力が、外部出力軸18からフィードケース19に内装された図示しない動力伝達機構を介して、右及び左の伝動軸23に伝達され、さらに、右及び左の伝動軸23から、縦伝動ケース26内の伝動チェーン25を介して、右及び左の播種駆動軸41に伝達される。そして、右及び左の播種駆動軸41の夫々において、播種駆動軸41に設けられた一対の駆動ギア42と、二個の種子繰出ロール30のロール軸43に設けられた一対の従動ギア44と、が夫々噛み合って、播種駆動軸41の動力がロール軸43に伝達されて、二個の種子繰出ロール30が駆動する。
【0021】
施肥装置10は、二条分の肥料を貯留する二個の肥料ホッパー56と、夫々の肥料ホッパー56から肥料を繰り出すように夫々二個ずつ合計四個の施肥繰出部57と、夫々の施肥繰出部57から繰り出された肥料を流下案内する四本の施肥ホース58と、夫々の施肥ホース58により流下案内される肥料を供給するための溝を圃場面に作成する四個の作溝器59と、夫々の溝内に供給された肥料を埋め込むための四個の埋込案内体60と、を備えている。
【0022】
施肥繰出部57は、肥料を受け入れるための図示しない複数の凹部が外周部に形成された施肥繰出ロール66と、施肥繰出ロール66を内装する施肥繰出ケース57aと、を備えている。施肥繰出ケース57aは、左右方向に延びる角筒状の施肥フレーム75に固定されている。施肥フレーム75は、右及び左の縦フレーム71を介して、右及び左の縦伝動ケース26に支持されている。施肥繰出ロール66は、伝動軸23からの動力が伝達されて駆動するように構成されている。
【0023】
具体的には、右及び左の伝動軸23の夫々において、伝動軸23に設けられた回動アーム69と、二個の施肥繰出ロール66のロール軸67に設けられた揺動アーム68と、がロッド70を介して連結されている。これにより、伝動軸23の回転に伴って回動アーム69が回動すると、ロッド70を介して揺動アーム68が往復揺動されて、伝動軸23の動力がロール軸67に伝達されて、二個の施肥繰出ロール66が駆動する。
【0024】
次に、縦伝動ケース26及びブラケット46について、
図8及び
図9により説明する。
【0025】
図8に示すように、縦伝動ケース26は、伝動チェーン25を内装するものである。また、縦伝動ケース26は、播種装置9や施肥装置10を支持する支持フレームを兼ねている。縦伝動ケース26は、平坦なベース部材26Aと、略椀状に形成された蓋部材26Bと、を備えている。縦伝動ケース26は、ベース部材26Aと蓋部材26Bとがボルト連結されて、その内部に伝動チェーン25を内装するように構成されている。また、縦伝動ケース26には、注油口26dに栓をする注油キャップ26aが設けられている。これにより、注油キャップ26aを外して注油口26dから伝動チェーン25等にオイル又はグリースを注入してすることができ、注油キャップ26aを外すだけなので、注油作業が非常に簡単になる。また、縦伝動ケース26には、播種フレーム47がブラケット46を介して「固定具」としての
ボルト50及びボルト53,54で固定されている。
【0026】
図8及び
図9に示すように、ブラケット46は、第一固定部46Aと、第二固定部46Bと、を備えている。ブラケット46は、第一固定部46Aと第二固定部46Bとが、一方が他方に対して略垂直となるように連結されて構成されている。
【0027】
第一固定部46Aは、縦伝動ケース26に固定されものである。第一固定部46Aは、前後方向に延びる鉛直な板状部材によって構成されている。つまり、第一固定部46Aは、その機体外側の面が縦伝動ケース26(ベース部材26A)の機体内側の面に沿って縦伝動ケース26に固定される面となるように構成されている。また、第一固定部46Aには、ボルト
53,54が差し込まれる二つのボルト孔46Aaが、前後方向に所定間隔をあけて形成されている。第一固定部46Aにおいて、二つボルト孔46Aaの間には、縦伝動ケース26に向かって突出する第一ピン46C(頭付ピン)が設けられている。第一ピン46Cの先端部には、スナップピン52が差し込まれるスナップピン孔46Caが形成されている。
【0028】
第二固定部46Bは、播種フレーム47に固定されるものである。第二固定部46Bは、左右方向に延びる板状部材によって構成されている。つまり、第二固定部46Bは、その機体後側の面が播種フレーム47の前面に沿って播種フレーム47に固定される面となるように構成されている。また、第二固定部46Bには、ボルト50が差し込まれる二つのボルト孔46Baが、左右方向に所定間隔をあけて形成されている。第二固定部46Bにおいて、二つのボルト孔46Baの間には、播種フレーム47に向かって突出する第二ピン46D(頭付ピン)が設けられている。第二ピン46Dの先端部には、スナップピン52が差し込まれるスナップピン孔46Daが形成されている。
【0029】
次に、縦伝動ケース26に播種フレーム47を固定する手順について、
図10により説明する。
【0030】
先ず、ブラケット46について、第一固定部46Aの第一ピン46Cを、縦伝動ケース26に形成された第一ピン孔26cに差し込むとともに、第二固定部46Bの第二ピン46Dを、播種フレーム47に形成された第二ピン孔47bに差し込む。この状態で、縦伝動ケース26及び播種フレーム47の位置を微調整することができる。そして、第一ピン46Cのスナップピン孔46Ca及び第二ピン46Dのスナップピン孔46Daに、スナップピン52を差し込むことにより、縦伝動ケース26に播種フレーム47が仮固定(仮止め)される。こうして、第一ピン46Cと第一ピン孔26cと、及び第二ピン46Dと第二ピン孔47bとで、位置決め機構51を構成している。
【0031】
その後、第一固定部46Aのボルト孔46Aa及び縦伝動ケース26
のベース部材26A及び蓋部材26Bに形成されたボルト孔26bに、ボルト
53を差し込んでワッシャ50bを介してナット50aを締め付ける
。第一固定部46Aのボルト孔46Aa及び縦伝動ケース26のベース部材26Aに形成されたボルト孔26bに、ボルト54を差し込んでワッシャ50bを介してナット50aを締め付ける。第二固定部46Bのボルト孔46Ba及び播種フレーム47に形成されたボルト孔47aに、ボルト50を差し込んでワッシャ50bを介してナット50aを締め付けることにより、縦伝動ケース26に播種フレーム47がブラケット46を介してボルト50
,53,54で固定(本固定)される。こうして、位置決めをボルト50
,53,54による仮固定によらないで、ボルト50とは別の位置決め機構51によって位置決めしてから、最初からボルト50
,53,54によって本固定することができるため、縦伝動ケース26及び播種フレーム47を容易に位置決めして確実に固定することができる。
【0032】
なお、本発明の実施形態は、以下のようなものであってもよい。
【0033】
本実施形態では、伝動軸23に回動アーム69を設けているが、
図11に示すように、ロール軸43に回動アーム69を設けて、繰出量の精度の向上を図るようにしてもよい。
【0034】
本実施形態では、施肥装置10が播種装置9よりも機体前方側に位置する状態で備えられる構成としたが、施肥装置10が播種装置9よりも機体後方側に位置する状態で備えられる構成としてもよい。
【0035】
本実施形態では、「供給装置」として田面に種籾を供給する播種装置9を想定しているが、「供給装置」は、肥料、薬剤、液状肥料その他の農用資材を供給する供給装置であってもよく、例えば、施肥装置10であってもよい。
【0037】
本実施形態では、位置決め機構51は、二本の第一ピン46C及び第二ピン46Dが備えられる構成としたが、第一ピン46C及び第二ピン46Dの本数は、二本に限定するものではない。
【0038】
本実施形態では、位置決め機構51は、ブラケット46に第一ピン46C及び第二ピン46Dが設けられ、縦伝動ケース26に第一ピン孔26cが形成され、播種フレーム47に第二ピン孔47bが形成される構成としたが、ブラケット46に第一ピン孔及び第二ピン孔が形成され、縦伝動ケース26に第一ピンが設けられ、播種フレーム47に第二ピンが設けられる構成であってもよい。
又、位置決め機構51
を、ブラケット46と播種フレーム47との間にのみ設けてもよい。