特許第5782904号(P5782904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782904
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】プレス装置用の振子ゲージユニット
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/00 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   B21D43/00 U
   B21D43/00 E
   B21D43/00 Q
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-169576(P2011-169576)
(22)【出願日】2011年8月2日
(65)【公開番号】特開2013-31873(P2013-31873A)
(43)【公開日】2013年2月14日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 則義
(72)【発明者】
【氏名】高平 正光
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−257654(JP,A)
【文献】 特開2007−075880(JP,A)
【文献】 特開平11−309530(JP,A)
【文献】 特開2005−059073(JP,A)
【文献】 米国特許第06085571(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に可動する上型、該上型と合わさる下型、及び該下型から上昇するエジェクタを有するプレス装置に用い、上記下型の上方に配設して平板状の鋼板素材を保持するよう構成された振子ゲージユニットであって、
上記下型に取り付けられる取付部、該取付部から立設された平板形状の立設部、及び該立設部に設けられ上記鋼板素材の下降をガイドするゲージ部を有するゲージベースと、
第1回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端保持部が上記ゲージ部よりも内方に突出して上記鋼板素材を保持する振子レバーと、
第2回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端接触部が上記振子レバーに接触して該振子レバーを保持するバックアップレバーと、
該バックアップレバーの回動を規制するバックアップ用ストッパーと、を備えており、
上記バックアップレバーは、該バックアップレバーの回動が上記バックアップ用ストッパーによって規制される状態で、該バックアップレバーに上記振子レバーを保持するための力を付与するウェイト部を有しており、
上記バックアップレバーが上記ウェイト部による力を受けて上記振子レバーを保持するとともに、上記鋼板素材から上記振子レバーに作用する重力が、上記バックアップレバーが上記振子レバーを保持する力よりも小さいことによって、該振子レバーが上記鋼板素材を保持し、上記上型が上記鋼板素材を押し下げる力であって上記バックアップレバーが上記振子レバーを保持する力よりも大きな力によって、上記振子レバー及び上記バックアップレバーが回動し、上記エジェクタがプレス加工後の鋼板製品を持ち上げる力によって、上記振子レバーが回動するよう構成されていることを特徴とするプレス装置用の振子ゲージユニット。
【請求項2】
上下に可動する上型、該上型と合わさる下型、及び該下型から上昇するエジェクタを有するプレス装置に用い、上記下型の上方に配設して平板状の鋼板素材を保持するよう構成された振子ゲージユニットであって、
上記下型に取り付けられる取付部、該取付部から立設された平板形状の立設部、及び該立設部に設けられ上記鋼板素材の下降をガイドするゲージ部を有するゲージベースと、
第1回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端保持部が上記ゲージ部よりも内方に突出して上記鋼板素材を保持する振子レバーと、
第2回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端接触部が上記振子レバーに接触して該振子レバーを保持するバックアップレバーと、
該バックアップレバーの回動を規制するバックアップ用ストッパーと、を備えており、
上記バックアップレバーが上記振子レバーを保持することによって、該振子レバーが上記鋼板素材を保持し、上記上型が上記鋼板素材を押し下げる力によって、上記振子レバー及び上記バックアップレバーが回動し、上記エジェクタがプレス加工後の鋼板製品を持ち上げる力によって、上記振子レバーが回動するよう構成されており、
上記振子レバーは、上記第1回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第1回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントよりも大きくなっており、
上記バックアップレバーは、上記振子レバーよりも下方に位置し、上記先端接触部が上記振子レバーの上記中心側振子部に下方から接触するよう構成されており、かつ、上記先端接触部を含み上記第2回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第2回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントよりも小さくなっており、
上記バックアップ用ストッパーは、上記中心側アーム部の上方への回動を規制する位置に配置されていることを特徴とするプレス装置用の振子ゲージユニット。
【請求項3】
上下に可動する上型、該上型と合わさる下型、及び該下型から上昇するエジェクタを有するプレス装置に用い、上記下型の上方に配設して平板状の鋼板素材を保持するよう構成された振子ゲージユニットであって、
上記下型に取り付けられる取付部、該取付部から立設された平板形状の立設部、及び該立設部に設けられ上記鋼板素材の下降をガイドするゲージ部を有するゲージベースと、
第1回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端保持部が上記ゲージ部よりも内方に突出して上記鋼板素材を保持する振子レバーと、
第2回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端接触部が上記振子レバーに接触して該振子レバーを保持するバックアップレバーと、
該バックアップレバーの回動を規制するバックアップ用ストッパーと、を備えており、
上記バックアップレバーが上記振子レバーを保持することによって、該振子レバーが上記鋼板素材を保持し、上記上型が上記鋼板素材を押し下げる力によって、上記振子レバー及び上記バックアップレバーが回動し、上記エジェクタがプレス加工後の鋼板製品を持ち上げる力によって、上記振子レバーが回動するよう構成されており、
上記振子レバーは、上記第1回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第1回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントよりも大きくなっており、
上記バックアップレバーは、上記振子レバーよりも上方に位置し、上記先端接触部が上記振子レバーの上記外側振子部に上方から接触するよう構成されており、かつ、上記先端接触部を含み上記第2回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第2回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントよりも大きくなっており、
上記バックアップ用ストッパーは、上記中心側アーム部の下方への回動を規制する位置に配置されていることを特徴とするプレス装置用の振子ゲージユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に配設して、鋼板素材の保持及び位置決めを行う振子ゲージユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
上下に可動する上型、上型と合わさる下型、及び下型から上昇するエジェクタを有するプレス装置において、例えば自動車用の外板等の大型の鋼板素材(素材パネル)の成形を行う際には、鋼板素材に反りが生じないように、振子ゲージユニットを用いて鋼板素材を保持することが行われている。
例えば、特許文献1においては、プレス機において、下型の側部に配置され、下型上に搬入されるワーク端を位置決めする搬入ワーク位置決め装置について開示されている。この搬入ワーク位置決め装置は、搬入されるワークの端面が当接して位置決めするサイドゲージと、上下方向に回転可能に軸支され、一端をスプリングにより下方に引っ張った第1ワークホルダーと、第1ワークホルダーの他端に、上方のみ回転可能に軸支した第2ワークホルダーとを備えている。これにより、ワークの搬入時にはワークを支持して位置決めを正確に行うとともに、加工完了後の製品の取り出しを確実に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−257654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の搬入ワーク位置決め装置においては、スプリングを用いて第1ワークホルダーをサイドゲージに付勢しており、スプリングの伸縮量及び強度の設定が容易ではない。また、第1ワークホルダー又はサイドゲージからスプリングが外れてしまうおそれがあり、スプリングの管理が容易ではない。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、スプリングを使用することなく、鋼板素材から振子レバーに作用する重力とバックアップレバーが振子レバーを保持する力とのバランスを利用することにより、鋼板素材の保持と、鋼板素材の下降及び鋼板製品の上昇とを、安定して行うことができるプレス装置用の振子ゲージユニットを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上下に可動する上型、該上型と合わさる下型、及び該下型から上昇するエジェクタを有するプレス装置に用い、上記下型の上方に配設して平板状の鋼板素材を保持するよう構成された振子ゲージユニットであって、
上記下型に取り付けられる取付部、該取付部から立設された平板形状の立設部、及び該立設部に設けられ上記鋼板素材の下降をガイドするゲージ部を有するゲージベースと、
第1回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端保持部が上記ゲージ部よりも内方に突出して上記鋼板素材を保持する振子レバーと、
第2回動中心部によって上記立設部に回動可能に取り付けられ、先端接触部が上記振子レバーに接触して該振子レバーを保持するバックアップレバーと、
該バックアップレバーの回動を規制するバックアップ用ストッパーと、を備えており、
上記バックアップレバーは、該バックアップレバーの回動が上記バックアップ用ストッパーによって規制される状態で、該バックアップレバーに上記振子レバーを保持するための力を付与するウェイト部を有しており、
上記バックアップレバーが上記ウェイト部による力を受けて上記振子レバーを保持するとともに、上記鋼板素材から上記振子レバーに作用する重力が、上記バックアップレバーが上記振子レバーを保持する力よりも小さいことによって、該振子レバーが上記鋼板素材を保持し、上記上型が上記鋼板素材を押し下げる力であって上記バックアップレバーが上記振子レバーを保持する力よりも大きな力によって、上記振子レバー及び上記バックアップレバーが回動し、上記エジェクタがプレス加工後の鋼板製品を持ち上げる力によって、上記振子レバーが回動するよう構成されていることを特徴とするプレス装置用の振子ゲージユニットにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
上記プレス装置用の振子ゲージユニットは、ゲージベース、振子レバー、バックアップレバー及びバックアップ用ストッパーを用いた簡単な構成により、鋼板素材から振子レバーに作用する重力とバックアップレバーが振子レバーを保持する力とのバランスを利用して、鋼板素材の位置決めを行った保持をできるようにしたものである。また、振子ゲージユニットは、振子レバーを、別のバックアップレバーによって保持する構成にしたことにより、振子レバーの回動範囲を拡大するとともに振子レバーにおける鋼板素材の載置代(載置長さ)をできるだけ長くして、鋼板素材の保持と、鋼板素材の下降及び鋼板製品の上昇とを、安定して行うことができるものである。
【0008】
具体的には、振子ゲージユニットは、プレス装置において次のようにして使用される。
下型に対する上方において鋼板素材を保持する際には、振子レバーの先端保持部の上に鋼板素材を載置する。このとき、鋼板素材を振子レバーによって保持するとともに、振子レバーをバックアップレバーによって保持する。つまり、鋼板素材から振子レバーに作用する重力が、バックアップレバーが振子レバーを保持する力よりも小さいことにより、振子レバーの姿勢が維持され、鋼板素材を安定して保持することができる。また、ゲージベースのゲージ部によって、鋼板素材を下型の上方における規定位置へ位置決めすることができる。
次いで、上型を下降させ、上型によって、振子レバーの上に載置された鋼板素材を下型へ下降させる。このとき、バックアップレバーが振子レバーを保持する力よりも、上型が鋼板素材を押し下げる力が大きくなって、振子レバー及びバックアップレバーが回動する。
【0009】
次いで、上型と下型とによって鋼板素材にプレス加工を行った後には、エジェクタが、プレス加工後の鋼板製品を持ち上げる。そして、鋼板製品が振子レバーに対して下方から当接し、エジェクタがプレス加工後の鋼板製品を持ち上げる力によって、振子レバーが回動して、鋼板製品がゲージベースのゲージ部を通過して取り出される。
このように、振子ゲージユニットにおいては、回動可能な振子レバーを回動可能なバックアップレバーによって保持する構成にしたことにより、振子レバーの回動範囲を拡大することができる。これにより、振子レバーに鋼板素材を載置する長さ(載置代)をできるだけ長くとることができ、鋼板素材の保持を安定して行うことができる。また、振子レバーの回動範囲を拡大することにより、鋼板製品を下型から安定して取り出すことができる。
【0010】
このように、上記プレス装置用の振子ゲージユニットによれば、スプリングを使用することなく、鋼板素材から振子レバーに作用する重力とバックアップレバーが振子レバーを保持する力とのバランスを利用することにより、鋼板素材の保持と、鋼板素材の下降及び鋼板製品の上昇とを、安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1にかかる、振子ゲージ及びバックアップゲージによって鋼板素材を保持する振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
図2】実施例1にかかる、振子ゲージユニットを下型の中心側から見た状態で示す説明図。
図3】実施例1にかかる、振子ゲージユニットを下型の上方から見た状態で示す説明図。
図4】実施例1にかかる、鋼板素材を複数の振子ゲージユニットによって保持する状態を上方から見た状態で示す説明図。
図5】実施例1にかかる、上型及び鋼板素材による力を受けて、振子ゲージ及びバックアップゲージが回動した振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
図6】実施例1にかかる、上型及び下型によって鋼板製品を成形し、振子ゲージ及びバックアップゲージが原位置へ回動した振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
図7】実施例1にかかる、エジェクタ及び鋼板製品による力を受けて、振子ゲージが回動した振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
図8】実施例2にかかる、振子ゲージ及びバックアップゲージによって鋼板素材を保持する振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
図9】実施例2にかかる、上型及び鋼板素材による力を受けて、振子ゲージ及びバックアップゲージが回動した振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
図10】実施例2にかかる、エジェクタ及び鋼板製品による力を受けて、振子ゲージが回動した振子ゲージユニットを側方から見た状態で示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したプレス装置用の振子ゲージユニットにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記プレス装置用の振子ゲージユニットにおいては、上記振子レバーは、上記第1回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第1回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントよりも大きくなっており、上記バックアップレバーは、上記振子レバーよりも下方に位置し、上記先端接触部が上記振子レバーの上記中心側振子部に下方から接触するよう構成されており、かつ、上記先端接触部を含み上記第2回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第2回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントよりも小さくなっており、上記バックアップ用ストッパーは、上記中心側アーム部の上方への回動を規制する位置に配置されていてもよい(請求項2)。
この場合には、バックアップレバーによって振子レバーを下方から保持する構造により、鋼板素材から振子レバーに作用する重力とバックアップレバーが振子レバーを保持する力とのバランスを適切に維持することができる。
【0013】
また、上記振子レバーは、上記第1回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第1回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側振子部の上記第1回動中心部回りの自重によるモーメントよりも大きくなっており、上記バックアップレバーは、上記振子レバーよりも上方に位置し、上記先端接触部が上記振子レバーの上記外側振子部に上方から接触するよう構成されており、かつ、上記先端接触部を含み上記第2回動中心部よりも上記下型の中心側に位置する中心側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントが、上記第2回動中心部よりも上記下型の外側に位置する外側アーム部の上記第2回動中心部回りの自重によるモーメントよりも大きくなっており、上記バックアップ用ストッパーは、上記中心側アーム部の下方への回動を規制する位置に配置されていてもよい(請求項3)。
この場合には、バックアップレバーによって振子レバーを上方から保持する構造により、鋼板素材から振子レバーに作用する重力とバックアップレバーが振子レバーを保持する力とのバランスを適切に維持することができる。
【実施例】
【0014】
以下に、プレス装置用の振子ゲージユニットの実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の振子ゲージユニット1は、図1図5に示すごとく、上下に可動する上型61、上型61と合わさる下型62、及び下型62から上昇するエジェクタ63を有するプレス装置6に用い、下型62の上方に配設して平板状の鋼板素材80を保持するよう構成されている。
振子ゲージユニット1は、次のゲージベース2、振子レバー3、バックアップレバー4及びバックアップ用ストッパー5を備えている。
【0015】
図1図3に示すごとく、ゲージベース2は、下型62に取り付けられる取付部21、取付部21から立設された平板形状の立設部22、及び立設部22に設けられ鋼板素材80の下降をガイドするゲージ部23を有している。振子レバー3は、第1回動中心部31によって立設部22に回動可能に取り付けられ、先端保持部321がゲージ部23よりも内方に突出して鋼板素材80を保持するよう構成されている。バックアップレバー4は、第2回動中心部41によって立設部22に回動可能に取り付けられ、先端接触部421が振子レバー3に接触して振子レバー3を保持するよう構成されている。バックアップ用ストッパー5は、バックアップレバー4に当接したときに、その回動を規制するよう構成されている。
【0016】
振子ゲージユニット1は、図1に示すごとく、バックアップレバー4が振子レバー3を保持することによって、振子レバー3が鋼板素材80を保持し、図5に示すごとく、上型61が鋼板素材80を押し下げる力によって、振子レバー3及びバックアップレバー4が回動し、図7に示すごとく、エジェクタ63がプレス加工後の鋼板製品8を持ち上げる力によって、振子レバー3が回動するよう構成されている。
なお、図1図5図7は、振子ゲージユニット1を側方から見た断面によって示す。図2は、振子ゲージユニット1をプレス装置6(下型62)の中心側から見た状態で示す。図3は、端子ゲージユニット1を上方から見た状態で示す。
【0017】
以下に、本例のプレス装置6用の振子ゲージユニット1につき、図1図7を参照して詳説する。
図4は、鋼板素材80を複数の振子ゲージユニット1によって支える状態を上方から見た状態で示す。
同図に示すごとく、振子ゲージユニット1は、プレス装置6の下型62の上部における複数箇所に配設して、鋼板素材80の位置決めを行った保持を行うものである。プレス装置6においては、成形する鋼板製品8の形状によって、鋼板素材80を下型62の上に直接載置すると、撓み・反りが大きくなるために、複数の振子ゲージユニット1を用いて鋼板素材80を一旦保持する。
振子ゲージユニット1は、下型62において、ゲージベース2のゲージ部23によって、鋼板素材80を両側からガイドする位置に配設される。振子ゲージユニット1は、4箇所以上に配設される。
【0018】
図5に示すごとく、プレス装置6は、鋼板製品8を成形する成形部を下型62の上面621と上型61の下面611とに形成し、下型62に対して上型61を昇降させるよう構成されている。プレス装置6は、下型62の成形部と上型61の成形部との間に鋼板素材80を挟み込んで、鋼板製品8を成形(プレス加工)する。
下型62における適宜箇所には、プレス成形後の鋼板製品8を持ち上げるためのエジェクタ63が配設されている。
【0019】
振子ゲージユニット1は、振子の原理を利用した金属製部品を用いることによって極めて簡単に形成されている。
図1に示すごとく、振子レバー3は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第1回動中心部31としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。振子レバー3は、第1回動中心部31よりも下型62の中心側に位置する中心側振子部32の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントが、第1回動中心部31よりも下型62の外側に位置する外側振子部33の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントよりも大きくなっている。本例の第1回動中心部31は、振子レバー3における外側の端部に設けられており、外側振子部33は極めて短くなっている。
【0020】
振子レバー3は、鋼板素材80を載置する原位置301において、バックアップレバー4による支持を受けて水平方向に向けて姿勢が保持される。そして、振子レバー3は、水平方向に姿勢を維持した状態において、ゲージベース2のゲージ部23よりも内方(下型62の中心側)に先端保持部321を突出させている。ゲージ部23によって位置がガイドされる鋼板素材80は、ゲージ部23の中心側表面から内方へ突出する、振子レバー3の先端保持部321の上に載置される。
【0021】
図1図3に示すごとく、ゲージベース2は、下型62に取り付ける取付部21から立設部22を鉛直方向上方に立設して形成されている。取付部21は、ネジ等を用いて下型62の上部に取り付けられる。ゲージ部23は、上端部分を除く全体が鉛直方向に形成されており、上端部分が、鋼板素材80を下型62の中心側へガイドするよう外側に向けて斜めに屈曲して形成されている。本例の立設部22は、ゲージ部23の両側に一対に設けられている。一対の立設部22は、ゲージ部23に対して垂直に、かつ互いに平行になる状態で形成されている。振子レバー3の第1回動中心部31及びバックアップレバー4の第2回動中心部41は、一対の立設部22によって両持ち状態で支持されている。
振子レバー3の先端保持部321は、ゲージ部23に設けられた貫通穴231を通って、ゲージ部23の中心側表面から内方へ突出している。
【0022】
図1に示すごとく、バックアップレバー4は、振子レバー3よりも下方に配設されている。バックアップレバー4は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第2回動中心部41としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。
バックアップレバー4は、第2回動中心部41よりも下型62の中心側に位置する中心側アーム部42の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントが、第2回動中心部41よりも下型62の外側に位置する外側アーム部43の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントよりも小さくなっている。
【0023】
バックアップレバー4は、中心側アーム部42における先端接触部421が、振子レバー3の中心側振子部32に下方から接触している。中心側アーム部42は、第2回動中心部41から水平方向に向けて形成された後、先端接触部421を上方に向けて形成されている。先端接触部421は、振子レバー3に安定して当接するよう曲面状の先端部として形成されている。
本例の外側アーム部43は、鋼板素材80及び振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントよりも、大きなモーメントを発生させるために、錘となるウェイト部44を有している。
【0024】
図1に示すごとく、バックアップ用ストッパー5は、外側アーム部43の重力を受けた中心側アーム部42の上方への回動を規制する位置に配置されている。バックアップ用ストッパー5は、バックアップレバー4が原位置401にあるときに、外側アーム部43の自重によるモーメントが、中心側アーム部42の自重によるモーメントよりも大きいことを受けて、中心側アーム部42が上方へ回動しないように規制する。バックアップ用ストッパー5は、ゲージベース2の取付部21に配設したピンによって構成されている。
【0025】
振子レバー3に鋼板素材80を載置する際における、バックアップレバー4の第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いは、次のようになる。
図1に示すごとく、振子ゲージユニット1においては、第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いにおいて、中心側アーム部42の自重によるモーメントと、鋼板素材80が載置された振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントとの和に比べて、外側アーム部43の自重によるモーメントを大きくしている。そして、バックアップレバー4は、中心側アーム部42がバックアップ用ストッパー5に当接した状態で、先端接触部421が振子レバー3の中心側振子部32に下方から当接し、振子レバー3を原位置301に維持する。
【0026】
また、図示は省略するが、プレス装置6に用いる複数の振子ゲージユニット1のいずれかにおけるゲージベース2には、鋼板素材80が振子レバー3に載置されたときに、鋼板素材80によって回動するスイッチ用レバーと、スイッチ用レバーが回動したときにヒットするスイッチとを配設することができる。この場合には、複数の振子ゲージユニット1に鋼板素材80が配置されたことを確認してから上型61を下降させることができる。
【0027】
振子ゲージユニット1は、プレス装置6において次のようにして使用される。
図1図4に示すごとく、下型62に対する上方において鋼板素材80を保持する際には、複数の振子ゲージユニット1における振子レバー3の先端保持部321の上に鋼板素材80を載置する。鋼板素材80の自重は、複数の振子ゲージユニット1の振子レバー3に分散して加わる。
複数の振子ゲージユニット1においては、鋼板素材80を振子レバー3によって保持するとともに、振子レバー3をバックアップレバー4によって保持する。つまり、鋼板素材80から複数の振子レバー3に作用する重力が、各バックアップレバー4が各振子レバー3を保持する力よりも小さいことにより、各振子レバー3の姿勢が原位置301に維持され、鋼板素材80を安定して保持することができる。また、各ゲージベース2のゲージ部23によって、鋼板素材80を下型62の上方における規定位置へ位置決めすることができる。
【0028】
次いで、図5に示すごとく、上型61を下降させ、上型61によって、複数の振子ゲージユニット1における振子レバー3の上に載置された鋼板素材80を下型62へ下降させる。このとき、各振子ゲージユニット1において、各バックアップレバー4が各振子レバー3を保持する力よりも、上型61が鋼板素材80を押し下げる力が大きくなって、各振子レバー3及び各バックアップレバー4が第1回動中心部31又は第2回動中心部41の回りに下方へ回動する。
【0029】
そして、図6に示すごとく、上型61によって鋼板素材80が、振子レバー3の中心側振子部32の先端を通り過ぎて下降すると、振子レバー3及びバックアップレバー4は重力バランスによって元の原位置301,401に戻る。さらに上型61が下降すると、上型61が下型62との間に鋼板素材80を挟み込み、上型61の成形部と下型62の成形部とによって鋼板素材80にプレス加工がなされ、所定形状の鋼板製品8が成形される。
【0030】
次いで、図7に示すごとく、上型61と下型62とによって鋼板素材80にプレス加工を行った後には、エジェクタ63が、プレス加工後の鋼板製品8を持ち上げる。そして、鋼板製品8が振子レバー3に対して下方から当接し、エジェクタ63がプレス加工後の鋼板製品8を持ち上げる力によって、振子レバー3が回動して、鋼板製品8がゲージベース2のゲージ部23を通過して取り出される。
【0031】
このように、振子ゲージユニット1においては、回動可能な振子レバー3を回動可能なバックアップレバー4によって保持する構成にしたことにより、振子レバー3の回動範囲を拡大することができる。これにより、振子レバー3に鋼板素材80を載置する長さ(載置代)L(図1参照)をできるだけ長くとることができ、鋼板素材80の保持を安定して行うことができる。また、振子レバー3の回動範囲を拡大することにより、鋼板製品8を下型62から安定して取り出すことができる。
【0032】
本例のプレス装置6用の振子ゲージユニット1によれば、スプリングを使用することなく、鋼板素材80から振子レバー3に作用する重力とバックアップレバー4が振子レバー3を保持する力とのバランスを利用することにより、鋼板素材80の保持と、鋼板素材80の下降及び鋼板製品8の上昇とを、安定して行うことができる。
【0033】
(実施例2)
本例は、振子レバー3とバックアップレバー4との位置関係が上記実施例1とは異なる例である。
本例の振子レバー3も、図8に示すごとく、第1回動中心部31よりも下型62の中心側に位置する中心側振子部32の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントが、第1回動中心部31よりも下型62の外側に位置する外側振子部33の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントよりも大きくなっている。振子レバー3は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第1回動中心部31としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。本例の外側振子部33は、バックアップレバー4の先端接触部421が接触する部分として形成されている。
【0034】
本例のバックアップレバー4は、振子レバー3よりも上方に配設されており、先端接触部421が振子レバー3の外側振子部33に上方から接触するよう構成されている。バックアップレバー4は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第2回動中心部41としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。バックアップレバー4は、先端接触部421を含み第2回動中心部41よりも下型62の中心側に位置する中心側アーム部42の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントが、第2回動中心部41よりも下型62の外側に位置する外側アーム部43の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントよりも大きくなっている。本例の中心側アーム部42は、鋼板素材80及び振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントよりも、大きなモーメントを発生させるために、錘となるウェイト部44を有している。
【0035】
図8に示すごとく、バックアップ用ストッパー5は、中心側アーム部42の下方への回動を規制する位置に配置されている。バックアップ用ストッパー5は、中心側アーム部42の自重によるモーメントが、外側アーム部43の自重によるモーメントよりも大きいことを受けて、中心側アーム部42が下方へ回動しないように規制する。バックアップ用ストッパー5は、ゲージベース2の取付部21に配設したピンによって構成されている。
【0036】
振子レバー3に鋼板素材80を載置する際における、バックアップレバー4の第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いは、次のようになる。
振子ゲージユニット1においては、第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いにおいて、中心側アーム部42の自重によるモーメントと、鋼板素材80が載置された振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントとの和に比べて、外側アーム部43の自重によるモーメントを大きくしている。そして、バックアップレバー4は、中心側アーム部42がバックアップ用ストッパー5に当接した状態で、先端接触部421が振子レバー3の外側振子部33に上方から当接し、振子レバー3を原位置301に維持する。なお、振子レバー3に鋼板素材80が載置されていないときにおいても、上記と同様に、振子レバー3とバックアップレバー4とのバランスをとることができる。
【0037】
本例においても、上記実施例1と同様に、図9に示すごとく、上型61の下降によって振子レバー3及びバックアップレバー4が回動して、上型61と下型62との間に鋼板素材80を挟み込んで鋼板製品8を成形する。その後、図10に示すごとく、エジェクタ63の上昇によって鋼板製品8が振子レバー3を回動させながら、鋼板製品8を下型62から取り出すことができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 振子ゲージユニット
2 ゲージベース
21 取付部
22 立設部
23 ゲージ部
3 振子レバー
31 第1回動中心部
32 中心側振子部
321 先端保持部
33 外側振子部
4 バックアップレバー
41 第2回動中心部
42 中心側アーム部
421 先端接触部
43 外側アーム部
5 バックアップ用ストッパー
6 プレス装置
61 上型
62 下型
63 エジェクタ
8 鋼板製品
80 鋼板素材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10