特許第5783106号(P5783106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783106
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】セキュリティ装置およびその調整方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 13/183 20060101AFI20150907BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
   G08B13/183
   G01C15/00 103A
   G01C15/00 104Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-71506(P2012-71506)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-205918(P2013-205918A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 邦雄
【審査官】 宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−174684(JP,A)
【文献】 特開2005−172824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B13/00−15/02
19/00−31/00
G01C1/00−1/14
5/00−11/34
13/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向に延びる第一壁に取り付けられ、走査光を照射するセンサ部と、
前記センサ部により、前記第一壁から離れた位置で前記第一壁と平行に重力方向へ延びる第二壁の重力方向の下端から上端までを走査して、前記センサ部の分解能に応じた角度ごとに前記センサ部から前記第二壁までの距離を取得する距離取得部と、
前記距離取得部で取得した前記センサ部から前記第二壁までの距離の値が減少から増加に変化する位置を地面と水平な水平基準として取得する水平基準取得部と、
前記センサ部から照射する走査光の重力方向における走査範囲の中心と前記水平基準取得部で取得した前記水平基準との角度差を検出する角度差検出部と、
前記角度差検出部で検出した前記角度差を外部へ出力する出力部と、
を備えるセキュリティ装置。
【請求項2】
重力方向に延びる第一壁に、走査光を照射するセンサ部を仮固定する工程と、
仮工程された前記センサ部により、前記第一壁から離れた位置で前記第一壁と平行に重力方向へ延びる第二壁の重力方向下端から上端までを走査して、前記センサ部の分解能に応じた角度ごとに前記センサ部から前記第二壁までの距離を取得する工程と、
取得した前記センサ部から前記第二壁までの距離の値が減少から増加に変化する位置を地面と水平な水平基準として取得する工程と、
前記センサ部から照射する走査光の重力方向における走査範囲の中心と取得した前記水平基準との角度差を検出する工程と、
検出した前記角度差が予め設定された許容角度以下であるか否かを判断し、判断結果を可視的に表示する工程と、
可視的に表示された前記判断結果に基づいて、前記角度差が前記許容角度以下にあるとき、仮固定された前記センサ部を本固定する工程と、
可視的に表示された前記判断結果に基づいて、前記角度差が前記許容角度より大きいとき、仮固定された前記センサ部の位置を前記角度差が小さくなる側へ変更する工程と、
を含むセキュリティ装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ装置およびその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば制限区域に侵入した侵入者を検出するセキュリティ装置は、レーザ光や赤外線などの走査光を照射するセンサ部を備えている。このようなセキュリティ装置は、センサ部による走査光の照射位置を高精度に調整する必要がある(特許文献1参照)。センサ部は、機器に固有の分解能に応じた角度ごとに走査光を照射する。一般的なセキュリティ装置の場合、センサ部は、例えば設備の一対の壁や柱の間で走査光を照射する。センサ部の走査範囲は、重力方向における走査光の照射の中心を基準として、重力方向の上方および下方に設定されている。そのため、セキュリティ装置は、検出精度を高めるために、センサ部から照射される走査光の重力方向における走査範囲の中心と水平線とを一致させることが求められる。
【0003】
従来のセキュリティ装置は、例えば空港や工場設備など、高度な保安が要求される設備に設置されているため、熟練度の高い専門の業者によって高精度に設置されるのが一般的である。すなわち、高度な保安が要求される設備の場合、セキュリティ装置のセンサ部は、熟練した専門業者によって長時間をかけて設置位置が高精度に調整されている。
【0004】
しかしながら、近年、一般家庭における保安意識の向上にともない、セキュリティ装置は一般家庭への普及も進んでいる。このような一般家庭で用いられるセキュリティ装置は、価格が低廉であることが求められ、従来の高度な保安設備に比較して要求される性能も低い。そのため、センサ部の分解能は、従来に比較して低く設定されている。また、このような一般家庭で用いられるセキュリティ装置は、専門の業者ではなく、購入者によって設置される。このことから、普及用のセキュリティ装置は、熟練度の低い一般の購入者であっても、センサ部の重力方向における走査範囲の中心と水平線とを容易に一致可能であることが求められる。特に、分解能の低いセンサ部を用いる場合、走査範囲のずれは検出精度の悪化に与える影響が大きい。そのため、普及用のセキュリティ装置は、走査光の走査範囲の中心と水平線とを高精度に一致させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−122436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、熟練度に関わらずセンサ部が設置が容易であり、精度の向上が図られるセキュリティ装置およびその調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1または2記載の発明では、第一壁に設置されたセンサ部は、第一壁と対向する第二壁までの距離を重力方向の下端から上端まで走査する。センサ部が設置されている第一壁とこれに対向する第二壁とは、例えば家屋の壁と塀とのように、地面に対し垂直に設けられ、互いに平行である。そのため、センサ部から第二壁までの距離を走査すると、検出した距離はいずれかの点で減少から増加に変化する。この検出した距離が減少から増加に変化する点は、第一壁に設置されたセンサ部と第二壁との間の距離が最短となる点である。そして、この点とセンサ部とを結ぶ仮想的な直線は、第一壁および第二壁が地面に対し垂直かつ平行であるとすれば、水平線に一致する水平基準となる。このように、センサ部を用いてセンサ部から第二壁までの最短距離を求めることにより、水平基準が取得される。この取得した水平基準とセンサ部の走査範囲の中心との差は、角度差として取得される。センサ部は、重力方向において走査範囲の中心から下方および上方へ走査光を照射する。すなわち、センサ部は、重力方向において下方から上方までの走査範囲において分解能に応じた角度ごとに走査光を照射する。この走査範囲の中心と水平基準とを一致させることにより、センサ部は正確な位置に設置される。取得された角度差が許容角度以下であるか否かは、外部へ出力され、例えば可視的に表示される。そのため、センサ部を設置する設置者は、この可視的な表示を参照しつつ、センサ部の走査範囲の中心と水平基準とが一致するようにセンサ部の位置を調整することができる。したがって、熟練度に関わらず容易にセンサ部の走査範囲の中心と水平基準とを一致させることができ、侵入者の検出精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態によるセキュリティ装置を適用した家屋の側面視を示す模式図
図2】一実施形態によるセキュリティ装置を適用した家屋の平面視を示す模式図
図3】一実施形態によるセキュリティ装置のセンサ部から照射される走査光を示す模式図
図4】一実施形態によるセキュリティ装置の処理ユニットおよび外部の端末を示す模式的なブロック図
図5】一実施形態によるセキュリティ装置で取得した走査角度ごとの距離を示す模式図
図6】一実施形態によるセキュリティ装置において、センサ部の走査基準面と水平基準とがずれている状態を示す模式図
図7】一実施形態によるセキュリティ装置において、センサ部の走査基準面と水平基準とがずれている状態を示す模式図
図8】一実施形態によるセキュリティ装置において、センサ部の走査基準面と水平基準とが一致している状態を示す模式図
図9】一実施形態によるセキュリティ装置の処理の流れを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、セキュリティ装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、セキュリティ装置10は、センサ部11および処理ユニット12を備えている。セキュリティ装置10は、家屋13の敷地14に侵入する侵入者を検出する。セキュリティ装置10のセンサ部11は、家屋13の壁15に取り付けられている。センサ部11は、家屋13の壁15から対向する塀16に向けてレーザ光などの走査光17を照射する。この場合、家屋13の壁15は特許請求の範囲における第一壁に相当し、塀16は特許請求の範囲における第二壁に相当する。ここで、第一壁は、家屋13の壁15に限るものではなく、例えば門柱や柵などの壁面であってもよい。すなわち、センサ部11を取り付け可能な壁は、家屋の壁に限らず第一壁に相当する。第二壁も、塀16に限らず、第一壁からの距離を測定可能な物体であればよい。
【0010】
通常の家屋13であれば、家屋13の壁15および塀16は、若干の誤差を含むもののいずれも地面18の水平面に対しほぼ垂直な重力方向、いわゆる鉛直方向へ延びている。そのため、本実施形態におけるセキュリティ装置10は、排除できない誤差を含むものの地面18に対しほぼ垂直に設けられている家屋13の壁15および塀16を前提としている。なお、センサ部11は、レーザ光に代えて赤外線などを照射する構成としてもよい。
【0011】
センサ部11は、図3に示すように照射部21および受光部22を有している。センサ部11は、照射部21から照射した光を受光部22で受光することにより、侵入者などの障害物までの距離を走査する。センサ部11は、走査範囲の中心である走査基準面25を中心に、重力方向において下方および上方へ走査する。このとき、センサ部11は、予め設定された上下方向分解能に応じて、所定の角度範囲ごとに塀16などの対向する物体までの距離を走査する。例えば、図3に示すようにセンサ部11の直下を0°とし、センサ部の直上を180°としたとき、センサ部11の走査範囲の中心となる走査基準面25は90°の位置に設定される。ここで、上下方向分解能は、センサ部11が照射する走査光の間隔すなわち角度範囲を意味する。センサ部11は、重力方向において下方から上方へ連続的に距離を走査するのではなく、予め設定された角度ごとに所定の間隔で距離を走査する。本実施形態の場合、センサ部11は、数分の1°から数°ごとに走査光17を照射して物体までの距離を走査している。すなわち、本実施形態のセンサ部11の上下方向分解能は、数分の1°から数°ということになる。なお、本実施形態では、走査範囲の中心として平面状の走査基準面25を例に説明しているが、走査範囲の中心は直線状の走査基準線であってもよい。
【0012】
センサ部11は、重力方向の上下だけでなく、図2に示すように平面方向にも予め設定された平面方向分解能に応じて走査光17を照射する。詳細には、センサ部11は、上下方向分解能に応じて設定された複数の走査平面において、それぞれセンサ部11を中心に0°から180°の範囲で走査光を照射する。センサ部11は、上下方向と同様にこの走査平面において、平面方向分解能に応じた間隔すなわち角度範囲で走査光17を照射する。本実施形態の場合、センサ部11は、設定された走査平面を数分の1°から数°ごとに分割するように走査光17を照射して物体までの距離を走査している。したがって、センサ部11は、上下方向の下端から上端まで上下方向分解能に応じて複数の走査平面を設定し、各走査平面ごとに水平方向分解能に応じた角度範囲で走査光17を照射する。
【0013】
これらの上下方向分解能および水平方向分解能は、セキュリティ装置10の能力ごとに設定されている。つまり、高度なセキュリティが要求される設備では、上下方向分解能および水平方向分解能が極めて高いセンサ部11が用いられる。一方、本実施形態が前提とする普及版の家庭用セキュリティ装置の場合、上下方向分解能および水平方向分解能は上記の通り数分の1°から数°程度に設定される。
【0014】
処理ユニット12は、図4に示すように処理部31を有している。処理ユニット12は、センサ部11と接続している。処理ユニット12は、センサ部11と別体に設けてもよく、センサ部11と一体に設けてもよい。処理部31は、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。また、処理ユニット12は、外部記憶部32などを有していてもよい。外部記憶部32は、例えば不揮発性メモリ、あるいは磁気的若しくは光学的な記憶媒体などを有している。処理ユニット12は、ROMや外部記憶部32に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、距離取得部33、水平基準取得部34、角度差検出部35および出力部36をソフトウェア的に実現している。これら、距離取得部33、水平基準取得部34、角度差検出部35および出力部36は、ハードウェア的に実現してもよく、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現してもよい。
【0015】
距離取得部33は、センサ部11による物体の走査によって得られた結果に基づいて物体までの距離を取得する。距離取得部33は、例えばセンサ部11の照射部21による走査光17の照射から受光部22による走査光17の受光までの時間に基づいて物体までの距離を取得する。
【0016】
水平基準取得部34は、水平線と一致する水平基準を取得する。センサ部11は、上述の通り、重力方向の下方から上方まで走査する。壁15に設けられているセンサ部11で対向する塀16を走査するとき、センサ部11は塀16の下端から上端までを走査する。距離取得部33は、このセンサ部11による走査の結果に基づいて、センサ部11から塀16までの距離を取得する。このとき、距離取得部33で取得した距離は、図5に示すように変化する。本明細書において、水平線とは、重力方向に対し垂直に交わる直線を意味している。
【0017】
センサ部11が重力方向の下端である図1の0°から上端である図1の180°へ走査するとき、センサ部11はまず直下の地面18までの距離を検出する。そして、センサ部11の走査範囲が上方へ移動するにつれて、距離取得部33で取得した距離は直下の地面18から塀16の根本の下端41にかけて二次的に増加する。塀16の下端41に到達すると、センサ部11は、塀16の下端41から上端42にかけて塀16までの距離を検出する。このとき、塀16の下端41から上端42にかけてセンサ部11で走査すると、距離取得部33で取得した距離は、二次曲線すなわち円弧を描くように変化する。つまり、距離取得部33で取得する距離は、塀16の下端41で最大となり、塀16までの距離が最短となる最短距離Lminに向けて徐々に減少する。そして、距離取得部33で取得する距離は、最短距離Lminから塀16の上端42にかけて徐々に増加する。センサ部11の走査範囲が塀16の上端42よりも上方になると、塀16が消失するため、距離取得部33で取得される距離は無限大となる。このように、センサ部11および距離取得部33は、塀16の下端41に相当する「変曲点1」から塀16の上端42に相当する「変曲点2」の間で塀16の存在を認識する。
【0018】
距離取得部33で取得する塀16までの距離は、ある位置で最短距離Lminとなる。この距離取得部33で取得する距離が最短となる位置は、壁15と塀16との間の距離が最短となる位置であり、地面18と水平とみなすことができる。そこで、水平基準取得部34は、距離取得部33で取得したセンサ部11から塀16までの距離に基づいて、最短距離Lminとなる走査角度を水平基準θhとして取得する。センサ部11は、上述のように走査平面において水平方向分解能に応じた複数の位置で走査している。そこで、水平基準取得部34で取得する最短距離Lminは、各走査平面で取得した距離の平均値を用いてもよく、各走査平面の特定の走査角度において取得した距離を用いてもよい。
【0019】
角度差検出部35は、水平基準取得部34で取得した水平基準θhとセンサ部11の重力方向における走査基準面25との角度差Δθを検出する。上述のように、センサ部11は、重力方向の下方から上方へ対向する物体までの距離を走査する。このとき、センサ部11は、図1および図3に示すように走査範囲が予め所定の範囲に設定されている。すなわち、センサ部11は、走査基準面25を中心に、重力方向の下方および上方へ走査範囲が設定されている。この走査基準面25が地面18の水平線と異なっていると、センサ部11による走査範囲は、重力方向の下方と上方とで不均一となり、精度の低下や走査範囲の欠如を招くおそれがある。そのため、このセンサ部11の走査基準面25は、水平線にできる限り一致させることが求められる。そこで、角度差検出部35は、水平基準取得部34で取得した水平基準θhと走査基準面25との角度差Δθを検出する。図6および図7に示すように検出した角度差Δθが大きいとき、センサ部11の壁15への取り付け角度は不適切であるといえる。一方、図8に示すように検出した角度差Δθが小さいとき、センサ部11の壁15への取り付け角度は適切であるといえる。そのため、角度差検出部35は、検出した角度差Δθが予め設定された許容角度θa以下であるか否かを判断する。
【0020】
出力部36は、角度差検出部35で検出した角度差Δθを外部へ出力する。セキュリティ装置10の処理ユニット12は、図4に示すように外部の端末50に接続される。ここで、端末50は、例えばPDA(Personal Digital Assistant)やノートパソコンなどである。また、端末50は、これらに限らず、携帯電話機やスマートフォンであってもよい。出力部36は、これらの端末50との間で無線または有線による通信を確立する。これにより、角度差検出部35で検出した角度差Δθは、出力部36を経由してセキュリティ装置10の設置者(以下、「使用者」という。)が所有する端末50に出力される。端末50は、例えば液晶ディスプレイなどの表示部51を有している。出力部36から出力された角度差Δθに関する情報は、端末50の表示部51に可視的に表示される。したがって、セキュリティ装置10の使用者は、端末50に表示された角度差Δθに関する情報を参照しながら、センサ部11の壁15への取り付け角度を調整することができる。
【0021】
次に、上記の構成によるセキュリティ装置10の壁15への取り付けおよび取り付け角度の調整手順について図9に基づいて説明する。
セキュリティ装置10の使用者は、センサ部11を家屋13の壁15に仮固定する(S101)。本実施形態の場合、セキュリティ装置10は、一般家庭への普及用である。そのため、セキュリティ装置10は、購入者である使用者自身が設置作業を行う。センサ部11は、図6から図8に示すように支点60を中心に上下へ旋回可能に構成されている。これにより、センサ部11は、重力方向の上下に走査基準面25の位置を変更可能な状態となる。このように、センサ部11は、支点60を中心に上下に旋回可能な状態で家屋13の壁15に仮固定される。
【0022】
センサ部11が家屋13の壁15に仮固定されると、センサ部11は壁15に対向する塀16の下端41から上端42までを走査する(S102)。具体的には、使用者は、センサ部11を仮固定した後、セキュリティ装置10の電源を投入する。これにより、セキュリティ装置10は起動する。使用者は、セキュリティ装置10が起動すると、例えば初期設定のための処理を実行する。この初期設定のための処理は、ROMまたは外部記憶部32に記憶されているコンピュータプログラムにしたがって実行される。初期設定のための処理は、センサ部11の走査基準面25を水平に設定するための機能を含んでいる。したがって、使用者は、セキュリティ装置10を起動し、初期設定のためのプログラムを実行する。詳細には、使用者は、センサ部11の走査基準面25が地面18と平行になるように、すなわち走査基準面25が水平線にできる限り一致するようにセンサ部11を壁15に仮固定する。そして、この状態で初期設定のための処理を実行すると、センサ部11は塀16の下端41から上端42までを走査する。
【0023】
センサ部11が塀16の下端41から上端42までを走査することにより、距離取得部33は、センサ部11から塀16までの距離を塀16の下端41から上端42まで取得する(S103)。すなわち、距離取得部33は、塀16の下端41から上端42までセンサ部11の分解能に応じて設定された角度ごとに距離を取得する。これにより、センサ部11から塀16までの距離は、図5の変曲点1から変曲点2の間に示すようにほぼ円弧状の二次曲線として取得される。
【0024】
センサ部11から塀16までの距離が取得されると、水平基準取得部34は、センサ部11から塀16までの距離の値が減少から増加に変化する位置を特定する(S104)。距離取得部33で取得された距離の値は、走査角度が塀16の下端41から上端42へ移動するにつれて徐々に減少する。そして、取得された距離の値は、センサ部11から塀16までの距離が最短となる最短距離Lminを境に、増加に転じる。このように、距離取得部33で取得されたセンサ部11から塀16までの距離は、最短距離Lminにおいて、減少から増加に変化する。このように、取得した距離の値が減少から増加に転じる境となる最短距離Lminにおける走査光17の経路は、家屋13の壁15および塀16が地面18に対して垂直かつ互いに平行であることを前提とすると、地面18すなわち水平線に平行となる。そのため、水平基準取得部34は、この最短距離Lminとなる走査光17の走査角度を水平線に相当する水平基準θhに設定する(S105)。
【0025】
水平基準取得部34で水平基準θhが取得されると、角度差検出部35は、このS105で取得した水平基準θhとセンサ部11の走査基準面25の角度差Δθを検出する(S106)。センサ部11の走査基準面25は、センサ部11に固有の値として、例えば走査範囲が0°から180°であれば走査角度が90°の位置に設定されている。そこで、角度差検出部35は、この走査角度が90°の位置に設定されている走査基準面25とS105で取得した水平基準θhとの角度差Δθを検出する。図6および図7に示すように、仮固定されたセンサ部11は、走査基準面25と水平基準θhとの間にずれが生じている。この走査基準面25と水平基準θhとの間のずれは、角度差Δθに相当する。
【0026】
角度差検出部35は、検出した角度差Δθが予め設定された許容角度θa以下であるか否かを判断する(S107)。すなわち、角度差検出部35は、仮固定されたセンサ部11の走査基準面25と取得した水平基準θhとのずれが許容角度θa以下であるか否かを判断する。使用者は仮固定においてセンサ部11の走査基準面25が水平に近づくようにセンサ部11を壁15に取り付けるものの、走査基準面25と水平基準θhとのずれが許容角度θa以下になることはほとんどない。そのため、センサ部11は、取り付け角度の微調整が必要となる。角度差検出部35は、このセンサ部11の取り付け角度の微調整に先立って、角度差Δθが許容角度θa以下であるか否かを判断する。
【0027】
S107において角度差Δθが許容角度θa以下であると判断されると(S107:Yes)、出力部36は角度差Δθを外部の端末50に出力する(S108)。出力部36は、角度差Δθとともに、角度差Δθが許容角度θa以下であることをあわせて出力してもよい。外部の端末50は、表示部51に出力部36から出力された角度差Δθ、および角度差Δθが許容角度θa以下であることを可視的に表示する(S109)。
【0028】
使用者は、端末50の表示部51の可視的な角度差Δθなどの表示を参照して、センサ部11を本固定する(S110)。すなわち、S107において角度差Δθが許容角度θa以下であると判断されているとき、センサ部11の取り付け位置は適切であることを意味する。そこで、使用者は、センサ部11の図示しないロック機構などを用いて、重力方向におけるセンサ部11の位置を本固定する。これにより、センサ部11の走査基準面25と水平基準θhとの角度差Δθが許容角度θa以下となった状態でセンサ部11は壁15に固定される。
【0029】
一方、S107において角度差Δθが許容角度θaより大きいと判断されると(S107:No)、出力部36は角度差Δθを外部の端末50に出力する(S111)。出力部36は、角度差Δθとともに、角度差Δθが許容角度θaより大きいことをあわせて出力してもよい。外部の端末50は、表示部51に出力部36から出力された角度差Δθ、および角度差Δθが許容角度θaより大きいことを可視的に表示する(S112)。
【0030】
使用者は、端末50の表示部51の可視的な角度差Δθなどの表示を参照して、センサ部11の取り付け位置を調整する(S113)。すなわち、S107において角度差Δθが許容角度θaより大きいと判断されているとき、センサ部11の取り付け位置は不適切であることを意味する。そこで、使用者は、仮固定されているセンサ部11を、支点60を中心に旋回させる。すなわち、使用者は、センサ部11の走査基準面25と水平基準θhとの角度差Δθが小さくなり、許容角度θaに近づくようにセンサ部11を旋回させる。使用者は、センサ部11の調整を行うと、例えば端末50から調整処理が終了した旨を入力する。処理ユニット12は、調整処理が終了した旨の入力があると、再びS102へリターンし、S102以降の処理を繰り返す。
【0031】
使用者は、走査基準面25と水平基準θhとの角度差Δθが許容角度θa以下になるまでS102以降の処理を繰り返す。これにより、最初に仮固定されたセンサ部11は、走査基準面25と水平基準θhとの角度差Δθが許容角度θa以下に調整される。
【0032】
以上説明したように、一実施形態によるセキュリティ装置10は、センサ部11を用いてセンサ部11から塀16までの最短距離Lminを求めることにより、水平基準θhを取得している。角度差検出部35は、この取得した水平基準θhとセンサ部11の走査基準面25とのずれを角度差Δθとして取得する。走査基準面25と取得した水平基準θhとを一致させることにより、センサ部11は家屋13の壁15の適切な位置、つまり水平に設置される。角度差検出部35で検出した角度差Δθが許容角度θa以下であるか否かは、セキュリティ装置10の外部の端末50に出力される。端末50は、セキュリティ装置10から出力された判断結果を、表示部51に可視的な情報として表示する。そのため、センサ部11を設置する使用者は、この可視的な表示を参照しつつ、センサ部11の走査基準面25と水平基準θhとが一致するようにセンサ部11の位置を調整することができる。したがって、熟練度やセンサ部11の分解能に関わらず容易にセンサ部11の走査基準面25と水平基準θhとを一致させることができ、侵入者の検出精度の向上を図ることができる。
【0033】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
図面中、10はセキュリティ装置、11はセンサ部、15は壁(第一壁)、16は塀(第二壁)、17は走査光、33は距離取得部、34は水平基準取得部、35は角度差検出部、36は出力部を示す。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9