特許第5782034号(P5782034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5782034補償エレメントを有する還元剤の送給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782034
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】補償エレメントを有する還元剤の送給装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   F01N3/08 BZAB
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-527275(P2012-527275)
(86)(22)【出願日】2010年8月19日
(65)【公表番号】特表2013-504001(P2013-504001A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2010062076
(87)【国際公開番号】WO2011026733
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年5月23日
(31)【優先権主張番号】102009039735.3
(32)【優先日】2009年9月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500038927
【氏名又は名称】エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンステクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100102185
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 繁範
(74)【代理人】
【識別番号】100129399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】ホジソン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シェパーズ スヴェン
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−509277(JP,A)
【文献】 実開昭61−142993(JP,U)
【文献】 実開平02−071016(JP,U)
【文献】 米国特許第06209315(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤を送給し、導き、そして計量するための、液体還元剤を送給するための送給装置(1)であって、前記送給装置(1)は、還元剤タンク(2)、送給ユニット(6)、計量ユニット(8)、還元剤ライン(7)を備え、そしてそれは、液体還元剤で満たされることができる液体還元剤全体のボリューム(9)を共有し、前記送給ユニット(6)と少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)は、前記還元剤タンク(2)から前記計量ユニット(8)までの前記還元剤ライン(7)に沿って、いずれかの特定の場所に設けられ、前記少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)は、送給装置(1)内の液体還元剤が凍結する前に液体還元剤の冷却が起こり液体還元剤の冷却中に、前記送給装置(1)において負圧が優勢のときに、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズを減少させるのに適する、送給装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)は、ダイアフラム(10)の形態に設計され、そのために接触面が提供され、前記接触面(11)は、前記送給装置(1)において正圧が優勢のときに、前記ダイアフラム(10)が実質的に動かないで前記接触面(11)を圧迫するように、そして、前記送給装置(1)において負圧が優勢のときに、前記ダイアフラム(10)が非常に自由に偏向位置へと移動することができるように設計される、請求項1に記載の送給装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)は、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズを最大5%まで減少させることを許容する、請求項1または2に記載の送給装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)は、500ミリバールを下回る負圧で前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズを最大5%まで減少させることを許容する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の送給装置(1)。
【請求項5】
前記送給装置において正圧の閾値(12)に達したときに、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズを増加させるのに適した少なくとも1つの第2の補償エレメント(25)があり、前記正圧の閾値(12)を下回る圧力が優勢のときに、前記少なくとも1つの第2の補償エレメント(25)は、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズの増加を実質的には許容しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の送給装置(1)。
【請求項6】
前記正圧の閾値(12)は、少なくとも5バールである、請求項5に記載の送給装置(1)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第2の補償エレメント(25)は、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズを最大15%まで増加させることができる、請求項5または6に記載の送給装置(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第2の補償エレメント(25)は、前記正圧の閾値(12)に達するときに、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズを増加させる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の送給装置(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2の補償エレメント(25)は、プレロード下で表層部(13)の形態に設計され、前記正圧の閾値(12)を上回る正圧が優勢のときに、前記表層部(13)は、前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズが増加するように、前記プレロードと反対に移動することができる、請求項5〜8のいずれか1項に記載の送給装置(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)および前記少なくとも1つの第2の補償エレメント(25)は、複合補償エレメントとして共同で形成される、請求項5〜9のいずれか1項に記載の送給装置(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1の補償エレメント(4)は、前記送給ユニット(6)と前記計量ユニット(8)との間に配置される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の送給装置(1)。
【請求項12】
還元剤タンク(2)、送給ユニット(6)、計量ユニット(8)、還元剤ライン(7)内が液体還元剤で満たされた液体還元剤全体のボリューム(9)を有する送給装置(1)内の液体還元剤を凍結させる方法であって:
a)前記送給装置(1)内の前記液体還元剤を冷却する(前記送給装置(1)の前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズは、前記還元剤ライン(7)に沿って、いずれかの特定の場所に設けられる第1の補償エレメント(4)によって減少する)ステップ;および、
b)前記送給装置(1)内の前記液体還元剤を凍結させる(前記送給装置(1)の前記液体還元剤全体のボリューム(9)のサイズは、前記還元剤ライン(7)に沿って、いずれかの特定の場所に設けられる第2の補償エレメント(25)によって増加する)ステップ;
を少なくとも有する、方法。
【請求項13】
内燃機関(15)、および選択接触還元を実施するために設計された排気システム(3)、ならびに還元剤を還元剤タンク(2)から前記排気システム(3)内へと送給するための請求項1〜11のいずれか1項に記載の送給装置(1)を備える自動車(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤タンクから排ガス浄化システム内へと液体還元剤を送給するための送給装置に関する。送給装置は特別な補償エレメントを備える。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガスにとっての現在の放出限界値(近い将来さらに厳しくなる)に関して、実用車および自動車において排ガス浄化のためのSCRシステムの使用は増加している。ここで、還元剤は、様々な形態で、特に水溶液(Denoxium、AdBlue)中に存在する還元剤前駆体の形態で使用される。AdBlueは、ほぼ32.5重量パーセントの尿素比率を有する利用可能な尿素水溶液の商品名である。SCR技術の使用において、低い環境温度で、さもなければ対流の結果としての冷却効果で、還元剤が凍結し得る点に注意されなければならない。尿素水溶液は、概して−11℃以下の温度で凍結する。液体から固体への還元剤の相変化に起因するボリューム(容積、容量、体積)の増加の結果として、SCRシステムの構成要素(例えば送給装置のフィルタ、還元剤ラインまたは弁)は、損傷を受ける虞がある。
【0003】
前記周知の課題の解決として、膨張を補償するために、ボリューム補償エレメントを有するフレキシブルな1または複数の還元剤ラインを設けることが提案された。そしてそれは、凍結する還元剤または還元剤前駆体の氷圧の結果として、還元剤ラインのボリュームを増加させる。このことが構成要素の側面から安価でかつ信頼性の高い適切な保護の形態へと発展することは、しかしながらいまだ可能ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に関してさらに改良された補償エレメントを有する還元剤のための送給装置を特定することは、本発明の目的である。補償エレメントは、凍結プロセスによって送給装置に提示されるリスクをさらに低下させる。さらに、それは、前記タイプの送給装置にとっての目標とされる凍結方法を提案しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、請求項1の特徴による送給装置によって、そしてさらに、請求項12の特徴による方法によって達成される。装置のさらに有利な改良は、従属請求項において特定される。請求項において個々に特定される特徴は、任意の所望の技術的に意味のある方法において互いに組み合わされてよい。そして、特定されている本発明のさらなる設計異型については、記述からの説明的な事実によって補充されてよい。
【0006】
本発明による装置は、還元剤を送給し、導き、そして計量するための、少なくとも1つの第1の補償エレメントを有する、液体還元剤を送給するための装置である。この送給装置は、還元剤タンク、送給ユニットさらには還元剤ラインおよび計量ユニットを備え、そしてそれは、還元剤で満たされることができる全体のボリューム(容積、容量、体積)を共有する。少なくとも1つの第1の補償エレメントは、送給装置において負圧が優勢のときに、全体のボリュームのサイズを減少させるのに適する。
【0007】
本発明の文脈の範囲内で、負圧は、周囲圧力に対する負圧を意味する。同様に、正圧は、周囲圧力に対する正圧を意味する。
【0008】
本発明は、送給装置内の還元剤が凍結する前に、還元剤の冷却が常に起こり、そしてその冷却中に、還元剤のボリュームの減少が起こるという認識に基づく。尿素水溶液についての測定は、ボリュームの重要な減少が、20℃から0℃までの還元剤の冷却中に、すでに起こることを示した。従来技術から公知の送給装置では、ボリュームの前記減少のせいで、送給装置内に減圧が形成される。その減圧は、還元剤タンクから送給ユニットの弁を通して送給装置内へと送給される付加的な還元剤を生じさせる。その結果、送給装置の充填レベルは、冷却中に増加する。この程度まで冷却した還元剤がさらに冷却するときに、それはほぼ−11℃の温度で凍結し始める。ここで、ボリュームの増加は、冷却中に以前に起こるボリュームの減少よりも大きく起こる。ボリュームの前記増加は、送給装置内の増加した圧力につながる。圧力の前記増加は、冷却中にボリュームが減少する間に、送給ユニットを通して送給装置内へと付加的に吸い込まれた付加的な還元剤がある場合により増える。本発明による補償エレメントによって、送給装置内の付加的な還元剤のボリュームは、減少されることができるか、または完全に除去されることさえできる。そうすると、本発明による送給装置において、送給装置が氷圧に耐えることを確実にするためにとらなければならない対策はより小さい。
【0009】
送給装置において負圧が優勢でない限り送給装置がボリュームを減少させず、そして、負圧が優勢のときに、第1の補償エレメントがボリュームの減少を非常に急速にかつ非常に自由に許容する場合、それはここで特に有利である。このようにして、送給装置は、作動範囲において(すなわち0バールを上回る圧力で)、実質的に圧縮不可能な挙動を呈することを確実にされることができる。このようにして、送給装置によって提供される還元剤圧力の高度な均一性を達成することは、可能である。同時に、作動中の圧力増加の結果として、送給装置の弾力性のある膨張のために不必要なエネルギーが費やされることはない。
【0010】
少なくとも1つの第1の補償エレメントが、ダイアフラムの形態に設計され、そのために接触面が提供され、その接触面が、送給装置において正圧が優勢のときに、ダイアフラムが実質的に動かないで接触面を圧迫するように、そして、送給装置において負圧が優勢のときに、ダイアフラムが全体のボリューム内へと移動することができるように設計される場合、送給装置はさらに特に有利である。
【0011】
接触面は、例えば、送給装置の一連の内壁の一部でよい。
【0012】
ダイアフラムの下流の接触面において、例えば、送給装置において負圧が優勢のときに、ダイアフラムと接触面との間を空気等が自由に通過することのできる孔が設けられてよい。ダイアフラムによって送給装置の全体のボリュームから切り離される空気は、したがって、送給装置における全体のボリュームの一部を満たす。負圧が優勢のときに、ダイアフラムは非常に容易に変形できることが好ましい。なぜなら、比較的薄いダイアフラムの大きい表面積は、容易に曲がることができるからである。正圧が優勢のときに、ダイアフラムは接触面に対して押圧される。ダイアフラムの動きは、その後、接触面における記述された孔の領域のみで例えば可能である。前記孔は、しかしながら、ダイアフラムが圧迫する接触面に関して非常に小さい。孔の非常に小さい領域全体から見ると、ダイアフラムは、それが他の領域におけるのと同じ厚みをそこで有する場合であっても、比較的堅い。この理由で、ダイアフラムは、孔の内部に有意な程度に膨張することができない。そうすると、システムにおいて正圧が優勢のときに、全体のボリュームの有意な増加がない。
【0013】
孔に代わるものとして、格子もまた、ダイアフラムの下流に設けられてよい。ダイアフラムが全体のボリューム内に自由に膨張することは、それから再び可能である。その一方で、システムにおいて正圧が優勢のときに、ダイアフラムは格子を圧迫し、そして、格子の個々の開口内へのダイアフラムの膨張は、有意な程度には起こらない。
【0014】
部分的に異なる厚みによってダイアフラムが形成されることも、可能である。当接しているダイアフラムが変形しないために、孔または格子の上に置かれるようになるダイアフラムのその領域は、より厚く設計され得る。負圧が優勢のときに、ダイアフラムが送給装置の全体のボリューム内へと移動する場合、ダイアフラムの自由な動きをここで確実にするために、隣接する領域は、薄くてかつフレキシブルに、随意に波形構造(corrugation)をともなってさえ、設計され得る。ダイアフラムの可動領域は、さらに増加した柔軟性をここで確実にするために、波形構造または同類に形成されることもおそらくあり得る。
【0015】
ダイアフラムにとって、異なる材質の組み合わせから成ることも可能である。比較的高い弾性率を有するかおよび/または比較的大きい厚みを有するかいずれかの比較的剛性のある材料は、ダイアフラムの個々の領域に使用することができ、および/または、ダイアフラムは、付加的な層および/または補強構造によって、領域において堅くされてよい。
【0016】
少なくとも1つの第1の補償エレメントが、全体のボリュームのサイズを最大5%まで減少させることを許容する場合、本発明による送給装置は特に有利である。
【0017】
従来の作動温度(概して20℃でよく、または最大80℃でさえよい。)から進む水性の還元剤の凍結中に、ボリュームの減少が最大5%まで発生し得ることが、実験において分かった。第1の補償エレメントが、全体のボリュームの少なくとも2%までボリュームの減少を許容することは、しかしながら好ましい。
【0018】
少なくとも1つの第1の補償エレメントが、500mbar[ミリバール]を下回る負圧で、最大5%まで全体のボリュームのサイズの減少を許容する場合、本発明による送給装置は、さらに特に有利である。ここで、最大2%までのボリュームの減少が、500mbar[ミリバール]を下回る、好ましくは200mbar[ミリバール]を下回る、そして特に好ましくは100mbar[ミリバール]を下回る負圧で可能であることは、特に好ましい。
【0019】
本発明による送給装置のこの実施形態は、送給装置内の負圧があまり大きくなってはならないという概念に基づく。そうすると、付加的な還元剤は、還元剤タンクから送給装置内へと吸い込まれない。システムにおいて低い負圧が優勢のときに、これが発生する確率はより低くて、および/または、還元剤タンクから還元剤が吸い込まれるのを防止するためにとられる対策は必要ないかまたはより小さい。また、流動抵抗は、還元剤タンクから還元剤を吸い込むための吸引ラインに設けられてよい。そして、流動抵抗は、送給装置の冷却が起こるときに、還元剤が還元剤タンクから送給装置内へと流れないことを確実にする。この種の流動抵抗は、第1の補償エレメントによってボリュームの減少のために必要な負圧が、付加的な還元剤が還元剤タンクから吸い込まれる負圧よりも低いことを確実にすることだけを単に意図する。
【0020】
送給装置において正圧の閾値に達したときに、全体のボリュームのサイズを増加させることに適した少なくとも1つの第2の補償エレメントがある場合、本発明による送給装置はまた特に有利である。正圧の閾値を下回る圧力が優勢のときに、少なくとも1つの第2の補償エレメントは、全体のボリュームのサイズの増加を実質的には許容しない。
【0021】
特定の正圧の閾値が上回られるときに、この種の第2の補償エレメント(膨張要素)は、したがって、送給装置のボリュームのサイズを増加させる。これの前に、全体のボリュームのサイズの重要な増加が起こらないことは好ましい。その理由は、本発明による送給装置が作動される送給圧力の範囲で、送給装置は、特にエネルギー効率が良くかつ信頼性が高い還元剤の送給を許容するために、可能な限りの最も堅い挙動を呈しなければならないからである。送給装置内の還元剤が完全に冷却して、そして、還元剤の膨張が凍結プロセスのために発生するときに、通常の送給圧力より著しく高い圧力は起こる。第2の補償エレメントは、この種の圧力で全体のボリュームのサイズの制御された増加を許容する。そうすると、送給装置内の氷圧は損傷を与えない。
【0022】
正圧の閾値が少なくとも5バールである場合、本発明による送給装置は、特に有利である。正圧の閾値は、周囲圧力を上回る圧力として、すなわち周囲圧力に関して、いずれの場合もここで特定される。送給装置の送給圧力は、5バールよりも通常小さい。より高い送給圧力(例えば最大でも10バールまたは最大15バールでさえも)を使用することも、しかしながら可能である。閾値圧力が、送給装置の最大送給圧力よりも高い少なくとも1バールであるようにセットされることは、例えば好都合である。
【0023】
少なくとも1つの第2の補償エレメントが全体のボリュームのサイズを最大15%まで増加させることができる場合、本発明による送給装置は、特に有利である。第2の補償エレメントが全体のボリュームのサイズを最大でも2〜15%、特に最大でも3〜10%まで増加させることができる場合、それは好ましい。ボリュームのサイズのこの種の増加が還元剤の凍結中に規則的に発生し得ることが、実験において分かった。これを許容する1つの第2の補償エレメントだけを正確に提供することが、好ましい。
【0024】
正圧の閾値に達するときに、少なくとも1つの第2の補償エレメントが全体のボリュームのサイズを実質的に突然増加させる場合、本発明による送給装置は、さらに特に有利である。サイズにおけるこの種の突然の(唐突な、即時の)増加の結果、凍結プロセス中に、送給装置内で起こる氷圧は、正圧の閾値よりも大きくはならない。正圧に達するときに、送給装置内の圧力の突然の減少が、全体のボリュームのサイズの突然の増加と同時に起こるように、第2の補償エレメントが造られることも可能である。前記タイプの第2の補償エレメントについては、正圧の閾値に達するときに、安定平衡位置であるとみなされる。そうすると、全体のボリュームのサイズは、突然の圧力低下にもかかわらず再び減少しない。加えて、または、代わりに、正圧の閾値を上回って、全体のボリュームのサイズの連続増加は、圧力のさらなる増加によって起こることができる。この種の設計については、しかしながら、送給装置の圧力は、正圧の閾値をまたさらに上回って高まる。
【0025】
少なくとも1つの第2の補償エレメントがプレロード下で表層部の形態に設計される場合、本発明による送給装置はまた特に有利である。正圧の閾値を上回る正圧が優勢のときに、表層部は、全体のボリュームのサイズが増加するように、プレロードと反対に移動することができる。プレロード下の表層部は、概してクリッカのようにしてふるまう。前記表層部が、特定の力によって、または表層部に作用する特定の圧力によってプレロードと反対に負荷される場合、前記表層部は突然反転して、その結果、ボリュームのサイズは突然増加する。突然の反転中に、表層部がストッパに対して移動して、さらに安定した位置に到達することなくストッパを圧迫する場合、それは通常、好都合である。表層部は、さらに安定な位置から、対応する反対方向の圧力または対応する反対方向の作用力の作用下で、最初のプレロード位置へと戻ることが可能なだけである。ストッパによって、表層部は、さらに安定した位置に達するのを防止されることができる。そうすると、圧力が正圧の閾値以下に低下するときに、表層部はプレロード位置にきちんと戻る。
【0026】
少なくとも1つの第1の補償エレメントおよび少なくとも1つの第2の補償エレメントが複合補償エレメントとして共同で形成される場合、本発明による送給装置はまた特に有利である。プレロード下にある大きな表層部が第2の補償エレメントとして設けられ、そして、ダイアフラムの形態の第1の補償エレメントが前記表層部上に直接設けられることは、例えば可能である。空気がダイアフラムと表層部との間を通過することができるために、プレロード下の表層部は、それから、例えば、対応する孔を有する。第1の補償エレメントおよび第2の補償エレメントが、複合補償エレメントとして、単一のコンパクトな統合コンポーネントに形成されることも、可能である。
【0027】
少なくとも1つの第1の補償エレメントが送給ユニットと計量ユニットとの間に配置される場合、本発明による送給装置はさらに有利である。圧力は送給装置において送給ユニットによって発生して、計量ユニット(それは内燃機関の排気システムに還元剤を供給する。)によって消されるので、送給装置の高圧領域は通常、送給ユニットと計量ユニットとの間にある。計量ユニットは、例えばインジェクタである。送給ユニットは、例えばポンプである。かなりのボリューム(例えばタンク)へと膨張することができない加圧還元剤は、通常、前記高圧領域内に位置している。第1の補償エレメントが送給ユニットの近くに(特に直接隣接して)配置されることは、特に好ましい。凍結プロセスは、それから、第1の補償エレメントの方向において計量ユニットから進んで起こることができる。そうすると、氷プラグは送給装置内に形成されない。そしてそれは、還元剤のまだ液体のボリュームを第1の補償エレメントから切り離して、これにより、第1の補償エレメントがその補償効果を与えるのを防止する。ここで、第2の補償エレメントが、設けられる場合に、送給ユニットと計量ユニットとの間(可能ならば送給ユニット付近)に配置されるように同様に設けられる場合、それは特に有利であるとも考えられる。
【0028】
本発明は、液体還元剤で満たされた全体のボリュームを有する送給装置内の液体還元剤を凍結させる方法であって:
a)送給装置内の還元剤を冷却する(送給装置の全体のボリュームのサイズは、第1の補償エレメントによって減少する)ステップ;および、
b)送給装置内の還元剤を凍結させる(送給装置の全体のボリュームのサイズは、第2の補償エレメントによって増加する)ステップ;
を少なくとも有する方法にも関する。
【0029】
特に、送給装置内への還元剤の引き続いての流れがないように、送給装置の全体のボリュームのサイズは、ステップa)で減少する。さらに、ステップa)における還元剤の凍結中のボリュームの増加は、通常、ステップb)における冷却中のボリュームの減少よりも大きい。
【0030】
この種の方法は、本発明による送給装置を用いて、特に好ましくは実施されてよい。本発明による方法の特定の効果は、送給装置のボリュームの変化が、対応する補償エレメントで定義済み方法において常に起こるということである。そうすると、許容できない膨張および応力は、送給装置において起こることができない。
【0031】
本発明は、内燃機関、および選択接触還元を実施するために設計された排気システム、ならびに還元剤を還元剤タンクから排気システム内へと送給するための本発明による送給装置を備える自動車にも関する。
【0032】
本発明による送給装置のための特別の技術的改良および効果は、本発明による方法および本発明による自動車に類似して適用可能であり、移転可能である。同じことは、本発明による自動車および本発明による方法と連動して特定される効果および特別の技術的改良にあてはまる。そして、その効果および改良は、本発明による装置に適用可能であり、移転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明および発明の技術分野は、図に基づいて下でさらに詳細に説明される。図は、特に好適な例示的実施形態を示す。しかしながら、本発明はそれに制限されない。特に、図および示される特にプロポーションは、単に概略的である点に注意する。
図1図1は、本発明による送給装置の第1の設計異型を有する自動車を示す。
図2図2は、送給装置の凍結の挙動を示している線図を示す。
図3図3は、第1の補償エレメントの設計異型を示す。
図4図4は、第1の補償エレメントの設計異型の圧力/ボリューム特性曲線を示す。
図5図5は、第2の補償エレメントの設計異型を示す。
図6図6は、第2の補償エレメントの設計異型の圧力/ボリューム特性曲線を示す。
図7図7は、複合補償エレメントの設計異型を示す。
図8図8は、複合補償エレメントの設計異型の圧力/ボリューム特性曲線を示す。
図9図9は、第1の補償エレメントのさらなる改良を示す。
図10図10は、第1の補償エレメントのさらなる改良を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、排気システム3を有する内燃機関15を有する自動車14を示す。排気システム3は、排気システム3への還元剤(尿素水溶液)を計量するための計量ユニット8を備える。還元剤は、送給装置1によって還元剤タンク2から計量ユニット8へ供給される。還元剤は、還元剤タンク2から還元剤ライン7を通って計量ユニット8に至る。還元剤タンク2から計量ユニット8までの還元剤ライン7に沿って、流動抵抗24、フィルタ5、送給ユニット6、補償エレメント4および圧力センサ27が設けられる。構成要素の配列は、ここに記述される配列から一部逸脱してよい。加えて、第1の補償エレメント4の領域に、第2の補償エレメント25または複合補償エレメント37が設けられることは、任意に可能である。還元剤タンク2を除く送給装置1のすべての構成要素は、全体のボリューム9を共有する。全体のボリューム9については、計量ユニット8と送給ユニット6との間に配置される送給装置1の構成要素だけに関連付けることも、可能である。送給装置1において負圧が優勢のときに、第1の補償エレメント4は、送給装置1のボリューム9を減らすのに適している。負圧が優勢のときに、送給装置1の全体のボリューム9が、還元剤タンク2からの付加的な還元剤が流動抵抗24を通って送給装置1内に吸い込まれ得るよりも容易に第1の補償エレメント4によって減少し得るように、第1の補償エレメント4は、流動抵抗24と相互作用する。
【0035】
図2は、本発明による還元剤の送給装置の圧力が、従来技術から公知の還元剤の送給装置の圧力に関して、それらに含まれる還元剤の凍結プロセスおよび融解プロセス中にどのようにふるまうかを簡略的に線図で示す。システムに存在する還元剤の圧力は、いずれの場合も圧力軸16上にプロットされる。前記圧力は、時間軸17に対してプロットされる。時間軸17よりも上の領域は正圧28を表し、時間軸17よりも下の領域は負圧29を表す。第1の曲線22は、従来技術から公知の送給装置における圧力を表す。第2の曲線23は、本発明による送給装置における圧力を表す。最初に示すのは、凍結期間20である。還元剤の冷却中に、還元剤のボリュームが減少するせいで負圧29が起こる。第1の曲線22のように従来技術から公知の送給装置では、この場合、付加的な還元剤が、還元剤タンクから送給装置内に吸い込まれる。第2の曲線23のように本発明による送給装置では、ボリュームの前記減少は、第1の補償エレメントによって補償される。そうすると、付加的な還元剤は送給装置内に移動しない。凍結プロセス中に、従来技術から公知の送給装置内の圧力は、そして本発明による送給装置内の圧力も、両方ともかなり上昇する。しかしながら、従来技術から公知の送給装置内の圧力は、より強烈に上昇する。なぜなら、前記送給装置では、凍結プロセス中に負圧によって以前に吸い込まれた付加的な還元剤が存在するからである。融解期間21において、圧力は、両方の送給装置とも最初に強烈に低下する。従来技術から公知の送給装置では、しかしながら、負圧29は、元通りには到達しないか、または本発明による送給装置におけるよりも小さい程度にしか到達しない。なぜなら、従来技術から公知の送給装置では、付加的なボリュームが送給装置内に吸い込まれていて、その付加的なボリュームは、今逃れることができないからである。その理由は、送給ユニット内の弁が、還元剤を還元剤タンクから送給装置内へのみ通過させ、それと反対方向には通過させないからである。この理由は、ポンプは、通常、受動的に作用する弁を有するポンプであり、その送給方向は、弁の構造によってあらかじめ定義されるからである。したがって、従来技術から公知の送給装置における還元剤の凍結およびそれに続く再融解の場合、再融解後の圧力は、凍結プロセスの前に存在する圧力に関して、または、本発明による送給装置における圧力に関して、圧力増加26を呈する。
【0036】
図2の解釈において、図2は、従来技術から公知の送給装置と本発明による送給装置との間の違いを単に簡略的に示すだけである点に留意しなければならない。図2の線図では、冷却中に送給装置内に吸い込まれる還元剤のボリュームへの第1の補償エレメントの影響だけが、そして送給装置における圧力への前記ボリュームの影響が、考慮された。実際には、第1の補償エレメントはまた、送給装置自体における圧力に直接に影響を及ぼす。例えば、冷却中に、圧力は、従来技術から公知の送給装置におけるほどはるかに低下することができない。なぜなら、前記圧力低下は、第1の補償エレメントによってすでに妨げられるからである。
【0037】
図3は、ダイアフラム10で造られる本発明による第1の補償エレメント4を示す。正圧が優勢のときに、ダイアフラム10は接触面11を圧迫する。負圧が優勢のときに、ダイアフラム10は偏向位置30へ偏る。空気はその後ダイアフラム10と接触面11との間に存在する。そして、前記空気はあとで孔31を通って吸引されて再び逃げることができる。
【0038】
図4は、図3による第1の補償エレメントの圧力/ボリューム曲線32を示す。この線図は、圧力軸16およびボリューム軸18を示す。正圧が優勢のときに、ボリュームは圧力/ボリューム曲線32のようにわずかだけ増加する。その理由は、ダイアフラムが接触面を圧迫して、非常にわずかだけ変形することができるからである。負圧が優勢のときに、圧力/ボリューム曲線32のようにボリュームは強烈に減少する。その理由は、ダイアフラムが非常に自由に偏向位置へと移動することができるからである。
【0039】
図5は、第2の補償エレメント25を示す。第2の補償エレメント25には、表層部13がある。そしてそれは、通常作動において、プレロード(preload)下にあり、そのプレロードのせいでプレロード位置33に保持される。送給装置内の圧力が増加する場合、プレロードされた表層部13は、特定よりも上回る圧力で、偏向位置30へと反転する。偏向位置30においてさえ、表層部が完全に反転することができなくて、むしろストッパ19を圧迫する場合、それは好ましい。したがって、表層部13は、安定平衡位置38(プレロード位置33と異なり、そして、対応する反対向きの力の行使によってのみその位置から表層部13が戻り動くことができる)へと移動しないことが確保される。
【0040】
図6は、第2の補償エレメントの圧力/ボリューム曲線32を示す。圧力が圧力軸16上にプロットされるのに対して、ボリュームはボリューム軸18上にプロットされる。負圧が優勢のときに、ボリュームは大きさがわずかにだけ減少する。なぜなら、比較的堅い表層部は、作用力の下でわずかに膨張するだけだからである。正圧が優勢のときに、表層部は、そのプレロード位置において休止する。そうすると、膨張は実質的に起こらない。正圧の閾値12よりも高い圧力が優勢のときに、ダイアフラムは偏向位置へと突然反転する。そうすると、突然のボリューム増加39は発生する。正圧の閾値12よりも高い圧力が優勢のときに、表層部はストッパを圧迫して、それ以上変形することができないので、ボリュームの重要なさらなる増加は起こらない。
【0041】
図7は、ダイアフラム10、接触面11および孔31を有する第1の補償エレメント4で構成される複合補償エレメント37を示す。ダイアフラム10は、偏向位置30へと反転することができる。図7において、第2の補償エレメント25は、表層部13およびストッパ19で同様に構成される。表層部13は、プレロード位置33にあり、そして偏向位置30へと反転することができる。
【0042】
図8は、図7による複合補償エレメントの圧力/ボリューム曲線32を示す。圧力は圧力軸16上にプロットされるのに対して、ボリュームはボリューム軸18上にプロットされる。図8の圧力/ボリューム曲線32は、図4および図6からの圧力/ボリューム曲線の実質的に重ね合わせに起因する。圧力/ボリューム曲線32は、負圧が優勢のときに、ボリュームの強烈な減少を呈し、圧力が優勢で中立圧力および正圧の閾値の間に位置するときに、実質的に一定のボリュームを呈する。正圧の閾値12で、突然のボリューム増加39は起こる。前記領域において、本発明による送給装置の作動範囲は、組み合わせの補償を有する本発明による送給装置が作動範囲において実質的に堅い挙動を呈するようなものでもある。正圧の閾値12で、ボリュームの急増は発生する。第1の補償エレメントおよび第2の補償エレメントが本発明による送給装置に提供される場合、図8による圧力/ボリューム曲線は常に達成される。この目的のために、2つが複合補償エレメントとして形成されることは、必要でない。
【0043】
図9は、第1の補償エレメント4の代わりの設計を示す。ここで、また、本発明による送給装置において正圧が優勢のときに、ダイアフラム10は接触面11を圧迫する。孔31の代わりに、例えば多数の孔31から形成されてよい格子35は、この場合設けられる。さらに、ダイアフラム10は硬化構造34を備える。そうすると、送給装置において負圧が優勢のときに、ダイアフラム10は偏向位置30へと移動することができるが、しかし、格子35の方向におけるダイアフラム10の変形は付加的に妨げられる。
【0044】
図10による第1の補償エレメント4の実施形態において、接触面11および接触面11にある孔31を有するダイアフラム10が同様に存在する。ダイアフラム10は偏向位置36へと移動することができる。ダイアフラム10の移動度を向上させるために、この場合、ダイアフラム10上に波形構造(corrugation)が設けられる。その結果、本発明による送給装置において負圧が優勢のときに、ダイアフラム10は、本発明による送給装置内へと、または全体のボリュームへと、そして偏向位置30へと自由に移動することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…送給装置
2…還元剤タンク
3…排気システム
4…第1の補償エレメント
5…フィルタ
6…送給ユニット
7…還元剤ライン
8…計量ユニット
9…全体のボリューム
10…ダイアフラム
11…接触面
12…正圧の閾値
13…表層部
14…自動車
15…内燃機関
16…圧力軸
17…時間軸
18…ボリューム軸
19…ストッパ
20…凍結期間
21…融解期間
22…第1の曲線
23…第2の曲線
24…流動抵抗
25…第2の補償エレメント
26…圧力の増加
27…圧力センサ
28…正圧
29…負圧
30…偏向位置
31…孔
32…圧力/ボリューム曲線
33…プレロード位置
34…硬化構造
35…格子
36…波形構造
37…複合補償エレメント
38…安定平衡位置
39…突然のボリューム増加
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10