(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782180
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ドアクローザ
(51)【国際特許分類】
E05F 1/12 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
E05F1/12
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-508098(P2014-508098)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2013059543
(87)【国際公開番号】WO2013147164
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-75535(P2012-75535)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】風間 保夫
【審査官】
川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−163279(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸線に沿って延びる筒体と、
第1及び第2端部を有し、該長手軸線に沿って延び、該筒体に回転可能に保持された内側シャフトと、
該筒体内に位置する第1端部、及び該内側シャフトに対して相対的に回転しないように固定された第2端部を有し、該内側シャフトの外側を該長手軸線に沿って延びる外側シャフトと、
を備え、該筒体がドア及びドア枠の一方に取り付けられ、該内側シャフトがドア及びドア枠の他方に対して動かないように固定され、ドアが開閉されるのに伴って該筒体と該内側シャフトとの間に相対的な回転が生じるようにされたドアクローザであって、
該筒体と該内側シャフトとの相対的回動位置が、該ドアが閉止した状態に対応する初期回動位置とドアが所定角度だけ開かれた状態に対応する第1回動位置との間にあるときには、該外側シャフトの該第1端部を該筒体に係止させ、また、該ドアが該第1回動位置と該ドアの全開位置に対応する第2回動位置との間にあるときには、該外側シャフトの該第1端部を該筒体との係止から解除して、該内側シャフトに係止させるクラッチ機構をさらに備えており、
該相対的回動位置が該初期回動位置と該第1回動位置との間にあるときは、該筒体と該内側シャフトとの間に生じる相対的回転によって、該外側シャフトが捻られてドア閉扉のための弾性復元力を畜勢するようにした、ドアクローザ。
【請求項2】
該筒体からなり、一端に第1自由端部、他端に第1接続用端部を有する第1筒体と、
一端に第2自由端部、他端に第2接続用端部を有し、ドア及びドア枠の該他方に取り付けられる第2筒体であって、該第2接続用端部が該第1接続用端部に隣接し該第1筒体に対して該長手軸線の方向で整合して、該第1筒体に対して該長手軸線の周りで相対的に回転可能に接続される第2筒体と、をさらに備え、
該内側シャフトの該第2端部は、該第2筒体に取り付けられて該第2筒体を介してドア及びドア枠の該他方に固定されるようにされた、請求項1に記載のドアクローザ。
【請求項3】
該外側シャフトがバネ材からなり、
該内側シャフトが剛性部材からなる中実の円柱状シャフトとされた、請求項2に記載のドアクローザ。
【請求項4】
該クラッチ機構は、該第1筒体の内周面に固定された円筒状のクラッチ部材と、該外側シャフトの該第1端部に固定され該クラッチ部材の内周面と該内側シャフトの外周面との間に延在するクラッチ切換要素保持部材であって、該クラッチ切換要素保持部材を半径方向で貫通する開口を有するクラッチ切換要素保持部材と、該開口内に保持されるクラッチ切換要素と、を備えており、
該クラッチ部材の該内周面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第1係合凹部が設けられ、該内側シャフトの該外周面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第2係合凹部が設けられており、
該相対的回動位置が該初期回動位置と該第1回動位置との間にあるときは、該クラッチ切換要素が該第1係合凹部に係合して該クラッチ切換要素保持部材が該クラッチ部材に係止され、該相対的回動位置が該第1回動位置と該第2回動位置との間にあるときには、該クラッチ切換要素が該クラッチ部材の該第1係合凹部とは係合せず該内側シャフトの該第2係合凹部と係合して、該クラッチ切換要素保持部材が該内側シャフトに係止されるようになっている、請求項2に記載のドアクローザ。
【請求項5】
該第1及び第2筒体内で該外側シャフトの周りに設けられ、一端が該第1筒体に固定され、他端が該第2筒体に固定されたコイルスプリングをさらに備える、請求項2に記載のドアクローザ。
【請求項6】
該内側シャフトの該第2端部に固定され、ドア枠に取り付けられるドア枠固定部材をさらに備え、
該筒体はドアに取り付けられ、該内側シャフトは該ドア枠固定部材を介してドア枠に固定されるようにされた、請求項1に記載のドアクローザ。
【請求項7】
該内側シャフトの該第1端部は、該外側シャフトの該第1端部を超えて延在しており、
該クラッチ機構は、第1クラッチ端面を有し該筒体に固定された円筒状の第1クラッチ部材と、該第1クラッチ端面に対向する第2クラッチ端面を有し該内側シャフトの該第1端部に固定された円筒状の第2クラッチ部材と、該第1クラッチ端面と該第2クラッチ端面との間において該外側シャフトの該第1端部に固定されたクラッチ切換要素保持部材であって、当該クラッチ切換要素保持部材を該長手軸線の方向で貫通する開口を有するクラッチ切換要素保持部材と、該開口内に保持されるクラッチ切換要素と、を備えており、
該第1クラッチ部材の該第1クラッチ端面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第1係合凹部が設けられ、該第2クラッチ要素の該第2クラッチ端面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第2係合凹部が設けられており、
該相対的回動位置が該初期回動位置と該第1回動位置との間にあるときは、該クラッチ切換要素が該第1係合凹部に係合して該クラッチ切換要素保持部材が該第1クラッチ部材に係止され、該相対的回動位置が該第1回動位置と該第2回動位置との間にあるときには、該クラッチ切換要素が該第1クラッチ部材の該第1係合凹部とは係合せず該第2クラッチ部材の該第2係合凹部と係合して、該クラッチ切換要素保持部材が該第2クラッチ部材に係止されるようになっている、請求項6に記載のドアクローザ。
【請求項8】
該クラッチ切換要素が、両端部が半球状である円柱形状とされた、請求項7に記載のドアクローザ。
【請求項9】
該筒体内で該外側シャフトの周りに設けられ、一端がドア枠固定部材に固定され、他端が該筒体に固定されたコイルスプリングをさらに備える、請求項8に記載のドアクローザ。
【請求項10】
一端が該ドア枠固定部材に固定され、他端がドア枠に固定されたアームリンク部材をさらに備え、該ドア枠固定部材が該アーム部材を介して該ドア枠に連結されるようにされた、請求項6乃至9の何れか一項に記載のドアクローザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアクローザに関する。より具体的には、クラッチ機構を備えたドアクローザに関する。
【背景技術】
【0002】
クラッチ機構を備えたドアクローザは、例えば特許文献1及び特許文献2によって知られている。この公知のヒンジ型のドアクローザは、ヒンジピンの中心軸線に沿って重ね合わせるように設けられ、一方をドア枠に、他方をドアに取り付けられ、ドアの開閉に伴って相対的に回動可能とした一対の羽根付き筒体からなるヒンジハウジングと、該ヒンジハウジング内に上記中心軸線に沿って設定され開扉されたドアを閉扉させるための主スプリングと補助スプリングとを備える。主スプリングは、ドアの開扉操作中に開扉角度全域にわたって畜勢されることによって閉扉トルクを生じる。一方、補助スプリングは、開扉操作の初めの一定角度だけにおいて2つの筒体間の相対的回動によって畜勢され、これにより閉扉完了直前のこの一定角度範囲での閉扉トルクを生じ、閉扉を確実に行えるようにする。この補助スプリングの一定角度だけでの畜勢は、一端を一方の筒体に固定した補助スプリングの他端を、他方の筒体と上記一定角度だけで連結するようにするクラッチ機構により行われる。すなわち、このクラッチ機構は、上記一定角度の間だけ、2つの筒体間の相対的回転が生じるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−163279号公報
【特許文献2】実開平05−024859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような補助スプリングは、閉扉を確実に行うようにするためのものであり、その為の大きな閉扉トルクを生じるためには、開扉角度全域にわたって畜勢し緩やかな閉扉トルクを与えるための主スプリングに較べて、断面の大きいバネ材を用いて直径を大きくする必要がある。このため、ヒンジハウジングの外形も大きなものとせざるを得ず、ドア金具として建具への収まり外観を損ねる虞がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、同等の閉扉トルク特性を有する従来のドアクローザよりも小さな外形とすることが可能なドアクローザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、
長手軸線に沿って延びる筒体と、
第1及び第2端部を有し、該長手軸線に沿って延び、該筒体に回転可能に保持された内側シャフトと、
該筒体内に位置する第1端部、及び該内側シャフトに対して相対的に回転しないように固定された第2端部を有し、該内側シャフトの外側を該長手軸線に沿って延びる外側シャフトと、
を備え、該筒体がドア及びドア枠の一方に取り付けられ、該内側シャフトがドア及びドア枠の他方に対して動かないように固定され、ドアが開閉されるのに伴って該筒体と該内側シャフトとの間に相対的な回転が生じるようにされたドアクローザであって、
該筒体と該内側シャフトとの相対的回動位置が、該ドアが閉止した状態に対応する初期回動位置とドアが所定角度だけ開かれた状態に対応する第1回動位置との間にあるときには、該外側シャフトの該第1端部を該筒体に係止させ、また、該ドアが該第1回動位置と該ドアの全開位置に対応する第2回動位置との間にあるときには、該外側シャフトの該第1端部を該筒体との係止から解除して、該内側シャフトに係止させるクラッチ機構をさらに備えており、
該相対的回動位置が該初期回動位置と該第1回動位置との間にあるときは、該筒体と該内側シャフトとの間に生じる相対的回転によって、該外側シャフトが捻られてドア閉扉のための弾性復元力を畜勢するようにした、ドアクローザを提供する。
【0007】
このドアクローザは、ドアを回動した初めの所定角度においてだけ外側シャフトに捻りが生じるようにすることにより、ドア閉扉間際のドアに対する閉扉トルクを与えるものであるが、コイルスプリングにより閉扉間際の大きな閉扉トルクを与えようとした従来のドアクローザのように、その径を大きくする必要が無く、小径で外観上スマートなドアクローザとすることができる。
【0008】
具体的には、
該筒体からなり、一端に第1自由端部、他端に第1接続用端部を有する第1筒体と、
一端に第2自由端部、他端に第2接続用端部を有し、ドア及びドア枠の該他方に取り付けられる第2筒体であって、該第2接続用端部が該第1接続用端部に隣接し該第1筒体に対して該長手軸線の方向で整合して、該第1筒体に対して該長手軸線の周りで相対的に回転可能に接続される第2筒体と、をさらに備え、
該内側シャフトの該第2端部は、該第2筒体に取り付けられて該第2筒体を介してドア及びドア枠の該他方に固定されるようにすることができる。
【0009】
好ましくは、該外側シャフトがバネ材からなり、該内側シャフトが剛性部材からなる中実の円柱状シャフトとすることができる。
【0010】
また、好ましくは、
該クラッチ機構は、該第1筒体の内周面に固定された円筒状のクラッチ部材と、該外側シャフトの該第1端部に固定され該クラッチ部材の内周面と該内側シャフトの外周面との間に延在するクラッチ切換要素保持部材であって、該クラッチ切換要素保持部材を半径方向で貫通する開口を有するクラッチ切換要素保持部材と、該開口内に保持されるクラッチ切換要素と、を備えており、
該クラッチ部材の該内周面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第1係合凹部が設けられ、該内側シャフトの該外周面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第2係合凹部が設けられており、
該相対的回動位置が該初期回動位置と該第1回動位置との間にあるときは、該クラッチ切換要素が該第1係合凹部に係合して該クラッチ切換要素保持部材が該クラッチ部材に係止され、該相対的回動位置が該第1回動位置と該第2回動位置との間にあるときには、該クラッチ切換要素が該クラッチ部材の該第1係合凹部とは係合せず該内側シャフトの該第2係合凹部と係合して、該クラッチ切換要素保持部材が該内側シャフトに係止されるようにすることができる。
【0011】
本発明にかかる上述のドアクローザにおいては、該第1及び第2筒体内で該外側シャフトの周りに設けられ、一端が該第1筒体に固定され、他端が該第2筒体に固定されたコイルスプリングをさらに備えるようにすることができる。
【0012】
本発明はまた、
該内側シャフトの該第2端部に固定され、ドア枠に取り付けられるドア枠固定部材をさらに備え、
該筒体はドアに取り付けられ、該内側シャフトは該ドア枠固定部材を介してドア枠に固定されるようにすることもでき、
このようなドアクローザにおいて、
該内側シャフトの該第1端部は、該外側シャフトの該第1端部を超えて延在しており、
該クラッチ機構は、第1クラッチ端面を有し該筒体に固定された円筒状の第1クラッチ部材と、該第1クラッチ端面に対向する第2クラッチ端面を有し該内側シャフトの該第1端部に固定された円筒状の第2クラッチ部材と、該第1クラッチ端面と該第2クラッチ端面との間において該外側シャフトの該第1端部に固定されたクラッチ切換要素保持部材であって、当該クラッチ切換要素保持部材を該長手軸線の方向で貫通する開口を有するクラッチ切換要素保持部材と、該開口内に保持されるクラッチ切換要素と、を備えており、
該第1クラッチ部材の該第1クラッチ端面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第1係合凹部が設けられ、該第2クラッチ要素の該第2クラッチ端面には該クラッチ切換要素の一部を受け入れる第2係合凹部が設けられており、
該相対的回動位置が該初期回動位置と該第1回動位置との間にあるときは、該クラッチ切換要素が該第1係合凹部に係合して該クラッチ切換要素保持部材が該第1クラッチ部材に係止され、該相対的回動位置が該第1回動位置と該第2回動位置との間にあるときには、該クラッチ切換要素が該第1クラッチ部材の該第1係合凹部とは係合せず該第2クラッチ部材の該第2係合凹部と係合して、該クラッチ切換要素保持部材が該第2クラッチ部材に係止されるようにすることができる。
【0013】
好ましくは、上記クラッチ切換要素を両端部が半球状である円柱形状とすることができる。
【0014】
クラッチ切換要素が切換要素保持部材の開口に対して円筒面で摺動係合して比較的に広い面積で力を受けることができるので、大きな応力を受けたときにも部材の破損等が起こりにくく耐久性を向上させることができる。
【0015】
本発明にかかる上述のドアクローザにおいても、該筒体内で該外側シャフトの周りに設けられ、一端がドア枠固定部材に固定され、他端が該筒体に固定されたコイルスプリングをさらに備えるようにすることができる。
【0016】
本発明はさらに、一端が該ドア枠固定部材に固定され、他端がドア枠に固定されたアームリンク部材をさらに備え、該ドア枠固定部材が該アーム部材を介して該ドア枠に連結されるようにすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施形態に係るドアクローザにつき添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るドアクローザの構造を示す縦断面であり、同ドアクローザのクラッチ機構の機能を分かりやすくするために、その横断面を示す
図2とは完全には整合しない模式図となっている。
【
図2】
図2a〜
図2cは
図1中のII−II断面図であり、
図1に示したドアクローザが、その閉扉状態から開扉状態に変位するときの各構成要素の相互関係を示している。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るドアクローザの構造を示す断面図であり、クラッチ機構が
図5cに対応する状態となって、外側シャフトの弾性復元力がドアに作用しないようになっている状態を示すものである。
【
図5】
図5a〜
図5cは、
図4のドアクローザのクラッチ機構の動作を示す模式図であり、クラッチ切換要素を横断し該クラッチ切換要素の回転移動方向に沿う方向での断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るドアクローザの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係るヒンジ型のドアクローザ10は、ドア(図示せず)に固定される第1取付羽根12を有する第1筒体14と、ドア枠(図示せず)に固定される第2取付羽根16を有する第2筒体18とからなるヒンジハウジング20と、該ヒンジハウジング20内に設定されたコイルスプリング22等を備えドアの開扉に伴って閉扉力を生じるクローザ機構部24とを有する。ヒンジハウジング20の第1及び第2筒体14,18は、それぞれの自由端部14−1,18−1に端部キャップ26,28が取り付けられており、それぞれの接続用端部14−2,18−2が隣接して当該ヒンジハウジング20の長手軸線Cに沿って整合され相互に回転可能に接続されている。
【0020】
クローザ機構部24は、第1筒体14の自由端部14−1に回転自在に支持された第1端部34−1から前記第2筒体18の自由端部18−1に固定された第2端部34−2にまでヒンジハウジング20の長手軸線Cに沿って伸びる中実の内側シャフト34と、第1筒体14内に配置された第1端部36−1から第2筒体18に固定された第2端部36−2にまで内側シャフト34の外側をヒンジハウジング20の長手軸線Cに沿って伸びる円筒状の外側シャフト36と、外側シャフト36を第1筒体14と内側シャフト34とに選択的に係止するためのクラッチ機構38と、を有する。このクラッチ機構38は、以下に詳述するが、ドアの開扉の初めの一定回動範囲においては、外側シャフト36の第1端部36−1をドアの開扉と共に回動される第1筒体14に係止してドアの開扉に伴って外側シャフト36を捻って閉扉方向での弾性復元力を蓄勢させ、一定回動範囲を超えると、外側シャフト36の第1端部36−1を第1筒体14との係止状態から解除してドア枠に対して静止している内側シャフト34に係止し、外側シャフト36がそれ以上捻られないようにする。コイルスプリング22は、第1筒体14がドアと共に閉扉位置から開扉位置まで回動されるときに、その全回動範囲において捻られて閉扉力を畜勢する。
【0021】
内側シャフト34の第1端部34−1は、第1筒体14内に挿入され、固定ピン46により該第1筒体14に回転しないように取り付けられた第1シャフトホルダ40に回転可能に挿入され保持されている。また、内側シャフト34の第2端部34−2は、第2筒体18内に固定された第2シャフトホルダ48に回転しないように挿入される。すなわち、内側シャフト34の第2端部34−2は、
図3に示すように、一部が面取りされており、それに対応する形状に形成された第2シャフトホルダ48の取付孔48−1に挿入されることにより、回転しないようにされている。第2シャフトホルダ48はヒンジハウジング20の
図1で見て左端から挿入されて、その先端が第2筒体18内に固定(例えば、溶接、ローレット切りした上での圧入等による固着)された固定リング42内に挿入され、該第2筒体18及び固定リング42間に装着されたピン44により回転しないように保持されている。コイルスプリング22は、一端が第1シャフトホルダ40に接続され、他端が第2シャフトホルダ48に接続されて、ドアの開閉に伴って捻られて弾性復元力を蓄勢するようになっている。
【0022】
外側シャフト36は筒状の部材とされており、その第2端部36−2は内側シャフト34の第2端部34−2の近くの外周面に固定されることにより第2筒体18に対して回転しないように取り付けられ、第1端部36−1は第1筒体14の中央部分を越えた位置まで延びている。外側シャフト36は、第2端部36−2の部分を除いては、内側シャフト34に対して固定されていない。外側シャフト36の第1端部36−1の外周面にはローラ状にされたクラッチ切換要素50を保持するための筒状のクラッチ切換要素保持部材52が固定されている。このクラッチ切換要素保持部材52は、第1シャフトホルダ40から筒状に延びるクラッチ部材54内において外側シャフト36の第1端部36−1から第1筒体14の自由端部14−1方向に延びた切換要素保持部52−1を有しており、該部分には半径方向で貫通し、クラッチ切換要素50を当該ヒンジハウジング20の半径方向で変位可能に保持する切換要素保持開口52−2が設けられている。
図2に示すように、この切換要素保持開口52−2は、クラッチ切換要素保持部材52の切換要素保持部52−1の直径方向で対向する位置に、ローラ状のクラッチ切換要素50の直径よりも大きな幅で当該クラッチ切換要素保持部材52の周方向で延びるように設けられている。
【0023】
図2に示すように、第1筒体14に固定された筒状のクラッチ部材54の内周面には直径方向で対向する位置にクラッチ切換要素50と係合する第1係合凹部54−1が形成されており、内側シャフト34の外周面には、第2係合凹部34−3が設けられている。前述のように、クラッチ機構38は、ドアの開扉の初めの一定回動範囲においては、外側シャフト36の第1端部36−1(従って、外側シャフト36に固定されたクラッチ切換要素保持部材52)を、クラッチ部材54に係止することにより第1筒体14と共に回転するようにして、ドア枠に固定された第2筒体18に固定されて回転しない内側シャフト34との間に相対的回転を生じさせ、それにより、外側シャフト36を第1端部36−1と第2端部36−2との間で捻って閉扉方向での付勢力を畜勢させると共に、一定回動範囲以上に開扉されると、外側シャフト36の第1端部36−1を第1筒体14との係止状態から解除し(ドア枠に固定される第2筒体18に固定されて静止している)内側シャフト34に係止して静止状態(非回転状態)とし、外側シャフトがそれ以上捻られないようにするものである。
図2aは、ドアが閉じているときの状態を示し、この状態で、クラッチ切換要素50は(ドアと共に回動するクラッチ部材54の)第1係合凹部54−1に係合するとともに、内側シャフト34の第2係合凹部34−3にも係合している。この状態からドアが矢印Aで示す方向に開きはじめると、ドアに固定されている第1筒体14の内周面に固定されたクラッチ部材54が同方向Aに回動する(図示の例において、ドアが閉扉された状態では、第2係合凹部34−3は、対応する第1係合凹部54−1から上記方向Aに僅かにずれた位置とされている)。クラッチ部材54の方向Aへの回動によりクラッチ切換要素50が方向Aに動こうとし、切換要素保持部52−1を方向Aへ動かす。このとき、クラッチ切換要素50は、切換要素保持部52−1を動かしながら抵抗を受け、且つ、第1係合凹部54−1に押されて、該第2係合凹部34−3内に次第に押し込まれるようになる(
図2b)。ドアが所定角度(例えば約8°)だけ回動すると(
図2c)、クラッチ切換要素50は第1係合凹部54−1から完全に抜け出し、第2係合凹部34−3にだけ係合した状態となる。このようになることにより、ドアの更なる開扉動作に伴い回動される第1筒体14に固定されたクラッチ部材54が更に回動しても、クラッチ切換要素50を介してクラッチ切換要素保持部材52(従って、それを固定保持する外側シャフト36)を回動させることはなくなる。つまり、その後のドアの回動動作においては、内側シャフト24及び外側シャフト36はドア枠に固定された第2筒体18と共に静止した状態となり外側シャフトの付勢力がドアを閉じるように作用しなくなって、コイルスプリング22だけが連続的に捻りを受けて閉扉力を畜勢しつつ、ドアを閉じる方向に付勢力を作用させる。
【0024】
上述の本発明の第1の実施形態に係るヒンジ型のドアクローザ10では、ドアの開扉に伴う全開扉回動範囲にわたりコイルスプリング22の捻りによって閉扉力を畜勢すると共に、ドア開扉の初めの所定角度範囲においては、外側シャフト36も捻られて付加的な閉扉力を畜勢することができる。この場合、付加的な閉扉力は、ヒンジハウジング20の長手軸線Cに沿って延びる外側シャフト36に畜勢されるものであるために、前述の従来のこの種のヒンジ型のドアクローザにおいて付加的閉扉力のためにコイルスプリングを用いた場合に較べて、当該ドアクローザ10のヒンジハウジング20の直径を大きくする必要が無く、小型のものとすることができる。
【0025】
図4に示す本発明の第2の実施形態に係るドアクローザ110は、ドアの上下に上部ヒンジ及び下部ヒンジを取り付け、これら上部及び下部ヒンジを垂直に通る共通の1つの軸線(枢軸線)を中心にして当該ドアをドア枠に枢着する形式のドアヒンジ装置における上部又は下部ヒンジとして用いられるものである。図示の例では、このドアクローザ110は、下部ヒンジとして用いられたものを示しており、ドアDの底部BからドアD内を上方に延びるように挿入される筒体114と、ドア枠Fの下部部分(床面等を含む)に設定されて筒体114内を上方に延びる内側シャフト134とを備える。筒体114は、その下端に固定されて水平方向に延びるドア取付部材112をドアの底部Bに固定することにより、ドアDに対して回転しないように取り付けられる。内側シャフト134は、上端の第1端部134−1が筒体114内に固定されている制動機構部160に保持されており、その下端の第2端部134−2はベアリング162によってドア取付部材112を回転可能に支持するとともにピン144によってドア枠固定部材118に固定されている。内側シャフト134は、該ドア枠固定部材118をドア枠Fに設けられたスライド受座Rに嵌合することにより、当該ドア枠Fに、その長手軸線Cの周りで回転しないように固定される。制動機構部160は、ドアDが閉じられて筒体114が内側シャフト134に対して相対的に回転されるときにその相対的回転に対して制動をかけてドアの急激な動きを抑制するものであり、例えば、当該制動機構部160内にオイルを充填し、上記相対的回転によって生じるオイルの流れに対して抵抗を与えることにより制動を行うものとすることができる。この種の制動装置は種々知られており、ここではその詳細は省略する。
【0026】
この実施形態のドアクローザ110におけるクローザ機構部124は、内側シャフト134の外側を筒体114の長手軸線Cに沿って伸びる円筒状の外側シャフト136と、外側シャフト136の外側に該外側シャフトに同軸状に設定されたコイルスプリング122と、外側シャフト136の第1端部136−1を筒体114と内側シャフト134とに選択的に係止するためのクラッチ機構138と、を有する。外側シャフト136は、その第2端部(下端)136−2が内側シャフト134の第2端部134−2の近くの外周面に固定されており、第1端部(上端)136−1は制動機構部160の近くにまで伸びている。外側シャフト136は、その第2端部136−2の部分を除いては内側シャフト134に固定されておらず、第1端部136−1は内側シャフト134の第1端部134−1の一部が露呈するように内側シャフト134の途中で終端している。
【0027】
クラッチ機構138は、外側シャフト136の第1端部136−1の外周面に固定された円筒状のクラッチ切換要素保持部材152と、該クラッチ切換要素保持部材152に長手軸線Cの方向に貫通して形成された切換要素保持開口152−2の中に変位可能に保持されたクラッチ切換要素150を有している。クラッチ切換要素150は両端部が半球面とされた円柱形状の部材であり、その長さはクラッチ切換要素保持部材152の長手軸線Cの方向の幅よりも長くされ、少なくとも一方の端部がクラッチ切換要素保持部材152から常に突出する大きさとされている。第1の実施形態に係るドアクローザ10おいては2つのクラッチ切換要素50が設けられているが、本実施形態においては180度以上の開扉を行う事ができるドアクローザとするためにクラッチ切換要素150は1つのみとなっている。開扉の範囲を180度未満とする場合には、クラッチ切換要素150を2つ設けるようにしてもよい。クラッチ切換要素保持部材152の
図4で見て下側には、ピン146によって筒体114に固定された円筒状の第1クラッチ部材154が設けられており、上側には内側シャフト134の外周面に固定された円筒状の第2クラッチ部材156が設けられている。第1クラッチ部材154の第2クラッチ部材156に対向する側の第1クラッチ端面154−1には、第1係合凹部154−2、及び長手軸線Cを中心として該第1係合凹部を通過する円弧を描くように形成された第1クラッチガイド溝154−3が設けられている。また、第2クラッチ部材156の第1クラッチ部材154に対向する側の第2クラッチ端面156−1にも、同様な第2係合凹部156−2及び第2クラッチガイド溝156−3が設けられている。
【0028】
コイルスプリング122は、一端(上端)が第1クラッチ部材154の下方においてスプリングセットピン147によって筒体114に位置決め固定された第1スプリング座140に接続され、他端(下端)が外側シャフト136の第2端部136−2の周囲に固定された第2スプリング座148に接続され、ドアDを開くことに伴って両端の間で捻られて弾性復元力を蓄勢するようになっている。
【0029】
ドアDが閉じている状態では、
図5aの模式図に示すように、クラッチ切換要素150は第1クラッチ部材154の第1係合凹部154−2に係合されている。この状態からドアDを開けていくと、ドアDに固定された筒体114の回動に伴って第1クラッチ部材154が回動し、第1クラッチ部材154にクラッチ切換要素150を介して連結されているクラッチ切換要素保持部材152も同時に回動して、結果としてクラッチ切換要素保持部材152に固定された外側シャフト136の第2端部136−2が回動され、これにより外側シャフト136は捻られて、ドアを閉扉する方向の弾性復元力を蓄勢していく。さらにドアを開扉していくと、
図5bに示すように、クラッチ切換要素150が第2クラッチ部材156の第2係合凹部156−2に上下方向で整合する位置にまでその上端部をクラッチガイド溝154−3(
図5では省略されている)と摺動させながら回動していく。クラッチ切換要素保持部材152は外側シャフト136の弾性復元力により図で見て左側への力を受けているので、クラッチ切換要素保持部材152に保持されているクラッチ切換要素150の半球状の下端部は第1係合凹部154−2に対して左方向に向かって押し付けられるように係合している。これにより、クラッチ切換要素150は第1係合凹部154−2から上方に向かう力を受けるので、
図5bのように第2係合凹部156−2がクラッチ切換要素150と上下方向で整合すると、クラッチ切換要素150は第1係合凹部154−2から第2係合凹部156−2内へと押し出されるようにして上方に移動していく。クラッチ切換要素150が、第1クラッチ部材154の第1係合凹部154−2から押し出され第1係合凹部154−2との係止が完全に解除されて第2クラッチ部材156の第2係合凹部156−2と係止した状態となると(
図5c)、外側シャフト136が固定されているクラッチ切換要素保持部材152は静止している内側シャフト134に対して動かなくなるので、外側シャフト136はそれ以上捻られなくなる。また、筒体114に固定された第1クラッチ部材154は、閉扉方向への弾性復元力を蓄勢した外側シャフト136との係止が解除されるので、外側シャフト136による付勢力はドアには伝達されず、コイルスプリング122だけが連続的に捻りを受けて閉扉力を蓄勢していく。
【0030】
図6及び
図7に示す本発明の第3の実施形態に係るドアクローザ210は、ドアD及びドア枠Fへの取り付け形態を除いて、上述の第2の実施形態に係るドアクローザ110とほぼ同様な構造を有する。当該ドアクローザ210は、筒体214の外周面に固定されたドア取付部材212によりドアDの上部に第2の実施形態のドアクローザ110とは上下逆さまにして取り付けられている。ドア枠固定部材218とドア枠Fの間には第1及び第2アームリンク213−1,213−2からなるアームリンク部材213が設けられ、第1アームリンク213−1の端部がドア枠固定部材218に固定され、第2アームリンク213−2の端部がドア枠Fに枢動可能に取り付けられることで、ドア枠固定部材218がドア枠Fに連結されている。ヒンジHを介してドア枠Fに取り付けられているドアDが開閉されると、アームリンク部材213に固定されている内側シャフト234の回動は制限されているので、ドアDと共に回動する筒体214との間には相対的回動が生ずるようになる。この相対的回動に伴って第2の実施形態のドアクローザ110の場合と同様にクローザ機構部224が機能する。すなわち、ドアDの開扉が一定回動範囲内のときには外側シャフト236が捻られてドアDを閉扉する付勢力が蓄勢され、一定回動範囲を超えるとクラッチ機構238の機能により外側シャフト236がそれ以上捻られなくなると共に外側シャフト236の付勢力がドアDに対して作用しなくなり、コイルスプリング222のみが連続的に捻りを受けて閉扉力を蓄勢していく。
【0031】
クラッチ機構38、138,238は、上述の機能を奏するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、第2及び第3の実施形態におけるクラッチ切換要素は両端部が半球面とされた円柱形状の部材としているが、第1の実施形態のように球状とすることもできる。また、上述の実施形態では、外側シャフト36、136,236に開扉初期での捻りを加えるようにして閉扉間際の閉扉力を大きくするようにしたが、外側シャフト36、136,236を静止状態に保持し、内側シャフト34、134,234に捻りを加えるようにすることもできる。また、内側シャフト34、134,234は中実の円柱状部材としたが中空の筒状のものとすることもできる。本発明は要するに、筒体の長手軸線に沿って設けられる内側及び外側シャフトを用い、ドアが開かれ始めた所定角度範囲で、この内側及び外側シャフトの間に相対的な捻れを生じさせることにより、閉扉間際の閉扉力を大きくすることを特徴とするものであり、上述の実施例に限定されることなく種々の変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0032】
(第1の実施形態の)ドアクローザ10;第1取付羽根12;第1筒体14;自由端部14−1;接続用端部14−2;第2取付羽根16;第2筒体18;自由端部18−1;接続用端部18−2;ヒンジハウジング20;コイルスプリング22;クローザ機構部24;端部キャップ26,28;内側シャフト34;;第1端部34−1;第2端部34−2;第2係合凹部34−3;外側シャフト36;第1端部36−1;第2端部36−2;クラッチ機構38;第1シャフトホルダ40;固定リング42;ピン44;固定ピン46;第2シャフトホルダ48;取付孔48−1;クラッチ切換要素50;クラッチ切換要素保持部材52;切換要素保持部52−1;切換要素保持開口52−2;クラッチ部材54;第1係合凹部54−1
(第2の実施形態の)ドアクローザ110;ドア取付部材112;筒体114;ドア枠固定部材118;コイルスプリング122;クローザ機構部124;内側シャフト134;第1端部134−1;第2端部134−2;外側シャフト136;第1端部136−1;第2端部136−2;クラッチ機構138;第1スプリング座140;ピン144;ピン146;スプリングセットピン147;第2スプリング座148;クラッチ切換要素150;クラッチ切換要素保持部材152;切換要素保持開口152−2;第1クラッチ部材154;第1クラッチ端面154−1;第1係合凹部154−2;第1クラッチガイド溝154−3;第2クラッチ部材156;第2クラッチ端面156−1;第2係合凹部156−2;第2クラッチガイド溝156−3;制動機構部160;ベアリング162
(第3の実施形態の)ドアクローザ210;ドア取付部材212;アームリンク部材213;第1アームリンク213−1;第2アームリンク213−2;筒体214;ドア枠固定部材218;コイルスプリング222;クローザ機構部224;内側シャフト234;外側シャフト236
長手軸線C;ドアD;ドア枠F;底部B;スライド受座R;ヒンジH