特許第5782932号(P5782932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782932
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 9/00 20060101AFI20150907BHJP
   B62H 5/00 20060101ALI20150907BHJP
   B62J 23/00 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   B62J9/00 G
   B62H5/00
   B62J23/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-192966(P2011-192966)
(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2013-52790(P2013-52790A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】長田 浩
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−020603(JP,A)
【文献】 特開2011−020604(JP,A)
【文献】 特開2002−362448(JP,A)
【文献】 特開2008−080855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 9/00,99/00
B62H 5/00
B60R 25/00,25/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の位置を測定可能で、かつ測定した自車の位置の情報を無線送信可能な盗難対策装置と、
略前後方向に延伸する左右一対のリヤフレームと、
前記左右一対のリヤフレームの上側に配置される着座シートと、
前記着座シートの下側において前記左右一対のリヤフレームのそれぞれの外側を覆うフレームカバーと、
を備え、
前記左右一対のリヤフレームの間には物品収納室が設けられ、
前記盗難対策装置は、左右方向において前記左右一対のリヤフレームを挟んで前記物品収納室の外側であって、前記フレームカバーに覆われる領域に設けられ
前記物品収納室と前記盗難対策装置が設けられる領域とは、前記左右一対のリヤフレームによって仕切られていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記着座シートは、運転者用シートと、前記運転者用シートの後側に設けられる同乗者用シートとを有し、
前記フレームカバーは、前記同乗者用シートよりも左右方向外側に膨出する膨出部を有し、
前記盗難対策装置は、前記膨出部の内側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記盗難対策装置は、上面視における左右方向寸法が側面視における上下方向寸法よりも小さくなる態様で設けられるとともに、前記盗難対策装置の上辺が前記リヤフレームの上辺よりも上側に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
左右方向の一側に設けられるサイドスタンドを更に有し、
前記盗難対策装置は、前記サイドスタンドの反対側の一側に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関する。詳しくは、自車の位置情報を無線送信可能な盗難対策装置が搭載される自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、自車の位置を計測して無線送信する盗難対策装置が搭載されるものがある。このような盗難対策装置は、外部から分かり難い位置、または外部から容易にアクセスできない位置に搭載されることが好ましい。たとえば、特許文献1には、後部シートの下側後方に盗難対策装置が搭載される構成が開示されている。また、このような盗難対策装置は、電波を良好な状態で送受信できる位置に搭載されることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−120625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、次のような問題が生じることがある。一般に、自動二輪車の着座シートの下側には、サービスツールや、自動二輪車の取扱説明書や、搭乗者が携帯する小物などを収納できる物品収納室が形成される。このため、盗難対策装置が着座シートの下側に搭載される構成では、盗難対策装置が物品収納室の内側の領域を圧迫し、物品収納室の容積が減少する。そうすると、物品収納室の利便性が低下する。また、このような構成では、盗難対策装置は、上面視においては左右一対の車体フレームの間に位置し、側面視においては当該車体フレームの下側に位置することになる。車体フレームは一般的に金属材料により形成されることから、盗難対策装置がこのような位置に搭載されると、車体フレームによって電波の送受信の状態が悪化するおそれがある。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、自動二輪車において、盗難対策装置が着座シートの下側に設けられる物品収納室を圧迫しないようにすることである。また、本発明が解決しようとする課題は、盗難対策装置が着座シートの下側に設けられる物品収納室を圧迫しないようにしつつ、盗難対策装置による電波の送受信の状態を良好に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、自車の位置を測定可能で、かつ測定した自車の位置の情報を無線送信可能な盗難対策装置と、略前後方向に延伸する左右一対のリヤフレームと、前記左右一対のリヤフレームの上側に配置される着座シートと、前記着座シートの下側において前記左右一対のリヤフレームのそれぞれの外側を覆うフレームカバーと、を備え、前記左右一対のリヤフレームの間には物品収納室が設けられ、前記盗難対策装置は、左右方向において前記左右一対のリヤフレームを挟んで前記物品収納室の外側であって、前記フレームカバーに覆われる領域に設けられ、前記物品収納室と前記盗難対策装置が設けられる領域とは、前記左右一対のリヤフレームによって仕切られていることを特徴とする。
【0007】
前記着座シートは、運転者用シートと、前記運転者用シートの後側に設けられる同乗者用シートとを有し、前記フレームカバーは、前記同乗者用シートよりも左右方向外側に膨出する膨出部を有し、前記盗難対策装置は、前記膨出部の内側に設けられることを特徴とする。
【0008】
前記盗難対策装置は、上面視における左右方向寸法が側面視における上下方向寸法よりも小さくなる態様で設けられるとともに、前記盗難対策装置の上辺が前記リヤフレームの上辺よりも上側に位置することを特徴とする。
【0009】
左右方向の一側に設けられるサイドスタンドを更に有し、前記盗難対策装置は、前記サイドスタンドの反対側の一側に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、左右一対のリヤフレームの間に物品収納室が形成される構成であっても、物品収納室の内側の領域が盗難対策装置によって圧迫されることがない。したがって、物品収納室の容積が減少することを防止でき、物品収納室の利便性の低下を防止することができる。さらに、盗難対策装置がフレームカバーの膨出部の内側の領域に収納される構成であるため、盗難対策装置が外部からは見えず、外部から容易にアクセスできない。また、盗難対策装置が収納される領域(=フレームカバーの膨出部の内側の領域)と物品収納室とはリヤフレームによって仕切られている。このような構成であると、物品収納室を使用するために同乗者用シートが取り外された場合であっても、盗難対策装置は外部に露出しない。このため、盗難対策装置が取り付けられている場所が分かりづらく、かつ、物品収納室から盗難対策装置にアクセスすることができない。このように、盗難対策装置は、本自動二輪車の外部や物品収納室には露出せず、かつ容易にアクセスできない。したがって、盗難対策装置が取り外されたり破壊されたりすることを防止または抑制でき、盗難防止の効果の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる自動二輪車を左側から見た側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる自動二輪車の後部を上側から見た平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態にかかる自動二輪車の後部の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態にかかる自動二輪車の後部の構成を模式的に示す外観斜視図である。
図5図5(a)は、盗難対策装置の組み付け構造を模式的に示す側面図であり、図5(b)は、盗難対策装置の組み付け構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる自動二輪車を「本自動二輪車1」と称する。また、本自動二輪車1の「前」「後」「右」「左」「上」「下」の各向きは、本自動二輪車1に搭乗する運転者の向きを基準とする。各図において、本自動二輪車1の前側を矢印「Fr」で、後側を矢印「Rr」で、上側を矢印「Tp」で、下側を矢印「Bt」で、右側を矢印「R」で、左側を矢印「L」で示す。
【0013】
まず、本自動二輪車1の全体的な構成を、図1を参照して説明する。図1は、本自動二輪車1を左側から見た側面図である。図1に示すように、本自動二輪車1は、車体フレーム11と、操舵装置12と、後輪懸架装置13と、エンジンユニット14と、排気装置15と、着座シート16と、燃料タンク17と、所定のカバーと、その他所定の部材や機器を含む。さらに、本自動二輪車1には、盗難対策装置5が搭載される。
【0014】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ111と、左右一対のメインフレーム112と、ダウンチューブ(図1においては隠れて見えない)と、左右一対のリヤフレーム113R,113Lとを含む。ヘッドパイプ111は、後傾する管状の部分を有する。左右一対のメインフレーム112は、それぞれ、ヘッドパイプ111の後部から後方斜め右下と後方斜め左下に向かって延伸する。ダウンチューブは、ヘッドパイプ111の後部から左右一対のメインフレーム112の下方に向かって延伸する部分と、この部分の下端から後方に延伸してメインフレーム112の下端部に結合する部分とを有する。左右一対のリヤフレーム113R,113Lは、メインフレーム112の後上部から後方に向かって後上がりに延伸する部分である。また、左右一対のリヤフレーム113R,113Lは、互いに左右方向に所定の間隔をおいて離れている。このように、左右一対のリヤフレーム113R,113Lは、本自動二輪車1の後上部において、略前後方向に延伸する。左右一対のリヤフレーム113R,113Lの上側には、着座シート16を着脱可能に取付けるためのシートレール(図略)が設けられる。
【0015】
メインフレーム112の上側には、燃料タンク17が設けられる。燃料タンク17の後側であって、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの上側には、着座シート16が着脱可能に取り付けられる。着座シート16は、運転者用シート161と、この運転者用シート161の後側に設けられる同乗者用シート162からなる。運転者用シート161と同乗者用シート162は別個独立しており、別々にリヤフレーム113R,113Lに着脱できる。
【0016】
操舵装置12は、ステアリングシャフト(図1においては隠れて見えない)と、ハンドル121と、左右一対のフロントフォーク122と、前輪123とを含む。そして、操舵装置12は、車体フレーム11の前部に、車体フレーム11に対して回転可能に配置される。ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ111に回転可能に支持される。ハンドル121は、ステアリングシャフトの上端に設けられる。左右一対のフロントフォーク122は、それぞれ、ステアリングシャフトの左右に配置される。前輪123は、左右一対のフロントフォーク122の下端に、回転自在に配置される。ハンドル121は、左右のハンドルグリップを有する。右側のハンドルグリップには、スロットルグリップと、前輪123のブレーキレバーとが設けられる。左側のハンドルグリップには、クラッチを操作するためのクラッチレバーが設けられる。また、ハンドル121には、灯火類やクラクションを操作するためのスイッチ類(図略)が設けられる。
【0017】
エンジンユニット14は、車体フレーム11のメインフレーム112とダウンチューブとにより形成される領域に配置される。エンジンユニット14は、シリンダアセンブリと、クランクケースアセンブリとを含む。シリンダアセンブリには、燃焼室と、燃焼室に燃料と空気の混合気を供給するインテークポートと、燃焼室の排気ガスを排出するエグゾーストポートとが設けられる。クランクケースアセンブリには、エンジンのクランクシャフトと、変速機と、クラッチとが設けられる。クランクケースアセンブリの左側後部には、ドリブンシャフトの左端が突出しており、ドリブンシャフトの左端には、ドライブチェーンスプロケットが設けられる。
【0018】
後輪懸架装置13は、スイングアーム131と、ショックアブソーバ(図1においては隠れて見えない)と、後輪132とを含む。後輪懸架装置13は、車体フレーム11のメインフレーム112の後部に設けられ、前端がメインフレーム112に対して上下方向に搖動可能に連結される。ショックアブソーバは、スイングアーム131とメインフレーム112との間、またはスイングアーム131とリヤフレーム113R,113Lとの間に設けられる。そして、ショックアブソーバは、スイングアーム131からメインフレーム112またはリヤフレーム113R,113Lに伝達する振動や衝撃などを吸収や緩和する。後輪132は、スイングアーム131の後端に配置され、スイングアーム131により回転自在に支持される。後輪132の左側には、ドリブンチェーンスプロケット133が後輪132と一体に回転するように設けられる。そして、エンジンユニット14のドライブチェーンスプロケットと、後輪132のドリブンチェーンスプロケット133とは、ドライブチェーン19により回転動力を伝達可能に連結される。
【0019】
排気装置15は、消音器152と排気管151とを含む。消音器152は、エンジンユニット14の後方であって、後輪132の側方に配置される。排気管151の一方の端部は、エンジンユニット14のシリンダアセンブリのエグゾーストポートに接続される。排気管151の他方の端部は、消音器152の前側に接続される。そして、排気管151は、エンジンユニット14のシリンダアセンブリの前側から前方に向かい、シリンダアセンブリの前方において後方に向かって湾曲し、シリンダアセンブリの側方または下方を通過し、消音器152の前側に到達する。
【0020】
さらに、本自動二輪車1には、所定のカバーとして、フロントカバー201と、サイドカバー202と、ロアカバー203と、リヤカバー3とが設けられる。これらの所定のカバーは、本自動二輪車1の外観を構成する部材である。そしてこれらの所定のカバーは、たとえば樹脂材料などからなり、射出成形によって形成される。フロントカバー201は、本自動二輪車1の前側を覆う部材である。サイドカバー202は、本自動二輪車1の前部であって、主にフロントフォーク122からエンジンユニット14にかけての部分の左右方向の外側を覆う部材である。ロアカバー203は、エンジンユニット14の下部を覆う部材である。リヤカバー3は、本自動二輪車1の後上部であって、主にリヤフレーム113R,113Lを覆う部材である。フロントカバー201とサイドカバー202とロアカバー203とは、従来公知の構成が適用できる。したがって詳細な説明は省略する。リヤカバー3の構成については後述する。
【0021】
盗難対策装置5は、GPS衛星から送信される電波を受信して自車の位置を測定し、測定した自車の位置の情報を管理センターに無線送信可能な構成を有する装置である。このため、盗難対策装置5は、電波を送受信可能なアンテナ51を備える。本自動二輪車1が盗難された場合には、所有者等は電話等によって管理センターに通報する。管理センターでは、本自動二輪車1に搭載される盗難対策装置5が無線送信する自車の位置情報を受信し、本自動二輪車1の位置を特定する。なお、盗難対策装置5は、自車の位置を測定可能で、かつ測定した自車の位置の情報を無線送信可能な構成であればよく、従来公知の構成が適用できる。したがって説明は省略する。
【0022】
さらに、本自動二輪車1の左右方向の一側の下部には、サイドスタンド18が設けられる。ここでは、左側下部にサイドスタンド18が設けられる構成を示す。そして、サイドスタンド18を用いることによって、本自動二輪車1を直立の姿勢から左右方向の前記一側(=左側)に少しだけ傾斜させた姿勢で駐停車させることができる。なお、サイドスタンド18には、従来一般の構成が適用できる。したがって、詳細な説明は省略する。
【0023】
次に、本自動二輪車1の後上部の構成と、盗難対策装置5の組み付け構成について、図2図5を参照して説明する。図2は、本自動二輪車1の後上部を上側から見た平面図である。図3は、本自動二輪車1の後上部の構成を模式的に示す分解斜視図であり、右斜め前上方から見た図である。図4は、本自動二輪車1の後上部の構成を模式的に示す外観斜視図である。図5(a)は、盗難対策装置5の組み付け構造を模式的に示す側面図であり、右外側から見た図である。図5(b)は、盗難対策装置5の組み付け構成を模式的に示す断面図であり、前側から見た図である。
【0024】
図2図5に示すように、左右一対のリヤフレーム113R,113Lは、前端部がメインフレーム112に接合されており、後上がりとなる態様で略前後方向に延伸する。左右一対のリヤフレーム113R,113Lは、特に図2に示すように、互いに左右方向に所定の間隔をおいて離れている。左右一対のリヤフレーム113R,113Lの上側には、着座シート16(=運転者用シート161および同乗者用シート162)が着脱可能に取付けられる。さらに、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの間であって同乗者用シート162の下側には、物品収納室22が形成される。物品収納室22には、サービスツールや、本自動二輪車1の取扱説明書や、搭乗者が携帯する小物などを収納できる。同乗者用シート162が物品収納室22の蓋としての機能を有し、同乗者用シート162を取り外すことによって、物品収納室22の内側にアクセスすることができる。
【0025】
左右一対のリヤフレーム113R,113Lを覆うようにリヤカバー3が設けられる。ここで、リヤカバー3の構成について説明する。特に図5(a)(b)に示すように、リヤカバー3は、右側フレームカバー31と、左側フレームカバー32と、上側リヤカバー33と、下側リヤカバー34とを有する。右側フレームカバー31と左側フレームカバー32とは、それぞれ、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの左右方向外側に設けられ、左右一対のリヤフレーム113R,113Lを外側から覆う。上側リヤカバー33は、運転者用シート161と同乗者用シート162の間において、右側フレームカバー31の上部と左側フレームカバー32の上部に跨って設けられる。下側リヤカバー34は、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの下側に、右側フレームカバー31の下部と左側フレームカバー32の下部とに跨って設けられる。右側フレームカバー31と、左側フレームカバー32と、上側リヤカバー33とは、ネジなどによって左右一対のリヤフレーム113R,113Lに着脱可能に取付けられる。下側リヤカバー34と、右側フレームカバー31および左側フレームカバー32とは、クリップ35などによって結合される。このように、リヤカバー3は、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの外側に設けられ、本自動二輪車1の外観を構成する。
【0026】
そして、特に図2図5(a)(b)に示すように、右側フレームカバー31と左側フレームカバー32には、同乗者用シート162の下側に位置する部分に、左右方向の外側に向かって膨出する膨出部311,321が設けられる。さらに、特に図5(b)に示すように、リヤカバー3には、上側壁部36と下側壁部37とが設けられる。上側壁部36は、右側フレームカバー31と左側フレームカバー32のそれぞれの上辺(またはその近傍)から、左右一対のリヤフレーム113R,113Lのそれぞれの上辺Yに向かって延出する。下側壁部37は、下側リヤカバー34の右端近傍と左端近傍のそれぞれから、左右一対のリヤフレーム113R,113Lのそれぞれの下辺に向かって延出する。このように、膨出部311,321の内側には領域(=空間)が形成される。また、左右一対のリヤフレーム113R,113Lと、上側壁部36と、下側壁部37と、下側リヤカバー34に囲まれる領域が、物品収納室22となる。そして、膨出部311,321の内側の領域と物品収納室22とは、左右一対のリヤフレーム113R,113Lと、上側壁部36と、下側壁部37とによって仕切られる。このため、物品収納室22から膨出部311,321の内側に形成される領域にアクセスすることができない。
【0027】
特に図2図5(b)に示すように、盗難対策装置5が、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの外側であって、サイドスタンド18が設けられる一側と反対側の一側に取り付けられる。図2に示すように、サイドスタンド18が左側に設けられる構成であれば、盗難対策装置5は、右側のリヤフレーム113Rの外側に取り付けられる。そして、盗難対策装置5は、側面視において同乗者用シート162の下側の位置に取り付けられ、右側フレームカバー31の膨出部311の内側の領域に収納される。すなわち、盗難対策装置5は、物品収納室22の内側には設けられず、右側のリヤフレーム113Rを挟んで物品収納室22の外側に設けられる。このような構成であると、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの間に物品収納室22が形成される構成であっても、物品収納室22の内側の領域が盗難対策装置5によって圧迫されることがない。したがって、物品収納室22の容積が減少することを防止でき、物品収納室22の利便性の低下を防止することができる。さらに、盗難対策装置5が右側フレームカバー31の膨出部311の内側の領域に収納される構成であるため、盗難対策装置5が外部からは見えず、外部から容易にアクセスできない。また、盗難対策装置5が収納される領域(=右側フレームカバー31の膨出部311の内側の領域)と物品収納室22とは、リヤフレーム113R,113Lと、上部壁部と、下部壁部とによって仕切られている。このような構成であると、物品収納室22を使用するために同乗者用シート162が取り外された場合であっても、盗難対策装置5は露出しない。このため、盗難対策装置5が取り付けられている場所が分かりづらく、かつ、物品収納室22から盗難対策装置5にアクセスすることができない。このように、盗難対策装置5は、本自動二輪車1の外部や物品収納室22には露出せず、かつ容易にアクセスできない。したがって、盗難対策装置5が取り外されたり破壊されたりすることを防止または抑制でき、盗難防止の効果の向上を図ることができる。
【0028】
盗難対策装置5は、特に図5(a)(b)に示すように、上面視における左右方向寸法Bが、側面視における上下方向寸法H(または、右側フレームカバー31と同乗者用シート162の境界線Xに対して直角な方向の寸法)よりも小さくなる態様で(=姿勢で)取り付けられる。そして、盗難対策装置5は、側面視において、同乗者用シート162の下側の位置に取り付けられ、右側フレームカバー31の膨出部311の内側の領域に収納される。このような構成であると、盗難対策装置5の搭載に必要な領域の左右方向寸法を小さくできる。このため、同乗者用シート162の下側において、右側フレームカバー31の膨出部311の左右方向寸法(=左右方向の外側に向かって張り出す寸法)を小さくできる。したがって、同乗者の乗り心地の向上を図ることができる。また、膨出部311,321の左右方向寸法を小さくできるから、本自動二輪車1の後上部の外観をスリムにできる。
【0029】
さらに、図5(a)に示すように、盗難対策装置5は、側面視において、その上辺が、右側フレームカバー31の上辺と同乗者シートの下辺との境界線Xに略平行になる態様で取り付けられる。たとえば、側面視において、右側フレームカバー31の上辺と同乗者シートの下辺との境界線Xが後上がりに傾斜する構成である場合には、盗難対策装置5は、その上辺が、前記境界線Xと略同じ角度をもって後上がりに傾斜するように取り付けられる。このような構成であると、フレームカバーの上下方向寸法を大きくすることなく、フレームカバーの膨出部311,321の内側に盗難対策装置5を収納することができる。したがって、本自動二輪車1の後上部の外観をスリムにできるとともに、フレームカバーの軽量化を図ることができる。
【0030】
また、盗難対策装置5は、特に図5(a)に示すように、側面視において、アンテナ51(またはアンテナ51が収納される部分が、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの上辺Yよりも上側に位置するように取り付けられる。すなわち、盗難対策装置5は、その少なくとも一部が、側面視において、左右一対のリヤフレーム113R,113Lの上辺Yよりも上側に位置するように取り付けられる。このような構成であると、盗難対策装置5による電波の送受信が左右一対のリヤフレーム113R,113Lによって阻害されない。したがって、盗難対策装置5の電波の送受信を良好な状態に維持することができる。また、盗難対策装置5は、左右方向においてサイドスタンド18が設けられる一側とは反対側の一側に設けられる。本自動二輪車1は、サイドスタンド18を用いて駐停車させると、サイドスタンド18が設けられる側に傾く。このため、本自動二輪車1がサイドスタンド18を用いて駐停車している状態では、盗難対策装置5が右側のリヤフレーム113Rの斜め上側に位置する。したがって、本自動二輪車1がサイドスタンド18を用いて駐停車している状態においても、盗難対策装置5は、電波の送受信が良好な状態に維持される。
【0031】
なお、盗難対策装置5をリヤフレーム113Rに固定するための構成は、特に限定されるものではない。たとえば、ブラケットなどの部材を介してリヤフレーム113Rに固定する構成であってもよく、ネジなどによって直接的に固定する構成であってもよい。
【0032】
以上、本発明の実施形態(実施例)について詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
前記実施形態においては、オンロードタイプの自動二輪車を示したが、自動二輪車の種類は限定されない。たとえば、アンダーボーンタイプの自動二輪車、スクータータイプの自動二輪車、オフロードタイプの自動二輪車にも適用できる。要は、左右一対のリヤフレーム113R,113Lを有する自動二輪車(原動機付自転車も含む)であれば適用可能である。
【0034】
また、前記実施形態においては、着座シート16が互いに別体である運転者用シート161と同乗者用シート162を有する構成を示したが、着座シート16に運転者用シート161と同乗者用シート162とが一体に形成される構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、自車の位置の情報を無線送信できる盗難対策装置が搭載される自動二輪車に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:本発明の実施形態にかかる自動二輪車、11:車体フレーム、113R,113L:左右一対のリヤフレーム、16:着座シート、161:運転者用シート、162:同乗者用シート、18:サイドスタンド、3:リヤカバー、31:右側フレームカバー、311:右側フレームカバーの膨出部、32:左側フレームカバー、321:左側フレームカバーの膨出部、33:上側リヤカバー、34:下側リヤカバー、35:クリップ、36:上側壁部、37:下側壁部、5:盗難対策装置、51:アンテナ、H:盗難対策装置の上下方向寸法、B:盗難対策装置の左右方向寸法、X:フレームカバーと同乗者用シートの境界線、Y:リヤフレームの上辺(上面)
図1
図2
図3
図4
図5