(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタクリル酸エステル系樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)およびゴム含有グラフト共重合体(C)を含むメタクリル系樹脂組成物(D)をフィルム化してなるアクリル系樹脂フィルムであって、
メタクリル系樹脂組成物(D)を100重量部としたとき、ゴム含有グラフト共重合体(B)に含まれる単量体成分(B−1)および(B−2)の重合物であるゴム粒子の含有量が1〜20重量部、ゴム含有グラフト共重合体(C)に含まれる単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子の含有量が1〜50重量部である、アクリル系樹脂フィルム。
メタクリル酸エステル系樹脂(A):
メタクリル酸エステル50〜100重量%、およびこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体0〜50重量%を重合することにより得られるメタクリル酸エステル系樹脂。
ゴム含有グラフト共重合体(B):
単量体成分(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)をこの順に重合してなり、単量体成分(B−1)および(B−2)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径が0.2〜0.4μmであるゴム含有グラフト共重合体。
(B−1)メタクリル酸エステル(b−1−1)60〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−1−2)40〜0重量%、および多官能性単量体(b−1−3)0.05〜10重量部((b−1−1)+(b−1−2)100重量部に対して)からなる単量体成分
(B−2)アクリル酸エステル(b−2−1)50〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−2−2)50〜0重量%、および多官能性単量体(b−2−3)0.05〜10重量部((b−2−1)+(b−2−2)100重量部に対して)からなる単量体成分
(B−3)メタクリル酸エステル(b−3−1)50〜100重量%、およびこれと共重合可能な単官能性単量体(b−3−2)50〜0重量%からなる単量体成分
(B−4)メタクリル酸エステル(b−4−1)0〜70重量%、およびこれと共重合可能な単官能性単量体(b−4−2)100〜30重量%からなる単量体成分
ゴム含有グラフト共重合体(C):
単量体成分(C−1)、(C−2)をこの順に重合してなる2層構造重合体であって、単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径が0.02〜0.15μmであるゴム含有グラフト共重合体。
(C−1)アクリル酸エステル(c−1−1)50〜100重量%、メタクリル酸エステル(c−1−2)50〜0重量%、および多官能性単量体(c−1−3)0.05〜10重量部((c−1−1)+(c−1−2)100重量部に対して)からなる単量体成分
(C−2)メタクリル酸エステル(c−2−1)50〜100重量%、およびこれと共重合可能な単官能性単量体(c−2−2)50〜0重量%からなる単量体成分。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラスチックの成形体等に積層する際に折曲げ白化が少なく、表面硬度が高く、透明性に優れ、かつ耐割れ性に優れた物性バランスのよい、加飾成形用途に適したフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、メタクリル酸エステル系樹脂および特定のゴム含有グラフト共重合体を含有する樹脂組成物を成形してなるフィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を解決するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のメタクリル酸エステル系樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)およびゴム含有グラフト共重合体(C)を含むメタクリル系樹脂組成物(D)をフィルム化してなるアクリル系樹脂フィルムである。
メタクリル酸エステル系樹脂(A):
メタクリル酸エステル50〜100重量%、およびこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体0〜50重量%を重合することにより得られるメタクリル酸エステル系樹脂。
ゴム含有グラフト共重合体(B):
単量体成分(B−1)、(B−2)、(B−3)、(B−4)をこの順に重合してなり、単量体成分(B−1)および(B−2)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径が0.2〜0.4μmであるゴム含有グラフト共重合体。
(B−1)メタクリル酸エステル(b−1−1)60〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−1−2)40〜0重量%、および多官能性単量体(b−1−3)0.05〜10重量部((b−1−1)+(b−1−2)100重量部に対して)からなる単量体成分
(B−2)アクリル酸エステル(b−2−1)50〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−2−2)50〜0重量%、および多官能性単量体(b−2−3)0.05〜10重量部((b−2−1)+(b−2−2)100重量部に対して)からなる単量体成分
(B−3)メタクリル酸エステル(b−3−1)50〜100重量%、およびこれと共重合可能な単官能性単量体(b−3−2)50〜0重量%からなる単量体成分
(B−4)メタクリル酸エステル(b−4−1)0〜70重量%、およびこれと共重合可能な単官能性単量体(b−4−2)100〜30重量%からなる単量体成分
ゴム含有グラフト共重合体(C):
単量体成分(C−1)、(C−2)をこの順に重合してなる2層構造重合体であって、単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径が0.02〜0.15μmであるゴム含有グラフト共重合体。
(C−1)アクリル酸エステル(c−1−1)50〜100重量%、メタクリル酸エステル(c−1−2)50〜0重量%、および多官能性単量体(c−1−3)0.05〜10重量部((c−1−1)+(c−1−2)100重量部に対して)からなる単量体成分
(C−2)メタクリル酸エステル(c−2−1)50〜100重量%、およびこれと共重合可能な単官能性単量体(c−2−2)50〜0重量%からなる単量体成分。
【0009】
本発明のアクリル系樹脂フィルムにおいて、メタクリル系樹脂組成物(D)を100重量部としたとき、単量体成分(B−1)および(B−2)の重合物であるゴム粒子を1〜20重量部、単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子を1〜50重量部含有することが好ましい。
【0010】
本発明のアクリル系樹脂フィルムにおいて、単量体成分(C−1)が式(1)を満たすことが好ましい。
20d≦w≦125d (1)
d:単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径(μm)
w:多官能性単量体(c−1−3)の重量部数((c−1−1)+(c−1−2)100重量部に対して)
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、フィルムの厚みが30〜500μmであることが好ましい。
【0011】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一表面にコーティング層を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、一表面がハードコート層を有し、反対面にプライマー層を有することが好ましい。
【0013】
前記ハードコート層が、ウレタンアクリレート系樹脂、アクリレート系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を硬化させてなることが好ましい。
【0014】
前記ハードコート層の表面硬度がHB以上であることが好ましい。
【0015】
本発明は、上述したアクリル系樹脂フィルムで製造された成形品であってもよい。
【0016】
本発明の積層品は、本発明のアクリル系樹脂フィルムを基材に積層してなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、耐折曲げ白化性に優れ、表面硬度も高く、耐割れ性に優れ、透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に用いるゴム含有グラフト共重合体(B)は、まず単量体成分(B−1)を重合し、最内層重合体を得る。本発明で用いられる単量体成分(B−1)はメタクリル酸エステル(b−1−1)60〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−1−2)40〜0重量%、および多官能性単量体(b−1−3)0.05〜10重量部((b−1−1)+(b−1−2)100重量部に対して)からなるものである。単量体成分(B−1)の重合では、単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
【0019】
ここで用いられるメタクリル酸エステル(b−1−1)としては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合性やコストの点よりアルキル基は炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等があげられ、これらの単量体は2種以上併用してもよい。メタクリル酸エステル(b−1−1)が(b−1−1)及び(b−1−2)の合計に対して占める割合は60〜100重量%が好ましく、70〜100重量%がより好ましく、80〜100重量%が最も好ましい。60重量%未満ではフィルムの表面硬度、透明性が悪化するため好ましくない。
【0020】
また、必要に応じて、メタクリル酸エステル(b−1−1)と共重合可能な単官能性単量体(b−1−2)を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸エステルがあげられ、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合反応性やコストの点からアルキル基は炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等があげられる。また、他のエチレン系不飽和単量体としては、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩等があげられ、これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0021】
ゴム含有グラフト共重合体(B)は、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体(b−1−3)が共重合されているため、得られる重合体が架橋体となる。ここで用いられる多官能性単量体(b−1−3)としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼンエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびジプロピレングリコールジアクリレート等があげられ、これらは2種以上が併用されてもよい。
【0022】
単量体成分(B−1)における多官能性単量体(b−1−3)の添加量は、(b−1−1)+(b−1−2)100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05重量部未満では、架橋体を形成できない傾向があり、10重量部を超えると、フィルムの耐割れ性が低下する傾向がある。
【0023】
次に、最内層重合体((B−1)の重合物)の存在下において単量体成分(B−2)を重合し、ゴム粒子を得る。本発明で用いられる単量体成分(B−2)はアクリル酸エステル(b−2−1)50〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−2−2)50〜0重量%、および多官能性単量体(b−2−3)0.05〜10重量部((b−2−1)+(b−2−2)100重量部に対して)からなるものである。単量体成分(B−2)の重合では、単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
【0024】
ここで用いられるアクリル酸エステル(b−2−1)としては、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合反応性やコストの点からアルキル基は炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。アクリル酸エステル(b−2−1)が(b−2−1)及び(b−2−2)の合計に対して占める割合は50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの耐割れ性が悪化するため好ましくない。
【0025】
また、必要に応じて、アクリル酸エステル(b−2−1)と共重合可能な単官能性単量体(b−2−2)を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸エステルがあげられ、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合性やコストの点よりアルキル基は炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等があげられる。また、他のエチレン系不飽和単量体としては、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩等があげられ、これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0026】
ゴム含有グラフト共重合体(B)は、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体(b−2−3)が共重合されているため、得られる重合体が架橋体となる。ここで用いられる多官能性単量体(b−2−3)としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼンエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびジプロピレングリコールジアクリレート等があげられ、これらは2種以上が併用されてもよい。
【0027】
単量体成分(B−2)における多官能性単量体(b−2−3)の添加量は、(b−2−1)+(b−2−2)100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05重量部未満では、架橋体を形成できない傾向があり、10重量部を超えても、フィルムの耐割れ性が低下する傾向がある。
【0028】
次に、ゴム粒子((B−1)+(B−2)の重合物)の存在下において単量体成分(B−3)を重合し、グラフト共重合体を得る。本発明で用いられる単量体成分(B−3)はメタクリル酸エステル(b−3−1)50〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−3−2)50〜0重量%からなるものである。単量体成分(B−3)の重合では、単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
【0029】
ここで用いられるメタクリル酸エステル(b−3−1)としては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合性やコストの点よりアルキル基は炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等があげられ、これらの単量体は2種以上併用してもよい。メタクリル酸エステル(b−3−1)が(b−3−1)及び(b−3−2)の合計に対して占める割合は50〜100重量%が好ましく、70〜100重量%がより好ましく、80〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの表面硬度、透明性が悪化するため好ましくない。
【0030】
また、必要に応じて、メタクリル酸エステル(b−3−1)と共重合可能な単官能性単量体(b−3−2)を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸エステルがあげられ、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合反応性やコストの点からアルキル基は炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等があげられる。また、他のエチレン系不飽和単量体としては、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩等があげられ、これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0031】
なお、単量体成分(B−3)は多官能性単量体を含まない成分である。
【0032】
次に、グラフト共重合体((B−1)+(B−2)+(B−3)の重合物)の存在下において単量体成分(B−4)を重合し、ゴム含有グラフト共重合体(B)を得る。本発明で用いられる単量体成分(B−4)はメタクリル酸エステル(b−4−1)0〜70重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(b−4−2)100〜30重量%からなるものである。ただし、単量体成分(B−4)の組成は、上述した単量体成分(B−3)の組成とは相違する。単量体成分(B−4)の重合では、単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。
【0033】
ここで用いられるメタクリル酸エステル(b−4−1)としては、メタクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合性やコストの点よりアルキル基は炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等があげられ、これらの単量体は2種以上併用してもよい。メタクリル酸エステル(b−4−1)が(b−4−1)及び(b−4−2)の合計に対して占める割合は0〜70重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましく、30〜70重量%が最も好ましい。70重量%を超えると重合後ラテックスをパウダー化する際に微粉となり、また、成形の際に分散性が悪化するため透明性が悪化し好ましくない。
【0034】
また、必要に応じて、メタクリル酸エステル(b−4−1)と共重合可能な単官能性単量体(b−4−2)を共重合してもかまわない。これらの共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸エステルがあげられ、アクリル酸アルキルエステルが好ましい。重合反応性やコストの点からアルキル基は炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等があげられる。また、他のエチレン系不飽和単量体としては、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩等があげられ、これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0035】
なお、単量体成分(B−4)は多官能性単量体を含まない成分である。
【0036】
単量体成分(B−1)〜(B−4)の総量((B−1)+(B−2)+(B−3)+(B−4))100重量%において、単量体成分(B−1)が占める割合は5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。40重量%を超えるとフィルムの耐割れ性が低下する場合がある。単量体成分(B−2)が占める割合は、単量体成分(B−1)〜(B−4)の総量100重量%において20〜70重量%が好ましく、30〜60%がより好ましい。70重量%を超えるとフィルムの表面硬度が落ちる場合がある。単量体成分(B−3)が占める割合は、単量体成分(B−1)〜(B−4)の総量100重量%において5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。40重量%を超えるとフィルムの耐割れ性が低下する場合がある。単量体成分(B−4)が占める割合は、単量体成分(B−1)〜(B−4)の総量100重量%において1〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。40重量%を超えるとフィルムの表面硬度が落ちる場合がある。
【0037】
本発明に用いるゴム含有グラフト共重合体(C)は、まず単量体成分(C−1)の重合によりゴム粒子を得る。本発明で用いられる単量体成分(C−1)は、アクリル酸エステル(c−1−1)50〜100重量%、メタクリル酸エステル(c−1−2)50〜0重量%、および多官能性単量体(c−1−3)0.05〜10重量部((c−1−1)+(c−1−2)100重量部に対して)からなるものである。単量体成分(C−1)の重合では、単量体を全部混合して使用してもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で使用してもよい。ここで用いられるアクリル酸エステル(c−1−1)およびメタクリル酸エステル(c−1−2)は、ゴム含有グラフト共重合体(B)の重合時に用いたものと同様のものを使用することができる。アクリル酸エステル(c−1−1)が(c−1−1)及び(c−1−2)の合計に対して占める割合は50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの耐割れ性が悪化するため好ましくない。
【0038】
次に、ゴム粒子((C−1)の重合物)の存在下において単量体成分(C−2)を重合し、ゴム含有グラフト共重合体(C)を得る。本発明で用いられる単量体成分(C−2)は、メタクリル酸エステル(c−2−1)50〜100重量%、これと共重合可能な単官能性単量体(c−2−2)50〜0重量%からなるものである。ここで用いられるメタクリル酸エステル(c−2−1)およびアクリル酸エステル(c−2−2)は、ゴム含有グラフト共重合体(B)の重合時に用いたものと同様のものを使用することができる。アクリル酸エステル(c−2−1)が(c−2−1)及び(c−2−2)の合計に対して占める割合は50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの表面硬度、透明性が悪化するため好ましくない。
【0039】
ゴム含有グラフト共重合体(C)において、単量体成分(C−1)および(C−2)の総量((C−1)+(C−2))100重量%において、単量体成分(C−1)が占める割合は10〜60重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましい。10重量%未満では、耐割れ性が低下する場合がある。
【0040】
本発明に用いるメタクリル酸エステル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル50〜100重量%、およびこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体0〜50重量%を重合することにより得られる。メタクリル酸エステルおよびこれと共重合可能な単官能性単量体は、ゴム含有グラフト共重合体(B)の重合時に用いた単量体と同様のものを使用することができる。メタクリル酸エステル系樹脂(A)全体に占めるメタクリル酸エステルの割合は50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの表面硬度、透明性が悪化するため好ましくない。
【0041】
本発明におけるメタクリル酸エステル系樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)およびゴム含有グラフト共重合体(C)の製造方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能である。ゴム含有グラフト共重合体(B)およびゴム含有グラフト共重合体(C)の重合については乳化重合法が特に好ましい。
【0042】
乳化重合法により得られたラテックスから、通常の凝固、洗浄および乾燥の操作により、または、スプレー乾燥、凍結乾燥などによる処理により、樹脂組成物が分離、回収される。
【0043】
ゴム含有グラフト共重合体(B)に含まれる、単量体成分(B−1)および(B−2)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径は、0.2〜0.4μmが好ましく、0.2〜0.3μmがより好ましい。0.2μm未満では耐割れ性が悪化するため好ましくなく、0.4μmを超えると耐折曲げ白化性、透明性が低下するため好ましくない。
【0044】
ゴム含有グラフト共重合体(C)に含まれる、単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径は、0.02〜0.15μmが好ましく、0.02〜0.13μmがより好ましく、0.03〜0.10μmがさらに好ましい。0.02μm未満では耐割れ性が悪化するため好ましくなく、0.15μmを超えると耐折曲げ白化性、透明性が低下するため好ましくない。
【0045】
ゴム含有グラフト共重合体(C)の多官能性単量体(c−1−3)の量は、単量体成分(C−1)の重合物であるゴム粒子の平均粒子径と相関してフィルムの耐折曲げ白化性に大きく影響する。すなわち、ゴム粒子の平均粒子径d(μm)と多官能性単量体(c−1−3)の重量部数w((c−1−1)+(c−1−2)100重量部に対して)が次式(1)を満たすことが重要である。
20d≦w≦125d (1)
多官能性単量体の重量部数は、上記式に示される範囲が好ましく、この範囲外では耐折曲げ白化性が悪化するため好ましくない。
【0046】
本発明におけるメタクリル系樹脂組成物(D)は、メタクリル酸エステル系樹脂(A)、ゴム含有グラフト共重合体(B)およびゴム含有グラフト共重合体(C)を含んでおり、二種類のゴム含有グラフト共重合体を含有することを特徴としている。ゴム粒子径が0.2〜0.4μmであるゴム含有グラフト共重合体(B)によりフィルムの耐割れ性を発現し、ゴム粒子径が0.02〜0.15μmであるゴム含有グラフト共重合体(C)により耐折曲げ白化性を発現している。ゴム含有グラフト共重合体(B)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物(D)を100重量部としたときそのゴム粒子は1〜20重量部が好ましく、1〜15重量部がさらに好ましい。1重量部未満ではフィルムの耐割れ性が悪化し、20重量部を超えるとフィルムの表面硬度、透明性、耐折曲げ白化性が悪化する。ゴム含有グラフト共重合体(C)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物(D)を100重量部としたときそのゴム粒子は1〜50重量部が好ましく、1〜35重量部がさらに好ましい。1重量部未満ではフィルムの耐割れ性が悪化し、50重量部を超えるとフィルムの表面硬度、透明性が悪化する。
【0047】
本発明のメタクリル系樹脂組成物(D)は、特にフィルムとして有用であり、例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶剤キャスト法等により良好にフィルムに加工される。また、必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させる(挟み込む)ことにより、特にガラス転移温度以上の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、フィルムの積層成形や、二軸延伸によるフィルムの改質も可能である。
【0048】
また、本発明のメタクリル系樹脂組成物(D)には、必要に応じて、ポリグルタルイミド、無水グルタル酸ポリマー、ラクトン環化メタクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を配合することも可能である。ブレンドの方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0049】
本発明のメタクリル系樹脂組成物(D)には、着色のために無機系顔料または有機系染料を、熱や光に対する安定性を更に向上させるために抗酸化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを、あるいは、抗菌、脱臭剤、滑剤等を、単独または2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0050】
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚みは、30〜500μmが好ましく、30〜400μmがより好ましい。フィルムの厚みが30μm未満ではフィルムの加工性が低下する傾向があり、500μmを超えると、フィルムの成形性が低下する傾向がある。
【0051】
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、必要に応じて、公知の方法によりフィルム表面の光沢を低減させることができる。例えば、メタクリル系樹脂組成物(D)に無機充填剤または架橋性高分子粒子を混練する方法等で実施することが可能である。また、得られるフィルムにエンボス加工を施すことにより、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
【0052】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、本フィルムを基材として、その少なくとも一表面にコーティング層が設けられた形態であってもよい。コーティング層の種類や構成については、必要とされる機能(例えば、表面硬度の向上や耐擦傷性、自己治癒性、防眩機能、反射防止機能、指紋付着防止機能など)に応じて任意に選択可能であり、特段に制限されるものではない。ウレタンアクリレート系樹脂、アクリレート系樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を有するコーティング層が設けられる事が好ましい。これにより、本発明のアクリル系樹脂フィルムが有する耐割れ性、耐折り曲げ白化性を維持しつつ更に表面硬度を向上させる事が出来る。
【0053】
コーティング層を形成するのに用いるコーティング剤としては、ユニディックV−6840、ユニディックV−6841、ユニディックWHV−649、ユニディックEKS−675、ユニディックEKC−1054、ユニディック−124、ユニディックEKC−821、ユニディックRC29−120、ユニディックEKC−578(DIC製)、ビームセット1200、ビームセット371、ビームセット710、ビームセット575(荒川化学工業株式会社製)、ルシフラールG−720、ルシフラールG−2000、ルシフラールNAG1000、ルシフラールNAG−3000、ルシフラールNEH−1000、ルシフラールNEH−2000(日本ペイント株式会社製)アイカアイトロンZ606−25、アイカトロンZ606−76、アイカトロンZ606−77、アイカトロンZ606−78、アイカトロンZ880−4、アイカトロンZ−883(アイカ工業株式会社製)などのコーティング剤を使用する事が出来る。
【0054】
コーティング層の形成は、公知の方法にて実施可能であるが、印刷法またはコート法によりコーティング層を形成することが好ましい。この場合、コーティング層を形成するための塗工液(溶液または分散液)を調製し、塗工液をアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一面に塗布し、溶剤除去のための加熱乾燥を行い、必要に応じて電子線、紫外線、γ線等の照射により硬化させることによって硬質の被膜(ハードコート層)を形成することができる。この方法は、コーティング層とアクリル系樹脂フィルムとの密着性が良好となるため好ましい。照射条件は、コーティング層の光硬化特性に応じて定められるが、照射量は、通常300〜10,000mJ/cm
2程度である。
【0055】
印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等の公知の印刷方法が挙げられる。
【0056】
コート法としては、例えば、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、ディッピングコート法等の公知のコート方法が挙げられる。
【0057】
溶剤としては、アクリレート系樹脂および/またはウレタンアクリレート系樹脂および/またはシリコーン系樹脂を溶解または均一に分散させることが可能で、かつアクリル系樹脂フィルムの物性(機械的強度、透明性等)に実用上甚大な悪影響を及ぼさず、さらにアクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度より80℃以上高くない、好ましくは30℃以上高くない沸点を有している揮発性の溶剤が好ましい。
【0058】
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶剤;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶剤;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸系溶剤;無水酢酸等の酸無水物系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤;エチルアミン、トルイジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の窒素含有溶剤;チオフェン、ジメチルスホキシド等の硫黄含有溶剤;ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコール、2−アミノエタノール、アセトシアノヒドリン、ジエタノールアミン、モルホリン、1−アセトキシ−2−エトキシエタン、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン等の2種以上の官能基を有する溶剤;水等、各種公知の溶剤が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
これらのうち、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンを主成分とする溶剤が、溶剤によるアクリル樹脂フィルムの物性低下を軽減することができるため好ましい。また、コーティング層とアクリル系樹脂フィルムとの密着性の観点から、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンを併用することが好ましい。また、塗工後の艶斑の観点からも、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン等の中沸点溶剤、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、シクロヘキサノン等の高沸点溶剤を併用することが好ましい。
【0060】
塗工液は、塗工抜けの軽減、ドクター筋発生軽減の観点から、濾過して異物を取り除くことが好ましい。濾過は、塗工液の調製後に実施しても良いし、塗工直前または塗工しながら実施することもできる。公知の濾過装置で濾過することができるが、例えば、チッソフィルター(株)製のCPII−10、03、01(商品名)を用いることが好ましい。
【0061】
コーティング層の厚みは、1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、3〜7μmが最も好ましい。20μmを超えるとフィルムが割れやすくなり、1μmより薄いと表面硬度が低くなる。
【0062】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、ハードコート層を設けた面に対し反対面にプライマー層を有しても良い。プライマー層の組成としては、後加工工程で行われる印刷に用いられるインキ、金属蒸着に用いられる金属の密着性の良い樹脂が用いられる。例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂が用いられる。
【0063】
プライマー層の厚みは0.5〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましく、0.5μm〜3μmが最も好ましい。0.5μm未満では密着性の寄与が低く、10μmを超えると真空成形時にクラックが発生する。
【0064】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、金属、プラスチックなどの基材に積層して用いることができる。フィルムの積層方法としては、積層成形や、鋼板などの金属板に接着剤を塗布した後、金属板にフィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネートや、ドライラミネート、エキストルージョンラミネート、ホットメルトラミネートなどがあげられる。プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
【0065】
本発明のアクリル系樹脂フィルムを基材に積層して得られるフィルム積層品は、自動車内装材,自動車外装材などの塗装代替用途、窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用部材、日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリ、ノートパソコン、コピー機などのOA機器のハウジング、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの端末の液晶画面の前面板や、電気または電子装置の部品などに使用することができる。また、成形品としては、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、光学レンズ、光ファイバ、光ディスク、液晶用導光板、液晶用フィルム、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション品などに使用することができる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0067】
また、製造例、実施例および比較例中の「部」は重量部、「%」は重量%を表す。
【0068】
略号はそれぞれ下記の物質を表す。
【0069】
BA:アクリル酸n−ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
St:スチレン
AlMA:メタクリル酸アリル
なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法はつぎのとおりである。
【0070】
(重合転化率の評価)
得られた重合ラテックスを、熱風乾燥機内にて120℃で1時間乾燥して固形成分量を求め、100×固形成分量/仕込み単量体(%)により重合転化率(%)を算出した。
【0071】
(ゴム粒子の平均粒子径の評価)
ゴム含有グラフト共重合体(B)(またはゴム含有グラフト共重合体(C))をスミペックスEX(住友化学社製)と50:50の割合でブレンドしたコンパウンドを成形し得られたフィルムを、透過型電子顕微鏡(日本電子製 JEM−1200EX)にて、加速電圧80kV、RuO
4染色超薄切片法で撮影し、得られた写真からゴム粒子画像を無作為に100個選択し、それらの粒子径の平均値を求めた。
【0072】
(ヘイズの評価)
得られたフィルムの透明性は、JIS K6714に準じて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%にてヘイズを測定した。
【0073】
(鉛筆硬度の評価)
得られたフィルムの鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4に準じて測定した。
【0074】
(耐割れ性の評価)
フィルムをカッターナイフを用いて切断し、次の評価をした。
○:切断面にクラック発生が認められない。
△:切断面にクラック発生が認められる。
×:切断面にクラック発生が著しく認められる。
【0075】
(耐折曲げ白化性)
フィルムを23℃で180度折り曲げて、白化状態を観察し次の評価をした。
○:白化が認められない。
△:白化がわずかに認められる。
×:白化が著しい。
【0076】
(120℃下引張伸度)
120℃の恒温槽を取り付けて、テンシロン引張試験機にて、チャック間距離50mm、引張り速度200mm/minの条件で測定を行った。コーティング層がアクリル系樹脂フィルムの伸びに追従できなくなった時に、コーティング層にクラックが発生する時の伸度を測定した。
【0077】
(製造例1)
<ゴム含有グラフト共重合体(B1)の製造>
最内層重合体の作成:
以下の組成の混合物をガラス製反応器に仕込み、窒素気流中で撹拌しながら80℃に昇温したのち、メタクリル酸メチル25部、メタクリル酸アリル1部からなる単量体混合物(表1中の製造例1の(B−1))とt−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部との混合液のうち25%を一括して仕込み、45分間の重合を行なった。
脱イオン水 220部
ホウ酸 0.3部
炭酸ナトリウム 0.03部
N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム 0.09部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.09部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.006部
硫酸第1鉄 0.002部
続いてこの混合液の残り75%を1時間にわたって連続添加した。添加終了後、同温度で2時間保持し重合を完結させた。また、この間に0.2部のN−ラウロイルサルコシン酸ナトリウムを追加した。得られた最内層架橋メタクリル系重合体ラテックスの重合転化率(重合生成量/モノマー仕込量)は98%であった。
【0078】
ゴム粒子の作製:
得られた最内層重合体ラテックスを窒素気流中で80℃に保ち、過硫酸カリウム0.1部を添加したのち、アクリル酸n−ブチル41部、スチレン9部、メタクリル酸アリル1部からなる単量体混合物(表1中の製造例1の(B−2))を5時間にわたって連続添加した。この間にオレイン酸カリウム0.1部を3回に分けて添加した。モノマー混合液の添加終了後、重合を完結させるためにさらに過硫酸カリウムを0.05部添加し2時間保持した。得られたゴム粒子の重合転化率は99%であった。
【0079】
グラフト共重合体の作製:
得られたゴム粒子ラテックスを80℃に保ち、過硫酸カリウム0.02部を添加したのちメタクリル酸メチル14部、アクリル酸n−ブチル1部の単量体混合物(表1中の製造例1の(B−3))を1時間にわたって連続添加した。モノマー混合液の追加終了後1時間保持しグラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
【0080】
ゴム含有グラフト共重合体の作製:
得られたゴム粒子ラテックスを80℃に保ち、メタクリル酸メチル5部、アクリル酸n−ブチル5部の単量体混合物(表1中の製造例B1の(B−4))を0.5時間にわたって連続添加した。モノマー混合液の追加終了後1時間保持しゴム含有グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99%であった。
【0081】
得られたゴム含有グラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウムで塩析凝固、熱処理、乾燥を行ない、白色粉末状のゴム含有グラフト共重合体(B1)を得た。
【0082】
(製造例2〜4)
製造例1において、単量体成分(B−1)〜(B−4)の各モノマー配合を表1に示す配合に変更した以外は、製造例1と同様にしてゴム含有グラフト共重合体(B2)〜(B4)を得た。
【0083】
【表1】
【0084】
(製造例5)
<ゴム含有グラフト共重合体(C1)の製造>
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.25部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレート 0.15部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.001部
硫酸第一鉄 0.00025部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を60℃にし、アクリル酸n−ブチル27部、メタクリル酸メチル3部、メタクリル酸アリル0.9部からなる単量体混合物とクメンハイドロパーオキサイド0.2部との混合液を3時間かけて連続的に添加し、添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、ゴム粒子((C−1)の重合物)を得た。重合転化率は99.5%であった。
【0085】
その後、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.05部を仕込んだ後、内温を60℃にし、アクリル酸n−ブチル7部、メタクリル酸メチル63部からなる単量体混合物とクメンハイドロパーオキサイド0.2部との混合液を5時間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、ゴム含有グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は98.5%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のゴム含有グラフト共重合体(C1)を得た。
【0086】
ゴム含有グラフト共重合体(C1)のゴム粒子の平均粒子径は0.08μmであった。
【0087】
(実施例1〜7および比較例1〜5)
得られた粉末状のゴム含有グラフト共重合体(B)および(C)を、各々表3に示すゴム粒子部数(部)となるように配合し、かつ、ゴム含有グラフト共重合体(B)、(C)およびスミペックスEX(住友化学製、メタクリル酸メチル95重量%/アクリル酸メチル5重量%のメタクリル酸エステル系樹脂)を総量100部となるようにブレンドしたものを、混合機((株)カワタ製、スーパーフローター型式SFC−50)にて3分間ブレンドした後、40ミリφベント付き単軸押出機を用いてシリンダ温度を240℃に設定して溶融混練を行い、ペレット化した。得られたペレットを、Tダイ付き40ミリφ押出機(ナカムラ産機(株)製、NEX040397)を用いて、ダイス温度240℃にて成形し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0088】
得られたパウダーおよびフィルムを用いた種々の特性を評価し、その結果を表2に示す。なお、表2中のゴム粒子部数は、樹脂組成物全体を100重量部としたときの重量部数である。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例8〜13および比較例5〜8)
実施例5〜7と比較例1〜3、5で得られたフィルム上に、RC29−124(DIC株式会社製)を、固形分濃度を30%としたウレタンアクリレート系樹脂の分散液をバーコーダー(♯6と♯10)を用いて塗布した。コーティング後、80℃、1min乾燥し溶媒を揮発させ、748.4mJ/minの紫外線を照射し、厚さ4μmまたは7μmのコーティング層を形成した。得られたフィルムについて種々の特性を評価し、その結果を表3に示す。
【0091】
【表3】