特許第5782611号(P5782611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782611
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】電気二重層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/42 20130101AFI20150907BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20150907BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20150907BHJP
【FI】
   H01G11/42
   H01G11/70
   H01G11/86
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-241867(P2010-241867)
(22)【出願日】2010年10月28日
(65)【公開番号】特開2012-94737(P2012-94737A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】星野 孝二
(72)【発明者】
【氏名】織戸 賢治
(72)【発明者】
【氏名】白石 壮志
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−236082(JP,A)
【文献】 特開2008−141116(JP,A)
【文献】 特開2010−135647(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/116679(WO,A1)
【文献】 特開平08−339941(JP,A)
【文献】 特開2010−255089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に、各々集電体に活物質を一体化した正極および負極と、これら正極および負極間に介装された通液性および非電子伝導性を有するセパレータとが収納されるとともに、電解液が充填された電気二重層型キャパシタにおいて、
上記正極および/または上記負極は、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを混合したアルミニウム混合原料粉末に水溶性樹脂結合剤と水と可塑剤とを混合して得られた粘性組成物に、気泡を混合させて乾燥させた焼結前成形体を、非酸化性雰囲気にて、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685℃で加熱焼成(Tm(℃)は、アルミニウム混合原料粉末が溶解を開始する温度)することにより製造された集電体である三次元網状骨格構造を有する発泡アルミニウムの空孔内に、活物質としてNO処理を施した活性炭粉末が充填されてなることを特徴とする電気二重層型キャパシタ。
【請求項2】
上記発泡アルミニウムは、長さ1cmの直線分が横切る上記網状骨格の平均数が7〜40の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高電圧の印加時においても、高い容量維持率を得ることができて耐久性に優れる電気二重層型キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層型キャパシタは、従来の一般的な充電池のような化学的電子移動反応によらず、物理的なイオンの脱着によって充放電を行うものであり、急速な充放電が可能であるとともに、所望のエネルギー容量も得られることから、ハイブリッド車や電気自動車等におけるバックアップ用電源装置等として開発・使用されつつある。
【0003】
図7は、下記特許文献1において開示されている従来のボタン型の電気二重層型キャパシタを示すもので、ケーシング1内に正極2および負極3を、セパレータ4を間に介して収納し、内部に電解液5を充填して蓋体6で封じたものであり、ケーシング1と蓋体6との間に絶縁ガスケット7を介装するとともに、導電性接着剤8によって正極2を蓋体6に電気的に接続し、かつ負極3をケーシング1に電気的に接続したものである。
【0004】
ここで、正極2および負極3は、活性炭粉末、導電性カーボンブラックおよびバインダーを溶剤と混合してスラリとし、該スラリを気孔率80〜99.5%、長さ1cmの直線が横切る平均孔数5以上、かつ厚さ0.3〜5mmの多孔質アルミニウムからなるシート状集電体に塗布または注入して乾燥した後、プレスにより圧密化して厚さ0.2〜2mm、空隙率5〜35%に形成したものである。
【0005】
そして、下記特許文献1の記載によれば、特に正極2における集電体として、多孔質アルミニウムを用いることにより、多孔質ニッケルを用いた場合と比較して、顕著に高い耐電圧を達成でき、高いエネルギー密度の電気二重層型キャパシタが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3591055号公報
【特許文献2】特開2008−141116号方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の電気二重層型キャパシタにあっては、同特許文献1にも開示されているように、3.3Vの電圧を1000時間印加した場合に、2.1Fであった初期容量が、印加後に1.5Fに低下していることから、容量維持率は71.4%である。
【0008】
ところが、近年、上記ハイブリッド車等におけるバックアップ用電源装置等として使用される電気二重層型キャパシタに対しては、信頼性の観点から、設計上限りなく100%に近い容量維持率を有することが望まれており、上記電気二重層型キャパシタでは、十分な性能を有しているとは言えなくなっている。このため、3Vを超えるような高電圧印加による耐久性試験においても、より一層高い容量維持率が得られる電気二重層型キャパシタの開発が強く要請されている。
【0009】
そこで、本発明者等は、高電圧印加時における耐久性試験において、従来よりも高い容量維持率が得られる電気二重層型キャパシタを開発すべく、鋭意研究を行ったところ、発明者等が開発した発泡アルミニウムを集電体として用い、これに上記特許文献2において提案した一酸化窒素(NO)処理を施した活性炭を活物質として充填した電極を用いた場合に、飛躍的に容量維持率が向上した電気二重層型キャパシタが得られるとの知見を得るに至った。
【0010】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、高電圧の印加時においても、高い容量維持率を得ることができて、耐久性に優れる電気二重層型キャパシタを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ケーシング内に、各々集電体に活物質を一体化した正極および負極と、これら正極および負極間に介装された通液性および非電子伝導性を有するセパレータとが収納されるとともに、電解液が充填された電気二重層型キャパシタにおいて、上記正極および/または上記負極は、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを混合したアルミニウム混合原料粉末に水溶性樹脂結合剤と水と可塑剤とを混合して得られた粘性組成物に、気泡を混合させて乾燥させた焼結前成形体を、非酸化性雰囲気にて、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685℃で加熱焼成(Tm(℃)は、アルミニウム混合原料粉末が溶解を開始する温度)することにより製造された集電体である三次元網状骨格構造を有する発泡アルミニウムの空孔内に、活物質としてNO処理を施した活性炭粉末が充填されてなることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記発泡アルミニウムは、長さ1cmの直線分が横切る上記網状骨格の平均数が7〜40の範囲であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1または2に記載の発明によれば、後述する実施例においても示すように、従来と比較して、高い容量が得られるとともに、特に3.5Vといった高電圧を印加した耐久性試験において、90%以上の高い容量維持率を達成することができ、よって容量および耐久性に優れる電気二重層型キャパシタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例等に用いた電気二重層型キャパシタを模した試験セルの構成を示す分解斜視図である。
図2】実施例と比較例1を用いた3.5Vの耐久性試験における容量および充放電率の変化を示すグラフである。
図3】上記耐久性試験における試験前後の充放電曲線の変化を示すグラフである。
図4】実施例および比較例1〜3の基本的な構成を示す図表である。
図5】実施例および比較例1〜3を用いた3.5Vの耐久性試験における容積維持率の結果を示す図表である。
図6】実施例および比較例1〜3を用いた3.0V、3.2Vおよび3.5Vの耐久性試験における容積維持率の変化を示すグラフである。
図7】一般的な電気二重層型キャパシタの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電気二重層型キャパシタを、図7に示した従来のものと同様のボタン型の電気二重層型キャパシタに適用した一実施形態について説明する。なお、本発明は、上記ボタン型のものに限らず、巻回型等の各種形態の電気二重層型キャパシタに適用可能である。
【0016】
本実施形態の電気二重層型キャパシタも、その概略構成は、図7に示した従来のものと同様に、ケーシング1内に正極10および負極11を、セパレータ4を間に介して収納し、内部に電解液5を充填して蓋体6で封じたものであり、ケーシング1と蓋体6との間に絶縁ガスケット7を介装するとともに、導電性接着剤8または圧接によって正極10を蓋体6に電気的に接続し、かつ負極11をケーシング1に電気的に接続したものである。
【0017】
ただし、本実施形態に係る電気二重層型キャパシタは、正極10および負極11の構成が従来のものと相違する。
すなわち、この電気二重層型キャパシタにおいては、正極10および負極11が、集電体である三次元網状骨格構造を有する発泡アルミニウムの空孔内に、活物質としてNO処理を施した活性炭粉末が充填されることによって構成されている。
【0018】
ここで、集電体となる発泡アルミニウムの製造方法について説明すると、この発泡アルミニウムは、アルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを混合してアルミニウム混合原料粉末とし、このアルミニウム混合原料粉末に水溶性樹脂結合剤と水と可塑剤とを混合して粘性組成物を調製したのちに、この粘性組成物に気泡を混合させた状態で乾燥させて焼結前成形体を得て、この焼結前成形体を非酸化性雰囲気にてTm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)で加熱焼成することにより製造されたものである。なお、Tm(℃)は、アルミニウム混合原料粉末が溶解を開始する温度である。
【0019】
上記アルミニウム粉末としては、平均粒子径2〜200μm、より好ましくは7μm〜40μmの範囲内のものが用いられている。そして、このアルミニウム粉末にチタンおよび/または水素化チタンを混合してアルミニウム混合原料粉末とする。これは、アルミニウム粉末にチタンを混合して、焼結前成形体をTm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)にて加熱焼成することによって、液滴の塊を生成させることのないアルミニウムのフリーシンタリングが可能となるためである。
【0020】
次いで、上記アルミニウム混合原料粉末に、水溶性樹脂結合剤として、ポリビニルアルコール、メチルセルロースおよびエチルセルロースの少なくともいずれか一種以上を、可塑剤として、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびフタル酸ジNブチルの少なくともいずれか一種以上をそれぞれ加えるとともに、蒸留水と、界面活性剤としてのアルキルベタインとをそれぞれ加える。
【0021】
このように、水溶性樹脂結合剤として、ポリビニルアルコール、メチルセルロースやエチルセルロースを用いることにより、その添加量が比較的少量で足りる。このため、その添加量をアルミニウム混合原料粉末の質量の0.5%〜7%の範囲内とする。これは、アルミニウム混合原料粉末の質量の7%を超えて含まれると、加熱焼成する際に焼結前成形体などに残留する炭素量が増加して焼結反応が阻害され、0.5%未満であると、焼結前成形体のハンドリング強度が確保されないためである。
【0022】
また、アルキルベタインは、アルミニウム混合原料粉末の質量の0.02%〜3%が添加される。これは、アルミニウム混合原料粉末の質量の0.02%以上とすることによって、後述の非水溶性炭化水素系有機溶剤の混合の際に気泡が効果的に生成され、3%以下とすることによって、焼結前成形体などに残存する炭素量が増加することによる焼結反応の阻害が防止される。
【0023】
そして、これらを混練した後に、さらに炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤を混合することにより発泡させて、気泡の混合した粘性組成物を調製する。この炭素数5〜8非水溶性炭化水素系有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンの少なくとも一種以上が使用可能である。
【0024】
次いで、焼結前工程では、帯状のポリエチレンシートの剥離剤塗布面に、粘性組成物を厚さ0.05mm〜5mmの厚さに引き延ばして塗布し、周囲の温度および湿度を一定時間管理して、気泡を整寸化した後、大気乾燥機にて温度70度で乾燥させる。その際、粘性組成物は、ドクターブレード法、スラリ押出し法あるいはスクリーン印刷法などによって塗布する。
【0025】
そして、乾燥後の粘性組成物を、ポリエチレンシートから剥がして、所定の円形状に切り出して焼結前成形体が得られる。
【0026】
次いで、焼結工程では、上記焼結前成形体を、ジルコニア敷粉を敷いたアルミナセッターの上に載置して、露点が−20℃以下のアルゴン雰囲気中に520℃で1時間加熱保持する仮焼成を行う。これにより、焼結前成形体の水溶性樹脂結合剤成分、可塑剤成分、蒸留水およびアルキルベタインのバインダー溶液を飛ばす脱バインダーがなされるとともに、焼結助剤粉末として水素化チタンを用いた場合には脱水素がなされる。
【0027】
その後、仮焼成後の焼結前成形体を、Tm−10(℃)≦加熱焼成温度T≦685(℃)で加熱焼成して発泡アルミニウムを得る。
これは、焼結前成形体を融解温度Tm(℃)まで加熱することにより、アルミニウムとチタンとの反応が開始するものと考えられるものの、実際にはアルミニウムに不純物としてFeやSiなどの共晶合金元素を微量に含有して融点が低下することから、Tm−10(℃)まで加熱することによりアルミニウムとチタンとの反応が開始して発泡アルミニウムを形成するものと考えられるためである。実際に、アルミニウムの融点が660℃であるのに対して、純アルミニウム粉として流通している純度98%〜99.7%程度のアトマイズ粉では650℃前後が溶解開始温度となる。
【0028】
他方、アルミニウムとチタンの包晶温度である665℃になり、さらに融解潜熱が入熱されるとアルミニウムの焼結体が融解することから、炉内雰囲気温度を685℃以下に保つ必要がある。
【0029】
なお、焼結工程における加熱焼成は、アルミニウム粒子表面およびチタン粒子表面の酸化被膜の成長を抑制するため、非酸化性雰囲気にて行う必要がある。但し、加熱温度が400℃以下に30分間程度保持の条件であれば空気中で加熱してもアルミニウム粒子表面およびチタン粒子表面の酸化被膜はさほど成長しないので、例えば、焼結前成形体を、一旦空気中で300℃〜400℃に10分間程度加熱保持して脱バインダーした後、アルゴン雰囲気中で所定の温度に加熱して焼成してもよい。
【0030】
これにより得られた発泡アルミニウムは、有孔金属焼結体からなる三次元網目構造の金属骨格を有し、金属骨格間に空孔を有している。また、有孔金属焼結体にAl−Ti化合物が分散しており、長さ1cmの直線分が横切る上記網状骨格の平均数が7〜40、一般的には20〜40程度形成されて、70〜90%の全体気孔率を有する集電体となる。
【0031】
他方、上記活物質として、活性炭粉末を用意する。この活性炭粉末としては、石炭系、石油系、木材系、竹材系などを各種の原料活性炭を用いることができるが、少なくとも1000m2/g以上、好ましくは1200〜3000m2/gの比表面積を有することが好適である。
【0032】
次いで、上記活性炭粉末を、1000〜8000ppmの一酸化窒素を含む不活性ガス雰囲気下で700〜900℃、好ましくは750〜850℃で、1〜8時間、好ましくは2〜4時間熱処理する。上記条件での熱処理を施す。この際に、活性炭粉末の炭素間結合中に、窒素原子が入り込むものと考えられる。
【0033】
そして、このようにして得られた活性炭粉末を、発泡アルミニウムの空孔内に充填、乾燥、プレスして所定の形状に成形した後に、電解イオンを含む上記電解液5を含浸させることにより、上記正極10および負極11が製造される。
【実施例】
【0034】
次に、上記構成を備えた本発明に係る電気二重層型キャパシタの効果を実証するために行った実施例について説明する。
先ず、本発明に係る電気二重層型キャパシタの実施例について説明すると、発泡アルミニウムを製造するためのアルミニウム粉末として、市販の純アルミニウムの空気アトマイズ粉(Fe、Si等の不純物を含む。)を準備した。ちなみに、このアルミニウム粉末の平均粒径は、マイクロトラック法による投影径において30μmであり、純度は、蛍光X線分析において99.8%であった。
【0035】
また、発泡アルミニウムの焼結助剤として、市販の水酸化チタン粉砕粉(平均粒子径:9μm、純度99.8%)を用意した。
そして、これらアルミニウム粉末および水酸化チタン粉に、結着剤、可塑剤、界面活性剤および発泡剤を混合して発泡性スラリを調製した。ここで、結着剤として水溶性メチルセルロースを、可塑剤としてグリセリンを、界面活性剤としてアルキルベタインを、発泡剤としてヘキサンを用いた。
【0036】
この際の上記発泡性スラリにおける配合組成は、アルミニウム粉末:水酸化チタン粉:結着剤:可塑剤:界面活性剤:蒸留水:発泡剤=99部:1部:5部:5部:0.5部:89.5部:2部である。
【0037】
次いで、上記発泡性スラリを、公知のドクターブレード法により、ブレード高さを0.4mmに設定して、キャリヤシート上に塗布成形し、温度40℃に20分間静置して発泡させた後に、80℃で乾燥した。そして次に、これをカーボンの敷き板上に載置して、大気中で350℃の温度雰囲気下に2分間保持して脱バインダーした後に、アルゴン雰囲気中において662℃に加熱するとともに、当該温度に15分間保持して焼結することにより、厚さ1.2mm、長さ1cmの線分が横切る骨格数の平均値が16である気孔率が90%の三次元網状骨格構造を有する発泡アルミニウム板を製造した。
【0038】
これと併行して、活物質として、NO処理を施した活性炭粉末を用意した。なお、この活性炭粉末は、市販の椰子殻活性炭(呉羽化学製YP-50F)を、8000ppmの一酸化窒素(NO)を含むヘリウム雰囲気中で、850℃で3時間加熱保持することにより製造した。なお、上記NO処理した活性炭粉末中の窒素含有量については、元素分析の結果、窒素/炭素原子比で約0.01であった。
【0039】
次いで、上記活性炭粉末に、導電材、増粘剤、結着剤を混合して、活物質合剤を調製した。ここで、導電材としてケッチェンブラック(EC300J)を、増粘剤として水溶性メチルセルロース誘導体(信越化学社製60SH-10000)を、結着剤としてテフロン(登録商標。以下同じ)分散液(ダイキン社製D-1E)をそれぞれ用い、活性炭粉末:導電剤:増粘剤:結着剤:水=82.8部:9.7部:2.6部:9.8部:100部の配合組成とした。
【0040】
そして、上記発泡アルミニウム板をエタノールに浸漬して湿らせた後に、上記活物質合剤を、ゴムべらを用いて上記発泡アルミニウム板の空孔内に充填した。次いで、これを80℃に設定した乾燥機中で十分に乾燥した後に、厚さ0.3mmの2枚のアルミニウム板の間に挟んで圧延した。そして、これを16mmφに打ち抜くことにより、厚さ0.5mmの上記正極10および負極11を製造した。
【0041】
次に、図1に示すように、有底筒状に形成されたアルミニウム製のケーシング本体20の凹部内に、順次正極10、セパレータ21、筒状のテフロンガイド22、負極11、円板状の導線製金属からなる電極押さえ23、スプリング24を積層し、内部に電解液5を充填してアルミニウム製の円板からなるケーシング蓋体25によって押圧して封じることにより、本発明に係る電気二重層型キャパシタと同一の構成を有するアルミニウム製2極セル(以下、試験セルと略す。)を組み立てた。
【0042】
なお、これらの組み立て作業は、グローブボックス内で行い、上記電解液を充填後、ケーシング本体20とケーシング蓋体25とをボルト20aおよびナット(図示を略す。)によって締め付けた。
【0043】
ここで、ケーシング本体20とケーシング蓋体25との間に、図示されない絶縁性ガスケットが介装されることにより、ケーシング本体20が正極側となり、ケーシング蓋体25が負極側になるとともに、両者によってケーシング1が構成されている。また、セパレータ4に対応するセパレータ21としては、セルロースシートを用い、電解液としては、1.0mol/Lの濃度で、トリメチルエチルアンモニウム4フッ化ホウ酸(1.0M(C25)3(CH3)NBF4)を含むプロピレンカーボネート溶液を用いた。
【0044】
他方、比較例1の電気二重層型キャパシタを模した試験セルとして、活物質として、上記実施例と同様にNO処理した活性炭を用いるとともに、集電体に、上記発泡アルミニウム板に替えてアルミニウムエキスパンドメタルを用いたものを製造した。ただし、活物質合剤を調製する際に、増粘剤を使用せず、活性炭粉末:導電剤(ケッチェンブラック(EC300J)):結着剤(三井デュポンフロロケミカル製テフロン6J)=85部:10部:5部の配合組成とした。他の構成は、上記実施例の試験セルと同様である。
【0045】
そして、得られた実施例および比較例1のアルミニウム製2極セルを用いて、70℃の温度における3.5Vの耐久性試験を実施した。
上記耐久性試験の方法を、具体的に説明すると、先ず試験セルのケーシング本体20に一体化した正極側端子26およびケーシング蓋体25に一体化した負極側端子27を、それぞれ配線を介して図示されない充放電装置に接続し、当該試験セル部分を恒温槽に入れた。
【0046】
そして、図2に示すように、上記恒温槽を40℃に設定し、電流密度80mA/gの条件下で2.5Vまで充電し、放電する操作を5回繰り返し、5回目の放電容量を初期容量とした。また、充電容量に対する放電容量の百分率を、充放電効率とした(同図に縦軸で示す。)。
【0047】
次いで、恒温槽を70℃に昇温し、0V〜2.5V間の充放電を5回繰り返した後に、恒温槽の温度を変えることなく、0V〜3.5V間の充放電を5回繰り返した。そして、恒温槽の温度を70℃に保持したままで、3.5Vに充電した状態に100時間保持した。そして、100時間経過後に、放電した。
【0048】
次いで、恒温槽の温度は70℃のままで、0V〜3.5V間の充放電を5回繰り返した後に、0V〜2.5V間の充放電を5回繰り返した。そして、最後に恒温槽の温度を40℃に降温し、0V〜2.5V間の充放電を5回繰り返し、5回目の放電容量を、耐久性試験後の容量とした。
【0049】
図2および図3は、その結果を示すものである。同図から、上記耐久性試験の前後において、本発明の実施例と比較例1との充放電効率に大きな差異は無いが、第1に上記実施例においては、高い容量が得られること、第2に上記実施例においては上記容量の変化が少ないのに対して、比較例1では、上記試験後に上記容量が大幅に減少していることが判る。
【0050】
また、図3に示す充放電曲線の変化からも明らかなように、上記実施例においては、耐久性試験前後において充放電の特性変化が少ないのに対して、比較例1では、上記試験後において、大幅に上記特性が低下していることが判る。
【0051】
そこで次に、本発明における集電体および活物質のいずれの構成が、このような優れた耐久性に寄与しているかを確認するために、さらに下記比較例2および比較例3を上記実施例および比較例1と同様の製造方法によって製造して、同様の耐久性試験を実施した。
【0052】
図4に示すように、比較例2は、集電体に上記実施例と同様の発泡アルミニウム板を用いるとともに、活物質としてNO処理を施していない活性炭をそのまま用いたものである。また、比較例3は、集電体に、上記発泡アルミニウム板に替えてアルミニウムエキスパンドメタルを用い、かつ活物質としても、NO処理を施していない活性炭をそのまま用いたものである。
【0053】
次いで、これら比較例2、3についても、上述した実施例および比較例1と同様の70℃の温度における3.5Vの耐久性試験を実施した。
そして、上記実施例および比較例1〜3の試験結果から得られた耐久性試験前後の容量変化から容量維持率として算出したところ、図5に示すように、上記実施例においては、92%という極めて高い値が得られたのに対して、比較例1〜3においては、最も高い比較例2でも70未満であり、他の比較例1、2はいずれも15%未満であった。
【0054】
さらに、これら実施例および比較例1〜3について、試験電圧を変えて、3.0Vおよび3.2Vにおいても同様の耐久性試験を実施して上記容量維持率を求めたところ、図6に示すように、試験電圧3.0および3.2Vによる耐久性試験では、いずれも90%程度の容量維持率が得られたのに対して、上述した3.5Vによる耐久性試験において、急激に実施例と比較例1〜3との差異が顕在化することが判明した。
【0055】
これを換言すれば、本発明に係る実施例によれば、高い容量が得られるとともに、特に高電圧の印加時において、高い容量維持率を得ることができ、よって優れた耐久性を実現し得ることが実証された。
【符号の説明】
【0056】
10 正極
11 負極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7