【実施例】
【0034】
次に、上記構成を備えた本発明に係る電気二重層型キャパシタの効果を実証するために行った実施例について説明する。
先ず、本発明に係る電気二重層型キャパシタの実施例について説明すると、発泡アルミニウムを製造するためのアルミニウム粉末として、市販の純アルミニウムの空気アトマイズ粉(Fe、Si等の不純物を含む。)を準備した。ちなみに、このアルミニウム粉末の平均粒径は、マイクロトラック法による投影径において30μmであり、純度は、蛍光X線分析において99.8%であった。
【0035】
また、発泡アルミニウムの焼結助剤として、市販の水酸化チタン粉砕粉(平均粒子径:9μm、純度99.8%)を用意した。
そして、これらアルミニウム粉末および水酸化チタン粉に、結着剤、可塑剤、界面活性剤および発泡剤を混合して発泡性スラリを調製した。ここで、結着剤として水溶性メチルセルロースを、可塑剤としてグリセリンを、界面活性剤としてアルキルベタインを、発泡剤としてヘキサンを用いた。
【0036】
この際の上記発泡性スラリにおける配合組成は、アルミニウム粉末:水酸化チタン粉:結着剤:可塑剤:界面活性剤:蒸留水:発泡剤=99部:1部:5部:5部:0.5部:89.5部:2部である。
【0037】
次いで、上記発泡性スラリを、公知のドクターブレード法により、ブレード高さを0.4mmに設定して、キャリヤシート上に塗布成形し、温度40℃に20分間静置して発泡させた後に、80℃で乾燥した。そして次に、これをカーボンの敷き板上に載置して、大気中で350℃の温度雰囲気下に2分間保持して脱バインダーした後に、アルゴン雰囲気中において662℃に加熱するとともに、当該温度に15分間保持して焼結することにより、厚さ1.2mm、長さ1cmの線分が横切る骨格数の平均値が16である気孔率が90%の三次元網状骨格構造を有する発泡アルミニウム板を製造した。
【0038】
これと併行して、活物質として、NO処理を施した活性炭粉末を用意した。なお、この活性炭粉末は、市販の椰子殻活性炭(呉羽化学製YP-50F)を、8000ppmの一酸化窒素(NO)を含むヘリウム雰囲気中で、850℃で3時間加熱保持することにより製造した。なお、上記NO処理した活性炭粉末中の窒素含有量については、元素分析の結果、窒素/炭素原子比で約0.01であった。
【0039】
次いで、上記活性炭粉末に、導電材、増粘剤、結着剤を混合して、活物質合剤を調製した。ここで、導電材としてケッチェンブラック(EC300J)を、増粘剤として水溶性メチルセルロース誘導体(信越化学社製60SH-10000)を、結着剤としてテフロン(登録商標。以下同じ)分散液(ダイキン社製D-1E)をそれぞれ用い、活性炭粉末:導電剤:増粘剤:結着剤:水=82.8部:9.7部:2.6部:9.8部:100部の配合組成とした。
【0040】
そして、上記発泡アルミニウム板をエタノールに浸漬して湿らせた後に、上記活物質合剤を、ゴムべらを用いて上記発泡アルミニウム板の空孔内に充填した。次いで、これを80℃に設定した乾燥機中で十分に乾燥した後に、厚さ0.3mmの2枚のアルミニウム板の間に挟んで圧延した。そして、これを16mmφに打ち抜くことにより、厚さ0.5mmの上記正極10および負極11を製造した。
【0041】
次に、
図1に示すように、有底筒状に形成されたアルミニウム製のケーシング本体20の凹部内に、順次正極10、セパレータ21、筒状のテフロンガイド22、負極11、円板状の導線製金属からなる電極押さえ23、スプリング24を積層し、内部に電解液5を充填してアルミニウム製の円板からなるケーシング蓋体25によって押圧して封じることにより、本発明に係る電気二重層型キャパシタと同一の構成を有するアルミニウム製2極セル(以下、試験セルと略す。)を組み立てた。
【0042】
なお、これらの組み立て作業は、グローブボックス内で行い、上記電解液を充填後、ケーシング本体20とケーシング蓋体25とをボルト20aおよびナット(図示を略す。)によって締め付けた。
【0043】
ここで、ケーシング本体20とケーシング蓋体25との間に、図示されない絶縁性ガスケットが介装されることにより、ケーシング本体20が正極側となり、ケーシング蓋体25が負極側になるとともに、両者によってケーシング1が構成されている。また、セパレータ4に対応するセパレータ21としては、セルロースシートを用い、電解液としては、1.0mol/Lの濃度で、トリメチルエチルアンモニウム4フッ化ホウ酸(1.0M(C
2H
5)
3(CH
3)NBF
4)を含むプロピレンカーボネート溶液を用いた。
【0044】
他方、比較例1の電気二重層型キャパシタを模した試験セルとして、活物質として、上記実施例と同様にNO処理した活性炭を用いるとともに、集電体に、上記発泡アルミニウム板に替えてアルミニウムエキスパンドメタルを用いたものを製造した。ただし、活物質合剤を調製する際に、増粘剤を使用せず、活性炭粉末:導電剤(ケッチェンブラック(EC300J)):結着剤(三井デュポンフロロケミカル製テフロン6J)=85部:10部:5部の配合組成とした。他の構成は、上記実施例の試験セルと同様である。
【0045】
そして、得られた実施例および比較例1のアルミニウム製2極セルを用いて、70℃の温度における3.5Vの耐久性試験を実施した。
上記耐久性試験の方法を、具体的に説明すると、先ず試験セルのケーシング本体20に一体化した正極側端子26およびケーシング蓋体25に一体化した負極側端子27を、それぞれ配線を介して図示されない充放電装置に接続し、当該試験セル部分を恒温槽に入れた。
【0046】
そして、
図2に示すように、上記恒温槽を40℃に設定し、電流密度80mA/gの条件下で2.5Vまで充電し、放電する操作を5回繰り返し、5回目の放電容量を初期容量とした。また、充電容量に対する放電容量の百分率を、充放電効率とした(同図に縦軸で示す。)。
【0047】
次いで、恒温槽を70℃に昇温し、0V〜2.5V間の充放電を5回繰り返した後に、恒温槽の温度を変えることなく、0V〜3.5V間の充放電を5回繰り返した。そして、恒温槽の温度を70℃に保持したままで、3.5Vに充電した状態に100時間保持した。そして、100時間経過後に、放電した。
【0048】
次いで、恒温槽の温度は70℃のままで、0V〜3.5V間の充放電を5回繰り返した後に、0V〜2.5V間の充放電を5回繰り返した。そして、最後に恒温槽の温度を40℃に降温し、0V〜2.5V間の充放電を5回繰り返し、5回目の放電容量を、耐久性試験後の容量とした。
【0049】
図2および
図3は、その結果を示すものである。同図から、上記耐久性試験の前後において、本発明の実施例と比較例1との充放電効率に大きな差異は無いが、第1に上記実施例においては、高い容量が得られること、第2に上記実施例においては上記容量の変化が少ないのに対して、比較例1では、上記試験後に上記容量が大幅に減少していることが判る。
【0050】
また、
図3に示す充放電曲線の変化からも明らかなように、上記実施例においては、耐久性試験前後において充放電の特性変化が少ないのに対して、比較例1では、上記試験後において、大幅に上記特性が低下していることが判る。
【0051】
そこで次に、本発明における集電体および活物質のいずれの構成が、このような優れた耐久性に寄与しているかを確認するために、さらに下記比較例2および比較例3を上記実施例および比較例1と同様の製造方法によって製造して、同様の耐久性試験を実施した。
【0052】
図4に示すように、比較例2は、集電体に上記実施例と同様の発泡アルミニウム板を用いるとともに、活物質としてNO処理を施していない活性炭をそのまま用いたものである。また、比較例3は、集電体に、上記発泡アルミニウム板に替えてアルミニウムエキスパンドメタルを用い、かつ活物質としても、NO処理を施していない活性炭をそのまま用いたものである。
【0053】
次いで、これら比較例2、3についても、上述した実施例および比較例1と同様の70℃の温度における3.5Vの耐久性試験を実施した。
そして、上記実施例および比較例1〜3の試験結果から得られた耐久性試験前後の容量変化から容量維持率として算出したところ、
図5に示すように、上記実施例においては、92%という極めて高い値が得られたのに対して、比較例1〜3においては、最も高い比較例2でも70未満であり、他の比較例1、2はいずれも15%未満であった。
【0054】
さらに、これら実施例および比較例1〜3について、試験電圧を変えて、3.0Vおよび3.2Vにおいても同様の耐久性試験を実施して上記容量維持率を求めたところ、
図6に示すように、試験電圧3.0および3.2Vによる耐久性試験では、いずれも90%程度の容量維持率が得られたのに対して、上述した3.5Vによる耐久性試験において、急激に実施例と比較例1〜3との差異が顕在化することが判明した。
【0055】
これを換言すれば、本発明に係る実施例によれば、高い容量が得られるとともに、特に高電圧の印加時において、高い容量維持率を得ることができ、よって優れた耐久性を実現し得ることが実証された。