【実施例1】
【0027】
(実施例1の構成)
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、入室者認証装置1は玄関ドア2に取り付けられている。電気錠20が組み込まれた扉2のドアハンドル3aには、開閉時に握られる掌の部位(図中、破線で示すブロック)に、掌紋を撮影する画像撮影部10が埋め込まれている。画像撮影部10として、ここでは全方位カメラを用いることとする。
【0028】
ドアハンドル3aが連結部材4を介して結合される扉2の端部には、電気錠20が組み込まれた錠ケース5が備え付けられている。錠ケース5には、鍵穴6と、外部(後述する制御部30)から供給される電気信号によりデッドボルトを動かして施錠し、又は解錠を行うモータやソレノイドを含む。
【0029】
図2にドアハンドル3aの断面構造が示されている。
図2に示すように、ドアハンドル3aは、その断面形状が中空の円柱になっている。この円柱部分のうち入室者の掌40が接触する部位は透光性を有する半透明のアクリル材で形成され、この中に、特殊なレンズとミラーを組み合わせて水平方向に360度を一度に見ることができるようにした全方位カメラが埋め込まれている。この場合、ドアハンドル3aを握った掌の位置に依存することなく、掌紋の全体像を撮影できるため、確度の高い入室者の認証が可能になる。但し、撮影された全方位画像はパノラマ画像に変換する必要があり、このため、精度の高いサンプリング手法により形状に歪みが生じない画像を生成する必要がある。
【0030】
尚、ここでは画像撮像部10として全方位カメラを使用するものとするが、市販のデジタルカメラで代替しても良い。デジタルカメラは、可視光撮影用、赤外光撮影用のいずれのタイプでも良いが、赤外光撮影の場合は、赤外線遮光フィルタを取り外し、代わって赤外線通過フィルタを取り付けたフィルタ構造を有するものとする。
【0031】
説明を
図1に戻す。画像撮影部10によって撮影された掌紋画像は、制御部30に予め登録された掌紋と照合される。制御部30は、両者の掌紋が一致したときに電気錠20の解錠制御を行う。この状態で入室者はドアハンドル3aを回して扉2を開閉することができる。
【0032】
図3に示されるように、本実施例に係る入室者認証装置1は、画像撮影部10と、電気錠20と、制御部30と、により構成される。
画像撮影部10は、タッチセンサ11と、光源12と、カメラ本体13と、カメラ制御部14と、画像送信部15とを含み構成される。
【0033】
タッチセンサ11は、掌のドアハンドル3aへの接触の有無を検知するセンサであり、抵抗膜式、静電容量式のいずれの検知方式を採用してもよい。タッチセンサ11は、動画撮影用に、入室者によるドアハンドル3aの握り初めと終わりを示す信号を検知してカメラ制御部14にその信号を出力する。
【0034】
カメラ制御部14は、タッチセンサ11から出力される信号に基づき、LED(Light Emitted Diode)等で構成される光源12のON/OFF、及びカメラ本体13による入室者の掌紋撮影の開始、終了のタイミングを制御する。尚、赤外光撮影の場合、光源12として赤外線LEDの照射が望ましい。
【0035】
画像送信部15は、カメラ制御部14による制御の下で、カメラ本体13により撮影された入室者の掌紋画像を取り込んで制御部30に送信する。尚、掌紋画像の送信は、有線、無線の別を問わない。
【0036】
電気錠20は、制御部30から供給される電気信号によりデッドボルトを動かし、施錠、解錠を行うモータやソレノイドにより構成される。
【0037】
制御部30は、モード制御部31と、画像受信部32と、画像変換部33と、画像認識部34と、画像抽出部35と、画像登録部36と、画像照合部37と、解錠制御部38と、掌紋DB(Data Base)39と、により構成される。
【0038】
モード制御部31は、保守時に行われる掌紋登録動作(以下、登録モードという)と、入室者認証時に行われる認証動作(以下、認証モードという)とを切り替え制御するものであり、通常は認証モードになっている。
【0039】
画像受信部32は、画像撮影部10の画像送信部15から送信される入室者の掌紋画像を受信して画像変換部33に出力する。画像変換部33は、掌紋認証を行う際に画像撮影部10で撮影され送信される全方位の掌紋画像をパノラマ画像に変換し、同時にサンプリングにより形状に歪みが生じない掌紋画像に変換して画像認識部34へ出力する。
【0040】
画像認識部34は、画像変換部33により変換された掌紋画像から、掌紋の照合に使用する一部画像を切り出すための基準点を周知の輪郭検出アルゴリズムに従い検出する機能を有する。ここでは、基準点として小指の付け根を利用するものとする。
【0041】
画像抽出部35は、画像認識部34で検出された基準点に基づき、画像変換部33から出力される変換後の掌紋画像から、照合に使用する部分画像を切り出すもので、画像撮影部10により撮影される複数枚の掌紋画像の中から都度1枚の掌紋画像を抽出し、この抽出された掌紋画像毎に、小指の付け根を基準点とする所定範囲の画素を切り出して画像照合部37へ出力する。
【0042】
画像登録部36は、モード制御部31が「登録モード」を示した場合に動作し、画像撮影部10から取得される登録掌紋画像を掌紋DB39に登録する。ここで、登録掌紋画像は、画像抽出部35により特徴ベクトルに変換され、掌紋コードとして登録される。尚、モード制御部31が「登録モード」を示すためには、保守員が制御部30に専用の機器を接続して制御部30との間で通信を行い、モード制御部31を「認証モード」から「登録モード」に切り替える必要がある。又、この切り替え機能を制御部30が持つ場合は、制御部30に付加される切り替えスイッチ等によりユーザが操作を行う必要がある。
【0043】
画像照合部37は、モード制御部31が「認証モード」を示した場合に動作し、画像抽出部35で切り出され生成される特徴ベクトルに基づき、掌紋DB39に登録された掌紋コードとの間で照合を行うことにより入室者の認証を行う。具体的に、画像照合部37は、画像抽出部35で切り出された画素のSIFT特徴(Scale Invariant Feature Transform)を生成し、掌紋DB39に予め登録された掌紋画像のSIFTコードとの一致度を求め、この一致度と閾値との比較結果に応じて電気錠20を解錠する解錠信号を生成出力する。
【0044】
解錠制御部38は、画像照合部37により解錠信号が生成出力されると、電気錠20に解錠信号を出力して電気錠20の解錠制御を行う。
【0045】
(実施例1の動作)
以下に本実施例1の動作を説明する。
図4のフローチャートを使用して、
図3の画像撮影部10の動作から説明する。
【0046】
図4では、先ず、撮影開始トリガの有無が判定される(ステップS101)。
具体的に、
図3に示す画像撮影部10では、カメラ制御部14が、タッチセンサ11から出力されるタッチ信号を監視することによって撮影開始トリガの有無を判定する。
【0047】
ステップS101で、撮影開始トリガ有り(YES)と判定されると、ステップS102の処理へ進む。ステップS102では、光照射による掌紋の撮影が行われ、ステップS103で撮影画像の逐次送信処理が実行される。
【0048】
具体的に、入室者が
図1のドアハンドル3aを握り、これを受けて
図3の画像撮像部10では、タッチセンサ11が掌の接触を検知してタッチ信号を出力すると、カメラ制御部14は、光源12を制御してドアハンドルを握った入室者の掌に光を照射し、同時にカメラ本体13による掌紋撮影を開始させる。そして、画像送信部15では、撮影された掌紋画像を制御部30(画像受信部32)に逐次送信する。
【0049】
次に、ステップS104で撮影終了トリガの有無が判定される。ここで、撮影終了トリガ有り(YES)と判定されると撮影動作を終了し、撮影終了トリガ無し(NO)と判定されると、ステップS102の処理に戻る。
【0050】
具体的に、入室者が
図1のドアハンドル3aから手を離すことで、
図3の画像撮影部10では、カメラ制御部14が、タッチセンサ11からリリース信号を受信して撮影終了トリガ有りと判定する。そして、画像送信部15では、カメラ本体13で撮影された掌紋動画像を、例えば、一回の握りに2秒程度要するものとすれば、60枚の静止画像として1フレーム毎に逐次送信する。
【0051】
次に、
図5のフローチャートを使用して
図3の制御部30の動作を説明する。
図5では、先ず、モード判定が行われる(ステップS201)。モード判定の結果、「登録モード」であればステップS202の処理へ進み、「認証モード」であればステップS207の処理に進む。ここで、「登録モード」とは、入室許可者の掌紋を登録する操作をいい、「認証モード」とは、入室者の認証を行い、結果によっては電気錠の解錠制御を行うことをいう。ここでは、通常「認証モード」になっているため、ステップS207の撮影画像の取り込み処理が行われる。
【0052】
具体的に、
図3の制御部30では、モード制御部31が、本入室者認証装置1が「登録モード」になっているか、「認証モード」になっているかを判定する。モード制御部31は、「登録モード」になっていれば、画像登録部36による掌紋登録動作を有効とし、画像受信部32が受信した画像撮影部10から送信される登録掌紋画像を取り込む。
【0053】
次に、ステップS203で基準点の抽出処理が実行される。具体的に、
図3の制御部30では、画像受信部32が全方位の登録掌紋画像を取り込むと、その登録掌紋画像は、画像変換部33へ供給される。これをうけた画像変換部33では、全方位掌紋画像をパノラマ画像に変換すると共に、適宜サンプリングを行い、形状に歪みが生じない掌紋画像に変換して画像認識部34へ出力する。そして、画像認識部34では、周知の輪郭抽出アルゴリズムを用いて、例えば、小指付け根の基準点を抽出して画像抽出部35へ引き渡す。
【0054】
次に、ステップS204で分離度フィルタによるエッジ抽出処理が実行される。具体的に、
図3の制御部30では、画像抽出部35が、画像認識部34により検出された基準点に基づき、例えば、幅360ピクセル、高さ340ピクセルの画像を切り出し、その切り出された画像からエッジ(しわ)の抽出を行う。ここでエッジは、切り出された画像を更に小領域に分割し、その分割領域の中で分散をとり、分散が大きい場合にエッジ候補として抽出する分離度フィルタによるエッジ抽出を行う。ここで分散の大小は、分割領域の平均輝度の分散を、領域全体の輝度分散で正規化することによって判断される。
【0055】
次に、ステップS205でシフト特徴(SIFTキー)の生成処理が実行される。具体的に、
図3の制御部30では、画像抽出部35が、抽出されたエッジから特徴ベクトルであるSIFTキーを生成し、掌紋コードとして画像登録部36に出力する。ここで、「SIFTキー」とは周知の特徴抽出アプローチの一つであり、上述したように分割された極小領域の特異な輝度分布に着目してその特異点を求めるために使用される特徴ベクトルのことをいう。
【0056】
SIFTキーは、古典的なテンプレートマッチングによる照合と比較して、照明変動や、対象の見え方の変動に強い認証を可能とする特徴抽出アプローチであるため、本実施例のように、カメラがドアハンドル3aに埋め込まれた環境の中で撮影される画像の認証に適したものと考えられる。
【0057】
次に、ステップS206で掌紋の登録処理が実行される。具体的に、
図3の制御部30では、画像登録部36が、画像抽出部35から取得した掌紋コードを掌紋DB39に登録する。
【0058】
一方、ステップS201でモード判定の結果、「認証モード」であれば、撮影画像の受信の有無が判定される(ステップS207)。具体的に、モード制御部31は、「認証モード」になっていれば、画像照合部37による掌紋画像認証動作を有効とし、これを受けた画像照合部37では、内蔵するカウンタiを0クリアする(ステップS207)。カウンタiは、1回の握りにより一致掌紋画像の数を記憶するために使用されるものである。詳細は後述する。
【0059】
画像受信部32では、画像撮影部10(画像送信部15)から逐次送信される掌紋画像を、ステップS208で受信して画像変換部33へ出力する。以降、ステップS209で基準点(頂点)を抽出し、ステップS210で分離度フィルタによるエッジ抽出を行い、ステップS211でシフト特徴を生成する処理は、「登録モード」時に行った、ステップS203、S204、S205のそれぞれの処理と同じである。基準点(頂点)を抽出する処理は、
図3の制御部30における画像認識部34が行い、分離度フィルタによるエッジ抽出及びシフト特徴を生成する処理は、画像抽出部35が行う。
【0060】
次に、ステップS212でシフト特徴のマッチング処理が実行され、続いて、ステップS213で一致度の計算処理が実行される。具体的に、
図3の制御部30では、画像抽出部35でエッジ抽出が行われ、生成されたSIFT特徴は、画像照合部37へ出力される。画像照合部37では、画像抽出部35から出力されるSIFTキーと、掌紋DB39に登録済みのSIFTコードとの照合を行ない、一致度の計算を行う。
【0061】
次に、ステップS214で一致度αと閾値βとの比較判定が行われる。ここでは閾値βとして、例えば一致率80%を想定する。そして、一致率80%以上の場合はカウンタiを+1更新し(ステップS215)、続いてカウンタiの値を閾値γと比較する(ステップS216)。ここで比較される閾値γは、例えば、画像撮影部10から逐次送信される60枚の掌紋画像のうち48枚(60枚の80%)とする。
【0062】
そして、ステップS216で、80%以上の一致度がある掌紋画像が48枚(60枚の80%の)以上あると判定された場合に解錠制御を行い(ステップS217)、80%以上の一致度がある掌紋画像が48枚に満たないか、或いはステップS214で一致度が80%に満たないと判定された場合はステップS208の処理に戻り、次に送信される掌紋画像の受信を待って上記と同様の処理を繰り返す。
【0063】
具体的に、
図3の制御部30では、画像照合部37が、算出された一致度αと閾値βとの比較を行い、更に、一致度が80%以上の掌紋画像のフレーム数を示すカウンタiの値と閾値γとの比較を行い、その結果を解錠制御部38に出力する。すなわち、取り込んだ入室者のSIFTキーと、掌紋DB39に登録されたSIFTコードとの間に80%以上の一致度がある掌紋画像が48フレーム以上ある場合、画像照合部37は認証が成立したものと見なし、このとき、解錠制御部38が解錠信号を生成して電気錠20の解錠制御を行う。又、80%以上の一致度がある掌紋画像が48フレーム未満の場合、画像照合部37は認証失敗と見なし、このとき解錠制御部38は解除信号を生成することなく、電気錠20を施錠した状態を維持する。すなわち、制御部30は、閾値以上である一致度と閾値未満である一致度との割合が所定値以上である場合に電気錠20を解錠する解錠信号を生成出力する。
【0064】
(実施例1の効果)
以上説明のように、本実施例1に係る入室者認証装置1によれば、把手(ドアハンドル3a)に埋め込まれた画像撮影部10が、把手の握り初めと終わりを検知してその間の掌紋画像を撮影し、制御部30が、撮影された掌紋画像と予め登録された掌紋画像との照合を行い、電気錠20を解錠制御する構成とした。このように、把手の握り初めから終わりに至る間に撮影された動画に基づき掌紋画像の照合を行うため、指紋等の静止画認証に比べて認証率が向上し、入室者が扉2を開けて入室する際に把手に接触するといった自然な行為の中で解錠を可能にすることができる。
【0065】
また、本実施例1に係る入室者認証装置1によれば、撮影部10は、赤外線通過フィルタが取り付けられたデジタルカメラ、又は全方位カメラを含み、これらカメラで撮影された入室者の掌紋画像を制御部30に出力し、入室者認証を行う構成とした。 このため、前者ではフィルタの交換のみでデジタルカメラを使用でき、従って、撮影部10を廉価構成で実現できる。又、後者では把手を握った掌の位置に依存することなく、掌紋の全体像を撮影できるため、一般のデジタルカメラを使用して撮影する場合に比べ、確度の高い入室者の掌紋を取得することができる。
【0066】
また、本実施例1に係る入室者認証装置1によれば、制御部30は、取得された掌紋画像毎に、小指の付け根を基準点とする所定範囲の画素を切り出して照合を行ない、又、照合に際し、切り出された画素の特徴ベクトルを生成し、予め登録された掌紋画像の特徴ベクトルとの一致度によって電気錠を解錠する。更にこの特徴ベクトルとして、例えば、SIFTキーを用い、切り出された画素と登録された掌紋画像との照合を行うことにより、古典的なテンプレートマッチングによる照合と比較して照明変動や対象の見え方の変動に強い入室者認証が可能になる。従って、認証率が向上する。また、このとき、閾値以上の一致度がある掌紋画像が所定枚数以上ある場合に電気錠を解錠するため、確度の高い入室者認証が可能になる。
【実施例2】
【0067】
次に、実施例2について説明する。
【0068】
上記した実施例1では、カメラ制御部14が、タッチセンサ11から出力されるタッチ信号を監視することにより、把手の握り初めを検知したタイミングを撮影開始のトリガとし、握り終わりを検知したタイミングを撮影終了のトリガとして掌紋画像の撮影を終了した。これに対し、撮影終了のトリガはタッチセンサ11によらず、画像送信部15により送信される掌紋画像の枚数を監視することで、照合に必要な所定の枚数(例えば、60枚)の取り込みを終えたタイミングとし、あるいは画像照合部37の出力を監視することにより、画像照合部37が認証成立と判定するのに必要な、掌紋画像の枚数(例えば、48枚)の照合終了時としてもよい。以下に説明する実施例2では、後者の、撮影終了のトリガは照合の終了とする場合について説明する。実施例2に係る入室者認証装置1によれば、扉を開くときに把手を比較的長時間握る傾向がある入室者であっても、把手を握っている時間に依存せずに撮影が終了するため、無駄な掌紋画像の撮影機会が減る。
【0069】
(実施例2の構成)
以下に説明する実施例2でも
図3に示す実施例1と同じ構成を使用するものであり、制御部30の動作のみを若干異にするものである。
図7,
図8に、本実施例2に係る入室者認証装置1の制御部30の動作がフローチャートで示されている。以下、
図7、
図8のフローチャートを参照しながら本実施例2に係る入室者認証装置1の制御部30の動作について、特に、実施例1との差異に着目して説明する。
【0070】
(実施例2の動作)
図7において、まず、ステップS301でモード判定が行われる。実施例1同様、モード判定の結果、「登録モード」であればステップS302の処理へ進み、「認証モード」であれば、
図8に示すステップS310の処理に進む。モード制御部31は、「登録モード」になっていれば、画像登録部36による掌紋登録動作を有効とし、認証に必要な掌紋画像の枚数をカウントする内蔵カウンタjを初期化する(ステップS302)。そして、画像受信部32では画像撮影部10(画像送信部15)から送信される入室者認証のための登録掌紋画像を取り込む(ステップS303)。ここでは、画像撮影部10の画像送信部15は、カメラ制御部14による制御のもと、入室者が把手を握ってから撮影される所定枚数の掌紋画像を順次受信することによって取り込む。
【0071】
次に、制御部30は、画像受信部32が全方位の登録掌紋画像を取り込むと、その登録掌紋画像は、画像変換部33へ供給される。これをうけた画像変換部33では、全方位掌紋画像をパノラマ画像に変換すると共に、適宜サンプリングを行い、形状に歪みが生じない掌紋画像に変換して画像認識部34へ出力する。そして、画像認識部34では、周知の輪郭抽出アルゴリズムを用いて、例えば、小指付け根の基準点を抽出して画像抽出部35へ引き渡す(ステップS304)。
【0072】
続いて、制御部30は、画像抽出部35が、画像認識部34により検出された基準点に基づき、例えば、幅360ピクセル、高さ340ピクセルの画像を切り出し、その切り出された画像からエッジ(しわ)の抽出を行う。ここでエッジは、切り出された画像を更に小領域に分割し、その分割領域の中で分散をとり、分散が大きい場合にエッジ候補として抽出する分離度フィルタによるエッジ抽出を行う(ステップS305)。ここで分散の大小は、分割領域の平均輝度の分散を、領域全体の輝度分散で正規化することによって判断される。
【0073】
次に、制御部30は、画像抽出部35が、抽出されたエッジから特徴ベクトルであるSIFTキーを生成し、掌紋コードとして画像登録部36に出力する(ステップS306)。そして、制御部30は、カウンタjを+1更新し(ステップS307)、認証に必要な枚数n(例えば、60枚)の掌紋画像のシフト特徴を生成したか否かを判定する(ステップS308)。ここで、n枚の掌紋画像が受信できた場合に(ステップS308“YES”)、掌紋の登録処理が実行される。具体的に、
図3の制御部30では、画像登録部36が、画像抽出部35から取得した掌紋コードを掌紋DB39に登録する。未だn枚の掌紋画像を受信できていない場合は(ステップS308“NO”)、ステップS303の撮影画像の取り込み処理に戻る。
【0074】
一方、ステップS301の登録/認証判定処理で「認証モード」であれば、モード制御部31は、画像照合部37による掌紋画像認証動作を有効とし、これを受けた画像照合部37では、内蔵するカウンタiとkとを0クリアする(
図8のステップS310)。ここで、カウンタiは、後述する照合の結果、一致度(α)が閾値(β)以上の掌紋画像の数を、カウンタkは先に説明したカウンタj同様、認証に必要な受信した掌紋画像の枚数をそれぞれカウントするために使用される。
【0075】
画像受信部32では、画像撮影部10(画像送信部15)から逐次送信される掌紋画像を受信したら(ステップS311“YES”)、都度、その掌紋画像を画像変換部33へ出力する(ステップS312)。次に、画像受信部32では、カウンタkを+1更新し(ステップS312)、カウンタkの値が認証に必要な枚数に到達したか否かを判定する(ステップS313)。未だ認証に必要な枚数に到達しない場合(ステップS313“NO”)、掌紋画像の登録時と同様、画像認識部34は、基準点(頂点)を抽出し(ステップS314)、画像抽出部35は、分離度フィルタによるエッジ抽出を行い(ステップS315)、シフト特徴を生成する(ステップS316)。
【0076】
次に、制御部30では、画像抽出部35でエッジ抽出が行われ、生成されたSIFT特徴を画像照合部37へ出力する。画像照合部37では、画像抽出部35から出力されるSIFTキーと、掌紋DB39に登録済みのSIFTコードとの照合を行ない(ステップS317)、一致度の計算を行う(ステップS318)。そして、ステップS319で一致度αと閾値βとの比較判定が行われる。ここでは閾値βとして、例えば一致率80%を想定する。ここで、一致率80%以上の場合は(ステップS319“YES”)、カウンタiを+1更新し(ステップS320)、続いてカウンタiの値を閾値γと比較する(ステップS321)。ここで比較される閾値γは、例えば、画像撮影部10から逐次送信される60枚の掌紋画像のうちの48枚(60枚の80%)とする。
【0077】
ステップS322で、80%以上の一致度がある掌紋画像が48枚(60枚の80%の)以上あると判定された場合に扉の解錠制御を行い(ステップS322)、80%以上の一致度がある掌紋画像が48枚に満たないか(ステップS321“NO”)、或いはステップS320の一致度判定処理で一致度が80%に満たないと判定された場合は(ステップS319“NO”)、ステップS311の撮影画像の受信処理に戻り、次に送信される掌紋画像の受信を待ち、上記と同様の処理を繰り返す。具体的に、制御部30では、画像照合部37が、算出された一致度αと閾値βとの比較を行い、更に、一致度が80%以上の掌紋画像のフレーム数を示すカウンタiの値と閾値γとの比較を行い、その結果を解錠制御部38に出力する。即ち、画像照合部37は、取り込んだ入室者の掌紋画像のSIFTキーと、掌紋DB39に登録されたSIFTコードとの間に80%以上の一致度がある掌紋画像が48フレーム以上ある場合、認証が成立したものと見なし、このとき、解錠制御部38が解錠信号を生成して電気錠20の解錠制御を行う。又、80%以上の一致度がある掌紋画像が48フレーム未満の場合、認証失敗と見なし、このとき解錠制御部38は解除信号を生成することなく、電気錠20を施錠した状態を維持する。
【0078】
以上の動作は、ステップS313で、カウンタkの値がn以上になるまで、すなわち、)画像照合部37で、80%以上の一致度がある掌紋画像が48枚(60枚の80%)以上あると判定されるまで繰り返し実行される。つまり、80%以上の一致度がある掌紋画像が48枚あれば、60枚の掌紋画像を取り込む必要はない。
【0079】
(実施例2の効果)
以上説明のように、本実施例2に係る入室者認証装置1によれば、把手(ドアハンドル3a)に埋め込まれた画像撮影部10が、把手の握り初めと認証に必要な枚数の取り込みの終了を検知してその間の掌紋画像を送信し、制御部30が、撮影された複数の掌紋画像と予め登録された複数の掌紋画像との照合を行い、電気錠20を解錠制御する構成とした。このように、把手の握り初めから制御装置30が認証に必要な枚数の掌紋画像を取り込むまでの間に撮影された動画に基づき掌紋画像の照合を行うため、指紋等の静止画認証に比べて認証率が向上し、かつ、入室者が扉2を開けて入室する際に把手に接触するといった自然な行為の中で解錠を可能にすることができる。
【0080】
また、本実施例2に係る入室者認証装置1によれば、閾値以上の一致度がある掌紋画像が所定枚数以上ある場合に電気錠を解錠するため、確度の高い入室者認証が可能になる。
【0081】
また、実施例2に係る入室者認証装置1によれば、撮影開始のトリガを把手の握り初めとし、撮影終了のトリガを照合の終了としたため、扉を開くときに把手を比較的長時間握る傾向がある入室者であっても、握りを継続する時間に依存することなく撮影が終了するため、無駄な掌紋画像の撮影機会が減る。なお、実施例2では、60枚の掌紋画像のうち、80%(γ)以上の一致度がある掌紋画像が48枚(60枚の80%)以上あると判定されたタイミングを照合終了とし、この場合、60枚の掌紋画像を取り込む必要はないとして説明したが、一致度αおよび閾値γは任意である。なお、画像送信部15が送信した掌紋画像の枚数を監視することにより、照合に必要な所定の枚数(例えば、60枚)を撮影しその掌紋画像の取り込みを終えたタイミングを撮影終了のトリガとし、あるいは照合に必要な所定の枚数の掌紋画像を撮影するのに要する時間(例えば、2秒)を監視してタイムアウトを検知したタイミングを撮影終了のトリガとしても良く、この場合も、実施例1と比較すれぱ、無駄な掌紋画像の撮影機会が減る。。
【0082】
尚、上記した実施例1、2において、認証は、SIFTキーを用いたが、SIFTキーによらず、ユークリッド距離を用いた放射基底関数(RBFネットワーク:Radial Basis Function)による認証で代替しても確度の高い入室者認証が可能である。
【0083】
本実施例1、2に係る入室者認証装置は、ドアハンドル3aに適用したが、例えば、回転式のドアノブ3bにも適用可能である。この場合の入室者認証装置1と玄関ドア2との関係は
図6に示す通りである。
図6から明らかなように、電気錠20が組み込まれた扉2のドアノブ3bに入室者認証装置1が組み込まれる以外は、
図1に示す実施例1,2と同じである。
【0084】
又、
図9にドアノブ3bの断面構造が示されているように、
図2のドアハンドル3a同様、画像撮像部10が埋め込まれている。但し、ドアノブ3bの場合は可視光による撮影はできないため、撮影部10として使用される全方位カメラ又は市販のデジタルカメラは、赤外線遮光フィルタを取り外し、新たに赤外線通過フィルタの装着が必須である。
【0085】
尚、本発明の入室者認証装置は、上述したドアハンドル3a、ドアノブ3bに限らず、レバーハンドル、スライドドア他、入室者が扉を開けて入室する際に使用する把手全般への適用が可能である。