(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783227
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】オイル交換用接続具及びそれを用いたオイル交換方法
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20150907BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
F16H57/04 E
F01M11/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-245601(P2013-245601)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-102224(P2015-102224A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2014年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502043499
【氏名又は名称】ゴトコ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】松田 濃
【審査官】
稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0043096(US,A1)
【文献】
特開2003−312795(JP,A)
【文献】
特開平10−131737(JP,A)
【文献】
特開2000−193172(JP,A)
【文献】
実開昭63−074593(JP,U)
【文献】
特開2004−286630(JP,A)
【文献】
特表平11−500215(JP,A)
【文献】
実開平01−096594(JP,U)
【文献】
特開平02−066398(JP,A)
【文献】
特開2006−234042(JP,A)
【文献】
特開2005−226542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F01M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパン内のオイルを交換するために前記オイルパンの排出口に螺着して接続する接続具であって、
中心軸に垂直な切断面が多角形である基部と、
前記基部の一端に設けられた螺子部と前記中心軸に沿って前記螺子部に延設された管部を有する前記オイルパンの前記排出口に螺着する第一接続部と、
前記基部の他端に設けられ、外周側面に嵌合溝を有する第二接続部と、
前記中心軸に沿って前記基部、前記第一接続部、前記第二接続部を貫通する貫通孔を備え、前記管部が、前記中心軸に沿う方向において前記螺子部よりも長く、前記管部の直径が、前記螺子部の直径よりも短いことを特徴とするオイル交換用接続具。
【請求項2】
前記請求項1に記載のオイル交換用接続具を前記排出口に接続する工程と、
前記第二接続部に係止する係止具を有する蛇管を介して循環ポンプを前記オイル交換用接続具に接続する工程と、
前記循環ポンプから前記オイルパンに所定量の新規のオイルを送液した後にさらに新規のオイルを追加して、得られる混合オイルを循環する工程と、
前記工程において送液した新規のオイルと略同量の前記混合オイルを除去する工程と、
前記オイル交換用接続具を前記排出口から外す工程を備えることを特徴とするオイル交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、トランスミッションケースに取り付けられたオイルパン内のオイルを交換するためにオイルパンに接続して使用される接続具及びその接続を用いたオイルの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、自動二輪車などの乗り物、工作機械、発電機などにおいて自動変速機又は無段変速機が使用されており、それら変速機の潤滑、作動及び冷却を行うために、自動変速機用としてATFと呼ばれるオイル、無段変速機用としてCVTFと呼ばれるオイルが使用されている。
【0003】
とりわけ自動車において、その寿命が尽きるまでトランスミッション用のオイルを交換しなくてよいとするメーカーも存在するが、熱負荷による低粘度化などの劣化、クラッチやブレーキバンドの摩耗並びにギアやベアリングなどの金属摩耗によるスラッジの堆積、その堆積物に起因するオイルフィルターの目詰まりなどが発生し、トランスミッションの性能が劣化するために、適時にオイル交換されることが望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、トランスミッションケースに取り付けられたオイルパンの下部に設けられたドレン孔に接続されているドレンボルトを取り外して、当該オイルパン内の古くなったオイルを抜き出した後に、ドレンボルトを再度接続してオーバーフロープラグを取り外してその取り外した箇所から新規のオイルをオイルパンに注入する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−25309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のオイル交換方法では、オイルパンからバットなどの容器に古いオイルを直接抜き出すために、オイルが飛び跳ねて作業者や作業場が汚れること、作業者が古いオイルの抜き出しから新しいオイルの注入まで終始掛かりっきりで作業しなければならないため効率が悪いこと、オイルが飛び跳ねて作業者に付着しても火傷しないようにオイルの温度が下がるまで作業を行わないようするため作業時間が長いことなどの問題があった。
【0007】
そこで、本件発明では、トランスミッションケースに取り付けられたオイルパン内のオイルを交換するに際して、オイルが飛び跳ねて作業者や作業場が汚れることもなく、作業者が古いオイルの抜き出しから新しいオイルの注入まで終始掛かりっきりで作業する必要がないため作業者の作業効率を向上させることができ、オイルの温度が下がらなくても作業を始められるようにしてオイル交換作業に掛かる時間を短縮することができるオイル交換用接続具及びそれを用いたオイル交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕本件発明は、オイルパン内のオイルを交換するために前記オイルパンの排出口に螺着して接続する接続具であって、中心軸に垂直な切断面が多角形である基部と、前記基部の一端に設けられた螺子部と前記中心軸に沿って前記螺子部に延設された管部を有する前記オイルパンの前記排出口に螺着する第一接続部と、
前記基部の他端に設けられ、外周側面に嵌合溝を有する第二接続部と、前記中心軸に沿って前記基部、前記第一接続部、前記第二接続部を貫通する貫通孔を備え、前記管部が、前記中心軸に沿う方向において
前記螺子部よりも長く、前記管部の直径が、前記螺子部の
直径よりも短いことを特徴とするオイル交換用接続具である。
【0011】
〔
2〕そして、前記
〔1〕に記載のオイル交換用接続具を前記排出口に接続する工程と、前記第二接続部に係止する係止具を有する蛇管を介して循環ポンプを前記オイル交換用接続具に接続する工程と、前記循環ポンプから前記オイルパンに所定量の新規のオイルを送液した後にさらに新規のオイルを追加して、得られる混合オイルを循環する工程と、前記工程において送液した新規のオイルと略同量の前記混合オイルを除去する工程と、前記オイル交換用接続具を前記排出口から外す工程を備えることを特徴とするオイル交換方法である。
【発明の効果】
【0012】
本件発明に記載のオイル交換用接続具及びそれを用いたオイル交換方法によれば、トランスミッションのオイルパン内のオイルを交換するに際して、オイルが飛び跳ねて作業者や作業場が汚れることもなく、作業者が古いオイルの抜き出しから新しいオイルの注入まで終始掛かりっきりで作業する必要がないため作業者の作業効率を向上させることができ、オイルの温度が下がらなくても作業を始められるようにしてオイル交換作業に掛かる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本件発明におけるオイル交換用接続具の一実施形態を示す斜視図。
【
図2】本件発明におけるオイル交換用接続具の一実施形態を示す正面図。
【
図3】本件発明におけるオイル交換用接続具の一実施形態を示す中心軸に沿った断面図。
【
図4】トランスミッションケース及びオイルパンの一部破断した概略説明図。
【
図5】本件発明におけるオイル交換方法における工程S1の手順を示す説明図。
【
図6】本件発明におけるオイル交換方法における工程S2の手順を示す説明図。
【
図7】本件発明におけるオイル交換方法における工程S3の手順を示す説明図。
【
図8】本件発明におけるオイル交換方法における工程S4の手順を示す説明図。
【
図9】本件発明におけるオイル交換方法における工程S5の手順を示す説明図。
【
図10】本件発明におけるオイル交換方法における工程S6の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本件発明のオイル交換用接続具A及びそれを用いたオイル交換方法を、図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本件発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本件発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。また、数値範囲を示す表現は上限と下限を含むものである。
【0015】
図1から
図3に示すように、本件発明のオイル交換用接続具Aは、中心軸Cに垂直な切断面が多角形である基部1と、基部1の一端に設けられた螺子部21と中心軸Cに沿って螺子部21に延設された管部22を有するオイルパンIの排出口Eに螺着する第一接続部2と、基部1の他端に設けられ、外周側面に嵌合溝31を有する第二接続部3と、中心軸Cに沿って基部1、第一接続部2、第二接続部3を貫通する貫通孔4を備えている。
【0016】
基部1は、オイル交換用接続具Aの中ほどに位置し、内部が中空であり、外部が中心軸Cに垂直な切断面を六角形とする角柱形状を有しており、オイル交換用接続具AをオイルパンIに着脱するときに工具をあてがう部材である。基部1が、このような形状であると、レンチやスパナなどの汎用の工具によりオイル交換用接続具AをオイルパンIに着脱しやすい。
【0017】
第一接続部2は、オイル交換用接続具Aの一端側に位置し、基部1の一端に延設される円筒状の螺子部21と円筒状の管部22とからなり、外周側面に雄螺子が切られている螺子部21によりオイルパンIの排出口Eに螺着される部材である。
【0018】
汎用のオイルパンIの排出口Eの口径に適合できるように、螺子部21の外周の直径は、6〜12mmであることが好ましい。そして、管部22の外周の直径は、螺子部21の直径よりも小さく、3〜7mmであることが好ましい。管部22の直径が螺子部21の直径よりも短いことにより、オイル交換用接続具AをオイルパンIに接続しオイルを循環させているときに、オイルパンIの内部に発生した大きく重いスラッジがオイルパンIのオイル調整壁Wと管部22のとの間に沈殿しやすく循環ポンプ7などに設けられたストレーナーに付着しないためにオイルの交換を円滑に行うことができる。さらに、管部22が、中心軸Cに沿う方向において螺子部21よりも長いことにより、同様に大きく重いスラッジがオイルパンIのオイル調整壁Wと管部22のとの間により多く蓄えることができストレーナーへの目詰まりを防ぐことができるためにオイルの交換を円滑に行うことができる。
【0019】
第二接続部3は、第一接続部2とは基部1を挟んで反対側であるオイル交換用接続具Aの他端側に位置し、基部1の他端に延設される円筒状の部材であり、その外周側面には嵌合溝31が設けられている。この嵌合溝31が、蛇管6の端部に設けられた円柱状の係止具5の内部にある止め玉と嵌合して、第二接続部3と係止具5を係止することができる。
【0020】
貫通孔4は、基部1、第一接続部2、第二接続部3を貫通しており、オイルパンI内のオイルと循環ポンプ内のオイルとの通り道である。
図3に示すように、貫通孔4は、第一接続部2内における径が基部1内で120度の角度で広がって大きくなり、その大きさで第二接続部3内に連通している。
【0021】
オイル交換用接続具Aの材質としては、剛性を有する合成樹脂、金属などを使用することができるが、耐久性などから金属、特に真鍮、ステンレス、炭素鋼などが好ましい。
【0022】
以下に、オイル交換用接続具Aを用いたオイル交換方法について、
図5から
図10を参照して説明する。
【0023】
まず、準備工程として、オイルパンIの温度を、非接触型温度計などを用いて測定する。オイルパンIに作業者が触れても火傷しないように高すぎないかを調べるとともに、また、オイルを交換しやすくするために低すぎないかを調べる。温度が低いときにはオイルの粘度が高くオイル交換するときの効率が悪いため、エンジンを掛けるなど暖気運転をすることにより35〜45℃程度に上昇させオイルの粘度を低下させて、オイル交換しやくすることが好ましい。
【0024】
そして、
図5に示すように、工程S1において、オイルパンIの底部にある排出口Eに取り付けられたオーバーフロープラグPを取り外して、オイル交換用接続具Aの第一接続部2をオイルパンIに螺着して接続する。
図4に示すように、オイルパンIに別途ドレンバルブがある場合、ドレンバルブを取り外してその排出口からオイル交換用接続具Aを螺着することもできるが、ドレンバルブを外すとその排出口からオイルパンI内のオイルが流れ出して作業者の手や作業場が汚れるため、オイル調整壁Wを有してオイルパンI内のオイルが流れ出ないオーバーフロープラグPを取り外してオイル交換用接続具Aを螺着することが好ましい。
【0025】
そして、
図6に示すように、工程S2において、第二接続部3の嵌合溝31に係止具5を嵌合させることにより、係止具5を備え可撓性を有する蛇管6を介して、循環ポンプ7をオイル交換用接続具Aに接続する。なお、循環ポンプ7は、市販されている商品を使用することができる。
【0026】
そして、
図7に示すように、工程S3において、循環ポンプ7に予め注入した新規のオイル1Lを自動又は手動によりオイルパンIに送液する。オイルパンI内のオイルの液面は、高くともオイル調整壁Wの上端までしかないため、新規にオイルを送液してオイルパンI内のオイルの液面をオイル調整壁Wの上端を越える程度にしないと効率良くオイルを循環することができない。なお、本実施方法において、まず送液する新規のオイルを1Lとしているが、オイルパンIの容積を考慮してオイルの液面がオイル調整壁Wの上端を越える程度に液面を上昇させ、円滑にオイルを循環できる量であればこのオイル量に限定されない。
【0027】
次に、
図8に示すように、工程S4において、循環ポンプ7により、循環ポンプ7に予め注入した新規のオイル4〜7Lを、予め定められたプログラムに基づき自動的に約1〜2Lなど適量ずつオイルパンIとの間で送液と吸液を繰り返して、オイルパンI内のオイルと送液された新規のオイルとが混合したオイルを均一となるまで循環させる。このように、混合オイルが均一となるまで循環することによりオイルパンI内のオイルをほぼ新規のオイルとすることができる。また、トランスミッションを駆動させて、循環パイプP1、P2を介してトランスミッションケースT内のオイルもともに循環させることが好ましい。なお、本実施方法において、追加して送液する新規のオイルを4〜7Lとしているが、オイルパンI内のオイルよりも充分多い量として、ほぼ新規のオイルとすることができる量であればこのオイル量に限定されない。
【0028】
そして、
図9に示すように、工程S5において、循環ポンプ7により、工程S3で送液した新規のオイルとほぼ同量の約1Lを吸液しオイルパンIより除去する。なお、除去する量については、1Lの2〜3%量は増減しても良い。
【0029】
そして、
図10に示すように、工程S6において、オイル交換用接続具Aを取り外して、工程S1で取り外したオーバーフロープラグPを排出口Eに接続する。
【0030】
このように、準備工程、及びオイル交換用接続具Aを用いて工程S1から工程S6の手順を経る方法によって、トランスミッションケースTに取り付けられたオイルパンI内のオイルを新規のオイルに交換することができる。
【0031】
そして、オイル交換用接続具A及び循環ポンプ7を用いた自動運転により混合オイルを無人で循環させることができるため、オイルの抜き出し時にオイルが飛び跳ねて作業者や作業場が汚れることもなく、数十分程度でオイルを交換することができ従来はオイルの冷却時間を含め半日から1日程度掛かっていた時間を大幅に短縮することができる。
【符号の説明】
【0032】
A・・・オイル交換用接続具
I・・・オイルパン
E・・・排出口
C・・・中心軸
W・・・オイル調整壁
P・・・オーバーフロープラグ
P1、P2・循環パイプ
T・・・トランスミッションケース
1・・・基部
2・・・第一接続具
21・・螺子部
22・・管部
3・・・第二接続具
31・・嵌合溝
4・・・貫通孔
5・・・係止具
6・・・蛇管
7・・・循環ポンプ