【実施例】
【0019】
以下に、自動車用内装部品の仮止め爪にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
自動車用内装部品1の仮止め爪4は、
図1〜
図3に示すごとく、自動車用内装部品1を車室側取付部21に仮止めするためのものである。
仮止め爪4は、板材から構成され、自動車用内装部品1から複数個が突出して設けられている。また、仮止め爪4は、板材を車室側取付部21の表面に直交させて、車室側取付部21に設けられた掛止穴211に挿入されるよう構成されている。
【0020】
仮止め爪4は、
図3、
図4に示すごとく、その板材の平面形状において、次の基部41、一方傾斜部42、一方掛止部43、他方掛止部44、他方傾斜部45及び挿入先端部46を有している。
基部41は、自動車用内装部品1を固定具によって車室側取付部21に本締めするときに、掛止穴211の内壁面に沿って配置される一対の側面411,412を有している。一方傾斜部42は、基部41の一方の側面411(一対の側面411,412の一方)との間に鈍角θ1を形成する状態で、一方の側面411から板材の平面の内側へ屈曲して、掛止穴211への挿入を案内する部分である。一方掛止部43は、一方傾斜部42から板材の平面の外側へ屈曲して、掛止穴211に掛止可能な部分である(
図5参照)。
【0021】
他方掛止部44は、基部41の他方の側面412(一対の側面411,412の他方)から板材の平面の外側へ屈曲して、掛止穴211に掛止可能な部分である(
図6参照)。他方傾斜部45は、他方掛止部44との間に鋭角θ4を形成する状態で、他方掛止部44から板材の平面の内側へ屈曲して、掛止穴211への挿入を案内する部分である。挿入先端部46は、他方傾斜部45と一方掛止部43とを結ぶ部分である。
ここで、
図3は、仮止め爪4における基部41が掛止穴211に位置決めされて、固定具としてのビス5によって自動車用内装部品1が車室側取付部21に本締めされる状態401を示す。また、
図5は、仮止め爪4の一方掛止部43が掛止穴211に掛止される状態402を示し、
図6は、仮止め爪4の他方掛止部44が掛止穴211に掛止される状態403を示す。
【0022】
以下に、本例の自動車用内装部品1の仮止め爪4につき、
図1〜
図6を参照して詳説する。
図1、
図2に示すごとく、本例の自動車用内装部品1は、自動車の窓部に設けられるカーテンシールドエアバッグ12のインフレータ1である。カーテンシールドエアバッグ12は、自動車の側方のドアにおけるドアサッシュ2の上側部分に配設されるものである。そして、カーテンシールドエアバッグ12は、自動車の衝突時において、ドアにおける窓ガラス22の表面を覆って、自動車の乗員を保護することができる。また、インフレータ1は、自動車の衝突時にガスを発生させて、このガスをカーテンシールドエアバッグ12へ送り込んで、カーテンシールドエアバッグ12を膨らませるものである。インフレータ1は、前方側のカーテンシールドエアバッグ12と後方側のカーテンシールドエアバッグ12とへガスを送り込むよう、それらの前後方向の中間位置に取り付けられる。
【0023】
図2、
図3に示すごとく、本例の車室側取付部21は、自動車のボディの一部としてのドアサッシュ2に設けられている。インフレータ1は、複数の仮止め爪4、及び固定具としてのビス5によって、ドアサッシュ2に取り付けられる。ドアサッシュ2には、仮止め爪4がそれぞれ掛止される掛止穴211が複数設けられている。
図1に示すごとく、インフレータ1は、部品本体11と、部品本体11を保持して車室側取付部21に取り付けられるブラケット3とを有している。ブラケット3は、インフレータ1における前方側と後方側との2箇所に取り付けられている。ブラケット3は、円筒形状のインフレータ1の外周に巻き付けて配置される外周部31と、外周部31から突出して形成された取付板部32と、取付板部32の裏面から垂直に突出して形成された仮止め爪4とを有している。また、取付板部32には、車室側取付部21に締め付けるビス5を挿通する挿通穴321が設けられている。
【0024】
ブラケット3は、金属製であり、仮止め爪4は、金属製の爪として、取付板部32から垂直に折り曲げられて形成されている。各ブラケット3における仮止め爪4は、一方傾斜部42及び一方掛止部43が鉛直方向上側に位置する状態で、取付板部32の裏面から垂直に突出して設けられている。仮止め爪4は、取付板部32における片側の側部に設けられている。
【0025】
図2に示すごとく、ドアサッシュ2の車室側取付部21に形成された掛止穴211は、インフレータ1の前後に取り付けられるブラケット3の位置に対向する、水平方向に並ぶ2箇所に設けられている。また、車室側取付部21において、掛止穴211に隣接する位置には、挿通穴321に挿通されたビス5が螺合されるネジ穴212が設けられている。各ブラケット3における仮止め爪4は、板材の平面が互いに対向して平行になるとともに水平方向に並ぶ状態で、インフレータ1に配置されている。
図3に示すごとく、各ブラケット3の取付板部32は、インフレータ1に巻き付けられる外周部31から斜め下方へ突出して形成されている。そして、
図5、
図6に示すごとく、インフレータ1の仮止め状態を形成するときには、各ブラケット3の取付板部32の下端部33が車室側取付部21に当接した状態で、各ブラケット3の仮止め爪4における一方掛止部43又は他方掛止部44が掛止穴211に掛止されるよう構成されている。
【0026】
図3に示すごとく、ドアサッシュ2の車室側取付部21は、上方に向かうほど室内側(自動車の左右方向の中心側)Wに位置するよう傾斜して形成されている。そして、仮止め爪4によって車室側取付部21にインフレータ1が仮止めされるときに、
図5、
図6に示すごとく、インフレータ1がその自重によって垂れ下がるときには、各ブラケット3の取付板部32の下端部33が車室側取付部21に当接して、インフレータ1の仮止め状態が維持される。
【0027】
図3、
図4に示すごとく、掛止穴211の上下の内壁面の間の幅は、仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412の間の幅とほとんど同じになるように形成されている。ただし、掛止穴211への基部41の挿入が可能になるよう、掛止穴211の上下の内壁面の間の幅が、仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412の間の幅よりも、0.2mm大きく形成されている。掛止穴211の上下の内壁面の間の幅は、仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412の間の幅よりも、0.1〜1mm大きく形成することができる。
【0028】
図4に示すごとく、基部41は、一対の側面411,412が取付板部32から垂直になるように形成されている。一方傾斜部42は、一方の側面411との間に90°以上180°未満(実際には110°以上160°未満)の鈍角θ1の山形状421を形成する状態で、一方の側面411から屈曲する面として形成されている。一方傾斜部42は、一方の側面411から他方の側面412に向かう側である、板材の平面の内側に向けて、一方の側面411に対して傾斜して形成されている。
【0029】
一方掛止部43は、一方傾斜部42を形成する面との間に鋭角を形成する状態で、一方の側面411の外方へ向かう側である、板材の平面の外側に向けて、一方傾斜部42に折り返して形成されている。一方掛止部43は、一方傾斜部42との間に45°以上90°未満(実際には45°以上75°未満)の鋭角θ2の谷形状431を形成する状態で、一方傾斜部42の面に折り返す面として形成されている。
【0030】
図4に示すごとく、他方掛止部44は、他方の側面412に対して略90°(実際には70°以上100°未満)の角θ3の谷形状441を形成する状態で、他方の側面412の外方へ向かう側である、板材の平面の外側に向けて、他方の側面412に折り返すように屈曲して形成されている。本例の他方の側面412と他方掛止部44の面との間の角部(谷形状441)は、板材の平面の内側へ窪む形状に形成されている。
【0031】
他方傾斜部45は、他方掛止部44との間に45°以上90°未満(実際には45°以上75°未満)の鋭角θ4の山形状451を形成する状態で、他方掛止部44から屈曲する面として形成されている。他方傾斜部45は、他方の側面412側から一方の側面411側に向かう、板材の平面の内側に向けて、他方の側面412に対して傾斜して形成されている。
挿入先端部46は、一方掛止部43の先端から他方傾斜部45の先端との間において、曲面形状に形成されている。本例の挿入先端部46は、一方掛止部43の先端から直線状に形成された後、他方傾斜部45の先端に向けて曲面状に形成されている。
【0032】
次に、インフレータ1をドアサッシュ2の車室側取付部21に取り付ける作業、及び仮止め爪4による作用効果につき説明する。
まず、インフレータ1に対して2つのブラケット3を予め取り付けておく。本例においては、作業者の手作業によってインフレータ1の仮止め及びビス5による本締めの取付作業を行う。これ以外にも、産業用ロボット等の機械を用いてインフレータ1の取付作業を行うこともできる。
【0033】
各ブラケット3における仮止め爪4を車室側取付部21の各掛止穴211に挿入する際には、作業者は、まず、各挿入先端部46を各掛止穴211に挿入する。このとき、他方傾斜部45が掛止穴211における下側の内壁面に当接して、仮止め爪4が掛止穴211の中心へと案内される。また、仮止め爪4がさらに掛止穴211の奥へ挿入されると、一方傾斜部42が掛止穴211における上側の内壁面に当接して、仮止め爪4が掛止穴211の中心へと案内される。これにより、仮止め爪4を掛止穴211の中心位置へ容易に案内することができ、車室側取付部21へのインフレータ1の装着を容易に行うことができる。そのため、掛止穴211への仮止め爪4の挿入のしやすさを向上させることができる。
【0034】
続いて、作業者は、各仮止め爪4が各掛止穴211に挿入されたときには、作業者がインフレータ1から手を放し、インフレータ1が各仮止め爪4によって車室側取付部21に仮止めされる。このとき、
図5に示すごとく、インフレータ1が一方側である上側へ浮き上がるときには、一方掛止部43が掛止穴211の上側部分に掛止される。また、
図6に示すごとく、インフレータ1が他方側である下側へ垂れ下がるときには、他方掛止部44が掛止穴211の下側部分に掛止される。そして、インフレータ1が上側及び下側のいずれに位置ずれしようとするときにおいても、各ブラケット3の取付板部32の下端部33が車室側取付部21に当接する。これにより、複数の仮止め爪4によって、車室側取付部21に対するインフレータ1の仮止め状態を安定して維持することができる。そのため、掛止穴211からの仮止め爪4の脱落のしにくさを向上させることができる。
【0035】
続いて、
図3に示すごとく、作業者は、各ブラケット3の取付板部32における挿通穴321にビス5を挿通し、このビス5を車室側取付部21におけるネジ穴212に螺合する。そして、仮止め状態のインフレータ1を車室側取付部21に本締めする。ここで、一方傾斜部42、一方掛止部43、他方傾斜部45及び他方掛止部44を設けた仮止め爪4の構成により、基部41における一対の側面411,412と掛止穴211との間の隙間を極力小さく設定することができる。
【0036】
そして、インフレータ1の本締めを行うときには、各仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412が各掛止穴211の内壁面に自然と導かれる。これにより、仮止め状態のインフレータ1は、各仮止め爪4の案内によって、車室側取付部21に対する正規位置に容易に配置される。また、インフレータ1の本締めを行う際に、基部41における一対の側面411,412と掛止穴211との間の隙間が小さいことにより、このインフレータ1が回転しにくくすることができる。そのため、インフレータ1の組付のしやすさを向上させることができる。
【0037】
それ故、本例のインフレータ1の仮止め爪4によれば、掛止穴211への挿入のしやすさ、掛止穴211からの脱落のしにくさ及びインフレータ1の組付のしやすさを向上させることができる。