特許第5783023号(P5783023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5783023液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783023
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20150907BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-268330(P2011-268330)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-120289(P2013-120289A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100143063
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 淳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝人
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−105316(JP,A)
【文献】 特開2001−042324(JP,A)
【文献】 特開2008−297231(JP,A)
【文献】 特開2012−072121(JP,A)
【文献】 特開2012−072118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及び該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物が、下記式(t)で表される構造を有する特定テトラカルボン酸二無水物(T)を含み、
前記特定テトラカルボン酸二無水物(T)は、脂環式テトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(式(t)中、Arは2価の芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【請求項2】
前記Arは、下記式(r−1)で表される請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】
(式(r−1)中、Rは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、mは0〜4の整数である。但し、mが2以上の場合、複数のRはそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」は窒素原子に結合する結合手を示す。)
【請求項3】
前記特定テトラカルボン酸二無水物(T)は、下記式(t−1)で表される請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化3】
(式(t−1)中、Rは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、mは0〜4の整数である。但し、mが2以上の場合、複数のRはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【請求項4】
前記重合体の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物として、芳香族テトラカルボン酸二無水物を更に含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
【請求項6】
請求項に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。詳しくは、低残像性に優れた液晶表示素子を得るための液晶配向剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子としては、TNモードやIPSモード、FFSモード等の水平配向型のものや、VAモード等の垂直配向型のものが知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
【0003】
また近年、液晶表示素子は、従来のようにパーソナルコンピュータ等の表示端末に使用されるだけでなく、例えば液晶テレビやカーナビゲーションシステム、携帯電話、スマートフォン、インフォメーションディスプレイなど多種の用途で使用されている。このような多用途化に伴い、液晶表示素子では表示品位の更なる高品質化が求められている。例えば、液晶表示素子が長時間駆動された場合、直流電圧に対する電荷の蓄積(残留DC)の影響によって画像の焼き付きが生じることがあり、このような焼き付きを極力抑制することが求められている。これを鑑み、近年、液晶表示素子の画像の焼き付きを抑制し、残像特性を改善するための液晶配向膜材料が種々提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−85891号公報
【特許文献2】特開2011−70160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶表示素子の高性能化に対する要求は更に高まっており、画像の焼き付きを最大限抑制可能な液晶表示素子が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液晶表示素子の残像特性を改善することができる液晶配向剤及び液晶配向膜、並びに低残像性に優れた液晶表示素子を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成すべく鋭意検討した結果、液晶配向剤に含有させる重合体成分として、アミド構造を有するテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとの反応によって得られる重合体を用いることにより上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を解決するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子が提供される。
【0008】
本発明は一つの側面において、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及び該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する液晶配向剤であって、前記テトラカルボン酸二無水物が、下記式(t)で表される構造を有する特定テトラカルボン酸二無水物(T)を含む液晶配向剤を提供する。
【化1】
(式(t)中、Arは2価の芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【0009】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分として、芳香族基を挟む2つのアミド構造を主鎖に有するポリアミック酸及びそのイミド化重合体の少なくとも1種を含んでいる。このような液晶配向剤によれば、画像の焼き付きが生じにくく、低残像性に優れた液晶表示素子を製造することができる。
【0010】
また、本発明の液晶配向剤によれば、長時間駆動後でも電圧保持率の低下が少なく、電気特性に対する信頼性に優れた液晶表示素子を製造することができる。
【0011】
本発明の液晶配向剤において、上記Arは下記式(r−1)で表される構造であることが好ましい。この場合、形成される塗膜の液晶配向性をより良好にすることができる。
【化2】
(式(r−1)中、Rは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、mは0〜4の整数である。但し、mが2以上の場合、複数のRはそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」は窒素原子に結合する結合手を示す。)
【0012】
上記特定テトラカルボン酸二無水物(T)は、脂環式テトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、下記式(t−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化3】
(式(t−1)中、Rは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、mは0〜4の整数である。但し、mが2以上の場合、複数のRはそれぞれ独立して上記定義を有する。)
【0013】
本発明において、重合体の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、上記特定テトラカルボン酸二無水物(T)とともに、芳香族テトラカルボン酸二無水物を更に含むものとしてもよい。芳香族テトラカルボン酸二無水物と特定テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせて上記重合体を合成することにより、液晶表示素子の信頼性を良好に保ちつつ、低残像性を更に改善することができる。
【0014】
本発明は一つの側面において、上記に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜を提供する。さらに、本発明は別の一つの側面において、上記液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及び該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する。以下、本発明の液晶配向剤について詳細に説明する。
【0016】
<ポリアミック酸>
[テトラカルボン酸二無水物]
《特定テトラカルボン酸二無水物(T)》
本発明におけるポリアミック酸の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、少なくともその一部に、下記式(t)で表される構造を有する特定テトラカルボン酸二無水物(T)が含まれる。
【化4】
(式(t)中、Arは2価の芳香族基である。「*」は結合手を示す。)
【0017】
上記式(t)のArは、芳香環が有する2つの水素原子を除いた2価の基であり、具体的には、芳香環として、例えばベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環などの単環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、インデン環、ピレン環、キノリン環等の多環;などを1つ又は複数有する2価の基を挙げることができる。
このような2価の芳香族基の具体例としては、例えば1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、2,5−ピラジニレン基、2,5−ピリミジニレン基、4,4’−ビフェニレン基、トリフェニレン基等が挙げられる。
また、Arにおいて、これらの芳香環には置換基が結合されていてもよく、その置換基としては、例えばアルキル基、フルオロアルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0018】
Arとしては、形成される塗膜の液晶配向性が良好になる点や入手容易な点において、フェニレン基又は置換フェニレン基が好ましく、その具体例としては、例えば下記式(r−1)で表される基を挙げることができる。
【化5】
(式(r−1)中、Rは、ハロゲン原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基若しくはフルオロアルキル基であり、mは0〜4の整数である。但し、mが2以上の場合、複数のRはそれぞれ独立して上記定義を有する。「*」は窒素原子に結合する結合手を示す。)
【0019】
上記式(r−1)のRにおいて、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、上記炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基が酸素原子に結合したものを挙げることができ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、上記炭素数1〜6のアルキル基として挙げた基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された基を挙げることができ、具体的には、例えばトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基等が挙げられる。
mは0〜2が好ましく、0がより好ましい。
式(r−1)中の「フェニレン基」部分としては、1,3−フェニレン基又は1,4−フェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0020】
特定テトラカルボン酸二無水物(T)は、上記式(t)で表される構造を有する限り、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物及び芳香族テトラカルボン酸二無水物のうちいずれであってもよい。これらの具体例としては、例えば、上記式(t)における2つの結合手のそれぞれが、例えば炭素数1〜3の鎖状構造;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式構造;ベンゼン環等の芳香環構造;などを介して酸無水物基(−CO−O−CO−)に結合した化合物等を挙げることができる。
特定テトラカルボン酸二無水物(T)としては、脂環式テトラカルボン酸二無水物、より具体的には、上記式(t)における2つの結合手のそれぞれが、脂肪族環を有する構造(脂環式構造)を介して酸無水物基に結合したものが好ましく、特に、下記式(t−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化6】
(式(t−1)中、Rは、上記式(r−1)におけるRと同義である。)
【0021】
上記式(t)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物(T)の具体例としては、例えば下記式(t−1−1)〜(t−1−8)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができ、中でも下記式(t−1−1)で表される化合物(T−1)が好ましい。なお、特定テトラカルボン酸二無水物(T)としては、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【化7】
【0022】
本発明におけるポリアミック酸の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、液晶表示素子の低残像性を良好にできるとともに、長時間駆動に対する電気特性の信頼性を良好にできる点において、特定テトラカルボン酸二無水物(T)の比率が、合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して5モル%以上であることが好ましい。当該比率について、より好ましくは10〜100モル%であり、更に好ましくは20〜100モル%である。
【0023】
《他のテトラカルボン酸二無水物》
上記ポリアミック酸を合成するためのテトラカルボン酸二無水物としては、特定テトラカルボン酸二無水物(T)のみを使用してもよいが、特定テトラカルボン酸二無水物(T)とともにその他のテトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。
【0024】
ここで使用することのできるその他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、
脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
なお、他のテトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
ポリアミック酸の合成に際しては、液晶表示素子の低残像性を更に向上させることを目的として、他のテトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸(PMDA)などといった、酸無水物基が芳香環に結合しているテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)を含有させてもよい。この場合の芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有割合としては、合成に使用するテトラカルボン酸二無水物の全量に対して0.5〜50モル%であることが好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物の含有量を0.5モル%以上とすることにより、残像特性を改善する効果を好適に発揮することができ、50モル%以下とすることにより、液晶表示素子の信頼性(電気特性に対する信頼性)が低下するのを抑制することができる。より好ましくは1〜40モル%以下であり、更に好ましくは1〜20モル%以下である。
【0026】
[ジアミン]
本発明におけるポリアミック酸を合成するために使用するジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
【0027】
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、3,5−ジアミノ安息香酸、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、4,4’−[4,4’−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリン、N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−メチルフェニルアミン、及び下記式(A−1)
【化8】
(式(A−1)中、XI及びXIIは、それぞれ、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは、炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、nは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
【0028】
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。
【0029】
上記式(A−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。
基「−C2c+1」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基などを挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0030】
上記式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
【化9】
なお、上記ポリアミック酸の合成に使用するジアミンとしては、上記の化合物を1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
[分子量調節剤]
ポリアミック酸を合成するに際して、上記の如きテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとともに、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0032】
分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを挙げることができる。これらの具体例としては、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを;
モノアミン化合物として、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミンなどを;
モノイソシアネート化合物として、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを、それぞれ挙げることができる。
分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
【0033】
<ポリアミック酸の合成>
本発明におけるポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度はマイナス20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
【0034】
ここで、有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。
これら有機溶媒の具体例としては、上記非プロトン性極性溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどを;
上記フェノール誘導体として、例えば、m−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノールなどを;
上記アルコールとして、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどを;
上記ケトンとして、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとして、例えば、乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを;
上記エーテルとして、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフランなどを;
上記ハロゲン化炭化水素として、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記炭化水素として、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを、それぞれ挙げることができる。
【0035】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される一種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜50重量%になるような量とすることが好ましい。
【0036】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0037】
<ポリイミド及びポリイミドの合成>
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは、上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
【0038】
上記ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、65〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0039】
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。
【0040】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
【0041】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0042】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られるポリアミック酸及びポリイミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0043】
<その他の添加剤>
本発明の液晶配向剤は、上記の如きポリアミック酸及びポリイミドの少なくともいずれかの重合体(以下、「特定重合体」ともいう。)を含有するが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ基含有化合物」という。)、官能性シラン化合物等を挙げることができる。
【0044】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性や電気特性の改善のために使用することができる。かかるその他の重合体としては、例えば、「他のテトラカルボン酸二無水物」として例示した化合物のうちの1種又は2種以上とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」という。)、当該他のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」という。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
【0045】
[エポキシ基含有化合物]
エポキシ基含有化合物は、液晶配向膜における基板表面との接着性を向上させるために使用することができる。ここで、エポキシ基含有化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミン、国際公開第2009/096598号記載のエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン等を好ましいものとして挙げることができる。
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。
【0046】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、液晶配向剤の印刷性を向上させるために使用することができる。このような官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100重量部に対して2重量部以下が好ましく、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0047】
その他、本発明の液晶配向剤が含有していてもよい添加剤としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物(以下、「オキセタニル基含有化合物」という)、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0048】
<溶剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤が、好ましくは有機溶媒中に溶解されて構成される。
【0049】
使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
本発明の液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得にくい。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が低下する。
【0051】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法
による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
【0052】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、上記の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備するものである。本発明の液晶表示素子は、IPS型やTN型、STN型、FFS型といった水平配向型の動作モードに適用してもよいし、VA型のような垂直配向型の動作モードに適用してもよい。
【0053】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明するとともに、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下の(1)〜(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程(2)及び(3)は各動作モードに共通である。
【0054】
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に本発明の液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0055】
(1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0056】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして、形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0057】
(1−2)IPS型液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0058】
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0059】
[工程(2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程(1)で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対しラビング処理を施してもよい。
【0060】
上記のように形成された液晶配向膜に対しては、更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0061】
[工程(3):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板につき、二枚の基板の液晶配向膜のラビング方向が直交又は逆平行となるように間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、二枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面に、偏光板を、その偏光方向が各基板に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致又は直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。
【0062】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0063】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニタ、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0065】
合成例における各重合体溶液の溶液粘度及びポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調整した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)で示される式によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
【0066】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例1〜4、比較合成例1〜3]
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、それぞれ下記表1に示す量のジアミン及びテトラカルボン酸二無水物をこの順で加えて、モノマー濃度15重量%の溶液とした。その後、60℃において6時間の反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液をそれぞれ得た。各溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加え、ポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度を下記表1に示す。
【0067】
<ポリイミドの合成>
[合成例5〜7、比較合成例4,5]
使用するジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を下記表1のとおりにした以外は、上記ポリアミック酸の合成と同様の方法により、ポリアミック酸を含有する溶液をそれぞれ得た。各溶液を少量分取し、NMPを加え、ポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度を下記表1に示す。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMPを加え、ポリアミック酸濃度6重量%の溶液とした。ここに、ピリジン及び無水酢酸を、ポリアミック酸の有するアミック酸単位1モルに対して、それぞれ2モルとなるように添加した後、110℃に加熱して4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、ポリイミドを約15重量%含有する溶液をそれぞれ得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液としたときの溶液粘度、及びポリイミド溶液に含まれるポリイミドのイミド化率を測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1中、テトラカルボン酸二無水物の数値は、合成に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量に対する含有量[モル%]を示し、ジアミンの数値は、合成に使用したジアミンの全量に対する含有量[モル%]を示す。
テトラカルボン酸無水物及びジアミンの略称は、それぞれ以下の意味である。
<テトラカルボン酸二無水物>
T−1:上記式(t−1−1)で表される化合物
CB:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TCA:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
<ジアミン>
BAAB:4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート
NCDA:3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン
TETRAMIN:テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン
BISP:4,4’−[4,4’−プロパン−1,3−ジイルビス(ピペリジン−1,4−ジイル)]ジアニリン
DADPA−ToL:N,N−ビス(4−アミノフェニル)−p−メチルフェニルアミン
PDA:p−フェニレンジアミン
【0070】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
合成したポリアミック酸(PAA−1)を含有する溶液に、NMP及びエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC:=55:45(重量比)、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルタを用いて濾過することにより液晶配向剤(S−1)を調製した。
[実施例2〜7、比較例1〜5]
使用する重合体をそれぞれ下記表2に記載のとおり変更した以外は、上記実施例1と同様の方法により液晶配向剤(S−2)〜(S−7)、(SR−1)〜(SR−5)をそれぞれ調製した。
【0071】
<液晶表示素子の製造>
[製造例1]
上記で調製した液晶配向剤を、厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱した。次いで、230℃のホットプレート上で15分間加熱して膜厚約100nmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、コットン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数600rpm、ステージの移動速度2cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmの条件にてラビング処理を行い、塗膜に液晶配向能を付与して液晶配向膜とした。この液晶配向膜を有する基板を、超純水中で1分間超音波洗浄した後、100℃のクリーンオーブン中で10分間乾燥した。これら一連の操作を繰り返すことにより、液晶配向膜を有する基板を二枚(一対)作成した。
次に、液晶配向膜を有する一対の基板につき、液晶配向膜を有する面のそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、それぞれの液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より、一対の基板間にネマチック液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を貼り合わせることにより、TN型液晶表示素子を製造した。
[製造例2〜7、比較製造例1〜5]
使用する液晶配向剤を(S−2)〜(S−7)、(SR−1)〜(SR−5)に変更した以外は、上記製造例1と同様の方法により液晶表示素子をそれぞれ製造した。
【0072】
<液晶表示素子の評価>
(1)信頼性の評価
上記のように製造した各液晶表示素子につき、バックライト電灯下でストレス付加100時間経過後の電圧保持率の変化率(ΔVHR)を測定した。変化率ΔVHRは、ストレス付加前の電圧保持率VHR1から、ストレス付加後の電圧保持率VHR2を差し引くことにより算出した。電圧保持率の測定は、液晶表示素子に、1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、1670ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から1670ミリ秒後の電圧保持率を測定することにより行った。なお、測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。評価は、変化率ΔVHRが2%以下の場合を液晶表示素子の信頼性「非常に良好」、2%を超えて5%以下の場合を信頼性「良好」、5%を超える場合を信頼性「不良」として行った。
(2)低残像性の評価
上記のように製造した液晶表示素子を2つ準備し、一方の液晶表示素子には、直流電圧1Vと交流電圧8Vとの合成電圧を24時間印加した。他方の液晶表示素子には、電圧を印加せずに24時間保管した。24時間が経過した後、液晶表示素子の印加電圧を2.5Vとした時の両素子の輝度をそれぞれ256階調で表し、その際の輝度差(階調差)を調べた。評価は、輝度差が10階調以下の場合を低残像性「非常に良好」、10階調を超えて20階調以下の場合を「良好」、20階調を超える場合を「不良」として行った。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示すように、実施例の液晶配向剤を用いて作製した液晶表示素子ではいずれも、合成電圧の印加前後での輝度差が14以下と小さく、残像が生じにくいことが分かった。中でも、テトラカルボン酸二無水物として芳香族テトラカルボン酸二無水物を加えたもの(実施例3,4,6,7)では残像特性が特に良好であった。
また、実施例のものでは、電気特性に対する信頼性についても良好であり、特にテトラカルボン酸二無水物として化合物(T−1)のみを用いた実施例1,2,5では信頼性に優れていた。この信頼性良好の効果は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を併用した実施例3,4,6,7でも見られた。
これに対し、比較例のものではいずれも、低残像性、信頼性が実施例のものよりも劣っていた。