(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガスバリア層を構成する成分が、ポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアクロロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂及びポリグリコール酸から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の多層容器。
前記積層構造の最内層、最外層を構成する成分が、それぞれ、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性共重合ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリスチレン樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の多層容器。
最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であり、かつ前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚みに対して0.01〜0.9倍の厚みとなる部分を有する多層容器の製造方法であって、請求項8〜10のいずれかに記載の金型を用いて成形することを特徴とする、多層容器の製造方法。
最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であり、かつ前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚みに対して0.01〜0.9倍の厚みとなる部分を有する多層容器の製造方法であって、請求項8〜10のいずれかに記載の金型を用いて多層プリフォームを形成し、次いで該多層プリフォームをブロー成形することを特徴とする、多層容器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、特殊な逆流調節装置を使用するため製造コストが高くなるという問題がある。一方、特許文献2に記載の方法のように、プリフォームを加熱収縮させてその後に再び高圧でブローする成形方法では、賦形性が悪く成形品の形状不良が起こり、また、工程が煩雑であるという問題がある。
【0010】
本発明の課題は、製造コストが高まるような特殊な装置や工程が煩雑な成形方法を用いなくても製造できる、耐層間剥離性及びガスバリア性に優れた多層容器、該多層容器を製造するのに適した金型、及び該金型を用いた多層容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記[1]〜[13]に関する。
[1]最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であって、
前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚みに対して0.01〜0.9倍の厚みとなる部分を有することを特徴とする多層容器。
[2]前記積層構造からなる部位の質量が多層容器全体の30質量%以上である、上記[1]に記載の多層容器。
[3]前記積層構造が、3層又は5層の積層構造である、上記[1]又は[2]に記載の多層容器。
[4]前記ガスバリア層を構成する成分が、ポリアミド樹脂、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアクロロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂及びポリグリコール酸から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の多層容器。
[5]前記ポリアミド樹脂がメタキシリレン基含有ポリアミド樹脂である、上記[4]に記載の多層容器。
[6]前記積層構造の最内層、最外層を構成する成分が、それぞれ、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性共重合ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリスチレン樹脂から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の多層容器。
[7]壜体である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の多層容器。
【0012】
[8](I)キャビティが設けられたコールドハーフ部、及び
(II)第1の射出シリンダの内部とキャビティとを結ぶ第1の樹脂流路、第2の射出シリンダの内部とキャビティとを結ぶ第2の樹脂流路、及び第1の樹脂流路と第2の樹脂流路の合流部が設けられたホットハーフ部
を備え、該ホットハーフ部(II)が有する前記合流部は、前記コールドハーフ部(I)が有するキャビティに開口したゲート部の上流に位置し、かつ第2の樹脂流路内に樹脂流動を部分的に阻害する手段を有することを特徴とする、多層容器用金型。
[9]樹脂流動を部分的に阻害する手段が、第2の樹脂流路内の少なくとも一部に凸部を設ける手段であり、
第2の樹脂流路の流れ方向に対して垂直方向の断面において、直径方向の最長部の長さをa mm、円周の接線方向の最長部の長さをb mmとすると、a及びbが次の関係を満たす、上記[8]に記載の多層容器用金型。
0.01r≦a≦1r (式1)
0.01r≦b≦1r (式2)
(前記式中、rは第2の樹脂流路の半径(mm)を表わす。)
[10]樹脂流動を部分的に阻害する手段が、第2の樹脂流路内の少なくとも2ヶ所に凸部を設ける手段である、上記[8]又は[9]に記載の多層容器用金型。
[11]前記凸部が、第1の樹脂流路と第2の樹脂流路の合流部の上流側0cm〜5cmの間に設けられている、上記[8]〜[10]のいずれかに記載の多層容器用金型。
【0013】
[12]最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であり、かつ前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚みに対して0.01〜0.9倍の厚みとなる部分を有する多層容器の製造方法であって、上記[8]〜[11]のいずれかに記載の金型を用いて成形することを特徴とする、多層容器の製造方法。
[13]最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であり、かつ前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚みに対して0.01〜0.9倍の厚みとなる部分を有する多層容器の製造方法であって、上記[8]〜[11]のいずれかに記載の金型を用いて多層プリフォームを形成し、次いで該多層プリフォームをブロー成形することを特徴とする、多層容器の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多層容器は、耐層間剥離性及びガスバリア性に優れる。さらに、多層容器を凹凸部や屈曲部の少ない形状にしなくても層間剥離を回避することができるため、容器形状の自由度を高めることができる。
また、本願発明の多層容器用金型を用いることにより、前記多層容器を、製造コストが高まるような特殊な装置や工程が煩雑な成形方法を用いなくても製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[多層容器]
本発明の多層容器は、最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であって、前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚み(t
0)に対して0.01〜0.9倍の厚み(t
1)となる部位(以下、ガスバリア層の凹部と称することがある)を有することを特徴とする多層容器である。
前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚み(t
0)に対して0.9倍以下の厚み(ガスバリア層が連続している限りは0.01〜0.9倍)となる凹部を有することにより、多層容器の層間剥離が効果的に抑制される。この観点から、前記ガスバリア層は、該ガスバリア層の最大の厚みに対して、好ましくは0.01〜0.8倍、より好ましくは0.02〜0.7倍、さらに好ましくは0.03〜0.6倍、特に好ましくは0.05〜0.5倍の厚みとなる凹部を有する。ガスバリア層の凹部の位置に特に制限は無いが、多層容器を水平に輪切りにしたときの断面において少なくとも1つ、耐層間剥離性を一層高める観点から、好ましくは2つ以上(2〜15個程度)、より好ましくは3つ以上(3〜10個程度)、さらに好ましくは4つ以上(4〜8個程度)存在するのがよい。多層容器を水平に輪切りにしたときの断面において凹部が複数ある場合、それぞれの凹部のt
1/t
0比は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本発明の多層容器は、前記ガスバリア層を有する積層構造が好ましくは3層又は5層となっているものである。前記積層構造からなる部位の質量は、多層容器のガスバリア性を良好にする観点から、多層容器全体の30質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましく、50質量%以上がより好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上であるのが特に好ましい。
多層容器の最外層及び最内層の厚み、及びガスバリア層以外の各層の厚みは、それぞれ好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.05〜1.5mmであり、ガスバリア層の厚みは、好ましくは0.005〜0.2mm(5〜200μm)、より好ましくは0.01〜0.15mm(10〜150μm)である。また、多層容器の厚みはボトル全体で一定である必要はないが、通常、好ましくは0.2〜4mm程度である。
本発明の多層容器において、ガスバリア層の質量は、ガスバリア層を有する積層構造からなる部位の総質量に対して、好ましくは1〜20質量%である。この範囲であれば、ガスバリア性が良好となると共に、前駆体である多層プリフォームから多層容器への成形が容易となる。この観点から、ガスバリア層の質量は、ガスバリア層を有する積層構造からなる部位の総質量に対して、より好ましくは2〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。
本発明の多層容器は、耐層間剥離性及びガスバリア性に優れていることより、液体飲料や液体食品等の容器として有用であり、その形状に特に制限は無いが、壜体であることが好ましい。
【0017】
(ガスバリア層以外の層の成分)
本発明の多層容器が含有するガスバリア層以外の層(最外層及び最内層を含む。)を構成する成分としては、特に制限は無く、飲料容器などの多層容器に用いられる成分を用いることができる。ガスバリア層以外の層を構成する成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル樹脂;熱可塑性共重合ポリエステル樹脂;ポリオレフィン系樹脂;脂肪族ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用したものとしては、PETとPENとをブレンドしたものなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂(以下、ポリエステル(A)と称する)が好ましい。なお、最外層と最内層、さらにはその他のいずれの層についても、ガスバリア性を有することを否定するものではなく、全ての層がガスバリア性を有していてもよいが、製造コストの観点などから、通常は、ガスバリア層を上記成分によって挟む形態が採られる。
ポリエステル(A)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリ乳酸(PLA)が好適に使用される。これらの中でもポリエチレンテレフタレートは、その透明性、機械的強度、射出成形性、延伸ブロー成形性の全てにおいて優れた特性を発揮するため、より好ましい。
【0018】
ここで、ポリエチレンテレフタレートとは、通常、ジカルボン酸成分の80モル%以上、好ましくは90モル%以上がテレフタル酸であり、ジオール成分の80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレングリコールであるポリエステルを意味する。残部のテレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニルエ−テル−4,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸を使用することができる。また、残部のエチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2´−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。さらに、熱可塑性ポリエステル樹脂の原料モノマーとして、p−オキシ安息香酸等のオキシ酸を使用することもできる。
【0019】
ポリエステル(A)の固有粘度は、好ましくは0.55〜1.3、より好ましくは0.65〜1.2、さらに好ましくは0.70〜0.9である。固有粘度が0.55以上であると、多層プリフォームを透明な非晶状態で得ることが可能であり、また、得られる多層容器の機械的強度も満足のいくものとなる。固有粘度が1.3以下であれば、成形時に流動性を損なうことなく、ボトル成形が容易である。なお、固有粘度(η)は、フェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒を使用した。なお、固有粘度の測定は、ASTM D4603−03やASTM D1601等により求められる。
【0020】
本発明の多層容器の最外層又は最内層は、主としてポリエステル(A)により構成されるのが好ましいが、本発明の特徴を損なわない範囲で、ポリエステル(A)に他の熱可塑性樹脂や各種添加剤を配合して使用することができる。その際、最外層又は最内層の90質量%以上がポリエステル(A)であることが好ましい。
他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が挙げられる。
また、添加剤としては、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、着色剤、プリフォームの加熱を促進し成形時のサイクルタイムを短くするための赤外吸収剤(リヒートアディティブ)等が挙げられる。
【0021】
(ガスバリア層の成分)
本発明の多層容器が含有するガスバリア層を構成する成分に特に制限は無く、ガスバリア性を有する公知の樹脂を用いることができる。ガスバリア層を構成する成分としては、下記酸素透過係数を満たしているものが好ましく、例えば、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂(MXナイロン樹脂)等のポリアミド樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂;ポリアクロロニトリル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリグリコール酸(PGA)等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ガスバリア性及びリサイクル性の観点から、ポリアミド樹脂が好ましく、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂がより好ましい。
本明細書において、「ガスバリア性を有する」とは、多層容器に成形した際に、温度23℃、相対湿度80%RHの条件下のガスバリア層を構成する層自体の酸素透過係数が1.0cc・mm/(m
2・day・atm)以下であることを言う。該酸素透過係数は、好ましくは0.8cc・mm/(m
2・day・atm)以下、より好ましくは0.20cc・mm/(m
2・day・atm)以下、さらに好ましくは0.15cc・mm/(m
2・day・atm)、特に好ましくは0.09cc・mm/(m
2・day・atm)以下である。前記ガスバリア性を有する樹脂をガスバリア層として使用することで、得られた多層容器のガスバリア性能が良好となり、保存する内容物の消費期限を長くすることができる。
【0022】
ガスバリア層の成分として好ましい、メタキシリレン基含有ポリアミド樹脂(MXナイロン樹脂)としては、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミド(以下、ポリアミド(B)と称する)が好ましい。該ポリアミド(B)は、バリア性能が高く、また、前記ポリエステル(A)との共射出成形性、共延伸ブロー成形性において優れた特性を発揮し、成形性が良好である。
【0023】
ポリアミド(B)におけるジアミン成分は、好ましくはメタキシリレンジアミンを70モル%以上、より好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含むものである。ジアミン成分中のメタキシリレンジアミン量が70モル%以上であれば、ポリアミド(B)のガスバリア性が良好となる。
ポリアミド(B)において、メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
ポリアミド(B)におけるジカルボン酸成分は、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含むものである。上記の範囲であると、ガスバリア性及び成形性に優れたポリアミドとなる。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これら中でも、アジピン酸、セバシン酸が好ましい。
またポリアミド(B)では、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類が挙げられる。
ポリアミド(B)のジカルボン酸成分としては、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を100〜50モル%、芳香族ジカルボン酸を0〜50モル%含むジカルボン酸成分を使用することが好ましい。
【0025】
ポリアミド(B)は、溶融重縮合法により製造できる。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。なお、重縮合反応の際に、分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。
また、ポリアミド(B)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行うことによって重縮合を行ってもよい。ポリアミドの製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
【0026】
これらのMXナイロン樹脂の相対粘度は、通常、1.5以上が適当であり、好ましくは2〜4、より好ましくは2.1〜3.5である。なお、相対粘度は、樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解して、キャノンフェンスケ型粘度計等を用いて25℃で測定したときの粘度である。
ポリアミド(B)の数平均分子量は、18,000〜43,500が好ましく、より好ましくは、20,000〜30,000である。この範囲であると、多層成形品への成形が良好であり、得られた多層容器は耐層間剥離性に優れたものとなる。なお、ポリアミド(B)の数平均分子量が18,000〜43,500であるとき、ポリアミド(B)の相対粘度はおよそ2.3〜4.2であり、20,000〜30,000のときおよそ2.4〜3.2となる。
【0027】
ポリアミド(B)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド(B)の着色を防止するためにリン化合物を添加することができる。該リン化合物としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好ましく使用される。例えば、リン酸、次亜リン酸、亜リン酸の、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、特に次亜リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。ポリアミド(B)中のリン化合物の濃度は、リン原子として好ましくは1〜500ppm、より好ましくは350ppm以下、さらに好ましくは200ppm以下である。リン原子濃度が500ppmを超えても着色防止効果は頭打ちとなる。また、リン原子濃度が500ppm以下であれば、このリン化合物が添加されたポリアミド(B)を利用して得られるフィルムのヘーズ値が上がり過ぎることはない。
【0028】
ポリアミド(B)には、耐層間剥離性を向上させる目的で、他のポリアミドを加えることができる。例えば、ポリ(カプロラクタム)としても知られるポリ(6−アミノヘキサン酸)(PA−6)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(PA−6,6)、ポリ(7−アミノヘプタン酸)(PA−7)、ポリ(10−アミノデカン酸)(PA−10)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)(PA−11)、ポリ(12−アミノドデカン酸)(PA−12)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(PA−6,10)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(PA−6,9)、ポリ(テトラメチレンアジパミド)(PA−4,6)といったホモポリマー、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミドコポリマー(PA−6,6/6))、ヘキサメチレンアジパミド/カプロラクタムコポリマー(PA−6/6,6)などの脂肪族ポリアミド;ポリ(ヘキサメチレンイソフタラミド)(PA−6I)、ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(PA−6I/6T)、ポリ(メタキシリレンイソフタラミド)(PA−MXDI)、カプロラクタム/メタキシリレンイソフタラミドコポリマー(PA−6/MXDI)、カプロラクタム/ヘキサメチレンイソフタラミドコポリマー(PA−6/6I)などの非晶質半芳香族ポリアミドなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0029】
前記ガスバリア層は、主としてポリアミド(B)により構成されることが好ましく、ガスバリア性能の観点から、ポリアミド(B)は70質量%以上含まれていることがより好ましく、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
前記ガスバリア層には、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、ポリエステル、オレフィン、フェノキシ樹脂等の他の樹脂を1種又は複数ブレンドしてもよい。
また、ガラス繊維、炭素繊維などの無機充填剤;ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、モンモリロナイト、有機化クレイなどの板状無機充填剤;各種エラストマー類などの耐衝撃性改質材;結晶核剤;脂肪酸アミド系、脂肪酸金属塩系、脂肪酸アマイド系化合物等の滑剤;銅化合物、有機もしくは無機ハロゲン系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、ヒドラジン系、硫黄系化合物、リン系化合物等の酸化防止剤;熱安定剤;着色防止剤;ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;離型剤;可塑剤;着色剤;難燃剤;酸素捕捉能を付与する化合物であるコバルト金属を含む化合物やポリアミドのゲル化防止を目的としたアルカリ化合物等の添加剤を添加することができる。
【0030】
(多層容器用金型)
本発明の多層容器は、以下の金型を用いることにより、前記多層容器を、製造コストが高まるような特殊な装置や工程が煩雑な成形方法を用いなくても製造することができる。以下、該金型について詳細に説明する。
本発明の多層容器用金型(以下、単に金型と称することもある)は、(I)キャビティが設けられたコールドハーフ部、及び(II)第1の射出シリンダの内部とキャビティとを結ぶ第1の樹脂流路、第2の射出シリンダの内部とキャビティとを結ぶ第2の樹脂流路、及び第1の樹脂流路と第2の樹脂流路の合流部が設けられたホットハーフ部を備え、該ホットハーフ部(II)が有する前記合流部は、前記コールドハーフ部(I)が有するキャビティに開口したゲート部の上流に位置し、かつ第2の樹脂流路内に樹脂流動を部分的に阻害する手段を有することを特徴とする。
なお、本明細書において、「上流」とは、射出シリンダ側を意味し、下流とはキャビティ側を意味する。
【0031】
本発明の金型は、多層容器を成形する装置に用いられる金型であって、例えば
図1に示されるように、ホットハーフ部(22)とコールドハーフ部(21)からなる。ホットハーフ部(22)は、射出成形装置のスクリューにより溶融可塑化された樹脂が溶融状態を保ったまま流動する配管を有するものである。ホットハーフ部(22)は、第1の射出シリンダー(10A)の内部とキャビティ(25)とを結ぶ第1の樹脂流路(23A)、第2の射出シリンダー(10B)の内部とキャビティ(25)とを結ぶ第2の樹脂流路(23B)、及び第1の樹脂流路(23A)と第2の樹脂流路(23B)が合流する合流部を有する。第2の樹脂流路(23B)には、多層容器のガスバリア層を構成する成分である第2の樹脂(例えば、ポリアミド(B)など)が流れる。第1の樹脂流路(23A)には、最外層及び最内層を構成する成分である第1の樹脂(前記「ガスバリア層を構成する成分以外の樹脂」、例えばポリエステル(A)など)が流れる。なお、第1の樹脂がガスバリア性を有していてもよい。
コールドハーフ部(21)は、溶融可塑化された樹脂が射出され、冷却されて多層容器に成形される部分である。コールドハーフ部(21)の内部には少なくとも1つ以上のキャビティを有する。
一般的な多層成形装置用の金型の構造としては、特開平11−165330や、特開昭63−99918、特表2001−504763等が参照される。本発明の金型は、金型のホットハーフ部(22)の第2の樹脂流路(23B)に樹脂流動を部分的に阻害する手段(28)を有することを特徴とする(
図1〜3参照)。
【0032】
本発明の金型の、第1の樹脂流路(23A)、第2の樹脂流路(23B)を、樹脂の流れ方向に対して垂直な面で切断したときの断面の流路の配管の形状は円形であることが好ましいが、かかる形状に限定されず、矩形等任意の形状とすることができる。
【0033】
本発明の金型において、第2の樹脂流路(23B)内に樹脂流動を部分的に阻害する手段を設けることで、得られる多層容器の第2の樹脂層(ガスバリア層)には、その一部に、樹脂流動が阻害されて層の厚みが薄くなった部位、具体的には、第2の樹脂層の最大の厚みに対して、前述の通り、0.01〜0.9倍の厚みとなった部位(凹部)を生じさせることができる。なお、
図8に本発明の金型を用いて成形された多層容器における第2の樹脂層(ガスバリア層)の断面形状の一態様を示す。
このように、多層容器の第2の樹脂層の円周方向の厚みを変動させることにより、多層容器の層間剥離が抑制される。通常、厚みを変動させることによって表面積が増加することより、層間剥離を助長するようにも考えられるが、第1の樹脂層が第2の樹脂層に楔を打つ形状となっていることが、結果的には予測とは逆の効果をもたらした。これは、かかる形状となることによって、多層容器に衝撃等の応力が加わった際に、第2の樹脂層の第1の樹脂層に対する衝撃追従性が向上したため、多層容器の耐層間剥離性が向上したものと推察される。
【0034】
本発明の金型において、第2の樹脂流路(23B)内に配設された樹脂流動を部分的に阻害する手段は、第2の樹脂流路(23B)の側壁に配設され、その配設数は、第2の樹脂層の第1の樹脂層に対する衝撃追従性を向上させて耐層間剥離性を高める観点から、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ以上である。配設数の上限値に特に制限は無いが、第2の樹脂層の第1の樹脂層に対する衝撃追従性を向上させて耐層間剥離性を高める観点から、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下である。よって、同様の観点から、樹脂流動を部分的に阻害する手段の配設数は、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜12、より好ましくは3〜12、より好ましくは3〜10、さらに好ましくは4〜10、特に好ましくは4〜8である。
【0035】
本発明の金型において、樹脂流動を部分的に阻害する手段は、第1の樹脂流路(23A)と第2の樹脂流路(23B)の合流部と第2の射出シリンダー(10B)との間の第2の樹脂流路(23B)内に設けられていることが好ましい。この場合、樹脂流動を部分的に阻害する手段は上記合流部の近傍にあり、該合流部の上流側0〜5cmの間に配設されていることが好ましく、より好ましくは0〜3cm、さらに好ましくは0〜1cm、特に好ましくは0〜0.5cmの間に配設されていることが特に好ましい。樹脂流動を部分的に阻害する手段が上記範囲に配設されていると、得られる多層容器の第2の樹脂層の円周方向の厚みを変動させ易い。
また、樹脂流動を部分的に阻害する手段が2つ以上配設された場合、相互の配設位置は、第2の樹脂流路(23B)と第1の樹脂流路(23A)が合流する合流部からの距離が同じ距離でもよく、異なった距離に配設されていてもよい。
【0036】
図4に、本発明の金型の一態様を示す。樹脂流動を部分的に阻害する手段の形状を説明する。樹脂流動を部分的に阻害する手段を、樹脂流路の樹脂の流れ方向に対して垂直方向に切ったときの断面(
図4のA−A方向に沿った切断面)の形状の概念図を
図5(a)(但し、樹脂流動を部分的に阻害する手段は、1つのみが図示されている。)に示す。
樹脂流動を部分的に阻害する手段の断面(垂直方向)の直径方向の最長部の長さをa mm、円周の接線方向の最長部の長さをb mmとするとき、該樹脂流動を部分的に阻害する手段のa及びbは、耐層間剥離性の観点から、それぞれ以下の式を満たすのが好ましい。なお、直径方向の最長部の長さaは、円周の接線方向の最長部の長さbと直交する関係にある。なお、rは、第2の樹脂流路の半径を表し、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは0.5〜4mm、さらに好ましくは1〜3mmである。
0.01r≦a≦1r
0.01r≦b≦1r
aの下限値は、好ましくは0.03r、より好ましくは0.05r、さらに好ましくは0.1rである。aの上限値は、好ましくは0.9r、より好ましくは0.8r、さらに好ましくは0.7rである。
また、bの下限値は、好ましくは0.03r、より好ましくは0.05r、さらに好ましくは0.1rである。bの上限値は、好ましくは0.9r、より好ましくは0.8r、さらに好ましくは0.7rである。
なお、該樹脂流動を部分的に阻害する手段を、樹脂流路の樹脂の流れ方向に対して垂直方向に切ったときの断面の形状に特に制限は無いが、例えば、流路へ接した面を除いた部分の形状が、円形、半円形、三角形、四角形、台形等の多角形、矩形であるものが挙げられる(
図6参照)。
【0037】
次に、樹脂流動を部分的に阻害する手段を、樹脂流路の樹脂の流れ方向に対して平行方向に切ったときの断面(
図4のB−B方向に沿った切断)形状の概念図を
図5(b)(但し、樹脂流動を部分的に阻害する手段は、1つのみが図示されている。)に示す。
樹脂流動を部分的に阻害する手段の断面(平行方向)の直径方向の最長部の長さをa mm、最長部の長さをy mmとするとき、該樹脂流動を部分的に阻害する手段のa及びyは、耐層間剥離性の観点から、それぞれ次の式を満たすのが好ましい。なお、直径方向の最長部aは、樹脂流路に平行方向の最長部の長さをyと直交する関係にある。なお、rは、前記定義の通りであり、好ましい範囲も同じである。
0.01r≦a≦1r
0.01r≦y≦2r
aの下限値は、好ましくは0.03r、より好ましくは0.05r、さらに好ましくは0.1rである。aの上限値は、好ましくは0.9r、より好ましくは0.8r、さらに好ましくは0.7rである。各下限値及び上限値は、任意の組み合わせを選択できる。
また、yの下限値は、好ましくは0.03r、より好ましくは0.05r、さらに好ましくは0.1rである。yの上限値は、好ましくは1.8r、より好ましくは1.5rである。各下限値及び上限値は、任意の組み合わせを選択できる。
なお、該樹脂流動を部分的に阻害する手段を、樹脂流路の樹脂の流れ方向対して平行方向に切ったときの断面の形状に特に制限は無いが、例えば、流路へ接した面を除いた部分の形状が、円形、半円形、三角形、四角形、台形等の多角形、矩形であるものが挙げられる。
樹脂流動を部分的に阻害する手段としては、前記a、b及びyが以上の範囲にあると、第2の樹脂層の第1の樹脂層に対する衝撃追従性を向上させて耐層間剥離性をさらに高められる傾向にある。
【0038】
本発明の金型の樹脂流動を部分的に阻害する手段の全体的な形状としては、例えば、線状、針状、棒状、板状、円柱状、半円柱状、球状であってもよいし、三角錐状、直方体状、立方体状、円錐状、台形状であってもよく、また、これらの形状に限定されるものではない。
また、樹脂流動を部分的に阻害する手段を構成する材料に特に制限は無いが、例えば、金型と同じ金属材料でもよいし、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛等の金属でもよいし、該金属と接着性を有する熱硬化性樹脂でもよい。
【0039】
[多層容器の製造方法]
本発明は、さらに、以下の多層容器の製造方法をも提供する。
最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であり、かつ前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚み(t
0)に対して0.01〜0.9倍の厚み(t
1)となる部位を有する多層容器の製造方法であって、前記多層容器用金型を用いて成形することを特徴とする、多層容器の製造方法、及び
最内層と最外層との間に少なくともガスバリア層を有する3層以上の積層構造を有する多層容器であり、かつ前記積層構造からなる部位において、前記ガスバリア層が、該ガスバリア層の最大の厚み(t
0)に対して0.01〜0.9倍の厚み(t
1)となる部位を有する多層容器の製造方法であって、前記多層容器用金型を用いて多層プリフォームを形成し、次いで該多層プリフォームをブロー成形することを特徴とする、多層容器の製造方法。
【0040】
本発明の多層容器は、前記の通り本発明の多層容器用金型を用いて製造することができ、具体的には、2つの射出シリンダを有する射出成形機を使用して、ポリエステル(A)を第1の樹脂流路(23A)側の射出シリンダから、ガスバリア性を有する樹脂(ガスバリア性樹脂)を第2の樹脂流路(23B)側の射出シリンダから、ホットハーフ部(22)を通してコールドハーフ部(21)のキャビティ(25)内に射出することで製造することができる。
本発明の多層容器は、本発明の金型を用いて成形した多層容器をそのまま用いることもできるし、本発明の金型を用いて多層プリフォーム(例えば部分的に3層又は5層の積層構造を有するプリフォーム)を成形し、次いで加熱処理してブロー成形を行うことによって多層容器(例えば部分的に3層又は5層の積層構造を有する多層容器)を用いることもできる。好ましくは、多層プリフォームをブロー成形して得た多層容器である。多層容器としては、多層ボトル及び多層カップ等が挙げられる。
【0041】
3層又は5層の積層構造を有する多層プリフォーム製造方法に特に制限は無く、公知の方法を利用できる。たとえば、第1の樹脂流路(23A)側の射出シリンダから最内層及び最外層を構成する樹脂を射出し、第2の樹脂流路(23B)側の射出シリンダからガスバリア層を構成する樹脂を射出する工程で、第1の樹脂の射出を継続しつつ、同時に第2の樹脂を必要量射出し、その後に第1の樹脂の射出を停止することにより3層構造(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層)の多層プリフォームが製造できる。また、第2の樹脂層の中心に第1の樹脂層が流れる金型(
図6(d)参照)を用いて、第1の樹脂の射出を継続しつつ、同時に第2の樹脂を必要量射出し、その後に第1の樹脂の射出を停止することにより3層構造(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層)の多層プリフォームを製造できる。
【0042】
また、第1の樹脂流路(23A)側の射出シリンダから最内層及び最外層を構成する第1の樹脂を射出し、第2の樹脂流路(23B)側の射出シリンダから第2の樹脂を射出する工程で、先ず第1の樹脂を射出し、次いで第2の樹脂を単独で射出し、最後に第1の樹脂を射出してキャビティ(25)を満たすことにより、5層構造(第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層)の多層プリフォームが製造できる。
なお、多層プリフォームを製造する方法は、上記方法だけに限定されるものではない。
【0043】
本発明の金型を用いて成形して得られた多層プリフォームは、さらに2軸延伸ブロー成形することにより多層容器に成形することができる。例えば、2軸延伸ブローの際には、多層プリフォームの表面を90〜110℃に加熱してブロー成形することが好ましく、該加熱温度は95℃〜108℃がより好ましい。該加熱温度範囲内であると、ブロー成形性が良好であり、かつ、最外層、最内層を構成する第1の樹脂層(ポリエステル(A)層)が冷延伸され白化することが無く、第2の樹脂層(ガスバリア層)が結晶化して白化することが無く、耐層間剥離性が一層良好となる。なお、表面温度の測定には、赤外放射温度計を使用することができる。放射率は、通常、0.95に設定して測定できる。ところで、多層プリフォームの表面の加熱に際しては、通常、数本以上のヒータで加熱を行うことが好ましく、ヒータの出力バランスも重要である。外気温や多層プリフォームの表面の加熱温度によって、適切なヒータの出力バランスや加熱時間を適宜調整することが好ましい。
【0044】
本発明の金型を用いて成形した多層容器は、成形性が良好であり、落下や衝撃による層間剥離が起こりにくい。また、凹凸部、屈曲部を含む形状であっても層間剥離が起こりにくいので、多層容器の形状は凹凸部、屈曲部の少ない形状に限定されず、デザイン自由度が大きくなる。本発明の多層容器は、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、ビール、ワイン、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし等の調味料、液体スープ等の液体系食品、液状の医薬品、化粧水、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー等、種々の物品の収納、保存に適している。
【実施例】
【0045】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、各実施例又は比較例で製造した多層容器の各評価は、以下の方法に従って行った。
【0046】
(1)耐層間剥離性の評価方法
ASTM D2463−95 ProcedureBに基づき、容器の落下試験により層間剥離高さを求め、耐層間剥離性の指標とした。まず、多層容器に水を満たしてキャップをした後、任意の高さから多層容器を落下させ層間剥離の有無を目視で判定した。このとき、多層容器の底部が床に接触するように多層容器を垂直落下させた。落下高さの間隔は15cmとし、トータルのテスト容器数は30本とした。
なお、層間剥離高さが高いほど、耐層間剥離性が良好であることを示す。
(2)酸素透過率(OTR)の測定方法
ASTM D3985に準じて、多層容器の酸素透過率(OTR)を測定し、ガスバリア性の指標とした。具体的には、酸素透過率測定装置(モダンコントロールズ社製、型式:OX−TRAN 2/61)を使用して、23℃、ボトル内部100%RH、ボトル外部50%RHにおける酸素透過率[cc/(bottle・day・0.21atm)]を測定した。
なお、数値が低いほど、酸素の透過量が少なく、ガスバリア性が高いことを示す。
(3)多層容器のガスバリア層の最大の厚み(t
0)及び凹部の厚み(t
1)の測定方法
多層容器を底面接地部位より1cmごとに輪切りにし、断面にヨードチンキを塗布した。ガスバリア層はヨードチンキにより染色され、赤褐色ないし黒色に観察される。この断面をキーエンス社製のデジタルマイクロスコープにより観察し、厚みを測定してt
0及びt
1を求めた。
【0047】
<実施例1>
前述した
図1に示される金型(20)を用いた。この金型(20)の第1の樹脂流路(23A)及び第2の樹脂流路(23B)の合流部より0.1cm上流側の、第2の樹脂流路(23B)の側壁に、円柱状(直径0.2mmφ、長さ3mm)の樹脂流動を部分的に阻害する手段(成分;金型と同じ金属)を、
図7(a)に示すように、同一の形状のものを4つ、樹脂流路の側壁に等間隔で配設した。
樹脂流動を部分的に阻害する手段の形状:円柱状、r=1.5mm
樹脂流路に対して垂直方向に切った断面:a=0.2mm、b=0.2mm
樹脂流路に対して平行に切った断面 :a=0.2mm、y=3.0mm
【0048】
最外層及び最内層用の第1の樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット株式会社製「RT543C」、固有粘度:0.75dl/g)を使用した。また、ガスバリア層用の第2の樹脂として、ポリアミドMXD6(N−MXD6、三菱ガス化学株式会社製「MXナイロン S6007」、相対粘度:2.70、酸素透過率:0.1cc・mm/m
2・day・atm)を使用した。
【0049】
上記金型(20)及び名機製作所(株)製の射出成形機(型式:M200、4個取り)を用いて、下記条件下にて、第1の樹脂の射出を継続しながら、同時に第2の樹脂を射出し、その後、第1の樹脂の射出を停止することにより、「第1の樹脂層/第2の樹脂層/第1の樹脂層」からなる、全長95mm、外径22mm、肉厚4.2mm、重さ27gの3層プリフォームを射出成形し、冷却した。
次いで、得られた3層プリフォームを下記条件下にて2軸延伸ブロー成形を行い、全長223mm、外径65mm、内容積500ml、底部形状はペタロイドタイプの多層容器を得た。ブロー成形条件については以下に記載した。
得られた多層容器の評価結果を表1に示す。
(3層プリフォームの射出成形条件)
第1の樹脂流路側の射出シリンダ温度 :270℃
第2の樹脂流路側の射出シリンダ温度 :260℃
金型内の樹脂流路温度 :270℃
金型冷却水温度 :15℃
多層プリフォーム中の第2の樹脂の割合:5質量%
(2軸延伸ブロー成形条件)
ブロー成形機 :型式「EFB1000ET」(フロンティア社製)
プリフォーム加熱温度:101℃
延伸ロッド用圧力 :0.5MPa
一次ブロー圧力 :0.7MPa
二次ブロー圧力 :2.5MPa
一次ブロー遅延時間 :0.34sec
一次ブロー時間 :0.30sec
二次ブロー時間 :2.0sec
ブロー排気時間 :0.6sec
金型温度 :30℃
【0050】
<実施例2>
実施例1において、金型内の樹脂流動を部分的に阻害する手段を表1に記載の形状のものに変更した以外は同様にして多層容器を得た。得られた多層容器の評価結果を表1に示す。
【0051】
<製造例1>
(ポリメタキシレンセバサミド(N−MXD10)の合成)
反応缶内でセバシン酸(伊藤製油株式会社製、TAグレード)を170℃で加熱して溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、加熱して240℃まで昇温させた。滴下終了後、さらに加熱して260℃まで昇温させた。
反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリメタキシレンセバサミド(以下、N−MXD10と称する)を得た。N−MXD10の融点は191℃、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は23,000、酸素透過係数は0.8cc・mm/m
2・day・atmであった。
【0052】
<比較例1>
実施例1において、金型内の樹脂流動を部分的に阻害する手段を樹脂流路2内に設けなかった以外は同様にして多層容器を得た。得られた多層容器の評価結果を表1に示す。
【0053】
<実施例3>
実施例1において、金型内の樹脂流動を部分的に阻害する手段を表1に記載の形状のものに変更し、第1の樹脂としてポリ乳酸(PLA、ユニチカ製、テラマック グレードTP−4000)、第2の樹脂として、製造例1で得たポリメタキシリレンセバサミド(N−MXD10)を用いた以外は同様にして多層容器を得た。得られた多層容器の評価結果を表1に示す。
【0054】
<比較例2>
実施例3において、金型内に樹脂流動を部分的に阻害する手段を樹脂流路2内に設けなかった以外は同様にして多層容器を得た。得られた多層容器の評価結果を表1に示す。
【0055】
<実施例4>
実施例1において、金型内の樹脂流動を部分的に阻害する手段を表1に記載の形状のものに変更した(a=0.63mmのものに変更した)以外は同様にして多層容器を得た。得られた多層容器の評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、本発明の樹脂流動を部分的に阻害する手段を設けた金型を用いて成形した多層容器は、非常に優れた耐層間剥離性を示したのに対し、樹脂流動を部分的に阻害する手段を設けていない金型を用いて成形された多層容器は耐層間剥離性に劣っていた。