(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来の技術には、以下の課題があった。
すなわち、この種のブローチにあっては、刃先の摩耗が進んで切れ味が悪くなるのを避けるために、刃先を定期的に研削している。このような再研削は、通常、全ての外径上がり刃100について、刃先101から当該ブローチの軸線Oに沿って一定距離ずつ行なわれる。したがって、
図6に示すように、切れ刃高さを工具送り方向Dの前方から後方に向かって漸次高くなるように設定された外径上がり刃100は、一般的に逃げ角θ
a1、θ
a2、…がそれぞれ同じ角度に設定されているため、再研削される都度、各外径上がり刃100の切れ刃高さが低くなる。つまり、
図7に示すように、外径上がり刃の外径Hbは、再研削量Yにtanθ(θは逃げ角)を乗じた値Xだけ小さくなる。なお、
図6、
図7において2点鎖線は再研削した状態を表す。
【0006】
ここで、各外径上がり刃100、…は、再研削の回数が少ない場合、その外径Hbが下穴の内径よりも大に保持されていて、所要の切削量が確保される。ところが、再研削の回数が多くなって再研削限界近くになると、外径上がり刃100のうち前部案内102に近い部分の切れ刃、例えば前部案内102から工具送り方向へ向けて1番目の外径上がり刃(以下、この切れ刃を第1刃100aと呼ぶ、以下2番目、3番目、…n番目も同様に呼ぶものとする)、第2刃100b等が、それぞれ下穴の内径よりも小さくなってしまうおそれがある。
すなわち、前部案内102に近い部分の外径上がり刃、つまり、第1刃100a、第2刃100b、第3刃100cは、もともとワークの下穴よりもほんのわずかな値だけ大きな外径に設定されているため、再研削に伴い外径が小さくなると、ワークの下穴よりも小さくなるおそれがある。
この具体例について下記表1に示す。
【0007】
【表1】
【0008】
この表1は、ヘリカルブローチについて、新品時と再研削量Yが3mmとした場合の、各外形上がり刃の外径を表したものである。なお、外径上がり刃の逃げ角は2°としている。
この表1に示すように、下穴の内径が110.465mmであるのに対し、新しいブローチでは、第1刃100aの外径が110.510mm、第2刃100bの外径が110.585mm、第3刃100cの外径が110.660mmと全ての切れ刃の外径が下穴の内径よりも大に設定されているが、再研削が進み、再研削量Yが3mmと再研削限界近くまで再研削されると、第1刃100aの外径が110.300mm、第2刃100bの外径が110.375mm、第3刃100cの外径が110.450mmと、それら再研削後の外径上がり刃の外径は、ともに下穴の内径110.465mmよりも小になる。この状態を表したものが
図8である。
【0009】
この場合、第1刃100a、第2刃100b及び第3刃100cがそれぞれワークの下穴の内周面に対向してその内周面を切削加工しようとするときに、それら外径上がり刃と下穴の内周面との間にクリアランスが生じる分、ブローチ自体がワークに対し下穴の径方向へ自由に移動することが可能となる。このため、それら第1刃100a、第2刃100b及び第3刃100cが、それらの後方に続く外径上がり刃である、例えば第2刃100b、第3刃100c、第4刃100dに対するガイド機能が果たせなくなる。この結果、前述した従来の技術には、加工精度が低下する課題があった。
また、前述したようにブローチ自体がワークの径方向へ移動可能であるため、ほぼ同一円周位置にある外径上がり刃のうち、ある外径上がり刃には切削抵抗が加わり、他の外径上がり刃には切削抵抗が加わらない状況が生じる。したがって、切削抵抗が加わる外径上がり刃に切削荷重が集中することとなり、外径上がり刃の刃先に過大な荷重が加わることにともない、刃先が欠損する課題があった。
【0010】
本発明は、このような背景の下になされたもので、再研削が進んだ状態でも、前部案内の近傍にある切れ刃のそれよりも後方の切れ刃に対するガイド機能が損なわれることなく高精度の加工が行なえるとともに、切れ刃の欠損を防止することができるブローチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明のブローチは、ワークに形成された下穴に、前部案内とそれに続く複数の切れ刃が順に挿入されて前記下穴を所定形状に仕上げるブローチにおいて、前記切れ刃が、前記前部案内に続く単数または複数の前側切れ刃と、該前側切れ刃の後方に配置されて逃げ角がそれぞれ一定とされた複数の後側切れ刃とを備え、前記前側切れ刃の逃げ角が、前記後側切れ刃の逃げ角よりも小さく設定されていることを特徴としている。
【0012】
前記ブローチによれば、前側切れ刃の逃げ角が、後側切れ刃の逃げ角よりも小さく設定されている。したがって、各切れ刃に対して当該ブローチの軸線に沿った再研削量が同じ長さであっても、逃げ角を異なって設定している分、前側切れ刃の切れ刃高さの低くなる割合が、後側切れ刃の切れ刃高さの低くなる割合に比べて小さくなる。
このため、再研削限界近くまで再研削されたとしても、前側切れ刃の逃げ角を適宜小さな値に設定することにより、前側切れ刃の切れ刃高さの低くなる割合が小さいため、該前側切れ刃の外径がワークの下穴の内径より小さくなるのを回避することができる。つまり、再研削限界近くまで再研削されたとしても、ワークを切削するときに、前側切れ刃をワークの下穴の内周面に当接させて、所要の切削量を確保することができる。この結果、前部案内の近傍にある切れ刃のそれよりも後方に続く切れ刃に対するガイド機能が損なわれることなく、加工精度を良好に保つことができる。
【0013】
また、ワークを切削するときに、これら前側切れ刃をワークの下穴の内周面に当接させて、所要の切削量を確保することができるため、ほぼ同一円周位置にある切れ刃のうち、ある切れ刃には切削抵抗が加わり他の切れ刃は切削抵抗が加わらないといった状況を回避できる。この結果、ある切れ刃に切削荷重が集中して刃先が欠損する事態を回避できる。
また、後側切れ刃は、逃げ角が前側切れ刃の逃げ角よりも大きく設定されているので、従来のブローチと同程度の切削機能を果たすことができる。
【0014】
前記前側切れ刃は複数配置され、該前側切れ刃は、最前の前側切れ刃から最後部の前側切れ刃に向かって、逃げ角が段階的に大きくなっているのが好ましい。
この場合、再研削したときに、前側切れ刃のうち、前部案内に近い最前方側に位置する前側切れ刃の切れ刃高さの低くなる割合が最も小さく、それよりも後方側に位置する前側切れ刃は、後方に位置する前側切れ刃ほど切れ刃高さの低くなる割合が高くなる。この結果、再研削限界近くまで再研削されたときであっても、前方の前側切れ刃がワークの下穴よりも小さくなるのをより一層防ぎつつ、最後端に位置する前側切れ刃の切れ刃高さと最前端に位置する後側切れ刃の切れ刃高さとの差を小さくすることができる。
【0015】
前記前側切れ刃は2個以上が組をなすとともに、それら組をなす前側切れ刃どうしの逃げ角が同じ角度に設定され、組をなす前側切れ刃の逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃の逃げ角よりも大きく設定されていてもよい。
この場合、2個以上が組をなすように前側切れ刃の逃げ角を設定するので、前側切れ刃全ての逃げ角を個々に変える場合に比べて、当該ブローチの設計及び制作が容易になる。
なお、当該ブローチの切れ刃はヘリカルブローチの外径上がり刃を対象としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、再研削が進んだ状態でも、前側切れ刃のそれよりも後方の切れ刃に対するガイド機能が損なわれることがなく高精度の加工が行なえるとともに、切れ刃の欠損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1ないし
図4は本発明にかかるヘリカルブローチの実施の形態を示すものであり、
図1は本発明を軸直タイプのヘリカルブローチに適用した場合の実施形態を示す側面図である。
【0019】
本実施形態のヘリカルブローチは、例えば上述したプラネタリーインターナルギヤ等のヘリカル内歯車のように内周に捩れ溝を有するワークをブローチ加工するものである。ブローチ本体1は、
図1に示すように軸線Oを中心とした長尺の軸状をなし、その両端部は掴み部2,3とされるとともに、これら掴み部2,3の間は切れ刃部4とされている。そして、この切れ刃部4においてブローチ本体1の外周には、前記軸線Oに対する径方向外周側に突出する複数の切れ刃5が、該ブローチ本体1の前端側(
図1において左側)から後端側(
図1において右側)に向けて軸線O回りに捩れるリードLに沿った螺旋状をなすように配列されている。また、これら切れ刃5の列が周方向に間隔をあけて複数列形成されている。
【0020】
なお、ここでは、軸線O方向において複数の切れ刃5の間に形成される刃溝がこの軸線O回りにねじれた軸直タイプ(軸直刃溝タイプ)の組立形ヘリカルブローチに本発明を適用した例を示す。
【0021】
ここで、切れ刃部4のうちブローチ本体1先端側の部分の複数の切れ刃5は、前記ヘリカル内歯車の歯形を歯丈方向に追い込み切削する外径上がり刃6とされている。また、この外径上がり刃6よりもブローチ本体1後方の切れ刃部4には、こうして外径上がり刃6によって所定の歯丈に切削された歯形の歯面すなわちワークの捩れ溝の両溝壁面を、歯厚方向すなわちブローチ本体1の周方向に追い込み切削して所定の歯厚に形成する複数の歯厚上がり刃7が備えられている。
【0022】
なお、切れ刃部4のうち前記外径上がり刃6が配列される部分の後端側には、歯形の小径部を切削する丸刃が外径上がり刃6と交互に備えられていてもよい。また、この丸刃は、歯厚上がり刃7の後端側に備えられていてもよい。そして、本実施形態では、歯厚上がり刃7が形成されたシェルが、外径上がり刃6及び丸刃が形成されたブローチ本体1に取り付けられる組立形であるが、全ての刃がブローチ本体1に一体に形成された一体形であってもよい。
【0023】
図2は
図1のII円部の拡大した模式図である。
図2に示すように、外径上がり刃6は、前方を向くすくい面10と径方向外方を向く逃げ面11との稜線部分に刃先12が設けられ、これら外径上がり刃6は、前部案内13から後方に向かって第1刃6a、第2刃6b、第3刃6c、第4刃6d、…、第n刃6nとされている。
ここで、外径上がり刃6は、切れ刃高さを工具送り方向Dの前方から後方に向かって漸次高くなるように設定されている。つまり、第1刃6a、第2刃6b、…と、それぞれ外径が漸次大きくなるように設定されている。
また、外径上がり刃6は、前部案内13に続く4個が前側切れ刃6Aとされ、前側切れ刃6Aの後方に配置される外径上がり刃が後側切れ刃6Bとされている。後側切れ刃6Bは、逃げ角が一定とされているが、前側切れ刃6Aの逃げ角θ
1〜θ
6は、後側切れ刃6Bの逃げ角θ
7よりも小さく設定されている。
【0024】
また、前側切れ刃6Aは2個ずつ組をなすとともに、それら組をなす前側切れ刃6Aどうしの逃げ角が同じ角度に設定されている。具体的な例を挙げて説明すると、第1刃6aの逃げ角θ
1と第2刃6bの逃げ角θ
2が同じ角度に設定され、第3刃6cの逃げ角θ
3と第4刃6dの逃げ角θ
4とが同じ角度に設定され、さらに第5刃6eの逃げ角θ
5と第6刃6fの逃げ角θ
6とが同じ角度に設定されている。
そして、組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角よりも大きく設定されている。つまり、組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃6Aの逃げ角よりも大きく設定されている。前記例で説明すると、第3刃6c、第4刃6dの逃げ角θ
3、θ
4は、第1刃6a、第2刃6bの逃げ角θ
1、θ
2より大に設定され、また、第5刃6e、第6刃6fの逃げ角θ
5、θ
6は、第3刃6c、第4刃6dの逃げ角θ
3、θ
4より大に設定されている。
【0025】
次に、このように構成されたヘリカルブローチによりワークWを切削する方法について説明する。
ブローチ本体1を先端側から、ワークWに予め形成した下穴に挿入し、該ブローチ本体1を、先端側の掴み部2を把持しながら、前記リードLに沿ってワークに対し相対的に前進させつつ回転させる。これにより、まず外径上がり刃6によって所定の深さまで達する捩れ溝を形成する。
【0026】
次いで、この捩れ溝の一方の側面に歯厚上がり刃7の例えば鋭角側の切削刃を押し当てて該一方の側面を切削し、次いで、捩れ溝の他方の側面に歯厚上がり刃7の鈍角側の切削刃を押し当てて該他方の側面を切削する。これによりワークの捩れ溝の左右の側面を所望の形状に仕上げる。
【0027】
ここで、例えば、外径上がり刃6について再研削するときには、〈発明が解決しようとする課題〉で説明したように、刃先12から当該ヘリカルブローチの軸線Oに沿って一定の距離ずつ行なう。そして、再研削限界近くまで再研削される場合には、前部案内13の近傍に位置する例えば第1刃6a、第2刃6b、第3刃6cの外径が、ワークの下穴よりも小さくなることが懸念される。
しかしながら、ここでは、前側切れ刃6Aの逃げ角が、後側切れ刃6Bの逃げ角よりも小さく設定されているため、各外径上がり刃6に対して再研削量が同じ長さであっても、逃げ角を異なって設定している分、前側切れ刃6Aの切れ刃高さの低くなる割合が、後側切れ刃6Bの切れ刃高さの低くなる割合に比べて小さくなる。
【0028】
このため、たとえ、再研削限界近くまで再研削されたとしても、前側切れ刃6Aの逃げ角を適宜小さな値に設定することにより、前側切れ刃6Aの切れ刃高さの低くなる割合が小さいため、該前側切れ刃6Aの外径がワークの下穴の内径より小さくなるのを回避することができる。つまり、再研削限界近くまで再研削されたとしても、ワークを切削するときに、前側切れ刃6Aのそれぞれについて所要の切削量を確保することができる。この結果、前部案内13の近傍にある外径上がり刃6のそれよりも後方に続く外径切れ刃6に対するガイド機能が損なわれることなく、加工精度を良好に保つことができる。
【0029】
また、ワークを切削するときに、これら前側切れ刃6Aのそれぞれについて所要の切削量を確保することができるため、ほぼ同一円周位置にある前側切れ刃6Aのうち、ある前側切れ刃6Aには切削抵抗が加わり、他の前側切れ刃6Aには切削抵抗が加わらないといった状況を回避することができる。この結果、前側切れ刃6Aのある切れ刃に切削荷重が集中して刃先12が欠損する事態を回避できる。
また、後側切れ刃6Bは、逃げ角θ
7が前側切れ刃6Aの逃げ角θ
1〜θ
6よりも大きく設定されているので、従来のブローチと同程度の切削機能を果たすことができる。
【0030】
また、この実施形態では、前側切れ刃6Aは、最前の前側切れ刃6Aから最後部の前側切れ刃6Aに向かって、逃げ角が段階的に大きくなっているから、再研削したときに、前側切れ刃6Aのうち、前部案内13に近い最前方側に位置する前側切れ刃(第1刃6a)の切れ刃高さの低くなる割合が最も小さく、それよりも後方側に位置する前側切れ刃6Aは、後方に位置する前側切れ刃6Aほど切れ刃高さの低くなる割合が高くなる。この結果、再研削限界近くまで再研削されたときであっても、前方の前側切れ刃6Aがワークの下穴よりも小さくなるのを防ぎつつ、最後端に位置する前側切れ刃(ここでは、第6刃6f)の切れ刃高さと最前端に位置する後側切れ刃(第7刃6g)の切れ刃高さとの差を小さくすることができる。
【0031】
加えて、前側切れ刃6Aは2個ずつ組をなす(第1刃6a、6第2刃6bが組をなし、第3刃6c、第4刃6dが組をなし、さらに第5刃6e、第6刃6fが組をなす)とともに、それら組をなす前側切れ刃6Aどうしの逃げ角が同じ角度に設定され(θ
1=θ
2、θ
3=θ
4、θ
5=θ
6)、組をなす前側切れ刃の逃げ角は、それよりも前側に配置される組をなす前側切れ刃の逃げ角よりも大きく設定されているので(θ
1=θ
2<θ
3=θ
4<θ
5=θ
6)、前側切れ刃6A全ての逃げ角を個々に変える場合に比べて、当該ブローチの前側切れ刃の設計及び制作が容易になる利点が得られる。
【0032】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、本実施形態では、本発明を軸直タイプの組立形ヘリカルブローチに適用した例について説明したが、これに限られることなく、本発明は、オフノルマルタイプのヘリカルブローチにも適用可能である。また、ヘリカルブローチに限られることなく、他のブローチにも本発明は適用可能である。
また、前記実施形態では、前側切れ刃6Aを6個としているが、これに限られることなく、6以外の複数あるいは単数であっても良い。
また、前記実施形態では、前側切れ刃6Aを2個ずつ組にしているが、これに限られることなく3個ずつを組みにしてもよく、また、組にすることなく、1個ずつの前側切れ刃の逃げ角を、後側切れ刃6Bの逃げ角を超えない範囲で、後方に向かう従い漸次増大するように設定しても良い。
【実施例】
【0033】
図1、
図2に基づき説明したヘリカルブローチについて、再研削後における切れ刃の外径がどのように変化するかを調べた。
その結果を下記表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
この実施例における新品時の外径上がり刃の外径は、前記表1で示したものと同じ値とした。前記表1で示したヘリカルブローチと異なるところは、外径上がり刃6の逃げ角を変えた点である。すなわち、前側切れ刃6Aを構成する第1刃6a及び第2刃6bの逃げ角θ
1、θ
2を0.5°、前側切れ刃6Aを構成する第3刃6c及び第4刃6dの逃げ角θ
3、θ
4を1.0°、前側切れ刃6Aを構成する第5刃6e及び第6刃6fの逃げ角θ
5、θ
6を1.5°後側切れ刃6Bを構成する第7刃6g以下の外径上がり刃の逃げ角を2.0°とした。
【0036】
このヘリカルブローチについて、再研削量を3mmとしたときの各外径上がり刃6の外径を表2に表す。表2に示すように、第1刃6aの外径は110.488mm、第2刃6bの外径は110.533mm、第3刃6cの外径は110.570mm、第4刃6dの外径は110.615mm、第5刃6eの外径は110.653mm、第6刃6fの外径は110.698mmとなる。
これを図に表したものが
図3、
図4である。
【0037】
すなわち、
図3には、新品のときの各外径上がり刃6の外径と再研削量を3mmとしたときの各外径上がり刃6の外径の比較を示している。また、
図4は、当該外径上がり刃6の外径とその直前の外径上がり刃6の外径と差を示した図である。なお、
図4で第1刃についてはワークの下穴との差を表している。
この実施例からもわかるように、再研削量を3mmとしたときであっても、何れの前側切れ刃6Aについても、外径がワークの下穴の内径よりも大に保持されていることが確認できた。また、各外径上がり刃6は、切れ刃高さを工具送り方向Dの前方から後方に向かって漸次高くなるように保持されていることも確認できた。
なお、
図4に示すように、前側切れ刃が2個ずつ組をなすものにおいて、新品のときの各外径上がり刃6の段差量、すなわち、外径上がり刃6の外径とその直前の外径上がり刃6の外径との差は、第1刃が0.075mmと大きく、第2刃が0.045mmと小さく、第3刃が0.090mmと大きく、第4刃が0.045mmと小さくなるように、大小交互に設定している。この理由は、
図4に示すように、再研削量が3mm程度と再研削限界近くまで再研削したときの各外径上がり刃6の段差量がほぼ一定になるように企図したためである。つまり、新品のときの外径上がり刃6は再研削する前であって歯厚(刃のヘリカルブローチの軸線に沿った厚さ)が比較的厚いため強度的に強いものの、再研削限界近くまで再研削したときの外径上がり刃は、歯厚が薄く、強度的には弱くなっている。このため、再研削限界近くまで再研削したときの各外径上がり刃の段差量をほぼ一定とし、切削時において前部案内に近い特定の外径上がり刃に負荷が過度に加わって損傷するといった事態を未然に防止している。