【実施例】
【0014】
以下に、プレス装置用の振子ゲージユニットの実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の振子ゲージユニット1は、
図1、
図5に示すごとく、上下に可動する上型61、上型61と合わさる下型62、及び下型62から上昇するエジェクタ63を有するプレス装置6に用い、下型62の上方に配設して平板状の鋼板素材80を保持するよう構成されている。
振子ゲージユニット1は、次のゲージベース2、振子レバー3、バックアップレバー4及びバックアップ用ストッパー5を備えている。
【0015】
図1〜
図3に示すごとく、ゲージベース2は、下型62に取り付けられる取付部21、取付部21から立設された平板形状の立設部22、及び立設部22に設けられ鋼板素材80の下降をガイドするゲージ部23を有している。振子レバー3は、第1回動中心部31によって立設部22に回動可能に取り付けられ、先端保持部321がゲージ部23よりも内方に突出して鋼板素材80を保持するよう構成されている。バックアップレバー4は、第2回動中心部41によって立設部22に回動可能に取り付けられ、先端接触部421が振子レバー3に接触して振子レバー3を保持するよう構成されている。バックアップ用ストッパー5は、バックアップレバー4に当接したときに、その回動を規制するよう構成されている。
【0016】
振子ゲージユニット1は、
図1に示すごとく、バックアップレバー4が振子レバー3を保持することによって、振子レバー3が鋼板素材80を保持し、
図5に示すごとく、上型61が鋼板素材80を押し下げる力によって、振子レバー3及びバックアップレバー4が回動し、
図7に示すごとく、エジェクタ63がプレス加工後の鋼板製品8を持ち上げる力によって、振子レバー3が回動するよう構成されている。
なお、
図1、
図5〜
図7は、振子ゲージユニット1を側方から見た断面によって示す。
図2は、振子ゲージユニット1をプレス装置6(下型62)の中心側から見た状態で示す。
図3は、端子ゲージユニット1を上方から見た状態で示す。
【0017】
以下に、本例のプレス装置6用の振子ゲージユニット1につき、
図1〜
図7を参照して詳説する。
図4は、鋼板素材80を複数の振子ゲージユニット1によって支える状態を上方から見た状態で示す。
同図に示すごとく、振子ゲージユニット1は、プレス装置6の下型62の上部における複数箇所に配設して、鋼板素材80の位置決めを行った保持を行うものである。プレス装置6においては、成形する鋼板製品8の形状によって、鋼板素材80を下型62の上に直接載置すると、撓み・反りが大きくなるために、複数の振子ゲージユニット1を用いて鋼板素材80を一旦保持する。
振子ゲージユニット1は、下型62において、ゲージベース2のゲージ部23によって、鋼板素材80を両側からガイドする位置に配設される。振子ゲージユニット1は、4箇所以上に配設される。
【0018】
図5に示すごとく、プレス装置6は、鋼板製品8を成形する成形部を下型62の上面621と上型61の下面611とに形成し、下型62に対して上型61を昇降させるよう構成されている。プレス装置6は、下型62の成形部と上型61の成形部との間に鋼板素材80を挟み込んで、鋼板製品8を成形(プレス加工)する。
下型62における適宜箇所には、プレス成形後の鋼板製品8を持ち上げるためのエジェクタ63が配設されている。
【0019】
振子ゲージユニット1は、振子の原理を利用した金属製部品を用いることによって極めて簡単に形成されている。
図1に示すごとく、振子レバー3は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第1回動中心部31としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。振子レバー3は、第1回動中心部31よりも下型62の中心側に位置する中心側振子部32の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントが、第1回動中心部31よりも下型62の外側に位置する外側振子部33の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントよりも大きくなっている。本例の第1回動中心部31は、振子レバー3における外側の端部に設けられており、外側振子部33は極めて短くなっている。
【0020】
振子レバー3は、鋼板素材80を載置する原位置301において、バックアップレバー4による支持を受けて水平方向に向けて姿勢が保持される。そして、振子レバー3は、水平方向に姿勢を維持した状態において、ゲージベース2のゲージ部23よりも内方(下型62の中心側)に先端保持部321を突出させている。ゲージ部23によって位置がガイドされる鋼板素材80は、ゲージ部23の中心側表面から内方へ突出する、振子レバー3の先端保持部321の上に載置される。
【0021】
図1〜
図3に示すごとく、ゲージベース2は、下型62に取り付ける取付部21から立設部22を鉛直方向上方に立設して形成されている。取付部21は、ネジ等を用いて下型62の上部に取り付けられる。ゲージ部23は、上端部分を除く全体が鉛直方向に形成されており、上端部分が、鋼板素材80を下型62の中心側へガイドするよう外側に向けて斜めに屈曲して形成されている。本例の立設部22は、ゲージ部23の両側に一対に設けられている。一対の立設部22は、ゲージ部23に対して垂直に、かつ互いに平行になる状態で形成されている。振子レバー3の第1回動中心部31及びバックアップレバー4の第2回動中心部41は、一対の立設部22によって両持ち状態で支持されている。
振子レバー3の先端保持部321は、ゲージ部23に設けられた貫通穴231を通って、ゲージ部23の中心側表面から内方へ突出している。
【0022】
図1に示すごとく、バックアップレバー4は、振子レバー3よりも下方に配設されている。バックアップレバー4は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第2回動中心部41としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。
バックアップレバー4は、第2回動中心部41よりも下型62の中心側に位置する中心側アーム部42の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントが、第2回動中心部41よりも下型62の外側に位置する外側アーム部43の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントよりも小さくなっている。
【0023】
バックアップレバー4は、中心側アーム部42における先端接触部421が、振子レバー3の中心側振子部32に下方から接触している。中心側アーム部42は、第2回動中心部41から水平方向に向けて形成された後、先端接触部421を上方に向けて形成されている。先端接触部421は、振子レバー3に安定して当接するよう曲面状の先端部として形成されている。
本例の外側アーム部43は、鋼板素材80及び振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントよりも、大きなモーメントを発生させるために、錘となるウェイト部44を有している。
【0024】
図1に示すごとく、バックアップ用ストッパー5は、外側アーム部43の重力を受けた中心側アーム部42の上方への回動を規制する位置に配置されている。バックアップ用ストッパー5は、バックアップレバー4が原位置401にあるときに、外側アーム部43の自重によるモーメントが、中心側アーム部42の自重によるモーメントよりも大きいことを受けて、中心側アーム部42が上方へ回動しないように規制する。バックアップ用ストッパー5は、ゲージベース2の取付部21に配設したピンによって構成されている。
【0025】
振子レバー3に鋼板素材80を載置する際における、バックアップレバー4の第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いは、次のようになる。
図1に示すごとく、振子ゲージユニット1においては、第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いにおいて、中心側アーム部42の自重によるモーメントと、鋼板素材80が載置された振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントとの和に比べて、外側アーム部43の自重によるモーメントを大きくしている。そして、バックアップレバー4は、中心側アーム部42がバックアップ用ストッパー5に当接した状態で、先端接触部421が振子レバー3の中心側振子部32に下方から当接し、振子レバー3を原位置301に維持する。
【0026】
また、図示は省略するが、プレス装置6に用いる複数の振子ゲージユニット1のいずれかにおけるゲージベース2には、鋼板素材80が振子レバー3に載置されたときに、鋼板素材80によって回動するスイッチ用レバーと、スイッチ用レバーが回動したときにヒットするスイッチとを配設することができる。この場合には、複数の振子ゲージユニット1に鋼板素材80が配置されたことを確認してから上型61を下降させることができる。
【0027】
振子ゲージユニット1は、プレス装置6において次のようにして使用される。
図1、
図4に示すごとく、下型62に対する上方において鋼板素材80を保持する際には、複数の振子ゲージユニット1における振子レバー3の先端保持部321の上に鋼板素材80を載置する。鋼板素材80の自重は、複数の振子ゲージユニット1の振子レバー3に分散して加わる。
複数の振子ゲージユニット1においては、鋼板素材80を振子レバー3によって保持するとともに、振子レバー3をバックアップレバー4によって保持する。つまり、鋼板素材80から複数の振子レバー3に作用する重力が、各バックアップレバー4が各振子レバー3を保持する力よりも小さいことにより、各振子レバー3の姿勢が原位置301に維持され、鋼板素材80を安定して保持することができる。また、各ゲージベース2のゲージ部23によって、鋼板素材80を下型62の上方における規定位置へ位置決めすることができる。
【0028】
次いで、
図5に示すごとく、上型61を下降させ、上型61によって、複数の振子ゲージユニット1における振子レバー3の上に載置された鋼板素材80を下型62へ下降させる。このとき、各振子ゲージユニット1において、各バックアップレバー4が各振子レバー3を保持する力よりも、上型61が鋼板素材80を押し下げる力が大きくなって、各振子レバー3及び各バックアップレバー4が第1回動中心部31又は第2回動中心部41の回りに下方へ回動する。
【0029】
そして、
図6に示すごとく、上型61によって鋼板素材80が、振子レバー3の中心側振子部32の先端を通り過ぎて下降すると、振子レバー3及びバックアップレバー4は重力バランスによって元の原位置301,401に戻る。さらに上型61が下降すると、上型61が下型62との間に鋼板素材80を挟み込み、上型61の成形部と下型62の成形部とによって鋼板素材80にプレス加工がなされ、所定形状の鋼板製品8が成形される。
【0030】
次いで、
図7に示すごとく、上型61と下型62とによって鋼板素材80にプレス加工を行った後には、エジェクタ63が、プレス加工後の鋼板製品8を持ち上げる。そして、鋼板製品8が振子レバー3に対して下方から当接し、エジェクタ63がプレス加工後の鋼板製品8を持ち上げる力によって、振子レバー3が回動して、鋼板製品8がゲージベース2のゲージ部23を通過して取り出される。
【0031】
このように、振子ゲージユニット1においては、回動可能な振子レバー3を回動可能なバックアップレバー4によって保持する構成にしたことにより、振子レバー3の回動範囲を拡大することができる。これにより、振子レバー3に鋼板素材80を載置する長さ(載置代)L(
図1参照)をできるだけ長くとることができ、鋼板素材80の保持を安定して行うことができる。また、振子レバー3の回動範囲を拡大することにより、鋼板製品8を下型62から安定して取り出すことができる。
【0032】
本例のプレス装置6用の振子ゲージユニット1によれば、スプリングを使用することなく、鋼板素材80から振子レバー3に作用する重力とバックアップレバー4が振子レバー3を保持する力とのバランスを利用することにより、鋼板素材80の保持と、鋼板素材80の下降及び鋼板製品8の上昇とを、安定して行うことができる。
【0033】
(実施例2)
本例は、振子レバー3とバックアップレバー4との位置関係が上記実施例1とは異なる例である。
本例の振子レバー3も、
図8に示すごとく、第1回動中心部31よりも下型62の中心側に位置する中心側振子部32の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントが、第1回動中心部31よりも下型62の外側に位置する外側振子部33の第1回動中心部31回りの自重によるモーメントよりも大きくなっている。振子レバー3は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第1回動中心部31としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。本例の外側振子部33は、バックアップレバー4の先端接触部421が接触する部分として形成されている。
【0034】
本例のバックアップレバー4は、振子レバー3よりも上方に配設されており、先端接触部421が振子レバー3の外側振子部33に上方から接触するよう構成されている。バックアップレバー4は、ゲージベース2の立設部22に設けた軸受穴に対して第2回動中心部41としての回動ピンを配置して、自由に回動できるよう構成されている。バックアップレバー4は、先端接触部421を含み第2回動中心部41よりも下型62の中心側に位置する中心側アーム部42の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントが、第2回動中心部41よりも下型62の外側に位置する外側アーム部43の第2回動中心部41回りの自重によるモーメントよりも大きくなっている。本例の中心側アーム部42は、鋼板素材80及び振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントよりも、大きなモーメントを発生させるために、錘となるウェイト部44を有している。
【0035】
図8に示すごとく、バックアップ用ストッパー5は、中心側アーム部42の下方への回動を規制する位置に配置されている。バックアップ用ストッパー5は、中心側アーム部42の自重によるモーメントが、外側アーム部43の自重によるモーメントよりも大きいことを受けて、中心側アーム部42が下方へ回動しないように規制する。バックアップ用ストッパー5は、ゲージベース2の取付部21に配設したピンによって構成されている。
【0036】
振子レバー3に鋼板素材80を載置する際における、バックアップレバー4の第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いは、次のようになる。
振子ゲージユニット1においては、第2回動中心部41回りのモーメントのつり合いにおいて、中心側アーム部42の自重によるモーメントと、鋼板素材80が載置された振子レバー3から中心側アーム部42に作用するモーメントとの和に比べて、外側アーム部43の自重によるモーメントを大きくしている。そして、バックアップレバー4は、中心側アーム部42がバックアップ用ストッパー5に当接した状態で、先端接触部421が振子レバー3の外側振子部33に上方から当接し、振子レバー3を原位置301に維持する。なお、振子レバー3に鋼板素材80が載置されていないときにおいても、上記と同様に、振子レバー3とバックアップレバー4とのバランスをとることができる。
【0037】
本例においても、上記実施例1と同様に、
図9に示すごとく、上型61の下降によって振子レバー3及びバックアップレバー4が回動して、上型61と下型62との間に鋼板素材80を挟み込んで鋼板製品8を成形する。その後、
図10に示すごとく、エジェクタ63の上昇によって鋼板製品8が振子レバー3を回動させながら、鋼板製品8を下型62から取り出すことができる。
本例においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。