(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝達機構は、前記フィンの移動に際し、同フィンを、前記意匠面が前方を向く姿勢に保持しつつ、前後位置を変えながら昇降させるものである請求項1に記載のグリルシャッタ装置。
前記伝達機構は、前記閉鎖位置と前記開放位置との間における少なくとも中間部分での前記フィンの移動に際し、同フィンを、上下方向への傾動を伴いながら前後動させるものである請求項1に記載のグリルシャッタ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1を含め、フィンが車両の前後方向にのみ移動するタイプのグリルシャッタ装置では、開口部が開放されたときに、フィンが開口部とラジエータとの間に位置する。そのため、フィンは、開口部を通過した後の空気の流れを妨げる。その分、ラジエータに前方から導かれる空気の量が少なくなり、冷却機能が損なわれるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、開口部が開放されたときに、フィンが原因でラジエータに前方から導かれる空気の量が少なくなるのを抑制し、ラジエータの冷却機能を向上させることのできるグリルシャッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両のラジエータの前方に配置され、かつ前後方向に貫通する開口部を複数箇所に有するグリル本体と、複数の前記開口部の少なくとも1つを開閉するためのものであり、板状をなし、かつ一方の面を意匠面として有するフィンと、前記フィンの駆動源として用いられるアクチュエータと、前記アクチュエータの動力を前記フィンに伝達し、前記意匠面を前方に向けた状態で前記フィンを、前記開口部を閉鎖状態にする閉鎖位置と、前記グリル本体において前記開口部が設けられていない箇所の後方となる開放位置との間で移動させる伝達機構とを備えることを要旨とする。
【0011】
上記の構成によれば、アクチュエータが作動すると、その動力は伝達機構によりフィンに伝達される。この動力伝達により、フィンが閉鎖位置まで移動させられると、開口部が閉鎖状態、すなわちフィンによって閉鎖される、又はそれに近い状態にされる。開口部を通じてラジエータに前方から導かれる空気の量が少なくなり、エンジンの暖機の効率低下や過冷却が抑制されるとともに、車両の受ける空力的損失が少なくなる。
【0012】
これに対し、上記動力伝達により、フィンが開放位置まで移動させられると、フィンは、グリル本体において開口部が設けられていない箇所の後方に位置する。開口部が開放され、多くの空気が開口部を通ってグリルシャッタ装置内に流入することが可能となる。また、このとき、フィンは開口部とラジエータとの間から退避した箇所に位置するため、フィンは開口部を通過した後の空気の流れの妨げとなりにくい。フィンが原因でラジエータに前方から導かれる空気の量が少なくなることが起こりにくく、フィンが開口部とラジエータとの間に位置するものに比べ、同ラジエータの冷却機能が向上する。
【0013】
また、閉鎖位置と開放位置との間でのフィンの上記移動は、意匠面を前方に向けた状態で行なわれる。そのため、この移動に際し、車両の前方からフィンを見た場合、専ら意匠面が見えるにとどまり、意匠面とは異なる箇所が見えることが起こりにくい。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記伝達機構は、前記フィンの移動に際し、同フィンを、前記意匠面が前方を向く姿勢に保持しつつ、前後位置を変えながら昇降させるものであることを要旨とする。
【0015】
上記の構成によれば、フィンは、伝達機構の動力伝達により、意匠面が前方を向く姿勢に保持されつつ、前後位置を変えられながら昇降させられることで、閉鎖位置と開放位置との間を移動させられる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記伝達機構は、前記フィンの後側に一体に設けられたアームと、前記車両の幅方向に延びる軸により回転可能に支持され、かつ同幅方向に延びるピンによりそれぞれ前記アームに連結された複数のレバーと、複数の前記レバーを連結するリンク部材とを備え、前記複数のレバーの1つが前記アクチュエータにより、前記軸を支点として回転させられることで、同アクチュエータの動力を前記フィンに伝達するものであることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、アクチュエータが作動されると、複数のレバーの1つが軸を支点として回転させられる。この回転は、リンク部材を介して他のレバーに伝達される。全部のレバーが同期した状態で回転する。これらの回転に伴い、レバー毎のピンが、軸の周りを旋回する。その結果、ピンを通じて各レバーに連結されたアームが、前後位置を変えながら昇降する。アームの前側に設けられたフィンが閉鎖位置から開放位置へ、又はその逆に開放位置から閉鎖位置へ移動させられる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、複数の前記レバーの1つにおける前記軸は、前記アクチュエータにより回転駆動される特定軸とされており、複数の前記レバーの1つは特定レバーとして前記特定軸に一体回転可能に取付けられており、複数の前記レバーのうち前記特定レバーとは異なるものは、前記軸に対し回転可能に支持されていることを要旨とする。
【0019】
上記の構成によれば、アクチュエータが作動されると、特定軸が回転駆動され、特定レバーがその特定軸と一体となって回転される。この特定レバーの回転は、リンク部材を介して他のレバーに伝達される。他のレバーが特定レバーに同期した状態で、軸に対し回転する。これらの回転に伴い、レバー毎のピンが軸の周りを旋回する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記伝達機構は、前記閉鎖位置と前記開放位置との間における少なくとも中間部分での前記フィンの移動に際し、同フィンを、上下方向への傾動を伴いながら前後動させるものであることを要旨とする。
【0021】
上記の構成によれば、フィンは、伝達機構の動力伝達により、意匠面を前方に向けた状態で、上下方向の傾動を伴いながら前後動させられることで、閉鎖位置と開放位置との間の少なくとも中間部分を移動させられる。この移動により、フィンの前後位置及び上下位置が変えられる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記伝達機構は、前記グリル本体よりも後側で前後方向に延びるガイド孔部と、前記グリル本体よりも後側に設けられ、前後方向に対し傾斜する傾斜部を少なくとも中間部分に有するカム孔部と、前記フィンの後側に一体に設けられたアームと、前記アームに設けられて前記ガイド孔部に係合され、前記アクチュエータにより前後方向へ移動させられるガイド軸部と、前記アームにおいて、前記ガイド軸部から前後方向へ離間した箇所に設けられ、前記カム孔部に対し同カム孔部に沿う方向への移動可能に係合されたカム軸部とを備えることを要旨とする。
【0023】
上記の構成によれば、ガイド軸部の動きはガイド孔部によって規制される。ガイド軸部は、ガイド孔部に沿う方向にのみ移動可能である。ガイド軸部は、ガイド孔部に沿って移動することで、上下位置を変えずに前後位置を変え得る。
【0024】
これに対し、カム軸部の動きはカム孔部によって規制される。カム軸部は、カム孔部に沿う方向にのみ移動可能である。カム孔部が少なくとも中間部分に傾斜部を有していることから、カム軸部は、この傾斜部に沿うことで、前後方向に対し傾斜する方向へ移動する。カム軸部は、傾斜部に沿って移動することで、上下位置及び前後位置をともに変え得る。
【0025】
上記ガイド軸部及びカム軸部は、ともにアームに設けられている。そのため、ガイド孔部におけるガイド軸部の位置、及びカム孔部におけるカム軸部の位置が変化することで、アームの姿勢が変化する。ガイド軸部がガイド孔部に沿って前後方向へ移動する際に、カム軸部がカム孔部の傾斜部に沿って上下方向及び前後方向へ移動することで、アームは、ガイド軸部を支点として、上下方向へ傾動する。
【0026】
従って、アクチュエータによってガイド軸部がガイド孔部に沿って前後方向へ移動させられ、カム軸部がカム孔部の傾斜部に沿って移動させられることで、フィンが、上下方向への傾動を伴いながら前後動させられる。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記伝達機構は、前記閉鎖位置近傍での前記フィンの移動に際し、同フィンを、上下方向の傾動を伴わずに前後動させるものであることを要旨とする。
【0028】
ここで、開口部は、グリル本体を前後方向に貫通している。一方、閉鎖位置近傍では、フィンは開口部の貫通する方向と同じ方向である前後方向にのみ移動する。そのため、仮に、開口部の内奥部(前部)が閉鎖位置とされて、フィンがその閉鎖位置へ移動されたとしても、フィンの動きは開口部の内壁面によって妨げられにくい。
【0029】
むしろ、フィンの前後位置が開口部の内壁面によって制約を受けにくいことに着目し、閉鎖位置を開口部内のより前方に設定することで、同フィンの意匠面をグリル本体の前面に近づけて両者の境界部分を凸凹の少ない状態にすることが可能となる。
【0030】
また、フィンを開口部の内奥部(前部)に位置させた場合、同開口部の内壁面がフィンに接触することで、フィンの上下方向の不要な動きを規制する。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記カム孔部は、前記ガイド孔部に対し平行な状態で前後方向に延びる平行部を、前記傾斜部よりも前側に有することを要旨とする。
【0031】
上記の構成によれば、カム軸部がカム孔部の平行部に沿って移動させられる際には、ガイド軸部がガイド孔部に沿って前後方向へ移動する。カム軸部及びガイド軸部がともに前後方向へ移動することとなる。この平行部は、カム孔部において傾斜部よりも前側に設けられている。従って、フィンが閉鎖位置近傍を移動する際に、カム軸部が平行部を移動するように設定されれば、閉鎖位置近傍でのフィンの移動に際し、同フィンを、上下方向の傾動を伴わずに前後動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のグリルシャッタ装置によれば、開口部が開放されたときに、グリル本体において開口部が設けられていない箇所の後方へフィンを移動させるようにしたため、フィンが原因でラジエータに前方から導かれる空気の量が少なくなるのを抑制し、ラジエータの冷却機能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、
図1〜
図5を参照して説明する。
なお、以下の説明では、車両の前進方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定している。また、各図において、「前」は車両前側を、「後」は車両後側をそれぞれ示している。
【0035】
図1及び
図4に示すように、車両の前端部であって、エンジンルーム内に配置されたラジエータRの前側には、同ラジエータRに前方から空気を導くとともに、その空気の量を調整するグリルシャッタ装置Gが設けられている。グリルシャッタ装置Gは、グリル本体10、複数のフィン15、ハウジング25、アクチュエータ35及び伝達機構40を備えて構成されている(
図2参照)。
【0036】
グリル本体10は、グリルシャッタ装置Gの構成部材のうち、最も前側に配置される部材であり、車幅方向に細長い形状をなしている。グリル本体10は、上側ほど後方に位置するように、前後方向に対し傾斜している。また、グリル本体10は、上下方向から見たときに、前側へ膨らむように緩やかに湾曲した円弧形状をなしている。グリル本体10の車幅方向及び上下方向についての中央部分には、略楕円形をなす取付孔11が設けられている。両取付孔11は、エンブレム、ミリ波レーダ等を配置及び取付けるための孔である。また、グリル本体10において、上記取付孔11の周りの複数箇所には、前後方向に貫通する開口部12が設けられている。これらの開口部12は、互いに上下方向に離間した状態で、それぞれ車幅方向へ延びている。各開口部12は、上下方向から見たとき、上記グリル本体10に対応した形状(緩やかな円弧形状)をなしている。各開口部12は、僅かではあるが、前後方向に長さを有している。グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の前面10Aは、グリル本体10の意匠面を構成している。
【0037】
複数のフィン15は、複数の開口部12の少なくとも1つを開閉するためのものであり、それぞれ車幅方向に細長い板状をなしている。第1実施形態では、一番上方に位置する開口部12以外の開口部12が、フィン15による開閉の対象とされている。各フィン15は、上記開口部12に対応した大きさ及び形状(上下方向から見たときに、前側へ膨らむように緩やかに湾曲した円弧形状)に形成されており、互いに上下方向に離間している。各フィン15の一方(
図4の左側)の面は、同フィン15の意匠面16とされている。これらの意匠面16は、上記グリル本体10の前面10Aとともに、グリルシャッタ装置Gの意匠面を構成している。各フィン15の上端部後端及び下端部後端には、車幅方向に延びるフランジ部17がそれぞれ一体に形成されている。これらのフィン15は、車幅方向についての複数箇所に配置されたアーム21によって連結されている。
【0038】
図2及び
図3では、複数のアーム21のうちの2つが示されている。これらの
図2及び
図3に示すように、各アーム21は略上下方向に延びる板状をなし、複数の上記フィン15の後側に配置されている。各アーム21は、その前端部において上記複数のフィン15に固定されていて、同フィン15と一体になっている。各アーム21は、その上部から後方へ突出する上突部22と、下部から後方へ突出する下突部23とを有している。
【0039】
ハウジング25は、上記グリル本体10の後方近傍に配設されている。ハウジング25は、車幅方向に互いに離間した箇所に配置された一対の側壁部26と、両側壁部26の下端部間を繋ぐ底壁部27と、両側壁部26の前端部間を繋ぐ前壁部28とを備えている。底壁部27の車幅方向についての両側部には軸受部29が設けられている。また、各側壁部26の上部には、車幅方向外方へ向けて固定軸31が突設されている。
【0040】
アクチュエータ35は、上記複数のフィン15の駆動源として用いられている。第1実施形態では、このアクチュエータ35として、車幅方向に延びる出力軸36を有し、かつ同出力軸36を正逆回転させ得るタイプが用いられている。アクチュエータ35は、上記ハウジング25の底壁部27の直下に配置されている。アクチュエータ35の出力軸36は、上記両軸受部29において回転可能に支持されている。出力軸36は、両軸受部29から車幅方向外方へ突出している。
【0041】
伝達機構40は、アクチュエータ35の動力(出力軸36の回転)を各フィン15に伝達するための機構である。この動力伝達により、各フィン15は、自身の意匠面16を前方に向けた状態で、開口部12を閉鎖状態にする位置(以下「閉鎖位置」という)と、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方となる位置(以下「開放位置」という)との間で移動させられる。
【0042】
伝達機構40は、上記ハウジング25の車幅方向についての両側にそれぞれ設けられている。これらの伝達機構40は、互いに同様の構成を有している。各伝達機構40は、上述した一部のアーム21を、自身の構成部材の一部として利用している。その他、各伝達機構40は、上下一対のレバー41,43、及び1本のリンク部材45を備えている。
【0043】
上下の両レバー41,43は、互いに同一の形状に形成されている。上側のレバー41は、上記固定軸31を軸として利用し、同レバー41の上部においてその固定軸31に対し、回転可能に支持されている。下側のレバー43は、特許請求の範囲における特定レバーに該当するものであり、上記アクチュエータ35の出力軸36を特定軸として利用し、自身の上部において同出力軸36に一体回転可能に取付けられている。従って、下側のレバー43は、アクチュエータ35の作動に伴い出力軸36と一体となって回転することとなる。
【0044】
上側のレバー41は、その下部において、車幅方向に延びるピン42により上記アーム21の上突部22に連結されている。下側のレバー43は、その下部において、車幅方向に延びるピン44により上記アーム21の下突部23に連結されている。
【0045】
上側のレバー41の後部と、下側のレバー43の後部とは、略上下方向に延びる長尺状のリンク部材45によって連結されている。この連結は、ピン46を通じて行なわれている。
【0046】
従って、下側のレバー43がアクチュエータ35によって、軸(出力軸36)を支点として回転されると、その回転がリンク部材45を介して上側のレバー41に伝達される。この伝達により、上側のレバー41が下側のレバー43に同期して回転する。上下両レバー41,43の回転は、アーム21を通じて複数のフィン15に伝達される。この伝達により、各フィン15は、意匠面16が前方を向く姿勢に保持されつつ、前後位置を変えながら昇降させられる。
【0047】
ここで、
図4に示すように各開口部12は、グリル本体10を前後方向に貫通している。一方、各フィン15は、前後位置を変えられながら昇降させられる。そのため、閉鎖位置において、仮に各フィン15の多くが、対応する開口部12に対し後側から内奥部(前部)にまで入り込んでいると、各フィン15の動き(昇降)が、対応する開口部12の内壁面によって妨げられるおそれがある。そこで、第1実施形態では、各フィン15が、対応する開口部12に対し、後側から僅かに入り込むことで同開口部12を閉鎖状態にする位置を、同フィン15の閉鎖位置としている。さらに、閉鎖位置では、フィン15毎のフランジ部17が、各開口部12の後端面13に後方から対向するように設定されている。ここで、開口部12の後端面13とは、グリル本体10の後面であって開口部12の後端部を取り囲む部分を指すものとする。また、上記対向には、フランジ部17が後端面13に接近する状態のほか、当接する状態も含まれるものとする。
【0048】
上記のようにして第1実施形態のグリルシャッタ装置Gが構成されている。次に、このグリルシャッタ装置Gの作用について説明する。
図4は、例えば、冬期におけるエンジン始動直後の暖機運転時や車両の高速走行時に、全部のフィン15が閉鎖位置まで移動させられた状態を示している。この閉鎖位置では、ピン42が固定軸31の下方に位置している。上側のピン46が、上下方向について上記固定軸31とピン42との間であって、それら固定軸31及びピン42よりも後方に位置している。また、ピン44が出力軸36の下方に位置している。下側のピン46が、上下方向について上記出力軸36とピン44との間であって、それら出力軸36及びピン44よりも後方に位置している。
【0049】
上記閉鎖位置では、アーム21が可動範囲の最も前方かつ最も下方に位置している。複数の開口部12のうち、一番上に位置するもの以外の開口部12については、フィン15の一部が後側から入り込んでいて、同開口部12は、フィン15によって閉鎖された状態(閉鎖状態)となっている。各開口部12の内壁面とフィン15との隙間が僅かとなっており、各開口部12を通じてラジエータRに前方から導かれる空気の量が少ない。温度の低い空気が各開口部12を通過してラジエータRに触れることが起こりにくくなり、暖機の効率が向上する。
【0050】
さらに、閉鎖位置では、フィン15毎のフランジ部17が開口部12毎の後端面13の後側に位置している。このフランジ部17は、開口部12の内壁面とフィン15との間での空気の流れを妨げようとする。そのため、各フィン15による各開口部12の密閉性が高められ、各開口部12を通じてラジエータRに前方から導かれる空気の量がさらに少なくなる。
【0051】
特に、冬期には空気の温度が低いため、この空気がエンジン始動時等にラジエータRに触れると、エンジン冷却水が冷却されてエンジンの暖機時間(暖機状態になるまでの時間)が長くなる。しかし第1実施形態では、上述したように各開口部12がフィン15によって閉鎖されるため、グリルシャッタ装置Gを通過した空気がラジエータRに触れてエンジン冷却水が冷却されることが抑制され、上記暖機時間の短縮が図られる。このようにして、エンジンの暖機の効率低下が抑制される。
【0052】
また、車両の高速走行時にラジエータR内のエンジン冷却水が、エンジンルーム内を速く流れる空気によって過冷却されることが抑制される。さらに、車両の高速走行時にエンジンルーム内で空気の乱流が発生して、車両の空力が低下する現象が抑制される。すなわち、高速走行時に車両の受ける空力的損失が少なくなる。
【0053】
上記の状態から、アクチュエータ35の出力軸36が、
図4において二点鎖線の矢印で示すように、反時計回り方向へ所定角度(90°)回転されると、下側のレバー43がその出力軸36と一体となって同方向へ同角度だけ回転される。この下側のレバー43の回転は、リンク部材45を介して上側のレバー41に伝達される。上側のレバー41が下側のレバー43に同期した状態で、固定軸31に対し反時計回り方向へ所定角度(90°)回転する。これらの回転に伴い、下側のレバー43のピン44が、出力軸36の周りを反時計回り方向へ旋回するとともに、上側のレバー41のピン42が、固定軸31の周りを反時計回り方向へ旋回する。その結果、
図5に示すように、両ピン44,42を通じて下側のレバー43及び上側のレバー41に連結されたアーム21が、斜め後ろ上方へ上昇する(平行移動する)。アーム21の前側に一体に設けられた各フィン15が、閉鎖位置から開放位置へ向けて移動させられる。
【0054】
こうしたフィン15の動きは、例えば、エンジンのオーバーヒートを抑制するためにラジエータRの冷却が必要なときに行なわれる。
図5に示す開放位置では、ピン42が固定軸31の後方に位置している。上側のピン46が、前後方向について上記固定軸31とピン42との間であって、それら固定軸31及びピン42よりも上方に位置している。また、上記開放位置では、ピン44が出力軸36の後方に位置している。下側のピン46が、前後方向について上記出力軸36とピン44との間であって、それら出力軸36及びピン44よりも上方に位置している。
【0055】
アーム21が可動範囲の最も後方かつ最も上方に位置している。最上位置のフィン15を除く、複数のフィン15は、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方に位置する。より正確には、最上位置のフィン15の一部は、最上位置の開口部12の後方に位置する。各開口部12が開放され、多くの空気Aが各開口部12を通ってグリルシャッタ装置G内に流入することが可能となる。
【0056】
また、このとき、各フィン15は、開口部12とラジエータRとの間から上下方向へ退避した箇所に位置するため、各フィン15は、各開口部12を通過した後の空気Aの流れの妨げとなりにくい。フィン15が原因でラジエータRに前方から導かれる空気Aの量が少なくなることが起こりにくい。各開口部12を通過した空気Aは、ラジエータRに前方から導かれる。この空気AはラジエータRに触れ、エンジン冷却水を冷却する。
【0057】
上記状態から、アクチュエータ35の出力軸36が
図5において二点鎖線の矢印で示すように時計回り方向へ所定角度(90°)回転されると、下側のレバー43が出力軸36と一体となって同方向へ同角度だけ回転される。この下側のレバー43の回転は、リンク部材45を介して上側のレバー41に伝達される。上側のレバー41が下側のレバー43に同期した状態で、固定軸31に対し時計回り方向へ所定角度(90°)回転する。これらの回転に伴い、下側のレバー43のピン44が、出力軸36の周りを時計回り方向へ旋回するとともに、上側のレバー41のピン42が、固定軸31の周りを時計回り方向へ旋回する。その結果、両ピン44,42を通じて両レバー43,41に連結されたアーム21が、斜め前下方へ下降する。各フィン15が、開放位置から閉鎖位置へ移動させられる。
【0058】
閉鎖位置と開放位置との間での各フィン15の上記移動は、意匠面16を前方に向けた状態で行なわれる。そのため、この移動に際し、車両の前方からフィン15を見た場合、専ら意匠面16が見えるにとどまり、意匠面16とは異なる箇所が見えることが起こりにくい。
【0059】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)アクチュエータ35の動力を複数のフィン15に伝達し、意匠面16を前方に向けた状態で同フィン15を、開口部12を閉鎖状態にする閉鎖位置(
図4)と、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方となる開放位置(
図5)との間で移動させる伝達機構40を設けている。
【0060】
そのため、各開口部12の開放時には、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方へ各フィン15を移動させることができる。その結果、各フィン15が原因でラジエータRに前方から導かれる空気Aの量が少なくなるのを抑制し、各フィン15が開口部12とラジエータRとの間に位置するものに比べ、ラジエータRの冷却機能を向上させることができる。
【0061】
(2)伝達機構40による複数のフィン15の移動に際し、同フィン15を、意匠面16が前方を向く姿勢に保持している(
図4、
図5)。
そのため、上記移動に際し、車両の前方からフィン15を見た場合、意匠面16とは異なる箇所が見えるのを抑制し、意匠性を高めることができる。
【0062】
(3)伝達機構40による複数のフィン15の移動に際し、同フィン15を、前後位置を変えながら昇降させるようにしている(
図4、
図5)。
そのため、閉鎖位置では、各開口部12を各フィン15によって閉鎖状態にする一方、開放位置では、各フィン15を、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方に位置させ、上記(1)の効果を得ることができる。
【0063】
また、開口部12の開閉は、第1実施形態以外にも、フィンを上下方向へ旋回(回転)させる方式や、フィンを上下方向へスライドさせる方式でも可能である。ただし、これらの方式は、上下方向から見たときに開口部及びフィンが直線状をなすことを前提としており、円弧状をなしている場合には適用が難しい。円弧形状にすると、フィンが開口部の内壁面に当たって動作を妨げられるおそれがあるからである。従って、上記両方式では、円弧形状のフィンを採用することが難しく、その分、意匠性の自由度が少なくなる。
【0064】
この点、第1実施形態では、上述したようにフィン15が前後位置を変えながら昇降する。そのため、各フィン15が、上下方向から見たときに円弧形状をなすものであっても開口部12の内壁面に当たりにくく、同フィン15を閉鎖位置と開放位置との間で移動させることができる。また、各フィン15として、円弧形状をなすものを採用することができることから、意匠性の自由度が増す。
【0065】
(4)各伝達機構40を、アーム21、複数(一対)のレバー41,43及びリンク部材45を用いて構成する。複数(一対)のレバー41,43の1つを、アクチュエータ35により回転させることで、同アクチュエータ35の動力を各フィン15に伝達するようにしている(
図4、
図5)。
【0066】
そのため、全部のレバー41,43を同期した状態で回転させることで、レバー41,43毎のピン42,44を、軸(固定軸31及び出力軸36)の周りで旋回させ、アーム21を昇降させ、各フィン15を閉鎖位置から開放位置へ、又はその逆に開放位置から閉鎖位置へ移動させ、上記(1)の効果を得ることができる。
【0067】
(5)複数(一対)のレバー41,43の1つにおける軸(出力軸36)を特定軸としてアクチュエータ35により回転させる。複数(一対)のレバー41,43の1つ(下側のレバー43)を特定レバーとし、これを上記特定軸(出力軸36)に一体回転可能に取付ける。そして、複数(一対)のレバー41,43のうち特定レバー(下側のレバー43)とは異なるもの(上側のレバー41)を、軸(固定軸31)に対し回転可能に支持している(
図2)。
【0068】
そのため、アクチュエータ35により特定軸(出力軸36)を回転駆動し、特定レバー(下側のレバー43)を特定軸(出力軸36)と一体となって回転させ、この回転を、リンク部材45を介して他のレバー(上側のレバー41)に伝達することができる。その結果、他のレバー(上側のレバー41)を特定レバー(下側のレバー43)に同期させた状態で、軸(固定軸31)に対し回転させることができる。
【0069】
(6)閉鎖位置では、各フィン15の一部を、対応する開口部12に対し、後側から入り込ませるようにしている(
図4)。
そのため、閉鎖位置では、開口部12の内壁面とフィン15との隙間を少なくし、各開口部12を通じてラジエータRに前方から導かれる空気の量を少なくすることができる。
【0070】
(7)各フィン15の上端部後端及び下端部後端に、車幅方向に延びるフランジ部17をそれぞれ設ける。そして、閉鎖位置では、フィン15毎のフランジ部17を、開口部12毎の後端面13に後方から対向させている(
図4)。
【0071】
そのため、こうしたフランジ部17が設けられないものに比べ、フィン15による開口部12の密閉性を高め、各開口部12を通じてラジエータRに前方から導かれる空気の量を一層少なくすることができる。
【0072】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、
図6〜
図11を参照して説明する。
第2実施形態では、閉鎖位置と開放位置との間で各フィン15を移動させるための伝達機構50が、車幅方向についての複数箇所に設けられている。
図6及び
図7では、複数の伝達機構50のうちの一部(2組の伝達機構50)が示されている。これらの
図6及び
図7に示すように、各伝達機構50は、第1実施形態で説明した伝達機構40とは異なる構成を有している。なお、
図10に示すように、第2実施形態では、上述した第1実施形態とは異なり、複数の開口部12の全てがフィン15による開閉の対象とされている。
【0073】
図6、
図7及び
図10に示すように、各伝達機構50は、フィン15と同数のアーム51を備えている。上述した第1実施形態では、互いに上下方向に離間した状態で配置された複数のフィン15が、伝達機構40の一部を構成する共通のアーム21に固定された(
図2参照)が、第2実施形態では、フィン15毎にアーム51が設けられている。各アーム51は、フィン15から後方へ延びる長尺板状をなしている。各アーム51は、その前端部においてフィン15に固定されていて、フィン15に一体となっている。
【0074】
各伝達機構50は、グリル本体10の後方で上下方向及び前後方向に延びる板状の固定側壁部55を備えている。伝達機構50毎の固定側壁部55は、車幅方向に平行に離間している。伝達機構50毎の固定側壁部55には、フィン15(開口部12)と同数のガイド孔部56と、フィン15(開口部12)と同数のカム孔部57とがあけられている。
【0075】
伝達機構50毎の複数のガイド孔部56は、固定側壁部55の後半部において互いに上下方向へ離間した箇所において、前後方向に直線状に延びている。各固定側壁部55における複数のガイド孔部56は、その前後方向の長さが、下側のガイド孔部56ほど長くなるように設定されている。各固定側壁部55における複数のガイド孔部56の後端部は、前後方向について略同一の箇所に位置している。これに対し、各固定側壁部55における複数のガイド孔部56の前端部は、下側のガイド孔部56ほど、前後方向についての前側の箇所に位置している。
【0076】
伝達機構50毎の複数のカム孔部57は、固定側壁部55の前半部において互いに上下方向へ離間した箇所に設けられている。各カム孔部57は、対応する(対をなす)ガイド孔部56よりも高い箇所に位置している。
【0077】
各カム孔部57は、後側ほど高くなるように前後方向に対し傾斜する傾斜部57Bを、同カム孔部57の長さ方向についての中間部分に有している。また、各カム孔部57は、各ガイド孔部56に対し平行な状態で前後方向に延びる前平行部57Aを、傾斜部57Bよりも前側に有している。さらに、各カム孔部57は、各ガイド孔部56に対し平行な状態で前後方向に延びる後平行部57Cを、傾斜部57Bよりも後側に有している。各カム孔部57では、前平行部57Aは傾斜部57Bの前端部に連続して形成され、後平行部57Cは傾斜部57Bの後端部に連続して形成されている。従って、各カム孔部57では、後平行部57Cは前平行部57Aよりも高い箇所に位置している。
【0078】
各アーム51の後端部には、車幅方向に延びて上記各ガイド孔部56に係合されるガイド軸部が設けられている。第2実施形態では、このガイド軸部として、全ての伝達機構50におけるアーム51のガイド軸部として機能するもの、具体的には車幅方向に細長いシャフト52が用いられ、このシャフト52が各アーム51に挿通されている。従って、複数のシャフト52が用いられ、それらが上下方向に互いに離間した状態で配置されていることとなる。各シャフト52は、各ガイド孔部56の上下幅よりも僅かに小径に形成されており、そのガイド孔部56に沿って前後方向へ移動することが可能となっている。
【0079】
なお、複数のシャフト52のうち、最も下方に位置するものを、他のものと区別する必要がある場合には、前者をシャフト52Aといい、後者をシャフト52Bというものとする。
【0080】
図8(A),(B)に示すように、各アーム51の固定側壁部55側の側面であって、前記シャフト52(ガイド軸部)から前方へ離間した箇所からは、同固定側壁部55側へ向けてカム軸部53が突設され、上記各カム孔部57に係合されている。各カム軸部53は、各カム孔部57の上下幅よりも僅かに小径に形成されており、そのカム孔部57に沿って移動することが可能となっている。
【0081】
従って、
図10及び
図11に示すように、各ガイド孔部56における各シャフト52(ガイド軸部)の位置、及び各カム孔部57における各カム軸部53の位置が変化することで、各アーム51の姿勢が変化する。各シャフト52(ガイド軸部)がガイド孔部56に沿って前後方向へ移動する際に、各カム軸部53が各カム孔部57の傾斜部57Bに沿って上下方向及び前後方向へ移動することで、各アーム51は、各シャフト52(ガイド軸部)を支点として、上下方向へ傾動する。また、各カム軸部53が各カム孔部57の前平行部57A又は後平行部57Cに沿って移動させられる際には、各シャフト52(ガイド軸部)が各ガイド孔部56に沿って前後方向へ移動する。
【0082】
第2実施形態では、各フィン15が閉鎖位置近傍で移動する際に、各カム軸部53が前平行部57Aを移動するように設定されている(
図10参照)。また、各フィン15が開放位置近傍で移動する際に、各カム軸部53が後平行部57Cを移動するように設定されている(
図11参照)。さらに、各フィン15が閉鎖位置近傍と開放位置近傍との間で移動する際に、各カム軸部53が傾斜部57Bを移動するように設定されている。
【0083】
さらに、第2実施形態では、次の条件を満たすように、各ガイド孔部56、各カム孔部57、各シャフト52(ガイド軸部)及び各カム軸部53が形成されている。
・アーム51毎のシャフト52(ガイド軸部)がガイド孔部56の前端部に位置するとき、カム孔部57ではカム軸部53が前平行部57Aの前端部に位置すること(
図10参照)。
【0084】
・アーム51毎のシャフト52(ガイド軸部)がガイド孔部56の後端部に位置するとき、カム孔部57ではカム軸部53が後平行部57Cの後端部に位置すること(
図11参照)。
【0085】
また、第2実施形態では、車幅方向に対応する複数のアーム51毎のシャフト52(ガイド軸部)をガイド孔部56に沿って適切なタイミングで前後動させるために、次の構成が採られている。
【0086】
図6及び
図9に示すように、車幅方向に隣り合う一対の固定側壁部55において、車幅方向内側(対向する固定側壁部55側)の面の下部には、それぞれ前後方向に延びる突条部58が一体に設けられている。
【0087】
また、上記両固定側壁部55間にはスライド部材61が配設されている。スライド部材61は、車幅方向に互いに離間した状態で配置された一対の可動側壁部62と、両可動側壁部62の下部間に架け渡された可動連結壁部63とを備えている。従って、スライド部材61は、前後方向から見た形状が略H字形をなしている。各可動側壁部62は上下方向に細長い板状をなしている。可動連結壁部63の車幅方向についての両側部には、前後方向に延びる溝部64が形成されている。そして、スライド部材61は、両溝部64において、上記固定側壁部55の突条部58に対し、前後方向への摺動(スライド)可能に嵌合されている。
【0088】
両可動側壁部62の各下端部には貫通孔65があけられており、最も下方に位置するシャフト52A(ガイド軸部)がこれらの貫通孔65に挿通されている。このシャフト52A(ガイド軸部)には、アクチュエータ66(
図6参照)による前後方向の力が加えられるように構成されている。従って、このシャフト52A(ガイド軸部)がアクチュエータ66によって前後動させられると、それに伴い、最下位置のアーム51が前後動させられる。
【0089】
また、各可動側壁部62において、上記貫通孔65よりも上方の複数箇所には、それぞれ前後方向に直線状に延びる長孔67があけられている。そして、シャフト52B(ガイド軸部)が、両可動側壁部62において車幅方向に対向する長孔67に挿通されている。
【0090】
さらに、第2実施形態では、次の条件を満たすように、各長孔67が形成されている。
・アーム51毎のシャフト52B(ガイド軸部)は、ガイド孔部56の後端部に位置するとき、同時に長孔67の前端部にも位置すること。
【0091】
・アーム51毎のシャフト52B(ガイド軸部)は、ガイド孔部56の前端部に位置するとき、同時に長孔67の後端部にも位置すること(
図6参照)。
このような設定を行なっているのは、複数のアーム51を、それぞれ適切なタイミングで前後動及び傾動させることで、閉鎖位置では、各フィン15を各開口部12を閉鎖する箇所に位置させ、開放位置では、各フィン15をグリル本体10において各開口部12が設けられていない箇所の後方に位置させるためである。
【0092】
ここで、
図10に示すように、各開口部12がグリル本体10を前後方向に貫通している。一方、閉鎖位置近傍では、各フィン15は各開口部12の貫通する方向と同じ方向である前後方向にのみ移動する。そのため、閉鎖位置において、各フィン15が各開口部12の内奥部(前部)に位置したとしても、各フィン15の動きは各開口部12の内壁面によって妨げられにくい。
【0093】
そのため、上記のように各開口部12での各フィン15の前後位置が制約を受けにくいことに着目して、閉鎖位置が、上記第1実施形態よりも前方に設定されている。こうした設定により、各フィン15の意匠面16がグリル本体10の前面10Aに近づけられて両者の境界部分が凸凹の少ない状態にされている。
【0094】
上記のようにして第2実施形態のグリルシャッタ装置Gが構成されている。次に、このグリルシャッタ装置Gの作用について説明する。
図6及び
図10は、例えば、冬期におけるエンジン始動直後の暖機運転時や車両の高速走行時に、全部のフィン15が閉鎖位置まで移動させられた状態を示している。この閉鎖位置では、スライド部材61が、その可動範囲の最も前方に位置している。最下位置のシャフト52A(ガイド軸部)は、ガイド孔部56の前端部に位置している。それ以外のシャフト52B(ガイド軸部)は、長孔67の後端部、かつガイド孔部56の前端部に位置している。また、アーム51毎のカム軸部53は、カム孔部57における前平行部57Aの前端部に位置している。
【0095】
各アーム51が前後方向に延びる姿勢となり、その前端部が後側から開口部12の内奥部(前部)まで入り込んでいる。各フィン15が開口部12内の前端部に位置し、各開口部12がフィン15によって閉鎖された閉鎖状態となっている。各開口部12の内壁面とフィン15との隙間が僅かとなっており、各開口部12を通じてラジエータRに前方から導かれる空気の量が少ない。エンジンの暖機の効率低下や過冷却が抑制されるとともに、車両の受ける空力的損失が少なくなる。
【0096】
また、各フィン15の意匠面16がグリル本体10の前面10Aに近づけられていて、両者の境界部分が凸凹の少ない状態にされている。
また、閉鎖位置では、各開口部12の内壁面がフィン15に接触することで、フィン15の上下方向の不要な動きを規制する。
【0097】
上記の状態から、最下位置のシャフト52A(ガイド軸部)に対し、アクチュエータ66による後方へ向かう力が加えられると、その力はスライド部材61(両可動側壁部62)に伝達される。この伝達によりスライド部材61が、両突条部58に沿って後方へ摺動(スライド)させられる。ここで、シャフト52A(ガイド軸部)は両可動側壁部62の下端部の貫通孔65に挿通されている。また、シャフト52A(ガイド軸部)の動きは各ガイド孔部56によって規制される。シャフト52A(ガイド軸部)は、各ガイド孔部56に沿う方向にのみ移動可能である。
【0098】
そのため、スライド部材61の上記後方への移動に伴い、シャフト52A(ガイド軸部)は、
図10において二点鎖線の矢印で示すように、最下位置のガイド孔部56に沿って後方へ移動させられる。シャフト52A(ガイド軸部)は、ガイド孔部56に沿って移動することで、上下位置を変えずに前後位置を変える。
【0099】
これに対し、各シャフト52B(ガイド軸部)は、可動側壁部62に対しては、前後方向に延びる長孔67に挿通されている。そのため、スライド部材61の後方へのスライド初期(各長孔67の前端壁が各シャフト52B(ガイド軸部)に当接するまで)は、スライド部材61(可動側壁部62)の動きが各シャフト52B(ガイド軸部)に伝達されない。スライド部材61は後方へスライドするものの、各シャフト52B(ガイド軸部)は各ガイド孔部56の前端部に位置し続ける。
【0100】
そして、各長孔67の前端壁が各シャフト52B(ガイド軸部)に当接する位置までスライド部材61が後方へ移動すると、同スライド部材61の後方への動きが各シャフト52B(ガイド軸部)に伝達されるようになる。ここで、各シャフト52B(ガイド軸部)の動きは各ガイド孔部56によって規制される。各シャフト52B(ガイド軸部)は、各ガイド孔部56に沿う方向にのみ移動可能である。
【0101】
そのため、上記長孔67の前端壁のシャフト52B(ガイド軸部)との当接後も、スライド部材61が後方へ移動すると、各シャフト52B(ガイド軸部)がスライド部材61と一体となって、各ガイド孔部56に沿って後方へ移動する。この移動により、各シャフト52B(ガイド軸部)は、上下位置を変えずに前後位置を変える。
【0102】
これに対し、各カム軸部53の動きは各カム孔部57によって規制される。各カム軸部53は、各カム孔部57に沿う方向にのみ移動可能である。各カム軸部53は、各カム孔部57内を、前平行部57A、傾斜部57B及び後平行部57Cの順に沿って移動させられる。
【0103】
上記各シャフト52(ガイド軸部)及び各カム軸部53は、ともに同一のアーム51に設けられている。そのため、各ガイド孔部56における各シャフト52(ガイド軸部)の位置、及び各カム孔部57における各カム軸部53の位置が変化することで、各アーム51の姿勢が変化する。
【0104】
各カム軸部53は、カム孔部57毎の前平行部57Aに沿うことで、後方へ移動させられ、上下位置を変えずに前後位置のみを変える。一方で、このときには各シャフト52(ガイド軸部)が各ガイド孔部56に沿って後方へ移動している。各前平行部57Aは、各カム孔部57において各傾斜部57Bよりも前側に設けられている。しかも、各フィン15が閉鎖位置近傍で移動する際に、各カム軸部53が各前平行部57Aを移動するように設定されている。そのため、閉鎖位置近傍での各フィン15の移動に際し、各アーム51及び各フィン15が、上下方向の傾動を伴わずに後方へ移動させられる。この移動により、各アーム51の前端部及び各フィン15が、各開口部12から後方へ抜け出す。
【0105】
各カム軸部53は、カム孔部57毎の前平行部57Aを通過した後、傾斜部57Bに沿うことで斜め後ろ上方へ移動させられ、上下位置及び前後位置をともに変える。このときには、各シャフト52(ガイド軸部)が各ガイド孔部56に沿って後方へ移動している。そのため、各アーム51は、各シャフト52(ガイド軸部)を支点として、上方へ傾動しながら後方へ移動する。各フィン15は、意匠面16を前方に向けた状態で、上方への傾動を伴いながら後方へ移動させられる。
【0106】
各カム軸部53は、カム孔部57毎の傾斜部57Bを通過した後、後平行部57Cに沿うことで、後方へ移動させられ、上下位置を変えずに前後位置のみを変える。このときには、各シャフト52(ガイド軸部)が依然として各ガイド孔部56に沿って後方へ移動している。各後平行部57Cは、各カム孔部57において各傾斜部57Bよりも後側に設けられている。しかも、各フィン15が開放位置近傍で移動する際に、各カム軸部53が各後平行部57Cを移動するように設定されている。そのため、開放位置近傍での各フィン15の移動に際し、各アーム51及び各フィン15が、上下方向の傾動を伴わずに後方へ移動させられる。
【0107】
図11に示すように、各カム軸部53が各後平行部57C内に入り込むと、同後平行部57Cの内壁面が各カム軸部53の上下方向の動きを規制する。各シャフト52(ガイド軸部)の上下方向の動きは、各ガイド孔部56の内壁面によって規制されている。従って、これら2箇所での規制により、各アーム51は上下方向へばたつくことを抑制される。
【0108】
図11に示す開放位置では、スライド部材61が、その可動範囲の最も後方に位置する。全てのシャフト52(ガイド軸部)は、ガイド孔部56の後端に位置する。また、アーム51毎のカム軸部53は、カム孔部57における後平行部57Cの後端部に位置する。
【0109】
また、上記開放位置では、複数のフィン15は、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方に位置する。各開口部12が開放され、多くの空気Aが開口部12を通ってグリルシャッタ装置G内に流入することが可能となる。
【0110】
また、このとき、各フィン15は各開口部12とラジエータRとの間から上下方向へ退避した箇所に位置する。そのため、各フィン15は各開口部12を通過した後の空気Aの流れの妨げとなりにくい。各フィン15が原因でラジエータRに前方から導かれる空気Aの量が少なくなることが起こりにくい。各開口部12を通過した空気Aは、ラジエータRに前方から導かれる。この空気はラジエータRに触れ、ラジエータR内のエンジン冷却水を冷却する。
【0111】
上記状態から、シャフト52A(ガイド軸部)に対し、アクチュエータ66による前方へ向かう力が加えられると、グリルシャッタ装置Gの各部は上記とは逆の動作を行なう。すなわち、前方へ向かう上記力はスライド部材61に伝達される。この伝達によりスライド部材61が、両突条部58に沿って前方へ移動させられる。スライド部材61の上記前方への移動に伴い、シャフト52A(ガイド軸部)は、
図11において二点鎖線の矢印で示すように、最下位置のガイド孔部56に沿って前方へ移動させられ、上下位置を変えずに前後位置を変える。
【0112】
これに対し、スライド部材61の前方へのスライド初期(各長孔67の後端壁がシャフト52B(ガイド軸部)に当接するまで)は、スライド部材61の動きが各シャフト52B(ガイド軸部)に伝達されない。スライド部材61は前方へスライドするものの、各シャフト52B(ガイド軸部)は各ガイド孔部56の後端部に位置し続ける。
【0113】
そして、各長孔67の後端壁が各シャフト52B(ガイド軸部)に当接する位置までスライド部材61が前方へ移動すると、同スライド部材61の前方への動きが各シャフト52B(ガイド軸部)に伝達されるようになる。上記長孔67の後端壁のシャフト52B(ガイド軸部)との当接後も、スライド部材61が前方へ移動すると、各シャフト52B(ガイド軸部)がスライド部材61と一体となって、各ガイド孔部56に沿って前方へ移動する。この移動により、各シャフト52B(ガイド軸部)は、上下位置を変えずに前後位置を変える。
【0114】
これに対し、各カム軸部53は、各カム孔部57内を、後平行部57C、傾斜部57B及び前平行部57Aの順に沿って移動させられる。各ガイド孔部56における各シャフト52(ガイド軸部)の位置、及び各カム孔部57における各カム軸部53の位置が変化することで、各アーム51の姿勢が変化する。
【0115】
各カム軸部53は、カム孔部57毎の後平行部57Cに沿うことで、前方へ移動させられ、上下位置を変えずに前後位置のみを変える。このときには、各シャフト52(ガイド軸部)が各ガイド孔部56に沿って前方へ移動している。そのため、開放位置近傍での各フィン15の移動に際し、各アーム51及び各フィン15が、下方への傾動を伴わずに前方へ移動させられる。
【0116】
各カム軸部53は、カム孔部57毎の後平行部57Cを通過した後、各傾斜部57Bに沿うことで斜め下前方へ移動させられ、上下位置及び前後位置をともに変える。このときには、各シャフト52(ガイド軸部)が各ガイド孔部56に沿って前方へ移動している。そのため、各アーム51は、各シャフト52(ガイド軸部)を支点として、下方へ傾動しながら前方へ移動する。各フィン15は、意匠面16を前方に向けた状態で、下方への傾動を伴いながら前方へ移動させられる。
【0117】
各カム軸部53は、カム孔部57毎の傾斜部57Bを通過した後、前平行部57Aに沿うことで、前方へ移動させられ、上下位置を変えずに前後位置のみを変える。このときには、各シャフト52(ガイド軸部)が各ガイド孔部56に沿って前方へ移動している。そのため、閉鎖位置近傍での各フィン15の移動に際し、各アーム51及び各フィン15が、下方へ向かう傾動を伴わずに前方へ移動させられ、開口部12内に後側から入り込む。各開口部12が各フィン15によって閉鎖された状態となる。
図10に示すように、意匠面16がグリル本体10の前面10Aと略同一となる閉鎖位置まで各フィン15が移動すると、各アーム51が停止させられる。
【0118】
閉鎖位置及び開放位置での各フィン15の上記移動は、意匠面16を前方に向けた状態で行なわれる。そのため、この移動に際し、車両の前方から各フィン15を見た場合、専ら意匠面16が見えるにとどまり、意匠面16とは異なる箇所が見えることが起こりにくい。
【0119】
以上詳述した第2実施形態によれば、上記(1)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
(8)傾きを若干変えるものの、意匠面16を前方に向けた状態で、複数のフィン15を閉鎖位置と開放位置との間で傾動させている(
図10、
図11)。
【0120】
そのため、上記(2)と同様、意匠性を高める効果が得られる。
(9)閉鎖位置と開放位置との間における中間部分での各フィン15の移動に際し、同フィン15を、上下方向への傾動を伴いながら前後動させるようにしている(
図11)。
【0121】
そのため、上述した(3)の前半部分と同様の効果、すなわち、閉鎖位置では、各フィン15によって各開口部12を閉鎖状態にする一方、開放位置では、各フィン15を、グリル本体10において開口部12が設けられていない箇所の後方に位置させることができ、上記(1)の効果を得ることができる。
【0122】
(10)伝達機構50を、固定側壁部55に設けられたガイド孔部56及びカム孔部57と、フィン15毎のアーム51と、アーム51毎に設けられたシャフト52(ガイド軸部)及びカム軸部53とを用いて構成している。カム孔部57の中間部分に、前後方向に対し傾斜する傾斜部57Bを設けている(
図6、
図11)。
【0123】
そのため、アクチュエータ66によってシャフト52(ガイド軸部)をガイド孔部56に沿って前後方向へ移動させて、カム軸部53をカム孔部57の傾斜部57Bに沿って移動させることで、フィン15を、上下方向への傾動を伴いながら前後動させることができる。
【0124】
(11)各カム孔部57の傾斜部57Bよりも前側に、各ガイド孔部56に対し平行な状態で前後方向に延びる前平行部57Aを設けている(
図10)。
そのため、閉鎖位置近傍での各フィン15の移動に際し、同フィン15を、上下方向の傾動を伴わずに前後動させることができる。各フィン15の動きが各開口部12の内壁面によって妨げられるのを抑制し、各フィン15を各開口部12から抜き出したり、同開口部12に入り込ませたりすることができる。
【0125】
これに付随して、上記(3)の後半部分よりも優れた効果が得られる。すなわち、閉鎖位置近傍では、フィン15が上下方向の傾動を伴わずに前後動する。そのため、各フィン15が、上下方向から見たときに円弧形状をなすものであっても開口部12の内壁面に当たることがなく、同フィン15を閉鎖位置近傍で移動させることができる。各フィン15として、円弧形状をなすものを採用することができることから、意匠性の自由度が増す。
【0126】
(12)各開口部12内での各フィン15の前後位置が制約を受けにくいことに着目して、各フィン15を各開口部12内の前端近くに配置している(
図10)。
そのため、各フィン15の意匠面16をグリル本体10の前面10Aに近づけて両者の境界部分を凸凹の少ない状態にし、各開口部12が各フィン15によって閉鎖された状態でのグリルシャッタ装置Gの意匠性を向上させることができる。
【0127】
また、各開口部12の内壁面の各フィン15との接触により、同フィン15の上下方向の不要な動きを規制することができる。
(13)各カム孔部57の傾斜部57Bよりも後側に、各ガイド孔部56に対し平行な状態で前後方向に延びる後平行部57Cを設けている(
図11)。
【0128】
そのため、開放位置では、各カム軸部53を後平行部57Cに位置させることで、同カム軸部53の上下方向の動きを規制し、各アーム51及び各フィン15が上下方向へ不要に動く(ばたつく)のを規制することができる。
【0129】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<グリル本体10について>
・グリル本体10における開口部12の数、形状及び大きさは、第1及び第2実施形態とは異なるものに変更されてもよい。その場合、開口部12の採り得る最小数は「1」である。
【0130】
・グリル本体10及び各開口部12を上下方向から見たときの形状は、円弧形状とは異なるもの、例えば湾曲しないもの(車幅方向に延びる直線状をなすもの)に変更されてもよい。
【0131】
<フィン15について>
・第1実施形態において、複数の開口部12の全てがフィン15によって開閉される構成に変更されてもよい。
【0132】
・フィン15の数、形状及び大きさは、第1及び第2実施形態とは異なるものに変更されてもよい。その場合、フィン15の採り得る最小数は「1」である。また、フィン15を上下方向から見たときの形状は、円弧形状とは異なるもの、例えば、湾曲しないもの(車幅方向に延びる直線状をなすもの)に変更されてもよい。
【0133】
また、第1実施形態におけるフィン15は、フランジ部17を有しないものであってもよい。
<第1実施形態の伝達機構40について>
・伝達機構40では、3つ以上のレバーが用いられ、これらのレバーがリンク部材45によって連結されてもよい。
【0134】
・第1実施形態において、各フィン15が開口部12に対し後側から入り込むことなく、同開口部12の後端面13に当接する位置や、同後端面13から後方へ僅かに離れた位置が閉鎖位置とされてもよい。
【0135】
<第2実形態の伝達機構50について>
・各カム孔部57は、前平行部57A及び後平行部57Cの少なくとも一方が割愛された形態に変更されてもよい。
【0136】
ただし、各カム孔部57から前平行部57Aが割愛されると、閉鎖位置近傍では各フィン15が上下方向の傾動を伴いながら前後動することとなる。そのため、この場合には、閉鎖位置近傍でフィン15が上下方向の傾動を伴わずに前後動する第2実施形態とは異なり、グリル本体10の前面10Aに近い位置を各フィン15の閉鎖位置とすることが難しくなる。
【0137】
また、前平行部57A及び後平行部57Cの両方が割愛された場合、各カム孔部57は傾斜部57Bのみによって構成されることとなり、フィン15は、その可動範囲の全域において、上下方向への傾動を伴いながら前後動させられることとなる。
【0138】
・各カム孔部57は、ガイド孔部56との関係において、第2実施形態とは異なる箇所に設けられてもよい。
・各カム軸部53は、各アーム51において、各シャフト52(ガイド軸部)から前後方向へ離間した箇所であることを条件として、第2実施形態とは異なる箇所に設けられてもよい。