【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0054】
[マクロモノマーの合成]
(合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応容器に、ブチルトリグリコール(以下、「BTG」と記す)500部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と記す)72部、シクロヘキシルメタクリレート(以下、「CHMA」と記す)80部、メタクリル酸(以下、「MAA」と記す)48部、エチル−2−(α−ブロモメチル)アクリレート(以下、「EBMA」と記す)5部、及び2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(以下、「V−601」と記す)2部を仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を1部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、GPCの示差屈折計(以下、「RI」と記す)を用いて測定したマクロモノマーMM−1の数平均分子量(以下、「Mn」と記す)は6,800であり、重量平均分子量(以下、「Mw」と記す)は10,900であり、分散度(Mw/Mn)(以下、「PDI」と記す)は1.60であった。また、紫外線吸収検出器(波長254nm)(以下、「UV検出器」と記す)では、ピークがほとんど観測されなかった。
【0055】
得られたポリマー溶液を大量の水に投入してポリマーを析出させた後、ろ過及び洗浄した。THFに溶解させた後に再度大量の水に投入してポリマーを析出させた後、ろ過及び洗浄した。50℃の乾燥機で24時間乾燥してポリマーを得た。核磁気共鳴装置を使用して得られたポリマーの1H−NMRを測定したところ、モノマーのピークと、EBMA由来の不飽和結合のプロトンのピークが、6ppm及び6.4ppmにそれぞれ観測された。このため、得られたポリマーは、末端に不飽和結合を有するマクロモノマーであると考えられる。以下の合成例においても、同様の測定を行って得られたポリマーがマクロモノマーとなっていることを確認した。
【0056】
(合成例2)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「MFTG」と記す)250部、MMA30部、CHMA40部、MAA30部、EBMA2.5部、及びV−601を1部仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を0.5部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、マクロモノマーMM−2のMnは6,400であり、Mwは10,200であり、PDIは1.59であった。
【0057】
(合成例3)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(以下、「TEDM」と記す)250部、MMA36部、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(以下、「TMCHMA」と記す)40部、MAA24部、EBMA2.5部、及びV−601を1部仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を0.5部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−3)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、マクロモノマーMM−3のMnは6,500であり、Mwは10,400であり、PDIは1.60であった。
【0058】
(合成例4)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG250部、MMA36部、CHMA40部、MAA24部、EBMA3.5部、及びV−601を1部仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を0.5部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−4)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、マクロモノマーMM−4のMnは5,400であり、Mwは8,500であり、PDIは1.57であった。
【0059】
(合成例5)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG250部、MMA20部、エチルメタクリレート(以下、「EMA」と記す)15部、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMA)5部、CHMA40部、MAA20部、EBMA3.5部、及びV−601を1部仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を0.5部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−5)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、マクロモノマーMM−5のMnは5,700であり、Mwは9,700であり、PDIは1.70であった。
【0060】
(比較合成例1)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG250部、MMA36部、ブチルメタクリレート(以下、「BMA」と記す)40部、MAA24部、EBMA2.5部、及びV−601を1部仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を0.5部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−R1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、マクロモノマーMM−R1のMnは6,300であり、Mwは10,000であり、PDIは1.59であった。なお、このマクロモノマーMM−R1は、シクロアルキル基を有しないマクロモノマーである。
【0061】
(比較合成例2)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG250部、MMA36部、エチルメタクリレート(以下、「EMA」と記す)10部、2−エチルヘキシルメタクリレート(以下、「2EHMA」と記す)30部、MAA24部、EBMA2.5部、及びV−601を1部仕込んだ。窒素バブリングしながら75℃で3時間重合後、V−601を0.5部添加した。さらに4.5時間重合させて、ポリマー(マクロモノマーMM−R2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、このマクロモノマーMM−R2のMnは7,400であり、Mwは11,000であり、PDIは1.49であった。このマクロモノマーMM−R2は、シクロアルキル基を有しないマクロモノマーである。
【0062】
合成例1〜5、比較合成例1及び2で得たマクロモノマーの詳細を表1に示す。
【0063】
【0064】
[グラフトコポリマーの合成]
(合成例6)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、BTG100部、及びマクロモノマーMM−1の溶液600部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にスチレン(以下、「St」と記す)200部、ブチルアクリレート(以下、「BA」と記す)100部、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノアート(以下、「PBO」と記す)5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを2.5部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。水酸化カリウム(KOH)32.3部、及び水467.7部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−1のMnは15,900であり、Mwは38,500であり、PDIは2.42であった。なお、マクロモノマー由来の分子量のピークは見られなかった。また、UV検出器を使用して分子量を測定したところ、Mnは15,600、Mw39,100、PDIは2.51であった。これは、ポリマー鎖Bを構成するモノマー成分が芳香環を有するものであり、大きな吸収が観測されたためであると考えられる。なお、マクロモノマーMM−1がポリマー鎖Bを構成するモノマー成分と重合して分子量が増大し、グラフトコポリマーが得られたと考えられる。以下の合成例においても、同様の測定を行って得られたコポリマーCP−1がグラフトコポリマーとなっていることを確認した。また、固形分濃度を測定した結果に基づき、得られたポリマー溶液にイオン交換水を加え、固形分濃度を30%に調整した。以下の合成例においても、同様にして固形分濃度を30%に調整した。
【0065】
(合成例7)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG50部、及びマクロモノマーMM−2の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt100部、BA50部、及びPBO2.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を算出したところ100%であった。また、コポリマーCP−
2のMnは14,800であり、Mwは34,200であり、PDIは2.31であった。
【0066】
(合成例8)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、マクロモノマーMM−2の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt67部、BA33部、及びPBO2部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.1部、及び水183.9部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−3)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−3のMnは11,400であり、Mwは27,500であり、PDIは2.41であった。
【0067】
(合成例9)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、マクロモノマーMM−2の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt67部、HEMA33部、及びPBO2部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.1部、及び水183.9部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−4)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−4のMnは10,600であり、Mwは22,800であり、PDIは2.15であった。
【0068】
(合成例10)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、TEDM50部、及びマクロモノマーMM−3の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt100部、BA50部、及びPBO2.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−5)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−5のMnは14,700であり、Mwは28,000であり、PDIは1.90であった。
【0069】
(合成例11)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG50部、マクロモノマーMM−4の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt100部、BA50部、及びPBO2.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−6)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−6のMnは13,100であり、Mwは29,000であり、PDIは2.21であった。
【0070】
(合成例12)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG50部、マクロモノマーMM−5の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt67部、HEMA33部、及びPBO2部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.1部、及び水183.9部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−7)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−7のMnは9,800であり、Mwは22,200であり、PDIは2.27であった。
【0071】
(比較合成例3)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG50部、マクロモノマーMM−R1の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt100部、BA50部、及びPBO2.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−R1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−R1のMnは14,000であり、Mwは31,700であり、PDIは2.26であった。このコポリマーCP−R1は、グラフトしているポリマーにシクロアルキル基を有しないグラフトコポリマーである。
【0072】
(比較合成例4)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG50部、マクロモノマーMM−R2の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にSt100部、HEMA50部、及びPBO2.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−R2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−R2のMnは15,600であり、Mwは37,000であり、PDIは2.37であった。このコポリマーCP−R2は、グラフトしているポリマー(ポリマー鎖A)にシクロアルキル基を有しないグラフトコポリマーである。
【0073】
(比較合成例5)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG50部、マクロモノマーMM−2の溶液300部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にMMA100部、BA50部、及びPBO2.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。PBOを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−R3)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ85%であった。また、コポリマーCP−R3のMnは10,200、Mwは23,000であり、PDIは2.25であった。このコポリマーCP−R3は、主鎖(ポリマー鎖B)に芳香環やシクロアルキル基を有しないグラフトコポリマーである。
【0074】
(比較合成例6)
合成例1で用いたものと同様の反応容器Aに、MFTG250部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の反応容器にMMA36部、CHMA40部、MAA24部、St100部、BA50部、及びアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と記す)7.5部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。AIBNを1.25部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH16.2部、及び水233.8部を添加して中和し、ポリマー(コポリマーCP−R4)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、コポリマーCP−R4のMnは14,700であり、Mwは30,600であり、PDIは2.08であった。このコポリマーCP−R4はランダムコポリマーである。
【0075】
合成例6〜12、比較合成例3〜6で得たコポリマーの詳細を表2に示す。
【0076】
【0077】
[ブロックコポリマーの合成]
(合成例13)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG173部、ヨウ素1.0部、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、「V−70」と記す)3.7部、CHMA42部、ベンジルメタクリレート(以下、「BzMA」と記す)17.6部、及びジフェニルメタン(以下、「DPM」と記す)0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ86%であった。このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは5,000であり、PDIは1.19であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、CHMA16.8部、MMA20部、MAA12.9部、及びV−70を1.5部加えて3.5時間重合させた。KOH8.4部、及び水49.2部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックポリマーBP−1のMnは10,300であり、PDIは1.30であった。なお、固形分濃度を測定した結果に基づき、得られたポリマー溶液にイオン交換水を加え、固形分濃度を30%に調整した。以下の合成例においても、同様にして固形分濃度を30%に調整した。
【0078】
(合成例14)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG174部、ヨウ素1.0部、V−70を3.7部、CHMA29.4部、BzMA30.8部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ82%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは5,700であり、PDIは1.20であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、TMCHMA16.8部、MMA20部、MAA12.9部、及びV−70を1.5部加えて3.5時間重合させた。KOH8.4部、及び水49.2部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−2)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−2のMnは10,300であり、PDIは1.31であった。
【0079】
(合成例15)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG168部、ヨウ素1.0部、V−70を3.7部、CHMA42部、BzMA17.6部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ80%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは5,000であり、PDIは1.17であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、CHMA8.4部、MMA25部、MAA12.9部、及びV−70を1.4部加え、3.5時間重合させた。KOH8.4部、及び水47.6部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−3)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−3のMnは9,100であり、PDIは1.31であった。
【0080】
(合成例16)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG168部、ヨウ素1.0部、V−70を3.7部、CHMA42部、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」と記す)13部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ81%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは5,100であり、PDIは1.22であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、CHMA16.8部、MMA20部、MAA12.9部、及びV−70を1.5部加え、3.5時間重合させた。KOH8.4部、及び水47.6部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−4)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−4のMnは9,600であり、PDIは1.33であった。
【0081】
(合成例17)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、BTG173部、ヨウ素1.0部、V−70を3.7部、CHMA42部、BzMA17.6部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ89%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは6,000であり、PDIは1.18であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、CHMA16.8部、MMA20部、MAA12.9部、及びV−70を1.5部加え、3.5時間重合させた。NaOH6.0部、及び水51.6部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−5)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−5のMnは11,100であり、PDIは1.29であった。
【0082】
(合成例18)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、TEDM172部、ヨウ素1.0部、V−70を3.7部、CHMA58.8部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ84%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは5,200であり、PDIは1.19であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、CHMA16.8部、MMA20部、MAA12.9部、及びV−70を1.5部加え、3.5時間重合させた。28%アンモニア水9.1部、及び水48.2部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−6)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−6のMnは10,000であり、PDIは1.31であった。
【0083】
(合成例19)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(以下、「MMB」と記す)169部、ヨウ素1.0部、V−70を3.7部、CHMA42部、BMA14.2部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ88%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは4,800であり、PDIは1.16であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、CHMA16.8部、MMA20部、MAA12.9部、及びV−70を1.5部加え、3.5時間重合させた。KOH8.4部、及び水47.6部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−7)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−7のMnは9,500であり、PDIは1.29であった。
【0084】
(比較合成例7)
合成例1で用いたものと同様の反応容器に、MFTG128部、ヨウ素1.0部、V−703.7部、BzMA52.2部、HEMA9.8部、及びDPM0.17部を仕込んだ。窒素バブリングしながら45℃で5.5時間重合させてポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ80%であった。また、このポリマー溶液に含有されるポリマーのMnは4,900であり、PDIは1.26であった。次に、ポリマー溶液を40℃に冷却し、MMA20.8部、BMA40.8部、MAA15.0部、及びV−70を2.3部加え、3.5時間重合させた。KOH9.8部、及び水32.8部を添加して中和し、ポリマー(ブロックコポリマーBP−R1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を算出したところ100%であった。また、ブロックコポリマーBP−R1のMnは9,200であり、PDIは1.57であった。
【0085】
(比較合成例8)
合成例1で用いたものと同様の反応容器AにMFTG375部を仕込んで80℃に加熱した。また、別の容器にCHMA110部、BzMA70部、MMA40部、MAA30部、及びアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と記す)12部を仕込んでよく撹拌し、モノマー液を調製した。このモノマー液を反応容器Aに1/2添加した後、残り1/2を1時間かけてゆっくりと滴下した。滴下終了後、3時間重合させた。AIBNを1.5部添加して85℃に加熱し、さらに4時間重合させた。KOH19.6部、及び水105.4部を添加して中和し、ポリマー(ランダムコポリマーRP−R1)を含有するポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をサンプリングして固形分濃度を測定し、不揮発分から重合転化率を換算したところ100%であった。また、ランダムコポリマーRP−R1のMnは12,100であり、PDIは2.28であった。
【0086】
合成例13〜19、比較合成例7及び8で得たコポリマーの詳細を表3に示す。
【0087】
【0088】
[水性顔料分散液]
(実施例1)
合成例6で得たコポリマーCP−1を含有するポリマー溶液233.3部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル70部、及び水311.7部を混合して若干濁りのある半透明の溶液を得た。この溶液にアゾ系黄色顔料PY−74(商品名「セイカファストイエロー2016G」、大日精化工業社製)350部を添加し、ディスパーを使用して30分撹拌してミルベースを調製した。横型媒体分散機(商品名「ダイノミル0.6リットルECM型」、シンマルエンタープライゼス社製、ジルコニア製ビーズ 径0.5mm)を使用し、周速10m/sで分散処理し、ミルベース中に顔料を十分に分散させた。その後、水316部を添加して顔料濃度を18%とした。分散機から取り出したミルベースを遠心分離処理(7500回転、20分間)した後、10μmのメンブレンフィルターでろ過した。水で希釈して、顔料濃度14%のインクジェット用の水性顔料分散液1を得た。
【0089】
得られた水性顔料分散液1に含まれる顔料の数平均粒子径を、粒度測定器(商品名「NICOMP 380ZLS−S」、インターナショナル・ビジネス社製)で測定したところ122nmであり、顔料が微分散されていることを確認した。また、水性顔料分散液1の粘度は3.1mPa・s、pHは8.9であった。この水性顔料分散液1を70℃で1週間保存したところ、顔料の数平均粒子径が122nm、粘度3.0mPa・sとなり、保存安定性が非常に良好であることを確認した。
【0090】
(実施例2〜
7、参考例8〜14、比較例1〜6)
表4に示す顔料分散剤を用いたこと以外は、上述の実施例1と同様にして水性顔料分散液2〜20を得た。得られた水性顔料分散液2〜20の評価結果を表4に示す。
【0091】
【0092】
実施例2〜
7、参考例8〜14、比較例1、2及び5で得た水性顔料分散液2〜16及び19は、実施例1で得た水性顔料分散液と同様に、顔料が微分散されているとともに、保存安定性が良好であった。なお、比較例1、2及び5で得た水性顔料分散液15、16及び19は、いずれも、その構造中にシクロアルキル基が入っていないこと以外は実施例で用いたものと同様の顔料分散剤を用いたものであるので、分散性及び保存安定性が向上したものと考えられる。
【0093】
これに対して、ポリマー鎖B(主鎖)に芳香環やシクロアルキル基を有しないコポリマーCP−R3を用いた比較例3の水性顔料分散液は、分散中に粘度が高くなって取り出しが困難になり、水で希釈して顔料濃度を下げる必要があった。また、分散性が低く、顔料の数平均粒子径も大きく、保存安定性も良好ではなかった。これは、ポリマー鎖B(主鎖)の顔料吸着性が乏しいためではないかと推測される。
【0094】
また、コポリマーCP−R4、及びランダムコポリマーRP−R1を用いた比較例4及び6の水性顔料分散液は、分散性は良好であったが、保存中に顔料粒子が凝集し、流動性が顕著に低下した。これは、吸着部分が分子鎖中にランダムに存在して明確でないランダム構造を有するコポリマーを顔料分散剤として用いたことで、顔料分散剤一分子が複数の顔料粒子に吸着してしまい、顔料の分散がうまく進行しなかったこと、及び加温したことで、溶剤の影響が顕著になって顔料に顔料分散剤が吸着しなくなり、顔料が凝集したものと考えられる。実施例
及び参考例で用いた顔料分散剤の分子構造は、顔料への吸着部分と溶剤溶解性部分とがブロック単位で明確に分かれていることで、顔料の分散が良好な状態で進行したとともに、溶媒溶解性部分の立体効果によって顔料の凝集が抑制され、保存安定性が向上したと考えられる。
【0095】
なお、アゾ系黄色顔料PY−74に代えて、銅フタロシアニン顔料PB−15:3(商品名「シアニンブルーA220JC、大日精化工業社製)、キナクリドン顔料PR−122(商品名「CFR130P」、大日精化工業社製)、及びカーボンブラック顔料PB―7(商品名「S170」、デグザ社製)をそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例1〜
7、参考例8〜14及び比較例1〜6と同様にして、青色水性顔料分散液、赤色水性顔料分散液、及び黒色水性顔料分散液を調製した。その結果、コポリマーCP−1〜CP−7、ブロックコポリマーBP−1〜BP−7、CP−R1、CP−R2、及びBP−R1を用いて得た水性顔料分散液は、いずれも黄色水性顔料分散液と同様、分散性及び保存安定性が良好であった。
【0096】
[水性顔料インク(1)]
(実施例15)
実施例1で調製した水性顔料分散液1を用いて、以下に示す処方でインクジェット用の水性顔料インクを調製した。
水性顔料分散液1 40部
水 42.2部
1,2−ヘキサンジオール 5部
グリセリン 10部
商品名「サーフィノール465」(エアープロダクト社製) 1部
【0097】
上記の処方の配合物を十分撹拌した後、ポアサイズ10μmのメンブランフィルターでろ過して水性顔料インク1を調製した。この水性顔料インク1に含まれる顔料の数平均粒子径を測定したところ119nmであった。また、水性顔料インク1の粘度は2.9mPa・sであった。この水性顔料インク1を70℃で1週間保存したところ、顔料の数平均粒子径が118nm、粘度2.8mPa・sとなり、保存安定性が非常に良好であることを確認した。これは、顔料分散剤の疎水性の吸着部分が脱離することなく顔料に吸着したことによって、保存安定性が向上したものと推測される。
【0098】
(実施例16〜
21、参考例22〜28、比較例7〜9)
表5に示す顔料分散液を用いたこと以外は、上述の実施例15と同様にして水性顔料インク2〜16及び19を得た。また、前述の青色水性顔料分散液、赤色水性顔料分散液、及び黒色水性顔料分散液をそれぞれ用いて各色の水性顔料インクを調製した。いずれの水性顔料インクについても、保存安定性が良好であることを確認した。
【0099】
水性顔料インク1〜16及び19をそれぞれカートリッジに充填し、インクジェットプリンタ(商品名「EM930C」、セイコーエプソン社製)を使用し、(i)専用写真用光沢紙(PGPP)、(ii)普通紙(商品名「4024」、ゼロックス社製)(iii)専用フォトマット紙に、フォト720dpiの印刷モードで印刷して印刷物を得た。その結果、いずれの水性顔料インクもインクジェットのノズルから問題なく吐出可能であることを確認した。
【0100】
光学濃度計(商品名「マクベスRD−914」、マクベス社製)を使用し、得られた印刷物を評価した。なお、専用写真用光沢紙(PGPP)については、光学濃度OD値、彩度C*、20度グロス、及び60度グロスを測定した。また、普通紙と専用フォトマット紙については、光学濃度OD値及び彩度C*を各5回測定し、それぞれ平均値とした。測定結果を表5に示す。
【0101】
【0102】
表5に示す結果から、ポリマー鎖Aにシクロアルキル基が導入されているグラフトコポリマー又はブロックコポリマーを顔料分散剤とする水性顔料分散液を用いて調製した水性顔料インクは、いずれの用紙に印刷した場合であっても、発色性及び彩度に優れていることが分かる。また、専用写真用光沢紙(PGPP)に印刷した場合には、20度グロス及び60度グロスが高いことが分かる。
【0103】
なお、前述の青色水性顔料分散液、赤色水性顔料分散液、及び黒色水性顔料分散液をそれぞれ用いて調製した各色の水性顔料インクについても同様に試験を行った。その結果、いずれのインクを用いた場合でも、発色性、彩度、及びグロスが高くなることを確認した。
【0104】
[水性顔料インク(2)]
(
参考例29)
合成例13で得たブロックコポリマーBP−1を含有するポリマー溶液164部、BDG80部、及び水356部を混合して均一な溶液を得た。得られた溶液に赤色顔料(C.I.ピグメントレッド122(ジメチルキナクリドン顔料、大日精化工業社製))200部を添加し、ディスパーを使用して解膠し、ミルベースを調製した。得られたミルベース800部に対して、顔料分5%となるよう水3200部を加えた後、撹拌しながら5%酢酸を滴下して顔料分散剤を析出させた。酢酸滴下前(初期)のpHは9.5であり、酢酸滴下後のpHは4.5であった。ろ過及び水で洗浄して、分散剤被覆顔料のペースト(固形分濃度:32.0%)を得た。
【0105】
得られたペースト667部、BDG9.4部、及び水酸化ナトリウム1.15部を水62.2部に溶解したものを混合及び撹拌した。次いで、横型メディア分散機を使用して再度分散させた。さらに、超高圧ホモジナイザー(商品名「マイクロフルイダイザー」、マイクロフルイディクス社製)を使用し、圧力150MPaで3パスして分散させた。遠心分離処理(7500回転、20分間)後に10μmのメンブレンフィルターでろ過し、次いで、イオン交換水を添加して顔料濃度が14%である赤色水性顔料分散液1を得た。得られた赤色水性顔料分散液1に含有される顔料の数平均粒子径を測定したところ108nmであった。また、赤色水性顔料分散液1の粘度は2.22mPa・sであった。この赤色水性顔料分散液1を70℃で1週間保存したところ、顔料の粒子径及び粘度に変化は見られず、保存安定性が良好であることを確認した。
【0106】
赤色水性顔料分散液1の40部に対し、BDG1.8部、1,2−ヘキサンジオール5部、グリセリン10部、「サーフィノール465」(商品名 エア・プロダクツ社製)1部、及び水42.2部の混合液60部を加えた。十分撹拌した後、ポアサイズ10μmのメンブランフィルターでろ過してインクジェット用の赤色水性顔料インクを得た。得られた赤色水性顔料インクに含有される顔料粒子の数平均粒子径は114nmであった。また、赤色水性顔料インクの粘度は3.06mPa・sであった。
【0107】
(
参考例30〜32)
赤色顔料に代えて、(i)アゾ系黄色顔料PY−74(商品名「セイカファストイエロー2016G」、大日精化工業社製)、(ii)銅フタロシアニン顔料PB−15:3(商品名「シアニンブルーA220JC」、大日精化工業社製)、(iii)カーボンブラック顔料PB−7(商品名「S170」、デグザ社製)をそれぞれ用いたこと、並びにインク
の処方を表6に示すようにしたこと以外は、前述の
参考例29と同様にして各色水性顔料分散液、及びインクジェット用の各色水性顔料インクを得た。得られた各色水性顔料インクの顔料の数平均粒子径と粘度(初期及び70℃で1週間保存後)の測定結果を表7に示す。
【0108】
【0109】
参考例29〜32で得た各色水性顔料インクの顔料の数平均粒子径と粘度(初期及び70℃で1週間保存後)の測定結果を表7に示す。各色水性顔料インクをそれぞれカートリッジに充填し、インクジェットプリンタ(商品名「EM930C」、セイコーエプソン社製)を使用し、普通紙(商品名「4024」、ゼロックス社製)に、フォト720dpiの印刷モードで印刷して印刷物を得た。光学濃度計(商品名「マクベスRD−914」、マクベス社製)を使用し、得られた印刷物の印字濃度を5回測定して平均値を算出した。結果を表7に示す。
【0110】
【0111】
表7に示すように、顔料分散剤で被覆(カプセル化)された顔料についても、良好な分散性及び保存安定性を示すことが判明した。これは、疎水性のポリマー鎖Bが顔料を被覆することによって、顔料分散剤がインクの溶剤によっても剥がれることなく、さらには水可溶性のポリマー鎖Aが水に溶解し、立体効果によって凝集を防止したためであると推測される。また、高い印字濃度で印字可能であることが確認された。これは、顔料分散剤で被覆(カプセル化)された顔料が紙に浸透しにくく、紙の表面に残ったためであると考えられる。
【0112】
なお、印刷後、インクジェットインクヘッドを45℃で24時間乾燥して吐出不可能にした後、ヘッドクリーニング操作を1回行なった。その結果、いずれのインクを用いた場合でも、問題なく吐出することができた。すなわち、いったん乾燥しても、乾燥物は再度溶解及び分散可能であること、すなわち、インクの再溶解性及び再分散性が良好であるとことが明らかである。これは、カルボキシル基を含むポリマー鎖Aがイオンを形成し、乾燥しても水などの液媒体に容易に溶解するためであると考えられる。