(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5には、加圧供給方式の基本構成が示されている。気密構造のタンクaには、塗液bを補充するために、塗液補充用開閉弁cを有する塗液補充系dが接続されると共に、空気等の加圧用ガスをタンクaへ導入するために、ガス導入用開閉弁eを有するガス導入系fが接続されている。タンクaに導入されたガスは、タンクa内部が所定の一定圧力値に保たれるように加圧しつつ、この加圧により、タンクaから塗液bを押し出すようになっている。
【0007】
タンクaとノズルgとの間には、タンクaから押し出された塗液bをノズルgへ供給して吐出させるために、開閉弁hを有する塗液供給系iが設けられている。ノズルgと塗布対象物jとは相対移動され、これによりノズルgから吐出される塗液bで塗布対象物jが塗布処理されるようになっている。
【0008】
塗布対象物jを塗布処理する際には、タンクaには予め、塗液補充系dから、少なくとも塗布処理一回分の塗液bが補充されて貯留されている。ガス導入用開閉弁eが開かれることでタンクa内部に導入されるガスは、その加圧作用により、タンクaから塗液供給系iへ塗液bを押し出す。
【0009】
詳細には、塗液bの押し出しによるタンクa内部の塗液bの減少に応じて、ガスが継続的にタンクa内部に導入され、これによりタンクa内部が所定の一定圧力値に保たれつつ、塗液bを押し出す加圧作用が維持される。
【0010】
一定圧力値に加圧されているタンクaから押し出される塗液bは、開かれている開閉弁hを通じてノズルgへ供給され、ノズルgに供給された塗液bは、ノズルgから塗布対象物jに向けて常に一定の吐出圧で吐出され、吐出中にも圧力の変動は起きない。これにより、塗布対象物jは、一定の塗膜厚で塗布処理されるという長所がある。
【0011】
塗布処理を開始するときには通常、タンクa内部からノズルg内部に亘り、塗液bがほぼ充満されていると共に、塗液供給系iの開閉弁hが閉じられて塗液bの流通が遮断されている。このとき、タンクaには、塗布処理の開始に応じて塗液bを供給するためにガスが導入されていて、このガスにより、タンクa内部は所定の一定圧力値に加圧されている。従って、塗液bは、タンクaから開閉弁hに向けて、既に押し出し作用を受けている。
【0012】
このため、開閉弁hを開くと、タンクa内部は、ほぼ所定の一定圧力値であるものの、塗液bは、閉じ状態にあった開閉弁hが一瞬で開くことにより、ノズルgに向かって一気に流れ、タンクa内部の一定の圧力状態とは無関係に、
図5中のグラフに示したように、多めの吐出量でノズルgから吐出されてしまう。
【0013】
この結果、塗布処理を開始するとき、例えば最初にノズルgから吐出される塗液bが塗布される塗布始端kでは、図中、m部分で示すように、塗液bが盛り上がってしまうという課題があった。
【0014】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、加圧供給方式であっても、塗布処理を開始するときに最初にノズルから吐出される塗液が盛り上がって塗布されることを抑制することが可能であって、塗布処理の開始時点から適切な塗膜厚で塗布対象物に塗布することができると共に、構成が簡単でかつ塗膜厚調整のための制御も容易な塗布装置及び塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる塗布装置は、タンク内に貯留されている塗液を、加圧により塗液供給系へ押し出して供給する塗液供給源と、該塗液供給系に接続され、供給される塗液を吐出しつつ、塗布対象物に対し相対移動されて、塗布対象物を塗布処理するノズルと、上記塗液供給系に設けられ、塗布処理を開始するときに開かれて上記塗液供給源から塗液を上記ノズルに供給し、閉じられて塗液の該ノズルへの供給を停止する開閉弁と、上記塗液供給系に設けられ、かつ
少なくとも、塗布始端で塗液が盛り上がってしまう量を圧縮弾性で吸収できるだけの容量の塗液が内部に充満され、上記開閉弁が開かれたときに上記ノズルに向かって伝播される圧力の変化を抑制するバッファタンクと
を備え、前記バッファタンクは、その容量を調整することが可能な容量可変型であることを特徴とする。
【0018】
前記塗液供給源と前記ノズルとの間に、
前記塗液供給系と並列に、追加の塗液供給系を設けると共に、該追加の塗液供給系に、塗布処理を開始するとき前記開閉弁が閉じられた状態で、塗液を前記ノズルに供給するシリンジポンプ
と;該シリンジポンプと上記塗液供給源との間に配置され、該シリンジポンプに該塗液供給源から塗液を供給するときに開かれ、塗布処理を開始するときは閉じられる追加の第1開閉弁と;該シリンジポンプと該ノズルとの間に配置され、該シリンジポンプに該塗液供給源から塗液を供給するときのみ閉じられ、それ以外は開いた状態が保持される追加の第2開閉弁とを設け、該開閉弁は、塗布処理を開始するときに開かれることに代えて、上記シリンジポンプ
の停止による塗液の供給停止に応じて
開かれて、上記塗液供給源から上記塗液供給系を介して上記ノズルに塗液を供給することを特徴とする。
【0020】
本発明にかかる塗布方法は、追加の塗液供給系を備えた上記塗布装置を用い、
前記開閉弁及び前記追加の第2開閉弁が閉じられている状態で、前記追加の第1開閉弁が開かれて、前記追加の塗液供給系を介して前記塗液供給源から前記シリンジポンプに塗液が供給され、次いで、塗布処理を開始するとき
、前記塗液供給系の前記開閉弁
及び上記追加の第1開閉弁が閉じられた状態で、
上記追加の第2開閉弁は開かれていて、前記シリンジポンプから前記追加の塗液供給系を介して前記ノズルに塗液が供給され、次いで
、塗布処理を続行するために、上記シリンジポンプ
の停止による塗液の供給停止に応じて、上記開閉弁が開かれて前記塗液供給源から上記塗液供給系を介して上記ノズルに塗液が供給されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる塗布装置及び塗布方法にあっては、加圧供給方式であっても、塗布処理を開始するときに最初にノズルから吐出される塗液が盛り上がって塗布されることを抑制することができ、塗布処理の開始時点から適切な塗膜厚で塗布対象物に塗布することができると共に、構成が簡単でかつ塗膜厚調整のための制御も容易化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる塗布装置及び塗布方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、第1実施形態に係る塗布装置及び塗布方法の概略構成が示されている。
【0024】
第1実施形態に係る塗布装置1は、塗液供給源2を備える。塗液供給源2は、塗液bを貯留する気密構造のタンク3と、タンク3に接続され、タンク3へ塗液bを補充する塗液補充系4と、タンク3に接続され、タンク3内部を所定の一定圧力値に加圧するために、タンク3内部に空気等のガスを導入するガス導入系5と、タンク3内部の圧力を示す圧力計6とから構成される。
【0025】
塗液補充系4には、開かれることにより、塗液bをタンク3に補充し、閉じられることにより、塗液bの補充を停止する塗液補充用開閉弁7が設けられる。タンク3内部には、塗布処理開始前に予め、少なくとも塗布処理一回分の塗液bが補充されて貯留される。
【0026】
ガス導入系5には、開かれることにより、加圧用のガスをタンク3に導入し、閉じられることにより、ガスの導入を停止するガス導入用開閉弁8が設けられる。タンク3内部に導入されるガスは、タンク3内部が所定の一定圧力値に保たれるように加圧し、この加圧により、タンク3内部に貯留されている塗液bを当該タンク3から押し出して、後述する塗液供給系9に供給する。
【0027】
具体的には、ガスは、塗液bの押し出しによるタンク3内部の塗液bの減少に応じて、継続的にタンク3内部に導入され、これによりタンク3内部が所定の一定圧力値に保たれつつ、塗液bを押し出す加圧作用が維持されるようになっている。タンク3内部の一定圧力値は、圧力計6によって確認することができる。
【0028】
塗液供給源2のタンク3には、塗液供給系9の一端が接続され、タンク3から加圧によって押し出された塗液bが供給され、流通される。塗液供給系9の他端には、当該塗布供給系9を通じて供給される塗液bを吐出して、基台10に載置された基板などの塗布対象物11を塗布処理するノズル12が接続される。
【0029】
ノズル12が塗液bを吐出しているときに、これらノズル12と基台10とが、図示しない移動機構により、いずれか一方が他方に対し、あるいは双方が互いに、相対移動されることによって、ノズル12から吐出される塗液bで塗布対象物11が塗布処理されるようになっている。塗布処理は通常、塗布対象物11の長さ方向一方の端である塗布始端11aから開始され、塗布対象物11の長さ方向他方の端である塗布終端(図示せず)に向かって行われる。
【0030】
ノズル12とタンク3との間に設けられる塗液供給系9には、開閉弁13aが設けられる。開閉弁13aは、開かれることにより、塗液bをタンク3(塗液供給源2)からノズル12に供給し、閉じられることにより、塗液bのノズル12への供給を停止する。従って、開閉弁13aは、塗布処理を開始するときに開き動作され、塗布処理中、開放状態が維持される。また、塗布処理が完了したときなど、塗布処理を行わないときに閉じ動作され、閉鎖状態が維持される。
【0031】
開閉弁13aの開閉は、手動であってもよいし、自動制御するようにしてもよい。
【0032】
塗液供給系9には、バッファタンク15が設けられる。塗液供給系9は、タンク3に接続されるタンク側系路9aとノズル12に接続されるノズル側系路9bの2つの系路から構成され、これら系路9a,9bの端部がバッファタンク15内部に挿入されることにより、バッファタンク15は塗液供給系9に介在される。本実施形態では、塗液供給系9の開閉弁13aはタンク側系路9aに設けられている。
【0033】
バッファタンク15の内部には、塗液bが充満される。バッファタンク15への塗液bの充填は、事前に、開閉弁13aを開いてタンク3から送り込んでおけばよい。
【0034】
塗布処理を開始するときには通常、タンク3内部からノズル12内部に亘り、塗液bが充満されていると共に、開閉弁13aが閉じられて塗液bの流通が遮断されている。このとき、タンク3には、塗布処理の開始に応じて塗液bを供給するためにガスが導入されていて、このガスにより、タンク3内部は所定の一定圧力値に加圧されている。従って、塗液bは、タンク3から開閉弁13aに向けて、既に押し出し作用を受けている。
【0035】
開閉弁13aを開くと、タンク3内部は、ほぼ所定の一定圧力値であるものの、塗液bは、閉じ状態にあった開閉弁13aが一瞬で開くことにより、タンク3内部の一定の圧力状態とは無関係に、ノズル12に向かって一気に流れることとなり、塗液供給系9には、ノズル12に向かって伝播される圧力の変化が発生する。
【0036】
バッファタンク15は、開閉弁13aが開かれたときに生じるこの圧力変化を抑制する。塗液bは、完全な非圧縮性流体ではなく、圧縮弾性を有するので、開閉弁13aが開かれることで、タンク側系路9aからバッファタンク15に流入した塗液bは、大きな容量のバッファタンク15により、当該バッファタンク15の内部で塗液b自身の圧縮弾性によって、一気に流れる水撃的な現象が緩衝される。これにより、開閉弁13aが開かれたときに、塗液供給系9を通じてノズル12に向かって伝播される圧力の変化が抑制される。
【0037】
第1実施形態に係る塗布装置1の作用について説明する。塗布処理を開始する前の準備段階では、タンク3内部に塗液補充系4から塗液bが補充されて貯留され、その後、タンク3内部にガス導入系5から加圧用のガスが導入されて、当該タンク3内部が所定の一定圧力値に加圧される。
【0038】
このとき、塗液供給系9の開閉弁13aは閉じられていて、塗液bの流通が遮断されており、塗液bは、タンク3から開閉弁13aに向けて押し出し作用を受けている。このとき、開閉弁13aからノズル12に亘る間には、塗液bが充満されていると共に、バッファタンク15内部にも塗液bが充満されている。
【0039】
基台10に載置された塗布対象物11に対し、その塗布始端11aから塗布処理を開始する際には、塗液供給系9の開閉弁13aが開かれる。開閉弁13aが開かれると、タンク3内部はほぼ所定の一定圧力値であるものの、塗液bは、閉じられていた開閉弁13aが一瞬で開くことにより、ノズル12に向かって一気に流れようとする。
【0040】
開閉弁13a位置から流通する塗液bは、開閉弁13aよりもノズル12側に位置するバッファタンク15に流れ込む。バッファタンク15は、上述したようにその大きな容量と、塗液b自身の圧縮弾性によって、塗液bの水撃的な流れを緩衝することができ、塗液供給系9をノズル12に向かって伝播する圧力の変化を抑制することができる。そのため、バッファタンク15に溜められる塗液bの容量は、少なくとも、塗布始端11aで塗液bが盛り上がってしまう量を圧縮弾性で吸収できるだけの容量が必要となる。
【0041】
バッファタンク15により、開閉弁13aが開かれることに伴う圧力変化が抑えられ、タンク側系路9aからバッファタンク15内に流入した塗液流量に相当する塗液bが、バッファタンク15からノズル側系路9bを介してノズル12に供給される。従って、ノズル12から吐出される塗液bの吐出量は、
図1中のグラフに示したように、開閉弁13aの開放によっても、急激に立ち上がることなく、塗布処理を開始するときから、ほぼタンク3内部に加えられている所定の一定圧力値に対応する吐出量で吐出されることになる。
【0042】
これにより、開閉弁13aを開いて塗布処理を開始するときに、最初にノズル12から吐出される塗液bが盛り上がって塗布されることを抑制することができる。従って、塗布処理開始から、その後の継続的な塗布処理にわたって、ほぼ一定量で塗液bをノズル12から吐出させることができて、適切な塗膜厚で塗布対象物11を塗布処理することができる。
【0043】
第1実施形態に係る塗布装置1は、塗液供給系9にバッファタンク15を設けるだけであり、構成がきわめて簡単であると共に、塗膜厚調整に対する特段の制御も必要がなくて、容易に実施することができる。
【0044】
図2には、第2実施形態に係る塗布装置及び塗布方法の概略構成が示されている。第2実施形態の塗布装置16では、バッファタンク17は、容量可変型で構成される。バッファタンク17には、その容量を変化させるために、バッファタンク17内部への押し込み量が調整可能なシャフト18が設けられる。バッファタンク17内へのシャフト18の押し込み量を増やせば、バッファタンク17としての容量が小さくされ、反対に押し込み量を減らせば、容量が大きくされる。
【0045】
容量可変のバッファタンク17を設けることにより、第1実施形態とは異なり、開閉弁13aを開いたときの塗液bの流れの応答性を調整する、すなわち塗布処理を開始するときにノズル12から最初に吐出される塗液bの吐出量を増やしたり減らしたりして、容易に塗布始端11aでの塗液bの盛り上がりが無くなるように調整を行うことができる。このような第2実施形態であっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0046】
図3には、第3実施形態に係る塗布装置及び塗布方法の概略構成が示されている。第3実施形態の塗布装置19では基本的に、バッファタンク15,17に代えて、それ自身で塗液bを吐出する機能を有するシリンジポンプ20が用いられる。シリンジポンプ20は、タンク側系路9aに設けられた開閉弁13aと、ノズル側系路9bに設けられた開閉弁13bとの間に、これら両系路9a,9bの端部と接続して、塗液供給系9に設けられる。
【0047】
これにより、シリンジポンプ20は、開閉弁13aと開閉弁13bとの間に配置される。シリンジポンプ20は、ピストンロッド20aをモータ20bで駆動することにより、ピストン20cとシリンダ20dの間に充満状態で溜められた塗液bを、当該シリンジポンプ20外方、本実施形態では塗液供給系9へ押し出すようになっている。シリンジポンプ20はよく知られているように、高精度で塗液b等の液体や気体の押し出し量を調整できる機能を有し、吐出開始時に、塗布始端11aで塗液bが盛り上がるような事態が生じないという長所がある。
【0048】
シリンジポンプ20への塗液bの充填は、事前に、開閉弁13aを開きかつ開閉弁13bを閉じて、タンク3から送り込んでおけばよい。開閉弁13bは、塗液bの送り込み時以外は、開いた状態が保持される。シリンジポンプ20に溜めておく塗液bの量は、上記第1及び第2実施形態のバッファタンク15の場合と同様に、少なくとも、塗布始端11aで塗液bが盛り上がってしまう量を圧縮弾性で吸収できるだけの量が必要となる。
【0049】
大きな容量のシリンジポンプ20により、当該シリンジポンプ20の内部で塗液b自身の圧縮弾性によって、一気に流れる水撃的な現象が緩衝される。これにより、開閉弁13bが開かれている状態で、開閉弁13aが開かれたときに、塗液供給系9を通じてノズル12に向かって伝播される圧力の変化が抑制される。
【0050】
シリンジポンプ20による塗液bの押し出しは、開閉弁13aが閉じられた状態で行われる。他方、開閉弁13aは、ピストン20cとシリンダ20dの間に塗液bが充満するように溜められている状態で、開き動作される。
【0051】
具体的には、シリンジポンプ20は、塗布処理を開始するとき開閉弁13aが閉じられた(開閉弁13bは開かれている)状態で、塗液bをノズル12に供給する。他方、開閉弁13aは、塗布処理を開始するときに開かれる第1及び第2実施形態とは異なり、シリンジポンプ20による塗液bの供給停止後に、それに応じて開かれるようになっている。
【0052】
第3実施形態の塗布装置による塗布方法について説明する。塗布処理を開始する前の準備段階は、第1及び第2実施形態と同様である。塗液供給系9の開閉弁13aは閉じられていて、塗液bの流通が遮断されており、塗液bは、タンク3から開閉弁13aに向けて押し出し作用を受けている。このとき、開閉弁13aからノズル12に亘る間には、塗液bが充満されていると共に、シリンジポンプ20内部にも塗液bが充満されている。
【0053】
塗布処理を開始するときには、開閉弁13aが閉じられた(開閉弁13bは開かれている)状態で、モータ20bで駆動されるシリンジポンプ20により塗液bがノズル12に供給され、ノズル12から塗液bが吐出されて、初期段階の塗布が行われる。その後すぐに、塗布処理を継続するために、モータ20bの停止によりシリンジポンプ20による塗液bのノズル12への供給が停止されると、それに応じて当該供給停止と同時に、塗液供給系9の開閉弁13aが開かれる。
【0054】
開閉弁13aが開かれると、タンク3内部はほぼ所定の一定圧力値であるものの、塗液bは、閉じられていた開閉弁13aが一瞬で開くことにより、ノズル12に向かって一気に流れようとするが、上記第1及び第2実施形態と同様に、シリンジポンプ20は、上述したようにその大きな容量と、塗液b自身の圧縮弾性によって、塗液bの水撃的な流れを緩衝することができ、タンク3から塗液供給系9を介してノズル12に向かって伝播する圧力の変化を抑制することができる。
【0055】
これにより、ノズル12から吐出される塗液bの吐出量は、
図3中のグラフに示したように、開閉弁13aの開放によっても、急激に立ち上がることなく、シリンジポンプ20による初期段階の塗布に続けて、タンク3内部に加えられている所定の一定圧力値に対応する吐出量で吐出されることになる。
【0056】
このように高精度の吐出量制御が可能なシリンジポンプ20とそれに続く開閉弁13aの開放により、塗布処理を開始するときに、最初にノズル12から吐出される塗液bが盛り上がって塗布されることを抑制することができる。従って、塗布処理開始から、その後の継続的な塗布処理にわたって、ほぼ一定量で塗液bをノズル12から吐出させることができて、適切な塗膜厚で塗布対象物11を塗布処理することができる。
【0057】
また、シリンジポンプ20は、モータ20bによる駆動の際にピストン20cとシリンダ20dとの摩擦によって微小なチャタリングが発生するため、シリンジポンプ20のみによる塗布処理では、塗膜厚が微小に波打つおそれがある。
【0058】
シリンジポンプ20は、可変容量型のバッファタンク17であると言え、開閉弁13aを開いたときの塗液bの流れの応答性を調整する、すなわち塗布処理を開始するときにノズル12から最初に吐出される塗液bの吐出量を増やしたり減らしたりして調整することができる。
【0059】
この第3実施形態では、開閉弁13aの開放に伴う塗液bの過剰な吐出を抑える必要のある塗布処理の初期段階のみ、シリンジポンプ20を用いて、当該シリンジポンプ20が奏する塗液bの飛び出しがない(タンク加圧では飛び出しがある)、すなわち塗布始端11aで塗液bが盛り上がらないという長所を活かし、その後すぐに、タンク3からの塗液bの押し出しによる利点、すなわち安定した吐出量の確保(シリンジポンプ20ではチャタリングによる吐出変動のおそれがある)という長所を活かした塗布処理に切り換えて、そして、この切り換えた瞬間の塗液bの過剰な流れを、シリンジポンプ20のバッファタンクとしての緩衝機能で防ぐことができるので、塗布処理開始時における塗液bの盛り上がり防止と、その後の塗膜厚の均一化とを一連に連続して確保することができる。
【0060】
このような第3実施形態であっても、上記第1及び第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】
第3実施形態に係る塗布装置19は、塗液供給系9にシリンジポンプ20を設けるだけであり、構成がきわめて簡単であると共に、塗膜厚調整のための制御も、シリンジポンプ20の停止と開閉弁13aの開放を同時に行うだけでよく簡単であって、容易に実施することができる。
【0062】
図4には、第4実施形態に係る塗布装置及び塗布方法の概略構成が示されている。第4実施形態の塗布装置21は基本的に、第1実施形態の構成に付加して、シリンジポンプ20を有する追加の塗液供給系22を、塗液供給系9と並列配置で、タンク3とノズル12の間に設けて構成される。
【0063】
シリンジポンプ20は、上述とほぼ同様に、追加の塗液供給系22のタンク側系路22aとノズル側系路22bとの間に、これら両系路22a,22bの端部と接続して、追加の塗液供給系22に設けられる。第3実施形態と同様に、両系路22a,22bには、シリンジポンプ20を挟んだ配置で、
追加の第2開閉弁13bと、
追加の第1開閉弁13cが設けられている。これにより、シリンジポンプ20は、タンク3とノズル12との間に配置される。シリンジポンプ20は、ピストン20cとシリンダ20dの間に充満状態で溜められた塗液bを、追加の塗液供給系22へ押し出すようになっている。
追加の第2開閉弁13b及び
追加の第1開閉弁13cはそれぞれ、第3実施形態の開閉弁13b及び13aと同様に動作される。すなわち、
追加の第2開閉弁13bは、塗液bをシリンジポンプ20へ送り込むときのみ、閉じられる。
【0064】
シリンジポンプ20は、第4実施形態では追加の塗液供給系22に設けられ、開閉弁13aを有する塗液供給系9には設けられないので、開閉弁13aが開かれたときに生じる圧力の変化を抑制する機能を備える必要はなく、従って、第3実施形態の場合とは異なり、小容量で形成される。圧力変化の抑制作用は、第1及び第2実施形態と同様に、バッファタンク15(可変容量型のバッファタンク17であってもよい)によって達成される。
【0065】
シリンジポンプ20は、塗布処理を開始するときは、タンク3への逆流防止のため、
追加の第1開閉弁13cを閉じ、かつ塗液供給系9の開閉弁13aが閉じられた状態で、追加の塗液供給系22を介して塗液bをノズル12に供給する。他方、開閉弁13aは、塗布処理を開始するときに開かれる第1及び第2実施形態とは異なり、シリンジポンプ20による塗液bの供給停止に応じて開かれ、これによりタンク3から塗液供給系9を介してノズル12に塗液bが供給されるようになっている。
【0066】
第4実施形態の塗布装置21による塗布方法について説明する。塗布処理を開始する前の準備段階は、第1〜第3実施形態と同様である。塗液供給系9の開閉弁13aは閉じられていて、塗液bの流通が遮断されており、塗液bは、タンク3から開閉弁13aに向けて押し出し作用を受けている。
【0067】
このとき、塗液供給系9では、開閉弁13aからノズル12に亘る間に塗液bが充満されていると共に、追加の塗液供給系22でも、タンク3からノズル12に亘って塗液bが充満され、かつシリンジポンプ20内部にも塗液bが充満されている。タンク3への逆流防止のため、
追加の第1開閉弁13cは閉じている。
【0068】
塗布処理を開始するときには、開閉弁13aが閉じられた状態で、モータ20bで駆動されるシリンジポンプ20により塗液bが追加の塗液供給系22を介してノズル12に供給され、ノズル12から塗液bが吐出されて、初期段階の塗布が行われる。その後すぐに、塗布処理を継続するために、モータ20bの停止によりシリンジポンプ20による塗液bのノズル12への供給が停止されると、それに応じて当該供給停止と同時に、塗液供給系9の開閉弁13aが開かれる。
【0069】
開閉弁13aが開かれると、タンク3から塗液供給系9を介してノズル12に塗液bが供給される。塗液供給系9を塗液bが流通する際、上記第1及び第2実施形態と同様に、バッファタンク15は、上述したようにその大きな容量と、塗液b自身の圧縮弾性によって、塗液bの水撃的な流れを緩衝することができ、タンク3から塗液供給系9を介してノズル12に向かって伝播する圧力の変化を抑制することができる。
【0070】
これにより、ノズル12から吐出される塗液bの吐出量は、
図4中のグラフに示したように、開閉弁13aの開放によっても、急激に立ち上がることなく、シリンジポンプ20による初期段階の塗布に続けて、タンク3内部に加えられている所定の一定圧力値に対応する吐出量で吐出されることになる。
【0071】
このように高精度の吐出量制御が可能なシリンジポンプ20と、それに続く開閉弁13aの開放に対するバッファタンク15の圧力緩衝作用とにより、塗布処理を開始するときに、最初にノズル12から吐出される塗液bが盛り上がって塗布されることを抑制することができる。従って、塗布処理開始から、その後の継続的な塗布処理にわたって、ほぼ一定量で塗液bをノズル12から吐出させることができて、適切な塗膜厚で塗布対象物11を塗布処理することができる。
【0072】
第4実施形態にあっても、勿論、開閉弁13aの開放に伴う塗液bの過剰な吐出を抑える必要のある塗布処理の初期段階のみ、シリンジポンプ20を用い、その後すぐに、タンク3からの塗液bの押し出しによる、安定した吐出量の塗布処理に切り換え、その切り換え直後の塗液bの過剰な吐出をバッファタンク15で緩衝するので、塗布処理開始時における塗液bの盛り上がり防止と、その後の塗膜厚の均一化とを確保することができる。このような第4実施形態であっても、上記第1〜第3実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0073】
第4実施形態に係る塗布装置21は、第1実施形態の構成に、シリンジポンプ20を備える追加の塗液供給系22を設けるだけであり、シリンジポンプ20を小容量化できるなど、構成がきわめて簡単であると共に、第3実施形態と同様に、シリンジポンプ20の停止と開閉弁13aの開放を同時に行うという簡単な制御で、容易に実施することができる。
【0074】
バッファタンク15は、第2実施形態で説明した可変容量型としても良いことはもちろんであり、これにより塗膜厚の調整をさらに自在に行うことができる。
【課題】加圧供給方式であっても、塗布処理を開始するときに最初にノズルから吐出される塗液が盛り上がって塗布されることを抑制することが可能であり、塗布処理の開始時点から適切な塗膜厚で塗布対象物に塗布することができると共に、構成が簡単でかつ塗膜厚調整のための制御も容易な塗布装置及び塗布方法を提供する。
【解決手段】タンク3に貯留されている塗液bを、加圧により塗液供給系9へ押し出して供給する塗液供給源2と、塗液供給系に接続され、供給される塗液を吐出しつつ、塗布対象物11に対し相対移動されて、塗布対象物を塗布処理するノズル12と、塗液供給系に設けられ、塗布処理を開始するとき開かれて塗液をノズルに供給し、閉じられて塗液のノズルへの供給を停止する開閉弁13と、塗液供給系に設けられかつ塗液が内部に充満され、開閉弁が開かれたときにノズルに向かって伝播される圧力の変化を抑制するバッファタンク15とを備えた。