【実施例】
【0036】
1.0 例示的システムおよび端末
図4に、送信が無線チャネル21上で送信側22から無線機器24へ行われる通信システム20の例示的非限定的実施形態を示す。
図4の通信システム20の送信側22は信号ソース26から信号を受け取る。信号ソース26から得られる信号は、(サービスセルなどから得られる)ユーザデータ信号および/または位置決め測定に使用される信号といった多種類のものとすることができる。任意選択で、個々の実施態様に応じて、送信側22は、シリアル/パラレル変換やチャネル符号化やインターリービングといった任意選択の機能を果たすことによって、信号ソース26から得られる信号を操作することができる前処理セクション28を備える。送信側22は、(任意選択で符号化され、かつ/またはインターリーブされてもよい)信号を、制御信号、同期信号、フレーミング信号、パイロット信号といった他の信号と結合する結合器30を備える。
図4では、そのような制御信号、同期信号、フレーミング信号、およびパイロット信号が、別の信号ソース32から印加され、または受け取られるものとして示されている。
【0037】
結合器30は、マルチプレクサとすることができ、またはマルチプレクサとして機能することができ、信号ソース26からの信号のストリームへの信号ソース32からの信号の制御された導入によりビットストリームを生成する。パイロット信号を含む信号の導入の制御は、コントローラ34によって行われる。
【0038】
送信側22が直交周波数分割多重化(OFDM)送信機であるときに、結合器30によって出力されるビットストリームは、変調器38によって一連の副搬送波上に変調される。当業者には理解されるように、変調器38によって行われる変調は、基本的には、ビットのグループを、複素数として表される一連のコンステレーション点へマップする。変調器38によって出力される複素数に対して、逆高速フーリエ変換(IFFT)部40に印加される前にパラレル/シリアル変換が行われ得る。
【0039】
逆高速フーリエ変換(IFFT)部40は変調された搬送波を時間領域サンプルのシーケンスへと変換する。逆高速フーリエ変換(IFFT)部40によって出力される時間領域サンプルのシーケンスは、任意選択のポストプロセッサ42によってさらに多くの処理機能を施されてもよい。そのような後処理機能は、巡回拡大、窓あけ、ピーク制御のうちの1つまたは複数を含むことができ、これらはすべて当業者に理解されている。結果として得られるOFDM波形はチャネル送信要素44に印加される。チャネル送信要素44は、アンテナまたはアンテナ系とすることができ、例えば、OFDM波形(I、Q出力またはディジタルIF信号)を無線チャネル21に印加する。
【0040】
通信システム20の一例示的非限定的実施態様は、無線通信が、例えば、(NodeBやeNodeBともいう)基地局といった無線アクセスノードと、(しばしば、特に、移動局、移動端末、ユーザ端末装置(UE)とも呼ばれる)無線端末またはモバイルユニットとの間で行われるセルラ伝送方式の状況にある。無線システムにおいて、無線端末は、携帯電話(「セルラ」電話)やモバイ端末を備えるラップトップといった移動局において具現化し、または移動局として実現することができ、よって、例えば、無線アクセスネットワークと音声および/またはデータをやりとりする、携帯用、ポケット、ハンドヘルド、コンピュータ内蔵式、または車載モバイル機器などとすることができる。信号(OFDM波形など)はチャネル21上で伝送され、チャネル21は(例えば、チャネルの特性と雑音や干渉といった要因とによる影響を受ける)独自の伝送機能を有する。
【0041】
無線または電波ネットワークにあって、無線機器24は、(例えば基地局(BS)ノードやeNodeBといった)無線アクセスネットワークのノードまたは無線端末(UE)において具現化され、またはそれによって実現され得る。例えば、
図4Aに、送信側22が、ダウンリンク上で、無線端末(ユーザ端末装置(UE)や前述の移動局など)の形をとる無線機器24へ送信する基地局ノードである状況を示す。
図4Bに、送信側22が、アップリンク上で、基地局ノードの形をとる無線機器24へ送信する無線端末である逆の状況を示す。
図4Cに、送信側22と無線機器24の両方が無線端末の形をとり、本明細書で開示する技術がアップリンク(UL)とダウンリンク(DL)両方の伝送に適用できるさらに別の状況を示す。よって
図4Cには、本明細書で開示する技術が一般的な端末間通信にも適用されることが示されており、端末間通信は、アップリンク(UL)ともダウンリンク(DL)ともダウンリンク(DL)とアップリンク(UL)の混合ともみなすことができる。さらに、いくつかのネットワークノード、例えば中継ノードなども、基地局のようにダウンリンク(DL)でも無線端末のようにアップリンク(UL)上でも送信し得る。よって、「無線機器」という用語は、本明細書では一般に、無線端末または無線アクセス・ネットワーク・ノードまたは中継ノードといった別のネットワークノードを指すのに用いられ、[例えば無線端末である無線機器の場合の]ダウンリンク(DL)でも、[例えば無線アクセス・ネットワーク・ノードである無線機器の場合の]アップリンク(UL)でも無線チャネル21上で情報を受け取ることができる。
【0042】
図4A、
図4B、および
図4Cの非限定的実施形態といった本明細書に包含される実施形態においては、位置決めされるのは無線機器である。さらに、位置決め機能は、ネットワークベースの位置決めまたはUE支援の位置決めの場合にはコアネットワークノード(E−SMLCやSLPなど)に位置していてもよく、UEベースの位置決めに対応して無線端末に位置していてもよい。
【0043】
本明細書で使用する場合、位置決めされる機器は、(UE支援の位置決めもしくはUEベースの位置決めもしくは端末間通信での)受信側無線機器とすることもでき、(ネットワークベースの位置決めもしくは端末間通信での)送信側無線機器とすることもできる。位置決めされる無線機器は、UE、無線端末、小型基地局、ビーコン機器、センサ、または少なくとも無線インターフェースを備える他のノードを構成し得る。また、位置決め機能は、位置決めされる無線機器にあってもよく(UEベースの位置決めなど)、他のネットワークノード(LTEのE−SMLCやSUPL位置プラットフォームSLPなど)にあってもよいことも当業者には公知である。
【0044】
さらに、本明細書で説明する技法は、アップリンクベースであれダウンリンクベースであれ、ロングタームエボルーション(LTE)だけではなく、すべての時間基準法に適用される。例えば、本明細書で開示する技術は、LTE TDD、LTE FDD、進化型LTE、WiMAX、WLANといった他の無線アクセス技術にも適用され得る。
【0045】
また
図4には無線機器24の例示的非限定的実施形態のいくつかの態様も示されている。無線機器24はチャネル受信要素60も備え、チャネル受信要素60はアンテナまたはアンテナ系とすることができる。チャネル受信要素60によって受信される信号(I、Q入力またはディジタルIF信号を有するOFDM波形とすることができる)は、任意選択の前処理セクション62に印加される。前処理セクション62は、送信と受信の局部発振器の差によって生じる搬送波オフセットを除去し、信号処理セクション68の他の要素に印加すべき適切なサンプルのシーケンスを選択する。
【0046】
受信信号処理セクション68はコントローラ72を備える。コントローラ72は、例えば、ユーザデータ信号と非ユーザデータ信号とをえり分け、非ユーザデータ信号を処理するように働く。ゲート制御されたコントローラ72からのユーザデータ信号は、任意選択の後処理セクション74に印加することができる。後処理セクション74は、適宜、チャネル復号、デインターリービング、パラレル/シリアル変換といった機能を果たすことができる。そのように得られるユーザデータは、例えば、音声、テキスト、別の種類のアプリケーションなどとすることができるユーザ信号シンク76に適用される。信号と共に含まれるのは、時間差判定部80によって処理される基準信号である。基準信号(RF)は、例えば、位置決め基準信号(PRS)や共通基準信号(CRS)といった任意の適切な種類のものとすることができる。時間差判定部80は、コントローラ72を構成し、例えば、相関器出力を閾値と比較することによって基準信号の存在を判定するように働き、さらに、基準信号の到着時刻を判定する。時間差判定部80は雑音および干渉に基づいてその比較閾値を適応的に選択するため、時間差判定部80を、適応閾値を用いる時間差判定部ともいう。
【0047】
図5に、ハードウェアと、時間差判定部80を含むコントローラ72のいくつかの例示の機能との両方に関して、別の観点からの無線機器24を示す。ハードウェアに関して、
図5には、受信機24の非網羅的な別の例示的構成要素として、様々な入力装置/出力装置およびメモリ82が示されている。メモリ82は、例えば、読取り専用メモリ(ROM)84および様々な形態のランダム・アクセス・メモリ(RAM)86を備えることができ、本明細書で説明する動作と併せてコントローラ72によって実行される符号化命令を記憶するのに使用することもできる。いくつかの代表的な入力/出力装置が、キーパッド88、オーディオ入力機器(マイクロフォンなど)90、視覚入力機器(カメラなど)92、視覚出力機器(ディスプレイ94など)、およびオーディオ出力機器(スピーカなど)96として示されている。
【0048】
図5には、時間差判定部80の機能が、受信機98、相関器100、基準信号検出器102、雑音および干渉電力推定器104、適応閾値選択器106、ならびに基準信号解析器108としてさらに示されている。受信機98は、受信信号処理セクション68から出力を受信し、例えば、無線チャネル21からのチャネル伝搬信号を受信し、そこから遅延出力信号を得るように接続されている。相関器100は、受信機98延出力信号と基準信号の複製とを使用して、無線チャネルから受信される信号と基準信号の複製との相互相関を示す相関器出力値を提供するように接続され、構成されている。特殊な実施形態では、基準信号の複製は、無線機器が(支援データなどから)知っているものと想定されるセル識別子(セルID)から獲得され、または再構築されてもよいが、一般には、複製も、例えば支援データなどと一緒に送信することができる。
【0049】
基準信号検出器102は、相関器100から相関器出力値を受け取り、これらの値を、104から得られる倍率変更された雑音および干渉電力推定値で除算し、結果として得られる値を適応閾値選択器106によって選択される閾値と比較して基準信号の存在を検出し、基準信号の到着時刻を推定するように接続され、構成されている。このために、
図5には、基準信号検出器102が、存在検出器セクション102AとRS到着時刻検出セクション102Bとを備えるものとして示されている。
【0050】
適応閾値選択器106は、受信機98に接続され、受信信号における雑音および干渉電力の相対量の少なくとも1つの推定値に適合するように構成されている。適応閾値選択器106は、受信信号における雑音および干渉電力の相対量、すなわち、受信信号における雑音および干渉電力の相対量の少なくとも1つの推定値を使用して、基準信号検出器102に適用する適応閾値を決定する。本明細書で使用する場合、特定の値または量の「少なくとも1つの推定値」とは、その値または量の推定値のみならず、その値または量のより厳密な決定も包含するものとして理解すべきである。
【0051】
基準信号解析器108は、少なくとも(その存在および到着時刻が基準信号検出器102によって検出される)基準信号を使用して無線機器24の地理的位置を決定するように接続され、構成されている。よって、
図5の実施形態では、位置決め機能は位置決めされる無線機器にある(UEベースの位置決めなど)。LTEでは、無線機器における位置決定を、LTEではまだ標準化されていないいわゆるUEベースのOTDOA位置決め、またはUEベースのGNSSのために行うことができる。
【0052】
別の実施形態では、位置決め機能は位置決めされる無線機器24にはなく、別のネットワークノード(LTEのE−SMLCやSUPL位置プラットフォームSLPなど)にある。そのような事例では、無線機器の地理的位置を決定するための標準化された方法は、参照により本明細書に組み込まれる、「3GPP TS 36.355 v9.2.1 June 6,2010,Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E−UTRA);LTE Positioning Protocol(LPP)」などのLPPプロトコルを使用して進化型サービス移動体位置検出センター(evolved−Serving Mobile Location Center[E−SMLC])へタイミング測定(基準信号時間差[RSTD])を報告するものである。ULタイミング測定を使用する現在検討中であるがまだ標準化されていない位置決め方法(UTDOA、UL Time Difference Of Arrival)は、ネットワークベースの位置決め方法であり、eNodeBといった無線ネットワークノードからLTEのE−SMLCやSLPといった位置決めノードへLPPa(LPP Annex)プロトコルを介して測定値を報告することを意味するものである。
【0053】
図5にはさらに、無線機器24が、無線機器24からの送信のための情報を書式設定するフォーマッタ110、ならびに、送信されるべき信号を(1つまたは複数の)チャネル受信/送信要素60に印加する送信信号処理セクション111もさらに備えることが示されている。
【0054】
2.0 相関
図6Aを参照して理解される一例示的実施形態において、相関器100TDは、時間領域における相関和を求め、相関和を使用して相関器出力値を導出するように構成されている。
図6Bを参照して理解される別の例示的実施形態において、相関器100FDは、周波数領域における相関和を求め、相関和を使用して相関器出力値を導出するように構成されている。
【0055】
2.1 時間領域における相関
図6Aの相関器100TDは、逆高速フーリエ変換(IFFT)部112、逆高速フーリエ変換(IFFT)部114、信号反転接合部115、高速フーリエ変換(FFT)部116、高速フーリエ変換(FFT)部118、要素別乗算部120、逆高速フーリエ変換(IFFT)部121、コヒーレント累積(複素加算)部122、および非コヒーレント累積部126を備える。逆高速フーリエ変換(IFFT)部112は、受信機98の周波数領域Y
l(μ)出力を獲得し、逆高速フーリエ変換を行い、それによって時間領域信号y
l(k)を提供するように接続され、動作する。逆高速フーリエ変換(IFFT)部114は、基準信号の複製の時間領域バージョンs
l(k)を信号反転接合部115へ提供するように接続され、動作する。次いで高速フーリエ変換(FFT)部116を使用して、ゼロパディングが加えられ、信号反転接合部115の出力s
l*(−k)の高速フーリエ変換が行われる。高速フーリエ変換(FFT)部118は、ゼロパディングを加え、逆高速フーリエ変換(IFFT)112から受け取られる信号y
l(k)の高速フーリエ変換が行うのに使用される。高速フーリエ変換(FFT)部116と高速フーリエ変換(FFT)部118との周波数領域出力は要素別乗算部120に印加され、要素別乗算部120は逆高速フーリエ変換(IFFT)部121にR
l(μ)を出力する。逆高速フーリエ変換(IFFT)部121は信号R
l(μ)の逆高速フーリエ変換を行って信号r
l(t)を得、信号r
l(t)はコヒーレント累積(複素加算)部122に印加される。コヒーレント累積(複素加算)部122はさらに、時間領域信号r(t)[「時間領域相関和」ともいう]を、非コヒーレント累積部(絶対値の二乗)126へ出力する。非コヒーレント累積部126は、複素数値のr(t)を受け取り、各項の絶対値の二乗を行い、すべてのmについての結果を合計する。非コヒーレント累積部126の出力は時間領域相関器出力ρ(t)である。
【0056】
図3で例示される以上の説明から理解されるように、一例示的システムおよび実施形態において、基準信号(RS、PRSやCRSなど)は、N
prs個の連続するサブフレームにおいて送信することができる。例示的実施形態において、すべての連続するサブフレーム上のPRSリソース要素を含むOFDMシンボルの総数はN
lである。
【0057】
次に、時間差判定部80の動作を、まずは
図6Aの相関器100TDの状況において説明する。時間領域において、信号は式1で定義することができる。
s
l(k)、k=−N
cp,…,N−1かつl=0,…,N
l−1 式1
式1において、N
cpはサイクリックプレフィックス長であり、s
l(k)は式2で定義される。
s
l(k)=s
l(k+N)、k=−N
cp,…,−1 式2
【0058】
離散有限長時間インパルス応答を特徴とするマルチパスチャネルをh
l=[h
l(0),…,h
l(K−1)]とし、h
l(i)=0、i<0、i≧Kとする。その場合、チャネルを介して伝搬される信号を式3で記述することができる。
式中、e
l(k)は、分散N
0を有する加法性複素ガウス雑音であり、τは、簡単にするためにサンプルの数として想定される伝搬遅延である。
【0059】
到着時刻τを推定するための一手法は、遅延出力信号y
l(k)を、式4のとおりに信号s
l(k)の複製と相関させるものである。
式4において、s
l*(k)は、シンボルlにおける信号sの第kのサンプルの共役複素数であり、Wは、時間サンプルの数としてカウントされる探索窓サイズである。式4の時間領域フィルタは、信号反転接合部115、高速フーリエ変換(FFT)部116、高速フーリエ変換(FFT)部118、要素別乗算部120、逆高速フーリエ変換(IFFT)121、およびコヒーレント累積(複素加算)部122によって実施される。
【0060】
s
l(k)が、P
sを信号和の電力スペクトル密度とし、δ(u)を、u=0についてδ(u)=1、u≠0についてδ(u)=0として定義されるいわゆるクロネッカーのデルタとする式5のような完全な自己相関特性を有するシーケンスである場合には、相関器100によって求められる相関和は式6に記述するようなものになる。
式6において、項νは、分散P
sN
lN
0を有する複素ガウス分布を用いて近似することができる。h
l(k)(t−τ)=h(t−τ)、l=0,…,N
l−1であると仮定すると、二乗絶対値相関器出力の期待値は、式7で示されるような値になる。
E(|r(t)|
2)=(N
lP
s|h(t−τ)|)
2+P
sN
lN
0 式7
【0061】
検出器(基準信号検出器102Aなど)は、式8で記述される正規化された相関器出力を閾値λと比較し、ρ(t
0)≧λである場合には、信号は時刻t
0において存在すると表明される。
式8において、
は雑音電力N
0の推定値を表す。
【0062】
高い相関後の信号対雑音比(式9参照)を仮定すると、式10が当てはまる。
(N
lP
s|h(t−τ)|)
2>>P
sN
lN
0 式9
言い換えると、(t)は、処理利得P
sN
lを含むSNRにほぼ等しい。その場合、チャネルの第1のパスの推定到着時刻は、式11で与えられ、到着検出器102BのPRS時刻によって推論される。
τ=min{t}、制約条件ρ(t)>λに従う 式11
【0063】
加えて、時刻τにおいて受け取られる電力が信号の主ピークのサイドローブからのものにならないように何らかの措置が講じられる必要もある。例えば、コヒーレント累積と単一ピークチャネルでは、相関関数は、その第1のサイドローブが主ピークより低い13dBであるシンク関数のように見えることになる。そのため、1つの基準は、最高ピークを下回るある一定のデシベルレベル(ZdBなど)より大きいピークを除外することとすることができる。さらに、あるピーク補間を行って時間推定値を改善することもできる。例えば、ピーク前後の相関結果−X),…,+X)を取り、補間式を使用してピークのより良い解決を得ることもできる(例えば、二次多項式フィット法を適用し、次いで、当該多項式のピーク位置を見つけることができる)。別の拡張モードでは、重心法を使用することができる。
【0064】
式11における検出閾値λの選択は適応閾値選択器106によって行われる。前述のように、先行技術では、単に、受信信号が所望の信号に加法性ガウス雑音を加えたものからなるものと仮定された。先行技術の仮説の欠陥が、付加雑音項が式26で記述されるような混合であると想定される状況をモデル化することにより示される。
式26において、α∈[0,1]であり、i(k)はQPSK変調信号であり、ν(k)は複素ガウス信号である。入力として式26だけが供給されるときの式8で記述される相関器の統計をシミュレーションで調べた。
図10に、特定の所望のフォールスアラーム率について結果として得られる検出閾値を示す。シミュレートされたシステムは、6つのリソースブロック(RB)と最大4つの位置決めサブフレームを使用するLTEシステムである。
図10から、検出閾値は、優勢であるのが非ガウス干渉かそれともガウス雑音かに応じて数dB変動することがわかる。
【0065】
先行技術の手法と対比すると、適応閾値選択器106は、閾値の適応選択を行い、他の基地局(eNBなど)からの干渉を考慮に入れることができる。この干渉はガウス雑音とは異なる特性を有し、これは検出閾値の選択に際して考慮される必要がある。さもなければ、フォールスアラームの数が大きくなりすぎる可能性があり、その場合位置決め精度が低下することになる。続いて、適応閾値選択器106がどのようにして閾値を適応的に決定するかを以下で説明する。この説明は、周波数領域と時間領域とで動作する相関器を有する相関器を有する時間差判定部80の両方に適用可能である。
【0066】
図5の受信機24では、LTEで動作するときに、基準信号(位置決め基準信号(PRS)など)が、
図2で示すように、周波数領域において指定される。
図2には、4つの可能なPRS構成のうちの1つだけが示されている。さらに、ベースバンド処理の大部分は周波数領域において行われ、特に、式3の受信信号y(k)は周波数領域において利用可能である。したがって、本明細書で開示する技術の別の例示的実施形態では、相関演算は周波数領域において(相関器100FDなどによって)行われる。周波数領域で動作することが有益となり得るのは、これに加えて、周波数領域においては干渉に雑音電力を加えたものの推定をより都合よく行うことができるからである。式8では雑音に干渉電力を加えたものの推定値が必要とされることに留意されたい。
【0067】
2.2 周波数領域における相関
したがって、適応閾値選択器106は、時間領域で動作する
図6Aの相関器100TDといった相関器と共に利用することもできるが、
図6Bに示すようないくつかの実施形態では、相関器が周波数領域において動作することが好ましい。
【0068】
一例示的実施形態において、
図6Bの周波数相関器100FDは、要素別乗算部220、コヒーレント累積(複素加算)部222、逆高速フーリエ変換(IFFT)部224、および非コヒーレント累積部226を備える。要素別乗算部220は、受信機98からの周波数領域出力信号Y
l(μ)と周波数領域基準信号の複製(複素共役)S
l*(μ)とを受け取り、周波数領域積R
l(μ)を生成する。一例示的実施形態において、要素別乗算部220の周波数領域積R
l(μ)は式17を実施する。要素別乗算部220の周波数領域積R
l(μ)はコヒーレント累積(複素加算)部222に印加され、コヒーレント累積(複素加算)部222は周波数領域積の和C
m(μ)[「周波数領域相関和」ともいう]をもたらす。累積部222の演算は基本的には式18を実施する。周波数領域積の和C
m(μ)は、逆高速フーリエ変換(IFFT)部224によって、式19のとおりに、時間領域積の和信号r
m(t)に変換される。時間領域積の和信号r
m(t)は非コヒーレント累積部226に印加され、非コヒーレント累積部226は式20のとおりに相関器出力ρ(k)を提供する。
【0069】
周波数領域演算に関して、2つのシーケンスの巡回畳み込みが周波数領域における信号のFFTの乗算に等しいことは周知である。巡回畳み込みでは、線形畳み込み(1)が式12の式で置き換えられる。
式12において、s
l()
Nは、インデックスのモジュロNが取られることを意味する。ここで、長さN
cpのサイクリックプレフィックスを使用するために、k=1,…,N
cpについてs(−k)=s(N−k)である。そのため、K+τ≦N
cpである限り、巡回畳み込み(12)は線形畳み込み(3)に等しい。
【0070】
シーケンスx(k)の高速フーリエ変換(FFT)Χ(μ)は、
で定義される。上記の表記法を用いて、式12のy
l(k)のFFTを式14として定義することができる。
Y
l(μ)=H
l(μ)FFT(s
l(k−τ))+E
l(μ) 式14
FFTの別の特性は、
x(k−τ)=x(k−τ)
N,k=0,…,N−1 式15
である限り、FFT(x(k−τ))=e
−i2πτ/NΧ(μ)であるというものであり、これは、サイクリックプレフィックス(2)の使用によるs
l(k)についての場合である。したがって、
Y
l(μ)=H
l(μ)S
l(μ)e
−i2πτ/N+E
l(μ) 式16
である。ここで、式(16)を既知のPRSシンボルS
l(μ)と掛け合わせると、第1のOFDMシンボルが副搬送波にPRSシンボルを有する場合には特性|S
l(μ)|=1であり、そうでない場合にはS
l()=0であり、そのため、第1のOFDMシンボルが副搬送波にPRSシンボルを有する場合には、
R
l(μ)=Y
l(μ)S
l*(μ)=H
l(μ)e
−i2πτ/N+S
l*(μ)E
l(μ) 式17
であり、そうでない場合にはR
l(μ)=0である。
【0071】
基準信号は、通常、いくつかのOFDMシンボルにまたがり、そのため、前述の処理はPRSを含むすべてのOFDMシンボルについて繰り返される。それぞれ整数N
c個のOFDMシンボルからなるM個のセグメントが式18のとおりにコヒーレントに加算される。
式18において、Nは、副搬送波においてコヒーレントに累積されるPRSシンボルの数である。PRSを含まないOFDMシンボル/副搬送波について、対応するR()は0に設定される。どのOFDMシンボルにもPRSを含まない副搬送波について、C
m()は0に設定される。C
m(μ)と等価な時間領域の値は、式19で示すように逆高速フーリエ変換(IFFT)を適用することによって得られる。また式19は、基本的には、
図6Aのコヒーレント累積部122の動作を表す。
【0072】
コヒーレント累積長N
cの選択は、無線機器の速度によって決まる。N
cが過度に大きく選択される場合、チャネル位相が測定の間に回転し得る。そのような事例では、式19の複素数の和の各項は部分的に相殺し始める。したがって、N
c個のOFDMシンボルが加えられた後でコヒーレント加算を停止し、式19に従って逆高速フーリエ変換(IFFT)を行い、結果の二乗を取って累積エネルギーを推定することが必要となり得る。最終的には、M個のそのような非コヒーレント累積が加算される。次いで、結果として得られる相関器出力を式20に従って書き込むことができる。また、式20から当業者は、
図6Aの相関器100TDの非コヒーレント累積部126の動作も理解する。
ρ(t)の値が閾値と比較され、いずれかのρ(t)の値が閾値より大きい場合には、例えば前述のように、第1のピークの位置を補間するためにより細かい探索が行われる。閾値を導出するための既存の手法と提案する手法とを以下で論じる。
【0073】
3.0 適応閾値選択
3.1 適応閾値選択:ガウス雑音
信号が検出されるのに十分な電力を有するという保証がないため、閾値はフォールスアラームを回避するように選択されるべきである。式19における入力としてガウス雑音だけを仮定すると、項
は、
r
m(t)=x
re+x
im 式22
として分布し、式中、x
reとx
imとは、それぞれ、相関項r
m(t)の実部と虚部とを表す
分布変数である。したがって、式20のρ(t)はガウス変数の二乗の和である。これは、
が(2M)分布することを意味する。
【0074】
次に進むためには、雑音分散N
0の推定値が必要である。各周波数におけるすべての受信サンプルの二乗を取ることにより、推定値、
が得られ、式中、
lは、第1のOFDMシンボルにPRSシンボルがある場合の周波数インデックスであり、L
sym(l)は、第1のOFDMシンボルにおけるPRSシンボルの数である。ここで、Lはコヒーレントに累積される基準信号リソース要素の総数である。検出変数として、
を取る場合、任意の時間遅延tについて、
*を検出閾値とするλ(t)>λ
*である場合には、信号は遅延tにおいて存在すると表明される。(24)の(t)は、おおよそ、
として分布し、式中、ν〜(2M)である。次いで、確率がP
faを所望のフォールスアラームとする1−P
faである(2M)の累積分布のレベルを決定することができる。雑音電力N
0は、式24を使用して検出器変数によって正規化されるときに消えることに留意されたい。その場合所望の閾値は、
であり、式中、chi2inνは1−P
faレベルにおける(2M)についての累積分布関数の逆である。
【0075】
よって、式27には、一例示的実施形態において、純粋な雑音閾値は、Mを基準信号のOFDMセグメントの整数の数とし、P
faをフォールスアラーム値とする、1−P
faのレベルにおける累積分布関数(2M)の逆によって決まることが示されている。添え字「noise」は、この例示的実施形態では、付加雑音が複素ガウス白色雑音のみからなるときにこの閾値が適用できることを強調するものである。
【0076】
このタイミング推定手順の概要の例が、2つの異なるチャネルモデル、(高分散性の)ETUと、(ごく少数のパスしか含まない)EPAについて
図7〜9に示されている。信号は、6個のリソースブロックを利用するLTE信号である。すなわち高速フーリエ変換(FFT)サイズは128である。
図7〜9において、各プロットには、128の異なる偏移についてのρ(t)(式20参照)が示されており、式25によって導出される閾値が直線として示されている。
【0077】
3.2 適応閾値選択:干渉
式27で与えられる閾値は、雑音が純粋にガウス熱雑音であるときに当てはまる。また、実際には、雑音は、例えば、干渉信号が別のQPSK変調信号である場合など、強い同じ場所に位置する干渉源からも発生し得る。
【0078】
そのような干渉源のモデルが式28で与えられる。
式中、N
0は、干渉側の(フラットであると想定される)チャネルの電力であり、I
l()は、QPSK変調干渉信号である。
【0079】
相関後に、式29の式が得られる。
式29の項V
l()は、2つのQPSKシンボルの積である。LTEにおけるQPSKシンボルは、シンボルアルファベット、
から取られる。したがって、2つのQPSKシンボルの積は、集合(+1,−1,+i,−i)中の値を取る。セクション3.1の手順および表記に従って、式(24)で与えられる検出器出力の統計が、入力として式(28)の干渉源だけを想定して導出される。考察を簡略化するために、統計を(0)について、すなわち、ゼロ遅延についてのみ評価する。この事例では、IFFT演算は、純粋な加算からなる。(一般性を失わずに)さらに簡略化するために、受信QPSKシンボルを、コンステレーションが、
になるように45度回転する。まず、副搬送波領域のコヒーレント累積和が、
になる。
図2を参照すると、1サブフレーム当たりの1副搬送波当たりのPRSシンボルの数は0、1、または2とすることができることがわかる。したがって、N=0、N
c/14、またはN
c/7である。N
1で、1サブフレーム当たり1つのPRSシンボルを含む副搬送波からのPRSシンボルの総数を表し、N
2で、1サブフレーム当たり2つのPRSシンボルを含む副搬送波からのPRSシンボルの総数を表すとする。すべての副搬送波上の(30)の和は、t=0において評価される逆高速フーリエ変換(IFFT)をもたらす。この和の実部は、
で表され、式中、X
1、X
2はアルファベット
から取られる。したがって、
は二項分布する。すなわち、
である。
であるため、ここで式31を、
と書き換えることができる。K=2K
1+K
2とし、
と定義する。その場合、k=0,…,2N
1+N
2について、
であり、式中、合計は、k
1=0,…,N
1、k
2=0,…,N
2について行われる。ここで、確率
を、
として容易に定義することができる。よって式34の確率
は、
について明示的に算出することができる。
r
2n,im(0)がr
2n,re(0)と同じ確率分布関数有することが容易に理解される。次に留意すべきことは、r
m,re(0)とr
m,im(0)とが独立であり、ゼロ平均のものであるため、検出器変数(24)は、和、
として書き換えることができ、式中、各項r
2n,re(0)とr
2n,im(0)の統計は式32〜式34を使用して求めることができることである。
【0080】
2つのランダム変数の和の確率密度関数は、密度関数を畳み込むことによって得ることができる。その場合畳み込みは、2Mの合計の分布が得られるまで繰り返される。対応する累積密度関数は、F
QPSK(x;M,N
c,N
1,N
2)で表され、パラメータM、N
c、N
1およびN
2に対する依存関係が明示的に表明されている。ここで、1−P
faに対応する閾値を、
として求めることができる。
【0081】
よって式36には、一例示的実施形態において、純粋な干渉閾値は、式
によって決まり、Mは基準信号のOFDMセグメントの整数の数であり、各セグメントはN
c個のOFDMシンボルからなり、N
cは基準信号の整数累積長であり、N
1は1サブフレーム当たり1つのPRSシンボルを含む副搬送波からのPRSシンボルの総数であり、N
2は1サブフレーム当たり2つのPRSシンボルを含む副搬送波からのPRSシンボルの総数を表し、F
QPSK(1−P
fa;M,N
c,N
1,N
2)は(1−P
fa)に依存する累積密度関数であり、P
faはフォールスアラーム値であることが示されている。添え字「QPSK」が使用されているのは、付加雑音がQPSK変調干渉源のみからなるときにこの閾値が適用できることを強調するためである。
【0082】
3.3 適応閾値選択:α推定
最終的に閾値を決定するためには、式26で使用される雑音重み係数αが推定される必要がある。αの推定値を計算するには、e(k)の四次モーメントを調べる。本明細書で使用する場合、e(k)は、無線チャネルから受信される受信チャネル伝搬信号など、時間または周波数領域における「受信信号」と同じである。ガウス変数については、E|e(k)|
4=2N
02であり、QPSKシンボルについては、E|e(k)|
4=N
02である。検出変数として、適応閾値選択器106は、e(k)の正規化四次モーメントの推定値を以下のように計算する。
式37において、合計は、第1のOFDMシンボルにPRSシンボルがある場合のすべての周波数インデックスlに及ぶものである(式23と比較されたい)。zと との間の関係は、
z=l+2
2 式38
と示すことができ、そのため、αの推定値は二次方程式38の一乗根になり、すなわち、間隔[0,1]に位置し、
である。zの推定値を使用して、推定雑音重み係数が得られる。推定されたものを使用して、適応閾値選択器106は、例えば、純粋な雑音閾値
noise−(式27)と純粋な干渉閾値
QPSK(式36)との間の線形補間などによって、適応閾値を選択することができる。一般に、純粋な雑音閾値は、すべての受信干渉および雑音が(前述の例ではガウス分布に従う)ランダム信号からなるという仮説に基づいて定義され、純粋な干渉閾値は、受信されたすべての干渉および雑音が既知の変調(前述の例ではQPSK)の信号で構成されるという仮説に基づいて定義される。適応閾値選択器106は、式39aに従って適応閾値を得る。
また補間も、線形閾値電力値をデシベル値へ変換することなどにより、対数領域において行うことができる。
【0083】
閾値
noise*および
QPSK*は、適応閾値選択器106によって、位置決め測定が行われるのと同時に算出することができる。あるいは、M、N
c、N
1、N
2、およびP
faの可能な値について、すべての閾値をオフラインで算出し、メモリに記憶することもできる。さらに別の選択肢として、M、N
c、N
1、N
2、およびP
faの様々な値についての適切な閾値を、例えば
図10に示すシミュレーションによって事前に算出し、メモリに記憶して適応閾値選択器106に提供することもできる。
【0084】
あるいは、分数の雑音/干渉の事例についての明示公式を、例えば、量子化ガウス分布を倍率変更し、式33で定義される分布で畳み込むことによって導出することもできる。
【0085】
雑音重み係数αの推定器の性能が
図11に示されており、
図11には、ほとんどの場合αを正確に推定できることが示されている。
【0086】
3.4 適応閾値選択:フォールスアラーム率の選択
1つの最終的な態様がフォールスアラーム率P
faの選択である。P
faは、式25による前述の閾値計算への入力変数であることに留意されたい。P
faの値は、例えば、UEが測定するよう指図されるeNBの数や、期待されるタイミングにおける初期不確実性の量などによって決まる。
【0087】
n
cellsからの少なくとも1つの測定値が損なわれている確率がP
fposであることを目標とするものと仮定する。これは、
P
fpos=1−(1−P
fNB)
ncells〜n
cellsP
fNB 式40
で与えられる。
【0088】
UEはW個の遅延を探索しなければならないものと仮定すると、ここで1遅延当たりの確率P
faを、
P
fa〜P
fpos/(n
cellsW) 式41
として求めることができる。
【0089】
UE位置における信号到着時刻の不確実性は、
図12における幾何学的配置を考慮することによって解析することができる。UEはeNB1から距離Δであるセルに事前に位置している。この情報は、例えば、UE送信の同期を取るためのタイミングアドバンスの使用などによって知られる。UEが
図12の位置Aにあるかそれとも位置Bにあるかは知られていないことに留意されたい。信号が時刻t
0にeNB1とeNB2とから送信されるものと仮定する。
【0090】
光の速度cが与えられたとすると、eNB1とeNB2とからの信号は、それぞれ、時刻t
1と時刻t
2とに見通し内伝搬路を通って位置Aに到着する。
UEがBにある場合には、信号は以下の時刻に到着する。
【0091】
eNB1が、タイミングアドバンス機構によりそこまでの距離が知られているサービスセルと仮定する。t
1が与えられた場合、符号位相探索を最小化するためにeNB2からの信号到着時刻を予測することが可能である。位置Aおよび位置Bについて、
であることに留意されたい。その結果、
になる。よって、到着不確実性窓の時間の幅は、
である。よってUEは、
の異なる偏移にわたって探索する必要があり、式中、Tsはサンプリング間隔である。
【0092】
4.0 モデル化およびシミュレーション
LTE位置決め基準信号(PRS)を使用した到着時刻推定についての提案の方式を、システムシミュレーションによって評価した。システムシミュレーションの仮説は、参照により本明細書に組み込まれる、「3GPP TSG−RAN WG4 Meeting #52bis,R4−094089,Miyazaki,Japan,October 12−October 16,2009」に記載されるとおりとした。セクション3.1に記載したガウス雑音に基づく方式(「noise」)、セクション3.2のQPSK干渉に基づく方法(「qpsk」)、およびセクション3.3で概説した適応方式(「adaptive」)の3つの検出閾値方式を試験した。
【0093】
図13に、事例1についての結果を示す。事例1は、500mの地点間距離を特徴とする。ネットワークは同期されている。事例1では、QPSKベースの閾値が最善であり、適応方式の性能は非常に接近している。雑音ベースの方式は、ETUではわずかに劣り、EPAでは大幅に劣る。これは、この同期シナリオにおいて1つの強い干渉源を有する相対的に高い確率があることを示唆するように思われる。
【0094】
図14に、事例3についての結果を示す。事例3は、1732mの地点間距離を特徴とする。事例3でも、QPSKベースの方式と適応方式とが最善であり、雑音ベースの方法はわずかに劣る。この事例でも、1つの強い干渉源が比較的頻繁に出現する可能性が高い。
【0095】
図15に、事例1についての、ネットワークが同期されておらず、位置決めフレームが一部しか整合されていない場合の結果を示す。この事例では、QPSKベースの方法が最悪であり、雑音ベースの方式と適応方式は同等にうまく機能することが判明する。この事例では、干渉は複数の基地局から到来し、したがって、干渉項の和はより雑音に似て見える。
【0096】
要約すると、提示される結果により、適応方式は、干渉状況が変動するときに、最善の妥協を提供することが確認される。
【0097】
本明細書で開示する技術は、位置決め測定が(PRS)以外の基準信号に基づいて行われ得る事例を除外せず、これを包含することを意図するものである。というのは、本明細書で開示する技術は、例えば、共通基準信号(CRS)が測定される事例についても適用可能だからである。
【0098】
5.0 利点例
本明細書で開示する技術は、干渉源/雑音特性の解析に基づいて適応検出閾値を導出するための方法および装置に関するものである。本明細書で開示する技術は、固定された(最新技術の)閾値が使用される事例と比べてフォールスアラームの低減と検出確率の向上の両方を実現する。強い干渉源によるフォールスアラームは、1つの強い干渉源が優勢であることが検出されるときに検出閾値を増大させることにより低減される。信号が雑音のみによって損なわれるときには、閾値は低減され、それによって弱い信号の検出が可能になる。
【0099】
実際のネットワークについて均一な閾値を最適化することが冗長なタスクであることを除いては、本明細書で開示する技術は、多くのセルからの基準信号をネットワークの少なくともいくつかの部分において無線機器によって検出可能とすることができ、不均一なセルサイズ、様々な伝搬条件などのために検出閾値をネットワーク全体について均一なものとして構成することができない不均一な異種混交の環境には特に重要である。これは、タイミング測定が3つを超える基地局について行われる必要があり、ネットワークが通常、複数の基地局からの信号の良好な可聴性を保証する場合に、無線端末といった無線機器を位置決めするのに使用される基準信号では顕著となり得る。
【0100】
PRSについて説明したが、本明細書で開示した技術は、PRSにも、どんな基準信号または位置決め一般にも限定されず、ダウンリンクにもアップリンクにも限定されない。信号の別の例は、例えば、セル特有の基準信号、サウンディング基準信号、同期信号などとすることができる。また、QPSKについて説明したが、開示の方法の主要原理は、特定の変調方式に限定されるものではない。本明細書で説明した技法は、アップリンクベースにせよダウンリンクベースにせよ、ロングタームエボルーション(LTE)だけではない、あらゆる時間基準の方法に適用される。例えば、本明細書で開示した技術は、LTE TDD、LTE FDD、進化型LTE、WiMAX、WLANといった他の無線アクセス技術にも適用され得る。提案の解決策は、よって、信号検出全般に関連するものである。さらに、本明細書で説明した技術および実施形態は、適応閾値を使用して行われる到着時刻測定から導出されるRSTDといったタイミング測定など、任意の測定法にも適用される。
【0101】
基準信号時間差(RSTD)は、2つ異なる基地局からの基準信号間の到着時間差である。RSTDは、(それぞれ式11を使用して求められる)2つの到着時刻測定の差を算出することにより計算することができる。例えば、基準信号時間差(RSTD)は、近隣セルjと基準セルiとの相対的タイミング差とすることができ、T
SubframeRxj−T
SubframeRxiとして定義され、式中、T
SubframeRxjはUEがセルjからあるサブフレームの開始を受け取る時刻であり、T
SubframeRxiはUEがセルiから、セルjから受け取られるサブフレームに時間的に最も近いあるサブフレームの対応する開始を受け取る時刻である。観測サブフレーム時間差についての基準点は、UEのアンテナコネクタとして取られる。「3GPP TS 36.214,section 5.1.12」などを参照されたい。
【0102】
以上の説明は多くの特殊性を含むが、これらの特殊性は本発明の範囲を限定するものではなく、単に、現在の好ましい実施形態のいくつかの例示を提供するにすぎないものと解釈すべきである。本発明の範囲は、当業者には自明となり得る他の実施形態を完全に包含し、よってその範囲は必要以上に限定されるべきではないことが理解されるであろう。単数形の要素への言及は、明示的にそう指示しない限り、「唯一」ではなく、「1つまたは複数」を意図するものである。当業者に公知である前述の実施形態の要素のあらゆる構造的、機能的均等物は、本明細書に明示的に組み込まれ、本明細書によって包含されるべきものである。さらに、ある機器または方法は、それが本明細書に包含されるからといって、本発明によって解決されることが求められるありとあらゆる問題に対処するものであるとは限らない。