特許第5783141号(P5783141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783141
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】自動車用内装部品の仮止め爪
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/00 20060101AFI20150907BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20150907BHJP
   B60R 21/217 20110101ALI20150907BHJP
【FI】
   B60R11/00
   B60R21/213
   B60R21/217
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-150809(P2012-150809)
(22)【出願日】2012年7月4日
(65)【公開番号】特開2014-12466(P2014-12466A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 美那子
(72)【発明者】
【氏名】福井 一雄
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−161139(JP,A)
【文献】 特開2007−083781(JP,A)
【文献】 特開2012−101723(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0192368(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/00−11/06
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用内装部品を車室側取付部に仮止めするための仮止め爪であって、
該仮止め爪は、板材から構成され、上記自動車用内装部品から複数個が突出して設けられているとともに、上記板材を上記車室側取付部の表面に直交させて、該車室側取付部に設けられた掛止穴に挿入されるよう構成されており、
かつ、上記仮止め爪は、上記自動車用内装部品を固定具によって上記車室側取付部に本締めするときに、上記掛止穴の内壁面に沿って配置される一対の側面を有する基部と、
上記一対の側面の一方との間に鈍角を形成する状態で、該側面の一方から上記板材の平面の内側へ屈曲して、上記掛止穴への挿入を案内する一方傾斜部と、
該一方傾斜部から上記板材の平面の外側へ屈曲して、上記掛止穴に掛止可能な一方掛止部と、
上記一対の側面の他方から上記板材の平面の外側へ屈曲して、上記掛止穴に掛止可能な他方掛止部と、
該他方掛止部との間に鋭角を形成する状態で、該他方掛止部から上記板材の平面の内側へ屈曲して、上記掛止穴への挿入を案内する他方傾斜部と、
該他方側傾斜部と上記一方掛止部とを結ぶ挿入先端部と、を有していることを特徴とする自動車用内装部品の仮止め爪。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用内装部品の仮止め爪において、上記自動車用内装部品は、部品本体と、該部品本体を保持して上記車室側取付部に取り付けられるブラケットとを有しており、
該ブラケットには、上記仮止め爪と、上記車室側取付部に締め付ける上記固定具としてのビスを挿通する挿通穴とが設けられていることを特徴とする自動車用内装部品の仮止め爪。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動車用内装部品の仮止め爪において、該仮止め爪は、上記一方傾斜部及び上記一方掛止部が鉛直方向上側に位置する状態で、上記ブラケットの裏面から垂直に突出して設けられていることを特徴とする自動車用内装部品の仮止め爪。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用内装部品の仮止め爪において、該仮止め爪は、上記板材の平面が互いに対向して平行になるとともに水平方向に並ぶ状態で複数個が上記自動車用内装部品に設けられており、
上記自動車用内装部品の仮止め状態を形成するときには、上記ブラケットの下端部が上記車室側取付部に当接した状態で、上記複数の仮止め爪における上記一方掛止部又は上記他方掛止部が上記掛止穴に掛止されるよう構成されていることを特徴とする自動車用内装部品の仮止め爪。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用内装部品の仮止め爪において、上記自動車用内装部品は、自動車の窓部に設けられるカーテンシールドエアバッグのインフレータであることを特徴とする自動車用内装部品の仮止め爪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用内装部品を車室側取付部に仮止めするための仮止め爪に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室側に設けられる種々の内装部品においては、ネジによってボディ等に取り付ける際に、作業性を向上させるために、仮止め状態を一旦形成することが行われている。この仮止め状態は、内装部品を保持するブラケット等に仮止め爪を設け、この仮止め爪をボディ等に設けられた掛止穴に掛止することによって行われている。
例えば、特許文献1の電子機器の仮固定構造においては、室内の一面に固定されるブラケットと、ブラケットに取り付けられる機器本体とのいずれか一方に誘い穴を設け、他方に、誘い穴に嵌合可能な仮保持用フックを設けている。また、ブラケットと機器本体とのいずれか一方に、位置決め穴を設け、他方に、位置決め穴に嵌合してネジ位置を合わせる位置決めリブを設けている。そして、仮保持用フックで機器本体をブラケットに仮保持すると、位置決めリブがブラケットの誘い穴に自然に誘い込まれ、機器本体とブラケットのネジ締め位置が自然に定まる。これにより、車両への取り付け作業を容易にしている。
【0003】
また、例えば、特許文献2の車載用オーディオ装置取付構造においては、インストルメントパネルのオーディオ設置部の受面部に、爪形状部を設け、取付用ブラケットの取付面部に、受面部と取付面部との当接状態で爪形状部が係止可能な爪係止部を設けている。この爪形状部及び爪係止部の形成により、オーディオ装置を取付用ブラケットに確実に仮保持し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−188804号公報
【特許文献2】特開2008−302760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の仮止め爪等を用いた仮止め構造においては、仮止め爪(仮保持用フック、爪形状部)における引掛け部分が、仮止め爪における一方向にしか突出して設けられていない。そのため、内装部品が自重により垂れ下がるか持ち上げられるときには、仮止め爪が掛止穴から浮き上がって、仮止め状態が維持できないおそれもある。また、ネジ締めを行って内装部品をボディ等に取り付ける際に、この内装部品が回転してしまうおそれがある。そのため、脱落のしにくさ、組付のしやすさ等を改善するには更なる工夫が必要とされる。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、掛止穴への挿入のしやすさ、掛止穴からの脱落のしにくさ及び自動車用内装部品の組付のしやすさを向上させることができる自動車用内装部品の仮止め爪を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、自動車用内装部品を車室側取付部に仮止めするための仮止め爪であって、
該仮止め爪は、板材から構成され、上記自動車用内装部品から複数個が突出して設けられているとともに、上記板材を上記車室側取付部の表面に直交させて、該車室側取付部に設けられた掛止穴に挿入されるよう構成されており、
かつ、上記仮止め爪は、上記自動車用内装部品を固定具によって上記車室側取付部に本締めするときに、上記掛止穴の内壁面に沿って配置される一対の側面を有する基部と、
上記一対の側面の一方との間に鈍角を形成する状態で、該側面の一方から上記板材の平面の内側へ屈曲して、上記掛止穴への挿入を案内する一方傾斜部と、
該一方傾斜部から上記板材の平面の外側へ屈曲して、上記掛止穴に掛止可能な一方掛止部と、
上記一対の側面の他方から上記板材の平面の外側へ屈曲して、上記掛止穴に掛止可能な他方掛止部と、
該他方掛止部との間に鋭角を形成する状態で、該他方掛止部から上記板材の平面の内側へ屈曲して、上記掛止穴への挿入を案内する他方傾斜部と、
該他方側傾斜部と上記一方掛止部とを結ぶ挿入先端部と、を有していることを特徴とする自動車用内装部品の仮止め爪にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記自動車用内装部品の仮止め爪は、板材から構成されており、その形状に工夫をすることにより、仮止めの性能を向上させている。
仮止め爪は、自動車用内装部品から複数個が突出して設けられているとともに、板材を車室側取付部の表面に直交させて、車室側取付部に設けられた掛止穴に挿入されるものである。そして、各仮止め爪を構成する板材の平面形状が、基部、一方傾斜部、一方掛止部、他方掛止部、他方傾斜部及び挿入先端部を有していることにより、掛止穴への挿入のしやすさ、掛止穴からの脱落のしにくさ、組付のしやすさを向上させることができる。
【0009】
各仮止め爪を各掛止穴に挿入する際には、まず、挿入先端部が掛止穴に挿入され、続いて、他方傾斜部及び一方傾斜部によって、仮止め爪が掛止穴の中心へ案内される。これにより、仮止め爪を掛止穴の中心位置へ容易に案内することができ、車室側取付部への自動車用内装部品の装着を容易に行うことができる。そのため、掛止穴への仮止め爪の挿入のしやすさを向上させることができる。
【0010】
続いて、各仮止め爪が各掛止穴に挿入されたときには、自動車用内装部品が各仮止め爪によって車室側取付部に仮止めされる。このとき、自動車用内装部品が一方側へ位置ずれしようとするときには、一方掛止部が掛止穴に掛止され、自動車用内装部品が他方側へ位置ずれしようとするときには、他方掛止部が掛止穴に掛止される。これにより、複数の仮止め爪によって、車室側取付部に対する自動車用内装部品の仮止め状態を安定して維持することができる。そのため、掛止穴からの仮止め爪の脱落のしにくさを向上させることができる。
【0011】
続いて、固定具を用いて、仮止め状態の自動車用内装部品を車室側取付部に本締めする。ここで、一方傾斜部、一方掛止部、他方傾斜部及び他方掛止部を設けた仮止め爪の構成により、基部における一対の側面と掛止穴との間の隙間を極力小さく設定することができる。そして、自動車用内装部品の本締めを行うときには、各仮止め爪の基部における一対の側面が各掛止穴の内壁面に自然と導かれる。これにより、仮止め状態の自動車用内装部品は、各仮止め爪の案内によって、車室側取付部に対する正規位置に容易に配置される。また、自動車用内装部品の本締めを行う際に、基部における一対の側面と掛止穴との間の隙間が小さいことにより、この自動車用内装部品が回転しにくくすることができる。そのため、自動車用内装部品の組付のしやすさを向上させることができる。
【0012】
それ故、上記自動車用内装部品の仮止め爪によれば、掛止穴への挿入のしやすさ、掛止穴からの脱落のしにくさ及び自動車用内装部品の組付のしやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例にかかる、自動車用内装部品の仮止め爪を示す斜視図。
図2】実施例にかかる、自動車用内装部品を車室側取付部に仮止めする状態を示す斜視図。
図3】実施例にかかる、自動車用内装部品を車室側取付部に本締めした状態を示す断面図。
図4】実施例にかかる、自動車用内装部品の仮止め爪を拡大して示す説明図。
図5】実施例にかかる、第1掛止部が車室側取付部の掛止穴に掛止されて、自動車用内装部品が車室側取付部に仮止めされる状態を示す断面図。
図6】実施例にかかる、第2掛止部が車室側取付部の掛止穴に掛止されて、自動車用内装部品が車室側取付部に仮止めされる状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述した自動車用内装部品の仮止め爪における好ましい実施の形態につき説明する。
上記自動車用内装部品の仮止め爪において、上記板材の平面の内側とは、上記基部における一対の側面の一方においては、一対の側面の他方の側を意味し、上記基部における一対の側面の他方においては、一対の側面の一方の側を意味する。また、上記板材の平面の外側とは、上記基部における一対の側面の一方においては、一対の側面の他方から離れる側を意味し、上記基部における一対の側面の他方においては、一対の側面の一方から離れる側を意味する。上記板材の平面の内側は、仮止め爪の内方ということができ、上記板材の平面の外側は、仮止め爪の外方ということができる。
また、上記仮止め爪を構成する板材は、完全な平板形状とする以外にも、例えば上記一方掛止部、上記他方掛止部等が部分的に平板から起立する形状とすることもできる。
【0015】
また、上記自動車用内装部品は、部品本体と、該部品本体を保持して上記車室側取付部に取り付けられるブラケットとを有しており、該ブラケットには、上記複数の仮止め爪と、上記車室側取付部に締め付ける上記固定具としてのビスを挿通する挿通穴とが設けられていてもよい(請求項2)。
この場合には、仮止め爪の形成が容易であり、挿通穴に挿通したビスによって自動車用内装部品を車室側取付部に容易に本締めすることができる。また、ブラケットを用いることにより、仮止め爪及び挿通穴の形成が容易になる。
【0016】
また、上記仮止め爪は、上記一方傾斜部及び上記一方掛止部が鉛直方向上側に位置する状態で、上記ブラケットの裏面から垂直に突出して設けられていてもよい(請求項3)。
この場合には、仮止め爪自体の剛性を容易に確保することができる。また、一方掛止部及び他方掛止部によって各仮止め爪が各掛止穴から脱落しにくい状態を容易に形成することができる。
【0017】
また、上記仮止め爪は、上記板材の平面が互いに対向して平行になるとともに水平方向に並ぶ状態で複数個が上記自動車用内装部品に設けられており、上記自動車用内装部品の仮止め状態を形成するときには、上記ブラケットの下端部が上記車室側取付部に当接した状態で、上記複数の仮止め爪における上記一方掛止部又は上記他方掛止部が上記掛止穴に掛止されるよう構成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、複数の仮止め爪が水平方向に並び、かつブラケットの下端部が車室側取付部に当接することにより、自動車用内装部品が車室側取付部に仮止めされる状態を、より安定して維持することができる。
【0018】
また、上記自動車用内装部品は、自動車の窓部に設けられるカーテンシールドエアバッグのインフレータであってもよい(請求項5)。
この場合には、インフレータにおいて、仮止め爪の掛止穴への挿入のしやすさ、掛止穴からの脱落のしにくさ及び組付のしやすさを向上させることができる。
【実施例】
【0019】
以下に、自動車用内装部品の仮止め爪にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
自動車用内装部品1の仮止め爪4は、図1図3に示すごとく、自動車用内装部品1を車室側取付部21に仮止めするためのものである。
仮止め爪4は、板材から構成され、自動車用内装部品1から複数個が突出して設けられている。また、仮止め爪4は、板材を車室側取付部21の表面に直交させて、車室側取付部21に設けられた掛止穴211に挿入されるよう構成されている。
【0020】
仮止め爪4は、図3図4に示すごとく、その板材の平面形状において、次の基部41、一方傾斜部42、一方掛止部43、他方掛止部44、他方傾斜部45及び挿入先端部46を有している。
基部41は、自動車用内装部品1を固定具によって車室側取付部21に本締めするときに、掛止穴211の内壁面に沿って配置される一対の側面411,412を有している。一方傾斜部42は、基部41の一方の側面411(一対の側面411,412の一方)との間に鈍角θ1を形成する状態で、一方の側面411から板材の平面の内側へ屈曲して、掛止穴211への挿入を案内する部分である。一方掛止部43は、一方傾斜部42から板材の平面の外側へ屈曲して、掛止穴211に掛止可能な部分である(図5参照)。
【0021】
他方掛止部44は、基部41の他方の側面412(一対の側面411,412の他方)から板材の平面の外側へ屈曲して、掛止穴211に掛止可能な部分である(図6参照)。他方傾斜部45は、他方掛止部44との間に鋭角θ4を形成する状態で、他方掛止部44から板材の平面の内側へ屈曲して、掛止穴211への挿入を案内する部分である。挿入先端部46は、他方傾斜部45と一方掛止部43とを結ぶ部分である。
ここで、図3は、仮止め爪4における基部41が掛止穴211に位置決めされて、固定具としてのビス5によって自動車用内装部品1が車室側取付部21に本締めされる状態401を示す。また、図5は、仮止め爪4の一方掛止部43が掛止穴211に掛止される状態402を示し、図6は、仮止め爪4の他方掛止部44が掛止穴211に掛止される状態403を示す。
【0022】
以下に、本例の自動車用内装部品1の仮止め爪4につき、図1図6を参照して詳説する。
図1図2に示すごとく、本例の自動車用内装部品1は、自動車の窓部に設けられるカーテンシールドエアバッグ12のインフレータ1である。カーテンシールドエアバッグ12は、自動車の側方のドアにおけるドアサッシュ2の上側部分に配設されるものである。そして、カーテンシールドエアバッグ12は、自動車の衝突時において、ドアにおける窓ガラス22の表面を覆って、自動車の乗員を保護することができる。また、インフレータ1は、自動車の衝突時にガスを発生させて、このガスをカーテンシールドエアバッグ12へ送り込んで、カーテンシールドエアバッグ12を膨らませるものである。インフレータ1は、前方側のカーテンシールドエアバッグ12と後方側のカーテンシールドエアバッグ12とへガスを送り込むよう、それらの前後方向の中間位置に取り付けられる。
【0023】
図2図3に示すごとく、本例の車室側取付部21は、自動車のボディの一部としてのドアサッシュ2に設けられている。インフレータ1は、複数の仮止め爪4、及び固定具としてのビス5によって、ドアサッシュ2に取り付けられる。ドアサッシュ2には、仮止め爪4がそれぞれ掛止される掛止穴211が複数設けられている。
図1に示すごとく、インフレータ1は、部品本体11と、部品本体11を保持して車室側取付部21に取り付けられるブラケット3とを有している。ブラケット3は、インフレータ1における前方側と後方側との2箇所に取り付けられている。ブラケット3は、円筒形状のインフレータ1の外周に巻き付けて配置される外周部31と、外周部31から突出して形成された取付板部32と、取付板部32の裏面から垂直に突出して形成された仮止め爪4とを有している。また、取付板部32には、車室側取付部21に締め付けるビス5を挿通する挿通穴321が設けられている。
【0024】
ブラケット3は、金属製であり、仮止め爪4は、金属製の爪として、取付板部32から垂直に折り曲げられて形成されている。各ブラケット3における仮止め爪4は、一方傾斜部42及び一方掛止部43が鉛直方向上側に位置する状態で、取付板部32の裏面から垂直に突出して設けられている。仮止め爪4は、取付板部32における片側の側部に設けられている。
【0025】
図2に示すごとく、ドアサッシュ2の車室側取付部21に形成された掛止穴211は、インフレータ1の前後に取り付けられるブラケット3の位置に対向する、水平方向に並ぶ2箇所に設けられている。また、車室側取付部21において、掛止穴211に隣接する位置には、挿通穴321に挿通されたビス5が螺合されるネジ穴212が設けられている。各ブラケット3における仮止め爪4は、板材の平面が互いに対向して平行になるとともに水平方向に並ぶ状態で、インフレータ1に配置されている。
図3に示すごとく、各ブラケット3の取付板部32は、インフレータ1に巻き付けられる外周部31から斜め下方へ突出して形成されている。そして、図5図6に示すごとく、インフレータ1の仮止め状態を形成するときには、各ブラケット3の取付板部32の下端部33が車室側取付部21に当接した状態で、各ブラケット3の仮止め爪4における一方掛止部43又は他方掛止部44が掛止穴211に掛止されるよう構成されている。
【0026】
図3に示すごとく、ドアサッシュ2の車室側取付部21は、上方に向かうほど室内側(自動車の左右方向の中心側)Wに位置するよう傾斜して形成されている。そして、仮止め爪4によって車室側取付部21にインフレータ1が仮止めされるときに、図5図6に示すごとく、インフレータ1がその自重によって垂れ下がるときには、各ブラケット3の取付板部32の下端部33が車室側取付部21に当接して、インフレータ1の仮止め状態が維持される。
【0027】
図3図4に示すごとく、掛止穴211の上下の内壁面の間の幅は、仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412の間の幅とほとんど同じになるように形成されている。ただし、掛止穴211への基部41の挿入が可能になるよう、掛止穴211の上下の内壁面の間の幅が、仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412の間の幅よりも、0.2mm大きく形成されている。掛止穴211の上下の内壁面の間の幅は、仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412の間の幅よりも、0.1〜1mm大きく形成することができる。
【0028】
図4に示すごとく、基部41は、一対の側面411,412が取付板部32から垂直になるように形成されている。一方傾斜部42は、一方の側面411との間に90°以上180°未満(実際には110°以上160°未満)の鈍角θ1の山形状421を形成する状態で、一方の側面411から屈曲する面として形成されている。一方傾斜部42は、一方の側面411から他方の側面412に向かう側である、板材の平面の内側に向けて、一方の側面411に対して傾斜して形成されている。
【0029】
一方掛止部43は、一方傾斜部42を形成する面との間に鋭角を形成する状態で、一方の側面411の外方へ向かう側である、板材の平面の外側に向けて、一方傾斜部42に折り返して形成されている。一方掛止部43は、一方傾斜部42との間に45°以上90°未満(実際には45°以上75°未満)の鋭角θ2の谷形状431を形成する状態で、一方傾斜部42の面に折り返す面として形成されている。
【0030】
図4に示すごとく、他方掛止部44は、他方の側面412に対して略90°(実際には70°以上100°未満)の角θ3の谷形状441を形成する状態で、他方の側面412の外方へ向かう側である、板材の平面の外側に向けて、他方の側面412に折り返すように屈曲して形成されている。本例の他方の側面412と他方掛止部44の面との間の角部(谷形状441)は、板材の平面の内側へ窪む形状に形成されている。
【0031】
他方傾斜部45は、他方掛止部44との間に45°以上90°未満(実際には45°以上75°未満)の鋭角θ4の山形状451を形成する状態で、他方掛止部44から屈曲する面として形成されている。他方傾斜部45は、他方の側面412側から一方の側面411側に向かう、板材の平面の内側に向けて、他方の側面412に対して傾斜して形成されている。
挿入先端部46は、一方掛止部43の先端から他方傾斜部45の先端との間において、曲面形状に形成されている。本例の挿入先端部46は、一方掛止部43の先端から直線状に形成された後、他方傾斜部45の先端に向けて曲面状に形成されている。
【0032】
次に、インフレータ1をドアサッシュ2の車室側取付部21に取り付ける作業、及び仮止め爪4による作用効果につき説明する。
まず、インフレータ1に対して2つのブラケット3を予め取り付けておく。本例においては、作業者の手作業によってインフレータ1の仮止め及びビス5による本締めの取付作業を行う。これ以外にも、産業用ロボット等の機械を用いてインフレータ1の取付作業を行うこともできる。
【0033】
各ブラケット3における仮止め爪4を車室側取付部21の各掛止穴211に挿入する際には、作業者は、まず、各挿入先端部46を各掛止穴211に挿入する。このとき、他方傾斜部45が掛止穴211における下側の内壁面に当接して、仮止め爪4が掛止穴211の中心へと案内される。また、仮止め爪4がさらに掛止穴211の奥へ挿入されると、一方傾斜部42が掛止穴211における上側の内壁面に当接して、仮止め爪4が掛止穴211の中心へと案内される。これにより、仮止め爪4を掛止穴211の中心位置へ容易に案内することができ、車室側取付部21へのインフレータ1の装着を容易に行うことができる。そのため、掛止穴211への仮止め爪4の挿入のしやすさを向上させることができる。
【0034】
続いて、作業者は、各仮止め爪4が各掛止穴211に挿入されたときには、作業者がインフレータ1から手を放し、インフレータ1が各仮止め爪4によって車室側取付部21に仮止めされる。このとき、図5に示すごとく、インフレータ1が一方側である上側へ浮き上がるときには、一方掛止部43が掛止穴211の上側部分に掛止される。また、図6に示すごとく、インフレータ1が他方側である下側へ垂れ下がるときには、他方掛止部44が掛止穴211の下側部分に掛止される。そして、インフレータ1が上側及び下側のいずれに位置ずれしようとするときにおいても、各ブラケット3の取付板部32の下端部33が車室側取付部21に当接する。これにより、複数の仮止め爪4によって、車室側取付部21に対するインフレータ1の仮止め状態を安定して維持することができる。そのため、掛止穴211からの仮止め爪4の脱落のしにくさを向上させることができる。
【0035】
続いて、図3に示すごとく、作業者は、各ブラケット3の取付板部32における挿通穴321にビス5を挿通し、このビス5を車室側取付部21におけるネジ穴212に螺合する。そして、仮止め状態のインフレータ1を車室側取付部21に本締めする。ここで、一方傾斜部42、一方掛止部43、他方傾斜部45及び他方掛止部44を設けた仮止め爪4の構成により、基部41における一対の側面411,412と掛止穴211との間の隙間を極力小さく設定することができる。
【0036】
そして、インフレータ1の本締めを行うときには、各仮止め爪4の基部41における一対の側面411,412が各掛止穴211の内壁面に自然と導かれる。これにより、仮止め状態のインフレータ1は、各仮止め爪4の案内によって、車室側取付部21に対する正規位置に容易に配置される。また、インフレータ1の本締めを行う際に、基部41における一対の側面411,412と掛止穴211との間の隙間が小さいことにより、このインフレータ1が回転しにくくすることができる。そのため、インフレータ1の組付のしやすさを向上させることができる。
【0037】
それ故、本例のインフレータ1の仮止め爪4によれば、掛止穴211への挿入のしやすさ、掛止穴211からの脱落のしにくさ及びインフレータ1の組付のしやすさを向上させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 自動車用内装部品(インフレータ)
11 部品本体
12 カーテンシールドエアバッグ
2 ドアサッシュ
21 車室側取付部
211 掛止穴
3 ブラケット
321 挿通穴
4 仮止め爪
41 基部
42 一方傾斜部
43 一方掛止部
44 他方掛止部
45 他方傾斜部
46 挿入先端部
5 固定具(ビス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6