(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782617
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】走行装置への車体の接続が側方に柔軟な車両
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
B61F5/24 A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-529240(P2012-529240)
(86)(22)【出願日】2010年9月14日
(65)【公表番号】特表2013-504483(P2013-504483A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2010063483
(87)【国際公開番号】WO2011032945
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年6月4日
(31)【優先権主張番号】102009041109.7
(32)【優先日】2009年9月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508352595
【氏名又は名称】ボンバルディアー トランスポーテーション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】リチャード シュナイダー
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−289170(JP,A)
【文献】
特開平10−230847(JP,A)
【文献】
特開平07−081559(JP,A)
【文献】
特開平10−287241(JP,A)
【文献】
特開2002−104183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(102)と、
前記車体(102)がその上に支持される走行装置(103)と、
を有する車両であって、
前記車体(102)と前記走行装置(103)とは、車両前後方向と、車両横方向と、車両高さ方向とを規定し、
前記車両横方向への横変位中に前記車両前後方向に平行な横揺れ軸を中心とした横揺れ運動を前記車体(102)に加えるように設計された傾斜機構(104;204;304;404)が前記車体(102)と前記走行装置(103)との間に配置される車両において、
前記傾斜機構(104;204;304;404)は横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)を備え、
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)は、前記走行装置(103)に対する前記車体(102)の純粋な横変位に対する前記傾斜機構(104;204;304;404)の剛性を低減するように構成され、
前記傾斜機構(104;204;304;404)は、少なくとも1つのトーション要素(105.3)と、2つのピボットレバー(105.1、105.2;405.1、405.2)と、さらには2つのコンロッド(105.5、105.6)とを備え、
前記トーション要素(105.3)は前記車両横方向に延在し、
前記2つのピボットレバー(105.1、105.2;405.1、405.2)は、互いに離隔されて、前記トーション要素(105.3)の2つの端部の領域にそれぞれ固定され、
前記ピボットレバー(105.1、105.2;405.1、405.2)の各々の自由端にコンロッド(105.5、105.6)が結合され、
前記2つのコンロッド(105.5、105.6)の前記車体(102)側に向いた端部は、前記走行装置(103)側に向いた端部に対して、車両長手軸の中心面側に変位されて配置され、
前記横分離装置(405.7)は、前記車両横方向に弾力的な前記ピボットレバー(405.1、405.2)の区間(405.8)を少なくとも1つ含み、
前記弾力的な区間(405.8)は、板ばねの形態に構成された前記ピボットレバー(405.1、405.2)の少なくとも1つの区間(405.11)によって形成される、
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)は、前記走行装置(103)に対する前記車体(102)の横変位可能性を前記傾斜機構(104;204;304;404)に前記車両横方向に導入し、
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)の横変位可能性が抑制されない前記傾斜機構(104;204;304;404)は、前記車両横方向に第1の横剛性を有し、
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)の横変位可能性が抑制される前記傾斜機構(104;204;304;404)は、前記車両横方向に第2の横剛性を有し、
前記第1の横剛性は前記第2の横剛性の最大95%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)は、前記車両横方向に、最大20kN/mmの横剛性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)は少なくとも1つの横分離ユニット(105.8;205.10;305.9;405.8)を有し、
前記横分離ユニット(105.8;205.10)は、前記走行装置(103)への前記傾斜機構(104;204)の接続領域に配置され、
および/または
前記横分離ユニット(305.9)は、前記車体(102)への傾斜機構(304)の接続領域に配置され、
および/または
前記横分離ユニット(405.8)は、前記傾斜機構(404)の2つの構成要素の間に配置される、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)は、少なくとも1つの横分離ユニットを備え、
前記横分離ユニット(105.8;205.10;305.9;405.8)は軸受要素(105.8;205.4;305.8;405.8)と弾性結合要素(105.8;205.10;305.8;405.8)とを含み、
前記軸受要素(105.8;205.4;305.8;405.8)は、前記傾斜機構(104;204;304;404)の構成要素を前記車両横方向に変位可能に支持し、
前記結合要素(105.8;205.10;305.8;405.8)は、前記軸受要素(105.8;205.4;305.8;405.8)によって支持される前記傾斜機構の前記構成要素の横振れに対して前記車両横方向に抵抗を加える、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記結合要素(105.8;205.10;305.8;405.8)は第3の横剛性を前記車両横方向に有し、
前記軸受要素(105.8;205.4;305.8;405.8)は第4の横剛性を前記車両横方向に対して直角方向に有し、
前記第3の横剛性は前記第4の横剛性より小さく、
および/または
前記第3の横剛性は前記第4の横剛性の最大95%である、
ことを特徴とする請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)は、少なくとも1つの弾力的な、および/または制振作用のある、ユニット(105.8;205.10;305.9;405.8)を前記車両横方向に有し、
前記弾力的な、および/または制振作用のある、ユニット(105.8;305.9;405.8)は、少なくとも1つの可塑性要素を備え、
および/または
前記弾力的な、および/または制振作用のある、ユニット(105.8;305.9;405.8)は、少なくとも1つのゴム層ばねを含む、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記弾力的な区間(405.8)は、前記車両横方向に働く平行ガイダンスのように配置された少なくとも2つの板ばね要素(405.11)によって形成され、
前記2つの板ばね要素(405.11)の間に少なくとも1つの制振要素(409)が配置される、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の車両。
【請求項9】
車両の走行装置(103)とその上に支持される車体(102)との間に配置される傾斜機構であって、請求項1〜8の何れか1項に記載の横分離装置(105.7;205.7;305.7;405.7)を有する傾斜機構(104;204;304;404)として形成される傾斜機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体とこの車体を支持する走行装置とを有する車両であって、車体と走行装置とが車両前後方向と、車両横方向と、車両高さ方向とを規定する車
両に関する。車両横方向への横変位中に車両前後方向に平行な横揺れ軸を中心とした横揺れ運動を車体に加えるように設計された傾斜機構が車体と走行装置との間に配置される。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、しかし他の車両においても、原則として、車体は複数の車輪ユニット(例えば個々の車輪、複数の車輪対、または複数の車輪セット)に対して1つまたは複数のばね段を介してばね装着される。走行力学的性質の多くの問題、特に車両の安全性、乗客の乗り心地、ならびに車両の輸送能力および耐用年数に関する要件がますます厳しくなることによる問題、が発生する。
【0003】
カーブを通り抜ける際に発生し、走行移動に対して横方向に、したがって車両長手軸に対して横方向に、作用する遠心加速度は、車体の重心が比較的高い位置にあるために車輪ユニットに対して、車体をカーブの外側に傾斜させ、車両長手軸に平行な横揺れ軸を中心とした横揺れ運動の傾向を引き起こす。
【0004】
特定の閾値を超えると、このような横揺れ運動は、一方では、走行時の乗り心地を損なう。他方、このような横揺れ運動は、許容荷重ゲージプロフィールに違反する危険を伴い、さらには傾斜時の安定性と脱線防止とに関して許容不能な片側輪重抜けの危険を伴う。これを防止するために、現代的な鉄道車両には、一般にロールスタビライザならびに能動的または受動的な傾斜システムが使用されている。これらは、過度の横揺れ運動および傾斜運動を打ち消し、さらには横揺れ角度および傾斜角度と車両の横揺れ軸とをそれぞれの走行状態に合った、できる限り最適化された値に調整する。このようなアプローチは、例えば特許文献1から公知である(この開示内容全体を引用により本願明細書に組み込むものとする)。
【0005】
上記のロールスタビライザは、液圧で、または純粋に機械的に、働くさまざまな実施形態で公知である。車両前後方向に対して横方向に延在するトーションシャフトが用いられることが多い。回転不能に設置された、車両前後方向に延在する複数のレバーが車両長手軸の両側でこのトーションシャフトに取り付けられる。次にこれらのレバーは、車両のばね装置に運動学的に平行に配置された複数のコンロッドに接続される。車両のこれらのばね装置が圧縮されると、トーションシャフトに取り付けられたこれらのレバーがそこに接合されたコンロッドを介した回転運動により変位する。
【0006】
特許文献1から公知の鉄道車両においては、ロールスタビライザの2つのコンロッドの各上端が車両の中心に向かって(車両長手軸に対して直角に延在する平面において)変位される。これにより、(例えばカーブを通り抜けるときの遠心加速度によって引き起こされる)車両横方向への横振れ中の車体は、車体のカーブ外側への横揺れ運動が打ち消され、カーブ内側への横揺れ運動が車体に加わるように、誘導される。
【0007】
この反対方向に向かうカーブ内側への横揺れ運動は、とりわけ車両の乗客のためのいわゆる傾斜時の乗り心地を増すために役立つ。これに関して、傾斜時の高い乗り心地とは、通常、カーブを通り抜ける際に乗客がそれぞれの基準座標系の横方向に受ける横加速ができる限り小さいことを意味すると理解される。乗客の基準座標系は、原則として車体の装備品(床、壁、座席、その他)によって規定される。この横揺れ運動による車体のカーブ内側への傾斜により、乗客は(その傾斜度に応じて)、地球固定基準座標系において実際に作用する横加速の少なくとも一部を、原則として、苛立たしさまたは不快さがより低いと感じられる車両床方向への加速の増加としてのみ体験する。
【0008】
乗客の基準座標系に作用する横加速の最大許容値(および、最終的に、この結果としてもたらされる車体の傾斜角の整定値)は、原則として、鉄道車両運行者によって事前に決定される。国内ならびに国際規格(例えばEN12299など)もこのための基準点を規定している。
【0009】
これに関して、特許文献1から公知の車両では、純粋に受動的なシステムの実現が可能である。このシステムにおいては、カーブを通り抜ける際に加わる横加速によってのみ車体の望ましい傾斜が実現されるように、ばね装置の構成要素とロールスタビライザの構成要素とが相互にマッチングされている。
【0010】
このような受動的解決策の場合、一方では、横揺れ軸と横揺れ運動の瞬間回転中心とが車体の重心より比較的上方にある必要がある。他方、加わる遠心力のみで所望の横振れを実現するためには、横方向に比較的柔軟であるようにばね装置を設計する必要がある。このような側方に柔軟なばね装置は、横方向への衝撃を柔軟なばね装置によって吸収し制振できるため、横方向へのいわゆる振動時の乗り心地に対しても良い効果を有する。
【0011】
ただし、これらの受動的解決策は、側方に柔軟なばね装置と高い位置にある瞬間回転中心とにより、通常運転中ばかりでなく、予定外の状況においても(例えば、大きな軌道カントを有する軌道カーブでの車両の予期せぬ停止時)、横方向に比較的大きな横振れが発生し、この結果として一般に事前に設定された荷重ゲージプロフィールに対する違反を引き起こすか、または(これを防ぐために)輸送能力が低い比較的幅狭の車体しか実現できないという欠点を有する。
【0012】
特定の横揺れ角を実現するために、この大きな横振れの問題は、瞬間回転中心が重心に相対的に(約0.3mから約1mの距離まで)近づくように横揺れ軸の位置と瞬間回転中心とを車輪支持面の方向にずらすことによって勿論軽減できる。ただし、これでは、著しく小さな横揺れ角度しか受動的に実現できない。したがって、(このロールスタビライザシステムにおいては、何れにせよ、原則として全ての軸受が極めて剛性であるように設計されるため)、システムは横方向にさらに剛性になるため、傾斜時の乗り心地ばかりでなく、振動時の乗り心地に関しても妥協せざるを得ない。
【0013】
また、運動学により車体の2つの走行装置の結合が生じるため、走行装置に対する車体の回転運動中(すなわち、車両高さ方向に平行な偏揺れ軸を中心とした偏揺れ運動中)、車両は車両捩れを受けるため、場合によっては輪重抜けに至り、脱線防止に悪影響を及ぼしうる。二階建て車両の場合、さらに瞬間回転中心が鉄道車両の上部デッキの極めて近くにあるため、上部デッキでの乗り心地にかなりの悪影響を及ぼす。
【0014】
実際に通り抜ける軌道カーブの曲率と実際の走行速度(ひいては、さらに実際にもたらされる横加速)に合った横揺れ運動は、特許文献1から公知の車両の場合、車体と走行装置枠との間に設けられたアクチュエータによって能動的に影響を及ぼし調整することができる。この場合、実際の軌道曲率と実際の走行速度とから車体の横揺れ角の整定値が求められ、アクチュエータを介して横揺れ角を調整するために用いられる。
【0015】
この変形例は、勿論、側方への剛性がより高く、横振れがより小さいシステムの実現の可能性を開く。ただし、この変形例は、アクチュエータによって導入される横剛性により振動時の乗り心地が低下するという欠点を有する。そのため、(例えば、転轍器または軌道の欠陥部分の走行時に)例えば、走行装置に対する横衝撃があまり減衰されずに車体に伝わる。
【0016】
側方に剛性なばね装置による振動時の乗り心地に関する欠点を少なくとも補償するために、受動的システムに関する特許文献2には、側方に柔軟な追加のばね段を傾斜および横揺れ補償装置と運動学的に直列に組み込むことが提案されている。ただし、この解決策は、追加の構成要素のために必要な設置スペースが増すという欠点を有する。また、この場合も、大きな横振れおよび輸送能力の低下に関して上で言及した問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 190 925(A1)号明細書
【特許文献2】国際公開第90/03906(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点がないか、または少なくとも低減された、特に、コンパクトな省スペース設計によって単純かつ確実な方法で高度な乗り心地を乗客に提供する、冒頭に述べたタイプの車両とアクチュエータとを提供することである。
【0019】
本発明の目的は、請求項1の前提部に記載の車両に基づき、請求項1の特徴部に開示された特徴によって達成される。
【0020】
本発明は、横分離装置を傾斜機構に一体化すると、傾斜機構の横剛性の低減(ひいては、車両横方向への車体の純粋な横振れに対する傾斜機構の抵抗の低減)がもたらされるため、乗客のための高度な乗り心地が、コンパクトな省スペース設計により単純かつ確実な方法で可能になるという技術的教示に基づく。傾斜機構の構成要素の適切な設計により、あるいは走行装置側(すなわち、例えば走行装置枠)の隣接構成要素への傾斜機構の取り付け、または車体側(ひいては、例えば、車体または、存在する場合は、車体に接続された車体トラバース)の隣接構成要素への傾斜機構の取り付けにより、このような横分離のない公知の設計に比べ、追加の構造空間を殆ど必要としない極めてコンパクトな構成を実現可能であることが見出されている。
【0021】
傾斜機構のこの追加の横弾性により、特に、振動時の乗り心地が改善される。さらに、走行装置に対する車体の回転振れを、追加の捩れを生じさせずに、横分離装置において吸収可能である。また、車両の上部における乗り心地および振動挙動も能動的システムによってより良く調節可能である。これは、特に、二階建て客車において好都合である。
【0022】
したがって、第1の態様によると、本発明は、車体とこの車体を支持する走行装置とを有する車両であって、車体と走行装置とが車両前後方向と、車両横方向と、車両高さ方向とを規定する車
両に関する。車両横方向への横変位中に車両前後方向に平行な横揺れ軸を中心とした横揺れ運動を車体に加えるように設計された傾斜機構が車体と走行装置との間に配置される。この傾斜機構は、走行装置に対する車体の純粋な横変位に対する傾斜機構の剛性を低減するように設計された横分離装置を備える。
【0023】
横分離装置によって実現される傾斜機構の横剛性の低減量は、所望される乗り心地の向上を実現するために、原則として、任意の大きさになるように選択可能である。原則として、必要な横剛性低減量は、達成すべき乗り心地の向上ならびに横分離装置のないシステムの横剛性によって左右される。横分離装置は、走行装置に対する車体の横変位可能性を傾斜機構に車両横方向に導入することが好ましく、この車両横方向への横分離装置の横変位可能性が制約されない傾斜機構は第1の横剛性を有し、車両横方向への横分離装置の横変位可能性が制約される傾斜機構は第2の横剛性を有する。ここで、第1の横剛性は第2の横剛性の最大95%である。好ましくは第1の横剛性は第2の横剛性の85%であり、より好ましくは第2の横剛性の最大60%である。好ましくは第1の横剛性はこれらの値よりさらに大幅に小さい。本発明の有利な変形例において、第1の横剛性は第2の横剛性の最大20%である。これにより、振動時の乗り心地に関して特に有利な特性を実現可能である。
【0024】
振動時の乗り心地に関して特に有利な特性を有する本発明の他の好適な変形例においては、横分離装置は、車両横方向に最大20kN/mmの横剛性を有する。好ましくは、この横剛性は最大10kN/mmであり、より好ましくは最大2kN/mmである。
【0025】
この横分離装置は、原則として、傾斜機構の何れか都合の良い適切な位置に何れか都合の良い適切な方法で一体化可能である。好ましくは、この横分離装置は、走行装置への傾斜機構の接続領域に配置された横分離ユニットを少なくとも1つ有する。これにより、特にコンパクトな設計が実現されうる。横分離ユニットは、例えば、特に省スペースな方法で、走行装置上の傾斜機構の(原則として、自在軸受として設計された)軸受に直接一体化可能である。
【0026】
さらに、または代わりに、横分離装置を車体への傾斜機構の接続領域に配置することができる。この位置においても特にコンパクトな設計が実現されうるので、従来の車両に対して建造空間要件が(仮に増加するにしても)著しく増加することはない。例えば、この横分離装置は、この車体上の、または、存在する場合は、この車体に接続された車体トラバース上の、傾斜機構の(原則として、自在軸受として設計された)軸受に特に省スペースな方法で直接一体化されうる。
【0027】
特に単純に、かつ建造空間を殆ど追加する必要なしに、実現可能な他の設計変形例においては、横分離ユニットは、さらに、または代わりに、傾斜機構の2つの構成要素の間に配置される。例えば、傾斜機構の1つまたは複数の構成要素(例えば、トーションシャフトに取り付けられた横揺れ支持装置のスイベルレバー)を、横分離を生じさせるために、相応に横方向に弾性であるように設計可能である。
【0028】
所望される追加の横弾性を傾斜機構に組み込むために、横分離装置を、原則として、任意の適切な方法で設計可能である。好ましくは、横分離装置は、軸受要素と弾性結合要素とを含む横分離ユニットを少なくとも1つ備える。軸受要素は、傾斜機構の構成要素を車両横方向に変位可能に、特に自由に変位可能に、支持し、結合要素は、軸受要素によって支持された傾斜機構の構成要素の横振れを車両横方向に打ち消す。横振れに対する抵抗の特性は、原則として、何れか任意の適切な方法で選択可能である。抵抗特性は、少なくともセクションごとに(少なくともほぼ)一定にでき、少なくともセクションごとに増加可能であり、少なくともセクションごとに低下可能である。
【0029】
車両横方向への横振れの増加に伴い、車両横方向への横振れに対する抵抗が増加する、好ましくは漸増する、構成が設けられることが好ましい。これにより、振動時の乗り心地に関して傾斜機構の横剛性の特に有利な特性を実現可能である。すなわち、例えば、機械的ストップなどに対する突然の衝撃を回避できるように、横振れの増加時にのみ十分な抵抗が加わるという特性を実現可能である。
【0030】
結合要素によって実現される傾斜機構の横剛性の低減量は、原則として、所望される乗り心地の向上を実現するように、所望の大きさになるように選択可能である。好ましくは、結合要素は車両横方向に第3の横剛性を有し、軸受要素は車両横方向に対して直角な方向に第4の横剛性を有し、第3の横剛性は第4の横剛性より小さく、特に大幅に小さい。したがって、例えば、第3の横剛性は第4の横剛性の最大95%であることが予測されうる。好ましくは第3の横剛性は第4の横剛性の最大85%であり、より好ましくは第4の横剛性の最大60%である。本発明の特に有利な変形例では、第3の横剛性はこれらの値よりも著しく低く、例えば第4の横剛性の最大20%である。これにより、振動時の乗り心地に関して特に有利な特性が実現可能である。
【0031】
軸受要素と弾性結合要素とは互いに空間的に離して配置可能であるため、傾斜機構のさまざまな構成要素に対して、または傾斜機構のこれら構成要素のうちの1つのさまざまなセクションに対して、作用を及ぼすことができる。ただし、本発明の他の変形例においては、軸受要素と弾性結合要素とを1つの共通の部分組立体に一体化し、場合によっては両機能(横方向に変位可能な軸受と横振れに対する抵抗)を提供する単一要素から形成することも予測されうることを理解されたい。
【0032】
本発明による車両の好適な変形例においては、傾斜機構の横剛性の好都合な特性を有利な方法で実現するために、横分離装置は車両横方向に弾力的な、および/または制振作用のある、少なくとも1つのユニットを備えることが予測される。この場合、車両横方向に弾力的な、および/または制振作用のある、ユニットは、原則として、任意の適切な方法で構成可能である。特に、このユニットは、任意の動作原理に従って機能できる。したがって、例えば、液圧式、空圧式、または機械式の動作原理、ならびにこれらの任意の組み合わせが予測可能である。
【0033】
特に単純かつ堅牢な設計により、弾力的な、および/または制振作用のある、ユニットは少なくとも1つの可塑性要素、特にゴム要素、を含むことが好ましい。特に、弾力的な、および/または制振作用のある、ユニットは、特に、少なくとも1つのゴム層ばねを含むことができる。これにより、積層方向への剛性が高く、積層方向に対して直角方向への剛性が低い特に好都合な剛性特性を実現できる。
【0034】
横分離装置のみならず、傾斜機構も任意の適切な方法で構成可能である。したがって、例えば、作業空間が対向結合された2つの複動式液圧シリンダを公知の方法で(車両長手軸に対して垂直に延在する平面における)その車体側の結合箇所を車両の中心側に変位させて、設けることができる。この単純かつ堅牢な構成により特に有利な本発明による車両の変形例では、傾斜機構は、従来の横揺れ支持装置のように、コンロッドを車両の中心側に傾斜させて設けられる。したがって、この傾斜機構は、好ましくは少なくとも1つのトーション要素と、2つのピボットレバーと、2つのコンロッドとを含み、トーション要素は車両横方向に延在し、2つのピボットレバーは互いに離隔されて、特にトーション要素の2つの端部の領域において、トーション要素に固定され、コンロッドは各ピボットレバーの自由端に接続される。2つのコンロッドは、車体側に向いたそれぞれの端部において、走行装置側に向いたそれぞれの端部から、車両前後方向中心面側に変位される。
【0035】
この場合、好ましくは、横分離ユニットは、何れの場合も、車両横方向に弾力的なピボットレバーの区間を少なくとも1つ含む。この弾力的な区間は、板ばねのように構成されたピボットレバーの少なくとも1つの区間によって形成可能である。これにより、特に省スペースな横分離を実現可能である。さらに、この弾力的な区間は、好ましくは、車両横方向に作用する平行ガイダンスのように配置された少なくとも2つの板ばね要素によって形成され、横剛性の特に好都合な特性を実現するために、少なくとも1つの制振要素、特にゴム要素、をこの2つの板ばね要素の間に配置可能である。
【0036】
本発明は、車
両の走行装置とその上に支持された車体との間に配置される傾斜機構であって、上記の特徴と利点とを有する横分離装置を備えた傾斜機構として形成された傾斜機構にさらに関する。したがって、この点に関しては、上記の説明が単に引用される。
【0037】
本発明の他の好適な変形例は、従属請求項および添付図面を参照しての以下の好適な実施形態の説明に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明による傾斜機構の好適な一実施形態を有する本発明による車両の好適な一実施形態の概略断面図である。
【
図3】本発明による傾斜機構の別の好適な実施形態の概略斜視図である。
【
図4】本発明による傾斜機構の別の好適な実施形態の概略斜視図である。
【
図5】本発明による傾斜機構の別の好適な実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1の実施形態
鉄道車両101の形態の本発明による車両の第1の好適な実施形態を
図1及び
図2を参照して以下に説明する。
【0040】
車両101は車体102を備え、車体102は、何れの場合も、その2つの端部の領域が台車103の形態の走行装置上に支持される。ただし、本発明は車体が1つの走行装置上にのみ支持される他の構成とも併用可能であることを理解されたい。
【0041】
以下の説明の理解を容易にするために、(台車103の車輪支持面によって事前に決まる)車両座標系x、y、zが各図に示されている。この座標系において、x座標は鉄道車両101の前後方向を示し、y座標は鉄道車両101の横方向を示し、z座標は鉄道車両101の高さ方向を示す。
【0042】
台車103は車輪セット103.1、103.2の形態の2つの車輪ユニットを備え、その上に台車枠103.4が何れの場合も一次ばね装置103.3を介して支持される。次に車体102は、二次ばね装置103.5を介して台車枠103.4上に支持される。一次ばね装置103.3および二次ばね装置103.5は、簡略化のためにコイルばねとして
図1に示されている。ただし、一次ばね装置103.3および二次ばね装置103.5は適切な任意のばね機構にしうることを理解されたい。特に、二次ばね装置103.5は、十分に周知の空気ばね機構などであることが好ましい。
【0043】
図2は、車両101の詳細として、傾斜機構104を斜視図で示している。以下により詳細に説明するように、傾斜機構104は、各台車103の領域において、車体102に接続された台車枠103.4と車体トラバース(より詳細には図示せず)との間で、二次ばね装置103.5に運動学的に平行に働く。
【0044】
特に、
図2から分かるように、傾斜機構104は十分に周知の横揺れ支持装置105を備える。横揺れ支持装置105は、一方では台車枠103.4に接続され、もう一方では車体102に接続される。
【0045】
図2から分かるように、横揺れ支持装置105は、第1のピボットレバー105.1の形態の第1のトーションアームと第2のピボットレバー105.2の形態の第2のトーションアームとを備える。2つのレバー105.1および105.2は、車両101の前後方向中心面(xz平面)の両側に設けられ、何れの場合も横揺れ支持装置105のトーションシャフト105.3の両端に回転不能に固定される。トーションシャフト105.3は車両101の横方向(y方向)に延在し、台車枠103.4に接続された軸受ブロック105.4に回転自在に取り付けられる。第1のコンロッド105.5は第1のレバー105.1の自由端に結合され、第2のコンロッド105.6は第2のレバー105.2の自由端に結合される。横揺れ支持装置105は、この2つのコンロッド105.5、105.6を介して車体102の車体トラバースに関着される。
【0046】
図1および
図2は、湾曲していない直線軌道106上の走行によってもたらされる車両101の中立姿勢における状態を示している。この中立姿勢において、本例においては、2つのコンロッド105.5、105.6は、それぞれの(車体102に結合される)上端が車両101の高さ軸(z軸)に対して車両の中心に向かって変位され、かつそれぞれの長手軸が、車両の前後方向中心面(xz平面)に位置する点MPにおいて交差するように傾斜して
図1の断面(yz平面)に延在する。コンロッド105.5、105.6は、十分に公知の方法で、(中立姿勢において)車両長手軸101.1に平行に延在する横揺れ軸を規定する。この横揺れ軸は、点MPを通って延在する。換言すると、コンロッド105.5、105.6の長手軸の交点MPは、この横揺れ軸を中心とした車体102の横揺れ運動の瞬間回転中心を形成する。
【0047】
横揺れ支持装置105は、十分に公知の方法で、車両の両側の二次ばね装置103.5の同期圧縮を可能にすると同時に、横揺れ軸および瞬間回転中心MPを中心とした純粋な横揺れ運動を防止する。さらに、特に
図1から分かるように、コンロッド105.5、105.6の傾斜により、横揺れ軸および瞬間回転中心MPを中心とした横揺れ運動と車両横軸(y軸)方向への横運動とが組み合わされた移動を伴う運動学が(
図1に破線の輪郭106で示されているように)横揺れ支持装置105により事前に規定される。このコンテキストにおいては、交点MPひいては横揺れ軸は、原則として、コンロッド105.5、105.6によって事前に規定された運動学により、中立姿勢からの車体102の変位に伴い横にずれることを理解されたい。
【0048】
車体102の横揺れ軸および瞬間回転中心を中心とした横揺れ角度を能動的に調整するために、車両101は、本例においては、このために必要な調整移動をもたらすためのアクチュエータを(
図1に破線の輪郭107で示されているように)含むことができる。この目的のために、アクチュエータ107は台車枠103.4に、さらには車体102に、固定される。
【0049】
特に
図1から分かるように、横揺れ軸と瞬間回転中心MPとは、高さ方向において、車体102の重心SPに相対的に近い位置にある。この結果、従来の車両においてはシステムが横方向に剛性になるため、このような従来の車両においては、傾斜時の乗り心地の低下は別として、とりわけ乗客にとっての振動時の乗り心地に関する欠点を受け入れる必要がある。
【0050】
また、従来の車両においては、車両横方向へのこのような剛性の運動学は、鉄道車両の2つの走行装置の結合を生じさせるため、走行装置に対する車体の回転振れ移動により、捩れが車体に発生し、これにより輪重抜けを招くおそれがあり、脱線防止に悪影響を及ぼしうる。従来の二階建て車両の場合、さらに瞬間回転中心MPが車両の上部デッキに極めて近い位置にあるため、結果として、特に上部デッキにおける乗り心地を著しく低下させる。
【0051】
従来の車両のこれらの欠点を解消するために、傾斜機構104の横揺れ支持装置105は、横分離装置105.7を備える。この横分離装置105.7は、台車枠103.4への横揺れ支持装置105の接続領域に配置される。
【0052】
横分離装置105.7は、軸受ブロック105.4の2つの横分離ユニット105.8によって形成される。各横分離ユニット105.8は何れの場合もゴム層ばね105.9を備え、このゴム層ばね105.9は台車枠103.4に接続される軸受ブロック105.4のベースを形成する。
【0053】
ゴム層ばね105.9は、その積層方向が車両高さ方向(z方向)に延在するように構成される。したがって、ゴム層ばね105.9は、比較的低い横剛性を車両横方向に有する一方で、比較的高い剛性を車両高さ方向に有する。本例において、ゴム層ばね105.9の横剛性は、車両高さ方向のその剛性の約20%である。ただし、本発明の他の変形例においては、上記と異なるこの2つの剛性タイプ間の関係をゴム層ばね105.9の特性によって選択することも可能であることを理解されたい。
【0054】
本例において、それぞれのゴム層ばね105.9の横剛性は約1kN/mmであるので、横分離装置105.7の総横剛性は約2kN/mmである。ただし、本発明の他の変形例においては、必要に応じて他の横剛性値も選択可能であることを理解されたい。特に、ほぼ0kN/mmの横剛性も予測可能である。
【0055】
ゴム層ばね105.9の使用は、本発明の意味における結合要素ならびに軸受要素を極めて省スペースな方法で形成するという利点もある。このように、ゴム層ばね105.9は、軸受および(制限内での)ガイダンス機能を果たすほか、台車枠103.4への傾斜機構104の弾性結合も行う。
【0056】
ゴム層ばね105.9は、本例においては、車両前後方向にも相応に低い剛性を有する。ただし、本発明による車両の他の変形例においては、対応するガイダンスが、例えば車両前後方向への移動を制限する(車両前後方向の前部および後部に位置する)ストップ手段を介して、実現可能であることも予測されうることを理解されたい。このようなガイダンスは、ゴム層ばねのV字形構成によっても実現可能である。
【0057】
ゴム層ばね105.9は、(可塑性材料におけるその内部摩擦により)制振装置の機能をさらに具備する。また、ゴム層ばね105.9は、その設計によっては、絶えず増加する、または場合によっては漸増さえする、抵抗を横振れに対してもたらす。これは、相対的に小さい横衝撃(すなわち車両横方向への衝撃)を問題なく即座に吸収可能である一方で、より大きい横衝撃を比較的滑らかに(例えば、ストップ手段などに影響を与えずに)消散可能であるため、走行時の乗り心地にプラスの効果を有する。
【0058】
台車103に対する車体102の車両横方向への追加の横変位可能性が横分離装置105.7によって傾斜機構104に導入される。車両横方向へのゴム層ばね105.9の横変位可能性が制約されない傾斜機構104の総横剛性は第1の横剛性に対応し、車両横方向へのゴム層ばね105.9の横変位可能性が抑制される場合の傾斜機構105.7の総横剛性は第2の横剛性に対応する。本例において、この第1の横剛性は第2の横剛性の20%未満であり、この結果として振動時の乗り心地に関して特に有利な特性を実現可能である。ただし、本発明の他の変形例においては、上記と異なる第1および第2の横剛性間の関係をゴム層ばね105.9の特性によって調整することも可能であることを理解されたい。
【0059】
横分離装置105.7によって傾斜機構104に導入されるこの追加の横弾性により、一方では、このような横分離装置のない従来の車両に比べ、振動時の乗り心地が向上する。また、台車103に対する車体102の回転振れを、追加の捩れを車体102に生じさせることなく、横分離装置105.7において調整可能である。これにより、さらに乗り心地および振動挙動を特に車体の上部において改善可能である。これは、特に二階建て鉄道車両の場合に有利である。
【0060】
本例において、ゴム層ばね105.9は、軸受ブロック105.4のベース上に配置される。ただし、本発明の他の変形例においては、ゴム層ばねが各軸受ブロック105.4に一体化されることも予測されうることを理解されたい。これにより、例えば、相応に円筒形のゴム層ばねがトーションシャフト105.3とそれぞれの軸受ブロック105.4の軸受胴との間に導入されることが予測されうる。これにより、特にコンパクトで省スペースの構成を実現可能である。
【0061】
第2の実施形態
本発明による傾斜機構204の別の有利な実施形態が
図3に示されている。傾斜機構204は、その基本的な設計および機能において、この場合は、
図1および
図2の傾斜機構104に対応し、特に車両101において傾斜機構104の代わりに使用可能であるので、ここでは違いのみを説明する。特に、同一の構成要素には同じ参照符号が付与され、同様の構成要素には値100を加えた参照符号が付与されている。以下の説明において特に明記されない限り、これらの構成要素の特徴、機能、および利点に関しては、第1の実施形態に関連した上記説明が引用される。
【0062】
図1および
図2の実施形態との違いは、横分離装置205.7の設計にある。この実施形態においては、各軸受ブロック205.4は台車枠103.4に剛結合される一方で、トーションシャフト105.3を車両横方向に(十分に大きなストロークにわたって)自由に変位可能に支持し、ひいては本発明の意味において傾斜機構204の軸受要素を形成する。
【0063】
本例において、横分離装置205.7の横剛性を規定し、傾斜機構204の横運動に対して相応な抵抗を加える弾性結合要素は、第1のレバーアーム105.1の領域で接続される独立ばね205.10によって形成される。このばね205.10は他端で台車枠103.4に接合され、これにより後者に接触して支持される。
【0064】
ただし、本発明の他の変形例においては、結合要素の任意の異なる配置を選択可能であることを理解されたい。特に、結合要素を軸受ブロック205.4の領域に配置し、場合によっては後者によって支持可能である。
【0065】
第3の実施形態
本発明による傾斜機構304の別の有利な実施形態が
図4に示されている。傾斜機構304は、その基本的な設計および機能において、この場合は、
図1および
図2の傾斜機構104に対応し、特に車両101において傾斜機構104の代わりに使用可能であるので、ここでは違いのみを説明する。特に、同一の構成要素には同じ参照符号が付与され、同様の構成要素には値200を加えた参照符号が付与されている。以下の説明において特に明記されない限り、これらの構成要素の特徴、機能、および利点に関しては、第1の実施形態に関連した上記説明が引用される。
【0066】
図1および
図2の実施形態との違いは、単に横分離装置305.7の配置にある。この実施形態においては、各軸受ブロック305.4は台車枠103.4に剛結合され、トーションシャフト105.3を車両横方向にも固定する。各横分離ユニット305.8は、ゴム層ばね305.9によって形成される。ゴム層ばね305.9は、一方では車体102の車体トラバースに結合され、他方ではコンロッド105.5および105.6に結合される。ゴム層ばね305.9は第1の実施形態のゴム層ばね105.9と同一に形成されるので、その特性に関しては特に上記コメントが引用される。
【0067】
第4の実施形態
本発明による傾斜機構404の別の有利な実施形態が
図5および
図6に示されている。傾斜機構404は、その基本的な設計および機能において、この場合は、
図1および
図2の傾斜機構104に対応し、特に車両101において傾斜機構104の代わりに使用可能であるので、ここでは違いのみを説明する。特に、同一の構成要素には同じ参照符号が付与され、同様の構成要素には値300を加えた参照符号が付与されている。以下の説明において特に明記されない限り、これらの構成要素の特徴、機能、および利点に関しては、第1の実施形態に関連した上記説明が引用される。
【0068】
図1および
図2の実施形態との違いは、ここでも横分離装置405.7の設計にある。この実施形態においても、各軸受ブロック305.4は台車枠103.4に剛結合され、トーションシャフト105.3を車両横方向にも固定する。他方、各横分離ユニットは、第1のレバーアーム405.1に関して以下に説明するように、(同一形状の)レバーアーム405.1および405.2の側方に柔軟な区間405.8によって形成される。
【0069】
図6から分かるように、レバーアーム405.1は、この目的のために、車両横方向に互いに離隔された2つの板ばね形状の区間405.11を備え、その(互いにほぼ平行に配置された)延長面は(
図6に示されている無負荷状態において)トーションシャフト105.3のピボット軸に対して直角に延在する。したがって、各区間405.11は、相応に大きい捩りモーメントをトーションシャフト105.3に加えることができる一方で、各区間405.11は、それぞれの主延長面に対して直角に、ひいては車両横方向に、弾性的に形成されているため、横分離装置405.7の横弾性を保証する。
【0070】
レバーアーム405.1内の平行ガイダンスは、2つの板ばね405.11の平行配置によって実現される。ただし、本発明の他の変形例においては、単一の対応する板ばね形状の区間でも十分でありうることを理解されたい。同様に、
図6に破線の輪郭408によって示されているように、2つを超える数の板ばね形状の区間を設けることも可能である。
【0071】
さらなる制振を達成するために、
図6に二点鎖線の輪郭409によって示されているように、弾性制振要素、例えばゴム要素など、を2つの板ばね405.11の間に配置可能である。
【0072】
上では、本発明を鉄道車両の例のみを用いて説明した。ただし、本発明は、何れか他の種類の車両にも使用可能であることを理解されたい。