特許第5782199号(P5782199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5782199
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/22 20060101AFI20150907BHJP
   F16H 25/24 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   F16H25/22 C
   F16H25/24 B
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-555891(P2014-555891)
(86)(22)【出願日】2014年8月12日
(86)【国際出願番号】JP2014004180
【審査請求日】2014年11月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170853
【氏名又は名称】黒田精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 喜実
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭58−036922(JP,Y2)
【文献】 特開2012−184824(JP,A)
【文献】 米国特許第03512426(US,A)
【文献】 特開2003−113921(JP,A)
【文献】 特開平10−110801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ溝が外周面に形成されたねじ軸と、
円筒状の周壁、前記ねじ軸のねじ溝と協働してボール転動路を画成するべく前記周壁の内周面に形成されたねじ溝、前記ボール転動路の両端を接続するために前記周壁内に延設されたボール戻し通路、及び前記周壁に設けられた少なくとも1つの収容孔を有するナットと、
前記収容孔に挿入され、前記ボール転動路の一端を、前記ボール戻し通路における対応端に接続するための循環通路を画成する循環部材と、
前記ボール転動路、前記ボール戻し通路、及び前記循環通路により形成されるボール通路内に収容された複数のボールと
を備え、
前記ナットには、前記ナットの径方向に交差する挿入方向に向けて前記循環部材の前記収容孔への挿入をガイドするべく、前記循環部材に設けられた対応ガイド部と協働する少なくとも1つのガイド部が設けられ
前記ガイド部および前記対応ガイド部の一方は、前記挿入方向に延在する溝を含み、
前記ガイド部および前記対応ガイド部の他方は、前記溝に対して前記挿入方向に摺動可能に係合する突部を含むことを特徴とするボールねじ。
【請求項2】
前記ナットには、前記循環部材の前記収容孔への挿入限度を規制するべく、前記循環部材に設けられた対応当接部と協働する少なくとも1つの当接部が更に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記周壁には、前記挿入方向に交差する方向に延在し、前記収容孔に開口するように第1固定用孔が設けられ、
前記循環部材には、前記循環部材が前記収容孔に挿入されたときに前記収容孔内にて前記第1固定用孔に連通する第2固定用孔が設けられ、
前記第1固定用孔から第2固定用孔にわたって嵌入される固定部材を更に備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボールねじ。
【請求項4】
前記第1および第2固定用孔は、前記ナットの径方向に交差する方向に延在することを特徴とする請求項3に記載のボールねじ。
【請求項5】
前記収容孔の内壁および前記循環部材の一方には係止爪部が形成され、前記収容孔の内壁および前記循環部材の他方には係止開口部が形成され、
前記循環部材が前記収容孔に挿入されるときに、前記循環部材の少なくとも一部が弾性変形することにより前記係止爪部が前記係止開口部に係止されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボールねじ。
【請求項6】
前記突部は、前記挿入方向に延在する突条からなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のボールねじ。
【請求項7】
前記突部が、前記ガイド部および前記対応ガイド部の他方に設けられた凹部に嵌入されたガイド用部材の一部によって構成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のボールねじ。
【請求項8】
前記ガイド部は、軸線方向において前記収容孔の互いに対向する2つの側部のそれぞれに設けられ、前記対応ガイド部は、前記ガイド部に対応するように前記循環部材の両側に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動および直線運動を相互に変換可能であり、動力伝達や位置決めなどに用いられるボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールねじは、ねじ軸の外周面に設けられたねじ溝と、ナットの内周面に設けられたねじ溝とによって画成された転動路に多数のボール(剛球)が収容された構成を有しており、モータ等の回転運動を高い伝達効率と精度とをもって直線運動に変換するなどの用途に用いられる。ボールねじでは、その駆動の際に転動路に収容されたボールを循環させる必要があるが、その循環方式の1つとして、ボールを循環させるボール戻し通路がナット側に設けられると共に、このボール戻し通路の両端において転動路からボール戻し通路にボールを掬い上げ、またボール戻し通路から転動路にボールを戻すエンドデフレクタ(循環部材)が設けられたエンドデフレクタ方式が普及している。
【0003】
エンドデフレクタ方式およびこれに準ずる循環方式のボールねじとしては、ナットの軸線方向端部に設けられた収容凹部に対して軸線方向にエンドデフレクタが取り付けられる構造(特許文献1参照)や、ナット(周壁)の軸線方向中間部に設けられた収容孔に対して径方向にデフレクタ(以下、「サイドデフレクタ」という。)が取り付けられる構造(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−24305号公報
【特許文献2】特許第4783511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のようにナットに対して軸線方向にエンドデフレクタを取り付ける従来のボールねじでは、固定部材(ピン、ねじ等)と協働してエンドデフレクタの径方向外側への離脱を抑制するための係止手段(例えば、軸線方向に延在する孔およびそれに挿入される突起部)をナットおよびエンドデフレクタにそれぞれ設けることが可能である。しかしながら、上記特許文献2に記載のようにサイドデフレクタをナットの径方向に挿入する従来のボールねじでは、その構成上、サイドデフレクタの径方向外側への離脱を防止するための係止手段(固定部材は除く)を設けることが難しいという問題がある。特に、ナットが回転した場合には、サイドデフレクタの径方向外側への離脱方向に遠心力が作用するため、サイドデフレクタをナットの径方向に挿入するボールねじでは、サイドデフレクタの径方向外側への離脱を抑制するための構成を備えることが望ましい。
【0006】
また、上記特許文献2に記載のようにナットの周壁に対して径方向にサイドデフレクタを取り付ける従来のボールねじでは、サイドデフレクタの取り付けが収容孔の内周面によってガイドされるため、ナットに対するサイドデフレクタの位置合わせを高い精度で簡易に行うためには、収容孔を画成する内壁の側面(周面)全体およびそれらの側面に対応するサイドデフレクタの全ての側面について高い加工精度が要求される。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、ナットの径方向外側への循環部材の離脱を抑制可能としたボールねじを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面では、ボールねじ(1)は、ねじ溝(2)が外周面に形成されたねじ軸(3)と、円筒状の周壁(4)、前記ねじ軸のねじ溝と協働してボール転動路(5)を画成するべく前記周壁の内周面に形成されたねじ溝(6)、前記ボール転動路の両端を接続するために前記周壁内に延設されたボール戻し通路(12)、及び前記周壁に設けられた少なくとも1つの収容孔(14)を有するナット(7)と、前記収容孔に挿入され、前記ボール転動路の一端を、前記ボール戻し通路における対応端に接続するための循環通路(51)を画成する循環部材(13)と、前記ボール転動路、前記ボール戻し通路、及び前記循環通路により形成されるボール通路(53)内に収容された複数のボール(8)とを備え、前記ナットには、前記ナットの径方向に交差する挿入方向に向けて前記循環部材の前記収容孔への挿入をガイドするべく、前記循環部材に設けられた対応ガイド部(41、141)と協働する少なくとも1つのガイド部(42、142)が設けられたことを特徴とする。
【0009】
この第1の側面によるボールねじでは、ナットの径方向に交差する挿入方向に循環部材を挿入するため、ナットの径方向外側への循環部材の離脱を抑制可能となる。
【0010】
本発明の第2の側面では、前記循環部材の前記収容孔への挿入限度を規制するべく、前記循環部材に設けられた対応当接部(23)と協働する少なくとも1つの当接部(31)が更に設けられたことを特徴とする。
【0011】
この第2の側面によるボールねじでは、循環部材の収容孔への挿入限度を当接部および対応当接部によって規制するため、ボールねじの組立時に作業者はナットに対して循環部材を容易に位置合わせすることが可能となる。
【0012】
本発明の第3の側面では、上記第1または第2の側面に関し、前記周壁には、前記挿入方向に交差する方向に延在し、前記収容孔に開口するように第1固定用孔(56)が設けられ、前記循環部材には、前記循環部材が前記収容孔に挿入されたときに前記収容孔内にて前記第1固定用孔に連通する第2固定用孔(55)が設けられ、前記第1固定用孔から第2固定用孔にわたって嵌入される固定部材(61)を更に備えたことを特徴とする。
【0013】
この第3の側面によるボールねじでは、循環部材を固定するための固定部材(例えば、ピン、ねじ、ボルト等)を挿入する固定用孔を循環部材の挿入方向に交差する方向に延在するように設けたため、循環部材が固定部材の反挿入方向に移動することを容易に防止することができ、その結果、ナットに対して循環部材を固定部材により安定して固定することが可能となる。
【0014】
本発明の第4の側面では、上記第3の側面に関し、前記第1および第2固定用孔は、前記ナットの径方向に交差する方向に延在することを特徴とする。
【0015】
この第4の側面によるボールねじでは、両固定用孔をナットの径方向に交差する方向に延在するように設けたため、循環部材をナットに固定した状態(固定部材が固定用孔に挿入された状態)において、固定部材のナットの径方向外側への離脱を抑制可能となる。
【0016】
本発明の第5の側面では、上記第1または第2の側面に関し、前記収容孔の内壁および前記循環部材の一方には係止爪部(81)が形成され、前記収容孔の内壁および前記循環部材の他方には係止開口部(75)が形成され、前記循環部材が前記収容孔に挿入されるときに、前記循環部材の少なくとも一部が弾性変形することにより前記係止爪部が前記係止開口部に係止されることを特徴とする。
【0017】
この第5の側面によるボールねじでは、循環部材をナットに固定するための固定部材を別途準備する必要なく、循環部材を収容孔に挿入するだけで容易に固定することが可能となる。
【0018】
本発明の第6の側面では、上記第1から第5の側面のいずれかに関し、前記ガイド部および前記対応ガイド部の一方は、前記挿入方向に延在する溝(42、142)を含み、前記ガイド部および前記対応ガイド部の他方は、前記溝に対して前記挿入方向に摺動可能に係合する突部(41、141)を含むことを特徴とする。
【0019】
この第6の側面によるボールねじでは、ガイド部および対応ガイド部を、挿入方向に延在する溝およびこれに係合する突部によってそれぞれ形成したため、簡易な構成により、収容孔に対する循環部材の挿入をガイドすることが可能となる。
【0020】
本発明の第7の側面では、上記第6の側面に関し、前記突部は、前記挿入方向に延在する突条(41、141)からなることを特徴とする。
【0021】
この第7の側面によるボールねじでは、ガイド部および対応ガイド部を、挿入方向にそれぞれ延在する溝およびこれに係合する突条によってそれぞれ形成したため、収容孔に対する循環部材の挿入をより安定的にガイドすることが可能となる。
【0022】
本発明の第8の側面では、上記第6または第7の側面に関し、前記突部が、前記ガイド部および前記対応ガイド部の他方に設けられた凹部(71)に嵌入されたガイド用部材(72)の一部によって構成されることを特徴とする。
【0023】
この第8の側面によるボールねじでは、突部を構成するガイド用部材を容易に交換できるため、作業者は、溝に対する突部の係合状態(延いては、収容孔に対する循環部材の挿入の精度)を容易に調整することが可能となる。
【0024】
本発明の第9の側面では、上記第1から第8の側面のいずれかに関し、前記ガイド部は、軸線方向において前記収容孔の互いに対向する2つの側部のそれぞれに設けられ、前記対応ガイド部は、前記ガイド部に対応するように前記循環部材の両側に設けられていることを特徴とする。
【0025】
この第9の側面によるボールねじでは、軸線方向における収容孔の互いに対向する2つの側部およびそれらの側部に対応する循環部材の両側にそれぞれ一対のガイド部および対応ガイド部を設けたため、収容孔に対する循環部材のより安定した挿入が可能となり、その結果、ナットに対して循環部材をより容易に位置合わせすることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明によれば、ボールねじにおいて、ナットの径方向外側への循環部材の離脱を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係るボールねじの斜視図
図2図1に示したボールねじの要部断面図
図3】実施形態に係るサイドデフレクタの外周面側を示す斜視図
図4】実施形態に係るサイドデフレクタの内周面側を示す斜視図
図5】実施形態に係るサイドデフレクタの平面図
図6】実施形態に係るサイドデフレクタの側面図
図7】実施形態に係るナットに対するサイドデフレクタの取り付け方法を示す説明図
図8】実施形態に係るナットに対するサイドデフレクタの取り付け方法を示す説明図
図9】実施形態に係るナットに対するサイドデフレクタの取り付け方法を示す説明図
図10】実施形態に係るナットに対するサイドデフレクタの取り付け方法を示す説明図
図11】実施形態に係るナットの要部断面図
図12】実施形態に係るナットの内周面側を示す要部斜視図
図13】第1変形例に係るサイドデフレクタを示す要部斜視図
図14】第2変形例に係るボールねじの一部分解斜視図
図15】第3変形例に係るボールねじの一部分解斜視図
図16】第3変形例に係るサイドデフレクタの外周面側を示す斜視図
図17】第3変形例に係るサイドデフレクタの内周面側を示す斜視図
図18】第3変形例に係るサイドデフレクタの側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1および図2は、それぞれ本発明の実施形態に係るボールねじの斜視図および要部断面図である。ボールねじ1は、螺旋状のねじ溝(ねじ軸側ねじ溝)2が外周に形成されたねじ軸3と、ねじ軸3を挿入可能な円筒状の周壁4を有し、この周壁4の内周面に形成されてねじ溝2とともにボール転動路5(図2参照)を画成するねじ溝(ナット側ねじ溝)6を有するナット7と、ナット7内に収容された複数の剛球からなるボール8(図2参照)とを主として備える。
【0030】
ねじ軸3は、金属材料(ここでは、ステンレス鋼)からなる丸棒の外周面に所望のリード角およびピッチでねじ溝2を形成したものからなる。ナット7は、ねじ軸3と同様に金属材料からなり、その周壁4の前端部には、径方向に延設された略円形のフランジ11が設けられている。ナット側ねじ溝6は、ねじ軸側ねじ溝2に対向するように形成された螺旋状をなす。また、周壁4内には、軸線方向(図1中の軸線C参照)において略直線状に延在する円形断面を有するボール戻し通路12(図2参照)が設けられている。また、周壁4における軸線方向の中間部には、同一構造の一対のサイドデフレクタ(循環部材)13、13をそれぞれ収容する同一構造の一対の収容孔14、14が互いに軸線方向に所定の間隔をおいて設けられている。なお、ねじ軸3およびナット7の材質や形状等については、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
【0031】
図3および図4は、それぞれサイドデフレクタの外周面側および内周面側を示す斜視図であり、図5および図6は、それぞれサイドデフレクタの平面図および側面図である。
【0032】
サイドデフレクタ13、13は、樹脂材料の射出成形品からなる。サイドデフレクタ13、13の本体は、平面視(図5参照)において、矩形の一辺側(本体の前部)に位置する2つの角(前面23と左右側面25、26とによって画成される2つの角)を所定のR(半径)で丸みをつけた形状を有しており、また、側面視(図6参照)において、内外に位置する2つの円弧の対応する端部をそれぞれ直線で結んだ形状を有している。サイドデフレクタ13、13の本体は、側面視における2つの円弧をそれぞれ画成する内周面21および外周面22と、側面視における前側の直線を画成する前面(対応当接部)23と、側面視における下側の直線を画成する底面24と、平面視における左右の直線をそれぞれ画成する左側面25および右側面26とを有している。なお、前面23の左右側部は、平面視における本体の前部のR形状(上述の2つの角に丸みをつけた形状)を画成するように湾曲している。
【0033】
後に詳述するように、サイドデフレクタ13、13は、その前面23、底面24、左側面25、及び右側面26との間にほとんど隙間を生じさせることなく、ナット7の収容孔14、14に対して嵌め込まれる。収容孔14、14は、互いに周方向(サイドデフレクタ13、13における前後方向)の向きを反転させた状態で配置されている。収容孔14、14を画成する内壁は、サイドデフレクタ13、13の前面23、底面24、左側面25、及び右側面26にそれぞれ対応する前面(当接部)31、底面32、左側面33、及び右側面34(後述する図7参照)を有している。各面31〜34によって画成される収容孔14、14の主要部については、所定の切削工具を用いたワンチャッキングでの加工(一工程によるワークの加工)が可能であるため、加工工程が簡易であると共に、各面31〜34を高い精度で加工できるという利点がある。
【0034】
また、サイドデフレクタ13、13の左側面25および右側面26には、前後方向(すなわち、底面24に平行)に延在する突条(対応ガイド部)41がそれぞれ設けられている。両突条41は、サイドデフレクタ13、13の左右の側面25、26においてそれぞれ左右に突出するように形成された略半円柱状をなす部位からなり、側面視(図6参照)において、その前部(前面)41aは前面23から所定の間隔をおいて後方に位置するように配置されており、また、その後部(後面)41bは外周面22に整合するように円弧状に切り欠かれている。両突条41は、左右対称であることを除けば略同一の形状を有している。
【0035】
後に詳述するように、突条41は、サイドデフレクタ13、13がナット7の収容孔14、14に対して嵌め込まれる際に、ナット7に設けられた溝(ガイド部)42(後述する図7参照)と協働することにより、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14に対する挿入をガイドする。両溝42は、周壁4の外周面側から内側に向けて収容孔14、14の内壁の一部を切り欠くように形成(穿設)され、軸線方向において対向するように互いに平行に配置された左側面33及び右側面34において、それぞれ略半円形の断面を有する凹部を画成している。両溝42は、ナット7の径方向(すなわち、後述する図11の断面図におけるナットの中心Oを通る任意の仮想直線)に交差する方向に向けて延在している。これにより、ナット7が回転した場合でも、サイドデフレクタ13、13の反挿入方向(離脱方向)に遠心力が直接作用することを防止することができる。この両溝42の延在方向によって、サイドデフレクタ13、13の挿入方向が規定される。両溝42の半円形の断面のサイズは、溝42に嵌め込まれた突条41が溝42内でサイドデフレクタ13、13の挿入方向に摺動可能なように、突条41の半円形の断面のサイズと同一または僅かに大きく設定されている。
【0036】
なお、突条41の形状、サイズ、及び配置は、ここに示すものに限らず種々の変更が可能である(突条41が嵌合する溝42についても同様。)。ただし、本実施形態のように、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14への挿入のためのガイドを、互いに摺動可能に係合する凹凸構造(ここでは、溝42および突条41)によって実現することにより、サイドデフレクタ13、13の挿入を簡易な構成によってガイドすることが可能となるという利点がある。
【0037】
また、サイドデフレクタ13、13において、収容孔14、14に対する所定方向(少なくともナット7の径方向に交差する方向)への挿入をガイドすべく溝42に係合する部位(ここでは、突条41)は、必ずしも前後方向に延在している必要はなく、例えば、左右の側面25、26においてそれぞれ前後方向に延在することなく左右方向に突出する1以上の突部(例えば、半円形の断面を有する半球状の突端を設けた突部)であってもよい。ただし、本実施形態のように、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14への挿入のためのガイドを、所定の挿入方向にそれぞれ延在する溝42およびこれに係合する突条41によって行うことにより、サイドデフレクタ13、13の挿入をより安定的にガイドすることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、一対の突条41を設けた例を示したが、より多くの突条41を設けた構成、或いは1つの突条41のみを設けた(一方の突条41を省略した)構成も可能である(対応する溝42についても同様。)。ただし、本実施形態のように、軸線方向において収容孔14、14の互いに対向する2つの側部(ここでは、左側面33および右側面34を画成する部位)およびそれらの側部に対応するサイドデフレクタ13、13の両側(ここでは、左側面25および右側面26を画成する側部)にそれぞれ一対の溝42および突条41を設けることにより、収容孔14、14に対するサイドデフレクタ13、13のより安定した挿入が可能となり、その結果、作業者は、ナット7に対してサイドデフレクタ13、13をより容易に位置合わせすることが可能となる。
【0039】
また、図5に示すように、サイドデフレクタ13、13には、ボール転動路5の一端および他端を、それぞれボール戻し通路12における対応端に接続するための循環通路51が形成されている。循環通路51は、ボール8の通過を許容するサイズに設定された円形断面を有する。また、図6に示すように、サイドデフレクタ13、13の内周面21側には、ボール転動路5からボール8を掬い上げる(あるいは、ボール転動路5にボール8を戻す)タング52が設けられている。サイドデフレクタ13、13が収容孔14、14に嵌め込まれた状態では、タング52の先端は、ねじ軸3のねじ溝2の近傍に位置する。循環通路51の一端側には、サイドデフレクタ13、13の内周面21側におけるタング52の前方に露出する溝51aが形成されている。また、循環通路51の他端側には、サイドデフレクタ13、13の左側面25に開口する円形の開口部51bが形成されている。循環通路51は、その開口部51bを介してボール転動路5の一端および他端の開口部12a(図2参照)にそれぞれ接続される。
【0040】
サイドデフレクタ13、13において、タング52によって掬い上げられたボール8は、ボール転動路5の延在方向(図5における右斜め後方)に導かれた後、左方に湾曲するように形成された循環通路51により左方のボール戻し通路12側に導かれる。一方で、タング52からボール転動路5に戻されるボール8は、掬い上げられたボール8の逆の経路を辿る。
【0041】
このような構成により、ボール転動路5、ボール戻し通路12、及び循環通路51により形成されるボール通路53(図2参照)内に収容された複数のボール8は、ボールねじ1の駆動時にボール通路53内を転動しながら循環可能である。
【0042】
また、図6に示すように、サイドデフレクタ13、13には、上下方向(すなわち、前面23に平行)に延在する円形断面を有する固定用孔(第2固定用孔)55が設けられている。固定用孔55は、外周面22から底面24にわたってサイドデフレクタ13、13を貫通する。後に詳述するように、固定用孔55の中間部には、サイドデフレクタ13、13の固定用の部材のストッパとして機能する括れ部(縮径部)55aが形成されている。また、ナット7の周壁4には、サイドデフレクタ13、13の挿入方向に交差する方向に延在し、収容孔14、14に開口する固定用孔56(後述する図11参照)が設けられ、この固定用孔56は、サイドデフレクタ13、13が収容孔14、14に嵌め込まれた状態において固定用孔55に連通する。
【0043】
なお、サイドデフレクタ13、13を形成する樹脂材料としては、ポリアセタール樹脂や、強化材入りポリアミド樹脂等のエンジニアリングプラスチックなどの公知の材料を用いることができる。サイドデフレクタ13、13に用いられる材料は、樹脂に限定されるものではなく、他の公知の材料(例えば、金属材料)を用いてもよい。ただし、樹脂材料を採用することで、金属材料等に比べて製造コストを低減することができるという利点がある。
【0044】
図7図10は、それぞれナットに対するサイドデフレクタの取り付け方法の一工程を示す説明図であり、図11および図12は、それぞれサイドデフレクタが取り付けられたナットの要部断面図およびナットの内周面側を示す要部斜視図である。ここで、図7は収容孔14、14に対するサイドデフレクタ13、13の挿入前の状態を示し、図8はサイドデフレクタ13、13の挿入開始直後の状態を示し、図9はサイドデフレクタ13、13の挿入が完了した(固定部材による固定前)状態を示し、図10はサイドデフレクタ13、13の固定部材による固定途中の状態を示している。
【0045】
サイドデフレクタ13をナット7に取り付ける際には、まず、作業者は、図7から図9に示すように、ナット7に対してサイドデフレクタ13を嵌め込む。このとき、作業者は、ナットに設けられた溝42とサイドデフレクタ13の突条41とを位置合わせした後、溝42内で突条41を摺動させながら、サイドデフレクタ13を挿入方向(図7中の矢印Aで示す方向であって溝42の延在方向に相当)に向けて収容孔14に押し込む。
【0046】
収容孔14に対するサイドデフレクタ13の挿入限度は、サイドデフレクタ13の前面23の収容孔14を画成する内壁の前面31に対する当接によって規制される(後述する図11を併せて参照)。このような構成により、ボールねじ1では、溝42内における突条41の嵌め合いの精度(すなわち、突条41および溝42の加工精度)と、収容孔14における前面31に対するサイドデフレクタ13の前面23の当接の精度(すなわち、前面31および前面23の加工精度)を確保することにより、サイドデフレクタ13および収容孔14を画成する内壁の他の面の精度に拘わらず、ナット7に対してサイドデフレクタ13の高精度な位置合わせが可能である。また、作業者は、収容孔14に対してサイドデフレクタ13を挿入するだけで容易に位置合わせすることができる。また、溝42については、突条41の長さに対する溝42の深さ(すなわち、収容孔14に対するサイドデフレクタ13の挿入が完了した状態における突条41の前部41aと溝42の前部42aの位置関係)に関し、高精度の加工が不要になるという利点がある。
【0047】
次に、作業者は、図9および図10に示すように、円筒丸棒状をなすスプリングピン61を用いてサイドデフレクタ13をナット7に固定する。このとき、作業者は、スプリングピン61をサイドデフレクタ13の外周面22に開口する固定用孔55に挿入する。これにより、スプリングピン61の先端は、収容孔14における底面32に開口する固定用孔56内まで到達し、スプリングピン61は、サイドデフレクタ13の固定用孔55からナット7の固定用孔56にわたって嵌入された状態となる(図11参照)。
【0048】
スプリングピン61は、初期状態において固定用孔55の径よりも大きな外径を有しており、固定用孔55に挿入される際、また、括れ部55aを通過する際には弾性変形により縮径された状態となる。最終的にスプリングピン61の上端が括れ部55aを通過すると、スプリングピン61は復元して括れ部55aの径よりも大きく拡径し、その復元力をもって固定用孔55、56の内周面に密接することにより固定が完了する。スプリングピン61における挿入側の端部には、先細り状をなすように面取り部61aが形成されており、これにより、作業者によるスプリングピン61の固定用孔55(括れ部55a)に対する挿入が容易となっている。
【0049】
なお、本実施形態では、固定用孔55に括れ部55aを形成し、スプリングピン61の離脱方向への移動を規制するストッパとして機能させる構成としたが、括れ部55aを省略し、スプリングピン61の外周面と固定用孔55、56の内周面との摩擦力のみによってスプリングピン61の離脱を防止する構成としてもよい。また、固定用孔55は、必ずしもサイドデフレクタ13、13の外周面22に開口する必要はなく、例えば、サイドデフレクタ13、13の固定用孔55が底面24にのみに開口するように設けられ、初期に固定用孔56内に配置された固定部材(ピン等)が、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14への挿入後に固定部材に付設されたばね等の付勢力を利用して固定用孔55に嵌入される構成も可能である。
【0050】
また、本実施形態では、収容孔14に対するサイドデフレクタ13の挿入限度が、サイドデフレクタ13の前面23と収容孔14を画成する内壁の前面31との当接によって規制される構成としたが、サイドデフレクタ13の挿入限度を突条41の前部41aと溝42の前部42aとの当接によって規制する構成も可能である。この場合、突条41および溝42のみを精度良く加工すれば、サイドデフレクタ13および収容孔14を画成する内壁における各面(前面23、前面31を含む)については、高精度の加工が不要になるという利点がある。また、この場合、収容孔14に対するサイドデフレクタ13の位置決めおよび固定が可能な限りにおいて、ナット7にサイドデフレクタ13が取り付けられた状態で、サイドデフレクタ13の各面23〜26と、それらに対応する収容孔14を画成する内壁の各面31〜34とのいずれかの間に多少の隙間が生じてもよい。
【0051】
さらに、収容孔14に対するサイドデフレクタ13の挿入限度が上述のようなサイドデフレクタ13およびナット7の各々における所定の部位の当接によっては規制されない構成も可能である。その場合、作業者は、収容孔14に対してサイドデフレクタ13を所定の深さ(その前面23と収容孔14を画成する内壁の前面31との間に、ボール8の循環を阻害しない程度の僅かな隙間が生じる位置)まで挿入した後、固定用孔55、56に対してスプリングピン61を挿入することにより、ナット7に対してサイドデフレクタ13を所望の位置に固定することができる。
【0052】
図11に示すように、ナット7に対してサイドデフレクタ13の取り付けが完了した状態では、サイドデフレクタ13の外周面22は周壁4の外周面と面一となる(或いは、僅かに内側に位置する)。また、溝42および突条41の延在方向(図11中の軸線X参照)は、スプリングピン61の挿入方向となる固定用孔55、56の延在方向(図11中の軸線Y参照)と交差するように配置される。本実施形態では、軸線Xと軸線Yとがなす角度θは90°であるが、少なくとも軸線Xと軸線Yとが平行でない限りにおいて角度θは変更可能である。固定用孔55、56は、ナット7の径方向に交差する方向に向けて延在している。これにより、ナット7が回転した場合でも、スプリングピン61の反挿入方向(離脱方向)に遠心力が直接作用することを防止することができる。
【0053】
このように、溝42および突条41の延在方向(サイドデフレクタ13の挿入方向)と交差する方向に延在するように固定用孔55、56を設けることにより、サイドデフレクタ13、13がスプリングピン61の離脱方向に移動することを容易に防止することができ、その結果、ナット7に対してサイドデフレクタ13、13を安定して固定することができる。ナット7に対してサイドデフレクタ13、13を固定するための固定部材(ここでは、スプリングピン61)は、複数設けることも可能であるが、本実施形態では、スプリングピン61の離脱方向へのサイドデフレクタ13、13の移動が防止されるため、1つのスプリングピン61を用いるだけでサイドデフレクタ13、13を安定して固定可能である。
【0054】
また、サイドデフレクタ13、13を固定するための部材は、スプリングピン61に限らず、ソリッドピン、ねじ、ボルトなどの公知の固定部材を用いることも可能である。ただし、固定部材としてピン(スプリングピン61やソリッドピン)を用いることで、ねじやボルトの場合のように締め付けの必要がなくなるため、金属材料よりも比較的剛性の低い樹脂材料からなるサイドデフレクタを用いた場合でも、固定時のサイドデフレクタの破損等を防止できるという利点がある。
【0055】
また、図12に示すように、ナット7に対してサイドデフレクタ13の取り付けが完了した状態では、サイドデフレクタ13の底面24側がナット7の周壁4の内周面に開口する収容孔14から露出する。このとき、サイドデフレクタ13の溝51aは、ナット7のねじ溝6に連なるように整合することにより、タング52によって掬い上げられる(あるいは、タング52からボール転動路5に戻される)ボール8をガイドする。
【0056】
(第1変形例)
図13は、第1変形例に係るサイドデフレクタを示す要部斜視図である。図13では、上述の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してある。また、第1変形例については、以下で特に言及する事項を除いて、上述の実施形態と同様として詳細な説明を省略する。
【0057】
第1変形例では、上述のサイドデフレクタ13、13の突条41(ここでは、その一部)が、本体と分離可能な部材によって構成されている。より詳細には、サイドデフレクタ13、13の左右側部には、前後方向に延在する半円柱状の凹部71が設けられており、この凹部71に円柱状をなすガイド用部材72の半分が嵌入される。凹部71の後方には、上述の突条41の後部と同様の形状を有する凸部73が設けられており、これにより、ガイド用部材72の露出部分(半分)およびその後方に連なる凸部73によって突条41が構成される。
【0058】
サイドデフレクタ13、13において凹部71の後方に連なる凸部73を設けることにより、凹部71に嵌入されたガイド用部材72の後方への離脱が防止される。ただし、凸部73は必ずしも必須ではなく、凹部71を外周面22まで後方に延長して凸部73を省略した構成も可能である。
【0059】
なお、第1変形例のボールねじ1では、突条41において、少なくともガイド用部材72によって構成される部分が、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14への挿入をガイド可能であればよい。突条41を構成するガイド用部材72は容易に交換できるため、作業者は、溝42に対する突条41の係合状態(延いては、収容孔14、14に対するサイドデフレクタ13、13挿入の精度)を容易に調整することが可能となる。
【0060】
(第2変形例)
図14は、第2変形例に係るボールねじの一部分解斜視図である。図14では、上述の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してある。また、第2変形例については、以下で特に言及する事項を除いて、上述の実施形態と同様として詳細な説明を省略する。
【0061】
第2変形例に係るボールねじ1は、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14への挿入をガイドするための部材(ガイド部材、対応ガイド部材)を変更した例を示している。図14に示すように、ボールねじ1において、サイドデフレクタ13、13の左右側部には、上述の実施形態におけるナット7の溝42と同様の構成を有する一対の溝142が設けられている。一方、ナット7の収容孔14、14を画成する内壁には、上述の実施形態におけるサイドデフレクタ13、13の突条41と同様の構成を有する一対の突条141が設けられている。
【0062】
このように、第2変形例に係るボールねじ1では、上述の実施形態においてサイドデフレクタ13、13に設けられた突条41およびナット7に設けられた溝42を、それぞれ相手側の部材に設けた構成となっており、サイドデフレクタ13、13の収容孔14、14への挿入は、それら突条141および溝142によってガイドされる。
【0063】
(第3変形例)
図15は、第3変形例に係るボールねじの一部分解斜視図であり、図16および図17は、それぞれ第3変形例に係るサイドデフレクタの外周面側および内周面側を示す斜視図であり、図18は、第3変形例に係るサイドデフレクタの側面図である。図15図18では、上述の実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してある。また、第3変形例については、以下で特に言及する事項を除いて、上述の実施形態と同様として詳細な説明を省略する。
【0064】
第3変形例に係るボールねじ1は、ナット7に対するサイドデフレクタ13、13の固定構造を変更した例を示している。図15に示すように、収容孔14、14の底面32には、上述の実施形態における固定用孔56の代わりに、サイドデフレクタ13、13が係止される係止開口部75が開口している。また、図17及び図18に示すように、サイドデフレクタ13、13の底部には、その底面24から下方に突設された係止爪部81が設けられている。
【0065】
係止爪部81は、図17に示すように底面視において略円形状をなし、また、図18に示すように、側面視において前方から後方に向けて下方への突出高さが徐々に高くなるように形成された逆三角形状をなす。また、係止爪部81の上方には、前後方向に延在する長円状に設けられたスリット82が形成されている。スリット82は、サイドデフレクタ13、13の少なくとも右側面26に開口し、左右方向において少なくとも係止爪部81の位置を超える所定の深さまで左方に延在している。
【0066】
図15に示すように、サイドデフレクタ13、13が収容孔14、14に挿入される際には、係止爪部81が収容孔14、14の底面32に摺接することにより、係止爪部81が上方に押圧される。このとき、スリット82の存在により、係止爪部81は、容易に上方に弾性変形可能である。その後、係止爪部81が係止開口部75に挿入(係止)されることにより、その弾性変形は復元する。なお、スリット82は、少なくとも係止爪部81の必要な弾性変形を実現可能なスペースを確保可能である限りにおいて、その形状や配置については種々の変更が可能である。
【0067】
このような構成により、サイドデフレクタ13、13をナット7に固定するための固定部材を別途準備する必要がなくなり、作業者は、サイドデフレクタ13、13を収容孔14、14に挿入するだけで容易に固定することが可能となる。また、サイドデフレクタのサイズを比較的小さくして固定用孔を形成するスペースを確保できない場合でも、固定用孔を設ける必要なくサイドデフレクタの固定を実現できるという利点がある。
【0068】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、サイドデフレクタは、実施形態では1つの部材として構成されたが、2以上の部材から組立られる構成であってもよい。また、ナットに対するサイドデフレクタの固定に関し、必ずしも固定部材(ピン等)や固定部(係止爪部等)は必須ではなく、場合によって、サイドデフレクタがナットの収容孔に対して圧入される構成も可能である。また、実施形態では、一対のサイドデフレクタについて示したが、1つのサイドデフレクタのみに本発明の構成を採用することも当然可能である。なお、上述の実施形態に示した本発明に係るボールねじの各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ボールねじ
2 ねじ溝
3 ねじ軸
4 周壁
5 ボール転動路
6 ねじ溝
7 ナット
8 ボール
12 ボール戻し通路
13 サイドデフレクタ(循環部材)
14 収容孔
21 内周面
22 外周面
23 前面(対応当接部)
24 底面
25 左側面
26 右側面
31 前面(当接部)
32 底面
33 左側面
34 右側面
41、141 突条(対応ガイド部)
42、142 溝(ガイド部)
42a 前部
51 循環通路
52 タング
53 ボール通路
55 固定用孔(第2固定用孔)
56 固定用孔(第1固定用孔)
61 スプリングピン
71 凹部
72 ガイド用部材
73 凸部
75 係止開口部
81 係止爪部
82 スリット
【要約】
ボールねじにおいて、ナットに対してデフレクタを容易に位置合わせ可能とすると共に、ナットの径方向外側へのデフレクタの離脱を抑制可能とすることを課題とし、その課題を解決する手段として、ボールねじ(1)は、ねじ軸(3)と、ナット(7)と、ナット(7)の収容孔(14)に挿入されたデフレクタ(13)と、複数のボール(8)とを備え、ナット(7)には、その径方向に交差する挿入方向に向けてデフレクタ(13)の収容孔(14)への挿入をガイドするべく、デフレクタ(13)に設けられた対応ガイド部(41)と協働する少なくとも1つのガイド部(42)が設けられた構成とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18