特許第5781917号(P5781917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特許5781917バリアフィルム及びデバイス素子封止構造
<>
  • 特許5781917-バリアフィルム及びデバイス素子封止構造 図000002
  • 特許5781917-バリアフィルム及びデバイス素子封止構造 図000003
  • 特許5781917-バリアフィルム及びデバイス素子封止構造 図000004
  • 特許5781917-バリアフィルム及びデバイス素子封止構造 図000005
  • 特許5781917-バリアフィルム及びデバイス素子封止構造 図000006
  • 特許5781917-バリアフィルム及びデバイス素子封止構造 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781917
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】バリアフィルム及びデバイス素子封止構造
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20150907BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150907BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   B32B9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-287334(P2011-287334)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137888(P2013-137888A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】浅野 元彦
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−053339(JP,A)
【文献】 特開2009−094050(JP,A)
【文献】 特開2010−218940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
G09F 9/30−9/46
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたデバイス素子を封止するために用いられるバリアフィルムであって、上記デバイス素子に対向する面に上記デバイス素子を包囲するように凸部が形成されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの凸部形成面上に積層一体化された複数の無機層と、これらの無機層間に介在してなる有機層とを含み、上記無機層及び上記有機層は、上記合成樹脂フィルムの凸部形成面に沿って形成され、上記有機層のうち、上記凸部上に形成された無機層間に形成された第一有機層部は、上記凸部を除いた残余部分に形成された無機層間に形成された第二有機層部よりも厚みが薄く形成されていると共に、上記第一有機層部は、合成樹脂フィルムの凸部に沿って屈曲した状態に形成されていることを特徴とするバリアフィルム。
【請求項2】
第一有機層部は薄膜状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
第一有機層部の厚みが2μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
基板上にデバイス素子が形成されており、このデバイス素子が接着剤層を介して積層一体化されたバリアフィルムによって封止されてなるデバイス素子封止構造であって、上記バリアフィルムは、上記デバイス素子に対向した面に上記デバイス素子を包囲するように凸部が形成されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの凸部形成面上に積層一体化された複数の無機層と、これらの無機層間に介在してなる有機層とを含み、上記無機層及び上記有機層は、上記合成樹脂フィルムの凸部形成面に沿って形成され、上記有機層のうち、上記凸部上に形成された無機層間に形成された第一有機層部は、上記凸部を除いた残余部分に形成された無機層間に形成された第二有機層部よりも厚みが薄く形成されていると共に、上記第一有機層部は、合成樹脂フィルムの凸部に沿って屈曲した状態に形成されていることを特徴とするデバイス素子封止構造。
【請求項5】
第一有機層部の厚みが2μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のデバイス素子封止構造。
【請求項6】
基板上にデバイス素子が形成されており、このデバイス素子が接着剤層を介して積層一体化されたバリアフィルムによって封止されてなるデバイス素子封止構造であって、上記バリアフィルムは、上記デバイス素子に対向した面に上記デバイス素子を包囲するように凸部が形成されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの凸部形成面上に積層一体化された複数の無機層と、これらの無機層間に介在してなる有機層とを含み、上記有機層のうち、上記凸部上に形成された無機層間には有機層が形成されていないことを特徴とするデバイス素子封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分やガスなどのバリア性に優れたバリアフィルム及びこれを用いたデバイス素子封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池、薄膜電池、液晶ディスプレイなどのデバイス素子は、水分、ガス、その他の汚染物質から保護するためにバリアフィルムによって封止されている。
【0003】
特許文献1には、基体上に陽極,正孔注入輸送層、発光層、電子輸送層等の有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELという)層、陰極を順次成膜した積層体から構成される有機EL素子において、前記陰極上に保護膜が形成され、該保護膜上に吸湿剤が設けられ、前記基体と封止部材により全体が封止されている有機EL素子が開示されている。
【0004】
上記有機EL素子において封止部材が用いられているが、封止部材としては、例えば、特許文献2に開示されているような、透明な可撓性支持体基板と、無機薄膜からなる最外ガスバリア層(A)と、金属窒化物または金属炭化物からなる無機薄膜保護層(D)とをこの順で有し、且つ、前記可撓性支持体基板と前記最外ガスバリア層(A)との間に、少なくとも1層の中間層(B)と、少なくとも1層の無機薄膜からなる中間ガスバリア層(C)と、を有するガスバリアフィルムが挙げられる。
【0005】
上記ガスバリアフィルムの中間層は、無機化合物からなる薄膜や有機化合物の薄膜が用いられる(段落番号〔0031〕)。ここで、ガスバリアフィルムの中間層が無機化合物からなる薄膜である場合、無機化合物からなる薄膜が積層一体化されることとなる。この際、基礎となる無機化合物からなる薄膜上に、無機化合物からなる新たな薄膜を形成することとなるが、基礎となる薄膜上に不純物(異物)による凸部が存在していると、この基礎となる薄膜上に形成される新たな薄膜が凸部を完全に被覆することできず、新たな薄膜に欠陥が生じてしまい、新たに形成した薄膜のガスバリア性が損なわれるという問題点を生じる。
【0006】
そこで、中間層として有機化合物の薄膜を用いることによって上述のような問題点が解消できるが、有機化合物は水分の透過率が無機化合物からなる薄膜よりも高いという別の問題点を有している。
【0007】
従って、ガスバリアフィルムは、その厚み方向の全体を見た時には、複数の無機化合物からなる薄膜が存在しているので所望のガスバリア性を期待するものの、有機化合物からなる薄膜の端面は外部に露出していることから、この有機化合物からなる薄膜の端面から水分が進入してしまい、有機化合物からなる薄膜の端面から進入した水分は複数ある無機化合物からなる薄膜の一部を回避した状態でガスバリアフィルムの厚み方向に進入し、その結果、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下するという問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−176655号公報
【特許文献2】特開2007− 83493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、デバイス素子を水分、ガス、その他の汚染物質から優れたバリア性でもって保護することができるバリアフィルム及びこのバリアフィルムを用いたデバイス素子封止構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバリアフィルムは、基板上に形成されたデバイス素子を封止するために用いられるバリアフィルムであって、上記デバイス素子に対向する面に上記デバイス素子を包囲するように凸部が形成されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの凸部形成面上に積層一体化された複数の無機層と、これらの無機層間に介在してなる有機層とを含み、上記無機層及び上記有機層は、上記合成樹脂フィルムの凸部形成面に沿って形成され、上記有機層のうち、上記凸部上に形成された無機層間に形成された第一有機層部は、上記凸部を除いた残余部分に形成された無機層間に形成された第二有機層部よりも厚みが薄く形成されていると共に、上記第一有機層部は、合成樹脂フィルムの凸部に沿って屈曲した状態に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のデバイス素子封止構造は、基板上にデバイス素子が形成されており、このデバイス素子が接着剤層を介して積層一体化されたバリアフィルムによって封止されてなるデバイス素子封止構造であって、上記バリアフィルムは、上記デバイス素子に対向した面に上記デバイス素子を包囲するように凸部が形成されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの凸部形成面上に積層一体化された複数の無機層と、これらの無機層間に介在してなる有機層とを含み、上記無機層及び上記有機層は、上記合成樹脂フィルムの凸部形成面に沿って形成され、上記有機層のうち、上記凸部上に形成された無機層間に形成された第一有機層部は、上記凸部を除いた残余部分に形成された無機層間に形成された第二有機層部よりも厚みが薄く形成されていると共に、上記第一有機層部は、合成樹脂フィルムの凸部に沿って屈曲した状態に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のデバイス素子封止構造は、基板上にデバイス素子が形成されており、このデバイス素子が接着剤層を介して積層一体化されたバリアフィルムによって封止されてなるデバイス素子封止構造であって、上記バリアフィルムは、上記デバイス素子に対向した面に上記デバイス素子を包囲するように凸部が形成されてなる合成樹脂フィルムと、この合成樹脂フィルムの凸部形成面上に積層一体化された複数の無機層と、これらの無機層間に介在してなる有機層とを含み、上記有機層のうち、上記凸部上に形成された無機層間には有機層が形成されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデバイス素子封止構造又は本発明のバリアフィルムを用いて構成されたデバイス素子封止構造は、上述の構成を有しており、基板上に形成されたデバイス素子は、バリアフィルムの合成樹脂フィルムの凸部によって包囲された状態にて封止されている。そして、バリアフィルムの合成樹脂フィルムの凸部形成面上には、複数の無機層が形成されていると共に、これらの無機層間には有機層が介在している。
【0014】
従って、バリアフィルムは、複数の無機層が互いに接触することなく有機層を介して積層一体化されており、一の無機層上に形成された不純物(異物)の存在が原因となって、他の無機層に欠陥が生じるようなことはなく、各無機層は優れたバリア性を有し、複数の無機層によってバリアフィルムの厚み方向にガスが透過するのを防止することができる。
【0015】
そして、バリアフィルムの有機層は、その端面から水分を透過し易いものの、合成樹脂フィルムの凸部上に形成された第一有機層部は、合成樹脂フィルムの凸部を除いた残余部分に形成された無機層間に形成された第二有機層部よりも厚みが薄くなるように形成されていると共に、第一有機層部は合成樹脂フィルムの凸部に沿って屈曲した状態に形成されていることから、バリアフィルムの有機層の端面から進入した水分は、第一有機層部内を円滑に進入することが難しく、デバイス素子が水分によって汚染又は劣化するのを防止することができる。
【0016】
更に、バリアフィルムはその無機層間に有機層が介在していることから優れた柔軟性を有しており、バリアフィルムに外力が加わった場合にあっても、柔軟性を有する有機層が外力を円滑に吸収し、バリアフィルムの無機層に亀裂が入るのを防止することができ、デバイス素子封止構造は、デバイス素子を水分、ガス、その他の汚染物質から長期間亘って安定的に保護することができる。
【0017】
又、合成樹脂フィルムの凸部上に形成された無機層間に有機層が形成されていない場合には、有機層は、合成樹脂フィルムの凸部上において、隣接する無機層同士が接合一体化することによって遮断された状態となっており、よって、有機層の端面から進入した水分は、合成樹脂フィルムの凸部を超えてデバイス素子に到達することはなく、デバイス素子が水分によって劣化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のデバイス素子封止構造を示した縦断面図である。
図2】バリアフィルムを構成している合成樹脂フィルムを示した模式斜視図である。
図3】バリアフィルムの凸部における構造を示した縦断面図である。
図4】有機層の形成要領を示した模式断面図である。
図5】有機層の形成要領を示した模式断面図である。
図6】バリアフィルムの凸部における他の構造を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のデバイス素子封止構造の一例を図面を参照しつつ説明する。本発明のデバイス素子封止構造Aは、図1に示したように、基板1上にデバイス素子2が形成されており、このデバイス素子2が接着剤層3を介して積層一体化されてなるバリアフィルム4によって封止されてなる。
【0020】
デバイス素子封止構造Aを構成している基板1としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0021】
この基板1上にはデバイス素子2が一体的に形成されている。デバイス素子2としては、特に限定されず、例えば、有機発光デバイス、液晶ディスプレイ、電気泳動インクを利用したディスプレイ、発光ダイオード、発光ポリマー、有機エレクトロルミネッセンス素子、リン光デバイス、電気泳動インク、有機太陽電池、無機太陽電池、薄膜電池、バイアを備えた薄膜デバイス、及び、これらのデバイス素子を組み合わせたものなどが挙げられる。なお、基板1上へのデバイス素子2の形成は、汎用の要領で行われればよい。
【0022】
そして、基板1上には接着剤層3を介してバリアフィルム4が積層一体化されている。接着剤層3としては、基板1上にバリアフィルム4を積層一体化させることができれば、特に限定されず、例えば、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0023】
バリアフィルム4は、合成樹脂フィルム41と、この合成樹脂フィルム41におけるデバイス素子2に対向する面に形成された複数の無機層42、42・・・と、これらの無機層42、42間に形成された有機層43、43・・・とを有している。
【0024】
なお、合成樹脂フィルム41を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
図1、2に示したように、上記合成樹脂フィルム41におけるデバイス素子2に対向する面には、デバイス素子2を完全に包囲するように凸部41aが形成されている。なお、合成樹脂フィルム41に形成されている凸部41aの平面形状は、デバイス素子2を包囲することができれば、特に限定されず、例えば、三角形状、四角形状、五角形状などの平面多角形状、円形状などが挙げられる。なお、図2に、合成樹脂フィルム41に平面矩形状の凸部41aが形成されている場合を一例として示した。又、図2では、最外側凸部41aと、この最外側凸部41aの内側に所定間隔を存して最外側凸部41aと相似形の中間凸部41a’と、この中間凸部41a’の内側に所定間隔を存して最外側凸部41aと相似形の最内側凸部41a”とを三重に合成樹脂フィルム上に形成した場合を示したが、凸部41aの数は、特に限定されず、一つであってもよいし、二重、四重などのように複数であってもよい。
【0026】
合成樹脂フィルム41に形成されている凸部41aの断面形状は、特に限定されず、例えば、台形状、長方形状などの四角形状、半円状などが挙げられる。
【0027】
合成樹脂フィルム41に形成されている凸部41aの断面形状において、凸部41aの突出方向に直交する方向の最大幅は50〜150μmが好ましい。又、合成樹脂フィルム41に形成されている凸部41aの高さは5〜15μmが好ましい。
【0028】
更に、合成樹脂フィルム41の凸部形成面41bには複数の無機層42、42・・・と、各無機層42、42・・・間に形成された一又は複数の有機層43、43・・・が積層一体的に形成されている。無機層を構成している無機化合物としては、バリア性を有しておれば、特に限定されず、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Mg又はこれらを二種以上含む合金の酸化物又は酸化窒化物が挙げられる。有機層を構成している有機化合物としては、特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体などのアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂、ポリシロキサンなどの有機珪素樹脂などが挙げられる。
【0029】
具体的には、図3に示したように、合成樹脂フィルム41の凸部形成面41bにはこの凸部形成面41bに沿って凸部形成面41bの一面を全面的に被覆した状態に無機層42aが略一定厚みでもって形成されている。
【0030】
合成樹脂フィルム41上に形成した無機層42a上にはこの無機層42aに沿って無機層42aの一面を全面的に被覆した状態に有機層43aが一体的に積層一体化されている。この有機43aも合成樹脂フィルム41の凸部形成面41bに沿って形成されている。
【0031】
上記有機層43a上にはこの有機層43aに沿って有機層43aの一面を全面的に被覆した状態に無機層42bが積層一体化されている。上記無機層42b上にはこの無機層42bに沿って無機層42bの一面を全面的に被覆した状態に有機層43bが一体的に積層一体化されている。同様の要領で、無機層42(42c、42d・・・)と有機層43(43c、43d・・・)とが交互に積層一体化されており、無機層42が最外層となるように積層一体化されている。なお、全ての無機層42及び有機層43は、合成樹脂フィルム41の凸部形成面41bに沿って形成されており、無機層42及び有機層43は、合成樹脂フィルム41の凸部が形成された部分において凸部を形成している。
【0032】
有機層43aは、無機層42a、42b間に介在した状態で積層一体化されているが、合成樹脂フィルム41の凸部41a上に形成された無機層部分421aと無機層部分421bとの間に形成された第一有機層部431aの厚みは、この第一有機層部431aを除いた残余部分である第二有機層部432aの厚み、即ち、凸部41aを除いた残余部分に形成された無機層部分422aと無機層部分422bとの間に形成された第二有機層部432aの厚みよりも薄くなるように構成されている。なお、本発明において、第一有機層部及び第二有機層部の厚みとは、無機層と有機層との積層方向における厚みをいう。
【0033】
同様に、合成樹脂フィルム41の凸部41a上に形成された無機層部分421bと無機層部分421cとの間に形成された第一有機層部431bの厚みは、この第一有機層部431bを除いた残余部分である第二有機層部432bの厚み、即ち、凸部41aを除いた残余部分に形成された無機層部分422bと無機層部分422cとの間に形成された第二有機層部432bの厚みよりも薄くなるように構成されている。
【0034】
同様に、合成樹脂フィルム41の凸部41a上に形成された無機層部分421cと無機層部分421dとの間に形成された第一有機層部431cの厚みは、この第一有機層部431cを除いた残余部分である第二有機層部432cの厚み、即ち、凸部41aを除いた残余部分に形成された無機層部分422cと無機層部分422dとの間に形成された第二有機層部432cの厚みよりも薄くなるように構成されている。
【0035】
以上のように、本発明のデバイス素子封止構造Aにおいては、合成樹脂フィルム41の凸部41a上に形成された無機層部分421と無機層部分421との間に形成された第一有機層部431の厚みは、この第一有機層部431を除いた残余部分である第二有機層部432の厚み、即ち、凸部41aを除いた残余部分に形成された無機層部分422と無機層部分422との間に形成された第二有機層部432の厚みよりも薄くなるように構成されている。
【0036】
有機層43は一般的に水分を透過させ易いものの、上述のように、有機層43の第一有機層部431が薄層状に形成されて水分の進行が妨げられていると共に、第一有機層部431は凸部41aに沿って屈曲しており、第一有機層部431の長さも長くなっていることから、有機層43の端部を通じて有機層43に進入した水分は、第一有機層部431において進行速度が抑制され、その結果、水分がバリアフィルムの凸部41aを超えてデバイス素子2を封止している領域Z1まで到達することが難しく、デバイス素子2が有機層43中を進入してきた水分によって汚染又は劣化されることを防止することができる。
【0037】
仮に、有機層43cの端部から進入した水分が凸部41aを超えて進入した場合、デバイス素子2の封止領域Z1において、この水分の透過を阻止するバリア層は無機層42dしかなく、一の無機層42dのみでは水分を十分にバリアすることは難しいが、上述のように、本発明のデバイス素子封止構造Aでは、第一有機層部431の存在によって有機層43の端部から進入した水分が凸部41aを超えて有機層43中を進行することは難しく、有機層43の端部から進入した水分は第一有機層部431によってデバイス素子2の封止領域Z1に進入することを阻止されている。従って、デバイス素子2が有機層43中を進入してきた水分によって汚染又は劣化されるようなことはない。
【0038】
なお、バリアフィルム4の合成樹脂フィルム41側からバリアフィルム4の厚み方向(図2、3において上下方向)に進入しようとする水分やガスなどは、複数の無機層42、42・・・によって確実に阻止され、デバイス素子2がバリアフィルムを透過した水分によって汚染又は劣化されるようなことはない。
【0039】
バリアフィルム4の凸部41a上に形成された無機層42、42間に形成された第一有機層部431の厚みは、厚いと、第一有機層部の水分のバリア性が不十分となることがあるので、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0040】
次に、本発明のデバイス素子封止構造の製造方法について説明する。先ず、合成樹脂フィルムを汎用の要領で製造し、この合成樹脂フィルムを溶融状態とする。一方、合成樹脂フィルムに形成したい凸部形状に対応する凹部が形成されたエンボス板を用意する。
【0041】
溶融状態の合成樹脂フィルム上にエンボス板をその凹部が合成樹脂フィルムに対向した状態となるように重ね合わせ、エンボス板を合成樹脂フィルムに向かって押しつけることによって、合成樹脂フィルム上に所望形状を有する凸部を形成する。
【0042】
合成樹脂フィルムの凸部形成面上に汎用の要領で無機層42を形成する。なお、本発明において、無機層42の形成方法としては、汎用の方法を用いることができ、例えば、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD)や、化学的気相成長法(CVD)などが挙げられる。
【0043】
次に、合成樹脂フィルム41上に形成された無機層42上に有機層43を形成する。この有機層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、下記の方法が挙げられる。即ち、有機層を形成する有機化合物が溶媒中に溶解又は分散してなる塗料を用意する。なお、有機層を形成する有機化合物は、後述する溶媒の除去工程において必要に応じて硬化させてもよい。
【0044】
図4に示したように、合成樹脂フィルム41の凸部41a上に形成された無機層42部分が全面的に埋没した状態となるように無機層42上に全面的に塗料を塗布して塗膜5を形成する。次に、塗膜5中の溶媒を蒸発、除去させることによって有機層43を形成することができる(図5参照)。図4から分かるように、合成樹脂フィルム41の凸部41aが形成されている部分に形成された塗膜51の厚みが、合成樹脂フィルム41の凸部41a以外の部分に形成された塗膜52の厚みよりも薄くなっている。従って、合成樹脂フィルム41の凸部41aが形成されている部分に形成された塗膜51中に含まれている有機化合物の量が、合成樹脂フィルム41の凸部41a以外の部分に形成された塗膜52中に含まれている有機化合物の量よりも少なくなっている。そして、無機層42上に形成された塗膜中の溶媒を蒸発させると、有機化合物の量が多いほど、厚みの厚い有機層が形成され、その結果、合成樹脂フィルム41の凸部41a上の無機層421上に形成された有機層431の厚みは、合成樹脂フィルム41の凸部41aを除いた残余部分上の無機層422上に形成された有機層432の厚みよりも薄くなっている。
【0045】
上記の他に、有機層を形成する有機化合物が溶解又は分散してなり且つ粘度が1000mPa・s以下の粘度の低い塗料を用意し、この塗料を無機層42上に塗布する。すると、塗料は粘度が低いことから、合成樹脂フィルム41の凸部41a上に形成された無機層42上では無機層42の表面から一部が流出してしまい、その結果、合成樹脂フィルム41の凸部41a上の無機層421上に形成された塗膜の厚みが、合成樹脂フィルム41の凸部41aを除いた残余部分上の無機層422上に形成された塗膜の厚みよりも薄くなる。しかる後、無機層42上に形成した塗料中の溶媒を蒸発させると、合成樹脂フィルム41の凸部41a上の無機層421上に形成された有機層431の厚みが、合成樹脂フィルム41の凸部41aを除いた残余部分上の無機層422上に形成された有機層432の厚みよりも薄くなる。
【0046】
次に、上記有機層上に上述した汎用の要領で無機層を形成した後、上述と同様の要領で有機層を形成する工程を繰り返し、最後に、有機層上に無機層を形成して最外層を無機層として、合成樹脂フィルム41の凸部形成面41b上に、複数の無機層42と、複数の有機層43とを交互に積層一体化させ且つ最外層として無機層を形成してバリアフィルム4を形成することができる。
【0047】
そして、基板1上に汎用の要領でデバイス素子2を作製する。次に、基板1のデバイス素子2の形成面上に接着剤を塗布した後、この接着剤上にバリアフィルム4をその凸部41aが基板1に対向した状態となるように重ね合わせた後、バリアフィルム4をその凸部41aが完全に接着剤内に埋没するまで基板1に向かって押圧する。しかる後、接着剤を硬化させることによって、基板1とバリアフィルム4との対向面間を接着剤層で充填した状態にて基板1上に接着剤層3を介してバリアフィルム4を積層一体化してバリアフィルムによってデバイス素子2を封止してなるデバイス素子封止構造Aを形成することができる。
【0048】
上記では、バリアフィルム4の凸部41aを被覆している無機層421、421間に第一有機層部431が介在している場合を説明したが、図6に示したように、無機層421、421間に第一有機層部431が介在していなくてもよい。このように、第一有機層部431が介在していないことによって、互いに隣接する無機層421、421同士が接合一体化して有機層43が無機層421、421によって遮断された状態となる。従って、有機層43の端部を通じて進入した水分が合成樹脂フィルム41の凸部41aを超えて有機層43中を進行することはなく、デバイス素子2が有機層43中を進行してきた水分によって汚染又は劣化するようなことはない。
【0049】
図6に示したデバイス素子封止構造を製造するには、上述した製造方法において、合成樹脂フィルム上に形成された無機層上に、有機層を形成する有機化合物が溶解又は分散してなる塗料を汎用の要領で塗布するにあたって、合成樹脂フィルムの凸部の先端部を被覆している無機層が塗料によって塗布されないようにすればよく、これ以外の要領は上述の要領と同様であるので、その説明は省略する。
【実施例1】
【0050】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
ポリカーボネートフィルムを用意し、このポリカーボネートフィルムを加熱して溶融状態とした。一方、断面台形状で且つ平面正方形の枠状である3つの凹部が所定間隔を存して内外方向に(ポリカーボネートフィルムの外周縁から内方に向かって)三重に形成されてなるエンボス板を用意した。
【0052】
溶融状態のポリカーボネートフィルム上にエンボス板をその凹部がポリカーボネートフィルムに対向した状態となるように重ね合わせ、エンボス板をポリカーボネートフィルムに向かって押しつけることによって、ポリカーボネートフィルム41上に、最外側凸部41aと、この最外側凸部41aの内側に所定間隔を存して最外側凸部41aと相似形の中間凸部41a’と、この中間凸部41a’の内側に所定間隔を存して最外側凸部41aと相似形の最内側凸部41a”を三重に形成した(図2参照)。なお、ポリカーボネートフィルム41の凸部41a、41a’、 41a”は断面等脚台形状であり、台形の高さは10μm、底部の幅が100μm、頂部の幅が50μmであった。
【0053】
ポリカーボネートフィルム41の凸部形成面41b上にスパッタリング法によってSiターゲットを用いて反応ガスとして酸素を導入してSi0からなる厚みが100nmの無機層42aをポリカーボネートフィルム41の凸部形成面41bに沿って凸部形成面41bの一面全面に形成した。ポリカーボネートフィルム41の凸部41a、41a’、 41a”上では無機層42aは凸部を形成していた。
【0054】
次に、アクリル樹脂を酢酸エチルに溶解させ且つシランカップリング剤を含有してなる塗料(アクリル樹脂成分量:20重量%)を用意し、この塗料を無機層42a上にグラビアコーターによって塗工して無機層42a上に塗膜5を形成した。この塗膜5は、ポリカーボネートフィルム41の凸部41a、41a’、 41a”及びこれらの上に形成された無機層42aを全て埋没させて塗膜表面が平坦面となっており、ポリカーボネートフィルム41の凸部41a、41a’、 41a”の形成されていない部分における塗膜52の厚みは15μmであった。しかる後、塗膜を110℃にて5分間に亘って乾燥させ、無機層42a上に有機層43aを無機層42aに沿って無機層42aを全面的に被覆した状態に形成した。有機層43aはポリカーボネートフィルム41の凸部41a、41a’、 41a”に対応する部分において凸部を形成していた。有機層43aのうち、第一有機層部431aを形成する部分の厚みは1μm以下、第二有機層部432aを形成する部分の厚みは3μmであった。
【0055】
続いて、有機層43a上にスパッタリング法によってSiターゲットを用いて反応ガスとして酸素を導入してSi0からなる厚みが100nmの無機層42bを有機層43aに沿って有機層43aの一面を全面的に被覆した状態に形成してバリアフィルム4を製造した。ポリカーボネートフィルム41の凸部41a、41a’、 41a”上に対応する部分では無機層42bは凸部を形成していた。
【0056】
更に、基板1上に有機エレクトロルミネッセンス素子2を汎用の要領で一体的に形成した。次に、基板1の有機エレクトロルミネッセンス素子2の形成面上にエポキシ系接着剤を有機エレクトロルミネッセンス素子2が埋没する程度に全面的に塗布した後、このエポキシ系接着剤上にバリアフィルム4をその凸部41aが基板1に対向した状態となるように重ね合わせた後、バリアフィルム4をその凸部41aが完全に接着剤内に埋没するまで基板1に向かって押圧して積層体を得た。
【0057】
しかる後、上記積層体を加熱してエポキシ系接着剤を硬化させることによって、基板1とバリアフィルム4との対向面間を接着剤層で充填した状態にて基板1上に接着剤層3を介してバリアフィルム4を積層一体化してバリアフィルム4によって有機エレクトロルミネッセンス素子2が封止されてなるデバイス素子封止構造Aを形成した。
【0058】
(実施例2)
無機層42a上に塗料を塗布するにあたって、ポリカーボネートフィルム41の凸部41aの先端部を被覆している無機層42aが塗料によって塗布されないようにしたこと以外は実施例1と同様にしてデバイス素子封止構造Aを形成した。
【0059】
(比較例1)
ポリカーボネートフィルムを用意した。このポリカーボネートフィルムには凸部は形成されておらず、ポリカーボネートフィルムの両面は平坦面に形成されていた。ポリカーボネートフィルムの一面にスパッタリング法によってSiターゲットを用いて反応ガスとして酸素を導入してSi0からなる厚みが100μmの無機層42aを形成した。
【0060】
次に、実施例1で用いた塗料(アクリル樹脂成分量:50重量%)を無機層42a上にバーコーターによって塗布して110℃にて5分間に亘って乾燥させて厚みが5μmの有機層43aを形成した。
【0061】
続いて、有機層43a上にスパッタリング法によってSiターゲットを用いて反応ガスとして酸素を導入してSi0からなる厚みが100μmの無機層42bを形成してバリアフィルム4を製造した。このバリアフィルム4を用いたこと以外は実施例1と同様にしてデバイス素子封止構造Aを形成した。
【符号の説明】
【0062】
1 基板
2 デバイス素子
3 接着剤層
4 バリアフィルム
41 合成樹脂フィルム
41a 凸部
41b 凸部形成面
42 無機層
43 有機層
431 第一有機層部
432 第二有機層部
432a 第二有機層部
A デバイス素子封止構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6