【文献】
Keyvan Kasiri, Iraj Hosseini, Omid Taheri, Mohammad Javad Omidi, P. Glenn Gulak,A Preprocessing Method for PAPR Reduction in OFDM Systems by Modifying FFT and IFFT Matrices ,Personal, Indoor and Mobile Radio Communications, 2007. PIMRC 2007. IEEE 18th International Symposium on,2007年 9月,Pages: 1 - 5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記合成手段で用いる前記変換行列は、前記変換行列と同じ大きさの逆離散フーリエ変換を示す行列であって、該行列の対角に位置し、行数および列数の合計が前記変換行列の行数および列数に一致する複数の正方行列の要素以外の要素の値が0であることを特徴とする請求項1に記載の通信機。
前記合成手段で用いる前記変換行列は、複数の正方行列が該行列の対角に位置し、該複数の正方行列の行数および列数の合計が前記変換行列の行数および列数に一致し、前記正方行列の要素以外の要素が0である行列であって、前記正方行列の各要素は前記正方行列と同じ大きさの逆離散フーリエ変換を示す行列の各要素に前記正方行列ごとに定めた値の符号を反転した値を位相とする複素三角関数を乗じた値であることを特徴とする請求項1に記載の通信機。
前記正方行列ごとに定めた値は、前記正方行列を識別する番号に前記サブキャリアの半周期の位相を乗じて前記変換行列の行数で除算した値であることを特徴とする請求項3に記載の通信機。
前記分解手段で用いる前記受信変換行列は、複数の正方行列が該行列の対角に位置し、該複数の正方行列の行数および列数の合計が前記受信変換行列の行数および列数に一致し、該複数の正方行列の要素以外の要素の値が0である行列であって、前記正方行列はそれぞれ前記変換行列において前記正方行列と同じ位置にある正方行列の逆行列であることを特徴とする請求項6に記載の通信機。
前記分解手段で用いる前記受信変換行列は、複数の正方行列が該行列の対角に位置し、該複数の正方行列の行数および列数の合計が前記受信変換行列の行数および列数に一致し、前記正方行列の要素以外の要素が0である行列であって、前記正方行列の各要素は前記正方行列と同じ大きさの離散フーリエ変換を示す行列の各要素に前記正方行列ごとに定めた値を位相とする複素三角関数を乗じた値であることを特徴とする請求項6に記載の通信機。
前記正方行列ごとに定めた値は、前記正方行列を識別する番号に前記サブキャリアの半周期の位相を乗じて前記受信変換行列の行数で除算した値であることを特徴とする請求項8に記載の通信機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OFDM方式の通信では、PAPRを低減することが課題となっている。特許文献1では、PAPRを低減する最適位相を算出するために繰り返し計算処理を行い、サブキャリアごとに位相を制御する必要がある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、OFDM方式の通信において、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加を抑制し、PAPRの増加を抑制するための処理を簡易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
入力信号を所定の変調方式で変調し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する変調手段と、
前記サブキャリア変調信号をそれぞれ割り当てられた前記サブキャリアで変調する
、前記サブキャリア変調信号の値とは独立して予め定められた行列であって、所定の要素の値が0であり、正則行列である変換行列を用いて前記サブキャリア変調信号からベースバンド信号を生成する合成手段と、
前記ベースバンド信号から送信信号を生成して送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記合成手段で用いる前記変換行列は、前記変換行列と同じ大きさの逆離散フーリエ変換を示す行列であって、該行列の対角に位置し、行数および列数の合計が前記変換行列の行数および列数に一致する複数の正方行列の要素以外の要素の値が0である。
【0009】
好ましくは、前記合成手段で用いる前記変換行列は、複数の正方行列が該行列の対角に位置し、該複数の正方行列の行数および列数の合計が前記変換行列の行数および列数に一致し、前記正方行列の要素以外の要素が0である行列であって、前記正方行列の各要素は前記正方行列と同じ大きさの逆離散フーリエ変換を示す行列の各要素に前記正方行列ごとに定めた値の符号を反転した値を位相とする複素三角関数を乗じた値である。
【0010】
好ましくは、前記正方行列ごとに定めた値は、前記正方行列を識別する番号に前記サブキャリアの半周期の位相を乗じて前記変換行列の行数で除算した値である。
【0011】
好ましくは、全ての前記正方行列の行数および列数が同一の値である。
【0012】
本発明の第2の観点に係る通信機は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機であって、
送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信手段と、
サブキャリア変調信号をそれぞれ割り当てられたサブキャリアで変調する
、前記サブキャリア変調信号の値とは独立して予め定められた行列であって、所定の要素の値が0であり、正則行列である変換行列の逆行列である受信変換行列を用いて前記ベースバンド信号から前記サブキャリア変調信号を生成する分解手段と、
前記サブキャリア変調信号を所定の復調方式で復調する復調手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記分解手段で用いる前記受信変換行列は、複数の正方行列が該行列の対角に位置し、該複数の正方行列の行数および列数の合計が前記受信変換行列の行数および列数に一致し、該複数の正方行列の要素以外の要素の値が0である行列であって、前記正方行列はそれぞれ前記変換行列において前記正方行列と同じ位置にある正方行列の逆行列である。
【0014】
好ましくは、前記分解手段で用いる前記受信変換行列は、複数の正方行列が該行列の対角に位置し、該複数の正方行列の行数および列数の合計が前記受信変換行列の行数および列数に一致し、前記正方行列の要素以外の要素が0である行列であって、前記正方行列の各要素は前記正方行列と同じ大きさの離散フーリエ変換を示す行列の各要素に前記正方行列ごとに定めた値を位相とする複素三角関数を乗じた値である。
【0015】
好ましくは、前記正方行列ごとに定めた値は、前記正方行列を識別する番号に前記サブキャリアの半周期の位相を乗じて前記受信変換行列の行数で除算した値である。
【0016】
好ましくは、全ての前記正方行列の行数および列数が同一の値である。
【0017】
本発明の第3の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
入力信号を所定の変調方式で変調し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する変調ステップと、
前記サブキャリア変調信号をそれぞれ割り当てられた前記サブキャリアで変調する
、前記サブキャリア変調信号の値とは独立して予め定められた行列であって、所定の要素の値が0であり、正則行列である変換行列を用いて前記サブキャリア変調信号からベースバンド信号を生成する合成ステップと、
前記ベースバンド信号から送信信号を生成して送信する送信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第4の観点に係る通信方法は、
直交周波数分割多重通信方式の無線通信により他の機器と通信を行う通信機が行う通信方法であって、
送信信号を受信してベースバンド信号を生成する受信ステップと、
サブキャリア変調信号をそれぞれ割り当てられたサブキャリアで変調する
、前記サブキャリア変調信号の値とは独立して予め定められた行列であって、所定の要素の値が0であり、正則行列である変換行列の逆行列である受信変換行列を用いて前記ベースバンド信号から前記サブキャリア変調信号を生成する分解ステップと、
前記サブキャリア変調信号を所定の復調方式で復調する復調ステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、OFDM方式の通信において、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加を抑制し、PAPRの増加を抑制するための処理を簡易化することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る通信機の構成例を示すブロック図である。通信機1は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式の無線通信により他の機器と通信を行う。通信機1は、アンテナ10、変調部11、直並列変換部12、合成部13、送信部14、およびコントローラ20を備える。
【0023】
コントローラ20は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)21、RAM(Random Access Memory)23、およびROM(Read-Only Memory)24を備える。複雑化を避け、理解を容易にするために、コントローラ20から各部への信号線が省略されているが、コントローラ20は通信機1の各部にI/O(Input/Output)22を介して接続しており、それらの処理の開始、終了、処理内容の制御を行う。
【0024】
RAM23には、例えば送信フレームを生成するためのデータが記憶されている。ROM24は、コントローラ20が通信機1の動作を制御するための制御プログラムを格納する。コントローラ20は、制御プログラムに基づいて、通信機1を制御する。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る通信機の異なる構成例を示すブロック図である。上述の通信機1に受信機能をもたせるため、
図2に示す通信機1はさらに復調部31、並直列変換部32、分解部33、受信部34、および送受信切替部35を備える。送信機能および受信機能を備える
図2に示す通信機1を用いて、通信機1が行う通信方法について以下に説明する。
【0026】
変調部11は、入力信号を所定の変調方式で変調し、変調信号を生成し、直並列変換部12に送る。変調方式として、例えばQPSK(Quadrature Phase-Shift Keying:四位相偏移変調)を用いる。直並列変換部12は、変調信号を直並列変換して並列信号を生成し、周波数成分が互いに直交するサブキャリアに割り当て、サブキャリア変調信号を生成する。そして、サブキャリア変調信号を合成部13に送る。
【0027】
合成部13は、所定の変換行列を用いてサブキャリア変調信号をそれぞれ割り当てられたサブキャリアで変調し、合成してベースバンド信号を生成する。変換行列は、所定の要素の値が0である正則行列である。変換行列として、例えばIDFT(Inverse Discrete Fourier Transformation:逆離散フーリエ変換)を示す行列に数理的な変更を加え、所定の要素の値を0に設定した正則行列を用いる。行数および列数がNであるIDFTを示す行列は下記(1)式のように表される。下記(1)式におけるωは下記(2)式で表される。jは虚数単位である。
【0030】
図3は、実施の形態1における変換行列の例を示す図である。
図3(a)は、上記(1)式のIDFTを示す行列を、それぞれの行数および列数が同じ値mであるp×p個の正方行列に分割したものである。pは、IDFTを示す行列をそれぞれの行数および列数が同じである複数の正方行列に分割することができる任意の値である。
図3(b)に示す変換行列は、
図3(a)に示すIDFTを示す行列の対角に位置し、行数および列数の合計が変換行列の行数および列数に一致する複数の正方行列、すなわちA
11、A
22、・・・、A
ppの要素以外の要素の値を0に設定した行列である。合成部13は、例えば
図3(b)に示す行列を変換行列として用いる。
【0031】
合成部13は、サブキャリアの数が64であれば、行数および列数が64のIDFTを示す行列を、例えば16×16個の行列に分割する。分割後の各正方行列の行数および列数は4である。合成部13は、4×4の大きさの対角に位置する正方行列A
11、A
22、・・・、A
1616 の要素以外の要素を0に設定した変換行列を用いて、サブキャリア変調信号からベースバンド信号を生成する。
【0032】
またサブキャリアの数が8である場合には、合成部13は行数および列数が8のIDFTを示す行列を例えば2×2個の行列に分割して、正方行列の要素以外の要素を0に設定した変換行列を用いる。合成部13は、下記(3)式で表されるように変換行列にサブキャリア変調信号dを乗じてベースバンド信号を生成する。下記(3)式におけるωは下記(4)式で表される。
【0035】
図3(b)に示す変換行列では、全ての正方行列の行数および列数が同じであるが、IDFTを示す行列を分割する分割線が対角線に対して対称であれば、IDFTを示す行列の分割方法は上述の方法に限られないし、各正方行列の行数および列数は異なっていてもよい。正方行列の要素以外の要素の値を0にすることで、ベースバンド信号のPAPR(Peak-to-Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)を低減することができる。全ての正方行列の行数および列数が同じである場合には、例えば複数の演算器がそれぞれに対応づけられた同じ大きさの正方行列の演算を並行処理することで、変換行列全体の計算処理に要する時間を短縮することや、1つの演算器で複数の正方行列の演算を行うことが可能になる。
【0036】
合成部13は、ベースバンド信号を送信部14に送る。送信部14は、ベースバンド信号から送信信号を生成し、送受信切替部35およびアンテナ10を介して他の機器に送信信号を送信する。
【0037】
受信部34は、アンテナ10および送受信切替部35を介して、送信信号を受信し、ベースバンド信号を生成する。そして、ベースバンド信号を分解部33に送る。分解部33は、所定の受信変換行列を用いてベースバンド信号からサブキャリア変調信号を生成する。受信変換行列は、送信側の合成部13で用いた変換行列の逆行列である。
図4は、実施の形態1における受信変換行列の例を示す図である。受信変換行列は、送信側で用いた変換行列と同様の構成であり、所定の要素の値が0である正則行列である。
図4に示すように、受信変換行列の対角に位置する各正方行列は、それぞれ
図3(b)に示す変換行列において該正方行列と同じ位置にある正方行列の逆行列である。
【0038】
分解部33は、サブキャリアの数が64であれば、行数および列数が64であって、例えば4×4の大きさの対角に位置する正方行列A
11-1、A
22-1、・・・、A
1616-1の要素以外の要素を0に設定した受信変換行列を用いて、ベースバンド信号からサブキャリア変調信号を生成する。A
11-1、A
22-1、・・・、A
1616-1は、それぞれ送信側で用いた変換行列の対角に位置する正方行列A
11、A
22、・・・、A
1616の逆行列である。
【0039】
またサブキャリアの数が8である場合には、分解部33は、例えば下記(5)式で表される受信変換行列にベースバンド信号を並列化して生成した並列信号rを乗じてサブキャリア変調信号を生成する。A
11-1、A
22-1は、それぞれA
11、A
22の逆行列である。A
11およびA
22は下記(6)式で表される。
【0042】
変換行列と同様に、受信変換行列における各正方行列の行数および列数は異なっていてもよい。
【0043】
分解部33は、サブキャリア変調信号を並直列変換部32に送る。並直列変換部32は、サブキャリア変調信号を並直列変換し、直列信号を生成する。復調部31は、直列信号を所定の復調方式で復調する。例えば、復調部31は直列信号のQPSK復調を行う。
【0044】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態1に係る通信機1によれば、IDFTを示す行列に数理的な変更を加えた変換行列を用いることで、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加を抑制し、PAPRの増加を抑制するための処理を簡易化することが可能となる。
【0045】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る通信機1の構成および各部の動作は実施の形態1と同様である。実施の形態2に係る通信機1は、実施の形態1とは異なる変換行列および受信変換行列を用いる。
【0046】
図5は、本発明の実施の形態2における変換行列の例を示す図である。変換行列の対角には、B
1からB
pまでの複数の正方行列が位置する。B
1からB
pまでの正方行列の行数および列数はmであり、B
1からB
pまでの正方行列の行数および列数の合計は変換行列の行数および列数に一致する。B
1からB
pまでの正方行列の要素以外の要素の値は0である。B
1からB
pまでの正方行列は、行数および列数がmであるIDFTを示す行列の各要素に下記(7)式に示す正方行列ごとに定めた値θ
iの符号を反転した値を位相とする複素三角関数ω'
iを乗じた行列である。
【0048】
θ
iとして例えば下記(8)式に示すように、正方行列を識別する番号iにサブキャリアの半周期の位相πを乗じて変換行列の行数Nで除算した値を用いる。なおθ
iの算出方法は下記(8)式に限られない。
【0050】
図5に示す変換行列では、全ての正方行列の行数および列数が同じであるが、対角に位置する複数の正方行列の行数および列数の合計が変換行列の行数および列数に一致すれば、各正方行列の行数および列数は異なっていてもよい。正方行列の要素以外の要素の値を0にすることで、ベースバンド信号のPAPRを低減することができる。全ての正方行列の行数および列数が同じである場合には、例えば複数の演算器がそれぞれに対応づけられた同じ大きさの正方行列の演算を並行処理することで、変換行列全体の計算処理に要する時間を短縮することや、1つの演算器で複数の正方行列の演算を行うことが可能になる。
【0051】
合成部13は、サブキャリアの数が64であれば、例えば4×4の大きさのIDFTを示す行列の各要素にω'
iを乗じた行列B
1からB
16 までを対角に配置し、B
1からB
16の要素以外の要素の値を0に設定した変換行列を用いて、サブキャリア変調信号からベースバンド信号を生成する。
【0052】
またサブキャリアの数が8である場合には、合成部13は、例えば4×4の大きさのIDFTを示す行列の各要素にそれぞれω'
1 およびω'
2 を乗じた行列B
1およびB
2 を対角に配置し、B
1およびB
2の要素以外の要素を0に設定した変換行列を用いる。合成部13は、下記(9)式で表されるように変換行列にサブキャリア変調信号dを乗じてベースバンド信号を生成する。下記(9)式におけるωは下記(10)式で表され、ω'
iは下記(11)式で表される。
【0056】
分解部33が用いる受信変換行列は、合成部13で用いた変換行列の逆行列であり、
図5に示す変換行列と同様の構成である。ただし、B
1からB
pまでの正方行列は、行数および列数がmであるDFT(Discrete Fourier Transformation:離散フーリエ変換)を示す行列の各要素に下記(12)式に示す正方行列ごとに定めた値θ
iを位相とする複素三角関数ω''
iを乗じた行列である。所定の値θ
iとして上記(8)式に示すように、正方行列を識別する番号iにサブキャリアの半周期の位相πを乗じて受信変換行列の行数Nで除算した値を用いる。
【0058】
分解部33は、サブキャリアの数が64であれば、例えば4×4の大きさのDFTを示す行列の各要素にω''
i を乗じた行列B
1からB
16 までを対角に配置し、B
1からB
pの要素以外の要素の値を0に設定した受信変換行列を用いて、ベースバンド信号からサブキャリア変調信号を生成する。
【0059】
またサブキャリアの数が8である場合には、分解部33は例えば4×4の大きさのDFTを示す行列の各要素にそれぞれω''
1 およびω''
2 を乗じた行列B
1およびB
2 を対角に配置し、B
1およびB
2の要素以外の要素を0に設定した受信変換行列を用いる。分解部33は、下記(13)式で表されるように、受信変換行列にベースバンド信号を並列化した信号rを乗じてサブキャリア変調信号を生成する。下記(13)式におけるωは上記(10)式で表され、ω''
iは下記(14)式で表される。
【0062】
変換行列と同様に、受信変換行列における各正方行列の行数および列数は異なっていてもよい。
【0063】
以上説明したとおり、本発明の実施の形態2に係る通信機1によれば、IDFTを示す行列に実施の形態1とは異なる数理的な変更を加えた変換行列を用いることで、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加を抑制し、PAPRの増加を抑制するための処理を簡易化することが可能となる。後述するように、実施の形態2に係る通信機1によれば、実施の形態1に係る通信機1と比べ、PAPRの低減の程度を向上させることが可能となる。
【0064】
次に、シミュレーションにより上述の実施の形態に係る発明の効果を説明する。IDFTを示す行列、実施の形態1で示した変換行列、および実施の形態2で示した変換行列に基づきベースバンド信号を生成するシミュレーションを行った。入力信号としてランダム信号を用い、変調方式としてQPSKを用い、正方行列の行数および列数mとして4を用いた。そしてサブキャリアの数、IDFTを示す行列および変換行列の行数および列数を8、16、32、64、128、256、512、1024、2048と変化させてPAPR特性を比較した。
【0065】
図6は、シミュレーションしたベースバンド信号のPAPR特性を示す図である。横軸がサブキャリアの数であり、縦軸がPAPR(単位:dB)である。入力信号にランダム信号を用いてベースバンド信号を生成し、ベースバンド信号のPAPRを算出した。これを3000回繰り返してPAPRの平均値を算出し、PAPRの平均値をプロットした。従来技術と同様にIDFTを示す行列を用いた場合のPAPRはプロット点を四角で表した実線のグラフであり、実施の形態1で示した変換行列を用いた場合のPAPRはプロット点を三角で表した点線のグラフであり、実施の形態2で示した変換行列を用いた場合のPAPRはプロット点を丸で表した破線のグラフである。
【0066】
従来技術と同様にIDFTを示す行列を用いた場合では、サブキャリアの数の増加に伴いPAPRが増加するのに対し、実施の形態1および2で示した変換行列を用いた場合は、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加が抑えられている。例えば、サブキャリアの数が8の場合は、従来技術のPAPRの平均値が8.6dB、実施の形態1のPAPRの平均値が6.9dB、実施の形態2のPAPRの平均値が6.0dBであり、実施の形態1および2で示した変換行列を用いた場合にPAPRが低減されている。またサブキャリアの数2048の場合は、従来技術のPAPRの平均値が11.3dB、実施の形態1のPAPRの平均値が6.5dB、実施の形態2のPAPRの平均値が6.0dBであり、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加が抑えられている。また実施の形態2のPAPRは、サブキャリアの数によらず一定値をとる。
【0067】
図7は、シミュレーションしたベースバンド信号のスペクトルを示す図である。横軸がシンボル長(時間)であり、縦軸が電力(単位:dB)である。入力信号としてランダム信号を用い、変調方式としてQPSKを用い、正方行列の行数および列数mとして4を用いた。そして、サブキャリアの数、IDFTを示す行列および変換行列の行数および列数を2048として、ベースバンド信号のスペクトルを算出した。
図7(a)は従来技術と同様にIDFTを示す行列を用いた場合、
図7(b)は実施の形態1で示した変換行列を用いた場合、
図7(c)は実施の形態2で示した変換行列を用いた場合のベースバンド信号のスペクトルである。
【0068】
図7(c)において、電力が−120dBとなる点は、スペクトルの計算結果が発散してしまうことを示す。実際の通信機などにおいては、ガウス雑音の影響などにより発散することはないため、本シミュレーションにおいては、スペクトルの計算結果が発散しないように補正を行った。
【0069】
図7(b)に示す実施の形態1で示した変換行列を用いた場合は、
図7(a)に示す従来技術と同様にIDFTを示す行列を用いた場合と比較して、周波数利用効率に大きな差はない。しかし、
図7(c)に示す実施の形態2で示した変換行列を用いた場合は、不連続点が多数生じるため、周波数利用効率が低くなる。
【0070】
したがって、実施の形態1および2に係る発明によれば、サブキャリアの数の増加に伴うPAPRの増加を抑えることが可能となる。実施の形態2に係る発明によれば、PAPRを一定値に保ち、実施の形態1に係る発明よりもさらにPAPRを低減することが可能である。ただし、実施の形態2に係る発明では、周波数利用効率が従来技術および実施の形態1に比べて低くなる。
【0071】
本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限られない。変調部11の変調方式は、QPSKに限られず、QPSK以外のPSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)などを用いることができる。変調部11と直並列変換部12の順序を変えて、入力信号を直並列変換してサブキャリア信号に割り当て、並列信号の各データを所定の変調方式で変調するよう構成してもよい。その場合、受信側では復調部31と並直列変換部32の順序を変えて、復調処理を行う。なお変換行列および受信変換行列の係数は上述の実施の形態に限られず、送信側で用いる変換行列および受信側で用いる受信変換行列のいずれか一方の係数を1とし、他方の係数を1/Nとするよう構成してもよい。
【0072】
上述の実施の形態に係る通信機1が用いる変換行列および受信変換行列では、正方行列が変換行列および受信変換行列の対角に位置するが、これはサブキャリア変調信号がある順序で並んでいる場合に、対角に位置することを意味する。
図8は、本発明の実施の形態における変換行列の要素の変換例を示す図である。変換行列の行数および列数が8であり、各正方行列の行数および列数が2である場合、例えば
図8(a)に示す変換行列にサブキャリア変調信号dを乗じた計算結果と、
図8(b)に示す変換行列にサブキャリア変調信号dの各要素の順序を変更したサブキャリア変調信号d’を乗じた計算結果は一致する。
図8(b)のサブキャリア変調信号d’は、変換行列内の正方行列が対角に位置するように、サブキャリア変調信号dの各要素の順序を変更したものである。
【0073】
このように、本発明の実施の形態において正方行列が変換行列および受信変換行列の対角に位置するというのは、サブキャリア変調信号がある順序で並んでいる場合に、正方行列が変換行列および受信変換行列の対角に位置することを意味する。また変換行列および受信変換行列の各対角要素はそれぞれ1つの正方行列にのみ属する。すなわち、対角に位置する正方行列は重なり合うことはないものとする。