(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5783231
(24)【登録日】2015年7月31日
(45)【発行日】2015年9月24日
(54)【発明の名称】容器のフランジ部洗浄装置及び洗浄システム
(51)【国際特許分類】
B65B 55/24 20060101AFI20150907BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20150907BHJP
【FI】
B65B55/24
B08B3/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-252749(P2013-252749)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-110428(P2015-110428A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年3月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】澤田 誠
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 清隆
(72)【発明者】
【氏名】品川 喜昭
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−273367(JP,A)
【文献】
特開2007−261665(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/146190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/24
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のフランジ部洗浄装置であって、
該容器を支持する支持手段と、
該フランジ部の内周端に密接及び離隔し、容器に対して相対的に往復動する密封手段と、
該密封手段の上方に配置され、該密封手段を該内周端に密接させて該フランジ部の上面に洗浄液を噴射し、洗浄液の噴射後に該フランジ部の上面に気体を噴射する洗浄・除液手段と、
を具備することを特徴とする容器のフランジ部洗浄装置。
【請求項2】
該洗浄・除液手段は、噴射口及び該噴射口に至る流路を有し、該流路を介して該噴射口に洗浄液を供給する洗浄液供給源と、気体を供給する気体供給源とを備える、請求項1に記載の容器のフランジ部洗浄装置。
【請求項3】
該噴射口が周方向に適宜間隔をおいた多数の小孔である、請求項2に記載の容器のフランジ部洗浄装置。
【請求項4】
該密封手段の外周面が逆円錐台形状である、請求項1〜3のいずれかに記載の容器のフランジ部洗浄装置。
【請求項5】
該密封手段の少なくとも該容器のフランジ部の内周端に密接する部位がゴム状弾性体である請求項1〜4のいずれかに記載の容器のフランジ部洗浄装置。
【請求項6】
該請求項1〜5のいずれかに記載の容器のフランジ部洗浄装置を、容器搬入領域、該密封手段を該容器のフランジ部に密接する密封領域、該フランジ部の洗浄領域、該フランジ部の除液領域、該密封手段を該フランジから離隔する離隔領域及び容器搬出領域を順次含む円形搬送経路に沿って配設し、公転させることを特徴とする洗浄システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器のフランジ部を洗浄する容器のフランジ部洗浄装置及び洗浄システム、更に詳しくは容器のフランジ部に洗浄液を噴射して洗浄し、次いで気体を噴射して洗浄液を除液する容器のフランジ部洗浄装置及び洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種食品或いはペットフードのための容器として、周知のとおり、熱可塑性樹脂から成り、底壁、底壁から上方に延びる側壁、及び側壁の上端から半径方向外方に延出するフランジ部を有する形態のカップ状、或いはトレイ状の容器が広く実用に供されている。かような容器の使用に際しては、容器内に液状内容物、粘稠物、或いは固形物等の内容物を充填し、次いで、熱可塑性合成樹脂から成る成形蓋を容器のフランジ部上に載置し、しかる後に蓋の外周縁部を容器のフランジ部に固着する。そして、蓋の外周縁部を容器のフランジ部に固着する方法としては、下記特許文献1に開示されている如く、レーザを照射して加熱溶着する方法が提案されている。
また、他の方法としては、上述した内容物が充填された容器に、成形蓋、フィルム材から成るシール材等の蓋材を用い、ヒートシールバーによって蓋材を容器のフランジ部に熱融着する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−1432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、容器内に内容物を充填した際に、容器のフランジ部の上面に内容物が付着する場合がある。このように、容器のフランジ部の上面に内容物が付着した状態で成形蓋を載置し、例えばレーザ照射による加熱溶着によって、成形蓋を容器のフランジ部に加熱溶着して容器を密封すると、成形蓋の外周縁部と容器のフランジ部との間に介在する内容物に起因して密封不良が発生する虞がある。
また、上述したフィルム材等から成るシール材を用い、ヒートシールバーによってシール材を容器のフランジ部に熱融着して密封する場合も、同様に密封不良が発生する虞がある。
従って、容器を成形蓋、或いはシール材等の蓋材によって密封する前に、容器のフランジ部の上面に付着した内容物を洗浄して除去することが望ましい。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、容器のフランジ部に付着した内容物を除去し、且つ上記フランジ部を洗浄する際の内容物、洗浄液等の異物の容器内への混入を確実に回避して、容器のフランジ部の上面を高効率で洗浄することができる、新規、且つ改良された容器のフランジ部洗浄装置及び洗浄システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する容器のフランジ部洗浄装置として、
容器のフランジ部洗浄装置であって、
該容器を支持する支持手段と、
該フランジ部の内周端に密接及び離隔し、容器に対して相対的に往復動する密封手段と、
該密封手段の上方に配置され、該密封手段を該内周端に密接させて該フランジ部の上面に洗浄液を噴射し、洗浄液の噴射後に該フランジ部の上面に気体を噴射する洗浄・除液手段と、
を具備することを特徴とする容器のフランジ部洗浄装置が提供される。
【0007】
そして、該洗浄・除液手段は、噴射口及び該噴射口に至る流路を有し、該流路を介して該噴射口に洗浄液を供給する洗浄液供給源と、気体を供給する気体供給源とを備えることが好ましい。
また、該噴射口が周方向に適宜間隔をおいた多数の小孔であること、該密封手段の外周面が逆円錐台形状であること、該密封手段の少なくとも該容器のフランジ部の内周端に密接する部位がゴム状弾性体であることが好ましい。
更に、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する容器のフランジ部洗浄システムとして、
該容器のフランジ部洗浄装置を、容器搬入領域、該密封手段を該容器のフランジ部に密接する密封領域、該フランジ部の洗浄領域、該フランジ部の除液領域、該密封手段を該フランジから離隔する離隔領域及び容器搬出領域を順次含む円形搬送経路に沿って配設し、公転させる、
ことを特徴とする容器のフランジ部洗浄システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の容器のフランジ部洗浄装置によれば、容器内への内容物の充填時に容器のフランジ部の上面に付着した内容物が、蓋材による密封前に上記フランジ部の上面から除去されて洗浄が確実に行われると共に、上記除去、洗浄の際の、内容物、或いは洗浄液等の異物の容器内への混入が確実に回避され、上記異物による密封不良を確実に防止することができる。
また、本発明の容器のフランジ部洗浄システムによれば、上述した容器のフランジ部の上面に付着した内容物の除去と洗浄を確実に高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の容器のフランジ部洗浄装置の好適実施形態を示し、密封手段が容器のフランジ部の内周端から離隔した状態で、一部を断面図で示す簡略図。
【
図2】本発明の容器のフランジ部洗浄装置の好適実施形態を示し、密封手段が容器のフランジ部の内周端に密接した状態で、一部を断面図で示す簡略図。
【
図3】本発明の容器のフランジ部洗浄システムを示す簡略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に従って構成された容器のフランジ部洗浄装置2の好適実施形態と共に、かかる洗浄装置によってフランジ部が洗浄される容器4の典型例を示している。適宜の熱可塑性合成樹脂から成る容器4は、全体としてカップ形状であり、円形底壁部6、この底部6の周縁から上方に延びる逆円錐形状の主側壁部8、主側壁部8の上端から半径方向外方に延びる円環形状の張出壁部10、張出壁部10の外周縁から上方に延びる円筒形状の付加側壁部12、及び付加側壁部12の上端から半径方向外方に水平に延びる円環形状のフランジ部14を有する。
【0011】
上記容器4のフランジ部12の上面を洗浄するための図示の洗浄装置2は、支持手段16、洗浄・除液手段18及び密封手段20を具備している。容器4を支持するための支持手段16は、水平に延在する上面を有し、この上面の中央部には円形凹部22が形成されている。円形凹部22の内径は容器4の下端部外径に対応しており、
図1に図示するように、容器4の下端部を円形凹部22内に装着して、容器4が直立状態で支持手段16に支持される。
【0012】
洗浄・除液手段18は、全体として円板形状である基板24、略円板形状の内側部材26及びこの内側部材26の下端部を介して一体に設けた円環板形状の外側部材28を有している。基板24は、適宜の装着手段(図示していない)によって昇降自在に装着されており、流体圧シリンダ機構の如き適宜の昇降手段(図示していない)によって
図1に図示する密封手段20が容器のフランジ部の内周端から離隔した状態(離隔位置)と、
図2に図示する密封手段が容器のフランジ部の内周端に密接した状態(密接位置)との間を昇降動、即ち往復動する。そして、外側部材28を締結ボルト30によって基板24の下面に固定し、上述した密封手段20を離隔状態と密接状態とする。また、基板24と内側部材26との間には、放射状に延在する多数の流路32が形成され、内側部材26の外周面と外側部材28の内周面との間には環状流路34が形成されており、上記内側部材26と外側部材28との下端部には、周方向に適宜間隔をおいた多数の小孔から成る噴射孔36が形成されている。さらに、基板24の中心部には、その上面から下方に延在して上記流路32に連通する流路38が形成され、この流路38には、洗浄液供給源40及び気体供給源42が接続されている。そして、洗浄液供給源40が作動すると、上水等の洗浄液が流路38、32及び環状流路34を介して噴射孔36に供給され、噴射孔36から噴射される。一方、気体供給源42が作動すると、圧縮空気等の気体が流路38、32及び34を介して噴射孔36に供給され、噴射孔36から噴射される。
尚、上述した上水等、気体を噴射する噴射孔36に変えて、内側部材26と外側部材28を別部材とし、それらの下端部にクリアランスを設けて周方向連続する円環形状の噴射部を形成しても良いが、容器4のフランジ部14の上面全体を効果的に洗浄及び洗浄後の徐液を行う点から、前者の周方向に適宜の間隔をおいた多数の小孔から成る噴射孔を形成するのが好ましい。
また、上述した噴射孔、噴射部の容器4のフランジ部14の上面に対する噴射角度は、30度乃至60度、特に40度乃至50度が、一層、洗浄及び洗浄後の徐液を効果的に行う点で好ましい。
【0013】
密封手段20は、上記洗浄・除液手段18の内側部材26の下面に締結ボルトの如き適宜の締結手段(図示していない)によって固定され、上記基板24の昇降動に付随して
図1に図示する離隔位置と、
図2に図示する密接位置との間を昇降動、即ち往復動する。密封手段20は、その外周面の上半部が円筒形状、下半部分が逆円錐台形状を呈し、上記下半部の逆円錐台形状部分を、容器4のフランジ部14の内側端に密接させるのが好適である。このような密封手段20における容器4のフランジ部14の内側端に密接する部位の外周面は、ゴム硬度(JIS K 6253)が好適には10乃至70程度のゴム状弾性体を用いるのが望ましい。図示の実施形態においては、密封手段20は、適宜の金属或いは合成樹脂から形成された本体44と、この本体44の外周面下半部に、適宜手段によって装着された環状のゴム状弾性体46とから構成されている。
【0014】
このように構成された本発明の容器のフランジ部洗浄装置は、
図1に図示するように、内容物が充填された容器4が直立状態で支持手段16の円形凹部22上に搬入、載置される。次いで、基板24が
図1に図示する離隔位置から
図2に図示する密接位置に下降し、密封手段20のゴム状弾性体46を、容器4のフランジ部14の内終端に所要押圧力で密接させる。この結果、内容物が充填された容器4が密封手段20により密封される。そして、この密封後、洗浄液供給源40からの洗浄液を、上述した流路38、32及び環状流路34を介して噴射孔36に供給し、容器4のフランジ部14の上面に上記洗浄液を噴射して、上記フランジ部14の上面に付着した内容物を除去する。この後、洗浄液供給源40からの洗浄液の供給を停止し、気体供給源42からの気体を、同様に、上述した流路38、32及び環状流路34を介して噴射孔36に供給し、容器4のフランジ部14の上面に上記気体を噴射して、上記フランジ部14の上面に残留する洗浄液を除液する。このように、密封手段20を容器4のフランジ部14の内終端に密接させて上記容器4を密封した状態で、上記フランジ部14の上面の洗浄、徐液が行われる。このため、上記洗浄時の洗浄液、内容物、及び徐液時の噴射された気体、残留洗浄液の容器4内への侵入が確実に防止される。最後に、気体供給源442からの気体の供給を停止した後に、基板24を
図1に図示する位置まで上昇させ、密封手段20を、容器4のフランジ部14の内側端から離隔させる。その後、支持手段16からフランジ部14の上面が洗浄・除液された容器4が搬出される。
【0015】
上記実施形態においては、容器4に対して基板24を、即ち密封手段20を昇降動して、上記密封手段20を容器4のフランジ部14の内側端に密接及び離隔しているが、容器4を支持している支持手段16を昇降動して、密封手段20を容器4のフランジ部14の内側端に密接及び離隔することもでき、容器に対して相対的に密封手段20を往復動させれば良い。
【0016】
図3は上記洗浄装置2を、容器搬入領域50、密封領域52、洗浄領域54、除液領域56、離隔領域58、及び容器搬出領域60を含む円形搬送経路62に沿って配設し、公転させる容器のフランジ部洗浄システムを示す図である。
このシステムにおいては、上記洗浄装置2が複数個(図示の場合は20個)、等間隔をおいて配列されており、円形搬送経路62に沿って矢印64で示す方向に連続的に公転される。そして、容器搬入領域50において、適宜の搬入手段(図示していない)によって洗浄装置2の支持手段16上に、内容物が充填された容器4が搬入、載置される。次いで、密封領域52において、密封手段20が下降して容器4のフランジ部14の内周端に密接し、内容物が充填された容器4が密封される。密封後、洗浄領域54において、洗浄液供給源40が作動し、容器4のフランジ部14の上面に洗浄液が噴射され上記フランジ部の洗浄が行われる。次いで、洗浄後、除液領域56において、気体供給源42が作動し、容器4のフランジ部14の上面に気体が噴射され、上記洗浄液の徐液が行われる。この徐液後、離隔領域58において、密封手段20が上昇し、容器4のフランジ部14の内周端から離隔する。最後に、容器搬出領域60においは、適宜の搬出手段(図示していない)によって、支持手段16上からフランジ部14の上面が洗浄、徐液が行われた容器4が搬出される。
【符号の説明】
【0017】
2:洗浄装置
4:容器
14:容器のフランジ部
16:支持手段
18:洗浄・除液手段
20:密封手段
32:流路
34:流路
36:噴射孔
38:環状流路
40:洗浄液供給源
42:気体供給源
46:ゴム状弾性体
50:容器搬入領域
52:密封領域
54:洗浄領域
56:除液領域
58:離隔領域
60:容器搬出領域
62:円形搬送経路