(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、開閉自在な2つのケース片によってゲル状樹脂から成るコア片を支持した構成の精子採取器において、高価なゲル状樹脂の使用量を大幅に減少させてコストダウンを図ることができる精子採取器の製造装置、及び製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る精子採取器の製造装置は、
閉止したときに内部に筒状中空部を形成するように内側に凹所を有した2つのケース片と、該各ケース片内面に配置された弾性多孔質部材と、前記各ケース片内面との間に該各弾性多孔質部材を介在させた状態で該各弾性多孔質部材の内面に沿って配置され
、且つ
前記各弾性多孔質部材を前記各ケース片内面との間で気密封止した状態で前記各ケース片に夫々固定されたゲル状樹脂から成るコア片と、を有した精子採取器を製造する装置であって、
前記各弾性多孔質部材を介して前記各ケース片を支持する凸面状の成形面を備えた第1の金型と、前記第1の金型上に閉型したときに該第1の金型
の成形面との間に形成される成形空間内に前記各ケース片及び前記各弾性多孔質部材を収容する
凹面状の成形面を備えた第2の金型と、前記各ケース片及び前記各弾性多孔質部材を前記成形空間内に収容した状態で、
前記成形空間内に位置する先端から溶融状態の前記ゲル状樹脂を前記成形空間内に注入し、且つ前記第1の金型に貫通形成された樹脂流路と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明は、前記樹脂流路の先端から前記成形空間内に吐出された前記溶融ゲル状樹脂は、前記弾性多孔質部材を押圧して圧縮変形させつつ前記成形空間内に展開してゆくことを特徴とする。
また、係る本発明は、前記樹脂流路の先端から前記成形空間内に吐出された前記溶融ゲル状樹脂は、前記弾性多孔質部材を圧縮変形させることなく前記成形空間内に展開してゆくことを特徴とする。
コア片とケース片との間に封じ込められた弾性多孔質部材はエアクッションとして機能し、挿入空所内を往復動するペニスに対して適度な加圧力と刺激を与えて精子採取効果を高めることができる。また、弾性多孔質部材は、コア片を構成する樹脂材料に比して軽量であるため、精子採取器を軽量化して操作性、取扱性を高めることができ、またコア片を構成する樹脂に比して低廉であるためコストダウンを図ることができる。
この製造装置によれば、このような構成を備えた精子採取器を生産性よく製造することが可能となる。
【0006】
請求項
2の発明に係る精子採取器の製造方法は、
請求項1に係る精子採取器の製造装置を用いた精子採取器の製造方法であって、前記第1の金型の各成形面に対して前記各弾性多孔質部材を介在させた状態で前記各ケース片を配置する工程と、前記各弾性多孔質部材、及び前記各ケース片が前記成形空間内に収容されるように、前記第1の金型に対して前記第2の金型を閉型する工程と、前記樹脂流路から前記成形空間内に前記溶融ゲル状樹脂を注入する工程と、前記成形空間内に充填された前記溶融ゲル状樹脂が固化した際に、前記
各金型を開放して前記精子採取器を取り出す工程と、を備えたことを特徴とする。
請求項
3の発明は、
一方の前記ケース片には抜気孔が設けられており、前記
一方のケース片を前記成形空間内に
配置する前に該抜気孔を閉止しておくことを特徴とする。
【0007】
請求項
4の発明に係る精子採取器の製造装置は、
平坦面、及び該平坦面の両端縁から張り出した曲面状の庇部を有すると共に内面に凹所を夫々有した2つのケース片と
、少なくとも一方の前記ケース片の前記平坦面に設けられた抜気孔と、該各ケース片内面に
夫々配置された弾性多孔質部材と、前記各ケース片内面との間に該各弾性多孔質部材を介在させた状態で該各弾性多孔質部材の内面に沿って配置され
、且つ前記各弾性多孔質部材を前記各ケース片内面との間で気密封止した状態で前記各ケース片に固定され、且つ外周部が互いに連接一体化されたゲル状樹脂から成るコア片と、該各コア片間を連接する
前記ゲル状樹脂部分に開口した挿入口と、を有した精子採取器を製造する装置であって、
一方の前記弾性多孔質部材を
内面に配置した一方の前記ケース片
の外面を
内面で支持する第1の金型と、
他方の前記弾性多孔質部材を
内面に配置した他方の前記ケース片の外面を
内面により支持すると共に、該内面を前記第1の金型の内面と対向配置した状態で該第1の金型に組み付けられる第2の金型と、前記第1の金型と前記第2の金型との間に介挿されて前記各弾性多孔質部材の内面と接触し
、且つ前記各ケース片の平坦面と対向する成形面を両面に備えた
略板状の入れ子本体を有した入れ子と、を備え、前記入れ子内部には、溶融状態の前記ゲル状樹脂を前記各弾性多孔質部材と前記入れ子の成形面との間に注入する樹脂流路を備え、
前記各成形面には前記樹脂流路と連通する吐出口が開口しており、前記樹脂流路を経て流入してきた溶融樹脂は前記吐出口から前記両ケース片間の成形空間内に充填された後で、前記弾性多孔質部材と前記入れ子との界面に進入し、最後には前記成形空間全体に充填されることを特徴とする。
請求項
5の発明に係る精子採取器の製造方法は、
請求項4に記載の精子採取器の製造装置を用いた精子採取器の製造方法であって、前記各弾性多孔質部材の内面を夫々
前記入れ子の各成形面と対面させた状態で
前記各弾性多孔質部材の外面に前記各ケース片を
配置してから、前記第1の金型と前記第2の金型とを閉型する工程と、
前記溶融ゲル状樹脂を前記樹脂流路から前記吐出口を経て注入することにより前記弾性多孔質部材と前記入れ子との界面を含む前記両ケース片間の成形空間内に充填させる工程と、前記成形空間内に充填された前記溶融ゲル状樹脂が固化した際に、前記
各金型を開放して前記精子採取器を取り出す工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項
6の発明は、
少なくとも一方の前記ケース片には抜気孔が設けられており、
該一方のケース片を何れか一方の前記金型に配置する前に、前記抜気孔を閉止しておくことを特徴とする。
請求項
7の発明に係る精子採取器の製造装置は、軸方向両端部に開口部を有した中空筒状のケース
片と、該ケース
片内面に沿って配置された中空筒状の弾性多孔質部材と、前記ケース
片内面との間に該弾性多孔質部材を介在させた状態で該弾性多孔質部材の内面に沿って配置され、且つ前記ケース
片に固定されたゲル状樹脂から成る中空のコア部材と、を有した精子採取
器の製造装置であって、前記ケース
片の軸方向一端開口部に固定されて該一端開口部を閉止する端部閉止片、該端部閉止片中央部から前記弾性多孔質部材の中空部内に延びる中空筒状の入れ子、
及び前記端部閉止片と前記入れ子を貫通する樹脂流路を有した第1の金型と、内面に前記弾性多孔質部材を配置した前記ケース
片の軸方向他端開口部に固定されて該他端開口部を閉止する
と共に、該他端開口部の閉止時に前記入れ子の先端部との間に前記樹脂流路と連通した空間を形成する第2の金型と、を備え、
前記樹脂流路内に流入した溶融状態のゲル状樹脂は前記入れ子先端部の穴から前記空間を経て前記各弾性多孔質部材と前記入れ子の外面との間に注入されることを特徴とする。
【0009】
請求項
8の精子採取器の製造装置は、軸方向一端部に開口部を有した中空筒状のケース
片と、該ケース
片内面に沿って配置された中空筒状の弾性多孔質部材と、前記ケース
片内面との間に該弾性多孔質部材を介在させた状態で該弾性多孔質部材の内面に沿って配置され且つ前記ケース
片に固定されたゲル状樹脂から成る中空のコア部材と、を有した精子採取器を製造する装置であって、前記ケース
片の軸方向一端開口部に固定されて該一端開口部を閉止する端部閉止片、及び、該端部閉止片中央部から前記弾性多孔質部材の中空部内に延びる中空筒状の入れ子を有した第1の金型
を備え、前記入れ子の先端部と前記ケース
片の軸方向他端内面との間には空間が形成されており、前記第1の金型はその内部に
溶融状態の前記ゲル状樹脂を前記各弾性多孔質部材と前記入れ子の外面との間に注入する樹脂流路を備えていることを特徴とする。
請求項
9の発明に係る精子採取器の製造方法は、
請求項7又は8に記載の精子採取器の製造装置を用いた精子採取器の製造方法であって、前記弾性多孔質部材の中空内部に前記入れ子を嵌合した状態で前記端部閉止片に
前記ケース片の一端開口部を固定する工程と、前記成形空間内に溶融状態の前記ゲル状樹脂を注入する際に前記溶融ゲル状樹脂を前記入れ子との間に圧入する工程と、前記成形空間内に充填された前記溶融ゲル状樹脂が固化した際に、前記金型を開放して前記精子採取器を取り出す工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コア片とケース片との間に封じ込められた弾性多孔質部材はエアクッションとして機能し、また、抜気孔からの空気の出し入れにより、内部のエアー量を調整し、ペニスに与える圧力(エア圧)を調整し、適正な圧力を得ることができる。つまり、容器内でのゲル状樹脂部分の体積を可変することができる。
また、一度、抜気孔から排出された空気は抜気孔を開いておけば、ウレタンの弾性により、(自動的に)容器内に戻ってくる。また、任意の位置で抜気孔をふさぐことで、その状態で内部の空間体積が固定される。
この結果、挿入空所内を往復動するペニスに対して適度な加圧力と刺激を与えて精子採取効果を高めることができる。また、弾性多孔質部材は、コア片を構成するゲル状樹脂に比して軽量であるため、精子採取器を軽量化して操作性、取扱性を高めることができ、またコア片を構成するゲル状樹脂に比して低廉であるためコストダウンを図ることができる。
本発明に係る精子採取器は、確かに医学的な目的以外にも、個人的な性欲を解消するための手段として使用されることはあるが、この様な用途に供されることのある精子採取器だからといって公序良俗を乱す商品であると断定するのは、早計であり、偏見である。この種の商品が性犯罪防止、性感染症の拡散防止等に如何に役立つか、という広い視野に立って特許権を付与する価値があるか否かをご判断頂きたい。
【0011】
因みに以下の事例は事実に基づいており、これらの社会的要請を満たす手段として精子採取器が役立つことは疑いのない事実である。なお、当然のことながら、本発明に係る精子採取器自体は未公開、未公知の状態にある。
まず、日本性機能学会雑誌 第24巻 第3号、2009年12月に掲載された、獨協医科大学越谷病院泌尿器科の医師による論文「射精障害患者に対するMasturbatorを用いたリハビリテーション」中において、本出願人によって製造、販売されている精子採取器が適正なマスターベーションを実施する上で有効である旨が記載されている。
次に、本出願人からの要請により、タイ赤十字エイズ研究センター(The Thai Red Cross AIDS Research Center: http://www.redcross.or.th/english/aboutus/aids.php4) が、本出願人の開発に係る各種精子採取器を使用した男性の性行動調査を行うこととなった。本調査内容は、精子採取器を使用することで、男性(HIV感染者、非感染者、ゲイ、バイセクシュアル、ノーマル含む)の性欲の高まりを鎮めたり、性的リスク行動を抑制したりする効果が認められるか否かを調査するものである。現在同センターで調査の準備を進めている。
【0012】
また、特別養護老人ホームでは、高齢者の性的欲求の解消のための対策が求められている。即ち、高齢者のQOL(クオリティオブライフ)にとって「性」の部分の重要性は昨今指摘されている通りであり、こういった施設で起こるトラブルの8割が男女問題、言うなれば色恋事と密接に絡んでいると言われる。本出願人が過去に製造、販売してきた精子採取器は、高齢男性が「性」を楽しむ補助となっており「生きがい」や「生きる喜び・愉しみ」を提供することを通じ、QOLの向上に貢献していることが明らかとなっている。
また、これまで障害者の「性」に関してはなぜか長らく語られてこなかった。日本社会は人間の根源的な欲求の一つであるはずの「性欲」を、障害者には無いものとし、蓋をし続けてきた。本出願人は、「誰もが性を楽しめる社会づくり」という理念実現の一環として、障害者の性に対してもアプローチを続けている。障害児を持つ親への商品提供、自閉症児へのマスターベーション指導に関する中等養護学校教諭からの相談への対応等を行っている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示した実施形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は夫々本発明の一実施形態に係る精子採取器の製造装置によって製造される精子採取器の組付け状態を示す斜視図であり、
図2(a)及び(b)は開放した開閉ユニットとホルダを示す斜視図、及び閉止した開閉ユニットとホルダを示す斜視図であり、
図3は開閉ユニットの構成を示す分解斜視図であり、
図4(a)及び(b)は精子採取器の横断面図、及び開放した精子採取器の横断面図である。
精子採取器(射精促進装置)1は、開閉ユニット2から構成されており、開閉ユニット2はホルダ30を装着するによって閉止状態に保持できるように構成されている。
開閉ユニット2は、側端縁に設けたヒンジ部3を中心として開閉自在に支持された2つのケース片4と、各ケース片4の内面に夫々配置された弾性多孔質部材10と、各ケース片4の内面との間で各弾性多孔質部材10を気密封止するように各弾性多孔質部材の内面に沿って配置され且つ各ケース片に夫々固定された非通気性のコア片20と、各ケース片4に設けた貫通穴(抜気孔41)内に配置されて弾性多孔質部材10中の空気を外気と連通させるための抜気機構40と、を有する。
2つのケース片4は、ケース(容器)を構成している。ヒンジ部3は例えば可撓性を有した樹脂シートから成り、この樹脂シートを両ケース片の端縁に接着固定することによりヒンジとして利用する。
ヒンジ部3の構成は任意に選定可能であり、両ケース片の端縁間を開閉自在に連結できる手段であればどのようなものであってもよい。
【0015】
各コア片20は、各ケース片4の内側面に弾性多孔質部材10を介して夫々支持されて各ケース片と共に開閉し、
図1(a)に示したケース片の閉止状態では各コア片間でペニス挿入用の挿入空所21を形成する。ケース片が閉止状態にある時の2つのコア片はコア部材20Aを構成している。
ホルダ30は、閉止した状態にある開閉ユニット2を
図1のように使用可能な状態にて夫々着脱自在に保持する。
各ケース片4は比較的硬質の樹脂製薄板から成り、
図1のように閉止したときに内部に
図4に示した筒状中空部5を形成するように各ケース片4の内側には凹所5aが形成されている。各凹所5a内には弾性多孔質部材10を間に介在させてコア片20が整合状態で嵌合して収納され、且つ弾性多孔質部材と接していないコア片の外周縁を凹所5a内壁に固定される。ケース片は閉じたときに筒状中空部5を形成するので、筒状中空部内に軟質材料から成るコア片対(コア部材)を収容して形状を保ち、使用時の変形、型くずれ、挫屈を防止することができる。
弾性多孔質部材10は、ウレタンフォーム(スポンジ)の如き、内部に互いに連通する多数の微細な孔を有した軟質材料から構成されており、加圧されていない状態では自らの弾性により膨らんだ状態を維持することにより孔内に空気を保持し、加圧により圧縮された状態では孔内の空気を排出する。弾性多孔質部材10は、
図4の断面図に示すように外面を各ケース片4の内壁に密着させた状態で固定され、内面はコア片20と密着一体化している。
【0016】
各ケース片4は硬質樹脂板からなる略半円筒体であり、各弾性多孔質部材10は、外面を各ケース片の凹所5a内壁に固定されると共に、弾性多孔質部材10の内面の幅方向中央面が幅方向両端部よりも膨出した構成を備えている。弾性多孔質部材10の幅方向中央面が内側へ向けて膨出している結果として、この膨出部位が他の部位よりも加圧により圧縮変形し易く、且つ圧縮解除によって膨出し易くなり、挿入空所21にペニスを挿入した時にコア片対(コア部材)から加わる圧力、圧力解除による変形が容易になる。
本例に係るコア片20は、弾性多孔質部材10の幅方向中央面(膨出部)に対応する部位の肉厚が、弾性多孔質部材の幅方向両端部に対応する部位の肉厚よりも薄く設定されている。このため、弾性多孔質部材10が膨張していることによって発生するコア片20の幅方向中央部を内径方向に加圧する力をコア片側に忠実に反映させてコア片の薄肉部を内径側に変形させてペニスに対する加圧力を高めて、射精促進効果を高めることができる。
なお、弾性多孔質部材内面の幅方向中央部が幅方向両端部よりも膨出している構成は必須ではなく、弾性多孔質部材内面は非膨出状(平坦状、凹状を含む)であってもよい。
【0017】
ホルダ30は、
図2等に示すように、軸方向一端部に設けられた底面31aが平坦な基部31と、基部31の一箇所から軸方向に延びて閉止状態にある開閉ユニット2の着脱をガイドすると共に開閉ユニットを脱落不能に保持する保持部35と、を備えている。
ヒンジ部3とは反対側の各ケース片4の端縁7には夫々アリ溝部7bを有した突条7aが形成されており、
図1(b)、
図4(a)に示すようにケース片を閉止した時に各突条7a同士が近接して断面形状が略台形条の突条7Aを形成する。
ホルダの保持部35の内側面にはこの突起7Aを受け入れて軸方向移動をガイドするガイド溝36が形成されている。突起7Aをガイド溝36が分離しないように押さえつつガイドするため、ケース片4を分離させずにホルダ30によって保持することができる。
【0018】
次に、ケース片4の内面に弾性多孔質部材10を間に挟んでコア片20を一体化した構造は、ケース片内面に弾性多孔質部材10を位置決めした状態で、このケース片を金型の成型空所(キャビティ)内に配置し、コア片を構成するゲル状樹脂材料を成型空所内に注入する射出成形を行うことにより製造することができる。
コア片20は少なくともその一部をゲル状樹脂等の軟質樹脂から構成し、ケース片4とコア片20との接触面は射出成形時に一体的に固定された状態となる。本実施形態のコア片20は、
図4の断面図に示すように弾性多孔質部材10の内面全体に被覆された軟質樹脂層23から成り、コア片20の内面には挿入空所21を形成する凹所24を形成する。凹所24の軸方向一端部には挿入口21aとなる凹部26を形成する。なお、挿入口21aと対応するケース片4の端面には挿入用開口部4aが形成される。
コア片20を構成する軟質樹脂層23は、エラストマーのような弾性を有したゲル状の樹脂、或いはゲル状のゴム等から構成する。コア片20は従来のコア部材とは異なって袋体状ではなく、袋体を軸方向へ二分割した如き形状であるために、射出成形に使用する金型をシンプル化することができる。従って、凹所24の内壁には任意の配置、形状にて突起、襞等を自由自在に形成できる。なお、2つのコア片20はコア部材20Aを構成している。
このような材質から成るコア片20とケース片4との間に封じ込められた弾性多孔質部材10はエアクッションとして機能し、挿入空所21内を往復動するペニスに対して適度な加圧力と刺激を与えて精子採取効果を高めることができる。
【0019】
また、弾性多孔質部材10は、コア片を構成するゲル状樹脂材料に比して軽量であるため、精子採取器を軽量化して操作性、取扱性を高めることができ、またゲル状樹脂に比して低廉であるためゲル状樹脂の量を減らすことによりコストダウンを図ることができる。
抜気機構40は、各ケース片4に形成された抜気孔41に対して組み付けられたボタン部材42からなり、常時においては図示しないバネによって外方へ付勢されている。ボタン部材42は、外方へ位置している時には抜気孔41を閉止する一方で、バネに抗して指によって内方へ押し込まれたときに抜気孔41を開放してケース片とコア片との間の空所Sに配置された弾性多孔質部材を外気と連通させるように構成されている。
要するに、ボタン部材42を押し込んでいる時は空所S内の空気が抜気孔から外部へ放出されるため、挿入空所21へペニスを挿入するとコア部材の挿入空所21が拡開し、ペニスを退避させると各コア片と弾性多孔質部材の原形復帰力によって挿入空所が狭まる。従って、ペニスと挿入空所内壁とが常に密着した状態を維持し、この密着効果により射精を促進することができる。
【0020】
一方、ペニスを挿入空所内に位置させた状態でボタン部材42を押し込む力を解除すると、ボタン部材がバネによって外方へ変位して抜気孔41を閉止して空所S内の空気が外部へ放出されなくなるため、空所Sがペニスによって押し広げられたまま(弾性多孔質部材が圧縮されたまま)の状態となるため、ペニスは挿入空所内でホールドされる。ペニスの形状に押し広げられた空間が固定される。このため、ペニスと挿入空所内壁との密着力が高まり、更なる吸着効果が発生し、使用感が変わる。この状態でペニスを空所Sから引き抜く方向へ退避させると、ペニスより奥側の空間は固定されているので、ペニス先端部の外面に負圧が生じ、吸着感を得ることができる。
このような密着感、使用感の変化は、ボタン押圧(抜気孔の開放)、押圧解除(抜気孔の閉止)とペニス挿入、往復動作という各操作の協働によって弾性多孔質部材の体積を変化させることによって初めて得ることができる。
【0021】
次に、本実施形態に係る精子採取器(射精促進装置)を射出成形によって製造するための製造装置(金型装置)について説明する。
図5及び
図6は
図1乃至
図4に示した精子採取器の製造装置の構成を示す分解斜視図であり、
図7及び
図8は本製造装置による成形手順を示す斜視図であり、
図9は第1の金型にケース片をセットした状態を示す断面図であり、
図10(a)及び(b)は本製造装置による成形手順を示す断面図である。
製造装置50は、凹状の内面を有すると共に抜気孔41を有し且つヒンジ部(接着テープ)3によって開閉自在に連結された略半円筒状の2つのケース片4と、各ケース片内面に配置された弾性多孔質部材10と、各ケース片内面との間で弾性多孔質部材を挟んだ状態で弾性多孔質部材の内面に沿って配置(充填)され且つケース片に固定されたゲル状樹脂から成るコア片20と、を有した精子採取器を製造する装置である。
コア片20は、各ケース片内面との間に各弾性多孔質部材を介在させた状態で各弾性多孔質部材の内面に沿って配置されており、本例のようにコア片が弾性多孔質部材を圧縮変形させる場合と、圧縮変形させない場合がある。
製造装置50は、内面に弾性多孔質部材10を配置した2つのケース片4を並行に近接配置した状態で各ケース片を支持すると共に各弾性多孔質部材の内面と夫々対向する成形面51aを備えた第1の金型51と、第1の金型上に閉型したときに第1の金型との間に形成される成形空間C内に各ケース片4及び各弾性多孔質部材10を収容する第2の金型60と、各ケース片4及び各弾性多孔質部材10を成形空間C内に収容した状態で各弾性多孔質部材内面を押圧して圧縮変形させつつ溶融状態のゲル状樹脂75を注入する樹脂流路(ランナー70a、及びゲート70b)70と、を備えている。
【0022】
第1の金型51の上面には、略同一形状の突状成形部52が2個並行に突設されており、各突状成形部52の上面であって抜気機構40と対応する位置には夫々凹所52aが形成されている。各突状成形部52は各コア片20の凹所24を形成するのに適した略蒲鉾状(半円筒状)をなしている。各突状成形部52の長手方向一端部には各コア片の挿入口21a及びその近傍の形状を転写するのに適した凹凸部53が連続して形成されている。各突状成形部52の長手方向他端部と幅方向両側縁に沿った第1の金型の上面にはこれらを包囲するように薄板状壁としての突条部54がコ字状に連続して形成されている。
また、
図10に示すように第1の金型51の底面と突状成形部52の適所との間には樹脂流路70が貫通形成されており、図示しないスプルーから圧送されてくる溶融状態のゲル状樹脂75を第1の金型と第2の金型の成形面間に形成される成形空間C内に供給するように構成されている。本例では、ランナー70aの先端に位置するゲート70bが突状成形部52と弾性多孔質部材10との対向面(接触面)にあるため、ゲート70bから吐出された溶融樹脂75は弾性多孔質部材10を押圧して圧縮変形させつつ成形空間C内に展開してゆく。
【0023】
第2の金型60は、第1の金型51上に閉型した時に、突状成形部52とその周辺を覆う第1の分割片61と、突状成形部52の長手方向一端部よりも先端側を覆う第2の分割片65と、を備えている。第1の分割片61と第2の分割片62を第1の金型51上に組み付けた時に、両金型の成形面間(成形面61a、65aと成形面52、53との間)に成形空間Cが形成される。第2の分割片65側に設けた凹所65aと凹凸部53との間に形成される空間にゲル状樹脂が充填されて固化することにより、各コア片の挿入口21a及びその近傍の形状が形成される。
なお、本例では第2の金型60を2つの分割片61、65から構成した分割タイプを示したが、一体型であってもよい。
【0024】
次に、製造装置50を用いて精子採取器1を製造する手順を説明する。
まず、弾性多孔質部材10を内面(凹所内)に接着固定したケース片4を、第1の金型側の突状成形部52上にセットして弾性多孔質部材10の内面と突状成形部52の外面とを対向(接触)させる(
図7、
図8、
図9)。この際、抜気孔41は抜気機構40を構成するボタン部材42により閉止しておく。ボタン部材はバネによって外側へ常時付勢されているため、ボタン部材を内部へ押し込まない限り抜気孔41は閉止された状態にある。
或いは、抜気孔を図示しない粘着テープによって閉止しておいてもよい。
なお、弾性多孔質部材はケース片内面に必ずしも接着する必要はなく、溶融樹脂注入時に動かない程度に仮止め、或いは位置決めする程度であっても良い。
【0025】
次いで、
図10(a)に示すように第1の金型51の上面に第2の金型60を組み付けて閉型することにより第2の金型60の下面に設けた2つの成形凹所
(成形面)61a、65aによって各ケース片4の外面を抑えて固定する。この閉型状態において第1の金型51と第2の金型60の間に形成される成形空間C内部では、
図10(a)に示すように各ケース片4に固定された弾性多孔質部材10が突状成形部52によって圧迫されて圧縮変形した状態となっている。
次いで、
図10(b)に示すように樹脂流路70から溶融したゲル状樹脂を成形空間C内に注入する。樹脂流路の先端に位置するゲート70bは、突状成形部52と弾性多孔質部材10との接触面に開口しているため、ゲートから吐出されるゲル状樹脂75は弾性多孔質部材10を押しのけながら成形空間内に展開してゆく。樹脂の注入が終了した際には図示のように突状成形部52と弾性多孔質部材10との接触面には全体に渡ってゲル状樹脂75が充填されており、且つ他の成形空間部分にもゲル状樹脂が充填された状態にある。
【0026】
上記成形過程においてケース片の抜気孔41はボタン部材42によって閉止されているため、成形中に圧縮された状態にある弾性多孔質部材10の多孔内部に空気が入ることがない。このため、溶融ゲル状樹脂を弾性多孔質部材と金型側の成形面との間に充填することが可能となる。
ゲル状樹脂の冷却のための時間が経過した後で、金型を開いて成形品を取り出すことによって、2つのケース片、弾性多孔質部材、ゲル状樹脂を一体化した精子採取器を得ることができ、抜気孔41に抜気機構40を構成する部品を組み付けることによって完成する。
バネに抗してボタン部材42を内方へ押し込むことにより抜気孔からケース片とコア片との間の空間に空気が入り、弾性多孔質部材が膨張する。粘着テープによって抜気孔を閉止する場合には粘着テープを剥離することによって空気が入る。
【0027】
本例では、予め2つのケース片4をヒンジ部3によって開閉自在に連結しているので、成形品を離型することによりほぼ完成した状態の精子採取器を得ることができる。
なお、弾性多孔質部材10を固定した個々のケース片4を個別に金型内にセットしてゲル状樹脂を一体化することも可能である。
即ち、ケース片に対するゲル状樹脂の成形一体化を個別に実施する場合、製造装置50は、内面に弾性多孔質部材10を配置した単一のケース片の外面を固定する第1の金型51と、第1の金型上に閉型したときに第1の金型との間に形成される成形空間内にケース片4及び弾性多孔質部材10を収容し、且つ弾性多孔質部材の内面と対向する成形面を備えた第2の金型60と、ケース片及び弾性多孔質部材を成形空間内に収容した状態で弾性多孔質部材内面を押圧して圧縮変形させつつ溶融状態のゲル状樹脂75を圧入する樹脂流路70と、を備えた構成とする。
なお、本発明の製造装置50を用いて精子採取器1を製造する方法は次の工程から構成される。
即ち、本発明の精子採取器1の製造方法は、弾性多孔質部材10の内面を金型側の成形面と対面させた状態で該金型のキャビティ内にケース片を固定する工程と、キャビティ内に溶融したゲル状樹脂75を注入する際に、弾性多孔質部材を圧縮変形させつつ溶融ゲル状樹脂を金型側の成形面との間に圧入する工程と、キャビティ内に充填された溶融ゲル状樹脂が固化した際に、金型を開放して精子採取器を取り出す工程と、を備えている。
【0028】
このように本発明の製造装置、及び製造方法によれば、弾性多孔質部材をケース片とコア片との間に介在させることによって高価なゲル状樹脂の使用量を低減できる精子採取装置を一回の射出成形によって一括して製造することができる。特に、弾性多孔質部材を圧縮変形させつつ弾性多孔質部材と成形面との間に溶融ゲル状樹脂を圧入することによりゲル状樹脂層を形成するので、一括した製造が可能となる。
なお、上記実施形態では樹脂流路70からゲル状樹脂75を成形空間内に注入する際に弾性多孔質部材内面を押圧して圧縮変形させる例を示したが、弾性多孔質部材と対向する金型成形面との間に空隙を形成しておき、この空隙にゲル状樹脂を注入することによって弾性多孔質部材を圧縮変形させないようにしてもよい。
【0029】
次に、
図11(a)及び(b)は他のタイプの精子採取器の閉止状態を示す斜視図、及びそのB−B断面図であり、
図12(a)はこの精子採取器の開放状態を示す斜視図、
図12(b)は(a)のC−C断面図であり、
図13は製造装置の構成を示す分解斜視図であり、
図14は堰き止め部材の機能を説明するための要部断面図であり、
図15は成形手順を説明する略図である。
図11、
図12に示した精子採取器(射精促進装置)80は薄型であり、凹状の内面
を有したフラットな形状の2つのケース片81(81A、81B)と、
少なくとも一方のケース片81Bに設けられた抜気孔と、各ケース片内面に夫々配置された弾性多孔質部材(ウレタンフォーム)90と、各ケース片の内面間で各弾性多孔質部材90を挟んだ状態で各弾性多孔質部材の内面に沿って配置(充填)され且つ各ケース片81に固定され且つ外周部が互いに連接一体化されたゲル状樹脂から成るコア片100と、各コア片間を連接するゲル状樹脂部分に開口したペニス挿入用の挿入口103と、を有する。
2つのケース片81A、81Bはコア片100を介して連接されており、
図11に示した閉止状態(非使用状態)と
図12に示した開放状態(使用状態)との間を変位するように構成されている。各ケース片81は中央部に矩形の平坦面81aを有し、この平坦面の幅方向両端縁から曲面状の庇部81bが張り出している。少なくとも一方のケース片81
Bの平坦面には抜気孔81cが貫通形成されており、この抜気孔には前記実施形態の精子採取器1に備わった抜気機構40と同様の抜気機構40が成形終了後に組み付けられる。
各ケース片81の内面の外周には小孔82aを有した板状の突片82が突設されている。この突片82は、金型内に注入された溶融樹脂が小孔82a内に入り込んで絡みついた状態で固化するように構成されており、固化したゲル状樹脂とケース片とを一体化するための手段である。
2つのコア片100は外周部分を全周に渡って伸縮自在な連接壁(ゲル状樹脂)101によって連接一体化されると共に、その内部はペニス挿入空所102となっている。また、連接壁101の一端面にはペニス挿入用の挿入口103が貫通形成されている。
【0030】
製造装置110は、このような構成を有した精子採取器80を射出成形によって製造する金型装置である。
製造装置110は、内面に弾性多孔質部材90を配置した一方のケース片81Aの外面を支持する第1の金型111と、内面120aに弾性多孔質部材90を配置した他方のケース片81Bの外面を支持すると共に該内面を第1の金型111の内面111aと対向配置した状態で該第1の金型に組み付けられる第2の金型120と、第1の金型111と第2の金型120との間に介挿されて各弾性多孔質部材の内面と接触する成形面を両面に備えた入れ子130と、を備えている。
入れ子130は、金型内において各弾性多孔質部材90と対向する両面に夫々成形面131aを有した入れ子本体131と、入れ子本体の幅方向両端部に夫々一体化された堰き止め部材132と、入れ子本体131の長手方向一端から突設された突出部材135と、を備えている。入れ子本体131の両面131aにはコア片100の凹所内に形成する突起や襞を転写するための突起や凹部が形成されている。堰き止め部材132は、
図14に示すように金型を閉じた時に、庇部81bと突片82との間の空所内に入り込んで小孔82a内を内側から外側へ流動する溶融したゲル状樹脂75の流れを堰き止め、ゲル状樹脂の固化後にはゲル状樹脂と庇部81bとの間に空間81dが形成されるように機能する。ここに空間81dが形成されることにより、ゲル状樹脂が庇部81bを越えて外側へはみ出すことを防止でき、はみ出したゲル状樹脂によってケース片を閉止できなくなる不具合を解消できる。
【0031】
入れ子本体131の内部には、溶融状態のゲル状樹脂を各弾性多孔質部材と入れ子の成形面との間に注入する樹脂流路131Aを備えている。突出部材135は、成形時に連接壁101に挿入口103を形成する機能と、入れ子本体131内の樹脂流路131Aに溶融樹脂を供給するランナーとしての機能を有している。突出部材135内に設けた流路135aは樹脂流路131Aと連通している。入れ子本体131の適所、本例では突出部材135と反対側の端部、更には表裏の成形面には樹脂流路131Aと連通する吐出口が開口しており、流路135a、樹脂流路131Aを経て流入してきた溶融樹脂は各吐出口から成形空間C内に充填される。この際、各弾性多孔質部材90と対面する入れ子本体131の成形面に形成された吐出口から吐出された溶融樹脂は、弾性多孔質部材90を圧縮させながら成形面に沿って展開してゆき、固化後に弾性多孔質部材90と一体化する。更に、成形面の幅方向に展開してゆく溶融樹脂は、突片82に形成した小孔82a内を外側へ通過した後で堰き止め部材132に沿って上向きに流動し突片82を内包するように密着一体化される。ゲル状樹脂の固化後にはゲル状樹脂と庇部81bとの間に空間81dが形成される。
【0032】
次に、製造装置110による射出成形手順を
図15に基づいて説明する。
図15(a)(b)はケース片、及び弾性多孔質部材を金型装置内へセットする手順を示した断面図であり、抜気孔81cを粘着テープ83によって閉止した各ケース片81A、81Bの内面に各弾性多孔質部材90を配置(接着、或いは仮止め)した状態で、ケース片81Aの外面を第1の金型111の凹所111a内に着座させる。次いで入れ子130を各弾性多孔質部材90によって挟むように両ケース片を重ね合わせた状態で第2の金型120を第1の金型上に組み付けて閉型する。この時、弾性多孔質部材は圧縮変形し、多孔質内の空気は一部抜気された状態となっている。
図15(c)は突出部材135の流路135aから入れ子内部の樹脂流路131Aへ溶融樹脂75を流入させた状態を示し、入れ子130の先端に位置する吐出口から吐出された溶融樹脂は両ケース片間に形成される成型空間Cの先端側に充填された後で弾性多孔質部材を圧縮させながら入れ子との界面に進入、展開し、最後には成形空間全体に充填される。また、入れ子の成形面に形成された吐出口から吐出された樹脂も同様に展開してゆく。この過程では溶融樹脂75は、弾性多孔質部材及び突片82と密着し、冷却に伴って一体化した状態となる。
【0033】
図15(d)は金型を開放した状態を示しており、ゲル状樹脂の固化後に第1及び第2の金型111、120を開放して成形品を取り出すと共に、入れ子130を抜き取る。
図15(e)では抜気孔81cを塞いでいた粘着テープ83を剥離することにより、ケース片とゲル状樹脂との間の気密空間内に収容された弾性多孔質部材内部に空気が入りこみ膨張する。この段階で、抜気孔81cに対して前述した抜気機構40を組み付けることにより精子採取器が完成する。
なお、各ケース片81A、81Bは、ゲル状樹脂75によって連接一体化されているため、挿入口103から挿入空所内にペニスを挿入した場合には
図15(f)に示すようにゲル状樹脂75が弾性的に伸展してケース片間距離を離間させることができる。ペニスを抜き取った後には原形に復帰する。
【0034】
製造装置110を用いて精子採取器80を製造する手順は次の通りである。
即ち、精子採取器80の製造方法は、各弾性多孔質部材90の内面を夫々金型を構成する入れ子130の成形面131aと対面させた状態で、金型111、120間のキャビティ内に各ケース片81A、81Bを固定する工程と、キャビティ内に溶融したゲル状樹脂75を注入する際に、各弾性多孔質部材を圧縮変形させつつ溶融ゲル状樹脂を入れ子の各成形面との間に圧入する工程と、キャビティ内に充填された溶融ゲル状樹脂が固化した際に、金型を開放して精子採取器を取り出す工程と、を備えている。
このように本発明の製造装置、及び製造方法によれば、弾性多孔質部材をケース片とコア片との間に介在させることによって高価なゲル状樹脂の使用量を低減できる精子採取装置を一回の射出成形によって一括して製造することができる。特に、弾性多孔質部材を圧縮変形させつつ弾性多孔質部材と成形面との間に溶融ゲル状樹脂を圧入することによりゲル状樹脂層を形成するので、一括した製造が可能となる。
なお、上記実施形態では樹脂流路からゲル状樹脂を成形空間内に注入する際に弾性多孔質部材内面を押圧して圧縮変形させる例を示したが、弾性多孔質部材と対向する金型成形面との間に空隙を形成しておき、この空隙にゲル状樹脂を注入することによって弾性多孔質部材を圧縮変形させないようにしてもよい。
【0035】
次に、
図16(a)は本発明の他の実施形態に係る精子採取器の外観構成を示す斜視図であり、
図16(b)はこの精子採取器のキャップを取り外した状態を示す斜視図であり、
図17は精子採取器の分解斜視図であり、
図18は精子採取器の縦断面図である。
この精子採取器(射精促進装置)150は、軸方向両端部に開口部151a、151bを有した中空筒状のケース
片151と、ケース
片内面に沿って配置された中空筒状の弾性多孔質部材(ウレタンウレタンフォーム)160と、ケース
片内面との間で弾性多孔質部材を挟んだ状態で弾性多孔質部材の内面に沿って配置(充填)され且つケース
片に固定されたゲル状樹脂から成る中空のコア部材170と、ケース
片151の一端開口部151aを着脱自在に閉止するキャップ153と、ケース
片の他端開口部151b内に嵌合される底部クッション用のドーナツ状のウレタン部材156と、他端開口部151bを閉止する底蓋157と、底蓋157の抜気穴157aを閉止する粘着テープ158と、を有する。
ケース
片151の上端部及び下端部周縁には夫々ゲル状樹脂を絡めて一体化させるための小孔152が形成されている。
弾性多孔質部材160としては、ウレタンフォーム等を円筒状に成形したもの、或いはシート状のウレタンフォームを円筒状にしたものを利用できる。
【0036】
図19はこの実施形態に係る精子採取器、及びその製造装置の分解斜視図であり、
図20(a)(b)及び(c)は金型にケース及び弾性多孔質部材を組み付けた状態を示す要部断面図、第2の金型を除去した状態の要部断面図、及びケースの底部構成を示す斜視図であり、
図21(a)(b)及び(c)は製造装置による射出成形手順を説明する断面図である。
製造装置180は、この精子採取器150を射出成形により製造するための金型装置である。
製造装置180は、ケース
片の軸方向一端開口部151aに固定されて開口部151aを閉止する端部閉止片182、及び、端部閉止片中央部から延びてその先端部と第2の金型内面との間に空間Sを形成する中空筒状の入れ子185を有した第1の金型181と、内面に弾性多孔質部材160を配置したケース
片151の軸方向他端開口部151bに固定されて開口部151bを閉止する第2の金型190と、を備えている。
【0037】
第1の金型181は、端部閉止片182の上面にケース
片151の一端開口部151aを着座嵌合させる円形の凹所(溝)182aを有しており、
図20(a)の状態では開口部151aは閉止されている。端部閉止片182の底面から入れ子185の内部を軸方向へ貫通するように樹脂流路183が形成されている。樹脂流路183の先端部は入れ子185の先端部にて開口しており、入れ子先端部と第2の金型下面との間に形成される空間Sと樹脂流路183の先端開口と連通している。
ケース
片の一端開口部151a、及び一端開口部151aの周縁にはゲル状樹脂を絡めて一体化し易くするための小孔152が所定のピッチにて形成されている。
第2の金型190は、その下面にケース
片151の他端開口部151b周縁を嵌合させる環状の溝190aを有しており、
図20(a)の状態では開口部151bは閉止されている。
【0038】
成形に際しては、
図19、
図20に示すように第1の金型の端部閉止片182の凹所182a内にケース
片の一端開口部151aを着座させてこれを閉止する。次いで、弾性多孔質部材の中空部内に入れ子185が入り込むようにケース
片内に弾性多孔質部材160を嵌合する。弾性多孔質部材160は、ケース
片と入れ子とによって挟圧されて圧縮変形し、内部の空気が一部抜気される。更に、ケース
片上端部に第2の金型を組み付けることによりケース
片内部を封止した状態とする。この時、ケース
片内部は樹脂流路183のみを介して外部と連通可能な状態となっている。
この状態で、端部閉止片182の底面の穴から樹脂流路183内に溶融状態にあるゲル状樹脂75を注入すると、ゲル状樹脂は樹脂流路内に流入して入れ子先端の穴183aから樹脂がキャビティ内に吐出される。入れ子先端の穴から吐出された樹脂は入れ子先端と第2の金型との間の空間Sに充満し、次いで弾性多孔質部材160を圧縮させつつ弾性多孔質部材の内壁と入れ子との間に圧入し展開して行く(
図21(a)(b))。ゲル状樹脂は冷却するとケース
片の両端部(小孔152)及び弾性多孔質部材と一体化するため、ゲル状樹脂及び弾性多孔質部材がケース
片から抜け落ちることがない。
なお、入れ子の外周面に樹脂流路183と連通する吐出口を形成して弾性多孔質部材の内面に直接ゲル状樹脂を吐出してもよい。
【0039】
ゲル状樹脂の冷却後に、
図21(b)に示すように弾性多孔質部材及びゲル状樹脂が一体化されたケース
片から両金型を取り外し、更に
図21(c)に示すようにキャップ153、ウレタン部材156、底蓋157、粘着テープ158を順次組み付けることにより精子採取器150を完成する。
なお、製造装置180を用いて精子採取器150を製造する方法は、次の各工程から構成されている。
即ち、精子採取器150の製造方法は、弾性多孔質部材160の中空内部に金型側の入れ子185を嵌合した状態で該金型のキャビティ内にケース
片151を固定する工程と、キャビティ内に溶融したゲル状樹脂75を注入する際に、弾性多孔質部材の内壁を圧縮変形させつつ溶融ゲル状樹脂を入れ子との間に圧入する工程と、キャビティ内に充填された溶融ゲル状樹脂が固化した際に、金型を開放して精子採取器を取り出す工程と、から構成されている。
なお、上記実施形態では軸方向両端部に開口部を備えたケース
片151を用いたため、両開口部を閉止する手段として第1の金型と第2の金型を必要としたが、軸方向一端のみに開口部を有したケース
片を用いれば、第2の金型を省略できる。
【0040】
また、上記実施形態では樹脂流路からゲル状樹脂を成形空間内に注入する際に弾性多孔質部材内面を押圧して圧縮変形させる例を示したが、弾性多孔質部材と対向する金型成形面との間に空隙を形成しておき、この空隙にゲル状樹脂を注入することによって弾性多孔質部材を圧縮変形させないようにしてもよい。
このように本発明の製造装置、及び製造方法によれば、弾性多孔質部材をケース
片とコア部材との間に介在させることによって高価なゲル状樹脂の使用量を低減できる精子採取装置を一回の射出成形によって一括して製造することができる。特に、弾性多孔質部材を圧縮変形させつつ弾性多孔質部材と成形面との間に溶融ゲル状樹脂を圧入することによりゲル状樹脂層を形成するので、一括した製造が可能となる。
【0041】
以上の如き構成を備えた本発明の精子採取器によれば、弾性多孔質部材は、コア片を構成するゲル状樹脂材料に比して軽量であるため、精子採取器を軽量化して操作性、取扱性を高めることができ、またゲル状樹脂に比して低廉であるためコストダウンを図ることができる。
また、本発明に係る精子採取器の製造装置、及び製造方法によれば、ケース片とゲル状樹脂製コア片(コア部材)との間に弾性多孔質部材を介在させた構造を生産性よく製造することが可能となる。