特許第5782983号(P5782983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5782983膜天井構造、膜天井張設部材及び膜天井の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5782983
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】膜天井構造、膜天井張設部材及び膜天井の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/22 20060101AFI20150907BHJP
【FI】
   E04B5/57 Q
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-228138(P2011-228138)
(22)【出願日】2011年10月17日
(65)【公開番号】特開2013-87480(P2013-87480A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】八谷 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙志
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−049838(JP,A)
【文献】 特開2007−327261(JP,A)
【文献】 特開平06−193189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B9/00−9/36
E04B7/00−7/18
E04H15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井下地に張設される膜材を有する膜天井構造であって、
天井近傍に固定されて前記膜材の一方端部が取り付けられる膜材固定部材と、
前記膜材の他方端部が取り付けられる膜支持部材と、
前記膜支持部材を前記天井下地に取り付ける取付部材と、
を有し、
前記膜支持部材は、前記天井下地に取り付けられる天井取付板部と、前記天井取付板部における前記膜材固定部材側の端縁に接続されて天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する屈曲部と、前記屈曲部における前記天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する先端板部と、を備え、前記膜材の他方端部が、前記先端板部の先端縁から前記先端板部における前記膜材固定部材の反対側の面に回り込んで前記膜支持部材に取り付けられており、
前記取付部材は、前記屈曲部の前記膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制しながら、前記天井取付板部を前記天井下地側に移動させて前記天井下地に取り付ける、
膜天井構造。
【請求項2】
天井下地に張設される第一の膜材と、前記第一の膜材に隣接して前記天井下地に張設される第二の膜材と、を有する膜天井構造であって、
天井近傍に固定されて前記第一の膜材における前記第二の膜材の反対側の一方端部が取り付けられる第一の膜材固定部材と、
前記第一の膜材における前記第二の膜材側の他方端部が取り付けられる第一の膜支持部材と、
前記第二の膜材における前記第一の膜材側の一方端部が取り付けられる第二の膜支持部材と、
天井近傍に固定されて前記第二の膜材における前記第一の膜材の反対側の他方端部が取り付けられる第二の膜材固定部材と、
前記第一の膜支持部材及び前記第二の膜支持部材を前記天井下地に取り付ける取付部材と、
を有し、
前記第一の膜支持部材は、前記天井下地に取り付けられる第一の天井取付板部と、前記第一の天井取付板部における前記第一の膜材固定部材側の端縁に接続されて前記第一の天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する第一の屈曲部と、前記第一の屈曲部における前記第一の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する第一の先端板部と、を備え、前記第一の膜材の他方端部が、前記第一の先端板部の先端縁から前記第一の先端板部における前記第一の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで前記第一の膜支持部材に取り付けられており、
前記第二の膜支持部材は、前記天井下地に取り付けられる第二の天井取付板部と、前記第二の天井取付板部における前記第二の膜材固定部材側の端縁に接続されて前記第二の天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する第二の屈曲部と、前記第二の屈曲部における前記第二の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する第二の先端板部と、を備え、前記第二の膜材の一方端部が、前記第二の先端板部の先端縁から前記第二の先端板部における前記第二の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで前記第二の膜支持部材に取り付けられており、
前記取付部材は、前記第一の屈曲部の前記第一の膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制するとともに、前記第二の屈曲部の前記第二の膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制しながら、前記第一の天井取付板部及び前記第二の天井取付板部を一体的に前記天井下地側に移動させて前記天井下地に取り付ける、
膜天井構造。
【請求項3】
前記取付部材は、前記第一の天井取付板部及び前記第二の天井取付板部の鉛直方向下方に配置される一体取付部材と、前記一体取付部材を前記天井下地側に移動させる移動部材と、を備える、
請求項2に記載の膜天井構造。
【請求項4】
前記第一の膜支持部材は、前記第一の天井取付板部における前記第一の先端板部とは反対側の先端部から前記天井下地の反対側に突出した第一の突出端部を更に備え、
前記第二の膜支持部材は、前記第二の天井取付板部における前記第二の先端板部とは反対側の先端部から前記天井下地の反対側に突出した第二の突出端部を更に備え、
前記一体取付部材は、前記第一の天井取付板部及び前記第二の天井取付板部の下方に配置される底板部と、前記底板部の両端部から前記天井下地側に突出した一対の押上突出部と、を備える、請求項3に記載の膜天井構造。
【請求項5】
前記天井下地と前記天井取付板部との間に介挿されて前記天井取付板部が当接される天板部と、少なくとも前記天板部の一方端部から前記天井下地の反対側に突出して前記膜材固定部材側から前記屈曲部を係止する屈曲部係止用突出部と、を備える天井レールを更に有する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の膜天井構造。
【請求項6】
前記天井取付板部と前記先端板部との成す角は鋭角である、請求項1〜5の何れか一項に記載の膜天井構造。
【請求項7】
前記膜材は、不燃性材料で構成されており、長さが600mm以上5000mm以下、幅が300mm以上1800mm以下である、請求項1〜6の何れか一項に記載の膜天井構造。
【請求項8】
一方端部が天井近傍に固定される第一の膜材の他方端部と、前記第一の膜材の他方端部側に隣接されて前記第一の膜材の反対側の他方端部が天井近傍に固定される第二の膜材の一方端部と、を天井下地に取り付けて前記第一の膜材及び前記第二の膜材を張設するための膜天井張設部材であって、
前記第一の膜材における前記第二の膜材側の他方端部が取り付けられる第一の膜支持部材と、
前記第二の膜材における前記第一の膜材側の一方端部が取り付けられる第二の膜支持部材と、
前記第一の膜支持部材及び前記第二の膜支持部材を前記天井下地に取り付ける取付部材と、
を有し、
前記第一の膜支持部材は、前記天井下地に取り付けられる第一の天井取付板部と、前記第一の天井取付板部における前記第一の膜材固定部材側の端縁に接続されて前記第一の天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する第一の屈曲部と、前記第一の屈曲部における前記第一の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する第一の先端板部と、を備え、前記第一の膜材の他方端部が、前記第一の先端板部の先端縁から前記第一の先端板部における前記第一の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで前記第一の膜支持部材に取り付けられており、
前記第二の膜支持部材は、前記天井下地に取り付けられる第二の天井取付板部と、前記第二の天井取付板部における前記第二の膜材固定部材側の端縁に接続されて前記第二の天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する第二の屈曲部と、前記第二の屈曲部における前記第二の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する第二の先端板部と、を備え、前記第二の膜材の一方端部が、前記第二の先端板部の先端縁から前記第二の先端板部における前記第二の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで前記第二の膜支持部材に取り付けられており、
前記取付部材は、前記第一の屈曲部の前記第一の膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制するとともに、前記第二の屈曲部の前記第二の膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制しながら、前記第一の天井取付板部及び前記第二の天井取付板部を一体的に前記天井下地側に移動させて前記天井下地に取り付ける、
膜天井張設部材。
【請求項9】
天井下地に第一の膜材と前記第一の膜材に隣接する第二の膜材とを張設する膜天井の施工方法であって、
天井近傍に固定される第一の膜材固定部材に前記第一の膜材における前記第二の膜材の反対側の一方端部を取り付け、
天井近傍に固定される第二の膜材固定部材に前記第二の膜材における前記第一の膜材の反対側の他方端部を取り付け、
前記天井下地に取り付けられる第一の天井取付板部と、前記第一の天井取付板部における前記第一の膜材固定部材側の端縁に接続されて前記第一の天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する第一の屈曲部と、前記第一の屈曲部における前記第一の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する第一の先端板部と、を備える第一の膜支持部材に、前記第一の膜材の他方端部を、前記第一の先端板部の先端縁から前記第一の先端板部における前記第一の膜材固定部材の反対側の面に回り込まして取り付け、
前記天井下地に取り付けられる第二の天井取付板部と、前記第二の天井取付板部における前記第二の膜材固定部材側の端縁に接続されて前記第二の天井取付板部に対して前記天井下地から離間する方向に屈曲する第二の屈曲部と、前記第二の屈曲部における前記第二の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて前記天井下地から離間する方向に延在する第二の先端板部と、を備える第二の膜支持部材に、前記第二の膜材の一方端部を、前記第二の先端板部の先端縁から前記第二の先端板部における前記第二の膜材固定部材の反対側の面に回り込まして取り付け、
前記第一の屈曲部の前記第一の膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制するとともに、前記第二の屈曲部の前記第二の膜材固定部材側及び前記天井下地側への移動を規制しながら、前記第一の天井取付板部及び前記第二の天井取付板部を一体的に前記天井下地側に移動させて前記天井下地に取り付ける、
膜天井の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井下地の下方に膜材を張設した膜天井構造、天井下地の下方に膜材を張設する膜天井張設部材及びこの膜天井の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションなどの比較的狭い天井面に膜天井を施工する方法として、特許文献1に、伸縮性を有する膜材を天井材とし、この膜材の天井材を引き伸ばして対向する一対の壁に設けられたフックに引っ掛けることが記載されている。
【0003】
一方、ギャラリーやエントランスなどの広い面積の天井面には、不燃性材料を用いることが要求されるため、膜天井を構成する膜材として不燃膜材が使用される。この不燃膜材は、ガラス繊維織物にフッ素樹脂やシリコン樹脂などをコーティングしたガラス繊維樹脂シートなどが用いられる。しかしながら、このようなガラス繊維樹脂シートは非伸縮性を有するため、特許文献1に記載された方法のように、膜材の伸縮性を利用した張設方法を採用することができない。そこで、対向する壁の間に張力付与機構を有する設備を設置して不燃膜材を張設することも考えられる。しかしながら、不燃膜材を張設するスパン(間隔)が長くなるほど、強い力で不燃膜材を引っ張る必要があるため、大掛かりな張力付与機構が必要になり、しかも、この大掛かりな張力付与機構を取り付けるために強固に補強した天井下地も必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−159051号公報
【特許文献2】特開2009−099465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2には、四本の枠材を矩形に組んだフレーム枠に膜材を張設してパネルを作成し、このパネルを、所定幅の目地を設けて順次天井下地に取り付ける照明カバーが記載されている。そこで、特許文献2に記載された技術を、広い面積の天井面に不燃膜材を張設する膜天井に応用し、四本の枠材を矩形に組んだフレーム枠に不燃膜材を張設したパネルを順次天井下地に取り付けることで、膜天井を施工する方法が考えられる。
【0006】
しかしながら、四本の枠材を矩形に組んでフレーム枠を製造する作業は手間がかかる。また、施工後に地震などの振動が発生し、パネル内の張力が弛んで隣接するパネル間の目地幅が広がると、各パネルを取り外して目地幅の調整を行い、再度パネルを天井下地に取り付ける必要がある。しかも、枠材を矩形に組んだフレーム枠は、それ自体が重量物となるため、このフレーム枠を取り付けるために強固に補強した天井下地が必要になる。
【0007】
そこで、本発明は、広い面積の天井面に簡単に膜天井を施工することができ、しかも、施工後においても容易に目地幅を調整できる膜天井構造、膜天井張設部材及び膜天井の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る膜天井構造は、天井下地に張設される膜材を有する膜天井構造であって、天井近傍に固定されて膜材の一方端部が取り付けられる膜材固定部材と、膜材の他方端部が取り付けられる膜支持部材と、膜支持部材を天井下地に取り付ける取付部材と、を有し、膜支持部材は、天井下地に取り付けられる天井取付板部と、天井取付板部における膜材固定部材側の端縁に接続されて天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する屈曲部と、屈曲部における天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する先端板部と、を備え、膜材の他方端部が、先端板部の先端縁から先端板部における膜材固定部材の反対側の面に回り込んで膜支持部材に取り付けられており、取付部材は、屈曲部の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制しながら、天井取付板部を天井下地側に移動させて天井下地に取り付けるものである。
【0009】
本発明に係る膜天井構造では、膜材の一方端部が膜材固定部材に取り付けられるとともに、膜材の他方端部が先端板部の先端縁から先端板部における膜材固定部材の反対側の面に回り込んで膜支持部材に取り付けられているため、天井取付板部を天井下地に取り付けるために取付部材で天井取付板部を天井下地側に移動させると、膜材の張力等により先端板部が膜材固定部材側に引っ張られる。このとき、屈曲部の膜材固定部材側及び天井下地側への移動が規制されるため、膜支持部材は、屈曲部を支点として回動し、先端板部が膜材固定部材の反対側に向けて移動する。これにより、膜材は、膜材固定部材の反対側に向けて引っ張られて、天井下地に設置される。
【0010】
このように、本発明に係る膜天井構造によれば、取付部材で天井取付板部を天井下地に取り付けることにより、天井下地に対する膜材の設置と、膜材に対する張力の付与とを同時に行うことができるため、簡単に膜天井を施工することができる。しかも、膜材の伸縮性を必要としないため、ガラス繊維樹脂シートのような非伸縮性の不燃膜材を使用することができる。これにより、広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。
【0011】
更に、この膜天井構造は、従来のものと異なり、膜固定部材、膜支持部材及び取付部材という簡易な構成であるため、膜天井の大幅な軽量化を図ることができる。このため、従来の膜天井のように、建物側に大掛かりな補強を行う必要が無くなる。これにより、例えば、補強工事が行われていない既存の天井下地や軽量鉄骨下地などにも簡単に膜天井を施工することができる。しかも、このように簡易かつ軽量な構成であることから、膜天井を複数に分割して多数の膜材を天井下地に張設することができる。これにより、極めて広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。また、このように膜天井を分割することで、膜材の一枚あたりの張力が小さくなるため、天井下地をより簡素なものとすることができる。
【0012】
しかも、取付部材による天井取付板部の移動量を変えると、屈曲部を回転軸とした先端板部における先端縁の回転位置が変わるため、施工後に発生した地震などの振動により、隣接する膜材の間の目地幅が変化したとしても、取付部材による天井取付板部の移動量を調整するだけで、容易に目地幅を調整することができる。
【0013】
なお、膜材固定部材としては、本発明における膜支持部材及び取付部材で構成されるものや、バネやゴムで膜材を引っ張るものなど、様々なものを採用することができる。
【0014】
本発明に係る膜天井構造は、天井下地に張設される第一の膜材と、第一の膜材に隣接して天井下地に張設される第二の膜材と、を有する膜天井構造であって、天井近傍に固定されて第一の膜材における第二の膜材の反対側の一方端部が取り付けられる第一の膜材固定部材と、第一の膜材における第二の膜材側の他方端部が取り付けられる第一の膜支持部材と、第二の膜材における第一の膜材側の一方端部が取り付けられる第二の膜支持部材と、天井近傍に固定されて第二の膜材における第一の膜材の反対側の他方端部が取り付けられる第二の膜材固定部材と、第一の膜支持部材及び第二の膜支持部材を天井下地に取り付ける取付部材と、を有し、第一の膜支持部材は、天井下地に取り付けられる第一の天井取付板部と、第一の天井取付板部における第一の膜材固定部材側の端縁に接続されて第一の天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する第一の屈曲部と、第一の屈曲部における第一の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する第一の先端板部と、を備え、第一の膜材の他方端部が、第一の先端板部の先端縁から第一の先端板部における第一の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで第一の膜支持部材に取り付けられており、第二の膜支持部材は、天井下地に取り付けられる第二の天井取付板部と、第二の天井取付板部における第二の膜材固定部材側の端縁に接続されて第二の天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する第二の屈曲部と、第二の屈曲部における第二の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する第二の先端板部と、を備え、第二の膜材の一方端部が、第二の先端板部の先端縁から第二の先端板部における第二の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで第二の膜支持部材に取り付けられており、取付部材は、第一の屈曲部の第一の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制するとともに、第二の屈曲部の第一の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制しながら、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を一体的に天井下地側に移動させて天井下地に取り付けるものである。
【0015】
本発明に係る膜天井構造では、第一の膜材の他方端部が、第一の先端板部の先端縁から第一の先端板部における第一の膜固定部材の反対側に回り込んで第一の膜支持部材に取り付けられており、第二の膜材の一方端部が、第二の先端板部の先端縁から第二の先端板部における第二の膜固定部材の反対側に回り込んで第二の膜支持部材に取り付けられているため、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を天井下地に取り付けるために取付部材で第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を天井下地側に移動させると、第一の膜材及び第二の膜材の張力等により、第一の先端板部が第一の膜材固定部材側に引っ張られるとともに、第二の先端板部が第二の膜材固定部材側に引っ張られる。このとき、第一の膜支持部材における屈曲部の第一の膜材固定部材側及び天井下地側への移動が規制されるとともに、第二の膜支持部材における屈曲部の第二の膜材固定部材側及び天井下地側への移動が規制されるため、第一の膜支持部材及び第二の膜支持部材は、屈曲部を支点として回動し、第一の先端板部が第一の膜材固定部材の反対側に向けて移動するとともに、第二の先端板部が第二の膜材固定部材の反対側に向けて移動する。これにより、第一の膜材は、第一の膜材固定部材の反対側に向けて引っ張られて天井下地に設置されるとともに、第二の膜材は、第二の膜材固定部材の反対側に向けて引っ張られて天井下地に設置される。
【0016】
このように、本発明に係る膜天井構造によれば、取付部材で第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を天井下地に取り付けることにより、隣接する膜材の天井下地に対する設置と、この隣接する膜材に対する張力の付与とを同時に行うことができるため、簡単に膜天井を施工することができる。しかも、第一の膜材及び第二の膜材の伸縮性を必要としないため、ガラス繊維樹脂シートのような非伸縮性の不燃膜材を使用することができる。これにより、広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。
【0017】
更に、この膜天井構造は、従来のものと異なり、一対の膜材固定部材、一対の膜支持部材及び取付部材という簡易な構成であるため、膜天井の大幅な軽量化を図ることができる。このため、従来の膜天井のように、建物側に大掛かりな補強を行う必要が無くなる。これにより、例えば、補強工事が行われていない既存の天井下地や軽量鉄骨下地などにも簡単に膜天井を施工することができる。しかも、このように簡易かつ軽量な構成であることから、膜天井を複数に分割して多数の膜材を天井下地に張設することができる。これにより、極めて広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。また、このように膜天井を分割することで、膜材の一枚あたりの張力が小さくなるため、天井下地をより簡素なものとすることができる。
【0018】
しかも、取付部材による第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の移動量を変えると、屈曲部を回転軸とした第一の先端板部及び第二の先端板部における先端縁の回転位置が変わるため、施工後に発生した地震などの振動により、隣接する膜材の間の目地幅が変化したとしても、取付部材による第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の移動量を調整するだけで、容易に目地幅を調整することができる。
【0019】
また、本発明は、取付部材が、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の鉛直方向下方に配置される一体取付部材と、一体取付部材を天井下地側に移動させる移動部材と、を備えるものとすることができる。このように構成すれば、一体取付部材を天井下地側に移動させることで、隣接する第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を一体的に天井下地側に移動させて天井下地に取り付けることができる。これにより、隣接する第一の膜材及び第二の膜材の間の目地幅を容易に調整することができる。しかも、隣接する第一の膜支持部材及び第二の膜支持部材の間の中央付近に移動部材を配置することで、隣接する第一の膜材及び第二の膜材の間の目地幅を狭くしても、移動部材の操作性が低下するのを抑制することができる。
【0020】
また、本発明は、第一の膜支持部材が、第一の天井取付板部における第一の先端板部とは反対側の先端部から天井下地の反対側に突出した第一の突出端部を更に備えるものとし、第二の膜支持部材が、第二の天井取付板部における第二の先端板部とは反対側の先端部から天井下地の反対側に突出した第二の突出端部を更に備えるものとし、一体取付部材が、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の下方に配置される底板部と、底板部の両端部から天井下地側に突出した一対の押上突出部と、を備えるものとすることができる。このように構成すれば、第一の突出端部及び第二の突出端部を第一の押上突出部及び第二の押上突出部に引っ掛けることで、底板部の上方に第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部が配置された状態を保持することができるため、一体取付部材を天井下地側に移動させる際の作業性を向上することができる。しかも、第一の突出端部及び第二の突出端部が第一の押上突出部及び第二の押上突出部に係止されることで、第一の屈曲部の第一の膜材固定部材側への移動を規制することができるとともに、第二の屈曲部の第二の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制することができる。
【0021】
また、本発明は、天井下地と天井取付板部との間に介挿されて天井取付板部が当接される天板部と、少なくとも天板部の一方端部から天井下地の反対側に突出して膜材固定部材側から屈曲部を係止する屈曲部係止用突出部と、を備える天井レールを更に有するものとすることができる。このように構成すれば、屈曲部が天板部に当接されるとともに屈曲部係止用突出部に係止されることで、屈曲部の天井下地側への移動及び膜材固定部材側への移動を規制することができる。ところで、膜支持部材の回転支点となる屈曲部には、膜材に付与された張力に基づく荷重が集中するため、屈曲部が直接天井下地に当接されると、天井下地の負荷が大きくなって天井下地が変形する可能性がある。そこで、天井下地と天井取付板部との間に天板部を介挿することで、天井下地の負荷を軽減して天井下地が変形するのを抑制することができる。そして、この屈曲部係止用突出部を天板部の両端部に設けることで、隣接する膜材に取り付けられる一対の隣接した膜支持部材における各屈曲部の天井下地側への移動及び膜材固定部材側への移動を規制することができる。しかも、この隣接した膜支持部材の位置関係を固定することができるため、容易に目地幅の均一化を図ることができる。
【0022】
また、本発明は、天井取付板部と先端板部との成す角を鋭角とすることができる。これにより、隣接して張設される膜材との間の目地幅を狭くすることができる。しかも、目地から張設部材を見え難くすることができるとともに、目地自体を目立たなくすることができるため、室内から見上げた際にあたかも一枚の膜材からなる膜天井であるように感じさせることができる。
【0023】
また、本発明は、膜材が、不燃性材料で構成されたものとしり、長さが600mm以上5000mm以下、幅が300mm以上1800mm以下であるものとすることができる。このように不燃性材料の膜材を用いることで、広い面積の天井面に天井膜を施工することができる。しかも、膜材をこのような寸法にすることで、膜材に付与する張力の低減と膜材を張設する作業性とを両立することができる。
【0024】
本発明に係る膜天井張設部材は、一方端部が天井近傍に固定される第一の膜材と、第一の膜材の他方端部側に隣接されて第一の膜材の反対側の他方端部が天井近傍に固定される第二の膜材と、を天井下地に張設するための膜天井張設部材であって、第一の膜材における第二の膜材側の他方端部が取り付けられる第一の膜支持部材と、第二の膜材における第一の膜材側の一方端部が取り付けられる第二の膜支持部材と、第一の膜支持部材及び第二の膜支持部材を天井下地に取り付ける取付部材と、を有し、第一の膜支持部材は、天井下地に取り付けられる第一の天井取付板部と、第一の天井取付板部における第一の膜材固定部材側の端縁に接続されて第一の天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する第一の屈曲部と、第一の屈曲部における第一の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する第一の先端板部と、を備え、第一の膜材の他方端部が、第一の先端板部の先端縁から第一の先端板部における第一の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで第一の膜支持部材に取り付けられており、第二の膜支持部材は、天井下地に取り付けられる第二の天井取付板部と、第二の天井取付板部における第二の膜材固定部材側の端縁に接続されて第二の天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する第二の屈曲部と、第二の屈曲部における第二の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する第二の先端板部と、を備え、第二の膜材の一方端部が、第二の先端板部の先端縁から第二の先端板部における第二の膜材固定部材の反対側の面に回り込んで第二の膜支持部材に取り付けられており、取付部材は、第一の屈曲部の第一の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制するとともに、第二の屈曲部の第二の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制しながら、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を一体的に天井下地側に移動させて天井下地に取り付けるものである。
【0025】
本発明に係る膜天井張設部材によれば、上述したように、取付部材で第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を天井下地に取り付けることにより、隣接する膜材の天井下地に対する設置と、この隣接する膜材に対する張力の付与とを同時に行うことができるため、簡単に膜天井を施工することができる。しかも、膜材の伸縮性を必要としないため、ガラス繊維樹脂シートのような非伸縮性の不燃膜材を使用することができる。これにより、広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。
【0026】
更に、この膜天井張設部材は、一対の膜支持部材及び取付部材という簡易な構成であるため、膜天井の大幅な軽量化を図ることができるため、従来の膜天井のように、建物側に大掛かりな補強を行う必要が無くなる。これにより、例えば、補強工事が行われていない既存の天井下地や軽量鉄骨下地などにも簡単に膜天井を施工することができる。しかも、このように簡易かつ軽量な構成であることから、膜天井を複数に分割して多数の膜材を天井下地に張設することができる。これにより、極めて広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。また、このように膜天井を分割することで、膜材の一枚あたりの張力が小さくなるため、天井下地をより簡素なものとすることができる。
【0027】
しかも、取付部材による第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の移動量を変えると、屈曲部を回転軸とした第一の先端板部及び第二の先端板部における先端縁の回転位置が変わるため、施工後に発生した地震などの振動により、隣接する膜材の間の目地幅が変化したとしても、取付部材による第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の移動量を調整するだけで、容易に目地幅を調整することができる。
【0028】
本発明に係る膜天井の施工方法は、天井下地に第一の膜材と第一の膜材に隣接する第二の膜材とを張設する膜天井の施工方法であって、天井近傍に固定される第一の膜材固定部材に第一の膜材における第二の膜材の反対側の一方端部を取り付け、天井近傍に固定される第二の膜材固定部材に第二の膜材における第一の膜材の反対側の他方端部を取り付け、天井下地に取り付けられる第一の天井取付板部と、第一の天井取付板部における第一の膜材固定部材側の端縁に接続されて第一の天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する第一の屈曲部と、第一の屈曲部における第一の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する第一の先端板部と、を備える第一の膜支持部材に、第一の膜材の他方端部を、第一の先端板部の先端縁から第一の先端板部における第一の膜材固定部材の反対側の面に回り込まして取り付け、天井下地に取り付けられる第二の天井取付板部と、第二の天井取付板部における第二の膜材固定部材側の端縁に接続されて第二の天井取付板部に対して天井下地から離間する方向に屈曲する第二の屈曲部と、第二の屈曲部における第二の天井取付板部の反対側の端縁に接続されて天井下地から離間する方向に延在する第二の先端板部と、を備える第二の膜支持部材に、第二の膜材の一方端部を、第二の先端板部の先端縁から第二の先端板部における第二の膜材固定部材の反対側の面に回り込まして取り付け、第一の屈曲部の第一の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制するとともに、第二の屈曲部の第二の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制しながら、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を一体的に天井下地側に移動させて天井下地に取り付ける。
【0029】
本発明に係る膜天井の施工方法によれば、第一の膜材固定部材及び第一の膜支持部材に第一の膜材を取り付けるとともに、第二の膜材を第二の膜材固定部材及び第二の膜支持部材に第二の膜材を取り付けると、第一の膜材及び第二の膜材の張力等により、第一の先端板部が第一の膜材固定部材側に引っ張られるとともに、第二の先端板部が第二の膜材固定部材側に引っ張られる。そして、第一の膜支持部材における屈曲部の第一の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制するとともに、第二の膜支持部材における屈曲部の第二の膜材固定部材側及び天井下地側への移動を規制しながら、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部を一体的に天井下地側に移動させることで、屈曲部を支点として第一の膜支持部材及び第二の膜支持部材を回動させて、第一の先端板部を第一の膜材固定部材の反対側に向けて移動させるとともに、第二の先端板部を第二の膜材固定部材の反対側に向けて移動させることができる。これにより、第一の膜材は、第一の膜材固定部材の反対側に向けて引っ張られて天井下地に設置されるとともに、第二の膜材は、第二の膜材固定部材の反対側に向けて引っ張られて天井下地に設置される。
【0030】
このように、本発明に係る膜天井の施工方法によれば、第一の膜支持部材及び第二の膜支持部材を天井下地に取り付けることにより、隣接する膜材の天井下地に対する設置と、この隣接する膜材に対する張力の付与とを同時に行うことができるため、簡単に膜天井を施工することができる。しかも、第一の膜材及び第二の膜材の伸縮性を必要としないため、ガラス繊維樹脂シートのような非伸縮性の不燃膜材を使用することができる。これにより、広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができる。
【0031】
更に、施工に用いる部材が簡易な構成のもので済むため、膜天井の大幅な軽量化を図ることができる。このため、建物側に大掛かりな補強を行う必要が無くなる。これにより、例えば、補強工事が行われていない既存の天井下地や軽量鉄骨下地などにも簡単に膜天井を施工することができる。また、膜天井を複数に分割して施工することで、極めて広い面積の天井面にも、簡単に膜天井を施工することができるとともに、膜材の一枚あたりの張力が小さくなるため、天井下地をより簡素なものとすることができる。
【0032】
しかも、このような方法で膜天井を施工すれば、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の移動量を変えることで、屈曲部を回転軸とした第一の先端板部及び第二の先端板部における先端縁の回転位置を変えることができるため、施工後に発生した地震などの振動により、隣接する第一の膜材及び第二の膜材の間の目地幅が変化したとしても、第一の天井取付板部及び第二の天井取付板部の移動量を調整するだけで、容易に目地幅を調整することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、広い面積の天井面に簡単に膜天井を施工することができ、しかも、施工後においても容易に目地幅を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態に係る膜天井を示す断面図である。
図2図1に示す膜天井の一部拡大図である。
図3】膜材を膜支持部材に取り付ける状態を示した正面図である。
図4】天井下地に天井レールを取り付けた状態を示した斜視図である。
図5】天井レールの下方に押上レールを取り付けた状態を示した断面図である。
図6】部屋隅の天井下地に取り付けた天井レールに膜支持部材を取り付けた状態を示した断面図である。
図7】押上レールに膜支持部材を引っ掛ける状態を示した断面図である。
図8】押上ネジにより押上レールを押し上げている状態を示した断面図である。
図9図8の状態を示した斜視図である。
図10】張設部材の他の例を示す一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明に係る膜天井構造、膜天井張設部材及び膜天井の施工方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
図1は、実施形態に係る膜天井を示す断面図であり、図2は、図1に示す膜天井の一部拡大図である。図1に示すように、本実施形態に係る膜天井1は、ギャラリーやエントランス等の広い面積の天井面に、複数に分割して施工されるものである。
【0037】
膜天井1は、天井下地2の下方に張設される矩形の膜材3と、膜材3を天井下地2の下方に張設する張設部材10と、を備えている。なお、図2では、隣接する2枚の膜材3を図示しているため、便宜上、張設部材10に対して膜天井1の一方端部側に配置される膜材を膜材3Aとし、張設部材10に対して膜天井1の他方端部側に配置される膜材を膜材3Bとして図示している。
【0038】
天井下地2は、天井材である膜材3を張設するための建物部位であり、梁などの建物躯体そのものや、躯体から吊下されたCチャンネルバーなどの下地材や、建物躯体又は下地材の下面に貼り付けられた石膏ボードなど、様々なものがある。
【0039】
膜材3は、矩形の薄いシート状に形成されており、その一方端部及び他方端部が張設部材10に取り付けられている。
【0040】
この膜材3は、広い面積の天井面に張設する観点から、不燃性材料で構成されていることが好ましく、特に、膜材料等認定品マップのA種、B種及びC種に規定されるような難燃処理が施されていることが好ましい。不燃性材料の膜材3としては、例えば、ガラス繊維織物に樹脂をコーティングしたガラス繊維樹脂シートが挙げられる。ガラス繊維樹脂シートは、ガラス繊維束で構成される経糸と緯糸とで製織したガラス繊維原反を樹脂で目止めし、この目止めしたガラス繊維原反の一方面側又は両面側に樹脂シートを積層したものである。目止めの樹脂及び積層する樹脂シートは、不燃性及び防汚性の観点からフッ素樹脂、シリコン樹脂又は塩化ビニル樹脂であることが好ましい。このようなガラス繊維樹脂シートとしては、例えば、日東紡績株式会社製のライトシェードに用いられているW1800G213などがある。
【0041】
ガラス繊維樹脂シートの膜材3は、伸縮性が低いため、張設する際に十分な張力を付与しないと垂れやすくなる。このため、膜材3を大きくしすぎると、膜材3に付与する張力が過大となって施工性が低下し、更に膜材3の取り扱い性も低下する。一方、膜材3を小さくしすぎると、使用する膜材3の枚数が増加するため作業工数が増加する。そこで、膜材3の長さは、600mm以上5000mm以下であることが好ましく、900mm以上2700mm以下であることが更に好ましい。また、膜材3の幅は、300mm以上1800mm以下であることが好ましく、450mm以上1200mm以下であることが更に好ましい。膜材3の長さを5000mmよりも長くし、膜材3の幅を1200mmよりも広くすると、膜材3に付与する張力が過大となるため施工性が低下し、更に膜材3の取り扱い性も低下する。一方、膜材3の長さを600mmよりも短くし、膜材3の幅を300mmよりも狭くすると、使用する膜材3の枚数が増加するため作業工数が増加する。そこで、膜材3の寸法を上記範囲とすることで、施工性及び膜材3の取り扱い性を向上させ、作業性を低下させることができる。
【0042】
この場合、膜材3は、張設部材10に取り付けられている一方端部及び他方端部を除いた部分のみが天井面となるため、天井面となる膜材3の見かけ寸法が、上記の範囲になることが好ましい。張設部材10に取り付けられる膜材3の取付しろの寸法は、張設部材10の大きさや膜材3の大きさにも拠るが、例えば、30mm以上100mm以下となる。なお、本発明者らが作成した膜材3では、長さを900mm、幅を1890mmとし、取付しろの寸法を50mmとすることで、見かけ寸法の長さを900mm、見かけ寸法の幅を1790とした。
【0043】
張設部材10は、膜支持部材11Aと、膜支持部材11Bと、天井レール12と、押上レール13と、押上ネジ14と、を備えている。
【0044】
膜支持部材11Aは、膜材3の一方端部が取り付けられるとともに、天井レール12を介して天井下地2に取り付けられる部材である。膜支持部材11Bは、膜材3の他方端部が取り付けられるとともに、天井レール12を介して天井下地2に取り付けられる部材である。
【0045】
膜支持部材11Aは、所定厚さの平板を屈曲することにより形成された同一断面の長尺部材となっている。この膜支持部材11Aは、天井下地2に取り付けられる平板状の天井取付板部21Aと、天井取付板部21Aにおける膜支持部材11B側の端縁に接続されて天井下地2から離間する方向に屈曲する屈曲部24Aと、屈曲部24Aにおける天井取付板部21の反対側の端縁に接続されて天井下地2から離間する方向に延在する先端板部22Aと、天井取付板部21における先端板部22とは反対側の先端部から天井下地2の反対側に突出された突出端部23Aと、を備えている。
【0046】
膜支持部材11Bは、所定厚さの平板を屈曲することにより形成された同一断面の長尺部材となっている。この膜支持部材11Bは、天井下地2に取り付けられる平板状の天井取付板部21Bと、天井取付板部21Bにおける膜支持部材11A側の端縁に接続されて天井下地2から離間する方向に屈曲する屈曲部24Bと、屈曲部24Bにおける天井取付板部21の反対側の端縁に接続されて天井下地2から離間する方向に延在する先端板部22Bと、天井取付板部21における先端板部22とは反対側の先端部から天井下地2の反対側に突出された突出端部23Bと、を備えている。
【0047】
なお、膜支持部材11Aと膜支持部材11Bとは、膜材3を介して対向配置されるため、膜支持部材11Aと膜支持部材11Bとが向かい合う側(図2における膜支持部材11Aの右側)が張設部材10の内側となり、膜支持部材11Aと膜支持部材11Bとが背を向ける側(図2における膜支持部材11Aの左側)が張設部材10の外側となる。
【0048】
そして、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bは構成が同一であるため、以下では、特に符号を11Aと11Bとに分けて記載する場合を除き、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bを同じ膜支持部材11として説明する。
【0049】
天井取付板部21は、押上レール13により押し上げられて、天井レール12を介して天井下地2に取り付けられる部位である。
【0050】
先端板部22は、膜材3の端部が取り付けられる部位である。具体的に説明すると、先端板部22Aにおける膜支持部材11Bの反対側の面である外側面22aに、先端板部22Aの先端縁から膜支持部材11Bの反対側に回り込んだ膜材3の一方端部が取り付けられており、先端板部22Bにおける膜支持部材11Aの反対側の面である外側面22aに、先端板部22Bの先端縁から膜支持部材11Aの反対側に回り込んだ膜材3の他方端部が取り付けられている。なお、先端板部22における外側面22aの裏側の面を内側面22bという。
【0051】
先端板部22に対する膜材3の取り付けは、様々な方法により行うことができ、例えば、図2に示すような留具25により行うことができる。この留具25は、先端板部22の外側面22aとの間に膜材3を挟みこむ押圧板25aと、膜材3を挟み込んだ押圧板25aを先端板部22の外側面22aに押圧する押圧ネジ25bとにより構成されている。押圧板25aには、押圧ネジ25bが貫通される貫通孔が形成されており、先端板部22には、押圧ネジ25bが捩じ込まれるネジ穴が形成されている。なお、膜材3は、先端板部22の長さ方向において複数個の留具25により外側面22aに取り付けられることが好ましい。
【0052】
突出端部23は、押上レール13に引っ掛ける部位であり、天井取付板部21が天井下地2に取り付けられることで、天井取付板部21の先端部から天井下地2の反対側(鉛直方向下側)に突出した状態となる。
【0053】
屈曲部24は、天井取付板部21と先端板部22とを鋭角に屈曲している。屈曲部24の屈曲角度は、0°よりも大きく、90°よりも小さい範囲であれば如何なる角度であっても良いが、作業性などの観点からは、30°以上85°以下が好ましく、40°以上80°以下が更に好ましく、50°以上75°以下が最も好ましい。この屈曲角度を30°よりも狭くすると、先端板部22の可動幅が広くなりすぎて作業性が低下してしまい、この屈曲角度を85°よりも広くすると、先端板部22の可動幅が狭くなりすぎて膜材3に付与できる張力が小さくなりすぎてしまう。そこで、屈曲部24の屈曲角度を上記の範囲とすることで、作業性を確保しながら膜材3に適切な張力を付与することができる。
【0054】
このように構成される膜支持部材11は、板バネ状になっており、天井取付板部21に対する先端板部22の弾性変形が可能となっている。具体的に説明すると、膜材3の張力等により先端板部22に外力が加わると、屈曲部24が弾性変形して外力の方向に屈曲部24の屈曲角度が変化するとともに、先端板部22が弾性変形して外力の方向に先端板部22が湾曲する。
【0055】
膜支持部材11の材質は、弾性を有するものであれば特に限定されるものではない。但し、加工性及び剛性の観点から、膜支持部材11の材質は、金属であることが好ましく、アルミであることが更に好ましい。
【0056】
天井レール12は、天井下地2に取り付けられて、同じ膜材3に取り付けられる他方の膜支持部材11側(先端板部22における外側面22aの反対側である内側面22b側)に向かう屈曲部24の移動を規制する部材である。すなわち、天井レール12は、屈曲部24Aの膜支持部材11B側に向かう移動を規制するとともに、屈曲部24Bの膜支持部材11A側に向かう移動を規制する。天井レール12は、所定厚さの平板を屈曲することにより形成された同一断面の長尺部材となっている。天井レール12の材質は、特に限定されるものではないが、加工性及び剛性の観点からは、金属であることが好ましく、アルミであることが更に好ましい。
【0057】
この天井レール12は、天井下地2に取り付けられる平板状の天板部31と、天板部31の両端部から天板部31に対して垂直に屈曲した一対の平板状の屈曲部係止用突出部32A及び屈曲部係止用突出部32Bと、を備えている。
【0058】
天板部31は、天井下地2に取り付けられることで、天井下地2と膜支持部材11との間に介挿されて天井取付板部21に当接される部位である。天板部31の幅方向(図2において左右方向)中央部には、押上ネジ14が貫通される貫通孔31aが形成されている。
【0059】
屈曲部係止用突出部32Aは、屈曲部24Aを係止することにより、同じ膜材に取り付けられる他方の膜支持部材11B側(先端板部22の内側面22b側)に向かう屈曲部24Aの移動を規制する部位である。屈曲部係止用突出部32Bは、屈曲部24Bを係止することにより、同じ膜材に取り付けられる他方の膜支持部材11側(先端板部22の内側面22b側)に向かう屈曲部24Bの移動を規制する部位である。屈曲部係止用突出部32A及び屈曲部係止用突出部32Bは、天板部31が天井下地2に取り付けられることで、天板部31の両端部から鉛直方向下方に突出した状態となる。このため、屈曲部係止用突出部32A及び屈曲部係止用突出部32Bは、膜材3Aの他方端部に取り付けられる膜支持部材11と、この膜材3に隣接する膜材3Bの一方端部に取り付けられる膜支持部材11とを、互いに外側面22aを対向させた状態で、屈曲部24Aと屈曲部24Bとを同時に係止することが可能となっている。
【0060】
押上レール13は、天井取付板部21の下方に配置されて、押上ネジ14により天井下地2側に押し上げられる部材である。押上レール13は、所定厚さの平板を屈曲することにより形成された同一断面の長尺部材となっている。押上レール13の材質は、特に限定されるものではないが、加工性及び剛性の観点からは、金属であることが好ましく、アルミであることが更に好ましい。
【0061】
この押上レール13は、平板状の底板部41と、底板部41の両端部から底板部41に対して垂直に屈曲した一対の平板状の押上突出部42A及び押上突出部42Bと、を備えている。
【0062】
底板部41は、膜材3Aの他方端部に取り付けられる膜支持部材11Bの天井取付板部21B及び膜材3Bの一方端部に取り付けられる膜支持部材11Aの天井取付板部21Aの下方に配置されて、押上ネジ14により天井下地2側に押し上げられる部位である。なお、この一対の膜支持部材11A及び膜支持部材11Bは、一対の屈曲部係止用突出部32に屈曲部24が係止される一対の膜支持部材11A及び膜支持部材11Bとなる。底板部41の幅方向(図2において左右方向)中央部には、押上ネジ14が貫通されるとともに押上ネジ14の頭部が係止される貫通孔41aが形成されている。そして、底板部41は、貫通孔41aに貫通された押上ネジ14により、各天井取付板部21の下方において略水平に配置されるとともに、この押上ネジ14を天井下地2に捩じ込むことにより、天井下地2側に押し上げられる。
【0063】
押上突出部42Aは、天井取付板部21Aを天井下地2側に押し上げるとともに、突出端部23Aが引っ掛けられる部位である。押上突出部42Bは、天井取付板部21Bを天井下地2側に押し上げるとともに、突出端部23Bが引っ掛けられる部位である。押上突出部42A及び押上突出部42Bは、底板部41が一対の天井取付板部21A及び天井取付板部21Bの下方において略水平に配置されることで、底板部41の両端部から天井下地2側(鉛直方向上側)に突出した状態となる。そして、押上突出部42A及び押上突出部42Bの先端が天井取付板部21A及び天井取付板部21Bに当接され、押上突出部42A及び押上突出部42Bの内側に突出端部23A及び突出端部23Bが当接される。このため、押上突出部42A及び押上突出部42Bの長さ(図2における上下方向の寸法)は、押上突出部42A及び押上突出部42Bの先端が天井取付板部21A及び天井取付板部21Bに当接されるように、突出端部23A及び突出端部23Bの長さ以下の寸法となっている。
【0064】
押上ネジ14は、天井下地2に捩じ込むことで、押上レール13を介して天井取付板部21A及び天井取付板部21Bを間接的に天井下地2側に押し上げて、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bを天井下地2に取り付ける部材である。押上ネジ14の材質は、特に限定されるものではないが、十分な強度を持たせる観点から、金属であることが好ましく、鋼材であることが更に好ましい。
【0065】
この押上ネジ14は、外表面に雄ネジが形成された棒状の棒状部51と、ドライバなどの工具で押上ネジ14を回転させるための頭部52と、を備えている。棒状部51の外径は、天井レール12の貫通孔31a及び押上レール13の貫通孔41aの内径以下となっており、頭部52の外径は、天井レール12の貫通孔31a及び押上レール13の貫通孔41aの内径よりも大きくなっている。
【0066】
次に、張設部材10の寸法について説明する。
【0067】
膜支持部材11、天井レール12及び押上レール13の厚さは、例えば、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.0mm以下であることが更に好ましい。この厚さを0.5mmよりも薄くすると、膜支持部材11、天井レール12及び押上レール13の剛性が低くなりすぎて膜材3を適切に支持することができなくなり、この厚さを3.0mmよりも厚くすると、膜支持部材11、天井レール12及び押上レール13が重くなってしまい、張設部材10の軽量化が損なわれてしまう。そこで、膜支持部材11、天井レール12及び押上レール13の厚さを上記の範囲とすることで、剛性を確保しながら、張設部材10の軽量化を図ることができる。
【0068】
先端板部22の長さ(図2における長尺方向の寸法)は、例えば、20mm以上100mm以下であることが好ましく、30mm以上90mm以下であることが更に好ましい。この長さを20mmよりも短くすると、膜材3に付与できる張力が小さくなりすぎ、この長さを100mmよりも長くすると、先端板部22の曲げ剛性が低下して膜材3に作用する張力により先端板部22が撓んでしまう。そこで、先端板部22の長さを上記の範囲とすることで、先端板部22の剛性を確保しながら、膜材3に適切な張力を付与することができる。
【0069】
天井レール12の幅(図2における左右方向の寸法)は、例えば、50mm以上100mm以下であることが好ましく、60mm以上90mm以下であることが更に好ましい。天井レール12は、一対の屈曲部24の移動を係止する機能を有することから、この幅が50mmよりも狭いと、張設部材10が小さくなりすぎて作業性が低下し、この幅が100mmよりも広いと、張設部材10が大きくなりすぎて、張設部材10の軽量化が損なわれてしまう。そこで、天井レール12の幅を上記の範囲内とすることで、作業性を確保しながら、張設部材10の軽量化を図ることができる。
【0070】
屈曲部係止用突出部32(32A及び32B)の長さ(図2における上下方向の寸法)は、例えば、3mm以上15mm以下であることが好ましく、5mm以上13mm以下であることが更に好ましい。この長さを3mmよりも短くすると、屈曲部24を適切に係止することができなくなり、この長さを15mm以上にすると、屈曲部24の係止に使われない無駄な部分が多くなって重くなる。そこで、屈曲部係止用突出部32の長さを上記の範囲内とすることで、屈曲部24を確実に係止しながら、屈曲部係止用突出部32の軽量化を図ることができる。
【0071】
棒状部51の長さは、例えば、20mm以上50mm以下であることが好ましく、25mm以上45mm以下であることが更に好ましい。この長さを20mmよりも短くすると、押上突出部42の先端と天板部31との間の隙間が狭くなるため、突出端部23を押上レール13に引っ掛ける作業性が低下してしまい、この長さを50mmよりも長くすると、押上ネジ14を天井下地2に捩じ込む量が長くなるため、押上ネジ14を捩じ込む作業性が低下してします。そこで、棒状部51の長さを上記の範囲とすることで、作業性を向上させることができる。
【0072】
棒状部51の外径は、例えば、2mm以上7mm以下であることが好ましく、3mm以上6mm以下であることが更に好ましい。この外径を2mmよりも細くすると、膜天井1を保持するだけの十分な強度が確保できなくなり、この外径を7mmよりも太くすると、天井下地2に太い穴を開ける必要があるため、天井下地2の保護の観点から好ましくない。そこで、棒状部51の外径を上記の範囲とすることで、天井下地2を保護しながら、膜天井1の保持強度を確保することができる。
【0073】
次に、図3図9を参照して、膜天井1の施工方法について説明する。図3は、膜材を膜支持部材に取り付ける状態を示した正面図である。図4は、天井下地に天井レールを取り付けた状態を示した斜視図である。図5は、天井レールの下方に押上レールを取り付けた状態を示した断面図である。図6は、部屋隅の天井下地に取り付けた天井レールに膜支持部材を取り付けた状態を示した断面図である。図7は、押上レールに膜支持部材を引っ掛ける状態を示した断面図である。図8は、押上ネジにより押上レールを押し上げている状態を示した断面図である。図9は、押上ネジにより押上レールを押し上げている状態を示した斜視図である。
【0074】
まず、図3に示すように、膜材3の一方端部を膜支持部材11Aに取り付けるとともに、膜材3の他方端部を膜支持部材11Bに取り付ける。すなわち、膜材3の一方端部を、先端板部22Aの先端縁から膜支持部材11Bの反対側に回り込ませて、膜支持部材11Aの外側面22aに取り付けるとともに、膜材3の他方端部を、先端板部22Bの先端縁から膜支持部材11Aの反対側に回り込ませて、膜支持部材11Bの外側面22aに取り付ける。膜支持部材11A及び膜支持部材11Bに対する膜材3の取り付けは、例えば、留具25により行う。すなわち、先端板部22Aの外側面22aと押圧板25aとの間に膜材3の一方端部を挟みこみ、押圧板25aを貫通させた押圧ネジ25bを先端板部22に捩じ込む。また、先端板部22Bの外側面22aと押圧板25aとの間に膜材3の他方端部を挟みこみ、押圧板25aを貫通させた押圧ネジ25bを先端板部22に捩じ込む。これにより、膜材3の一方端部及び他方端部は、それぞれ留具25により先端板部22の外側面22aに押圧固定される。
【0075】
次に、図4に示すように、天板部31が天井下地に当接するとともに、屈曲部係止用突出部32が天板部31に対して天井下地2の反対側(鉛直方向下側)に突出するように、天井レール12を天井下地2に取り付ける。このとき、膜天井1の一方端縁から他方端縁まで、所定の間隔(ピッチ)で、複数の天井レール12を並列に取り付ける。なお、以下の説明では、便宜上、膜天井1の一方端縁に取り付ける天井レール12を一方端縁天井レール12aという。天井レール12の取り付け間隔(ピッチ)は、膜材3を張設した際に、膜支持部材11の弾性変形により膜材3に張力を付与できるように、膜支持部材11Aにおける先端板部22の先端縁から膜支持部材11Bにおける先端板部22の先端縁までの距離が、膜材3の見かけ寸法よりも長くなるようにする。なお、後述するように、膜材3及び張設部材10は押上ネジ14により天井レール12に固定されるため、天井下地2に対する天井レール12の取り付けは、ネジや接着剤などの簡易なものでよい。
【0076】
次に、図5に示すように、底板部41に対する押上突出部42の突出方向に向けて、押上ネジ14の棒状部51を押上レール13の貫通孔41aに貫通させ、この状態で、棒状部51を天井レール12の貫通孔31aから天井下地2に捩じ込む。すると、底板部41が押上ネジ14の頭部52に係止されるため、押上レール13は、天井レール12の鉛直方向下方において略水平に配置されて、押上突出部42が底板部41に対して天井レール12側に向けられる。このとき、押上突出部42A及び押上突出部42Bの先端縁と天井レール12の天板部31との間に、膜支持部材11の突出端部23及び天井取付板部21を潜り込ませることが可能な隙間が生じるように、押上ネジ14の捩じ込み量を調節する。なお、一方端縁天井レール12aが取り付ける箇所には、押上レール13及び押上ネジ14を取り付ける必要はない。
【0077】
次に、図6に示すように、壁Wの近くの天井下地2に取り付けられた一方端縁天井レール12aを介して、膜支持部材11Aを天井下地2に取り付ける。具体的に説明すると、一方端縁天井レール12aの天板部31に天井取付板部21Aを密着させて、一方端縁天井レール12aにおける部屋内側の屈曲部係止用突出部32Aに屈曲部24Aを係止させる。そして、この状態で、押上ネジ14を、天井取付板部21A及び天板部31に貫通させて天井下地2に完全に捩じ込む。なお、一方端縁天井レール12aに取り付けられる膜支持部材11Aの天井取付板部21Aは、鉛直方向下方からドライバなどを用いて押上ネジ14を回転させることができるように、他の天井レール12に取り付けられる膜支持部材11の天井取付板部21よりも長くなっている。これにより、膜天井1の一方端縁において、膜材3の一方端部が天井下地2に対して固定される。なお、図6では、膜天井1の一方端縁に取り付けられる天井レール12は、壁Wと密着した状態としているが、実際には、施工する天井や壁の構造などに合わせて、適宜隙間が空けられる。また、一方端縁天井レール12aに捩じ込むのは、必ずしも押上ネジ14である必要は無く、天板部31を介して天井取付板部21を天井下地2に固定することができれば如何なる部材であっても良い。
【0078】
次に、図7に示すように、膜天井1の一方端縁から他方端縁にかけて、順次、突出端部23A及び突出端部23Bを押上レール13の押上突出部42A及び押上突出部42Bに引っ掛けていく。すると、押上突出部42Aの先端縁と天板部31との間に突出端部23A及び天井取付板部21Aが潜り込むとともに、押上突出部42Bの先端縁と天板部31との間に突出端部23B及び天井取付板部21Bが潜り込み、押上突出部42A及び押上突出部42Bの上方に、それぞれ天井取付板部21A及び天井取付板部21Bが配置される。これにより、隣接して張設される膜材3に取り付けられる一対の隣接した膜支持部材11A及び膜支持部材11Bの天井取付板部21が、それぞれ天板部31と押上突出部42との間に配置され、天井取付板部21及び屈曲部24が天板部31に当接した状態になる。
【0079】
次に、図8及び図9に示すように、膜天井1の一方端部側から他方端部側に向けて、順次、押上ネジ14を天井下地2に捩じ込んでいく。
【0080】
具体的に説明すると、押上ネジ14を天井下地2に捩じ込む前は、図8(a)及び図9の右側に示すように、膜支持部材11Aの先端板部22Aと膜支持部材11Bの先端板部22Bとが離間して開いた状態となっている。なお、図8において、左側に図示した膜材3Aは、膜天井1の一方端部側に配置される膜材であり、右側に図示した膜材3Bは、膜天井1の他方端部側に配置される膜材である。
【0081】
押上ネジ14を天井下地2に捩じ込んでいくと、図8(b)に示すように、押上レール13により膜支持部材11Aの天井取付板部21A及び膜支持部材11Bの天井取付板部21Bが天井下地2側に押し上げられていく。
【0082】
このとき、膜材3には、膜材3の自重などにより張力が付与されているため、先端板部22Aは、同じ膜材3Bに取り付けられている膜支持部材11B側に引っ張られるとともに、先端板部22Bは、同じ膜材3Bに取り付けられている膜支持部材11A側に引っ張られる。一方、屈曲部24Aが屈曲部係止用突出部32Aに係止されることで、屈曲部24Aの同じ膜材3Aに取り付けられている膜支持部材11B側への移動が規制されるとともに、屈曲部24Bが屈曲部係止用突出部32Bに係止されることで、屈曲部24Bの同じ膜材3Bに取り付けられている膜支持部材11A側への移動が規制される。その結果、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bは、屈曲部24を支点として回動し、先端板部22Aの先端縁が同じ膜材3Bに取り付けられている膜支持部材11Bの反対側に向けて移動するとともに、先端板部22Bの先端縁が同じ膜材3Aに取り付けられている膜支持部材11Aの反対側に向けて移動する。これにより、膜材3Aは、先端板部22Bの先端縁に引っ張られて更なる張力が付与され、膜材3Bは、先端板部22Aの先端縁に引っ張られて更なる張力が付与される。
【0083】
押上ネジ14を天井下地2に完全に捩じ込むと、図8(c)及び図9の中央に示すように、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bの回動が停止し、先端板部22A及び先端板部22Bの先端縁で形成される目地の幅が固定される。
【0084】
そして、膜材3の両端部に取り付けられた膜支持部材11A及び膜支持部材11Bを天井下地2側に押し上げる押上ネジ14を天井下地2に完全に捩じ込むことで、図9の左側に示すように、天井下地2に対する膜材3の設置と、膜材3に対する張力の付与が完了する。
【0085】
このとき、膜支持部材11Aにおける先端板部22Aの先端縁から膜支持部材11Bにおける先端板部22Bの先端縁までの距離が、膜材3の見かけ寸法よりも長くなっているため、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bが弾性変形した状態で、膜材3が張設される。
【0086】
ここで、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bの弾性変形に関して詳しく説明する。通常、天井下地2は不陸となっているため、隣接する天井レール12を平行に配置するのは極めて難しい。隣接する天井レール12の平行度が低いと、天井レール12の延在方向に沿って隣接する天井レール12間の距離が変化するため、膜材3の両端部に取り付けられる先端板部22A及び先端板部22Bの各先端縁間の距離が、天井レール12の延在方向に沿って変化する。この場合、膜支持部材11Aにおける先端板部22Aの先端縁から膜支持部材11Bにおける先端板部22Bの先端縁までの距離と膜材3の見かけ寸法とを等しくすると、膜材3に付与される張力にばらつきが生じてしまい、部分的に皺や弛みが生じてしまう。しかも、天井レール12の延在方向中央部に比べて、天井レール12の開放端である延在方向両端部では、膜材3に付与される張力が低下し易くなるため、膜材3に生じる皺や弛みが更に大きくなってしまう。
【0087】
そこで、膜支持部材11Aにおける先端板部22Aの先端縁から膜支持部材11Bにおける先端板部22Bの先端縁までの距離を、膜材3の見かけ寸法よりも長くし、膜支持部材11A及び膜支持部材11Bを弾性変形させて膜材3に張力を付与することで、膜材3に付与される張力の均一化を図ることができ、膜材3に生じる皺や弛みを低減させることができる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、押上レール13で天井取付板部21A及び天井取付板部21Bを天井下地2に取り付けることにより、隣接する膜材3の天井下地2に対する設置と、この隣接する膜材に対する張力の付与とを同時に行うことができるため、簡単に膜天井1を施工することができる。しかも、膜材3の伸縮性を必要としないため、ガラス繊維樹脂シートのような非伸縮性の不燃膜材を使用することができる。これにより、広い面積の天井面にも、簡単に膜天井1を施工することができる。
【0089】
更に、従来のものと異なり、膜支持部材11A、膜支持部材11B、天井レール12、押上レール13及び押上ネジ14という簡易な構成で張設部材10を実現できるため、膜天井1の大幅な軽量化を図ることができる。このため、従来の膜天井のように、建物側に大掛かりな補強を行う必要が無くなる。これにより、例えば、補強工事が行われていない既存の天井下地や軽量鉄骨下地などにも簡単に膜天井1を施工することができる。しかも、このように簡易かつ軽量な構成であることから、膜天井1を複数に分割して多数の膜材3を天井下地2に張設することができる。これにより、極めて広い面積の天井面にも、簡単に膜天井1を施工することができる。また、このように膜天井1を分割することで、膜材3の一枚あたりの張力が小さくなるため、天井下地2をより簡素なものとすることができる。
【0090】
しかも、押上レール13による天井取付板部21A及び天井取付板部21Bの押上量を変えると、屈曲部24A及び屈曲部24Bを回転軸とした先端板部22A及び先端板部22Bの先端縁の回転位置が変わるため、施工後に発生した地震などの振動により、隣接する膜材3の間の目地幅が変化したとしても、押上レール13による天井取付板部21A及び天井取付板部21Bの押上量を調整するだけで、容易に目地幅を調整することができる。
【0091】
また、天井下地2と天井取付板部21A及び天井取付板部21Bとの間に天板部31を介挿することで、天井下地2の負荷を軽減して天井下地が変形するのを抑制することができる。
【0092】
また、屈曲部24A及び屈曲部24Bが屈曲部係止用突出部32A及び屈曲部係止用突出部32Bに係止されることで、屈曲部24Aの膜支持部材11B側への移動を規制することができるとともに、屈曲部24Bの膜支持部材11A側への移動を規制することができる。しかも、この隣接した膜支持部材11A及び膜支持部材11Bの位置関係を固定することができるため、容易に目地幅の均一化を図ることができる。
【0093】
また、押上ネジ14により押上レール13を天井下地2側に押し上げることで、隣接する天井取付板部21A及び天井取付板部21Bを一体的に天井下地2側に押し上げて天井下地2に取り付けることができる。これにより、隣接して張設される膜材3の目地幅を容易に調整することができる。しかも、押上ネジ14が貫通される貫通孔31a及び貫通孔41aが天板部31及び底板部41の中央部に形成されているため、隣接する膜材3の間の目地幅を狭くしても、押上ネジ14の捩じ込み量を容易に調整することができる。
【0094】
また、突出端部23A及び突出端部23Bを押上突出部42A及び押上突出部42Bに引っ掛けることで、底板部41の上方に天井取付板部21A及び天井取付板部21Bが配置された状態を保持することができるため、押上ネジ14により押上レール13を天井下地2側に押し上げる際の作業性を向上することができる。しかも、突出端部23A及び突出端部23Bが押上突出部42A及び押上突出部42Bに係止されることで、屈曲部24Aの膜支持部材11B側への移動を規制することができるとともに、屈曲部24Bの膜支持部材11A側への移動を規制することができる。
【0095】
また、屈曲部24A及び屈曲部24Bにより天井取付板部21A及び天井取付板部21Bと先端板部22A及び先端板部22Bとを鋭角に屈曲させることで、目地幅を狭くすることができる。しかも、目地から張設部材10を見え難くすることができるとともに、目地自体を目立たなくすることができるため、室内から見上げた際にあたかも一枚の膜材からなる膜天井であるように感じさせることができる。
【0096】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0097】
例えば、張設部材10は、上記実施形態に記載されたものに限定されず、例えば、図10に示すようなものであってもよい。すなわち、図10(a)に示す張設部材10aのように、屈曲部の屈曲角度を90°にすることもでき、更にはこの屈曲角度を鈍角にすることもできる。また、図10(b)に示す張設部材10bのように、押上レールを用いずに、直接ネジなどで天井取付板部を天井下地側に押し上げて膜支持部材を天井下地に取り付けることもできる。また、図10(c)に示す張設部材10cのように、天井レールを用いないものとすることもできる。この場合、押上レール13により膜支持部材11の突出端部23を係止させることで、先端板部の外側に向かう屈曲部の移動を規制することができる。
【0098】
また、膜支持部材は、突出端部を備えないものとすることもできる。この場合、膜支持部材を押上レールに引っ掛けるのが難しくなるため、膜支持部材が天井下地に取り付けられるまで、手や他の部材で膜支持部材を支えることが好ましい。
【0099】
また、上記実施形態では、膜材固定部材を構成する膜支持部材11Aが天井下地2に取り付けられるものとして説明したが、膜材固定部材の取り付け位置は天井下地2に限定されるものではなく、壁などの天井近傍にある建物部位であれば如何なる場所であっても良い。
【符号の説明】
【0100】
1…膜天井、2…天井下地、3…膜材、3A…膜材(第一の膜材)、3B…膜材(第二の膜材)、10…張設部材(膜天井張設部材)、10a…張設部材、10b…張設部材、10c…張設部材、11…膜支持部材、11A…膜支持部材(膜材固定部材、第一の膜材固定部材、第二の膜支持部材)、11B…膜支持部材(膜支持部材、第一の膜支持部材、第二の膜材固定部材)、12…天井レール(取付部材、天井レール)、12a…一方端縁天井レール13…押上レール(取付部材、一体取付部材)、14…押上ネジ(取付部材、移動部材、21…天井取付板部、21A…天井取付板部(第二の天井取付板部)、21B…天井取付板部(天井取付板部、第一の天井取付板部)、22…先端板部、22a…外側面、22b…内側面、22A…先端板部(第二の先端板部)、22B…先端板部(先端板部、第一の先端板部)、23…突出端部、23A…突出端部(第二の突出端部)、23B…突出端部(第一の突出端部)、24…屈曲部、24A…屈曲部(第二の屈曲部)、24B…屈曲部(屈曲部、第一の屈曲部)、25…留具、25a…押圧板、25b…押圧ネジ、31…天板部、31a…貫通孔、32…屈曲部係止用突出部、32A…屈曲部係止用突出部(屈曲部係止用突出部)、32B…屈曲部係止用突出部(屈曲部係止用突出部)、41…底板部、41a…貫通孔、42…押上突出部、42A…押上突出部(押上突出部)、42B…押上突出部(押上突出部)、51…棒状部、52…頭部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10