(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した技術では、十分に省電力化を図れないという問題があった。当該問題を以下に詳細する。
【0009】
特許文献1に記載の方法を詳細に説明する。当該方法では、無線基地局の位置情報を基に算出した無線基地局間の距離に応じて、省電力制御を実施する無線基地局を選択する。そして、当該無線基地局における送信電力の低下率の絶対値と、周辺無線基地局における送信電力の上昇率の絶対値と、が一致するように制御している。しかし、伝搬環境が複雑なエリアでは、無線基地局間の距離は必ずしも伝搬損失と強い相関が無い。そのため、伝搬環境を考慮せずに無線基地局間の物理的距離のみに応じて省電力制御を実施した場合、問題が生じる。具体的には、カバレッジが相補関係にある隣接無線基地局を同時に省電力制御の対象に選択してしまう恐れや、周辺無線基地局における送信電力の上昇率が不十分となる恐れがある。このような問題が生じた場合、省電力制御に伴う無線品質の劣化を補償することができず、通信不可能なエリアが生じてしまう。
【0010】
さらに、特許文献1の方法では、省電力制御を行う無線基地局の周辺に位置する無線基地局の送信電力の増加量を考慮していない。そのため、周辺の無線基地局においては消費電力が大幅に増加する場合がある。そのため、通信システム全体として、電力の削減が十分に行われない恐れがある。
【0011】
続いて、特許文献2に記載の方法を詳細に説明する。当該方法では、無線端末から送信される無線品質の測定結果を基に、処理対象のセルのカバレッジ内の無線品質が所定値を満たす場合にのみ、当該セルの省電力制御を自律的に行っている。一般に、省電力制御はトラフィック負荷が低い時間帯に実施される。無線セル毎のトラフィック負荷の測定周期、及び無線品質の信頼性を確保するための測定周期の制約により、省電力制御が可能となるタイミングは限られる。したがって、自セルに対する自律的な省電力制御のみでは、制御タイミングが限られ、かつシステム内の省電力制御が可能な無線セルの全てに対して省電力制御を行うことが困難である。そのため、通信システム全体として、電力の削減が十分に行われない恐れがある。
【0012】
非特許文献2には、無線端末から送信される無線品質の測定結果を、無線基地局の上位装置であるネットワーク管理装置等に通知することが規定されている。ここで、省電力制御に伴う無線品質の変化を正確に推定するためには、全ての無線セルから十分な測定結果を収集する必要がある。そのため、非特許文献2に記載の通知手法を用いた場合、収集制御に伴うシグナリングとデータトラフィックの増大が問題となる。
【0013】
非特許文献3には、無線基地局の休止制御に際して、自無線基地局が休止状態に移行する旨を周辺無線基地局に通知することが規定されている。しかしながら、非特許文献3にはこの休止制御に伴うカバレッジ劣化に関する情報を通知することが規定されていない。さらに、無線基地局の休止制御に伴う無線品質の変化が考慮されていないため、カバレッジ(通信が確保されるエリア)が劣化する恐れがある。さらにまた、無線基地局が自律的に休止制御の判断を行う場合、適切な無線基地局が省電力制御の対象とならない場合がある。この場合、休止可能な無線基地局数が減少し、電力の削減が十分に行われない恐れがある。
【0014】
本発明は、上述した技術の問題点を鑑みてなされたものであり、無線品質の劣化を極力抑制するとともに、無線通信システム全体として効率的に省電力化を図ることができる処理装置、無線通信方法、及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる処理装置の一態様は、
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御手段と、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御手段が収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定手段と、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する手段と、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象選択手段と、を備えるものである。
【0016】
本発明にかかる無線通信制御方法の一態様は、
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御ステップと、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御ステップにて収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する通知ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象ステップと、を備えるものである。
【0017】
本発明にかかるプログラムの一態様は、
コンピュータに、
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御ステップと、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御ステップにて収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する通知ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【0018】
本発明にかかる通信システムの一態様は、
相互に通信可能な第1の装置と第2の装置を備える通信システムであって、
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御手段と、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御手段が収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定手段と、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する通知手段と
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象選択手段と、を備え、
前記測定制御手段、前記無線品質推定手段、前記通知手段、及び前記省電力対象選択手段は、前記第1または前記第2の装置のいずれかに備えられている、ものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、無線品質の劣化を極力抑制するとともに、無線通信システム全体として効率的に省電力化を図ることができる処理装置、無線通信方法、及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる無線通信システムの構成を示すブロック図である。無線通信システム内には、ネットワーク管理装置103が配置されている。ネットワーク管理装置103は、コア網101及び無線アクセス網102と有線リンク112、113を介して接続している。ネットワーク管理装置103は、ネットワークの通信状態を管理し、当該状態に応じた保守及び運用を行う。
【0022】
無線基地局120、121、及び122は、それぞれ無線セル140、141、142を管理する。なお、無線基地局は、複数の無線セルを管理しても良い。無線基地局の配置数等は、任意の数とすることができる。
【0023】
無線端末130〜133は、当該無線端末が接続する無線セル140(または141)を管理する無線基地局120(121)と無線リンクを介して通信を行う。無線端末130〜133は、無線品質を測定する機能を備え、定期的または任意の測定トリガに応じて無線品質の測定を行う。無線端末130〜133は、測定した無線品質を接続する無線基地局に送信する。なお、
図1では4台の無線端末を示したが、無線セルに属する無線端末の台数は任意の台数である。
【0024】
なお、以下の説明では理解の容易化のため、省電力制御に伴う無線品質及びトラフィック負荷の変化の推定処理(詳細は後述する。)は、全て無線基地局(120、121)が行うものとする。ネットワーク管理装置103は、長期的な運用データの保持のみを行うものと推定する。なお、無線端末からの無線品質の測定結果の収集の際に、シグナリング、データトラフィックの増大が問題とならない場合には、ネットワーク管理装置103が上述の推定処理を行っても良い。
【0025】
図2は、無線基地局120の構成を示すブロック図である。なお、無線基地局121、122についても同様の構成を持つ。無線基地局120は、基地局情報記憶装置200と、無線品質統計情報記憶装置201と、送受信部210と、測定制御部211と、無線品質推定部212と、省電力対象選択部213と、を備える。
【0026】
基地局情報記憶装置200は、送受信部210から入力された各隣接無線基地局の情報を基に作成した基地局情報300を記憶する記憶装置である。
図3は、基地局情報300の構成の一例を示す図である。基地局情報300は、基地局ID301と、セルID302と、トラフィック負荷303と、最大送信電力304と、アンテナ構成305と、を備える構成である。アンテナ構成305は、図示するように、例えば高さ、指向性パターン、方位角、及び仰角から構成される。
【0027】
トラフィック負荷303の値は、隣接無線基地局121、122から送信される単位時間毎の各無線セルのトラフィック負荷を示す。このトラフィック負荷303の値は、隣接基地局から直接送信、またはネットワーク管理装置103から送信されて更新される。最大送信電力304と、アンテナ構成305は、設定値が変更された際に、隣接無線基地局から直接送信、またはネットワーク管理装置103から送信されて更新される。
【0028】
再び、
図2の説明を行う。送受信部210は、隣接無線基地局や無線端末130、131と通信を行う処理部である。具体的には、送受信部210は、後述する測定情報310の受信、無線品質統計情報記憶装置201内の情報の送信等を行う。
【0029】
測定制御部211は、送受信部210を介して、無線端末(130、131)から無線品質の測定結果を収集する。無線品質の測定結果には、基準信号受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)、基準信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、希望波信号電力対干渉波信号電力比(SIR:Signal to Interference Ratio)、希望波信号電力対干渉及び雑音電力比(SINR:Signal to Interference plus Noise power Ratio)の少なくとも1つを含む。
【0030】
無線品質推定部212は、省電力制御の対象となり得る無線セルの集合(以下、無線セルセットと呼称する。)を全て抽出し、それぞれに対して省電力制御を実施した場合の無線品質及びカバレッジ劣化率を算出する処理部である。以下、詳細を説明する。
【0031】
無線品質推定部212は、定期的に基地局情報記憶装置200から無線セル毎のトラフィック負荷を取得し、低トラフィック負荷で稼働される無線セルが所定割合を超過した場合に省電力制御後の無線品質を推定する。はじめに、無線品質推定部212は、送受信部210を介して無線端末(130、131)から送信された無線品質の測定結果を取得する。さらに、無線品質推定部212は、基地局情報記憶装置200から自基地局及び隣接無線基地局が構成する無線セル毎のトラフィック負荷を取得する。
【0032】
図4を参照して、無線端末から送信された無線品質の測定結果(測定情報310)について説明する。
図4(A)、(B)に示すように、測定情報310には、RANK311、RSRP値312、及びセルID313が規定されている。
図4(A)は、無線端末130から送信された測定情報を示している。
図4(B)は、無線端末131から送信された測定情報を示している。図示するように、無線端末毎に異なる測定結果が送信される。また、測定する時間等によってもその内容は変化する。
【0033】
測定情報310では、RSRP値312が高い(無線品質が良好)順序でRANK311が割り当てられる。RANK#1に該当する無線セルは、当該測定情報310を送信した無線端末のサービングセル(Serving Cell)である。それ以降のRANK#2〜7に該当する無線セルは、当該測定情報310を送信した無線端末のネイバーセル(Neighbor Cell)である。これらの無線セルのいずれかに対して省電力制御を行った場合、サービングセル内の無線品質(
図4ではRSRP値)が変化する。
【0034】
なお、
図4の例では、測定値として基準信号受信電力(RSRP値)を用いているが、必ずしもこれに限られず、基準信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、希望波信号電力対干渉波信号電力比(SIR:Signal to Interference Ratio)、希望波信号電力対干渉及び雑音電力比(SINR:Signal to Interference plus Noise power Ratio)を用いても良い。
【0035】
再び無線品質推定部212の動作を説明する。無線品質推定部212は、取得した無線品質の測定結果(測定情報310)と、無線セル毎のトラフィック負荷と、から1以上の無線セルに対して省電力制御を実施した場合の周辺セル(省電力化を実施した無線セルに関連(たとえば隣接)する無線セル)の無線品質の変化及びトラフィック負荷を推定する。詳細を以下に記載する。
【0036】
無線品質推定部212は、無線セルセットを作成する。無線品質推定部212は、例えば
図4に示す測定情報310からセルID("A"〜"G","X")を抽出し、そこから作成できる全ての集合(無線セルセット)を作成する("X"、"A"、"B"、、、"X,A"、"X,B"、"X,C"、、、"X,A,B"、"X,A,C"、、、)。無線品質推定部212は、無線セルセットの各々に対応する、無線品質の推定結果(後述する
図5の無線品質統計情報)を生成する。例えば、無線品質推定部212は、無線セルセット("X")を抽出し、無線セル"X"に省電力化を行った場合の各無線セルの無線品質及び接続切り替え数を推定する。ここで、接続切り替え数とは、無線セル"X"に省電力化を行った場合に、対象となる無線セルに接続を切り替える無線端末の数を示す。例えば、無線セル"A"の接続切り替え数とは、無線セル"X"に省電力化を行った場合に無線セル"A"に接続を切り替える無線端末の数である。無線品質推定部212は、推定した各無線セルの無線品質及び接続切り替え数を統計的に処理し、無線品質統計情報記憶装置201に格納する。無線品質統計情報記憶装置201に格納する情報は、
図5を参照して後述する。
【0037】
無線品質統計情報記憶装置201に格納された統計情報は、送受信部210により隣接無線基地局に適宜送信される。なお、無線品質統計情報記憶装置201に格納された統計情報は、送受信部210によりネットワーク管理装置103(
図1)に送信されても良い。
【0038】
図5は、無線品質統計情報記憶装置201が保持する無線品質統計情報400の詳細を示す図である。
図5の前提として、各無線端末はSINR値を測定情報として送信している。無線品質統計情報400には、複数、詳細には無線セルセットの総数と同数のSINR統計情報が含まれる。なお、
図5では、説明の便宜のため、無線セル"X"を停止した場合のSINR統計情報410と、無線セル"X"及び"A"を停止した場合のSINR統計情報420のみを示している。
【0039】
SINR統計情報(410、420)には、区分けされたSINR値(411、421)、不感地情報(412、422)、統計値(413、423)が規定されている。以下、SINR統計情報410について説明する。
【0040】
SINR値411は、複数の区分(
図5では6つの区分)に分かれている。不感地422のβX0は、無線セル"X"に対する省電力制御を実施した場合に接続ができなくなる無線端末の数、換言すると無線セル"X"とのみ接続できる無線端末からの測定結果の数を示している。
【0041】
無線セル"X"に接続していた無線端末は、無線セル"X"に対する省電力制御を実施した際に、他の無線セルに接続を切り替えることがある。一般的に、接続中の無線セル"X"に対して省電力制御を実施した場合、無線セル"X"に接続中の無線端末は、それぞれ2番目に無線品質が良い無線セルに接続を切り替える。例えば、
図4(A)に示す測定情報310を送信した無線端末は、無線セル"X"を休止した場合には無線セル"A"に接続を切り替える。同様に、
図4(B)に示す測定情報310を送信した無線端末は、無線セル"X"を休止した場合には無線セル"B"に接続を切り替える。無線品質推定部212は、各無線端末から送信された測定情報を基に無線セル"X"休止時のトラフィック負荷の変化について推定する。
【0042】
無線品質推定部212は、推定したトラフィック負荷から各無線端末の無線品質を推定する。例えば、無線品質推定部212は、無線セル"X"から無線セル"A"に接続を切り替える無線端末(1)のSINR値を"−2.0dB"と推定する。当該推定は、一般に、この無線端末が送信してきた測定情報310のRANK#2に位置するセルのSINR値を用いる。無線品質推定部212は、この算出結果より、βA2の値をカウントアップする。無線品質推定部212は、接続切り替えを行う全ての無線端末について当該推定値を算出し、当該推定値を統計値423に反映させる。無線品質推定部212は、接続切り替えを行う全ての無線端末について推定値の算出を行うことによりSINR統計情報410を生成する。無線品質推定部212は、測定情報の総報告数と、βX0と、の比を無線セル"X"のカバレッジ劣化率の推定値とする。さらに、所定の閾値を設け、その通信品質を満たさない場合には、カバレッジを満たさないと判定することもできる。所定の閾値をSINR>=−6[dB]とする場合、無線品質推定部212は、以下の式から無線セル"X"に省電力制御を実施した場合の無線通信システム(無線セル"X"及び無線セル"X"に関連する無線セル)全体のカバレッジ劣化率として算出する。
(βX0+βA0+βB0+βC0+βD0+βE0+…)/全報告数
【0043】
なお、上述したように省電力制御実施後の無線品質の推定尺度として、SINR値以外の品質指標を使用しても良い。
図6は、RSRP値の推定値を基に算出した無線品質統計情報400を示している。
図6に示す無線品質統計情報400には、無線セル"X"に対して消費電力制御を行った場合のRSRP統計情報430と、無線セル"X"、"A"、"B"、"C"に対して消費電力化を行った場合のRSRP統計情報440とが示されている。ここで、所定の閾値をRSRP>=−118[dBm]とする場合、無線品質推定部212は、上記した方法と同様の方法で無線通信システムのカバレッジ劣化率を算出する。
【0044】
なお、消費電力制御後の無線品質の推定尺度として基準信号受信品質(RSRQ)、受信電界強度(RSSI)、希望波信号電力対干渉波信号電力比(SIR)等を用いても良いことは勿論である。
【0045】
省電力対象選択部213は、無線品質統計情報記憶装置201から無線品質統計情報400、及びトラフィック負荷の変化率を取得する。そして、省電力対象選択部213は、取得した無線品質統計情報400及びトラフィック負荷の少なくとも一方を基に省電力化を行う無線基地局を選択する。
【0046】
省電力対象選択部213は、例えば無線品質統計情報400からカバレッジ劣化率を抽出する。そして、省電力対象選択部213は、カバレッジ劣化率が所定値以下となる無線セルセットのうち、最も多くの無線基地局を省電力制御できる無線セルセットを省電力制御の対象として選択する。また、省電力対象選択部213は、無線品質も考慮した上で省電力制御を行う無線基地局を選択しても良い。
【0047】
省電力対象選択部213は、自基地局を省電力化対象の無線基地局であると選択した場合には、既知の方法で自基地局の省電力制御を行う。
【0048】
以上、本実施の形態にかかる無線通信システム、及び無線基地局の構成を述べたが、無線基地局の送受信機能(送受信部210)、無線端末の送受信機能等は、本発明における当業者にとって良く知られている。さらに、本発明とは直接的に関係しないため、その詳細な構成の説明は省略する。
【0049】
次に、
図7を参照して本実施の形態にかかる無線基地局120の動作を説明する。
図7は、本実施の形態にかかる無線基地局120の動作を示すフローチャートである。
【0050】
無線品質推定部212は、基地局情報記憶装置200から無線セル毎のトラフィック負荷を取得する(S101)。そして、無線品質推定部212は、低トラフィック負荷で稼働する無線セルが所定の割合を超過した場合に、省電力制御後の無線品質の推定処理を開始する(S102:Yes)。
【0051】
無線品質推定部212は、無線品質の推定処理の開始後に、省電力制御の候補となる無線セルセットを全て抽出する(S103)。そして、無線品質推定部212は、無線セルセットを一つずつ選択する(S104)。
【0052】
次に、無線品質推定部212は、選択した無線セルセットに含まれる無線セルの各々に省電力制御をした場合の無線セル毎のトラフィック負荷を推定する(S105)。この推定は、省電力制御後に無線セルの接続を切り替える無線端末の台数に応じて算出する。また、無線品質推定部212は、上述した方法によりカバレッジ劣化率を算出する。
【0053】
次に、無線品質推定部212は、選択した無線セルセットに含まれる無線セルの各々に省電力制御を実施した場合の各無線端末の無線品質を推定する(S106)。無線品質推定部212は、推定値を無線品質統計情報記憶装置201内の無線品質統計情報400に反映させる(S107)。
【0054】
全ての無線セルセットに対して上述の処理(S105〜S107)を行った後に、無線品質推定部212は、送受信部210を介して無線品質統計情報400を他の無線基地局等に送付する(S108)。また、省電力対象選択部213は、作成された無線品質統計情報400を基に省電力化を行う無線基地局を算出する(S109)。
【0055】
なお、無線端末がSINR値を算出できない場合であっても、RSRP値から省電力制御後のSINR値を算出する方法を以下に説明する。以下の(数1)において、γijは無線セルiにおいて測定結果jを送信した無線端末に関するSINR値を推定した値であり、Sijiはサービングセルiについて測定結果jから求められるRSRP値であり、Iijkはサービングセルを無線セルiとする無線端末が送信した測定結果jから求められるネイバーセルkのRSRP値であり、ρkはネイバーセルkのトラフィック負荷(0<=ρk<=1)であり、kTBFは熱雑音である。
【数1】
【0056】
このように(数1)を用いることにより、無線端末がSINR値を算出できない場合であってもRSRP値を算出可能であれば、無線品質推定部212は、SINR値を算出することができる。さらに、以下の(数2)を用いてRSRQ値Qijを合わせて算出しても良い。
【数2】
【0057】
続いて、本実施の形態にかかる無線通信システムの効果について説明する。上述したように、無線品質推定部212は、省電力制御実施後の無線品質、及びカバレッジ劣化率を推定している。省電力対象選択部213は、この無線品質、及びカバレッジ劣化率を参照して省電力制御の対象を選択するため無線品質等を考慮した適切な省電力制御対象を選択することができる。すなわち、本実施の形態にかかる無線通信システムは、省電力制御に伴う無線品質の劣化を極力抑制しながら省電力制御を実行することができる。
【0058】
また、上述したように、無線品質推定部212は、無線端末から送信された無線品質の測定結果に基づいて、作成し得る無線セルセットを全て作成している。さらに、無線品質推定部212は、各無線セルセットの省電力制御実施後の無線品質、及びカバレッジ劣化率を推定している。省電力対象選択部213は、この無線品質、及びカバレッジ劣化率を参照して省電力制御の対象を選択する。すなわち、省電力対象選択部213は、他の無線基地局の省電力制御後の状態を考慮して省電力化の対象を選択するため、無線通信システム全体での省電力化及び無線品質の劣化防止を図ることができる。
【0059】
さらに、無線品質推定部212は、上述したように推定した無線品質にかかる情報を他の無線基地局やネットワーク管理装置に通知、すなわち共有できるようにする。この通知により、ネットワーク全体としての通信量が圧縮され、ネットワーク負荷等が軽減される。これにより、無線通信システム全体でのシグナリングやデータトラフィックを抑制することができる。
【0060】
<実施の形態2>
次に本発明の第2の発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本実施の形態にかかる無線通信システムは、無線基地局単位で送信部の休止制御を行うことを特徴とする。なお、同一名及び同一符号を付した処理部は実施の形態1と基本的に同じ処理を行う。
【0061】
本実施の形態にかかる無線通信システム及び無線基地局120の基本構成は実施の形態1(
図1、
図2)と同様である。さらに、無線基地局120の基本動作は、
図7に示す動作と同様であるが、同一無線基地局に属する全ての無線セルに対して、同時に省電力制御を行う(たとえば送信部の休止制御を実施する)。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0062】
無線品質推定部212は、無線セルセットの作成において(
図7 S103)、同一無線基地局が構成する無線セルを一単位として無線セルセットを作成する。例えば、
図3に示すように基地局IDに"1"を持つ基地局が無線セルA〜Cを構成する場合、無線品質推定部212は、("A","B","C")という単位で無線セルセットを生成する。すなわち、無線品質推定部212は、("A","B","C")を含めた無線セルセット、または("A","B","C")を含めない無線セルセットのいずれかを作成する。そして、無線品質推定部212は、実施の形態1と同様の方法で省電力制御をした場合の無線品質を推定し、その推定結果を他の無線基地局に通知する。
【0063】
次に本実施の形態にかかる通信システムの効果について説明する。本実施の形態にかかる無線基地局120は、当該無線基地局が構成していた無線セルの全てについて省電力制御、好適には送信機能の休止制御を行う。すなわち、無線基地局120内の送受信部210内の無線セル間の共通ユニットを休止することができる。これにより、トラフィック負荷がかかっていない状態であっても固定的に消費されていた電力を削減することができ、無線通信システム全体の省電力性能をさらに向上できる。
【0065】
次に本発明の第3の発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本実施の形態にかかる無線品質推定部212は、作成する無線セルセットを限定、すなわち無線セルセットの総数を少なくすることを特徴とする。なお、図中において、同一名及び同一符号を付した処理部は、実施の形態1、2と基本的に同じ処理を行う。
【0066】
本実施の形態にかかる無線通信システム及び無線基地局120の基本構成は実施の形態1(
図1、
図2)と同様である。さらに、無線基地局120の基本動作は、
図7に示す動作と同様であるが、無線セルセットの作成処理(
図7S103)において、作成する無線セルセット数を限定する。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。以下のいずれかの方針に従って無線セルセットを作成する。
【0067】
(1) 自無線基地局が構成する無線セル(以下、自セルとも呼称する。)に対して省電力制御を実施した場合のカバレッジ劣化率が所定値を超える場合には、自セルを含む無線セルセットを作成しない(省電力制御の対象から除外する)。
(2) (1)を満たさない場合に、自セルと隣接関係にある周辺無線セル(以下、周辺セルとも呼称する。)を含む無線セルセットを作成しない(省電力制御の対象から除外する)。
(3) (1)を満たさない場合に、自セルと包含関係にある周辺セルを含む無線セルセットを作成する(省電力制御の対象候補に含める)。
【0068】
上記した(1)〜(3)について、
図8を参照して詳細に説明する。
図8は、本実施の形態にかかる無線品質推定部212の無線セルセットの作成動作(
図7S103相当)を示すフローチャートである。
【0069】
無線品質推定部212は、測定情報310からセルIDを抽出する(例えば
図4に示す測定情報310からセルID("A"〜"G","X")を抽出する)(S201)。なお、無線品質推定部212は、実施の形態2と同様に、同一基地局が構成する無線セルの単位で無線セルIDを抽出しても良い。
【0070】
次に、無線品質推定部212は、自セル(たとえば、
図3に示す基地局ID=1の基地局ではセルIDが"A"、"B"、"C"のいずれか)に対して省電力制御を行った場合のカバレッジ劣化率を実施の形態1と同様の方法で推定する(S202)。そして、無線品質推定部212は、推定したカバレッジ劣化率が所定値未満であるか否かを判定する(S203)。
【0071】
カバレッジ劣化率が所定値未満ではない(所定値以上である)場合(S203:No)、無線品質推定部212は、当該自セルを省電力制御の対象外と判断し、当該自セルを除外した無線セルセットを作成する(S204)。
【0072】
一方、カバレッジ劣化率が所定値未満である場合(S203:Yes)、無線品質推定部212は、自セルに対する省電力制御実施後に周辺セルに接続を切り替える無線端末の割合を算出する(S205)。この無線端末の接続切り替え先の割合から、無線品質推定部212は、無線セル間のカバレッジの隣接関係が判定できる。これと同時に、無線品質推定部212は、自セルと同時に省電力制御を実施した場合に大幅にカバレッジ劣化率が上昇してしまう無線セルを把握することができる。
【0073】
次に、無線品質推定部212は、各周辺セルの切り替え割合が所定範囲内であるか否かを判定する(S206)。例えば、この所定範囲は、10%以上90%未満等とする。無線品質推定部212は、所定範囲に入っている周辺セルを自セルと同時に省電力制御を出来ないと判定し(S206:No)、当該周辺セルを除外して無線セルセットを作成する(S207)。なお、ある周辺セルの切り替え割合が所定範囲の上限値を超える場合、当該周辺セルのカバレッジと自セルのカバレッジが大幅に重複していると判定できる。そのため、このような周辺セルは、省電力制御の対象とできる。このようにして、無線品質推定部212は、無線セルセットの総数を限定する。
【0074】
無線品質推定部212は、所定範囲に入ってない周辺セルを自セルと同時に省電力制御を出来ると判定し(S206:Yes)、自セル及び当該周辺セルにかかる無線セルセットを作成する(S208)。
【0075】
S203、S205〜S208の処理の具体例を
図9を参照して説明する。
図9は、無線セル"X"に対して省電力制御を行った場合の無線端末の切り替え割合を示す円グラフである。
図9では、無線セル"X"に省電力制御を行った場合、無線セル"X"に接続していた無線端末の40%が無線セル"A"に接続し、41%が無線セル"B"に接続し、7%が無線セル"C"に接続し、6%が無線セル"D"に接続し、5%が無線セル"E"に接続し、1%が接続できなくなる。したがって、カバレッジ劣化率の所定値(S203の閾値)が1%よりも大きい場合、無線セル"X"は省電力制御の対象(無線セルセットに含めることが可能)となる。さらに、所定割合(S206の所定範囲)が10%〜90%である場合、無線セル"A"及び無線セル"B"は無線セル"X"と隣接関係と判定され、無線セル"X"と同時に省電力制御を行う対象から除外される。
【0076】
次に、本実施の形態にかかる無線通信システムの効果について説明する。本実施の形態にかかる無線品質推定部212は、自セルに対する省電力制御後のカバレッジ劣化率、周辺セルへの接続切り替え割合を参照して、作成する無線セルセットの総数を限定している。これにより、無線品質推定部212が行う省電力制御後の推定処理の計算負荷、及び他の無線基地局等に送信する情報量を低減することができる。さらに、無線基地局120は、他の無線基地局やネットワーク管理装置に統計情報を通知する際のシグナリングやデータトラフィックを抑制でき、ネットワーク負荷を低減できる。すなわち、省電力制御を行う無線基地局の算出について高性能、高容量のコンピュータシステムを用いる必要が無くなり、ネットワーク負荷を低減させるとともに、上述の実施の形態1等と同様に無線通信システム全体の省電力化を達成することができる。
【0077】
<実施の形態4>
次に本発明の第4の発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本実施の形態にかかる無線基地局120は、トラフィック負荷推定部501を備え、トラフィック負荷推定部501は、省電力制御の実施に伴うトラフィック負荷の変化を無線セル毎に詳細に推定することを特徴とする。なお、図中において、同一名及び同一符号を付した処理部は、実施の形態1、2と基本的に同じ処理を行う。
【0078】
図10は、本実施の形態にかかる無線基地局120の構成を示すブロック図である。無線基地局120は、上述の
図2の構成に加えて、トラフィック負荷推定部501を備える。上述の無線品質推定部212は、省電力制御後の接続切り替え数を基にトラフィック負荷を推定していた。トラフィック負荷推定部501は、省電力制御後のより正確なトラフィック負荷を算出する処理部である。トラフィック負荷推定部501は、算出したトラフィック負荷を無線品質推定部212に供給する。以下に、トラフィック負荷推定部501の処理詳細を説明する。
【0079】
図11は、トラフィック負荷推定部501の処理の流れを示すフローチャートである。トラフィック負荷推定部501は、無線品質統計情報記憶装置201から統計情報(作成した無線セルセットの各々に対する省電力制御後のSINR推定値)を取得する(S301)。続いて、トラフィック負荷推定部501は、各無線セルのセル容量を算出する。詳細には、トラフィック負荷推定部501は、以下の(数3)を用いて算出対象の無線セルiのセル容量Ciを算出する。なお、γijとは、無線セルiにおける測定結果jについてのSINR推定値であり、無線セルiとは省電力制御の実施後にサービングセルとなるセルである。Ne(i)は、省電力制御の実施後に無線セルiについて収集した測定結果の集計数であり、Bは無線通信システムが利用する周波数帯域幅であり、αはシャノン限界に対して実装に依存した容量劣化分の近似係数である。
【数3】
【0080】
次にトラフィック負荷推定部501は、算出したセル容量(Ci)と、無線セルiにおける単位時間当たりの通信量(Di)を用いた(数4)から省電力制御実施後のトラフィック負荷の推定値ρiを算出する(S303)。通信量Diは、省電力制御の実施前の通信量と、省電力制御の実施後に無線セルiに接続を切り替えた無線端末の通信量と、から算出する。
【数4】
【0081】
なお、無線セルiのトラフィック負荷の推定値ρiは、測定または推定した省電力制御の実施前のセル容量Ci_pre、及びトラフィック負荷ρi_preを用いた(数5)から算出しても良い。
【数5】
【0082】
トラフィック負荷推定部501は、推定された無線セル毎のトラフィック負荷を無線品質推定部212に供給する。無線品質推定部212は、再度、供給されたトラフィック負荷を用いて
図7に示す推定処理を実行する(S304)。
【0083】
次に、本実施の形態にかかる無線通信システムの効果について説明する。上述したように、無線基地局120は、トラフィック負荷推定部501を備え、トラフィック負荷推定部501は、省電力制御の実施に伴うトラフィック負荷の変化を無線セル毎に詳細に推定している。この推定値は、省電力制御後の接続切り替え数のみならずセル容量等をも考慮して算出しているため、その推定精度が高い。無線品質推定部212は、トラフィック負荷推定部501から供給された無線セル毎のトラフィック負荷の推定値を用いて、前述の無線品質統計情報400を生成する。このため、省電力対象選択部213は、より正確に、無線品質の劣化を抑制しつつ効率的に省電力化が図れる無線セルを選択できる。さらに、このトラフィック負荷を参照することにより、無線セルの輻輳を回避することができる。無線セルの輻輳を回避できることにより、通信処理の失敗や無線品質の劣化を防ぐことができる。
【0084】
<実施の形態5>
次に本発明の第5の発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本実施の形態にかかる省電力対象選択部213は、省電力制御後の無線品質の推定値がいずれの無線セルでも所定値を満たし、かつ、いずれの無線セルでも輻輳が発生しない無線セルセットを省電力制御の対象として選択することを特徴とする。以下、本実施の形態にかかる無線品質評価部の処理の流れを
図12に示す。
図12は、本実施の形態にかかる省電力対象選択部213の処理の流れを示すフローチャートである。
【0085】
省電力対象選択部213は、無線品質統計情報記憶装置201から無線品質統計情報400、すなわち無線セルセット毎の省電力制御後の推定値を取得する(S401)。ここでは、
図5に示す無線品質統計情報400が保持されているものとする。省電力対象選択部213は、無線品質統計情報400に含まれる無線セルセットの各々に対する統計情報(SINR統計情報410、SINR統計情報420)を抽出する。省電力対象選択部213は、抽出した統計情報の各々に対して処理を行う(以下の説明ではSINR統計情報410を抽出した場合の処理を説明する。)。省電力対象選択部213は、SINR統計情報410からSINR値の下位(悪い)5%のSINR値を抽出し、それらの値が所定値を満たしているか否かを判定する(S402)。SINR値の下位(悪い)5%は、セル境界付近等に位置するユーザのSINR値を意味するものである。なお、上述の説明では、閾値を5%としたが必ずしもこれに限られず、例えば10%等の他の値であっても良い。
【0086】
さらに、省電力対象選択部213は、省電力制御の実施後の各無線セルのトラフィック負荷が所要値未満であるか否かを判定する(S403)。両条件(S402、S403)を満たす場合、省電力対象選択部213は、当該SINR統計情報410にかかる無線セルセットを省電力制御の対象として選択する(S404)。
【0087】
なお、両条件(S402、S403)を満たす無線セルセットが複数ある場合、省電力対象選択部213は、当該無線セルセットに含まれる無線セル数が最も多いものを選択する。また、当該無線セルに含まれる無線セル数が等しい場合、省電力対象選択部213は、SINR推定値の下位5%の値が最大である無線セルセットを選択する。なお、上述の説明では、SINR値を基に無線セルセットの選択を行ったが必ずしもこれに限られず、RSRP値を用いて同様の処理を行っても良い。
【0088】
次に本実施の形態にかかる無線通信システムの効果について説明する。上述したように、省電力対象選択部213は、省電力制御後の無線品質の推定値がいずれの無線セルでも所定値を満たし、いずれの無線セルでもトラフィック負荷が所定値未満である無線セルセットを省電力制御の対象として選択する。これにより、より確実に、省電力制御に伴う無線品質の劣化を抑止しつつ、省電力化の性能向上を図ることができる。
【0089】
<第6の実施の形態>
次に本発明の第6の発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本実施の形態にかかる無線品質推定部212は、無線端末からの測定結果が十分に収拾できない場合であっても前述の無線セルセットを作成できることを特徴とする。以下、本実施の形態にかかる無線品質推定部212の処理(
図7S103相当)を
図13を参照して説明する。なお、無線品質統計情報記憶装置201には、RSRPにかかる統計情報が逐次格納されていく。
【0090】
無線品質推定部212は、無線セルセットを作る際に、無線端末から送信された測定情報が所定数以上収集できなかった無線セルがあるか否かを判定する(S501)。そして、無線品質推定部212は、測定情報が所定数以上収集できなかった無線セルを全て選択する。例えば、ネットワーク全体のトラフィック負荷が低い時間帯においては、十分に測定情報が収集できない。
【0091】
無線品質推定部212は、選択した無線セルの各々に関する以前に推定した省電力制御実施後のRSRP推定値を取得する(S502)。ここで、無線品質推定部212は、トラフィック負荷が高い時間帯に推定したRSRP推定値を取得することが望ましい。ここで、トラフィック負荷が高い時間帯とは、一日で最も測定結果が多く収集された時間帯でも良く、単位時間当たりの集計数が所定値以上であった直近の時間帯でも良い。
【0092】
無線品質推定部212は、実施の形態1等と同様に無線セルセットの作成、省電力制御実施後の無線セルの品質推定値の算出等を行う。この際に、無線品質推定部212は、S502にて取得した推定値を無線セルの品質推定値として用いることができる。
【0093】
次に本実施の形態にかかる無線通信システムの効果について説明する。上記したように、無線品質推定部212は、所定数以上の測定情報が収集できなかった無線セルについては、以前に収集した測定情報を用いる。これにより、無線基地局120は、トラフィック負荷が低いために測定情報が十分に収拾できない無線セルがあったとしても、適切に省電力制御を行う無線基地局を選択することができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0095】
上述の無線基地局120内の各処理部(送受信部210、測定制御部211、無線品質推定部212、省電力対象選択部213)の各処理は、任意のコンピュータ内で動作するプログラムとして実現することが可能である。プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0096】
図14は、無線基地局120を実現するためのコンピュータシステムのハードウェア構成例を示している。例えば、このシステムは、中央処理装置(CPU)600とメモリ610とを含んでいる。CPU600とメモリ610とは、バスを介して補助記憶装置としてのハードディスク装置(HDD)620に接続される。このシステムは、典型的には、ユーザ・インターフェース・ハードウェアを備える。ユーザ・インターフェース・ハードウェアとしては、例えば、入力をするためのポインティング・デバイス(マウス、ジョイスティック等)やキーボード等の入力装置630や、視覚データをユーザに提示するための液晶ディスプレイなどの表示装置640がある。ハードディスク装置620等の記憶媒体にはオペレーティングシステムと共同してCPU600等に命令を与え、このシステムの各部の機能を実施するためのコンピュータ・プログラムを記憶することができる。すなわち、プログラムがメモリ610上に展開され、CPU600がプログラムに従って処理を行い、他のハードウェア構成と協働することによって、無線基地局120の各ブロックが構成されている。そして、無線基地局120による各処理は、CPU600において所定のプログラムが実行されることで実現されている。尚、これらのシステムは、単一のコンピュータでなくとも、複数のコンピュータによって構成することも、もちろん可能である。
【0097】
さらに、上記の説明では、無線基地局120が無線品質の推定等の処理を行うものとして説明したが必ずしもこれに限られない。無線基地局120による推定処理等はネットワーク管理装置103が行っても良く、他のサーバ等が行っても良い。すなわち、ネットワーク上に存在する任意の処理装置が上述した無線基地局120の各処理を実行すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、例えば、無線通信システムにおいて、省電力運用を行う無線基地局、ネットワーク管理装置に適用できる。さらに、本発明は、無線基地局またはネットワーク管理装置における無線品質評価に適用可能である。
【0099】
本発明は、無線基地局またはネットワーク管理装置において、無線基地局の故障や停電による休止に対して行う無線品質評価に適用することができる。
【0100】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0101】
(付記1)
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御手段と、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御手段が収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定手段と、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する手段と、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象選択手段と、を備える処理装置。
【0102】
(付記2)
前記無線品質推定手段は、
ある無線基地局が構成する全ての無線セルを一単位として前記無線セルセットに含めるか否かを決定することを特徴とする付記1に記載の処理装置。
【0103】
(付記3)
前記無線品質推定手段は、
ある無線セルに対して省電力制御を実施した場合のカバレッジ劣化率が所定値を超える場合、当該無線セルをいずれの前記無線セルセットにも含めないことを特徴とする付記1または付記2に記載の処理装置。
【0104】
(付記4)
前記無線品質推定手段は、
第1の無線セルに対して省電力制御を実施した場合のカバレッジ劣化率が所定値を超えない場合、前記第1の無線セルから他の無線セルに接続を切り替える無線端末の割合を推定し、切り替え割合が所定割合の範囲内となる前記第2の無線セルと前記第1の無線セルを同一の無線セルセット内に含めないように制御することを特徴とする付記3に記載の処理装置。
【0105】
(付記5)
前記省電力対象選択手段は、
前記無線品質統計情報から算出される品質値が所定の品質を満たし、かつ、省電力制御後のトラフィック負荷が所定値を満たす前記無線セルセットを省電力制御の対象として選択することを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1項に記載の処理装置。
【0106】
(付記6)
前記省電力対象選択手段は、
前記無線品質統計情報から算出される品質値が所定の品質を満たし、かつ、省電力制御後のトラフィック負荷が所定値を満たす前記無線セルセットが複数ある場合、包含する無線セルの数が最も多い前記無線セルセットを省電力制御の対象として選択することを特徴とする付記5に記載の処理装置。
【0107】
(付記7)
前記無線品質推定手段は、
推定した前記無線品質統計情報を記憶手段に保存し、
一定時間内に前記測定制御手段がある無線セルに対する一定数以上の測定情報を収集できなかった場合、前記記憶手段から当該無線セルにかかる無線品質を取得して推定値とすることを特徴とする付記1乃至付記6のいずれか1項に記載の処理装置。
【0108】
(付記8)
前記無線品質推定手段は、
ある無線セルに対して省電力制御をした場合に、当該無線セルをサービングセルとしていた無線端末の各々が接続を切り替える無線セルの切り替え割合を推定するとともに、切り替えた場合の無線品質を推定することを特徴とする付記1乃至付記7のいずれか1項に記載の処理装置。
【0109】
(付記9)
前記測定結果は、
基準信号受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)、基準信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)、受信電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)、希望波信号電力対干渉波信号電力比(SIR:Signal to Interference Ratio)、希望波信号電力対干渉及び雑音電力比(SINR:Signal to Interference plus Noise power Ratio)の少なくとも1つを含むことを特徴とする付記1乃至付記8のいずれか1項に記載の処理装置。
【0110】
(付記10)
前記無線品質統計情報に基づいて、省電力制御を実施後の無線セル各々のセル容量を算出し、各無線セルの単位時間当たりの通信量と、算出したセル容量と、省電力制御後の接続切り替え状況と、を基に省電力制御後の各無線セルのトラフィック負荷を算出するトラフィック負荷算出手段を更に備えることを特徴とする付記1乃至付記9のいずれか1項に記載の処理装置。
【0111】
(付記11)
前記省電力対象選択手段は、
前記無線品質統計情報から算出される品質値が所定の品質を満たし、省電力制御後のトラフィック負荷が所定値を満たし、かつ、包含する無線セルの数が同数である前記無線セルセットが複数ある場合、前記無線品質統計情報から算出される品質値が最も良好な前記無線セルセットを省電力制御の対象として選択することを特徴とする付記6に記載の処理装置。
【0112】
(付記12)
前記無線品質推定手段は、
一定時間内に前記測定制御手段がある無線セルに対する一定数以上の測定情報を収集できなかった場合、前記記憶手段から当該無線セルにかかる最もトラフィック負荷が大きい時間の無線品質を取得して推定値とすることを特徴とする付記7に記載の処理装置。
【0113】
(付記13)
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御ステップと、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御ステップにて収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する通知ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象ステップと、を備える無線通信制御方法。
【0114】
(付記14)
コンピュータに、
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御ステップと、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御ステップにて収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する通知ステップと、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象ステップと、を実行させるためのプログラム。
【0115】
(付記15)
相互に通信可能な第1の装置と第2の装置を備える通信システムであって、
無線端末から無線セル毎の無線品質の測定結果を収集する測定制御手段と、
ある無線セル及び当該無線セルの周辺無線セルから、1以上の無線セルを含む無線セルセットを複数生成し、1以上の前記無線セルセットの各々に含まれる無線セルを省電力制御した場合の無線品質を、前記測定制御手段が収集した測定結果に基づいて推定する無線品質推定手段と、
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果を無線基地局またはネットワーク管理装置に通知する通知手段と
省電力制御を実施した場合の無線品質の推定結果に基づいて、省電力制御を行う前記無線セルセットを選択する省電力対象選択手段と、を備え、
前記測定制御手段、前記無線品質推定手段、前記通知手段、及び前記省電力対象選択手段は、前記第1または前記第2の装置のいずれかに備えられている、通信システム。