(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記後端保持部材は、前記転写部材の外周面に対向し且つ当該転写部材の回転軸に沿って延び、当該転写部材の回転軸に沿う方向に張力が付与される帯状部材を備えることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成の一例を示す図である。
この画像形成装置1は、トナー像の形成を行う画像形成部10と、画像形成部10で形成されたトナー像を用紙Sに転写する転写部20と、転写部20によって用紙Sに転写されたトナー像を用紙Sに定着する定着部40と、転写部20に対しトナー像を転写するための用紙Sを供給する用紙供給部50とを備えている。また、この画像形成装置1は、画像形成部10、転写部20、定着部40および用紙供給部50等の動作を制御する制御部100をさらに備えている。ここで、画像形成装置1を構成する各部は、筺体2の内部に収容されており、この筺体2の上部には、定着部40から排出された用紙Sを積載する排紙積載部3が設けられている。
【0010】
これらのうち、画像形成部10は、感光体ドラム11と、この感光体ドラム11を帯電する帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11を露光する露光装置13と、帯電および露光によって感光体ドラム11に形成された静電潜像をトナーによって現像するロータリ現像装置14と、現像されたトナー像を転写した後に感光体ドラム11上に残ったトナー等を清掃する清掃装置15とを備えている。
【0011】
像保持体の一例としての感光体ドラム11は、その表面(外周面)に感光層(図示せず)が形成されるとともに、回転軸11aを中心に矢印A方向に回転するように取り付けられる。そして、帯電装置12、露光装置13、ロータリ現像装置14および清掃装置15は、感光体ドラム11の周囲に、矢印A方向に沿ってこの順番に配置される。ここで、感光体ドラム11の外径は、例えば30mmとなっている。
【0012】
帯電装置12は、本実施の形態においては接触ローラ型の放電装置で構成されており、感光体ドラム11とともに回転しながら感光体ドラム11を帯電する。
露光装置13は、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光照射を行うことで、静電潜像を形成する。なお、本実施の形態の露光装置13は、感光体ドラム11の軸方向に沿って複数の発光素子(例えばLED)を配列した構成を有している。
【0013】
ロータリ現像装置14は、感光体ドラム11の回転軸11aの軸方向に沿って延びる回転軸14aと、回転軸14aの周囲に配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各現像器14Y、14M、14C、14Kとを備えている。また、ロータリ現像装置14は、回転軸14aを中心として矢印C方向に回転するように構成されており、感光体ドラム11と対向する位置(以下の説明では現像位置という)に、いずれかの現像器が停止するようになっている。そして、ロータリ現像装置14には、露光装置13によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を、現像位置に停止した現像器のトナーを用いて現像する。なお、ロータリ現像装置14の外径は、例えば100mmとなっている。
【0014】
清掃装置15は、感光体ドラム11の表面に残ったトナーやトナー以外の付着物を除去する。本実施の形態の清掃装置15は、感光体ドラム11の表面に接触するブレード式のクリーナで構成されている。
【0015】
また、転写部20は、感光体ドラム11に対向し、感光体ドラム11の回転軸11aの軸方向に沿って延びるとともに回転可能に配置される転写ドラム21と、転写ドラム21の外周面にて用紙Sの搬送方向先端側を把持する先端グリッパ22と、同じく転写ドラム21の外周面にて用紙Sの搬送方向後端側を把持する後端グリッパ23とを備えている。ここで、転写ドラム21は、感光体ドラム11との対向位置において、感光体ドラム11の回転方向(矢印A方向)と同じ向きとなる矢印B方向に回転するように構成されている。なお、転写ドラム21の外径は、例えば120mmとなっている。このように、本実施の形態では、転写ドラム21の外径が、感光体ドラム11の外径よりも大きく設定されている。
【0016】
これらのうち、転写部材の一例としての転写ドラム21は、円筒形状を有する基部21Aと、この基部21Aの外周面に設けられた弾性層21Bとを備えている。ここで、弾性層21Bは、基部21Aの外周面のうち、基部21Aの軸方向に沿う一部領域を除く部位を覆うようになっている。すなわち、弾性層21Bは、C字状の断面を有している。これにより、転写ドラム21における基部21Aの外周面のうち、弾性層21Bによって覆われない部位は、基部21Aが露出した露出部21Cとなっている。
【0017】
本実施の形態における基部21Aは導電性を有する中空管で構成され、例えば金属が用いられている。一方、弾性層21Bは半導電性を有し且つ発泡体を含む弾性部材で構成され、例えば導電性物質を含有させたポリウレタン等の樹脂が用いられている。
また、基部21Aには、図示しない転写電源により、トナーとは逆極性の転写バイアスが印加されるようになっている。一方、感光体ドラム11は接地されている。
【0018】
なお、以下の説明においては、感光体ドラム11と、転写ドラム21とが対向する位置を、転写位置Trと称する。本実施の形態では、転写位置Trにおいては、感光体ドラム11に設けられた感光層と転写ドラム21に設けられた弾性層21Bとが接触することにより、転写ニップ部が構成される。なお、転写位置Trに転写ドラム21の露出部21Cが配置される場合、感光体ドラム11および露出部21Cは接触しない。
【0019】
また、先端保持部材の一例としての先端グリッパ22は、転写ドラム21の外周面上のうち、露出部21Cにおいて弾性層21Bの回転方向先端側となる部位に、転写ドラム21の軸方向に沿って設けられている。そして、先端グリッパ22は、転写ドラム21の基部21Aに取り付けられており、転写ドラム21の回転に伴って先端グリッパ22も回転するようになっている。
【0020】
一方、後端保持部材の一例としての後端グリッパ23は、転写ドラム21の外周面に沿って周回可能に取り付けられており、転写ドラム21に対して独立して回転および停止することができるようになっている。これにより、本実施の形態では、転写ドラム21の外周面上での先端グリッパ22と後端グリッパ23との位置関係(距離)が変えられるようになっている。
【0021】
また、定着部40は、加熱源(図示せず)を有し回転可能に設置される加熱ロール41と、この加熱ロール41に接触配置されて加熱ロール41とともに定着ニップ部を形成する加圧ロール42とを備えている。
【0022】
さらに、用紙供給部50は、転写ドラム21の下方に配置されるとともに内部に記録材の一例としての用紙Sを収容する用紙収容部51と、用紙収容部51から用紙Sを取り出す取り出しロール52と、取り出しロール52によって取り出された用紙Sを、タイミングを合わせて転写ドラム21に供給する一対の供給ロール53とを備えている。
【0023】
なお、以下の説明においては、用紙収容部51から、供給ロール53を介して転写ドラム21に向かう用紙Sの搬送経路を給紙経路61と称する。また、転写ドラム21の外周面における用紙Sの搬送経路を回転経路63と称し、転写位置Trから定着部40を介して排紙積載部3に向かう用紙Sの搬送経路を排紙経路64と称する。さらに、給紙経路61が転写ドラム21の外周面に到達する部位を給紙位置Pと称し、給紙経路61における一対の供給ロール53の対向部位を供給ニップ部Nと称する。
【0024】
この画像形成装置1では、転写ドラム21の回転方向(矢印B方向)に対し、給紙位置Pは転写位置Trよりも上流側に位置している。そして、後端グリッパ23は、通常、
図1に示したように、転写ドラム21の回転方向(矢印B方向)に対し、転写位置Trよりも上流側且つ給紙位置Pよりも下流側となる、対向位置の一例としての待機位置Wにて停止している。
【0025】
また、本実施の形態の画像形成装置1は、回転する転写ドラム21の位相を測定する位相センサ31と、給紙位置Pを通過する用紙Sを検知する用紙検知センサ32とをさらに備えている。ここで、位相センサ31は、転写ドラム21の外周面に対向して配置されており、転写ドラム21の外周面に設けられたマーク(図示せず)を検知することで、回転する転写ドラム21の位相を測定する。また、用紙検知センサ32は、給紙位置Pにおいて転写ドラム21の外周面に対向するように配置されており、給紙経路61から供給されてくる用紙Sを検知するとともに、回転経路63に沿って移動する用紙Sも検知する。
【0026】
次に、転写部20を構成する転写ドラム21、先端グリッパ22および後端グリッパ23の構成について、より詳細な説明を行う。
図2は転写部20の全体構成を説明するための斜視図であり、
図3は転写部20(転写ドラム21、先端グリッパ22および後端グリッパ23)の周方向断面図であり、
図4は
図3におけるIV−IV断面図である。なお、
図2に示す転写部20では、図中左上側が
図1におけるフロント側(符号Fで示す)に、図中右下側が
図1におけるリア側(符号Rで示す)に、それぞれ対応している。また、
図3は、転写部20の周方向断面を直線状に展開した展開図となっており、
図3に示す基部21Aの左側端部および右側端部は、実際にはつながっている。さらに、
図4は、転写部20における転写ドラム21および後端グリッパ23の軸方向断面図となっている。
【0027】
本実施の形態の転写ドラム21は、上述したように、円筒形状を有する基部21Aと、この基部21Aの外周面に、基部21Aの軸方向両端部および露出部21Cを除く領域に設けられた弾性層21Bとを備えている。この転写ドラム21は、例えば基部21Aの内周面に接触して配置される駆動ロール(図示せず)から駆動力を受けて回転するように構成されている。ここで、弾性層21Bのうち、先端グリッパ22が取り付けられる側の端部を弾性層先端21BLと称し、逆側の端部を弾性層後端21BTと称する。なお、弾性層21Bを基準としたとき、弾性層先端21BLは、弾性層後端21BTからみて転写ドラム21の回転方向(矢印B方向)上流側に位置する。また、弾性層21Bにおける弾性層先端21BL側には、転写ドラム21の回転方向上流側ほど弾性層21Bが厚くなることによって形成される傾斜面21Baが、また、この傾斜面21Baの上流側側端部から弾性層後端21BTには、弾性層21Bの厚みが一定となることによって形成される平坦面21Bbが、それぞれ設けられている。ここで、転写ドラム21において、基部21Aの外周面から弾性層21Bの平坦面21Bbに至る距離を、弾性層高さHeと呼ぶことにする。なお、平坦面21Bbは、実際には、湾曲した断面形状を有するものであるが、転写ドラム21の回転中心からの距離(半径)が一定となる形状を有していることから、ここでは、「平坦」の文言を用いている。
【0028】
次に、先端グリッパ22の構成について説明を行う。
本実施の形態の先端グリッパ22は、転写ドラム21の露出部21Cにおいて、転写ドラム21の軸方向に沿って延びるとともに、弾性層21Bの弾性層先端BLに隣接した状態で基部21Aに固定される固定台221と、この固定台221に対して開閉可能に配置され、閉じた状態において固定台221との間に用紙Sの用紙先端を挟み込む挟み板222とを備えている。
【0029】
この例において、固定台221はくさび状(より具体的には直角三角形状)の断面を有しており、転写ドラム21の回転方向下流側から回転方向上流側に向かって幅(厚み)が大きくなる状態で、基部21Aに取り付けられている。また、この例では、固定台221と弾性層21Bとの境界部において、固定台221の上面(断面において斜辺を構成する面)と弾性層21Bの傾斜面21Baとが、連続した面を構成するようになっている。したがって、基部21Aの外周面からの固定台221の高さ(最大高さ)は、弾性層21Bの弾性層高さHeよりも低くなっている。この固定台221は、弾性を有し且つ摩擦係数の高い材料にて構成するとよく、例えばポリウレタン等が用いられる。なお、弾性層21Bおよび固定台221を、共通の材料で一体的に構成してもかまわない。
【0030】
一方、挟み板222は、転写ドラム21の軸方向に沿って基部21A側に設けられた軸(図示せず)を中心として回転することで、固定台221の上面に接触し(
図3において実線で示す)、あるいは、固定台221の上面から離隔する(
図3において破線で示す)ように構成されている。この挟み板222は、例えばステンレス等の金属材料で形成されている。そして、固定台221に対して挟み板222が、前者の状態に設定された場合に、転写ドラム21との間に用紙Sの進行方向先端側の端部(以下では用紙先端と称する)を把持し、また、後者の状態に設定された場合に、その把持を解除する。なお、以下の説明においては、転写ドラム21に用紙Sを把持するときの先端グリッパ22の状態(
図3に実線で示す状態)を「閉」状態にあるといい、また、転写ドラム21に用紙Sを把持しないときの先端グリッパ22の状態(
図3に破線で示す状態)を「開」状態にあるという。
【0031】
そして、この例では、先端グリッパ22が閉状態に設定された場合および先端グリッパ22が開状態に設定された場合のそれぞれにおいて、基部21Aの外周面から挟み板222の自由端に至る高さは、弾性層高さHeよりも低くなっている。すなわち、本実施の形態において、先端グリッパ22の挟み板222は、開状態に設定された場合であっても、弾性層21Bの平坦面21Bbよりも突出せず、しかも、転写位置Trにおいて感光体ドラム11と接触しないように、その位置が決められている。
【0032】
今度は、後端グリッパ23の構成について説明を行う。
本実施の形態の後端グリッパ23は、転写ドラム21の外周面に対向するとともに転写ドラム21の軸方向に沿って伸び、転写ドラム21に供給された用紙Sを弾性層21Bに対し押さえる、帯状の押さえシート230を備えている。また、後端グリッパ23は、フロント側において押さえシート230の一端側を支持するフロント側支持体231Fと、リア側において押さえシート230の他端側を支持するリア側支持体231Rと、押さえシート230をフロント側支持体231Fに固定するフロント側固定ネジ232Fと、押さえシート230をリア側支持体231Rに固定するリア側固定ネジ232Rとを備えている。さらに、後端グリッパ23は、転写ドラム21におけるフロント側の端部において基部21Aの外周面に回転可能にはめ込まれ、フロント側支持体231Fを保持するとともに外部から回転駆動を受けるフロント側駆動ギア233Fと、転写ドラム21におけるリア側の端部において基部21Aの外周面に回転可能にはめ込まれ、リア側支持体231Rを保持するとともに外部から回転駆動を受けるリア側駆動ギア233Rとを備えている。
【0033】
本実施の形態において、帯状部材の一例としての押さえシート230は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されており、例えば弾性層21Bに向かう側に押された場合あるいは弾性層21Bから遠ざかる側に押された場合に、たわみが生じ得る程度の厚さを有している。また、本実施の形態の押さえシート230は、フロント側支持体231Fおよびリア側支持体231Rによって、転写ドラム21の弾性層21Bに対し傾斜した状態で配置されている。より具体的に説明すると、押さえシート230は、転写ドラム21の回転方向下流側から回転方向上流側に向かって弾性層21Bの上面(平坦面21Bb)との間隔が広がるように、その取り付けがなされている。そして、この例では、
図3に示したように、押さえシート230における、転写ドラム21の回転方向からみて下流側の端部が、弾性層21Bの平坦面21Bbと接するようになっている。なお、
図4は、
図3におけるIV−IV断面であることから、弾性層21Bの平坦面21Bbと押さえシート230とが離れた状態になっている。
【0034】
また、押さえシート230の一端を支持するフロント側支持体231Fは、フロント側駆動ギア233Fに設けられた貫通孔にはめ込まれている。一方、押さえシート230の他端を支持するリア側支持体231Rは、リア側駆動ギア233Rに設けられた貫通孔にはめ込まれている。ここで、フロント側支持体231Fは、転写ドラム21の軸方向への移動が規制された状態でフロント側駆動ギア233Fに装着されている。これに対し、リア側支持体231Rは、転写ドラム21の軸方向への移動が許容された状態でリア側駆動ギア233Rに装着されている。より具体的に説明すると、リア側支持体231Rは、リア側駆動ギア233Rに装着された際に、図示しないバネによってフロント側支持体231Fから遠ざかる側すなわちリア側に押されるようになっており、その結果、押さえシート230には、転写ドラム21の軸方向に沿う張力がかかるようになっている。
【0035】
さらに、フロント側駆動ギア233Fおよびリア側駆動ギア233Rは、それぞれがリング状に形成され、それぞれの外周面にはギアを構成するための複数の歯が設けられ、それぞれの内周面には転がり軸受(図示せず)が取り付けられた構造を有している。そして、これらフロント側駆動ギア233Fおよびリア側駆動ギア233Rは、それぞれ、内周面側に取り付けられた転がり軸受を介して転写ドラム21の基部21Aに取り付けられている。これにより、転写部20では、基部21Aの内周面を介した転写ドラム21の回転駆動と、これらフロント側駆動ギア233Fおよびリア側駆動ギア233Rを介した押さえシート230の回転駆動(周回駆動)とが、独立して行えるようになっている。また、これらフロント側駆動ギア233Fおよびリア側駆動ギア233Rの駆動/停止は、同期して実行されるようになっており、押さえシート230は、転写ドラム21の軸方向に沿って配置された状態を維持したまま、転写ドラム21における外周面の周りを周回するようになっている。
【0036】
では次に、
図1に示す画像形成装置における画像形成動作について説明を行う。なお、この画像形成装置1では、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のうち、2色乃至4色のトナーを用いて1枚の用紙Sに多色画像を形成する動作と、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒のうち、1色のトナーを用いて1枚の用紙Sに単色画像を形成する動作とを実行可能であるが、ここでは、4色のトナーを用いて1枚の用紙Sにフルカラー画像を形成する場合を例とする。
【0037】
図5は、フルカラー画像を形成する場合における画像形成動作の手順の一例を説明するためのタイミングチャートである。
ここで、
図5は、時間の経過と、(a)感光体ドラム11の駆動(ON/OFF)と、(b)帯電装置12に供給される帯電バイアス(ON/OFF)と、(c)露光装置13に供給される露光信号(ON/OFF)と、(d)現像位置に配置される現像器と、(e)転写ドラム21の駆動(ON/OFF)と、(f)転写ドラム21に対する転写バイアスの印加(ON/OFF)と、(g)先端グリッパ22の状態(開/閉)と、(h)後端グリッパ23の駆動(ON/OFF)と、(i)供給ロール53の駆動(ON/OFF)と、(j)供給ニップ部Nを通過する用紙Sと、(k)給紙位置Pを通過する用紙S(用紙検知センサ32によって検知される用紙S)と、(l)転写位置Trを通過する用紙Sと、(m)転写位置Trを通過する感光体ドラム11上の画像との関係を示している。
【0038】
この例において、画像形成動作が開始される前の初期状態では、感光体ドラム11、転写ドラム21、そして供給ロール53の駆動が、すべてOFFになっている。また、本動作の初期状態では、帯電装置12に対する帯電バイアスの供給、露光装置13に対する露光信号の供給、および転写ドラム21に対する転写バイアスの供給もOFFになっている。さらに、本動作の初期状態では、黒の現像器14Kが現像位置に配置された状態で停止している(
図1参照)。さらにまた、本動作の初期状態では、先端グリッパ22が開状態に設定されている。そして、本動作の初期状態では、後端グリッパ23が待機位置Wに配置された状態で停止している(
図1参照)。
【0039】
なお、
図5において、「Y」、「M」、「C」、「K」は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒に対応している。また、
図5において、「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」は、同一の用紙Sが、転写ドラム21の外周面における給紙位置Pおよび転写位置Trを通過する回数を示している。したがって、例えば
図5(l)に示す「転写位置通過用紙」における「S(2nd)」は、一度転写位置Trを通過した用紙Sが、再び(2度目に)転写位置Trを通過していることを意味するものとなっている。また、以下の説明においては、転写ドラム21の駆動中に転写ドラム21が1回転するのに要する期間を、転写ドラム回転周期Tと呼ぶことにする。なお、
図5においては、転写ドラム21に設けられた弾性層21Bの弾性層先端21BLが、転写位置Trに到達してから次に転写位置Trに到達するまでの間を、転写ドラム回転周期Tとして表示している。
【0040】
画像形成動作の開始に伴い、制御部100は、感光体ドラム11および転写ドラム21の駆動をOFFからONに切り替えることで、感光体ドラム11および転写ドラム21をそれぞれ回転させる。このとき、感光体ドラム11および転写ドラム21は、互いに接触した状態で、転写位置Trにおいて同じ方向に回転する。次に、制御部100は、ロータリ現像装置14を回転させ、現像位置にイエローの現像器14Yを配置させる。また、制御部100は、帯電装置12に対する帯電バイアスの供給を開始させるとともに、露光装置13に対する露光信号の供給を開始させる。このとき、制御部100は、出力画像データに基づいて作成したイエロー(Y)用の露光信号を、露光装置13に供給する。
【0041】
これに伴い、回転する感光体ドラム11の感光層が帯電装置12によって帯電された後、露光装置13による露光が行われることにより、感光体ドラム11には出力画像データに基づくイエロー用の静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム11上に形成された静電潜像がイエローの現像器14Yによって現像され、感光体ドラム11上には、出力画像データに基づくイエローのトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11上に形成されたイエローのトナー像は、感光体ドラム11の更なる回転に伴い、転写位置Trに向かって移動していく。
【0042】
一方、フルカラー画像の出力画像形成動作の開始に対応して、制御部100は用紙供給部50から用紙Sの供給を行わせる。より具体的に説明すると、制御部100は、用紙収容部51に収容された用紙Sを、取り出しロール52によって取り出すことで給紙経路61内に進入させる。このとき、制御部100は、供給ロール53の駆動をOFFのままとしており、給紙経路61内に進入してきた用紙Sの用紙先端は、供給ロール53における供給ニップ部Nの入口側に突き当たった状態で停止し、この用紙Sの斜行補正がなされる。そして、制御部100は、回転する転写ドラム21に取り付けられた先端グリッパ22が給紙位置Pに到達する際に、この用紙Sの用紙先端が給紙位置Pに到達するように、供給ロール53の駆動をOFFからONに切り替えることで、供給ロール53を回転させる。これに伴い、用紙Sの供給が再開され、用紙Sは供給ニップ部Nを通過しつつ、給紙経路61を介して給紙位置Pに到達する。そして、制御部100は、用紙Sの用紙先端が給紙位置Pに到達するのに合わせて、先端グリッパ22を開状態から閉状態へと移行させる。これにより、用紙Sの用紙先端は、転写ドラム21に機械的に把持される。このとき、用紙Sの用紙先端側は、転写ドラム21の弾性層21Bに巻き付いた状態で回転経路63に沿って搬送され、この用紙Sの用紙後端側は、供給ロール53による供給ニップ部Nにてニップされた状態で、給紙経路61に沿って搬送されることになる。
【0043】
次に、先端グリッパ22によって転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙先端は、給紙位置Pを通過し且つ待機位置Wにて停止状態を維持する後端グリッパ23をくぐり抜けた後、第1時刻t1において転写位置Trに到達する(1回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のイエローのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ31からの位相信号に基づいて露光装置13の制御を行っている。そして、制御部100は、用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、OFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、用紙Sに対するイエローのトナー像の転写(1色目)が開始される。
【0044】
また、この例では、用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達した後、この用紙Sの用紙後端が供給ニップ部Nを通過し、さらに給紙位置Pも通過する。このとき、制御部100は、用紙Sの用紙後端が供給ニップ部Nを通過した後に、供給ロール53の駆動をONからOFFに切り替えることで、供給ロール53の回転を停止させる。そして、制御部100は、この用紙Sの用紙後端が、待機位置Wで停止している後端グリッパ23との対向部に到達するのに合わせて、後端グリッパ23を、転写ドラム21と同じ方向に同じ速度で回転させる。これにより、用紙Sの用紙後端は、転写ドラム21に機械的に把持される。これに伴い、この用紙Sは、その用紙先端が先端グリッパ22によって、また、その用紙後端が後端グリッパ23によって、それぞれ把持されることになる。その結果、用紙Sの全体が、転写ドラム21の弾性層21Bに巻き付いた状態で、回転経路63に沿って搬送されることになる。
【0045】
さらに、この例では、用紙Sの用紙後端が給紙位置Pに到達した後、この用紙Sに対応するイエロー用の静電潜像の形成(露光)およびイエローのトナー像の現像が終了する。このため、制御部100は、露光装置13に対するイエロー用の露光信号の供給を終了させる。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、用紙Sの用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、ONからOFFに切り替える。これにより、用紙Sに対するイエローのトナー像の転写を終了する。また、この例では、用紙Sに対するイエローのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(イエローの現像器14Yからマゼンタの現像器14Mへの切り替え)を行う。なお、この転写動作において、感光体ドラム11から転写ドラム21側に転写されなかったイエローのトナーは、感光体ドラム11の回転に伴って、感光体ドラム11に設けられた清掃装置15によって取り除かれる。
【0046】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが供給されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたイエローの画像(
図5(m)に示すY)が通過することになり、また、用紙Sが1回目の通過を行う(
図5(l)に示すS(1st))ことになる。したがって、転写位置Trを通過した用紙Sには、イエローのトナー像が転写された状態となる。
【0047】
また、制御部100は、帯電装置12に対する帯電バイアスの供給を引き続き実行させるとともに、露光装置13に対する露光信号の供給を開始させる。このとき、制御部100は、出力画像データに基づいて作成したマゼンタ(M)用の露光信号を、露光装置13に供給する。
【0048】
これに伴い、回転する感光体ドラム11の感光層が帯電装置12によって帯電された後、露光装置13による露光が行われることにより、感光体ドラム11には出力画像データに基づくマゼンタ用の静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム11に形成された静電潜像がマゼンタの現像器14Mによって現像され、感光体ドラム11上には、出力画像データに基づくマゼンタのトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11上に形成されたマゼンタのトナー像は、感光体ドラム11の更なる回転に伴い、転写位置Trに向かって移動していく。
【0049】
一方、転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する用紙Sの用紙先端が、第2時刻t2において転写位置Trに到達する(2回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のマゼンタのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ31からの位相信号に基づいて露光装置13の制御を行っている。そして、制御部100は、用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、OFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、用紙Sに対するマゼンタのトナー像の転写(2色目)が開始される。
【0050】
また、この例では、用紙Sの用紙後端が給紙位置Pに到達した後、この用紙Sに対応するマゼンタ用の静電潜像の形成(露光)およびマゼンタのトナー像の現像が終了する。これに伴い、制御部100は、露光装置13に対するマゼンタ用の露光信号の供給を終了させる。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、用紙Sの用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、ONからOFFに切り替える。これにより、用紙Sに対するマゼンタのトナー像の転写を終了する。また、この例では、用紙Sに対するマゼンタのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(マゼンタの現像器14Mからシアンの現像器14Cへの切り替え)を行う。なお、この転写動作において、感光体ドラム11から転写ドラム21側に転写されなかったマゼンタのトナーは、感光体ドラム11の回転に伴って、感光体ドラム11に設けられた清掃装置15によって取り除かれる。
【0051】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが供給されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたマゼンタの画像(
図5(m)に示すM)が通過することになり、また、用紙Sが2回目の通過を行う(
図5(l)に示すS(2nd))ことになる。したがって、転写位置Trを通過した用紙Sには、既に転写されているイエローのトナー像に加え、マゼンタのトナー像が転写された状態となる。
【0052】
また、制御部100は、帯電装置12に対する帯電バイアスの供給を引き続き実行させるとともに、露光装置13に対する露光信号の供給を開始させる。このとき、制御部100は、出力画像データに基づいて作成したシアン(C)用の露光信号を、露光装置13に供給する。
【0053】
これに伴い、回転する感光体ドラム11の感光層が帯電装置12によって帯電された後、露光装置13による露光が行われることにより、感光体ドラム11には出力画像データに基づくシアン用の静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム11に形成された静電潜像がシアンの現像器14Cによって現像され、感光体ドラム11上には、出力画像データに基づくシアンのトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11上に形成されたシアンのトナー像は、感光体ドラム11の更なる回転に伴い、転写位置Trに向かって移動していく。
【0054】
一方、転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する用紙Sの用紙先端が、第3時刻t3において転写位置Trに到達する(3回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上のシアンのトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ31からの位相信号に基づいて露光装置13の制御を行っている。そして、制御部100は、用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、OFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、用紙Sに対するシアンのトナー像の転写(3色目)が開始される。
【0055】
また、この例では、用紙Sの用紙後端が給紙位置Pに到達した後、この用紙Sに対応するシアン用の静電潜像の形成(露光)およびトナー像の現像が終了する。これに伴い、制御部100は、露光装置13に対するシアン用の露光信号の供給を終了させる。また、これに続いて、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙後端が転写位置Trを通過する。そして、制御部100は、用紙Sの用紙後端が転写位置Trを通過するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、ONからOFFに切り替える。これにより、用紙Sに対するシアンのトナー像の転写を終了する。また、この例では、用紙Sに対するシアンのトナー像の転写が終了するのに伴って、制御部100がロータリ現像装置14を駆動させ、現像位置に配置された現像器の切り替え(シアンの現像器14Cから黒の現像器14Kへの切り替え)を行う。なお、この転写動作において、感光体ドラム11から転写ドラム21側に転写されなかったシアンのトナーは、感光体ドラム11の回転に伴って、感光体ドラム11に設けられた清掃装置15によって取り除かれる。
【0056】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが供給されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成されたシアンの画像(
図5(m)に示すC)が通過することになり、また、用紙Sが3回目の通過を行う(
図5(l)に示すS(3rd))ことになる。したがって、転写位置Trを通過した用紙Sには、既に転写されているイエローおよびマゼンタのトナー像に加え、シアンのトナー像が転写された状態となる。
【0057】
また、制御部100は、帯電装置12に対する帯電バイアスの供給を引き続き実行させるとともに、露光装置13に対する露光信号の供給を開始させる。このとき、制御部100は、出力画像データに基づいて作成した黒(K)用の露光信号を、露光装置13に供給する。
【0058】
これに伴い、回転する感光体ドラム11の感光層が帯電装置12によって帯電された後、露光装置13による露光が行われることにより、感光体ドラム11には出力画像データに基づく黒用の静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム11に形成された静電潜像が黒の現像器14Kによって現像され、感光体ドラム11上には、出力画像データに基づく黒の静電潜像に対応した黒のトナー像が形成される。その後、感光体ドラム11上に形成された黒のトナー像は、感光体ドラム11の更なる回転に伴い、転写位置Trに向かって移動していく。
【0059】
一方、転写ドラム21の回転に伴って転写ドラム21の露出部21Cが転写位置Trを通過した後、転写ドラム21に把持されることで回転経路63内を移動する用紙Sの用紙先端が、第4時刻t4において転写位置Trに到達する(4回目)。このとき、制御部100は、転写ドラム21に把持された用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、感光体ドラム11上の黒のトナー像の形成領域の移動方向先端が転写位置Trに到達するように、位相センサ31からの位相信号に基づいて露光装置13の制御を行っている。そして、制御部100は、用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、OFFからONに切り替える。これにより、転写位置Trでは、用紙Sに対する黒のトナー像の転写(4色目)が開始される。
【0060】
また、この例では、用紙Sの用紙先端が転写位置Trに到達するのに合わせて、制御部100が、先端グリッパ22を閉状態から開状態へと移行させる。これにより、用紙Sの用紙先端の把持が解除されることとなり、転写位置Trを通過した用紙Sは回転経路63から離れ、排紙経路64に沿って定着部40に向けて移動していく。この用紙Sが定着部40の定着ニップ部を通過していくことにより、用紙Sに重ね転写されたフルカラートナー像は、用紙Sに定着される。
【0061】
そして、この例では、用紙Sの用紙後端が給紙位置Pに到達した後、この用紙Sに対応する黒用の静電潜像の形成(露光)およびトナー像の現像が終了する。これに伴い、制御部100は、露光装置13に対する黒用の露光信号の供給を終了させる。また、これに続いて、用紙Sの用紙後端が待機位置Wに到達するのに合わせて、制御部100は、後端グリッパ23の回転を停止させる。これにより、後端グリッパ23は再び待機位置Wで停止することになる。このとき、用紙Sは、転写位置Trにおいて感光体ドラム11および転写ドラム21に挟まれた状態で搬送されているため、この用紙Sの用紙後端は、待機位置Wで停止した後端グリッパ23(押さえシート230)をすり抜けて移動していく。そして、制御部100は、用紙Sの用紙後端が転写位置Trに到達するのに合わせて、転写ドラム21に供給する転写バイアスを、ONからOFFに切り替える。これにより、用紙Sに対する黒のトナー像の転写を終了する。なお、この転写動作において、感光体ドラム11から転写ドラム21側に転写されなかった黒のトナーは、感光体ドラム11の回転に伴って、感光体ドラム11に設けられた清掃装置15によって取り除かれる。
その後、用紙Sは、定着部40を通過し、排紙経路64を介して排紙積載部3に積載され、1枚の用紙Sに対する出力画像形成動作が完了する。なお、出力画像形成動作の終了後、画像形成装置1を構成する各部は、それぞれ、上述した初期状態に再度設定された状態で停止する。
【0062】
ここで、転写ドラム21に転写バイアスが供給されている期間において、転写位置Trを、感光体ドラム11に形成された黒の画像(
図5(m)に示すK)が通過することになり、また、用紙Sが4回目の通過を行う(
図5(l)に示すS(4th))ことになる。したがって、転写位置Trを通過した用紙Sには、既に転写されているイエロー、マゼンタおよびシアンのトナー像に加え、黒のトナー像が転写された状態となる。
【0063】
ではここで、上述した画像形成動作における、転写ドラム21に対する用紙Sの供給動作および転写ドラム21における用紙Sの保持動作について、より詳細な説明を行う。
図6および
図7は、転写ドラム21に対する用紙Sの供給および保持の手順を説明するための図である。なお、
図6および
図7は、
図5に示すタイミングチャートにおける、第1時刻t1の前後の状態に対応している。なお、
図6および
図7に示す各状態において、感光体ドラム11は矢印A方向に、また、転写ドラム21は矢印B方向に、それぞれ回転している。
【0064】
図6(a)は、用紙Sの用紙先端SLが、給紙位置Pに到達したときの状態を示す図である。なお、このとき、先端グリッパ22は開状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は待機位置Wで停止している。
【0065】
図6(a)に示す状態において、用紙Sは、供給ロール53(
図1参照)によって挟み込まれながら移動している。ここで、本実施の形態では、転写ドラム21の回転速度(周速度)よりも、供給ロール53の回転速度(用紙Sの供給速度)をわずかに高速に設定することにより、給紙位置Pにおいて、開状態に設定される先端グリッパ22(固定台221と挟み板222との間)に、給紙経路61(
図1参照)より供給されてくる用紙Sの用紙先端SLが進入するようになっている。そして、この状態で、先端グリッパ22を開状態から閉状態へと移行させることで、この用紙Sの用紙先端SLが、先端グリッパ22によって保持される。
【0066】
図6(b)は、用紙Sの用紙先端SLが給紙位置Pを通過してから、この用紙Sの用紙先端SLが待機位置Wに到達するまでの状態を示す図である。なお、このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23を構成する押さえシート230は待機位置Wで停止している。
【0067】
図6(b)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、また、それよりも後端側となる部位が供給ロール53(
図1参照)によって、それぞれ挟まれながら移動している。また、このとき、転写ドラム21と供給ロール53とには、上述した速度差が存在する。このため、先端グリッパ22によって転写ドラム21に保持される用紙Sの用紙先端SLと、この用紙Sのうち供給ロール53によってニップされる部位との間には、たるみが生じることになり、用紙Sにおけるこの領域は、転写ドラム21の弾性層21Bから浮いた状態となる。
【0068】
図6(c)は、用紙Sの用紙先端SLが待機位置Wを通過してから、この用紙Sの用紙先端SLが転写位置Trに到達するまでの状態を示す図である。なお、このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は待機位置Wで停止している。
【0069】
図6(c)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、待機位置Wを通過する部位が弾性層21Bおよび押さえシート230によって、それよりも後端側となる部位が供給ロール53(
図1参照)によって、それぞれ挟まれながら移動している。また、このとき、先端グリッパ22に用紙先端SLが保持された用紙Sのうち、弾性層21Bの平坦面21Bbと対向する領域が、待機位置Wで停止している押さえシート230をくぐりながら通過している。
【0070】
なお、
図6(c)に示す状態となる前に、用紙Sの用紙先端SLを保持した先端グリッパ22が、待機位置Wで停止している後端グリッパ23の押さえシート230をくぐりながら通過し、先端グリッパ22に続いて、先端グリッパ22に用紙先端SLが保持された用紙Sのうち、弾性層21Bの傾斜面21Baと対向する領域が、待機位置Wで停止している押さえシート230をくぐりながら通過している。ここで、本実施の形態では、矢印B方向に沿って移動してくる弾性層21Bの傾斜面21Baに対し、押さえシート230が同じ向きに傾いた状態で停止している。このため、弾性層21Bは、押さえシート230との間に用紙Sを挟み込んだ状態で、引っ掛かり等を生じることなく、押さえシート230との対向部を通過していく。
【0071】
これに続いて、互いに接触する転写ドラム21の弾性層21B(平坦面21Bb)と押さえシート230の下流側端部との間に、先端グリッパ22によって用紙先端SLが保持された用紙Sが入り込んでいくことになる。この用紙Sが進入する際、弾性層21B自身が有する弾性および押さえシート230自身が有するたわみ性によってこれらが変形し、両者の間に用紙Sの厚さに対応するギャップが発生する。その結果、この用紙Sは、弾性層21Bと押さえシート230とによって挟み込まれた状態で、押さえシート230との対向部を通過していくことになる。ここで、本実施の形態では、弾性層21Bと用紙Sとの間に働く摩擦力よりも、用紙Sと押さえシート230との間に働く摩擦力の方が小さくなっている。このため、用紙先端SLが先端グリッパ22によって保持された用紙Sは、押さえシート230によって弾性層21Bに押し付けられるとともに、用紙Sに接触する押さえシート230が滑った状態で、矢印B方向に沿って移動していく。
【0072】
ここで、この用紙Sには、上述したように、転写ドラム21および供給ロール53の速度差に起因するたるみが生じている。ただし、先端グリッパ22に用紙先端SLが保持された用紙Sには、待機位置Wで停止した状態でこの用紙Sに接触する押さえシート230により、矢印B方向とは逆向きの力がかかっている。このため、待機位置Wを通過した用紙Sにおけるたるみは解消され、弾性層21Bの平坦面21Bbに対し、浮きが抑制された状態で面接触するようになる。
【0073】
図6(d)は、用紙Sの用紙先端SLが転写位置Trを通過してから、この用紙Sの用紙後端ST(後述する
図7(a)参照)が供給ニップ部N(
図1参照)に到達するまでの状態を示す図である。なお、このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は待機位置Wで停止している。
【0074】
図6(d)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、待機位置Wを通過する部位が弾性層21Bおよび押さえシート230によって、それよりも後端側となる部位が供給ロール53(
図1参照)によって、それぞれ挟まれながら移動している。また、用紙Sの用紙先端SLが転写位置Trを通過することに伴い、用紙Sには、感光体ドラム11から画像(この例ではイエローのトナー像)が転写され始めている。このとき、転写位置Trを通過する用紙Sは、上述した理由によって弾性層21Bに面接触しているため、転写位置Trを通過する用紙Sに、しわ等が生じにくい状態となっている。
【0075】
図7(a)は、用紙Sの用紙後端STが供給ニップ部N(
図1参照)を通過してから、この用紙Sの用紙後端STが待機位置Wに到達するまでの状態を示す図である。なお、このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は待機位置Wで停止している。
【0076】
図7(a)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、転写位置Trを通過する部位が感光体ドラム11および弾性層21Bによって、待機位置Wを通過する部位が押さえシート230および弾性層21Bによって、それぞれ挟まれながら移動している。なお、このとき、用紙Sには、引き続き、感光体ドラム11からイエローのトナー像が転写されている。
【0077】
図7(b)は、用紙Sの用紙後端STが待機位置Wに到達したときの状態を示す図である。なお、このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は、待機位置Wで停止した状態から矢印B方向に周回する状態へと移行する。
【0078】
図7(b)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、用紙後端ST側において待機位置Wを通過する部位(用紙後端STよりも数mm程度下流側となる部位)が弾性層21Bおよび押さえシート230によって、それぞれ挟まれながら移動している。そして、この状態で、後端グリッパ23が、待機位置Wで停止した状態から、転写ドラム21と同じ方向に同じ周速度で周回する状態へと移行する。これにより、この用紙Sの用紙先端SLが先端グリッパ22によって保持されるのに加え、この用紙Sの用紙後端STが後端グリッパ23によって保持されることになる。
【0079】
図7(c)は、用紙Sの用紙後端STが待機位置Wを通過してから、この用紙Sの用紙後端STが転写位置Trに到達するまでの状態を示す図である。このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は矢印B方向に周回している。
【0080】
図7(c)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、その用紙後端STが後端グリッパ23によって、それぞれ挟まれながら移動している。また、このとき、用紙Sは、弾性層21Bに平坦面21Bbに沿って取り付けられている。なお、このとき、用紙Sには、引き続き、感光体ドラム11からイエローのトナー像が転写されている。
【0081】
図7(d)は、用紙Sの用紙後端STが転写位置Trを通過しているときの状態を示す図である。このとき、先端グリッパ22は閉状態に設定され、後端グリッパ23における押さえシート230は矢印B方向に周回している。
図7(d)に示す状態において、用紙Sは、その用紙先端SLが先端グリッパ22によって、その用紙後端STが後端グリッパ23によって、それぞれ挟まれながら移動している。また、このとき、転写位置Trを、用紙Sの用紙後端STを挟んだ押さえシート230が通過しているが、押さえシート230は、弾性層21B自身が有する弾性と押さえシート230自身が有するたわみ性とにより、感光体ドラム11の形状に倣って変形している。なお、このとき、用紙Sに対するイエローのトナー像の転写は完了している。
【0082】
このように、本実施の形態では、待機位置Wで停止する押さえシート230を、転写ドラム21に供給される用紙Sに接触させ、転写ドラム21の回転方向と逆向きの力を付与することで、用紙Sを弾性層21Bに密着させるようにしたので、用紙Sのしわ等に起因する転写不良を発生し難くすることができる。
【0083】
また、本実施の形態では、押さえシート230を、転写ドラム21の外周面に用紙Sの用紙後端STを保持させるための後端グリッパ23としても利用するようにしたので、転写ドラム21の外周面上にて用紙Sを引き延ばすための部材とこの用紙Sの用紙後端STを保持する部材とを別々に設けた場合と比較して、構成を簡易なものとすることができる。
【0084】
さらに、本実施の形態では、押さえシート230を傾斜させて配置するようにしたので、押さえシート230を待機位置Wで停止させ且つ用紙Sが存在しない状態で転写ドラム21を回転させる場合に、転写ドラム21が押さえシート230に引っかかるのを抑制することができる。
【0085】
さらにまた、本実施の形態では、転写ドラム21の弾性層21Bの回転方向上流側に傾斜面21Baを設けるようにしたので、押さえシート230を待機位置Wで停止させ且つ用紙Sが存在しない状態で転写ドラム21を回転させる場合に、転写ドラム21が押さえシート230に引っかかるのを抑制することができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、転写ドラム21における弾性層21Bの平坦面21Bbと、押さえシート230における、転写ドラム21の回転方向からみて上流側の端部とを接触させるようにしていたが、これに限られるものではない。例えば、弾性層21Bの平坦面21Bbと、押さえシート230との間に、この画像形成装置1で使用可能な用紙Sの厚さに応じた隙間を設けるようにしてもかまわない。