特許第5781918号(P5781918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5781918
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】距離測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20060101AFI20150907BHJP
   G01S 17/89 20060101ALI20150907BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   G01S17/10
   G01S17/89
   G01C3/06 120Q
   G01C3/06 140
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-288393(P2011-288393)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-137242(P2013-137242A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】中村 重幸
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 弘己
(72)【発明者】
【氏名】平柳 通人
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 直人
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−137237(JP,A)
【文献】 特開2009−041943(JP,A)
【文献】 特表2002−500367(JP,A)
【文献】 特開2004−294420(JP,A)
【文献】 特開2007−132848(JP,A)
【文献】 特開2001−264439(JP,A)
【文献】 特開2010−071832(JP,A)
【文献】 特開2011−064498(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0192938(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0024271(US,A1)
【文献】 米国特許第07379100(US,B1)
【文献】 特表2006−523074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 17/10
G01C 3/06
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行時間法により対象物に対する距離を求める距離測定装置であって、
変調光を放出する光源部と、
入射光に応じて電荷を発生する光感応領域、前記光感応領域で発生した電荷を蓄積する第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域、前記光感応領域と前記第1の蓄積領域との間に設けられた第1の転送電極、前記光感応領域と前記第2の蓄積領域との間に設けられた第2の転送電極、前記第1の蓄積領域とリセット電位との間に設けられた第1のリセットスイッチ、並びに、前記第2の蓄積領域とリセット電位との間に設けられた第2のリセットスイッチを有するセンサ部と、
前記変調光の放出タイミング及び前記センサ部を制御して、距離を算出する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記第1のリセットスイッチ及び前記第2のリセットスイッチを制御して前記第1の蓄積領域及び前記第2の蓄積領域を前記リセット電位に接続してから該第1の蓄積領域及び該第2の蓄積領域を次に前記リセット電位に接続するまでの非発光フレーム期間内の複数の第1の電荷転送サイクルにおいて、前記光源部に変調光を放出させず、第1の転送期間内に前記第1の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第1の蓄積領域に蓄積させ、前記第1の転送期間と位相反転した第2の転送期間内に前記第2の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第2の蓄積領域に蓄積させ、
複数の第1の読出しサイクルにおいて、前記複数の第1の電荷転送サイクルと交互の時点に前記第1の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第1の読出し値D1及び該時点に前記第2の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第2の読出し値D2を前記センサ部から取得し、
前記第1のリセットスイッチ及び前記第2のリセットスイッチを制御して前記第1の蓄積領域及び前記第2の蓄積領域を前記リセット電位に接続してから該第1の蓄積領域及び該第2の蓄積領域を次に前記リセット電位に接続するまでの発光フレーム期間内の複数の第2の電荷転送サイクルにおいて、前記光源部に変調光を放出させ、第1の転送期間内に前記第1の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第1の蓄積領域に蓄積させ、前記第1の転送期間と位相反転した第2の転送期間内に前記第2の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第2の蓄積領域に蓄積させ、
複数の第2の読出しサイクルにおいて、前記複数の第2の電荷転送サイクルと交互の時点に前記第1の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第1の読出し値Q1及び該時点に前記第2の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第2の読出し値Q2を前記センサ部から取得し、
前記複数の第1の読出し値Q1の各々と該複数の第1の読出し値Q1の各々が取得された第2の読出しサイクルの順番とを近似する第1の近似式を作成し、前記複数の第2の読出しサイクルのうち所定番目の第2の読出しサイクルの第1の読出し値の補正値である第1の補正値を該第1の近似式を用いて算出し、
前記複数の第2の読出し値Q2の各々と該複数の第2の読出し値Q2の各々が取得された第2の読出しサイクルの順番とを近似する第2の近似式を作成し、前記複数の第2の読出しサイクルのうち前記所定番目の第2の読出しサイクルの第2の読出し値の補正値である第2の補正値を前記第2の近似式を用いて算出し、
前記複数の第2の読出しサイクルのうち初回の第2の読出しサイクルであって前記複数の第2の電荷転送サイクルのうち初回の第2の電荷転送サイクルよりも前の時点の該初回の第2の読出しサイクルにおいて取得された第1の読出し値と前記第1の補正値との和から、前記複数の第1の読出し値D1のうち前記所定番目の第1の読出し値を減算することにより、第1の推定値Q1estを算出し、
前記初回の第2の読出しサイクルにおいて取得された第2の読出し値と前記第2の補正値との和から、前記複数の第2の読出し値D2のうち前記所定番目の第2の読出し値を減算することにより、第2の推定値Q2estを算出し、
距離
L=(1/2)×c×T0×{Q2est×α/(Q1est+Q2est×α)}
により算出し、ここで、cは光速であり、T0は前記複数の第2の電荷転送サイクルの各々において前記光源部に変調光を放出させた時間長であり、αは同量の入射光が前記第1の転送期間及び前記第2の転送期間に前記光感応領域に入射する場合の前記第1の読出し値と前記第2の読出し値の比である、
距離測定装置。
【請求項2】
飛行時間法により対象物に対する距離を求める距離測定装置であって、
変調光を放出する光源部と、
入射光に応じて電荷を発生する光感応領域、前記光感応領域で発生した電荷を蓄積する第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域、前記光感応領域と前記第1の蓄積領域との間に設けられた第1の転送電極、前記光感応領域と前記第2の蓄積領域との間に設けられた第2の転送電極、前記第1の蓄積領域とリセット電位との間に設けられた第1のリセットスイッチ、並びに、前記第2の蓄積領域とリセット電位との間に設けられた第2のリセットスイッチを有するセンサ部と、
前記変調光の放出タイミング及び前記センサ部を制御して、距離を算出する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記第1のリセットスイッチ及び前記第2のリセットスイッチを制御して前記第1の蓄積領域及び前記第2の蓄積領域を前記リセット電位に接続してから該第1の蓄積領域及び該第2の蓄積領域を次に前記リセット電位に接続するまでの非発光フレーム期間内の複数の第1の電荷転送サイクルにおいて、前記光源部に変調光を放出させず、第1の転送期間内に前記第1の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第1の蓄積領域に蓄積させ、前記第1の転送期間と位相反転した第2の転送期間内に前記第2の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第2の蓄積領域に蓄積させ、
複数の第1の読出しサイクルにおいて、前記複数の第1の電荷転送サイクルと交互の時点に前記第1の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第1の読出し値D1及び該時点に前記第2の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第2の読出し値D2を前記センサ部から取得し、
前記第1のリセットスイッチ及び前記第2のリセットスイッチを制御して前記第1の蓄積領域及び前記第2の蓄積領域を前記リセット電位に接続してから該第1の蓄積領域及び該第2の蓄積領域を次に前記リセット電位に接続するまでの発光フレーム期間内の複数の第2の電荷転送サイクルにおいて、前記光源部に変調光を放出させ、第1の転送期間内に前記第1の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第1の蓄積領域に蓄積させ、前記第1の転送期間と位相反転した第2の転送期間内に前記第2の転送電極に与える電圧を制御して前記光感応領域で発生した電荷を前記第2の蓄積領域に蓄積させ、
複数の第2の読出しサイクルにおいて、前記複数の第2の電荷転送サイクルと交互の時点に前記第1の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第1の読出し値Q1及び該時点に前記第2の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた複数の第2の読出し値Q2を前記センサ部から取得し、
前記複数の第1の読出し値Q1の各々と該複数の第1の読出し値Q1の各々が取得された第2の読出しサイクルの順番とを近似する第1の近似式を作成し、前記複数の第2の読出しサイクルのうち所定番目の第2の読出しサイクルの第1の読出し値の補正値である第1の補正値を該第1の近似式を用いて算出し、
前記複数の第2の読出し値Q2の各々と該複数の第2の読出し値Q2の各々が取得された第2の読出しサイクルの順番とを近似する第2の近似式を作成し、前記複数の第2の読出しサイクルのうち前記所定番目の第2の読出しサイクルの第2の読出し値の補正値である第2の補正値を前記第2の近似式を用いて算出し、
前記複数の第1の読出し値D1の各々と該複数の第1の読出し値D1の各々が取得された第1の読出しサイクルの順番とを近似する第3の近似式を作成し、前記複数の第1の読出しサイクルのうち前記所定番目の第1の読出しサイクルの第1の読出し値の補正値である第3の補正値を該第3の近似式を用いて算出し、
前記複数の第2の読出し値D2の各々と該複数の第2の読出し値D2の各々が取得された第1の読出しサイクルの順番とを近似する第4の近似式を作成し、前記複数の第1の読出しサイクルのうち前記所定番目の第1の読出しサイクルの第2の読出し値の補正値である第4の補正値を前記第4の近似式を用いて算出し、
前記複数の第2の読出しサイクルのうち初回の第2の読出しサイクルであって前記複数の第2の電荷転送サイクルのうち初回の第2の電荷転送サイクルよりも前の時点の該初回の第2の読出しサイクルにおいて取得された第1の読出し値と前記第1の補正値との和から、前記第3の補正値を減算することにより、第1の推定値Q1estを算出し、
前記初回の第2の読出しサイクルにおいて取得された第2の読出し値と前記第2の補正値との和から、前記第4の補正値を減算することにより、第2の推定値Q2estを算出し、
距離Lを
L=(1/2)×c×T0×{Q2est×α/(Q1est+Q2est×α)}
により算出し、ここで、cは光速であり、T0は前記複数の第2の電荷転送サイクルの各々において前記光源部に変調光を放出させた時間長であり、αは同量の入射光が前記第1の転送期間及び前記第2の転送期間に前記光感応領域に入射する場合の前記第1の読出し値と前記第2の読出し値の比である、
距離測定装置。
【請求項3】
前記処理部は、n回目の前記第2の読出しサイクルの前記第1の読出し値Q1(n)とn−1回目の前記第2の読出しサイクルの前記第1の読出し値Q1(n−1)との間の第1の差分値と、n回目の前記第2の読出しサイクルの前記第1の読出し値Q1(n)との和、又は、n回目の前記第2の読出しサイクルの前記第2の読出し値Q2(n)とn−1回目の前記第2の読出しサイクルの前記第2の読出し値Q2(n−1)との間の第2の差分値と、n回目の前記第2の読出しサイクルの前記第2の読出し値Q2(n)との和が所定の閾値よりも小さい場合に、n+1回目以降の前記第2の読出しサイクルを停止し、ここでnは前記複数の第2の読出しサイクルの順番を示す、請求項1又は2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記第1の蓄積領域の飽和蓄積容量に対応する前記第1の読出し値以上、且つ、前記第2の蓄積領域の飽和蓄積容量に対応する前記第2の読出し値以上であるよう、予め定められている、請求項に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記センサ部は、一以上の画素ユニットを有しており、
該一以上の画素ユニットの各々が、
前記光感応領域、前記第1の蓄積領域、前記第2の蓄積領域、前記第1の転送電極、前記第2の転送電極、前記第1のリセットスイッチ、及び、前記第2のリセットスイッチと、
前記第1の蓄積領域の電荷量を電圧に変換する第1の変換部と、
前記第2の蓄積領域の電荷量を電圧に変換する第2の変換部と、
を有し、
前記一以上の画素ユニットに対応して設けられた一以上の第1のサンプルホールド回路であり、各々が対応する画素ユニットの前記第1の変換部によって生成される電圧を受けて、該電圧を保持する、該一以上の第1のサンプルホールド回路と、
前記一以上の画素ユニットに対応して設けられた一以上の第2のサンプルホールド回路であり、各々が対応する画素ユニットの前記第2の変換部によって生成される電圧を受けて、該電圧を保持する、該一以上の第2のサンプルホールド回路と、
を更に備え、
前記処理部は、前記一以上の第1のサンプルホールド回路の各々の出力に基づくデジタル値を有する前記第1の読出し値を取得し、前記一以上の第2のサンプルホールド回路の各々の出力に基づくデジタル値を有する前記第2の読出し値を取得する、
請求項1〜の何れか一項に記載の距離測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、距離測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源からパルス光を放出させ、対象物からの反射光を距離センサで受けることにより、対象物から距離センサまでの距離を測定する飛行時間(TOF:Time−of−Flight)法が知られている。
【0003】
下記の特許文献1〜2にはTOF法に基づく距離測定装置が記載されている。特許文献1に記載された装置は、光源からパルス光を放出させ、一つのフレーム期間内の異なる長さのサブ期間のそれぞれにおいて距離センサのフォトダイオードで発生した電荷の量に応じた値の信号を当該距離センサから取得し、取得した複数の信号のうち最良の信号に基づいて距離を算出する。
【0004】
特許文献2に記載された装置は、距離センサの実効ダイナミックレンジを広げるための構成を有している。具体的には、この装置は、光源からパルス光を放出させ、距離センサのフォトダイオードで発生した電荷をキャパシタに蓄積し、キャパシタに生じる電圧が飽和電圧に達するときに当該電圧をリセットし、リセットの回数とキャパシタに生じた最終の電圧とに基づいて、距離を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7,379,100号明細書
【特許文献2】特表2006−523074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した距離測定装置は、基本的に、距離センサが生成した一時点での信号に基づいて距離を算出するものである。このような距離測定装置では、例えば、光の揺らぎ、暗電流の変化、ショットノイズ等の影響により、距離の測定精度が低くなることがある。
【0007】
したがって、当技術分野においては、距離の測定精度を向上させた距離測定装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る距離測定装置は、飛行時間法により対象物に対する距離を求める距離測定装置である。この距離測定装置は、光源部、センサ部、及び処理部を備えている。光源部は、変調光を放出する。センサ部は、入射光に応じて電荷を発生する光感応領域、光感応領域で発生した電荷を蓄積する第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域、光感応領域と第1の蓄積領域との間に設けられた第1の転送電極、光感応領域と第2の蓄積領域との間に設けられた第2の転送電極、第1の蓄積領域とリセット電位との間に設けられた第1のリセットスイッチ、並びに、第2の蓄積領域とリセット電位との間に設けられた第2のリセットスイッチを有する。処理部は、変調光の放出タイミング及びセンサ部を制御し、距離を算出する。
【0009】
処理部は、フレーム期間、即ち、第1のリセットスイッチ及び第2のリセットスイッチを制御して第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域をリセット電位に接続してから第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域を次にリセット電位に接続するまでの期間内の複数の電荷転送サイクルにおいて、(a1)光源部に変調光を放出させ、(a2)第1の転送期間内に第1の転送電極に与える電圧を制御して光感応領域で発生した電荷を第1の蓄積領域に蓄積させ、(a3)第1の転送期間と位相反転した第2の転送期間内に第2の転送電極に与える電圧を制御して光感応領域で発生した電荷を第2の蓄積領域に蓄積させる。
【0010】
処理部は、複数の読出しサイクルにおいて、複数の電荷転送サイクルと交互の時点に第1の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた第1の読出し値及び当該時点に第2の蓄積領域に蓄積されている電荷量に応じた第2の読出し値をそれぞれセンサ部から取得する。
【0011】
処理部は、複数の第1の読出し値に基づく近似式を用いて第1の推定値を算出し、複数の第2の読出し値に基づく近似式を用いて第2の推定値を算出する。処理部は、第1の推定値及び第2の推定値に基づいて、距離を算出する。一実施形態においては、第1の推定値は、何れかの読出しサイクルの第1の読出し値に対応する推定値であり、第2の推定値は、何れかの読出しサイクルの第2の読出し値に対応する推定値であり得る。一実施形態においては、第1の推定値は、最終の読出しサイクルの第1の読出し値に対応する推定値であり、第2の推定値は、最終の読出しサイクルの第2の読出し値に対応する推定値であり得る。
【0012】
この距離測定装置では、距離の算出に用いられる第1の推定値及び第2の推定値がそれぞれ、最終の読出しサイクルまでに得られた第1の読出し値に基づく近似式及び第2の読出し値に基づく近似式を用いて算出される。したがって、複数の読出しサイクルで取得される第1の読出し値及び第2の読出し値の一部が外乱等により変動しても、第1の推定値及び第2の推定値では、変動を含む読出し値の影響が低減される。故に、この距離測定装置によれば、距離の測定精度が向上され得る。
【0013】
一実施形態においては、処理部は、n回目の読出しサイクルの第1の読出し値と、n回目の読出しサイクルの第1の読出し値とn−1回目の読出しサイクルの第1の読出し値との間の第1の差分値との和、又は、n回目の読出しサイクルの第2の読出し値と、n回目の読出しサイクルの第2の読出し値とn−1回目の読出しサイクルの第2の読出し値との間の第2の差分値との和が所定の閾値を超える場合に、n+1回目以降の読出しサイクルを停止してもよい。ここでnは読出しサイクルの順板を示している。この実施形態では、最終のn回目の読出しサイクルまでに得られた第1の読出し値に基づく近似式を用いて算出される第1の推定値、及び最終のn回目の読出しサイクルまでに得られた第2の読出し値に基づく近似式を用いて算出される第2の推定値を用いて、距離が算出される。この実施形態によれば、所定の閾値を用いることにより、第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域が飽和するまでに取得した第1の読出し値及び第2の読出し値を利用することができる。したがって、この実施形態によれば、測定距離のダイナミックレンジが向上され得る。また、距離の測定精度がより向上され得る。さらに、上述した和が所定の閾値を超える場合に、読出し値のセンサ部からの取得を停止することができるので、距離の算出を早期に開始することも可能である。
【0014】
一実施形態においては、前記閾値は、第1の蓄積領域の飽和蓄積容量に対応する第1の読出し値以上、且つ、第2の蓄積領域の飽和蓄積容量に対応する第2の読出し値以上であるよう、予め定められていてもよい。閾値が飽和蓄積容量に対応する読出し値と同値であれば、上述した和が第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域の飽和蓄積容量に対応する読出し値を超えない範囲で、第1の読出し値及び第2の読出し値がそれぞれセンサ部から取得される。閾値が第1の蓄積領域及び第2の蓄積領域の飽和蓄積容量に対応する読出し値より大きい場合には、入射光量と蓄積電荷量との関係の線形性がより優れた範囲でセンサ部を利用することができる。したがって、距離の測定精度がより向上され得る。
【0015】
一実施形態においては、センサ部は、一以上の画素ユニットを有していてもよい。一以上の画素ユニットの各々は、光感応領域、第1の蓄積領域、第2の蓄積領域、第1の転送電極、第2の転送電極、第1のリセットスイッチ、及び、第2のリセットスイッチと、第1の蓄積領域の電荷量を電圧に変換する第1の変換部と、第2の蓄積領域の電荷量を電圧に変換する第2の変換部と、を有していてもよい。この実施形態では、距離測定装置は、一以上の画素ユニットに対応して設けられた一以上の第1のサンプルホールド回路及び一以上の第2のサンプルホールド回路を備え得る。一以上の第1のサンプルホールド回路の各々は、対応する画素ユニットの第1の変換部によって生成される電圧を受けて、該電圧を保持する。一以上の第2のサンプルホールド回路の各々は、対応する画素ユニットの第2の変換部によって生成される電圧を受けて、該電圧を保持する。また、この実施形態では、処理部は、一以上の第1のサンプルホールド回路の各々の出力に基づくデジタル値を有する第1の読出し値を取得し、一以上の第2のサンプルホールド回路の各々の出力に基づくデジタル値を有する第2の読出し値を取得する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の一側面及び実施形態によれば、距離の測定精度を向上させた距離測定装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る距離測定装置を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係るセンサの一例を概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係るセンサにおける一つの画素ユニットの一例を示す平面図である。
図4図3のIV−IV線に沿って取った断面図である。
図5図3のV−V線に沿って取った断面図である。
図6】一実施形態に係るセンサ部の一つの画素ユニットと当該画素ユニット用の対応のサンプルホールド回路の回路図である。
図7】一実施形態に係る処理部の制御及び演算を示すフローチャートである。
図8】一実施形態に係る距離測定装置で利用される各種信号のタイミングチャートである。
図9】別の実施形態のセンサの一例を概略的に示す図である。
図10】別の実施形態に係るセンサ部の一つの画素ユニットと当該画素ユニット用の対応のサンプルホールド回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0019】
図1は、一実施形態に係る距離測定装置を概略的に示す図である。図1に示す距離測定装置10は、飛行時間法(TOF:Time−of−fligt)法により、対象物と当該距離測定装置10との距離を求める装置である。距離測定装置10は、光源部12、センサ部14、及び処理部16を備えている。
【0020】
光源部12は、変調光を放出する。一実施形態においては、光源部12は、レーザダイオード12a及びドライバ回路12bを有し得る。ドライバ回路12bは、処理部16からの駆動パルス信号に同期した変調電流を、レーザダイオード12aに供給する。レーザダイオード12aは、変調電流に応じて変調光を放出する。変調光は、例えば、一以上のパルス光を含み得る。
【0021】
センサ部14は、一実施形態においては、センサ18、デジタル−アナログ変換部(DAC)20、及び、アナログ−デジタル変換部(ADC)22、を有し得る。DAC 20は、処理部16の信号処理部16aからのデジタル信号をアナログ信号に変換して、当該アナログ信号をセンサ18に供給する。ADC 22は、センサ18からのアナログ信号をデジタル信号に変換して、当該デジタル信号を処理部16に供給する。
【0022】
処理部16は、光源部12の変調光の放出タイミング及びセンサ部14を制御して、距離を算出する。一実施形態においては、処理部16は、信号処理部16a及びメモリ16bを含み得る。信号処理部16aは、例えば、FPGA(Field−Programmable Gate Array)といった演算回路であり、メモリ16bは、SRAM(Static Random Access Memory)である。
【0023】
図2は、一実施形態に係るセンサの一例を概略的に示す図である。センサ18は、撮像領域IR、サンプルホールド回路群SHG、スイッチ群SWG、水平シフトレジスタ群HSG、信号ラインH1及びH2、並びに、出力アンプOAP1及びOAP2を含んでいる。
【0024】
一実施形態においては、図2に示すように、センサ18は、一行の画像を取得するラインセンサとして構成されていてもよい。この実施形態においては、撮像領域IRは、水平方向に配列された複数の画素ユニットP(j)を含んでいる。ここで、jは、1〜Jの整数であり、Jは、2以上の整数であり、画素ユニットの個数を示している。
【0025】
図3は、一実施形態に係るセンサにおける一つの画素ユニットの一例を示す平面図である。図4は、図3のIV−IV線に沿って取った断面図であり、図5は、図3のV−V線に沿って取った断面図である。画素ユニットP(1)〜P(J)は、図3図5に示す同一の構造を有している。
【0026】
図4及び図5に示すように、一実施形態においては、画素ユニットP(j)は、半導体基板SBを含んでいる。半導体基板SBは、例えばシリコン基板である。半導体基板SBは、第1の半導体領域SR1及び第2の半導体領域SR2を含んでいる。第1の半導体領域SR1は、半導体基板SBの一方の主面SBF1を提供するp型の半導体領域である。第2の半導体領域SR2は、第1の半導体領域SR1上に設けられたp−型の半導体領域である。第2の半導体領域SR2の不純物濃度は、第1の半導体領域SR1の不純物濃度以下である。半導体基板SBは、p型の半導体基板上に、p−型の半導体領域をエピタキシャル成長法により堆積させることにより、形成され得る。
【0027】
半導体基板SBの他方の主面SBF2上には、絶縁膜ISLが形成されている。絶縁膜ISLは、例えば、SiO製である。絶縁膜ISL上には、フォトゲート電極PGが設けられている。フォトゲート電極PGは、例えば、ポリシリコンによって構成される。図3に示すように、一実施形態では、フォトゲート電極PGは、略矩形の平面形状を有し得る。画素ユニットP(j)では、このフォトゲート電極PGの下方に位置する領域が、入射光に感応して電荷を発生する光感応領域として機能する。
【0028】
図4及び図5に示すように、絶縁膜ISL上には、第1の転送電極TX1、第2の転送電極TX2、及び第3の転送電極TX3が設けられている。これら転送電極TX1〜TX3は、例えば、ポリシリコンによって構成される。図3図5に示すように、第1の転送電極TX1及び第2の転送電極TX2は、それらの間にフォトゲート電極PGが存在するように、配置されている。
【0029】
一実施形態では、図3に示すように、四つの第3の転送電極TX3が絶縁膜ISL上に設けられている。二つの第3の転送電極TX3は、第1の転送電極TX1と第2の転送電極TX2が配列されている方向(以下、「X方向」という)に交差する方向(以下、「Y方向」という)において、第1の転送電極TX1がそれらの間に介在するように、配置されている。また、別の二つの第3の転送電極TX3は、Y方向において第2の転送電極TX2がそれらの間に介在するように、配置されている。
【0030】
図4に示すように、第2の半導体領域SR2には、第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2が形成されている。第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2は、光感応領域から転送される電荷を蓄積する。第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2は、それらの間に光感応領域が介在するように配置されている。一実施形態では、第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2は、n型の不純物が高濃度にドープされたn+型の半導体領域である。絶縁膜ISLは、第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2の上方において開口を画成している。これら開口内には、電極13が設けられている。電極13は、例えば、Ti/TiN膜を介して設けられたタングステンから構成される。
【0031】
X方向においては、第1の転送電極TX1は、第1の蓄積領域fd1上の電極13とフォトゲート電極PGとの間に存在しており、第2の転送電極TX2は、第2の蓄積領域fd2上の電極13とフォトゲート電極PGとの間に配置されている。第1の蓄積領域fd1に光感応領域から電荷を転送するときには、第1の転送電極TX1の下方の半導体領域のポテンシャルを低減させる電圧VTX1が第1の転送電極TX1に与えられる。この電圧VTX1は、信号処理部16aからのデジタル信号に基づいてDAC 20から与えられる。また、第2の蓄積領域fd2に光感応領域から電荷を転送するときには、第2の転送電極TX2の下方の半導体領域のポテンシャルを低減させる電圧VTX2が、第2の転送電極TX2に与えられる。この電圧VTX2は、信号処理部16aからのデジタル信号に基づいてDAC 20から与えられる。
【0032】
また、図5に示すように、第2の半導体領域SR2には、n+型の半導体領域SR3が形成されている。一実施形態では、四つの半導体領域SR3が設けられている。一対の半導体領域SR3及び別の一対の半導体領域SR3は、それらの間に光感応領域が介在するように設けられている。これら半導体領域SR3の上方において、絶縁膜ISLは、開口を画成しており、これら開口内には、電極13が設けられている。電極13は、例えば、Ti/TiN膜を介して設けられたタングステンから構成される。X方向において、一つの半導体領域SR3上の電極13とフォトゲート電極PGとの間には、対応の第3の転送電極TX3が介在している。半導体領域SR3には、第3の転送電極TX3に電圧VTX3を与えて当該第3の転送電極TX3の下方の半導体領域のポテンシャルを低減させることにより、光感応領域から電荷が転送される。この電圧VTX3は、信号処理部16aからのデジタル信号に基づいてDAC 20から与えられる。半導体領域SR3の電極13は、所定の電位Vddにも接続されている(図6参照)。この電位Vddは、信号処理部16aからのデジタル信号に基づいてDAC 20によって設定される。電圧VTX3を与えて該第3の転送電極TX3の下方の半導体領域のポテンシャルを低減させると、光感応領域の電荷はリセットされる。
【0033】
以下、図2と共に図6を参照する。図6は、一実施形態に係るセンサ部の一つの画素ユニット及び当該画素ユニット用の対応のサンプルホールド回路の回路図である。図2及び図6に示すように、センサ18のサンプルホールド回路群SHGは、J個の第1のサンプルホールド回路SH1及びJ個の第2のサンプルホールド回路SH2を含んでいる。各第1のサンプルホールド回路SH1及び各第2のサンプルホールド回路SH2は、対応の画素ユニットP(j)(画素ユニットP(1)〜P(J)のうち対応の画素ユニット)に接続されている。即ち、サンプルホールド回路群SHGは、各々が一つの第1のサンプルホールド回路SH1及び一つの第2のサンプルホールド回路を含むJ個のサンプルホールド回路対SHP(1)〜SHP(J)を含んでいる。J個のサンプルホールド回路対SHP(1)〜SHP(J)はそれぞれ、画素ユニットP(1)〜P(J)に対応付けられている。
【0034】
画素ユニットP(j)は、第1のリセットスイッチRS1、第2のリセットスイッチRS2、並びに、電荷−電圧変換回路A1及びA2を更に含んでいる。第1のリセットスイッチRS1は、リセット電位Vrと第1の蓄積領域fd1上の電極13との間に設けられている。第2のリセットスイッチRS2は、リセット電位Vrと第2の蓄積領域fd2上の電極13との間に設けられている。リセット電位Vrは、信号処理部16aからのデジタル信号に基づいてDAC 20によって設定される。
【0035】
第1のリセットスイッチRS1及び第2のリセットスイッチRS2には、信号処理部16aからリセットパルス信号Sresが与えられる。リセットパルス信号Sresが第1のリセットスイッチRS1及び第2のリセットスイッチRS2に与えられると、第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2は、リセット電位Vrに接続される。これにより、第1の蓄積領域fd1の電荷及び第2の蓄積領域fd2の電荷がリセットされる。第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2の電荷がリセットされるタイミングから次ぎにリセットされるタイミングまでの間の期間は、フレーム期間Tf(図8参照)となる。
【0036】
回路A1の入力は、第1の蓄積領域fd1上の電極13に接続されており、回路A1の出力は、サンプルホールド回路SH1のスイッチSW10に接続されている。回路A1は、第1の蓄積領域fd1の電荷量を電圧に変換し、当該電圧をサンプルホールド回路SH1に提供する。回路A2の入力は、第2の蓄積領域fd2上の電極13に接続されており、回路A2の出力は、サンプルホールド回路SH2のスイッチSW12に接続されている。回路A2は、第2の蓄積領域fd2の電荷量を電圧に変換し、当該電圧をサンプルホールド回路SH2に提供する。
【0037】
サンプルホールド回路SH1は、スイッチSW10及びキャパシタCP10を含んでいる。また、サンプルホールド回路SH2は、スイッチSW12及びキャパシタCP12を含んでいる。スイッチSW10及びスイッチSW12には、信号処理部16aからサンプリングパルス信号Ssampが与えられる。サンプリングパルス信号SsampがスイッチSW10及びスイッチSW12に与えられると、回路A1の出力とキャパシタCP10とが接続され、回路A2の出力とキャパシタCP12が接続される。これにより、回路A1の出力電圧がキャパシタCP10の両端間に保持され、回路A2の出力電圧がキャパシタCP12の両端間に保持される。
【0038】
センサ18のスイッチ群SWGは、J個のスイッチSW1及びJ個のスイッチSW2を含んでいる。各スイッチSW1及び各スイッチSW2はそれぞれ、画素ユニットP(1)〜P(J)のうち対応の画素ユニット用のサンプルホールド回路SH1のキャパシタCP10、及びサンプルホールド回路SH2のキャパシタCP12に、接続されている。即ち、スイッチ群SWGは、各々が一つのスイッチSW1及び一つのスイッチSW2を含むJ個のスイッチ対SWP(1)〜SWP(J)を含んでいる。J個のスイッチ対SWP(1)〜SWP(J)はそれぞれ、サンプルホールド回路対SHP(1)〜SHP(J)に対応付けられている。
【0039】
スイッチSW1及びスイッチSW2には、読み出しパルス信号Sreadが与えられる。読み出しパルス信号Sreadは、水平シフトレジスタ群HSGから供給される。水平シフトレジスタ群HSGは、J個の水平シフトレジスタを有している。水平シフトレジスタは、例えば、フリップフロップを含み得る。これら水平シフトレジスタは、画素ユニットP(1)〜P(J)の配列方向に配列されている。水平シフトレジスタ群HSG内の一端に設けられた水平シフトレジスタには、信号処理部16aからスタート信号が与えられる。また、全ての水平シフトレジスタには、信号処理部16aからクロック信号が与えられる。これらスタート信号及びクロック信号に応じて、J個の水平シフトレジスタはそれぞれ、読み出しパルス信号Sreadをスイッチ対SWP(1)〜SWP(J)に順次与える。
このように読み出しパルス信号Sreadが与えられることにより、サンプルホールド回路対SHP(1)〜SHP(J)のサンプルホールド回路SH1及びサンプルホールド回路SH2が、信号ラインH1及び信号ラインH2に順次接続される。
【0040】
より具体的には、読み出しパルス信号SreadがスイッチSW1及びSW2に与えられると、サンプルホールド回路SH1のキャパシタCP10及びサンプルホールド回路SH2のキャパシタCP12はそれぞれ、信号ラインH1及び信号ラインH2に接続される。これにより、サンプルホールド回路SH1に保持された電圧が信号ラインH1を介して出力アンプOAP1に入力される。また、サンプルホールド回路SH2に保持された電圧が信号ラインH2を介して出力アンプOAP2に入力される。出力アンプOAP1及び出力アンプOAP2はそれぞれ、入力された電圧を増幅して、増幅した電圧をADC 22に出力する。
【0041】
ADC22は、入力された電圧信号を当該電圧信号の大きさに応じた値を有するデジタル値に変換する。ADC22によって出力されるデジタル値は、処理部16のメモリ16bに記憶される。本実施形態では、出力アンプOAP1からの電圧信号に基づくデジタル値は、後述する第1の読出し値として、メモリ16bに記憶される。第1の読出し値は、第1の蓄積領域fd1の蓄積電荷量が多いほど小さい値となる。また、出力アンプOAP2からの電圧信号に基づくデジタル値は、後述する第2の読出し値として、メモリ16bに記憶される。第2の読出し値は、第2の蓄積領域fd2の蓄積電荷量が多いほど小さい値となる。
【0042】
以下、処理部16の制御及び演算について説明する。図7は、一実施形態に係る処理部16の制御及び演算を示すフローチャートである。また、図8は、一実施形態に係る距離測定装置で利用される各種信号のタイミングチャートである。処理部16は、各画素ユニットについて、図7及び図8を参照して以下に説明する制御及び演算を行う。
【0043】
一実施形態では、処理部16は、まず、光源部12から変調光を放出させない非発光フレーム期間において、N個の第1の読出し値D1(0,...,N)及び第2の読出し値D2(0,...,N)をセンサ部14から取得する(ステップS11)。
【0044】
具体的に、信号処理部16aは、初回の電荷転送サイクルの開始前にサンプリングパルス信号SsampをスイッチSW10及びスイッチSW12に与える。これにより、初回の電荷転送サイクルより前の時点に第1の蓄積領域fd1に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH1に保持され、当該時点に第2の蓄積領域fd2に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH2に保持される。
【0045】
次いで、信号処理部16aは、水平シフトレジスタから読み出しパルス信号SreadがスイッチSW1及びSW2に与えられるよう、水平シフトレジスタ群HSGにスタート信号及びクロック信号を送出する。これにより、処理部16は、第1の読出し値D1(0)及び第2の読出し値D2(0)をセンサ部14から取得する。
【0046】
次いで、信号処理部16aは、1回目〜N回目の電荷転送サイクル及び1回目〜N回の読出しサイクルを以下に説明するように実行する。ここで、Nは、予め定められた最大の電荷転送サイクルの順番を示す数値である。以下、読出しサイクルの順番を示すインデックスとして、記号「n」を用いる。
【0047】
信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルの第1の転送期間T1において第1の転送電極TX1にHighレベルの電圧信号VTX1が与えられるよう、デジタル信号をセンサ部14に与える。これにより、第1の転送期間T1においては、第1の転送電極TX1の下方の半導体領域、即ち、光感応領域と第1の蓄積領域fd1との間の半導体領域のポテンシャルが下がり、光感応領域から第1の蓄積領域fd1に電荷が転送される。また、信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルの第2の転送期間T2内に第2の転送電極TX2にHighレベルの電圧信号VTX2が与えられるよう、デジタル信号をセンサ部14に与える。これにより、第2の転送期間T2においては、第2の転送電極TX2の下方の半導体領域、即ち、光感応領域と第2の蓄積領域fd2との間の半導体領域のポテンシャルが下がり、光感応領域から第2の蓄積領域fd2に電荷が転送される。なお、非発光フレーム期間の第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2は、後述する発光フレーム期間の第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2と同様に、設定されている。
【0048】
また、一実施形態においては、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2の間、信号処理部16aは、第3の転送電極TX3にLowレベルの電圧信号VTX3が与えられるよう、デジタル信号をセンサ部14に与える。したがって、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2の間には、光感応領域と半導体領域SR3との間の半導体領域のポテンシャルは高いままで維持され、光感応領域に発生した電荷は、半導体領域SR3には転送されない。一方、第3の転送電極TX3には、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2以外の期間に、Highレベルの電圧信号VTX3が与えられる。したがって、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2以外の期間では、光感応領域に発生した電荷は半導体領域SR3に転送され、除去される。
【0049】
次いで、信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルの終了時点とn+1回目の電荷転送サイクルの開始時点との間の時点にサンプリングパルス信号SsampをスイッチSW10及びスイッチSW12に与える。これにより、複数の電荷転送サイクルと交互の時点に第1の蓄積領域fd1に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH1に保持され、当該時点に第2の蓄積領域fd2に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH2に保持される。次いで、信号処理部16aは、n回目の読出しサイクルにおいて、水平シフトレジスタから読み出しパルス信号SreadがスイッチSW1及びSW2に与えられるよう、水平シフトレジスタ群HSGにスタート信号及びクロック信号を与える。これにより、処理部16は、第1の読出し値D1(n)及び第2の読出し値D2(n)をセンサ部14から取得する。
【0050】
処理部16は、第1の読出し値D1(0,...,N)及び第2の読出し値D2(0,...,N)をセンサ部14から取得して、これら読出し値をメモリ16bに記憶する。非発光フレーム期間の電荷転送サイクルにおいては、処理部16は光源部12に変調光を放出させない。したがって、非発光フレーム期間において得られる第1の読出し値D1(0,...,N)及び第2の読出し値D2(0,...,N)は、背景光等のノイズ成分のみを反映している。これら、第1の読出し値D1(0,...,N)及び第2の読出し値D2(1,...,N)は、後に発光フレーム期間に取得される第1の読出し値Q1(0,...,N)及び第2の読出し値Q201,...,N)から、背景光等のノイズ成分を除去するために、減算される。
【0051】
次に、処理部16の信号処理部16aは、第1のリセットスイッチRS1及び第2のRS2にリセットパルス信号Sresを与えて、第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2をリセット電位Vrに接続する。これにより、第1の蓄積領域fd1に蓄積された電荷及び第2の蓄積領域fd2に蓄積された電荷がリセットされ(ステップS12)、次のフレーム期間Tfである発光フレーム期間が開始される。発光フレーム期間の電荷転送サイクルにおいては、光源部12に信号処理部16aから駆動パルス信号が与えられ、光源部12が所定のタイミングで変調光を放出する。
【0052】
発光フレーム期間においては、処理部16は、第1の読出し値Q1(0)及び第2の読出し値Q2(0)をセンサ部14から取得して、当該第1の読出し値Q1(0)及び第2の読出し値Q2(0)を、第1の読出し値及び第2の読出し値の初期値として、メモリ16bに記憶する(ステップS13)。具体的に、信号処理部16aは、初回の電荷転送サイクルCyの開始前にサンプリングパルス信号SsampをスイッチSW10及びスイッチSW12に与える。これにより、初回の電荷転送サイクルより前の時点に第1の蓄積領域fd1に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH1に保持され、当該時点に第2の蓄積領域fd2に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH2に保持される。
【0053】
次いで、信号処理部16aは、水平シフトレジスタから読み出しパルス信号SreadがスイッチSW1及びSW2に与えられるよう、水平シフトレジスタ群HSGにスタート信号及びクロック信号を送出する。これにより、処理部16は、第1の読出し値Q1(0)及び第2の読出し値Q2(0)をセンサ部14から取得する。第1の読出し値Q1(0)及び第2の読出し値Q2(0)は、最初のサンプリングパルス信号Ssampの出力時点、即ち、初回の電荷転送サイクルの前の時点に、第1の蓄積領域fd1に蓄積されている電荷量及び第2の蓄積領域fd2に蓄積されている電荷量にそれぞれ対応している。したがって、第1の読出し値Q1(0)及び第2の読出し値Q2(0)は、光源部12からの変調光が対象物から反射することにより発生する信号光成分を反映していない。
【0054】
次いで、信号処理部16aは、nを1にセットして(ステップS14)、1回目〜N回目の電荷転送サイクル及び1回目〜N回目の読出しサイクルを以下に説明するように試みる。
【0055】
まず、信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルCyにおいて、光源部12に駆動パルス信号SLを与えて、光源部12から変調光を放出させる(ステップS15)。光源部12からの変調光の放出期間の時間長は、T0である。なお、信号処理部16aは、駆動パルス信号SLとして、期間T0内に複数のパルス信号を光源部12に与えて、当該光源部12に複数のパルス光を放出させてもよい。
【0056】
信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルの第1の転送期間T1内に第1の転送電極TX1にHighレベルの電圧信号VTX1が与えられるよう、デジタル信号をセンサ部14に与える。また、信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルの第2の転送期間T2内に第2の転送電極TX2にHighレベルの電圧信号VTX2が与えられるよう、デジタル信号をセンサ部14に与える。
【0057】
第1の転送期間T1は、駆動パルス信号SLと同期している。即ち、駆動パルス信号SLの立ち上がりタイミングと電圧信号VTX1の立ち上がりのタイミングは略同期しており、駆動パルス信号SLの持続時間T0と第1の転送期間T1は、略同一の時間長である。
【0058】
また、第2の転送期間T2は、第1の転送期間T1と位相反転している。即ち、各電荷転送サイクルにおいて、第2の転送期間T2の位相は、第1の転送期間T1の位相から180度遅れている。より具体的には、電圧信号VTX1の立ち下がりタイミングと電圧信号VTX2の立ち上がりタイミングは略同期しており、第1の転送期間T1と第2の転送期間T2は、略同一の時間長である。
【0059】
また、一実施形態においては、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2の間、信号処理部16aは、第3の転送電極TX3にLowレベルの電圧信号VTX3が与えられるよう、デジタル信号をセンサ部14に与える。第3の転送電極TX3には、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2以外の期間に、Highレベルの電圧信号VTX3が与えられる。したがって、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2においては、光感応領域への入射光に応じた電荷は半導体領域SR3に転送されないが、第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2以外の期間では、光感応領域に発生した電荷は半導体領域SR3に転送されて、除去される。
【0060】
次いで、信号処理部16aは、第1の読出し値Q1(n)及び第2の読出し値Q2(n)をセンサ部14から取得して、当該第1の読出し値Q1(n)及び第2の読出し値Q2(n)をメモリ16bに記憶する(ステップS16)。
【0061】
具体的に、信号処理部16aは、n回目の電荷転送サイクルの終了時点とn+1回目の電荷転送サイクルの開始時点との間に、サンプリングパルス信号SsampをスイッチSW10及びスイッチSW12に与える。これにより、複数の電荷転送サイクルと交互の時点に第1の蓄積領域fd1に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH1に保持され、当該時点に第2の蓄積領域fd2に蓄積されている電荷量に対応する電圧がサンプルホールド回路SH2に保持される。
【0062】
次いで、信号処理部16aは、n回目の読出しサイクルにおいて、水平シフトレジスタから読み出しパルス信号SreadがスイッチSW1及びSW2に与えられるよう、水平シフトレジスタ群HSGにスタート信号及びクロック信号を与える。これにより、処理部16は、第1の読出し値Q1(n)及び第2の読出し値Q2(n)をセンサ部14から取得する。第1の読出し値Q1(n)は、n回目の電荷転送サイクルの終了時とn+1回目の電荷転送サイクルの開始時との間の時点に、第1の蓄積領域fd1に蓄積されている電荷量に対応した値であり、第2の読出し値Q2(n)は、当該時点に第2の蓄積領域fd2に蓄積されている電荷量に対応した値である。
【0063】
次いで、信号処理部16aは、第1の差分値k1(n)及び第2の差分値k2(n)を求める(ステップS17)。第1の差分値k1(n)は、n回目の読出しサイクルの第1の読出し値Q1(n)からn−1回目の読出しサイクルの第1の読出し値Q1(n−1)を減算することにより求められる。また、第2の差分値k2(n)は、n回目の読出しサイクルの第2の読出し値Q2(n)からn−1回目の読出しサイクルの第2の読出し値Q2(n−1)を減算することにより求められる。
【0064】
次いで、信号処理部16aは、予測値Q1(n+1)及び予測値Q2(n+1)を求める(ステップS18)。予測値Q1(n+1)は、n回目の読出しサイクルの第1の読出し値Q1(n)に第1の差分値k1(n)を加算することにより、求められる。また、予測値Q2(n+1)は、n回目の読出しサイクルの第2の読出し値Q2(n)に第2の差分値k2(n)を加算することにより、求められる。予測値Q1(n+1)は、n+1回目の読出しサイクルの第1の読出し値の予測値であり、予測値Q2(n+1)は、n+1回目の読出しサイクルの第2の読出し値の予測値である。
【0065】
次いで、信号処理部16aは、第1の予測値Q1(n+1)及び第2の予測値Q2(n+1)を所定の閾値Qthと比較する(ステップS19)。一実施形態においては、閾値Qthは、第1の蓄積領域fd1の飽和蓄積容量に対応する第1の読出し値以上、且つ、第2の蓄積領域fd2の飽和蓄積容量に対応する第2の読出し値以上の値であるよう設定されている。第1の予測値Q1(n+1)が閾値Qth以上であり、且つ、第2の予測値Q2(n+1)が閾値Qth以上である場合には、ステップS19の判定結果は「No」となり、信号処理部16aの処理はステップS20に進む。ステップS20では、nがN以上であるか否かがテストされる。ステップS20においてnがNより小さい場合には、信号処理部16aは、nの値を1だけ増分し(ステップS21)、ステップS15からの処理を繰り返す。一方、ステップS20においてnがN以上である場合には、信号処理部16aの処理はステップS22に進む。
【0066】
また、ステップS19の比較の結果、第1の予測値Q1(n+1)又は第2の予測値Q2(n+1)が閾値Qthを超える、即ち、閾値よりも小さい場合には、信号処理部16aの処理はステップS22に進む。したがって、処理部16は、第1の予測値Q1(n+1)又は第2の予測値Q2(n+1)が閾値Qthを超える場合には、n+1回目以降の読出しサイクルを停止する。即ち、信号処理部16aは、n+1回目以降の読出しサイクルにおける第1の読出し値及び第2の読出し値のセンサ部14からの取得、及びn+1回目以降の読出しサイクルにおける第1の読出し値及び第2の読出し値のメモリ16bへの記憶を停止する。
【0067】
閾値Qthが、第1の蓄積領域fd1の飽和蓄積容量に対応する第1の読出し値及び第2の蓄積領域fd2の飽和蓄積容量に対応する第2の読出し値のうち大きい方の読出し値と同値である場合には、処理部16は、第1の蓄積領域fd1の飽和蓄積容量に対応する読出し値を超えない範囲の第1の読出し値Q1(n)を取得することができ、第2の蓄積領域fd2の飽和蓄積容量に対応する読出し値を超えない範囲の第2の読出し値Q2(n)を取得することができる。その結果、測定距離のダイナミックレンジが向上され得る。また、距離の測定精度が向上される。さらに、信号処理部16aのステップS22以後の演算を早期に開始することも可能である。
【0068】
一実施形態においては、閾値Qthは、第1の蓄積領域fd1の飽和蓄積容量に対応する第1の読出し値及び第2の蓄積領域fd2の飽和蓄積容量に対応する第2の読出し値のうち大きい方の読出し値よりも大きな値に設定されていてもよい。この実施形態によれば、第1の蓄積領域fd1及び第2の蓄積領域fd2それぞれの蓄積電荷量と入射光量との関係の線形性が優れた範囲で、センサ部14を利用することができる。したがって、距離の測定精度がより向上され得る。
【0069】
次に、信号処理部16aは、第1の推定値Q1est及び第2の推定値Q2estを求める(ステップS22)。具体的には、信号処理部16aは、最終の読出しサイクルであるn回目の読出しサイクルまでの第1の読出し値Q1(0)〜Q1(n)に基づく近似式を作成し、当該近似式を用いて第1の読出し値Q1の補正値Q1corrを算出する。そして、信号処理部16aは、式(1)に示すように、第1の読出し値Q1の補正値Q1corrと第1の読出し値Q1(0)との和から読出し値D1(n)を減算することにより、第1の推定値Q1estを算出する。
<式(1)>
Q1est=Q1corr+Q1(0)−D1(n)
【0070】
同様に、信号処理部16aは、最終の読出しサイクルであるn回目の読出しサイクルまでの第2の読出し値Q2(0)〜Q2(n)に基づく近似式を作成し、当該近似式を用いて第2の読出し値Q2の補正値Q2corrを算出する。そして、信号処理部16aは、式(2)に示すように、第2の読出し値Q2の補正値Q2corrと第2の読出し値Q2(0)との和から読出し値D2(n)を減算することにより、第2の推定値Q2estを算出する。
<式(2)>
Q2est=Q2corr+Q2(0)−D2(n)
【0071】
一実施形態においては、第1の読出し値Q1の補正値Q1corrは、n回目の読出しサイクルの第1の読出し値Q1(n)の補正値であり、第2の読出し値Q2の補正値Q2corrは、n回目のサイクルの第2の読出し値Q2(n)の補正値であり得る。なお、補正値Q1corr及びQ2Corrは、近似式の出力として得られる補正値であれば、対応する読出しサイクルの番号は限定されるものではない。
【0072】
なお、近似式は、最小自乗法に基づいて作成され得る。また、その他の公知の近似式の作成方法が用いられてもよい。また、信号処理部16aは、読出し値D1(0)〜D1(n)に基づく近似式を用いて、読出し値D1の補正値を算出し、当該読出し値D1の補正値を第1の読出し値Q1の補正値Q1corrと第1の読出し値Q1(0)との和から減算して、第1の推定値Q1estを算出してもよい。ここで、読出し値D1の補正値及び読出し値Q1の補正値Q1corrは、同じ順番の読出しサイクルの読出し値D1の補正値及び読出し値Q1の補正値である。同様に、信号処理部16aは、読出し値D2(0)〜D2(n)に基づく近似式を用いて読出し値D2の補正値を算出し、当該読出し値D2の補正値を第2の読出し値Q2の補正値Q2corrと第2の読出し値Q2(0)との和から減算して、第2の推定値Q2estを算出してもよい。ここで、読出し値D2の補正値及び読出し値Q2の補正値Q2corrは、同じ順番の読出しサイクルの読出し値D2の補正値及び読出し値Q2の補正値である。
【0073】
第1の推定値Q1estは、近似式を用いて算出した第1の読出し値の補正値と第1の読出し値Q1(0)との和から別のフレーム期間において求めた背景光等のノイズ成分に対応する第1の読出し値を減算したものである。また、第2の推定値Q2estは、近似式を用いて算出した第2の読出し値の補正値と第の読出し値Q(0)との和から別のフレーム期間において求めた背景光等のノイズ成分に対応する第2の読出し値を減算したものである。したがって、最終の読出しサイクルまでに取得される第1の読出し値及び第2の読出し値の一部が外乱等により変動しても、近似式に基づく第1の推定値Q1est及び第2の推定値Q2estでは、変動を含む読出し値の影響が低減され得る。また、第1の推定値Q1est及び第2の推定値Q2estでは、背景光等のノイズの影響が低減され得る。
【0074】
次いで、信号処理部16aは、距離を算出する(ステップS23)。具体的には、信号処理部16aは、下記の式(3)の演算により、距離Lを算出する。
<式(3)>
L=(1/2)×c×T0×{Q2est×α/(Q1est+Q2est×α)}
ここで、cは光速であり、αは同量の入射光が第1の転送期間T1及び第2の転送期間T2に光感応領域に入射したときの第1の読出し値と第2の読出し値の比である。このように、信号処理部16aは、第1の蓄積領域fd1の蓄積電荷量に基づく第1の推定値Q1estと第2の蓄積領域fd2の蓄積電荷量に基づく第2の推定値Q2estの比により、対象物に対する距離を高精度に算出することができる。一実施形態においては、信号処理部16aは、各画素について算出した距離に応じた濃淡値を有する1行の距離画像を出力する。また、一実施形態においては、信号処理部16aはフレーム期間ごとに距離画像を更新するよう、図7及び図8を用いて説明した制御及び演算を繰り返してもよい。
【0075】
以下、別の実施形態について説明する。図9は、別の実施形態に係るセンサの一例を示す図である。図10は、別の実施形態に係るセンサ部の一つの画素ユニットと当該画素ユニット用の対応のサンプルホールド回路の回路図である。距離測定装置10は、センサ18に代えて、図9に示すセンサ18Aを有していてもよい。センサ18Aは、I×J個の画素ユニットP(i,j)を有する撮像領域IRを有している。ここで、iは1〜Iの整数であり、jは1〜Jの整数であり、I及びJは2以上の整数である。I×J個の画素ユニットP(i,j)は、I行J列に配列されている。撮像領域IRには、画素ユニットの各列用の二つの垂直信号ラインV1(j)及びV2(j)が設けられている。
【0076】
図10に示すように、センサ18Aの画素ユニットP(i,j)の回路A1の出力にはスイッチSW20が接続されており、当該スイッチSW20は対応の垂直信号ラインV1(j)を介して対応のサンプルホールド回路SH1のスイッチSW10に接続されている。また、画素ユニットP(i,j)の回路A2の出力にはスイッチSW22が接続されており、当該スイッチSW22は対応の垂直信号ラインV2(j)を介して対応のサンプルホールド回路SH2のスイッチSW12に接続されている。
【0077】
センサ18Aは、更に垂直シフトレジスタ群VSGを更に有している。垂直シフトレジスタ群VSGは、垂直方向に配列された複数の垂直シフトレジスタを含んでいる。各垂直シフトレジスタは例えばフリップフロップを含んでいる。配列方向において一端に設けられた垂直シフトレジスタには、信号処理部16aからスタート信号が与えられる。また、全ての垂直シフトレジスタには、信号処理部16aからクロック信号が与えられる。垂直シフトレジスタ群VSGは、スタート信号及びクロック信号を受けると、複数の画素ユニットP(i,j)のスイッチSW20及びスイッチSW22に、行選択信号を行順に順次与える。これにより、各列の複数の画素ユニット(i,j)の回路A1及びA2の出力は、対応の垂直信号ラインV1(j)及びV2(j)に順次接続されて、複数の画素ユニットP(i,j)の出力電圧が、対応のサンプルホールド回路SH1及びSH2に、行順に順次保持される。また、各行内の複数の画素ユニット(j,i)の出力電圧が対応のサンプルホールド回路SH1及びSH2に保持されると、サンプルホールド回路SH1及びSH2に保持された電圧は、水平シフトレジスタ群HSGから与えられる読み出しパルス信号により、信号ラインH1及びH2に列順に順次結合される。そして、図7で説明した演算を各画素ユニットについて行うことにより、信号処理部16aは二次元の距離画像を形成することができる。
【0078】
なお、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、図9に示した実施形態では、画素ユニットの列ごとに対応のサンプルホールド回路SH1及びSH2が設けられているが、画素ユニットごとに対応のサンプルホールド回路SH1及びSH2が設けられていてもよい。また、撮像領域IRの画素ユニットの個数は、一つであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…距離測定装置、12…光源部、12a…レーザダイオード、12b…ドライバ回路、14…センサ部、16…処理部、16a…信号処理部、16b…メモリ、18…センサ、20…DAC(デジタル−アナログ変換部)、22…ADC(アナログ−デジタル変換部)、fd1…第1の蓄積領域、fd2…第2の蓄積領域、TX1…第1の転送電極、TX2…第2の転送電極、A1…電荷−電圧変換回路(第1の変換部)、A2…電荷−電圧変換回路(第2の変換部)、SH1…第1のサンプルホールド回路、SH2…第2のサンプルホールド回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10