(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、プラスチック容器等の樹脂材料からなる中空容器は、一般に筒状のパリソンもしくは有底円筒状のプリフォームをブロー成形装置のブロー型内に配置し、このブロー型内でプリフォーム等を高圧のブローエアによってブロー成形することで得られる。また近年、樹脂製の中空容器として、延伸ブロー成形されたポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも称する)樹脂製のものが多く用いられている。ただしPET樹脂製の中空容器は耐熱性に劣るという欠点がある。中空容器の耐熱性等を向上させるために、例えば、プリフォームを一次ブロー成形することで最終成形品よりも大きい一次ブロー成形品を形成し、この一次ブロー成形品を加熱装置で熱処理して収縮させた後、二次ブロー成形により最終成形品とする製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また例えば、プリフォームを一次ブロー成形型内でブロー成形して一次成形品を形成する一次成形工程と、一次成形品を、熱処理型内で熱処理する熱処理工程と、熱処理工程を経た中間成形品を、最終ブロー成形型内でブロー成形して最終成形品を成形する最終成形工程と、を有する製造方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
ところで、樹脂製の中空容器の表面には、各種の凹凸模様が形成されているものがある。ここでいう凹凸模様には、中空容器の表層に形成されるシボ模様や縞模様等の他、例えば、商品名や企業名、或いは型番等を表す刻印が含まれる。従来、このような凹凸模様は、二次ブロー成形(最終ブロー成形)工程で形成されていた。しかしながら、このように形成された凹凸模様は、型通りにはならず、鮮明さに欠けるという問題があった。
【0005】
例えば、壜体容器(中空容器)の肩部に設けられた稜線部に微細凹凸(凹凸模様)を形成するために、プリフォーム形成用金型の内面又は一次金型の内面の少なくとも一方に反転凹凸を形成しておき、これによって、中間品に微細凹凸(凹凸模様)を形成するようにした方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献3に記載の凹凸模様の形成方法は、特に稜線部分に凹凸模様を形成するためのものであり、平面部分に鮮明な凹凸模様を形成できるかどうかは定かでない。またこの方法は、一次金型を用いてプリフォームを一次2軸延伸ブロー成形して一次中間成形品を形成し、一次金型から脱型させた一次中間形成品を熱収縮させて二次中間成形品を形成し、二次金型を用いて二次中間成形品を二次ブローして容器(中空容器)を形成する場合(特許文献1の製造方法に相当)に好適なものであり、後者の方法(特許文献2)等の他の製造方法において必ずしも効果が得られるとは限らない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、
中空容器に鮮明な凹凸模様を形成することができる
中空容器の製造方法を提供することを目的とする。特に、プリフォームを一次ブロー成形型内でブロー成形して一次ブロー成形品を形成する工程と、一次ブロー成形品を熱処理型内で加熱した後に収縮させて中間成形品を形成する中間成形工程と、中間成形品を最終ブロー成形型内でブロー成形して中空容器を形成する最終成形工程と、を備える
中空容器の製造方法において、
中空容器に鮮明な凹凸模様を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、樹脂材料からなり表面に凹凸模様を有する
中空容器の製造方法であって、樹脂材料からなるプリフォームを
室温もしくは室温以下に保持した状態の一次ブロー成形型内でブロー成形して一次ブロー成形品を形成する一次ブロー成形工程と、該一次ブロー成形品を所定温度に加熱した熱処理型内でブローしながら加熱した後に所定サイズまで収縮させて中間成形品を形成する中間成形工程と、前記中間成形品を所定温度に加熱した最終ブロー成形型内でブロー成形して所定形状の前記中空容器を形成する最終成形工程と、を備え、前記熱処理型の内壁面に前記凹凸模様に対応する反転凹凸を形成しておき、前記中間成形工程において筒状の胴部の表面に前記凹凸模様を有する前記中間成形品を形成し、さらに前記凹凸模様を高圧エアにより最終ブロー成形型の内壁面に押圧させることを特徴とする
中空容器の製造方法にある。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様の
中空容器の製造方法において、前記一次ブロー成形型が、前記熱処理型を兼ねていることを特徴とする
中空容器の製造方法にある。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様の
中空容器の製造方法において、前記中間成形品は、前記胴部と共に、開口するネック部と、前記胴部の一端を密封する底部と、前記ネック部と前記胴部とを繋ぐ肩部と、前記胴部と底部とを繋ぐヒール部とを有し、前記中間成形工程では、前記肩部と前記ヒール部に前記凹凸模様としてのシボ模様を形成することを特徴とする
中空容器の製造方法にある。
【0013】
本発明の第
4の態様は、第
1〜3の何れか一つの態様の
中空容器の製造方法において、前記中間成形工程では、前記凹凸模様が形成されたパネル部材を備えた熱処理型で前記一次ブロー成形品を加熱することを特徴とする
中空容器の製造方法にある。
本発明の第
5の態様は、第
1〜4の何れか一つの態様の
中空容器の製造方法において、前記一次ブロー成形工程では、前記プリフォームを直径方向で5倍以上延伸させて前記一次ブロー成形品を形成することを特徴とする
中空容器の製造方法にある。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明では、中空容器に、シボ模様、刻印等の凹凸模様を鮮明に形成することができる。すなわち凹部と凸部とをはっきりと区別することができる鮮やかな凹凸模様を中空容器に形成することができる。また中空容器の表面に、例えばシボ模様等の比較的微細の凹凸模様を形成した場合、一次ブロー成形品の離型性が改善され、中空容器の品質向上を図ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る中空容器を示す一部断面図であり、
図2は、
図1のA−A´線断面図である。
【0017】
図1に示す中空容器10は、樹脂材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性合成樹脂で形成され、容量が5ガロン(約20リットル)程度のミネラルウォータ用リフィラブルボトルとして使用される大型容器である。この中空容器10は、上端に口部11を有し、例えば、外径がΦ55mm程度のネック部12と、例えば、最大径が270mm程度の筒状の胴部13と、ネック部12と胴部13とを繋ぎネック部12側から徐々に拡開する肩部14と、胴部13の一端を密封する底部15と、胴部13と底部15とを繋ぐヒール部16とで構成されている。
【0018】
胴部13には、複数の環状の傾斜部17から構成される補強部18が形成されている。底部15には、容器内方に突出する上底部19が形成されている。これら補強部18及び上底部19によって中空容器10の剛性(座屈強度)が高められ、中空容器10内にミネラルウォータ等の内容物を入れた際に、胴部13或いは底部15が変形してしまうことを防止している。
【0019】
中空容器10の肩部14は、本実施形態では、胴部13の肉厚よりも厚く形成されており、このことによっても中空容器10の剛性が高められている。なお肩部14の肉厚を厚くすると製造過程においてPET樹脂の白化が起こりやすいが、本発明では、後述するように肩部14の透明性を良好に確保することができる。
【0020】
また中空容器10には、所定の部分に凹凸模様が形成されている。本実施形態では、中空容器10の胴部13に、凹凸模様としての刻印51が形成されている。この刻印51は、例えば、商品名や企業名、或いは型番等を表すものである。本実施形態では、刻印51の一例である「ABC」からなる文字が、中空容器10の胴部13に形成されている。
【0021】
なお刻印51は、例えば、
図2(a)に示すように、中空容器10の胴部13を変形させて容器の内側に向かって突出させることによって形成された凹部52Aで構成されている。これにより、中空容器10の胴部13の肉厚は、刻印51の部分を含んで略均一な厚さとなっている。中空容器10の胴部13の肉厚が比較的厚い場合、刻印51は、
図2(b)に示すように、中空容器10の胴部13の厚さ方向の一部が削られた凹部52Bによって構成されていてもよい。また刻印51は、文字列周辺を凹部化して文字列部分を凸部化させたものであってもよいし、逆に文字列周辺を凸部化して文字列部分を凹部化させたものであってもよい。
【0022】
中空容器10の肩部14、ヒール部16の表面は粗面となっており、微細な多数の凹凸が形成されている。本実施形態では、中空容器10の肩部14及びヒール部16の表面には、
図1中に斜線で表すように、凹凸模様としてのシボ模様53が形成されている。なおシボ模様53や刻印51等の凹凸模様は、中空容器10の何れの部分に形成されていてもよい。例えば、胴部13の中間に突出して設けられている補強部18にも、シボ模様53が形成されていてもよい。
【0023】
以下、このような本発明に係る中空容器10の製造方法について説明する。
【0024】
図3に示すように、中空容器10は、プリフォーム20、一次ブロー成形品30及び中間成形品40を経由して成形される。
【0025】
まずは
図4に示すように、射出成形部100によりプリフォーム20を射出成形によって形成する(射出工程)。プリフォーム20は、ネック部21と有底筒状の胴部22とからなる筒状体であり、例えば、その肉厚が6mm〜9mm程度となるように形成される。縦軸長さL1は、最終成形品である中空容器10の縦軸長さL2よりも長くても短くても構わない。
図3に示すプリフォーム20は、縦軸長さL1が中空容器10の縦軸長さL2よりも短い例である。なお中空容器10における縦軸長さL2とは、中空容器10の中心部における長さであり、
図3に示すように中空容器10の口部11から上底部19までの長さである。
【0026】
プリフォーム20を成形する射出成形部100は、例えば、ネック部21の外壁面を規定する水平方向に開閉可能な割型からなるネック型101と、胴部22の外壁面を規定する射出キャビティ型102と、プリフォーム20の内壁面を規定するコア型103とから構成されている。PET樹脂は射出キャビティ型102の中心部下側のゲート104より充填され、プリフォーム20が射出成形される。
【0027】
成形されたプリフォーム20は、図示しない加熱部に搬送されて、所定の延伸適温に加熱された後、
図5に示すように、一次ブロー成形部110内に配置される。一次ブロー成形部110内でプリフォーム20をブロー成形することにより、最終成形品である中空容器10と同程度若しくはそれよりも大きいサイズの一次ブロー成形品30が形成される(一次ブロー成形工程)。
【0028】
一次ブロー成形部110は、例えば、開閉可能な一次ブロー成形型(割型)111と、プリフォーム20のネック部21が内部に挿入されるブローコア型112と、ブローコア型112を通して上下移動可能な延伸ロッド113と、一次ブロー底型114とを備える。そして一次ブロー成形部110は、一次ブロー成形品30の外形形状に沿った内壁面を有している。
【0029】
一次ブロー成形工程では、プリフォーム20が延伸ロッド113により縦軸方向に延伸されると共に高圧エアにより横軸方向に延伸される。これにより、プリフォーム20が一次ブロー成形部110の内壁面に押圧され、一次ブロー成形品30が成形される。このとき一次ブロー成形部110は加熱されることなく室温(常温)もしくは室温以下に維持されているため、一次ブロー成形部110から取り出された一次ブロー成形品30は、一次ブロー成形部110の内壁面に沿った形状となる。
【0030】
なお、ここでは一次ブロー成形工程でプリフォーム20をブロー成形することで一次ブロー成形品30を形成しているが、一次ブロー成形工程の前に、プリフォーム20をその径方向に若干延伸させる、いわゆる予備ブロー工程を実施するようにしてもよい。これにより、一次ブロー成形工程におけるプリフォーム20の延伸倍率が低く抑えられるため、一次ブロー成形品30をさらに良好に形成することができる。
【0031】
このように成形された一次ブロー成形品30は、射出工程で成形されたネック部31(21)と、筒状の胴部32と、胴部32とネック部31とを繋ぐ肩部33と、胴部32の一端を塞ぐ底部34と、胴部32と底部34とを繋ぐヒール部35とで構成され、最終成形品である中空容器10よりも大きいサイズを有する。またネック部31を含む縦軸長さL3は、中空容器10の縦軸長さL2よりも長くなっている方が望ましい(
図3参照)。
【0032】
なお大型容器である中空容器10を一次ブロー成形するにあたっては、プリフォーム20の延伸温度を適宜調整して、一次ブロー成形品30の肩部33の肉厚が胴部32の肉厚よりも厚くなるようにすることが好ましい。これにより肩部33の延伸倍率が小さく抑えられ、肩部33におけるPET樹脂の延伸結晶化に伴う白化をさらに確実に抑制することができる。また肩部33の肉厚が比較的厚く確保されていることで、最終成形品である中空容器10の剛性を高めることもできる。
【0033】
次に
図6に示すように、室温(常温)に冷却された一次ブロー成形品30を熱処理ブロー成形部(熱処理型)120内に配置して熱処理した後、一次ブロー成形品30を中空容器10よりも小さいサイズまで収縮させて中間成形品40とする(熱処理工程)。なお一次ブロー成形品30を室温(常温)に冷却した後、すぐに一次ブロー成形品30に対して熱処理工程を実施してもよい。しかしながら、実際には、上述した射出工程と一次ブロー成形工程とを繰り返すことで一度に複数の一次ブロー成形品30を作製した後、これら複数の一次ブロー成形品30に対して熱処理工程を実施している。
【0034】
図6(a)に示すように、熱処理ブロー成形部120は、一次ブロー成形品30が収容される熱処理型(割型)121と、一次ブロー成形品30のネック部31が内部に挿入される熱処理用ブローコア型122と、一次ブロー成形品30の底部34に対応する上底加熱型123と、で構成されている。熱処理型121の成形空間は、一次ブロー成形品30の外形とほぼ同一形状に形成されている。
【0035】
熱処理型121の内面には、一次ブロー成形品30の胴部32に対応する部分に、中空容器10に形成される凹凸模様に対応して、反転凹凸模様が形成されている。すなわち熱処理型121の内面の胴部32に対向する部分には、熱処理型121の内側に向かって突出する「ABC」の反転文字からなる突出部121aが形成され、肩部33及びヒール部35に対応する部分には、
図6(a)中に斜線で表すように、シボ模様53とは凹凸が反転した反転シボ模様121bが形成されている。なお反転凹凸模様は、熱処理型121上に直接形成されていてもよいが、熱処理型121表面に固定された熱処理型121とは別体であるパネルに形成されていてもよい。これにより、熱処理型121を交換することなくパネルを交換するだけで、凹凸模様を変更することができる。したがって、メンテナンスが容易となり、またコストが低減される。
【0036】
さらに熱処理型121には、一次ブロー成形品30の胴部32に対応する部分に、複数、例えば12本の棒状のヒータ124が設けられている。これらのヒータ124は、熱処理型121の成形空間の周囲に略均等な間隔で内蔵されており、これらのヒータ124によって一次ブロー成形品30の胴部32が所定温度に加熱されるようになっている。
【0037】
熱処理型121には、一次ブロー成形品30の肩部33に対応する部分に、例えば、加熱されたオイル等の温調媒体が供給される供給路125が形成されていてもよい。これにより、熱処理型121によって、一次ブロー成形品30の胴部32と肩部33とを異なる温度に加熱することができる。熱処理用ブローコア型122は、先端からエアを供給及び排気できるようになっている。なお熱処理ブロー成形部120には、一次ブロー成形部110の延伸ロッド113と同様の棒状部材が備えられていてもよい。この棒状部材を利用して底部34を上底加熱型123上の適切な位置に保持する。これにより、熱処理工程における一次ブロー成形品30の位置ずれや予期しない形状変形を防止することができる。
【0038】
熱処理ブロー成形部120は予め所定温度に加熱されている。熱処理工程では、
図6(b)に示すように、一次ブロー成形品30の内部に高圧エアを送り込み、突出部121a及び反転シボ模様121bが形成された熱処理型121内の内壁面に一次ブロー成形品30を所定時間接触させて加熱処理(ヒートセット処理)する。これにより、一次ブロー成形品30の胴部32には、「ABC」の文字からなる刻印51が形成されると共に、肩部33及びヒール部35の表面にはシボ模様53が形成される(
図3参照)。
【0039】
その後一次ブロー成形品30内の気体を排気すると共に一次ブロー成形品30を熱処理型121から取り出すことで中間成形品40が形成される。すなわち、一次ブロー成形品30内の気体を排気すると共に熱処理型121から一次ブロー成形品30を取り出す際に、一次ブロー成形品30が収縮して縦軸長さL3が最終成形品である中空容器10の縦軸長さL2よりも短い中間成形品40となる。
【0040】
このように形成された中間成形品40は、最終成形品である中空容器10よりも小さいサイズに形成されており、ネック部41と、筒状の胴部42と、胴部42とネック部41とを繋ぐ肩部43と、胴部42の一端を塞ぐ底部44と、胴部42と底部44とを繋ぐヒール部45とで構成されている。ネック部41を含む縦軸長さL4も中空容器10の縦軸長さL2よりも短くなっている(
図3参照)。
【0041】
またこのように熱処理工程を経た中間成形品40の胴部42には、「ABC」の文字からなる刻印51が形成されていると共に、肩部43及びヒール部45にはシボ模様53が形成されている(
図3参照)。
【0042】
そして、このような刻印51やシボ模様53等の凹凸模様を、熱処理工程において一次ブロー成形品30(中間成形品40)に形成することで、これら刻印51及びシボ模様53を極めて鮮明に形成することができる。刻印51の凹凸の深さや大きさは、熱処理後の収縮の程度および最終成形品における望ましいサイズなどを考慮して決定することが望ましい。
【0043】
熱処理工程においては、一次ブロー成形品30の少なくとも胴部32が、後述する最終成形工程における加熱温度よりも高い温度、例えば、140℃〜180℃程度で加熱されるようになっていることが好ましい。例えば、本実施形態では、複数のヒータ124による熱処理型121の加熱温度が140℃〜180℃程度に設定されている。この場合の加熱処理(ヒートセット)時間は、8s〜16sの間で設定されていることが好ましい。これにより、一次ブロー成形品30の残留応力が除去され、最終成形品である中空容器10の耐熱性が向上する。
【0044】
ここで、鮮明な凹凸模様を一次ブロー成形品30に形成するには、熱処理工程における一次ブロー成形品30の加熱温度は高い方が好ましい。ただし、加熱温度が高すぎるとPET樹脂の結晶化による白化現象が生じ、一次ブロー成形品30の透明性が失われてしまう。このため、熱処理工程における一次ブロー成形品30の加熱温度は、上述のように140℃〜180℃の範囲であることが好ましいが、特に、160℃〜170℃の範囲であることが望ましい。
【0045】
さらに一次ブロー成形品30の肩部33が胴部32よりも肉厚に形成されている場合(特に大型容器の場合)、熱処理工程において肩部33を胴部32と同等の温度で加熱すると、冷却時にPET樹脂の球結晶化に伴う白化が生じる虞がある。このため、肩部33は、胴部32の温度よりも低い温度で加熱することが好ましい。本実施形態では、熱処理型121の供給路125内に温調媒体を供給することで肩部33の温度が調整されている。これにより、比較的肉厚の肩部33におけるPET樹脂の球結晶化による白化を抑制することができる。なお同様の理由により、熱処理工程においては、一次ブロー成形品30の底部34も温調媒体により比較的低い温度に加熱することが好ましい。
【0046】
また熱処理工程では、一次ブロー成形品30の肩部33及びヒール部35、さらには胴部13の中間の補強部18など離型しづらい部分が存在する。上述のように比較的高い温度で一次ブロー成形品30を加熱処理する場合には、特に離型性が低下する。そしてこの離型性の低下に伴って、最終成形品である中空容器10に要求されている透明性や寸法精度等の品質が低下する虞がある。
【0047】
しかしながら熱処理工程において一次ブロー成形品30の肩部33及びヒール部35などにシボ模様53を形成することで、肩部33及びヒール部35などの離型性が大幅に向上する。離型性の向上により、より高温での熱処理工程が可能になる。これにより最終成形品である中空容器10の耐熱性や形状面での品質を向上できると共に、製造効率を高めることもできる。
【0048】
その後、中間成形品40は、
図7に示すように、所定温度に加熱された最終ブロー成形部130に配置される。最終ブロー成形部130で中間成形品40をブロー成形することにより、最終成形品である中空容器10が得られる(
図3参照)。このとき中間成形品40に形成されている刻印51及びシボ模様53は実質的に形状が変化することなく、鮮明な刻印51及びシボ模様53を備えた中空容器10が形成される。
【0049】
最終ブロー成形部130は、中間成形品40が収容され上下方向で二つに分割された最終ブロー型(割型)131と、中間成形品40のネック部41が内部に挿入される最終処理用ブローコア型132と、中間成形品40の底部44に対応する上底型133と、を備える。最終ブロー型131の成形空間の周囲には、温調媒体が供給される供給路134が縦軸方向に沿って複数設けられている。これら複数の供給路134内を循環する温調媒体によって成形空間内の中間成形品40が所定温度に加熱されるようになっている。なお図示しないが、最終ブロー成形部130も、一次ブロー成形部110と同様に、延伸ロッドを備えていてもよい。
【0050】
最終成形工程では、最終ブロー型131内に配置された中間成形品40が、その内部に供給される高圧エアにより縦軸方向及び横軸方向に延伸され、最終ブロー型131の内壁面に押圧されて熱処理され、最終成形品である中空容器10が成形される(
図1参照)。具体的には、最終ブロー型131は、所定温度、例えば、80℃〜110℃に予め加熱されており、この温度で中間成形品40を所定時間、例えば、15s〜30sの間ヒートセットすることで、中空容器10が形成される。
【0051】
以上説明したように、本発明では、中空容器10に形成される刻印51やシボ模様53等の凹凸模様を、一次ブロー成形品30を熱処理ブロー成形部120で加熱処理(ヒートセット)する際に同時に形成するようにした。これにより、刻印51及びシボ模様53等の凹凸模様が鮮明に形成された中空容器10を得ることができる。
【0052】
また以上のような方法でPET樹脂からなる中空容器10を製造することにより、中空容器10の耐熱性や透明性等の品質を高めることができる。特に、一次ブロー成形工程において一次ブロー成形品30を加熱することでPET樹脂の結晶化が促進され、また熱処理工程によって一次ブロー成形品30を収縮させて中間成形品40とする際に残留歪みが除去されるため、最終成形品である中空容器10の耐熱性を高めることができる。
【0053】
以上本発明の一実施形態について説明したが、勿論、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、上述の実施形態では、一次ブロー成形部で成形した一次ブロー成形品を、熱処理ブロー成形部で熱処理するようにしたが、一次ブロー成形部が、熱処理ブロー成形部を兼ねるようにしてもよい。すなわち一次ブロー成形型にヒータなどの加熱源を設けておき、一次ブロー成形工程と熱処理工程とを実質的に同時に行うようにしてもよい。
【0055】
また熱処理型の機能を兼ねる一次ブロー成形型として、射出延伸ブロー成形機(1ステージ機)における温調部の予備ブロー型を利用してもよい。
【0056】
また熱処理工程で一次ブロー成形品に対して凹凸模様を付与した後、さらに最終成形工程においても中間成形品に対して凹凸模様を付与するようにしてもよい。つまり熱処理工程で付与した凹凸模様の形状を、最終成形工程でさらに整えるようにしてもよい。これにより、最終成形工程のみで凹凸模様を付与していた従来の方法では実現できなかったより鮮明な凹凸模様を形成することができる。また、意匠性が向上した耐熱中空容器を製造することができる。
【0057】
また上述の実施形態では、主として中空容器として容量が5ガロン(約20リットル)程度の大型容器を例示して本発明を説明したが、本発明は、あらゆる大きさ、例えば、容量が0.5〜2リットル程度の小〜中型容器の製造方法にも適用することができる。