【実施例】
【0086】
正極板
次のようにして未化成の正極板を作製した。酸化鉛を主成分とする原料鉛粉1.0kgに対して、カットファイバ(ポリエチレンテレフタレートの短繊維、以下同じ。)を0.1質量%添加し、混練機にて混合した。次に、原料鉛粉とカットファイバとの混合物に水と比重1.26(20℃換算)の希硫酸とを滴下して混練し、水分含有量14質量%、硫酸鉛含有量15質量%のペースト状正極活物質を調製した。このペースト状の正極活物質を、鉛−カルシウム系合金の格子体からなる集電体に、1枚当たり67kg充填した後、温度50℃、湿度95%の雰囲気で18時間熟成させた。その後、集電体に充填された正極活物質を、温度60℃で16時間乾燥させて、未化成の正極板を作製した。
【0087】
負極板
次のようにして未化成の負極板を作製した。有機添加剤として、前記(化1)の構造式で示される(a)ビスフェノールスルホン酸ポリマ(分子量:1.5万〜2.0万、化合物中のイオウ含有量:6〜10質量%)を準備した。酸化鉛を主成分とする原料鉛粉1.0kgに対して、上記(a)のビスフェノールスルホン酸ポリマを0.2質量%配合して混合した。この混合物に、原料鉛粉1.0kgに対して、重油を原料としたカーボンブラック粉末(比表面積260m
2/g)1.0質量%、硫酸バリウム粉末2.0質量%、カットファイバ0.1質量%を添加し、混練機にて混合して上記の各種配合材を原料鉛粉中に分散させた。このようにして得られた混合物に水と希硫酸(比重1.26、20℃換算)を滴下して混練し、水分含有量12質量%、硫酸鉛含有量13質量%のペースト状負極活物質を調製した。このペースト状負極活物質を鉛−カルシウム系合金の格子体からなる集電体に充填した後、温度50℃、湿度95%の雰囲気で18時間の間熟成させた。その後、集電体に充填した負極活物質を乾燥させて、未化成の負極板を作製した。負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物及び炭素質導電材を異ならせて、以下に示す負極板A,B,Cを作成した。
【0088】
負極板A:
負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物として、前記[化2]に示したリグニンスルホン酸ナトリウムを主成分とするものを選択し、炭素質導電材として、重油を原料としたカーボンブラック(比表面積260m
2/g)を用い、その添加量を活物質100質量部に対し0.2質量部とした。上記有機化合物とカーボンブラックとを添加した負極活物質をエキスパンド式集電体に充填して負極板Aを作成した。
【0089】
負極板B:
負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物として[化1]に示したビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物(分子量1.7万〜2.0万,化合物中のイオウ含有量は6〜11質量%)を主成分とするものを選択し、カーボンブラックの添加量を活物質100質量部に対し質0.2量部とした。上記有機化合物とカーボンブラックとを添加した負極活物質をエキスパンド式集電体に充填して負極板Bを作成した。
【0090】
負極板C:
負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物として、[化1]に示したビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物(分子量1.7万〜2.0万,化合物中のイオウ含有量は6〜11質量%)を主成分とするものを選択し、炭素質導電材として、鱗片状黒鉛(粒径180μm)を用い、その添加量を活物質100質量部に対し2質量部とした。上記有機化合物とカーボンブラックとを添加した負極活物質をエキスパンド式集電体に充填して負極板Cを作成した。
【0091】
次に上記負極板A、B及びCと、正極板と、2種類のセパレータとを組み合わせて、一例として、JIS規格で規定されているB19サイズの鉛蓄電池を組み立てた。電池の組み立ては、正極板と負極板とをセパレータを介して交互に積層し、単位極板群体積当たりの正極板総表面積が2.1cm
2/cm
3(正極板3枚、負極板3枚)から6.2cm
2/cm
3(正極板9枚、負極板9枚)となるように規定した各種極板群を構成し、キャストオンストラップ(COS)方式で同極の極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。この鉛蓄電池の極板群体積は、325[cm
3]であった。本実施例では、同じ大きさの正極板及び負極板を用いて極板群を構成したので、負極集電体の耳部と脚部とを除いた部分の片面の面積(幅10.1[cm]、高さ11.1[cm]の積)に、セル室内に収容された状態での極板群の厚み寸法(極板の積層方向に測った寸法)2.9[cm]を乗じる演算を行うことにより、極板群体積を求めた。
【0092】
ここで、セパレータについては、ポリエチレン製セパレータを単独で用いたセパレータをセパレータPとし、ポリエチレン製セパレータの負極板表面と相対する面にガラス繊維からなる不織布を配した構造のセパレータをセパレータQとした。
【0093】
なお本実施例では、セパレータQを構成する不織布としてガラス繊維の不織布を用いたが、ガラス繊維の不織布に代えて、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系材料、パルプ等の材料の繊維からなる不織布を用いてもよく、これら複数の材料の繊維の混合物からなる不織布を用いてもよい。セパレータとして用いる不織布としては、上記各種材料から選ばれた複数の繊維の混合物からなる不織布が特に好ましいが、これらの繊維の混合物に更にシリカを漉き込んだ構成を有する不織布は更に好ましい。
【0094】
また本実施例では、ポリエチレン製のセパレータとガラス繊維からなる不織布とを重ねることによりセパレータQを構成したが、ガラス繊維等からなる不織布だけによりセパレータQを構成してもよい。即ち、セパレータQは、負極板に相対する面が、ガラス、ポリオレフィン、パルプ等の材料の繊維からなる不織布により構成されているものであればよい。
【0095】
次に電槽化成を行った。比重が1.24の希硫酸を電槽内に注入し、活物質量に基づく理論容量の200%の電気量を通電して充電し、鉛蓄電池を完成した。正極活物質は、化成時の温度、電流密度、電解液比重及びペーストに含まれる硫酸鉛量によって、活物質の特性と量が変化する。正極活物質比表面積は、化成温度を高くすると減少し、電解液比重を高くすると増加させることができる。そこで、ペーストに含まれる硫酸鉛量により活物質量を調整すると同時に電槽化成時の温度、電解液比重を調整し、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積が異なる各種鉛蓄電池を準備した。単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積の調整は、前記のペーストに含まれる硫酸鉛量と化成条件以外にも、例えば、鉛粉出発原料、鉛粉練合条件、極板熟成条件等を適宜選択することにより実現できる。単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を調整する手段が異なっても、結果として、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積が本発明の範囲内であれば、本発明所定の効果を得ることができる。
【0096】
単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積は、活物質特性測定用の電池を作製し、解体して正極板を取り出し、前述の方法により測定した比表面積の測定値と活物質重量の積を求めて、これを極板群体積にて除する方法により測定した。
【0097】
[化1]に示すビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物が負極活物質中に存在していることを、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMR)分光法により確認した。日本電子株式会社製のNMR分光装置(型式:ECA−500FT−NMR)を用い、以下のとおり分析を実施した。
【0098】
まず、化成終了後の実施例1の鉛蓄電池を解体し、負極板を取り出した。取り出した負極板を水洗して硫酸分を洗い流した。化成後の負極活物質は多孔質の金属鉛である。負極活物質の酸化を防ぐために、負極板の乾燥を窒素などの不活性ガス中で行なった。乾燥させた負極板から負極活物質を分離して粉砕し、その粉砕物を10%水酸化ナトリウム溶液に投入して、生成する沈殿物(水酸化鉛)を除いた抽出液を前記装置で分析・測定した。測定条件は表1のとおりである。
【0099】
【表1】
【0100】
図2に、NMR分光法により測定したスペクトルを示す。横軸は化学シフト(ppm)を示し、縦軸はピーク強度を示している。
図2に二重丸を付して示したように、化学シフト6.7ppmと7.5ppmに、[化1]に示すビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物のp−アミノベンゼンスルホン酸基に由来するピークが認められた。さらに、
図2に三角を付して示したように、化学シフト0.5ppm〜2.5ppmの領域に[化1]に示すビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物のビスフェノールA骨格に由来するピークが認められた。
【0101】
上記の結果から、負極活物質中に[化1]に示すビスフェノールA・アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩のホルムアルデヒド縮合物が存在することを確認できた。
【0102】
作製した鉛蓄電池について、充電受け入れ性の測定と、サイクル特性の測定とを行った。まず、充電受入れ性の測定は次のようにして行なった。組立て初期の鉛蓄電池を、25℃の恒温槽の中でSOC(充電状態)を満充電状態の90%に調整し、14Vの充電電圧の印加(但し、14Vに達する前の電流を100Aに制限)開始時から5秒目の充電電流値(5秒目充電電流値)を計測した。5秒目充電電流値が高い場合ほど初期の充電受入れ性が高いことを意味する。また、40℃の恒温槽の中で、充電電圧14.8V(但し、14.8Vに達する前の電流を25Aに制限),充電時間10分の充電と、25A定電流放電,放電時間4分の放電を1サイクルとしたサイクル試験を5000サイクル繰り返した後、上記の初期と同様の条件で充電受け入れ性の測定を行った。すなわち、5000サイクル後の5秒目充電電流値が高いほど初期の良好な充電受け入れ性をその後も維持していることを意味する。
【0103】
サイクル特性の測定(寿命試験)は次のように行なった。電池温度が25℃になるように雰囲気温度を調整し、45A−59秒間、300A−1秒間の定電流放電を行った後、100A−14V−60秒間の定電流・定電圧充電を1サイクルとする寿命試験を行なった。この試験はISS車での鉛蓄電池の使われ方を模擬したサイクル試験である。この寿命試験では、放電量に対して充電量が少ないため、充電が完全に行なわれないと徐々に充電不足になり、その結果、放電電流を300Aとして1秒間放電した時の1秒目電圧が徐々に低下する。即ち、定電流・定電圧充電時に負極が分極して早期に定電圧充電に切り替わると、充電電流が減衰して充電不足になる。この寿命試験では、300A放電時の1秒目電圧が7.2Vを下回ったときを、その電池の寿命と判定した。
【0104】
充放電サイクル中も高い充電受け入れ性を維持しなければ、充電不足の状態が継続し、サイクル特性は悪くなる。上記の5秒目充電電流値の充放電サイクルに伴う変化とサイクル特性を評価することで、充放電サイクル中の充電受け入れ性の良否を適正に評価することになる。
【0105】
上記の試験により、定電圧充電時の充電受入れ性と、PSOC下で使用されたときの耐久性とを評価できる。
【0106】
作製した各種の鉛蓄電池について行った5秒目充電電流の測定結果と、サイクル特性の測定結果とを表2、3に示した。表2と表3の違いは、セパレータが異なる点のみである。表2において、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.0m
2/cm
3とし、負極板Aを組み合わせた場合を従来例とし、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を16.0m
2/cm
3とした場合を比較例とした。更に単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.0又は16.0m
2/cm
3とし、負極板B又はCを組み合わせた場合を参考例とした。単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.0又は16.0m
2/cm
3とし、セパレータQを組み合わせた場合も参考例とした。各表に示された5秒目充電電流及びサイクル特性は、表2の従来例(No.1)を100(5秒目充電電流にあっては、初期を100)として評価したものである。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
上記の表2,3の結果は、単位極板群体積当たりの正極板総表面積を4.1m
2/cm
3(正極6枚負極6枚)に固定し、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.0から16.0m
2/cm
3まで変化させた8種類の正極板に、3種類の負極板A、B、Cと2種類のセパレータP、Qとを組み合わせた場合の5秒目充電電流の測定結果と、サイクル特性の測定結果を示したものである。なお、これらの例では、セパレータの厚み、すなわち隣り合う極板相互間の距離は標準的な0.8mmとした。セパレータQを使用する場合も、ガラスマットを併用する分だけ極板間距離が大きくなるわけではなない。セパレータに形成されているリブが変形する等して、ガラスマットを併用したことによる厚み増が吸収される。
【0110】
表2(No.1〜8)から、負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物として[化2]に示した、従来から用いられているリグニンスルホン酸ナトリウムを主成分とするものを用いても、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.5から15.6m
2/cm
3の範囲に設定すると、若干ではあるが、従来例よりも5秒目充電電流(充電受け入れ性)及びサイクル特性(PSOC下での寿命性能)を両立して改善できることが分かる。
【0111】
更に表2(No.9〜16)から、負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物として[化1]の縮合物を主成分としたものを用いると、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積が3.0m
2/cm
3である場合でも、従来例より、5秒目充電電流(充電受け入れ性)及びサイクル特性(PSOC下での寿命性能)を大きく向上させることができることが分る。また単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.5から15.6m
2/cm
3の範囲に設定することにより、同単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.0m
2/cm
3とした場合よりも明らかに5秒目充電電流及びサイクル特性を向上させることができる。5秒目充電電流は、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を増大させるにつれて上昇し続けるが、サイクル特性は、中間でピークを迎えて減少に転じる。特に、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積が16.0m
2/cm
3となると、15.6m
2/cm
3の場合よりサイクル特性が急激に低下する傾向にある。これは、充放電の繰り返しにより活物質の構造が崩壊する、泥状化と呼ばれる現象が起こったためである。このことから、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積は3.5から15.6m
2/cm
3の範囲にあることが最も好ましい。
【0112】
また、表2のNo.9〜16とNo.17〜24を比較すると、負極に添加する炭素質導電材の影響を見ることが出来る。すなわち、負極活物質の粗大化を抑制する有機化合物として[化1]の縮合物を主成分としたものを用いた条件において、No.9〜16はカーボンブラックを0.2質量部添加した結果を示し、No.17〜24は鱗片状黒鉛を2質量部添加した結果を示している。
【0113】
鱗片状黒鉛は、添加量を増やしてもペースト物性の変化(硬化)がないという特徴を持っているため増量が容易である。本実施例では鱗片状黒鉛を2質量部添加した場合を示している。
【0114】
鱗片状黒鉛を活物質100質量部に対し2質量部添加した場合、初期の5秒目充電電流には大差が無いが、5000サイクル後の5秒目充電電流とサイクル特性は、カーボンブラックを活物質100質量部に対し0.2質量部添加した場合よりも更に大きく改善できることが示されている。
この違いは、炭素質導電材の抵抗値がカーボンブラックよりも鱗片状黒鉛の方が低く、また鱗片状黒鉛の方が添加量を多くすることが出来るため、充電がより入りやすくなった結果と考えられる。
【0115】
また、表2と表3を比較すると、セパレータ種別の影響を見ることが出来る。すなわち、負極板A、B、Cのそれぞれにおいて、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積を3.0から16.0m
2/cm
3まで変化させた場合のセパレータ種別の影響を比較する。No.1〜8とNo.25〜32、No.9〜16とNo.33〜40、No.17〜24とNo.41〜48のそれぞれを比較すると、セパレータPをQに変更することにより、初期の5秒目充電電流は若干減少するが、5000サイクル後の充電電流、サイクル特性は向上する傾向が共通して認められた。これは、上述したように、負極板の表面に不織布からなる高多孔度のセパレータを対向させておくと、硫酸イオンの下降を抑制して、成層化が起こるのを防ぐことができるためである。
【0116】
【表4】
【0117】
上記の表4の結果は、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積が6.0及び12.5m
2/cm
3である場合に、単位極板群体積当たりの正極板総表面積を2.1から6.2cm
2/cm
3まで変化させた場合の5秒目充電電流の測定と、サイクル特性の測定とを実施した。セパレータ種別はQ、負極板種別はCとした。
【0118】
表4の結果から、5秒目充電電流とサイクル特性との間には、単位極板群体積当たりの正極板総表面積を大きくすると、すなわち極板枚数を増やすと、5秒目充電電流は増加するが、サイクル特性は低下するという、相反する関係にあることが分かる。極板群は一定体積の電槽内に収納するという制限があり、極板を薄くして一定体積の電槽内に収納する極板枚数を増やすことにも極板の強度の面から限界があるため、単位極板群体積当たりの正極板総表面積を、6.2cm
2/cm
3にすることは通常困難である。逆に、単位極板群体積当たりの正極板総表面積を2.1cm
2/cm
3とすることは、極板を厚くし極板枚数を減らすことになる。この場合は、集電体の製造加工や活物質ペーストの充填性など製造面で、生産が通常困難となるという問題がある。そのため、単位極板群体積当たりの正極板総表面積は、2.8から5.5cm
2/cm
3の範囲にあることが好ましい。
【0119】
【表5】
【0120】
表5の結果は、正負両極板の枚数が同じである実施例(表3)のNo.43を基準にして、正極板の枚数及び負極板の枚数のいずれか一方を他方より多い構成とした場合について、5秒目充電電流の測定結果と、サイクル特性の測定結果とを示したものである。本実施例(NO.61,62)では、極板枚数の合計が1枚減る分の厚みを、正負両極板の厚みに均等に割り振って調節した。その結果、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積と単位極板群体積当たりの正極板総表面積は表5のように変化した。
【0121】
この結果から、正極板の枚数が負極板の枚数より多い方が5秒目充電電流及びサイクル特性が向上することが分かる。
【0122】
次に、表2のNo.19ならびに表3のNo.43のタイプの極板群構成の鉛蓄電池において、鱗片状黒鉛の平均一次粒子径を変えて、その平均一次粒子径が電池特性に及ぼす影響を確認した。
鱗片状黒鉛の平均一次粒子径を、80μm,100μm,120μm,140μm,180μm,220μmと変化させ、そのほかは表2のNo.19ならびに表3のNo.43のそれぞれのタイプの極板群構成と同様とした。5秒目充電電流とサイクル特性を評価した結果を、表6、7に示す。各表に示された5秒目充電電流及びサイクル特性は、表2の従来例を100(5秒目充電電流にあっては、初期を100)として評価したものである。
【0123】
【表6】
【0124】
【表7】
【0125】
表6,7の結果から、セパレータの種別によらず、鱗片状黒鉛が大きいほど初期の5秒目充電電流が大きくなり、サイクル特性も向上することがわかる。この傾向は鱗片状黒鉛の平均一次粒子径が100μm以上の範囲で顕著である。これは鱗片状黒鉛の平均一次粒子径が小さいとその接点で電気抵抗が増すためで、平均一次粒子径が大きいほど電気抵抗が低くなり、充電特性とサイクル寿命が向上する。また、この場合も、上述の結果と同様に、セパレータとして負極板に対向する部分に不織布を用いたセパレータQを使用する(表7)と、ポリエチレン製のセパレータPを用いた場合(表6)よりもサイクル特性を大きく向上させることができることが分る。
【0126】
これらの結果から鱗片状黒鉛の平均一次粒子径は、100μm以上の範囲が好ましく、最適は180μmである。これを超える平均一次粒子径は、天然物であるため製造収率が悪く、入手も困難となってくる。
【0127】
従来の鉛蓄電池では、鉛蓄電池の充電受入れ性を改善するに当って、専ら負極板の充電受入れ性及び寿命性能を改善することにより力が注がれ、正極板の性能を改善することにより鉛蓄電池の充電受入れ性を改善するとの考え方はとられていなかった。そのため、従来は負極の充電受入れ性により鉛蓄電池全体の充電受入れ性が決まっており、鉛蓄電池の充電受入れ性を向上させる上で限界があった。本発明では、この限界を打破するために正極活物質の性能に着目し、正極活物質の性能を改善することにより、電池全体としての充電受入れ性を従来の鉛蓄電池よりも更に改善することを可能にした。
【0128】
従来技術では、負極板の特性を改良することによってのみで充電受入れ性の向上を図っていたが、本発明では、単位極板群体積当たりの正極活物質総表面積の値を大きくすることにより、正極板の充電受入れ性を改良し、これにより、電池全体の充電受け入れ性を従来よりも更に改善することを可能にして、PSOC下でのさらなる高率放電を可能にした。
【0129】
また本発明によれば、鉛蓄電池の充電受け入れ性を改善できることにより、充電不足の状態で充放電が繰り返されるのを防ぐことができるため、充電不足の状態で充放電が繰り返されることにより放電生成物である硫酸鉛が粗大化するのを防ぐことができ、PSOC下での鉛蓄電池の寿命性能を改善することができる。これは、PSOC下で使用される鉛蓄電池にとって大きな前進であり、マイクロハイブリッド車等に搭載される鉛蓄電池の性能の向上に大きく寄与するものである。