【実施例】
【0032】
実施例2
本発明の細胞(例えばEPC)コーティング方法論を適用可能なステント送達系には、例えば、BardによるFluencyステント送達系、およびev3によるProtegeステント送達系が含まれる。例として
図10に示すのは、Bardによるステント用のFluency送達系である。この原理的な設計は、限定されるわけではないが、冠動脈、胆管、血管および気管気管支ステントを含む、異なるステント製造者に渡って、非常に類似である。
【0033】
図11に示すように、細胞含有溶液を送達系の遠位ポート(K)(例えば
図10中を参照されたい)から内部カテーテル鞘内に導入してもよい。内部カテーテルをマクロ孔(約1mm直径)で修飾し、そして細胞溶液が内部カテーテルおよび搭載されたステント(例えばニチノールステント)の内表面間の空間内に送り込まれるように、カテーテル先端の穴に蓋をしてもよい。
図11には示されていないが、ステントが内部カテーテル上にあり、そしてカテーテルの外部鞘によって拘束されている。細胞溶液が、内部カテーテルおよびステントの内表面間の空間内に送り込まれるにつれて、溶質がマイクロ孔を通じて周囲に出て行き、そして細胞(例えばEPC)が自己拡張ステント(ニチノール)内表面上に引き込まれるように、マイクロ孔で外部鞘を修飾する(
図12を参照されたい)ことによって、溶媒引き込みが生じる。ステントが植え付けられたら、キャップを取り外し、そしてガイドワイヤ上で血管内に挿入することによって、標準的方式で送達系を用いてもよい。ガイドワイヤは狭窄血管を通過し、そしてワイヤが内部カテーテル内をスライドする間、ステント送達系を血管内に導くように、「モノレール」として働く。
【0034】
実施例8に詳細に記載される別のそして好ましいアプローチは、ステント送達系のサイドポート(
図10(L))を利用することによって、内部カテーテル鞘およびステント間の空間内に細胞溶液を直接導入することである。こうした送達系の特定の例は、Cordis PRECISEニチノールステント系(5.5F Precise、カタログ番号P05040XC)(4x40mm非拘束ステント)であり、これは以下の実施例8で修飾され、そしていわゆるTuohy Borst Y連結(この特定の設計において)を通じてステントおよび内部カテーテル鞘間の空間のアクセスを可能にする。細胞溶液をこの空間内に導入することによって、
図11に例示するように内部カテーテル鞘内に、ドリルで穴(マクロ孔)を開ける必要がなくなる。
【0035】
ニチノールステントは、そのユニークな「記憶」特性のため、自己拡張性である。したがって、ステンレススチールステントの場合のように、「バルーン拡張」は必須ではない。しかし、特定の状況下で、ステントをさらに開放し、そして血管の輪郭によりよく適応するために、自己拡張性ステント(例えばニチノールステント)がバルーン拡張される。バルーン拡張中、細胞の損傷を防止するため、修飾ステント設計を使用してもよい。
【0036】
修飾ステント設計は、ニチノールまたは他の自己拡張性チタン合金ステントにも適用可能である。これらの設計原理は、他のステント、例えば純粋316Lステンレススチールステント、例えばCordis Cardiology, Johnson and Johnson Company、ニュージャージー州ブリッジウォーターによるCypherステントにもまた適用可能である。
【0037】
修飾ステント設計にしたがって、ステントは、チタン・マイクロ孔を伴って焼結され、該孔は、「安全な溝」を提供可能であり、そして植え付けられた細胞(例えばEPC)がバルーン拡張中に損傷を受けないように保護しうる(
図13を参照されたい)。これによって、ステントを膨らませても細胞に最小限の損傷しか与えずに済む。細胞を保護する他の方法には、限定されるわけではないが、細胞(例えばEPC)直径より大きいサイズの金微粒子の表面上での固定、および電子ビームを用いて、レジストで覆われた表面の領域を選択的に取り除き、金属表面にトランスファー可能であり、そして細胞のための「安全な溝」を提供可能な微小パターンを生じる、電子ビームリソグラフィーが含まれる。あるいは、ステント支柱の内表面上に、細胞を保護しうる小さいくぼみを与える方式で、ステント支柱を修飾してもよい。エッチング、研磨、機械的スクラッチング、焼成、高温でFeCl
3中に浸すことによる孔食、塩素溶液中の金属への陽極電位の適用である電気化学孔形成、放電加工(EDM)およびレーザーアブレーションを含む多様な方法を用いて、これらの溝を生成してもよい。レーザーアブレーションならびにEDMが後者の方法の中で好ましい技術である。EDMにおいて、電極またはワイヤおよびステント金属間で放電が起こり、そして電極またはワイヤのそれぞれのサイズが表面において生じる溝の直径を決定し、そしてこれは、数100μmの範囲内であるはずである。
【0038】
実施例3
チタンチューブ内表面上にEPCを植え付けるため、チューブ、ポンプまたは任意の他の中空デバイスの内表面上がどのように細胞の集密層で裏打ち可能であるかを示すのに役立つ、特別な植え付けデバイス/バイオリアクターを設計した。植え付けデバイス/バイオリアクターは、細胞培地が満たされた植え付けチャンバー(改造したピペットボックス)内部でチタンチューブを回転させる(
図14を参照されたい)。モーター(Synchronous Timingモーター、Herbach and Rademan、ニュージャージー州モレスタウン)を、ステンレススチール軸を介し、赤いゴムストッパーを通じて、ポリスルホンディスクに連結する。ステンレススチール突起は、回転ポリスルホンディスクへのオートクレーブ可能なシラスティックチュービング片内に装填された、Tiチューブを保護するのを可能にした。Tiチューブ内部にEPC溶液を保持するため、シラスティックチュービングの末端は、丸い透析膜(Spectra/Por Biotechセルロースエステル透析膜、MWCO 1x10
6、Spectrum Laboreatorises、カリフォルニア州ランチョドミンゲス)で塞ぎ、これはOリングで覆われたアルミニウム挿入物に対してネジ止めされたポリスルホン隔壁フィッティング内部に保持される。全植え付けチャンバーに細胞培地を満たし、回転するチタンチューブが、細胞植え付けプロセス中、完全に浸るようにする。チタンチューブのどちらかの端の透析膜は、気体および培地交換を可能にする。植え付けチャンバーはまた、細胞植え付けプロセス中、例えば漏れのために、培地レベルが低下した場合には警報を誘発する、滅菌可能浮きプローブも装備する。さらに、滅菌温度プローブ(Mon−a−therm、Tyco Healthcare、カリフォルニア州プレザントン)を通じて、温度を監視する。ラミナフローフード(sterilGARD、メイン州サンフォード)下でチャンバー全体を組み立て、そして次いで、37℃および5%CO
2の水ジャケット・インキュベーターに入れる。植え付けチャンバー上部を半透膜(AeraSeal、EXCEL Scientific、カリフォルニア州ライトウッド)で覆い、インキュベーター内部で気体交換が生じうるが、細菌混入が不可能であるようにする。
【0039】
植え付けプロセス中の最適回転速度は、植え付けようとするチューブ、ポンプまたは他の任意の中空デバイスの直径と線形関係で変化する。具体的には、上述のチタンチューブの寸法(12mm直径)に関しては、最適植え付け条件は、およそ0.6〜2x10
6細胞/ml、好ましくはおよそ1x10
6細胞/mlの植え付け密度で、2時間の期間に渡って、1時間あたり10回転(rph)の速度であると決定されている(また、上記により詳細に記載する等式v
s=(2/9)x(R
2/μ)x(ρ
c−ρ
m)
gに基づく細胞定着時間に関する原理を参照されたい)。その後、シラスティックチュービングのいずれかの末端上のポリスルホンキャップを外し、そしてチューブの反対の一端のノズルを通じてデバイスに(流入)、0.5〜1ダイン/cm
2のおよその剪断ストレスで、55時間の期間に渡って灌流し、その間ずっと、チタンチューブを10rphで回転させ続ける。流出は、インキュベーター外に置かれたポンプ(Masterflex、Cole−Parmer、イリノイ州バーノンヒルズ)に培地を戻す。これらの条件は、これらのチューブ内のEPCの完全に集密な裏打ちを信頼性を持って生成するために理想的であると決定された。
【0040】
MCADを、HeartMateIIIに関して以下に詳細に記載するように、細胞(例えばEPC)でコーティングしてもよい。このMCADは、例示目的のみのために用いられる。以下に提供する原理は、製造者とは独立に、任意のLVADまたは人工心臓を細胞でコーティングする際に適用可能である。
【0041】
図15は、LVADの主な構成要素の模式図である。示すのは、内部モーター/ポンプを外部環境に連結するワイヤを収納するドライブラインである。LVADが完全に移植されたら、ドライブラインは、持ち運び可能電池または壁面コンセントに連結可能であるように、患者皮膚を貫通する。やはり示すのは流入および流出カニューレである。流入カニューレは、心臓に連結され、そして血液がMCAD内に流入するのを可能にする。流出カニューレは、MCADを大動脈に連結し、そしてしたがって、血液が循環内にポンピングされるのを可能にする。
【0042】
図16に示すように、ハードシェル「エンケーシング」は、全LVADを完全に取り囲む。このエンケーシングは、細胞でコーティングしようとするLVADに、ぴったり取り付けられる。示す設計は、異なる(非EPC)細胞タイプ(例えば線維芽細胞)でのドライブライン(および/または他の部分)外部の同時細胞植え付けを可能にする。これは、より迅速な組織内殖の利点を有し、それによってドライブライン感染のリスクが減少する。エンケーシングは、デバイス内部を満たすのに用いられる溶液とは異なる細胞溶液で満たすことも可能な中空の周囲を提供する。成形に応じて、この異なる細胞溶液は、ドライブライン、またはLVADの他の部分と接触してもよい。また、これは、MCADの無菌「ラッピング」も提供する。このエンケーシングは、透明なプラスチックであってもよく、開封し、そして細胞(例えばEPC)でコーティングしたLVADを取り出した後、廃棄してもよい。
【0043】
図17は、LVADを保持するエンケーシングが、軸上をどのように回転可能であるかを示す。軸中央のホルダーは、軸へのエンケーシングの取り付けを可能にし、そしてエンケーシングを取り除き、そしてLVADを移植しようとする際に、開封可能である。軸の右側に、動的密封回転装置を示す。この回転装置を以下により詳細に記載する。簡潔には、内部シリンダーが軸と一緒に回転することを可能にするが、固定された外部セルを有する。軸の左側は中空であり、そして内部に回転電気コネクターを配置することを可能にする(以下を参照されたい)。
【0044】
図18は、植え付けデバイスチャンバー内部に配置される、エンケーシングされたLVADを示す。示す植え付けデバイスチャンバーは、植え付けデバイスチャンバーのどちらかの壁上での軸の吊り下げを可能にし、そしてまた、動的密封回転装置の外部シェルの固定も可能にする。植え付けデバイスチャンバーは、エンケーシングおよびすべての部分を含むLVADを完全に封入する。該デバイスは、組み立て後に滅菌可能であり、そして使用時にのみ開封される。植え付けデバイスチャンバーは、透明で丈夫な材料、例えばPlexiglasで構築されてもよい。
【0045】
図19は、密封回転装置の例を示す(示すのは、GPシリーズ4部回転装置、Dynamic Sealing Technologies、ミネソタ州アンドーバーである)。この例において、内部シリンダー中の4つの開口部は、個々のチャネル内部の流体が別個に維持され、そして外部マントル中の個々の開口部に対応するように、回転装置内部の4つのチャネルに対応する。密封回転装置の目的は、異なる流体区画(LVAD内部およびドライブラインを取り巻く外部)の灌流を可能にすることである。数時間かかりうる、最初のEPC植え付け期間の後、廃棄物を排除し、そして細胞に栄養素および酸素を提供するため、LVADを培地で灌流してもよい。回転装置シリンダー中の4つの別個の開口部は360度の回転を可能にし、一方、マントル中の対応する4つの開口部は固定されていてもよい。これらのチャネルのうち2つを用いて、LVADを灌流してもよく、一方は流入そしてもう一方は流出である。他の2つを用いて、ドライブライン周囲の流体区画を灌流してもよい。
【0046】
図20は、密封回転装置をLVAD(例えばチュービングを含む)にどのように連結可能であり、そしてまた、ドライブライン(エンケーシングによって形成される)周囲の区画にどのように連結可能であるかを示す。これによって、異なる区画(LVAD内部およびLVAD外部、特にドライブライン)の、2つの異なる細胞溶液(例えば内部に関してはEPC、そして例えば、外部に関しては線維芽細胞)での同時灌流を可能にする。いくつかのLVADにおいては、ドライブラインを取り除いてもよい。ドライブラインを別個のチャンバー中に植え付け、そして灌流してもよい。
【0047】
図21は、植え付けデバイスチャンバー内部に配置されるLVADを示し、そして密封回転装置が、チュービングを通じて、異なる区画にどのように連結可能であるかを示す。
図22は、チュービングを通じて、異なる区画に連結された密封回転装置を伴う、植え付けデバイスチャンバー内部に吊されたLVADを外側から示す。
【0048】
図23は、回転電気コネクター(別名スリップリング)の付加を示す。この回転電気コネクターは、植え付けデバイスチャンバー内部の部分が、LVADおよびドライブラインとともに回転し、そして電気連結の外部部分が適所に固定されるように、ドライブラインに連結可能である。この設計は、LVADへの電力連結を可能にし、そしてLVADが植え付け後にそれ自体を灌流することを可能にする。LVAD内表面に接着したEPCは、その機械的受容体を通じて、LVAD移植後に経験するであろう剪断ストレスを正確に感知可能であり、そしてしたがって、ex vivoでプレコンディショニング可能である。EPCは、プレコンディショニング期中に、特定のLVADによって生成される剪断力に最適に耐えるように、細胞骨格を再編成することによって、反応する。また、外部ポンプを用いて、チャンバー内部のLVADを灌流してもよい。
【0049】
図24は、LVADの軸がモーターにどのように連結可能であるかを示す。植え付けデバイスチャンバー中の密封回転装置を離れるチュービングを、2つの異なる細胞溶液用の2つの容器に連結してもよい。ドライブライン周囲の区画の灌流を可能にする外部ポンプ(例えばローラーポンプ)を示す。LVADがそれ自体を灌流しない場合、上に示すように、第二のポンプを用いて、チャンバー内部のLVADを灌流してもよい。
【0050】
図25は、密封回転装置を離れる際に、チュービングを閉鎖するかまたは開放する自動電気チュービングクランプの付加を示す。植え付けプロセス(引力によって仲介される)終了後、チュービングを自動的に開放し、そしてポンプ(ならびにLVAD)を開始するコンピュータに、電気チュービングクランプを連結してもよい。コンピュータはまた、最初の細胞植え付けプロセス中に、モーターの回転速度を制御可能である。回転速度は、デバイスの形状に応じて、1回転内で多様であってもよい。チュービングの開放は、栄養素、廃棄物を交換し、そして細胞に酸素を提供するため、細胞が植え付けられた区画の灌流を可能にしうる。2つの容器は、CO
2分圧を制御し、そして培地を37℃の温度に維持するインキュベーター中に収納可能である。
【0051】
自給式植え付けデバイス/バイオリアクターが、LVAD植え付けと関連して上に詳細に記載されているが、植え付けられるであろうデバイスを回転させ、そして細胞接着が達成された後、該デバイスを培地または他の溶液で灌流して(細胞植え付けと同時にまたはその直後に)、細胞に栄養分を与え、そして流動するように条件付ける(その間ずっと、無菌にし、そして自給式のままにする)この方法を用いて、LVAD以外の中空のまたは多孔性の構造/デバイスに植え付けてもよい。こうした自給式植え付けデバイスおよび/またはバイオリアクターを用いて、LVAD表面、および他の表面上にEPCを植え付けてもよく、そしてまた、植え付けられたEPCが完全に集密な単層に増殖するのを可能にしてもよいが、好ましいアプローチは、それぞれの表面に迅速に、例えば数分以内に、手術室テーブル上でまたはカテーテル検査室で、移植直前に植え付け、そして完全に集密な単層が樹立されるまで待たないものである。この目的のため、EPCを上述のように植え付けてもよく、自給式植え付けデバイスおよび/またはバイオリアクターを用いて、重力に基づく植え付けプロセスを利用し、回転植え付けデバイスを用い、そしてこうして植え付けられた表面が集密に到達する前に移植する。こうした迅速植え付けプロセスの特定の例に関しては、実施例7を参照されたい。
【0052】
これらのアプローチを用いて、例えば血管グラフト、透析グラフト、人工血管、組織操作移植可能中空デバイス、人工腸管、組織操作腸、歯科移植物、人工/組織操作気管または気管支樹部分、大動脈グラフト、心臓弁、シャント、胆管、膵管、涙管、脳脊髄液含有シャント、人工臓器の操作に必要な管またはチューブ、ステント、移植可能チューブ、ポンプ、バイオセンサー、移植可能チュービングおよび他の移植可能中空チューブ、構造またはデバイスに植え付けてもよい。
【0053】
実施例4
広い表面(例えばMCADのもの)をEPCの集密な裏打ちで覆おうとする場合に好適でありうるように、チタン表面上でのEPC拡散速度を増加させるため、培地組成を変化させた(血清飢餓EPC培地を用いることによる)効果、および細胞外マトリックスタンパク質(例えばフィブロネクチン(FN))で表面をプレコーティングする効果の評価を行った。チタンおよびチタン合金は、マトリックス分子、例えばFNのコンホメーションおよび配向に影響を及ぼし、そしてより小さいΔD/Δfおよびより大きいフットプリントによって示されるように、これらがよりコンパクトなコンホメーションを、そしてそれとともに、RGDインテグリン結合部位の異なる立体化学配置を取るようにする(Hemmersamら, J. Colloid Interface Sci. 320:110−116(2008))。血清飢餓およびFNプレコーティングはどちらも、植え付け後の最初の数時間の間、EPC拡散を加速しうることが見出された。
【0054】
より長い期間に渡るどちらかの効果を評価するため、血清リッチ培地中のFNプレコーティング・チタン試料(fn1s1)(
図26A)を、血清飢餓培地中のFNプレコーティング・チタン試料(fn1s0)(
図26B)、血清リッチ培地中の裸の非コーティング・チタン試料(fn0s1)(
図26C)および血清飢餓培地中の裸の非コーティング・チタン試料(fn0s0)(
図26D)に比較した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中、1cm
2表面積あたり3μgのヒトFN(Sigma−Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を室温で3時間チタンに物理吸着させることによってプレコーティングを達成した。EPCをセル・トラッカー・オレンジで蛍光標識し、そして6,500細胞/cm
2の密度で植え付けた。8時間インキュベーションした後、すべてのEPCを画像化し、そして個々の面積をLeicaソフトウェア(Leica、Image−Pro Plusバージョン6.3、メリーランド州ベセスダ)で測定した。総計1,662の個々のEPC面積を、同じ条件下、連続4回の実験で定量化した。4回の異なる実験条件に関して、平均表面積を計算した。多重線形回帰モデルを行い、ここで、実験条件、実験数、および2つの間の相互作用が予測変数であり、そして表面積が結果であった。分散分析を調べ、そしてp<0.05を統計的有意性として認めた。実験数および相互作用に関して調節する間、FNでプレコーティングしたEPCは、他の実験条件に比較した際、8時間後、チタン上で有意により迅速に拡散した(
図27および表2)。SASバージョン8.2(ノースカロライナ州キャリー)でデータ分析を行った。
【0055】
表2
異なるプレコーティング上でのEPC拡散の統計分析
多重線形回帰モデルを行い、ここで、実験条件、実験数、および2つの間の相互作用が予測変数であり、そして表面積が結果であった。
【0056】
【表1】
実施例5
上記実験で用いるチタン試料の表面粗度の研究を行った。細胞拡散および接着に関する最適な結果は、非常に滑らかな表面で達成された。
【0057】
チタン試料の表面粗度/粒子サイズを分析し、そして定量化するため、これらをAFM測定に供した。最初に、試料をSDSでリンスし、窒素流下で乾燥させ、そして次いで、スチール試料ディスク上にマウントした。AFMトポグラフィー画像を空中で行い、そして低く適用された垂直抗力(<1nM)下で得て、そしてMultiMode原子間力顕微鏡(Digital Instruments、カリフォルニア州サンタバーバラ)を用いて、V型窒化ケイ素カンチレバー(Nanoprobe、Veeco、バネ定数0.12N/m;先端半径20〜60nm)を用い、接触モードで収集した。2μm
2面積に渡って測定した平均表面粗度は、およそ11nmであることが見出された(
図28)。
図29は、チタン試料の表面トポグラフィーの三次元画像を示す。
【0058】
実施例7
以下のように、平均粗度350μM(
図51を参照されたい)の化合物純粋チタン(Ti)チューブを組み立て、そして移植用に調製した。Tiチューブを3つの長軸方向部分にあらかじめ切り、そして王水(1:3のモル比の濃硝酸および濃塩酸)中に5分間浸し、その後、石鹸溶液(Alconox粉末、1:100に希釈)中で5分間、超音波処理し、その後、脱イオン水中で5分間、超音波処理することによって清浄化した。脱イオン水でさらに30回リンスした後、ラミナフローフード下で、Ti部分を風乾した。酸化チタン・パーセントが高い純粋チタン表面に対して、EPC接着が最適である(X線光電子分光法によって評価した際)ことが見出されているため、チタン表面から環境由来炭素および窒素混入物を除去するために、極めて注意深い清浄化が必要である。塵のない環境において(ラミナフローフード下)、Ti片周囲に医学等級ポリ塩化ビニル(PVC)熱収縮チュービングを熱収縮させることによって、こうして清浄になったTi部分をTiチューブに組み立て直した。3つの個々のTi部分を心棒上に置くことによって、組み立てを容易にした。ヒートガンを用いて、PVCチュービングをTi周囲に熱収縮させた(
図39を参照されたい)。
【0059】
EPC含有溶液でTiチューブを満たすため、Tiチューブの各端をシラスティックチュービング(医学等級シリコンゴムチュービング、外径17mm、内径12.7mm)のおよそ1.5インチ部分内に挿入し、そして10mlシリンジのカットオフ端を1つのチュービング部分内に挿入した(
図40中のTiチューブの左端に示す)。すべての部分を使用前にガス滅菌(酸化エチレン)した。植え付け時、10mlシリンジを血清不含EPC培地(EGM−2を含むEBM−2、Lonza/Clonetics)中の蛍光標識EPCで満たし、そしてチューブの反対側、未結合のチュービング端内に挿入した(
図40中のTiチューブの右端に示す)。次いで、デバイスを垂直に保持して、そして10mlシリンジのピストンを押した際、EPC含有溶液をTiチューブ内に押し込みつつ、空気をTiチューブのもう一方の端を通じて、より具体的には、シラスティックチュービング中に挿入されたカットオフシリンジ先端を通じて逃した。Tiチューブの全管腔がEPC含有溶液で満たされたならば、カットオフシリンジ先端のルアーロックをストップコックで閉鎖した。Tiチュービングのシラスティックチュービング部分内に挿入された10mlシリンジを取り除かずに、全デバイスを滅菌カバー内に入れ(滅菌グローブを用いた)、そして(非滅菌)植え付けデバイス内に挿入した。血清(アルブミン)は、植え付けの最初の数分中、金属表面へのEPC結合を妨害するため、血清不含培地の使用は、この植え付け工程に重要であることが見出された。
【0060】
迅速植え付け方法論にしたがい、移植直前の数分以内にデバイスに植え付ける。この目的のため、Tiチューブ(この時点で、EPC溶液で満たされ、そして滅菌カバー内にある)を、植え付けデバイスの回転ポリスルホンヘッドのF−16ステンレススチール突起内に挿入し(
図41)、そして37℃のインキュベーター内に入れた。回転速度(および植え付け時間)は、植え付けようとするチタンチューブまたはデバイスのサイズ(半径)に応じる。この特定の例のため、Tiチューブ(内半径=6.4mm)を用いた。移植は、右腎の高さであり、そして内半径6.4mmのTiチューブを成功裡に下大動脈に適合させるため、右腎動脈および静脈を連結させる必要があった。(続く実験において、内半径4.7mmまたは3.0mmを有する、より小さいTiチューブを用いるであろう。)1時間あたり10回転の回転速度および30分の植え付け時間(または全部で5回転)で、最適な結果を達成した。例えば4.7mmの内半径を持つ、より小さいサイズのチューブに植え付けるため、22分の植え付け時間、および内半径=3mmのチューブには、例えば1時間あたり13〜14回転の回転速度を用いてもよく、15分間の期間には、1時間あたり例えば20回転の回転速度を用いてもよい。1ml EPC培地あたり1〜2x10
6細胞のEPC濃度で、最適な植え付け結果が達成された。さらに、これらの条件下でのEPCは、明記した期間中、密封された気体浸透性Tiチューブ内で、生存し、そして機能性であるままであることが見出された。
【0061】
図42および43に示すような流動循環において、流動への直接曝露を伴う短い植え付け期間の後、集密表面を生じる能力を、ex vivoで試験した。インキュベーター(5%CO
2、37℃)内のパルス吸収材、容器、および心肺バイパスポンプ(未提示)からなる流動ループ内に挿入されたTiチューブを示す。流動は、すべての実験において、x48時間で維持された。次いで、Tiチューブを取り除き、熱収縮材料をメスで切り、そして3つのTi部分各々を蛍光顕微鏡で画像化して、集密内皮裏打ちを確認した。
【0062】
Tiチューブを体重60kgのヨークシャーブタ内に移植した。ブタは、血液と接触する表面の生体適合性を研究するための確立された動物モデルとして、長年に渡る歴史を有する(Ueberrueckら, J. Surg. Res. 124(2):305−311(2005))。さらに、ブタは、凝固生物学および炎症の研究のため、最も認められるモデルの1つである(Velik−Salchnerら, Thromb. Res. 117(5):597−602(2006)、Kangら, Thromb. Haemost. 89(2):256−263(2003)、Dal Nogareら, Am. Rev. Respir. Dis. 142(3):660−667(1990))。ブタの血液は、ヒト血液に比較して、わずかに過凝固性であるため、ブタは、原理研究の証明のための優れたモデルである(Velik−Salchnerら, Thromb. Res. 117(5):597−602(2006))。これらのブタにおいて、抗血栓表面を生成することが可能であるため、こうした技術はヒトでもまた成功すると予期されうる。
【0063】
下大動脈を単離し、そして移植部位の近位および遠位でクランプする前に、血管ループで固定した(
図44を参照されたい)。静脈切開術を行い、そしてチタンチューブを挿入した。その後、静脈切開を連続した6−0Proline縫合で閉鎖し、そして血管クランプを除去することによって流動を確立した。対照ブタに裸の(非コーティング)Ti移植物を移植し、そして試験ブタにはEPC裏打ちTi移植物を移植した。
【0064】
ブタを正常な(ブタ)生理学的パラメーターで2時間維持した後、Tiチューブを外植した。これを行うため、IVCをデバイスの近位および遠位で交差クランプし、そして静脈の両端を重バサミ(heavy scissors)で切断した。周囲の静脈を含めてデバイスを一括して取り除き、そして手術室テーブル上で直ちに写真を撮影した。注目すべきことに、対照移植物(裸のTiのみ)の全管腔は血栓症によって閉鎖された(
図45)。外植後、動物を安楽死させた。
【0065】
熱収縮チュービングをメスで切断することによって、Tiチューブを3つの長片に分解した。全管腔を満たす血餅を
図46に示す。EPCで裏打ちしたデバイスを用いて、同じ処置を反復した。
図47に示すように、EPCでコーティングしたデバイス中には血餅はなかった。試験動物および対照動物間のすべての実験条件は同一であった。
【0066】
3つのTi片をリン酸緩衝生理食塩水溶液で洗浄し、そして10%ホルマリン溶液中で固定した。蛍光顕微鏡によって、移植前に植え付けた密度と同じ密度で蛍光標識細胞が存在することが立証された(
図48、40xでの画像)。さらに、細胞がin vivoで拡散し始めるのが観察され、これは表面積が増加し、そして丸さが減少することによって明らかである(
図49、200xでの画像)。
【0067】
実施例8
EPCは、Ti表面に著しくよく接着し、集密単層に増殖し、そして生理学的剪断ストレス下で保持される。これらの発見、ならびに迅速な(2〜3分間)細胞植え付けを可能にする、修飾ニチノールステント送達系の開発を上述する。
【0068】
決定から実際の移植までが30日以上の時間間隔であることによって定義されるような選択的手術で、現在、〜70%はニチノールステントが用いられているため、ステント候補である、末梢動脈疾患患者の大部分では、EPCを単離し、そして培養することが可能である。さらに、採血あたりのEPCの収量は、採血数時間前にAMD3100を投与することによって有意に増加しうる(Shepherdら, Blood 108(12):3662−3667(2006))。AMD3100は、自家EPCを単離する成功率を10倍増加させ、少数の患者において軽度の副作用が報告されるのみである(Shepherdら, Blood 108(12):3662−3667(2006))。したがって、単回の末梢血の採血から90%を超える確実性でEPCを単離可能である。
【0069】
ステント送達系を製造し、画像化/再圧縮を最適化する。ニチノールステント送達系(Cordis PRECISE)のステント鞘内に多数の小さい穴をドリルで開けてもよい(
図50)。各穴は、細胞より小さいが(10μm以下)、流体の通過を可能にし、上述のように、EPCがステント支柱上に迅速に植え付け可能であるようにする。355nm周波数三倍化Nd:YAGレーザーを用いて、鞘の全長に沿って100μmのピッチでプラスチック鞘にドリルで穴を開けてもよく、外周上、36の直線状の線として穴を開ける。Cell Tracker(Invitrogen)で標識し、そして蛍光顕微鏡で画像化することによって、ステント支柱上のEPCを視覚化してもよい。多数回の実験のため、修飾ステント送達系を再使用するために、送達系の遠位内部カテーテル先端を切断し、そしてステントを氷水に浸しながら、プラスチック漏斗(ピペット先端)に通過させることによって、ステントを再装填してもよい。
【0070】
圧駆動流動を通じて、EPCを非展開ステント上に植え付け可能であるように、ステント送達系を修飾してもよい。レーザーを用いて、プラスチック支持鞘中、ドリルで穴を開けてもよい。2〜3分以内にステントの完全な植え付けを達成するのに必要な流速、ならびに穿孔処理したステント鞘に渡る圧低下を計算し、そして非接着細胞を定量化することによって実験的に検証することも可能である。性能を改善するため、圧低下を調節し、そして/または鞘内により多くの穴を開けて調べてもよい。
【0071】
蛍光顕微鏡を用いて、展開ステント表面上のEPCの画像化を最適化してもよい。どの倍率および配置が、接着細胞に関して、曲がったステント支柱をスキャンするための最も包括的な方法を生じるかに関して、決定を行ってもよい。必要であれば、視野に関してステントを移動させそして回転させることが可能な、顕微鏡ステージ用のステントホルダーを構築してもよい。
【0072】
実験のため、修飾鞘を多数回再利用するため、Ti表面に関して先に記載したように、ステントを清浄化してもよく(Achneckら, Microsc. Res. Tech. 73(1):71−76(2010))、そして修飾ステント鞘内に再装填するため、ステントを再圧縮してもよい。拡張されたステントを再圧縮するために、ニチノールが氷水中で可鍛性になるという事実を利用してもよい。
【0073】
EPC植え付けを最適化し/ex vivoで、生理学的剪断ストレス下、細胞保持を評価する。確立されたプロトコルにしたがって、ヒトおよびブタの末梢血からEPCが成功裡に単離されてきている(Yoderら, Blood 109(5):1801−1809(2007))。これらの細胞は、光学顕微鏡および電子顕微鏡によって、内皮細胞(EC)形態を有し、そして免疫蛍光およびフローサイトメトリーによって典型的なECマーカーを示す。ニッケルが血液中に浸出しないように、表面上がTiのみである層で、ニチノールステントをコーティングするため、実験目的のためにTiスライドを製造した。CHA Industries Solution Eビーム蒸着系を用いて、ピラニア洗浄した(piranha cleaned)ガラススライド上に、100nmのTiを沈着させ、そしてX線光電子分光法(Wangら, Applied Surface Science 253:8507−8512(2007))を用いて、試料の原子組成がTi(酸化チタン)であることを確認した。Tiの原子間力顕微法によって、表面粗度がおよそ10nmであることが明らかになり、これはニチノールステントの電解研磨表面によく匹敵した(Thierryら, Biomaterials 23(14):2997−3005(2002))。
【0074】
EPCは、こうしたTi表面に非常によく接着し、そして全表面を完全に覆う集密層に増殖する。さらに、Ti上での寿命が長い(培養中で>1週間)ことを、AlamarBlueバイオアッセイで確認した。流動条件下でEPC接着を評価するため、多様な高さの流動チャンバー(Mathurら, J. Biomed. Mater. Res. A. 64(1):155−163(2003))を用いて、所定の流動実験に関してTiスライド上でいくつかの異なる剪断ストレスでのEPC保持を調べた。以下の式:τ=6μQ/wh
2、式中、τはダイン/cm
2での剪断ストレスであり、μは粘度であり、Qは流速であり、wはチャネルの幅であり、そしてhは高さである、を用いて、EPCに作用する壁剪断ストレスを計算した。蛍光標識EPCを、緩衝生理食塩水中で、Tiスライドとともに15分間だけインキュベーションして、細胞が定着し、そしてTi表面にかろうじて接着するのを可能にした。次いで、こうして植え付けられたスライドをフローチャンバー内に挿入し、そして非常に高い剪断ストレスに曝露する5分前および曝露した5分後に画像化した。
【0075】
結果は、生理学的動脈条件の最大20倍の剪断ストレス下で、EPCがTi表面に優れた接着を示すことを示す。したがって、迅速植え付け法でニチノールステントに植え付け可能であり、そしてEPCの接着を予期可能である。長期流動下でニチノールステント表面上のEPCの集密層の振る舞いを評価するため、EPCを植え付けたTiスライドを平行な平面流動チャンバーに入れ、そして動脈剪断ストレスでの連続流動に48時間曝露した。流動前および流動後に画像を得た。培地試料を収集して、先に記載されるように(Allenら, Nitric Oxide 20(4):231−237(2009))、Ionics/Sievers一酸化窒素分析装置で、化学発光によって代謝物、亜硝酸塩を測定することによって、一酸化窒素(NO)産生を決定した。EPC単層が生理学的剪断下で保持されることが見出された。さらに、EPCは自身を流動方向に整列させ、そして静置条件下よりも流動下で、有意により多いNOを産生することによって、その環境に適応した(p=0.0008)。
【0076】
さらなる実験において、上で決定した流速で、ステント送達系の側面ポートを通じて、蛍光標識EPCをフラッシュしてもよい。この植え付けプロセス(2〜3分間)後、側面ポートに生理食塩水をフラッシュして、非接着細胞を取り除いてもよい。フラッシュ溶液を収集して、非接着細胞を計数してもよい。その後、ステントを拡張し、そして画像化してもよい。Image Jソフトウェアを用いて、ステント支柱面積あたりの細胞密度を決定してもよい。接着細胞の最大数を達成するため、植え付け溶液中の最適EPC濃度を決定してもよい。鞘を画像化して、穴に固着した細胞が存在しないことを確認してもよい。均一な植え付けのために穴の数が不十分である場合、さらなる穴をステント鞘内にドリルで開けてもよい。
【0077】
剪断ストレス下での展開したステント上でのEPC保持を評価するため、上で決定した条件下で、EPCで修飾した鞘中に、ガス滅菌したステントを植え付けてもよい。植え付けたステントをシリコンチュービング内で展開して、そして流動循環内に挿入してもよい。ステントに接着したEPCを生理学的剪断に供してもよい。流動48時間後、上述のように、シリコンチュービングを切断することによって、ステントを取り除いて、そして画像化してもよい。
【0078】
上に引用するすべての文書および他の情報供給源はその全体が本明細書に援用される。